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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C10M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C10M
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C10M
管理番号 1340415
審判番号 訂正2018-390040  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-02-28 
確定日 2018-04-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5417621号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5417621号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判に係る特許は、発明の名称を「グリース組成物及びその製造方法」とする特許第5417621号(以下、「本件特許」という。)であって、平成20年2月29日を出願日とする特願2008-50764号について、平成25年11月29日、請求項1ないし6に対して、設定登録を受けたものである。その後、本件特許に対し、平成30年2月28日に訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容

1 本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 本件訂正の内容
本件訂正審判に係る明細書の訂正の内容は、以下に示す、訂正事項1ないし7である(これらを併せて「本件訂正」という。)。
なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
明細書の段落【0014】の「炭素数6?12の宝庫族炭化水素基」との記載を、「炭素数6?12の芳香族炭化水素基」に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0025】の「基油は、40℃における動粘度が15?200mm^(2)/sであることが好ましいが、潤滑特性、蒸発特性及び低温流動性を考慮すると、20?150mm2/sであることがより好ましい」との記載を、「基油は、40℃における動粘度が15?200mm^(2)/sであることが好ましいが、潤滑特性、蒸発特性及び低温流動性を考慮すると、20?150mm^(2)/sであることがより好ましい」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0042】の「トリメチルシクロヘキシル器」との記載を、「トリメチルシクロヘキシル基」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0061】の表1の「実施例4」及び「実施例5」を「参考例4」及び「参考例5」にそれぞれ訂正し、段落【0057】の「実施例及び比較例」との記載を、「実施例、参考例及び比較例」に訂正し、段落【0058】の「実施例1?7、比較例1?3」との記載を、「実施例1?3、6、7、参考例4、5、比較例1?3」に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0063】の「平均粒径0.1μm以下の炭酸カルシウム をグリース全量の0.1?5質量%含有する実施例の各試験グリース」との記載を、「平均粒径0.1μm以下の炭酸カルシウムをグリース全量の0.1?3質量%含有する実施例の各試験グリース」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0066】の表3の「実施例2」との記載を、「実施例12」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0073】の「第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とと個別に調製し、混合する方法」との記載を、「第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを個別に調製し、混合する方法」に訂正する。

第3 当審の判断

前記訂正事項1ないし7が、特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げる事項を目的とするものであるか否か(訂正の目的の適否)、同条第5項(新規事項の追加の有無)、同条第6項(特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無)及び同条第7項(独立特許要件充足性)の各規定に適合するものであるか否かについて、訂正事項1から順に以下検討をする。

1 訂正事項1

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0014】には、「炭素数6?12の宝庫族炭化水素基」と記載されているが、日本語として意味をなさず、請求項1、段落【0030】の「芳香族炭化水素基」との記載も考慮すれば、「炭素数6?12の芳香族炭化水素基」の誤記であることは明白である。
訂正事項1は、明白な誤記を本来の意味に正す訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項1は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記を本来の意味に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項1は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項1は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

2 訂正事項2

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0025】には、基油の40℃における動粘度について、「20?150mm2/sであることがより好ましい」と記載されているが、「mm2/s」は動粘度の単位として技術的に正しくなく、同段落の「40℃における動粘度が15?200mm^(2)/sであることが好ましいが」との記載も考慮すれば、「mm2/s」が「mm^(2)/s」の誤記であることは明白である。
訂正事項2は、単位の表記についての明白な誤記を本来の表記に正す訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項2は、明白な誤記を本来の意味に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項2は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項2は、明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

3 訂正事項3

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0042】には、「トリメチルシクロヘキシル器」と記載されているが、日本語として意味をなさず、同段落の「ヘキシル基」との記載も考慮すれば、「トリメチルシクロヘキシル基」の誤記であることは明白である。
訂正事項3は、明白な誤記を本来の意味に正す訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項3は、明白な誤記を本来の意味に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項3は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項3は、明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

4 訂正事項4

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の実施例4、5は、添加剤として炭酸カルシウム粒子を5.0質量%含んでいるから、これらは、特許請求の範囲に係る発明の実施例にあたらない。
訂正事項4は、当該発明の技術的範囲に含まれない実施例を参考例とし、特許請求の範囲と明細書の記載とを整合させるものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲に含まれない実施例を参考例に訂正するものである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項4は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために明細書の記載を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

5 訂正事項5

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0063】には、「平均粒径0.1μm以下の炭酸カルシウムをグリース全量の0.1?5質量%含有する実施例の各試験グリース」と記載されている。
一方、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1には「添加剤として下記の(A)をグリース組成物全量の0.1?3質量%…(中略)…含有する」」と記載され、また、段落【0010】には、「添加剤として下記の(A)をグリース組成物全量の0.1?3質量%…(中略)…含有する」、さらに、段落【0037】には、「炭酸カルシウム微粒子の含有量はグリース組成物全量の0.1?3質量%…(中略)…である」と記載されている。
したがって、炭酸カルシウムの含有量に関し、段落【0063】に記載された数値範囲「0.1?5質量%」と、請求項1や、段落【0010】、【0037】に記載された数値範囲「0.1?3質量%」とが一致せず、不明瞭となっていた。
訂正事項5は、明細書の記載について、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載との整合を図るため、明細書の段落【0063】の「0.1?5質量%含有する」との記載を「0.1?3質量%含有する」に訂正するものである。
したがって、当該訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項5は、明細書の段落【0063】の平均粒径0.1μm以下の炭酸カルシウムのグリース全量に対する含有量の数値範囲について、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1、及び、請求項1の態様が記載されている明細書の段落【0010】、【0037】の「0.1?3質量%」との記載に基づいて、「0.1?5質量%」から「0.1?3質量%」に訂正するものである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項5は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載に合わせて明細書の段落【0063】の記載を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

6 訂正事項6

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0066】の表3には、実施例8、実施例9、実施例11、実施例2が記載されているが、明細書の段落【0064】の「(実施例8?12)
表3に示すとおり…」との記載から、「実施例2」は「実施例12」の誤記であることは明白である。
したがって、訂正事項6は、明白な誤記を本来の意味に正す訂正であるから、特許法第126条第1項だだし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項6は、明白な誤記を本来の意味に正すものであるから、最初に願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項6は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項6は、明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

7 訂正事項7

(1)訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書の段落【0073】には、「第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とと個別に調製し、混合する方法」と記載されているが、「…と、…とと個別に調製し」とは日本語として意味をなさず「…と、…とを個別に調製し」の誤記であることは明白である。
したがって、訂正事項7は、明白な誤記を本来の意味に正す訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。

(2)新規事項の追加の有無
訂正事項7は、明白な誤記を本来の意味に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。

(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項7は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件充足性
訂正事項7は、明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項7は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。

第4 結び

以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
グリース組成物及びその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジウレア化合物を増ちょう剤とするグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や産業機械では、高性能化とともに小型軽量化が進み、組み込まれる転がり軸受もより高温に晒される傾向にある。そのため、転がり軸受には、耐熱性や酸化安定性に優れるグリース組成物を封入する必要がある。
【0003】
高温用グリース組成物としては、これまで金属複合石けん、ナトリウムテレフタラメート、ベントン、ウレア化合物を増ちょう剤としたものや、フッ素グリース組成物が使用されている。しかし、金属複合石けん系グリース組成物は経時硬化しやすく、ナトリウムテレフタラメート系グリース組成物は油分離が大きく、ベントン系グリース組成物は潤滑性に問題があり、フッ素系グリース組成物は高価である等の欠点があり、ウレア系グリース組成物が主流になっている。
【0004】
ウレア系グリース組成物としては、ジウレア系グリース組成物やテトラウレア系グリース組成物が広く使用されているが、テトラウレア系グリース組成物は長期間高温に晒されると硬化する現象が見られ、また、せん断速度の違いにより硬化したり軟化する等、ちょう度の安定性に問題がある。
【0005】
これに対しジウレア系グリース組成物は、イソシアネートと、末端基となるアミンの構造により、その特性が大きく変化することが分かっている。例えば、ジフェニルメタン基の両端にウレア結合を有するジウレア化合物と、トリレン基またはビトリレン基の両端にウレア結合を有するジウレア化合物とを併用したジウレア系グリース組成物(特許文献1参照)、トリレン基、ジフェニルメタン基、ジメチルビフェニレン基の両端に炭素数6?18の直鎖の飽和アルキル基が25?45モル%、シクロヘキシル基が50?70モル%、芳香族系炭化水素基が5?25モル%となるように混合結合させたジウレア系グリース組成物(特許文献2参照)、2種類以上の異なるジイソシアネートとアミンとを反応させて得られるジウレア系グリース組成物(特許文献3参照)、3種類のジウレア化合物を混合して用いたジウレア系グリース組成物(特許文献4参照)等が知られている。
【0006】
また、金属型清浄剤は、防錆、防食、摩擦改善、酸化防止及び抗摩擦特性を付与でき、伝達油、ギア油、作動油、金属加工液、グリース等の用途に使用できることが知られている(特許文献5参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平1-13969号公報
【特許文献2】特開平6-88085号公報
【特許文献3】特許第2777928号公報
【特許文献4】特開2003-201495号公報
【特許文献5】特開2003-082738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のジウレア系グリース組成物をはじめ、ジウレア系グリース組成物は低温での流動性に改善の余地がある。特に、自動車は寒冷地でも使用されるため、低温で異音が発生する等の不具合を起こす。また、自動車や産業機械の更なる高性能化や小型化は必至であり、より高温での安定性も要求されている。
【0009】
そこで本発明は、高温でのちょう度変化や油分離をより抑制でき、更に-40℃という極低温においても固化することもなく、高温から極低温まで広い温度範囲でこれまでよりも良好な特性を示すグリース組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のグリース組成物及びその製造方法を提供する。
(1)増ちょう剤として、下記一般式(I)で表される第1のジウレア化合物と、下記一般式(II)で表される第2のジウレア化合物とを、第1のジウレア化合物:第2のジウレア化合物=30:70?90:10の割合(モル比)となるように基油中で同時に合成してなる混合物をグリース組成物全量の10?30質量%の割合で含有し、かつ、添加剤として下記の(A)をグリース組成物全量の0.1?3質量%及び(B)をグリース組成物全量の0.1?5質量%含有するか、もしくは(C)をグリース組成物全量の0.1?5質量%含有するとともに、
ステンレスシャーレに厚さ3mmとなるように均一に塗布し180℃で240時間放置した後のちょう度と放置前のちょう度との差が-100以上であり、180℃で100時間放置したときの離油度が10質量%以下であることを特徴とするグリース組成物。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中のR_(2)はトリレン基またはビトリレン基を表す。また、R_(1)は炭素数6?20の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中のR_(4)はジフェニルメタン基を表す。また、R_(3)は炭素数6?12の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。)
(A)一次平均粒径が0.1μm以下で、表面処理した炭酸カルシウム微粒子
(B)(i)金属元素を含まない硫黄-リン系極圧剤、(ii)有機亜鉛化合物、(iii)アミン系防錆剤、(iv)カルボン酸系防錆剤、(v)エステル系防錆剤、(vi)ZnCO_(3)、Li_(2)CO_(3)、BaCO_(3)、K_(2)CO_(3)及びNa_(2)CO_(3)から選ばれる炭酸塩、(vii)安息香酸アンモニウム、ヒドロキシ安息香酸及び安息香酸ナトリウムから選ばれる安息香酸類の少なくとも1種
(C)アミン系防錆剤
(2)上記(1)記載のグリース組成物の製造方法であって、単一容器に、基油と、トリレンジイソシアネートまたはビトリレンジイソシアネートと、ジフェニルメタンジイソシアネートと、炭素数6?20の芳香族炭化水素基を有するアミンと、炭素数6?12の芳香族炭化水素基を有するアミンとを、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とが前記混合比率となり、かつ、前記増ちょう剤量となるように入れ、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを同時に合成し、添加剤として前記(A)及び(B)、または(C)をそれぞれ前記添加量にて添加することを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のグリース組成物は、それぞれ特定構造の第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを特定比率で混合した増ちょう剤を用いたため、高温でのちょう度変化や油分離をより抑制でき、-40℃という極低温においても固化することもなく、高温から極低温まで広い温度範囲でこれまでよりも良好な特性を示す。また、特定の添加剤を添加したことにより、耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0017】
〔基油〕
本発明のグリース組成物において、基油には制限がないが、ジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油、ポリαオレフィン油が好ましい。これらは、それぞれ単独使用でも、組み合わせて使用してもよい。
【0018】
ジアルキルジフェニルエーテル油としては、下記一般式(III)で表されるものが好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
式中、R_(5)、R_(6)、R_(7)の1つは水素原子であり、残りの2つは同一又は異なるアルキル基である。アルキル基の炭素数は8?20が好ましく、12?14がより好ましい。
【0021】
エステル系合成油としては、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート等のジエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート等のポリオールエステルやトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート等のピロメリット酸エステルの芳香族エステル油が挙げられる。
【0022】
ポリαオレフィン油は、下記一般式(IV)で表されるものが好ましい。
【0023】
【化6】

【0024】
式中、R_(8)はアルキル基であり、同一分子中に2種以上の異なるアルキル基が混在していてもよいが、好ましくはn-オクチル基である。また、nは3?8の整数が好ましい。
【0025】
また、基油は、40℃における動粘度が15?200mm^(2)/sであることが好ましいが、潤滑特性、蒸発特性及び低温流動性を考慮すると、20?150mm^(2)/sであることがより好ましい。
【0026】
〔増ちょう剤〕
増ちょう剤は、下記一般式(I)で表される第1のジウレア化合物と、下記一般式(II)で表される第2のジウレア化合物との混合物を用いる。
【0027】
【化7】

【0028】
式中、R_(2)はトリレン基またはビトリレン基を表す。また、R_(1)は炭素数6?20の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。このようなジウレア化合物は、トリレンジイソシアネートまたはビトリレンジイソシアネートと、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、クロロアニリン、ドデシルアニリン等の芳香族アミンとを反応させることにより得られる。尚、トリレンジイソアネートとしては2,4-トリレンジイソアネートや2,6-トリレンジイソアネート、あるいはこれらの混合物等を使用でき、ビトリレンジイソシアネートとしては、3,3´-ビトリレン-4,4´-ジイソシアネート等を使用できる。
【0029】
【化8】

【0030】
式中、R_(4)はジフェニルメタン基を表す。また、R_(3)は炭素数6?12の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。このようなジウレア化合物は、ジフェニルメタン4,4´-ジイソアネート等のジフェニルメタンジイソシアネートと、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、クロロアニリン、ドデシルアニリン等の芳香族アミンとを反応させることにより得られる。
【0031】
第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物との混合比率は、モル比で、第1のジウレア化合物:第2のジウレア化合物=30:70?90:10であり、40:60?70:30であることが好ましい。第1のジウレア化合物が30%未満になると熱硬化しやすくなり、90%を超えると油分離が大きくなり、好ましくない。
【0032】
また、増ちょう剤量はグリース全量の10?30質量%であり、15?25質量%がより好ましく、15?21質量%が特に好ましい。増ちょう剤量が10質量%未満ではグリース状態を維持できず、30質量%を超えると硬くなりすぎて十分な潤滑状態を発現できなくなる。
【0033】
更に、グリース組成物の混和ちょう度は、300以下であることが好ましい。
【0034】
〔添加剤〕
グリース組成物には、(A)一次平均粒径が0.1μm以下の炭酸カルシウム(以下、「炭酸カルシウム微粒子」)と、(B)金属元素を含まない硫黄-リン系極圧剤、有機亜鉛化合物、アミン系防錆剤、カルボン酸系防錆剤、エステル系防錆剤、炭酸塩及び安息香酸類の少なくとも1種の両方、もしくは(C)アミン系防錆剤を配合する。
【0035】
(炭酸カルシウム微粒子)
炭酸カルシウム微粒子は、公知のものでよく、天然から得られる重質炭酸カルシウムや、合成して得られる沈降性炭酸カルシウムの上記一次平均粒径となるように分級したものを用いることができる。また、一次平均粒径は、好ましくは0.05μm以下である。
【0036】
また、炭酸カルシウム微粒子を、炭酸カルシウム微粒子をステアリン酸等の脂肪酸、ロジン、カルボキシ変性高分子及び金属系表面処理剤から選択される1種以上の表面処理剤によって予め表面処理しておく。このようにすることによって基油とのなじみ性を向上させ、炭酸カルシウム微粒子の分散安定性を良好なものとすることができる。炭酸カルシウム微粒子の表面処理とは、炭酸カルシウム微粒子の表面を、表面処理剤によってコーティングすることをいい、そのような表面処理された炭酸カルシウム微粒子は、例えば、水に分散させた状態の炭酸カルシウム微粒子に表面処理剤を添加して攪拌分散し、これを脱水、乾燥、粉砕することによって作製することができる。
【0037】
炭酸カルシウム微粒子の含有量はグリース組成物全量の0.1?3質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では耐久性延長効果が得られず、3質量%を超えると発熱等により機能喪失となり、実用的ではない。
【0038】
(硫黄-リン系極圧剤)
硫黄-リン系極圧剤は、金属元素を含まず、リン原子及び硫黄原子を含む化合物であり、チオフォスフェート類やチオフォスファイト類のように分子中にリン原子及び硫黄原子の双方を有するものの他、例えばリン系極圧剤(分子中にリン原子を有するもの)と、硫黄系極圧剤(分子中に硫黄原子を有するもの)との混合物であってもよい。チオフォスフェート類としては、チオリン酸エステルの基本構造を有する、例えばトリフェニルフォスフォロチオネート(TPPT)等のチオリン酸エステルが挙げられる。チオフォスファイト類としては、例えばトリブチルトリチオフォスファイトやトリ(2-エチルヘキシル)トリチオフォスファイト等の(RS)_(3)Pで表される有機トリチオフォスファイト等が挙げられる。
【0039】
硫黄-リン系極圧剤の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは1?3質量%である。含有量が0.1質量%未満では高温長時間使用時にちょう度変化が大きくなり、5質量%を超えると油分離が大きくなり、更に熱安定性に劣るようになり、実用的ではない。
【0040】
(有機亜鉛化合物)
有機亜鉛化合物としては、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等が挙げられるが、中でも下記のジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)が好適である。
【0041】
【化9】

【0042】
式中、R_(9)はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基であり、全て同一でもよく、異なっていてもよい。中でも、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1,1,3,3-テトラメチルヘキシル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-メチルウンデカン基、1-メチルヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-ヘプチル基、4-メチルシクロヘキシル基、n-ブチル基、イソブチル基、イソプロピル基、イソヘプチル基、イソペンチル基、ウンデシル基、エイコシル基、エチル基、オクタデシル基、オクチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロペンチル基、ジメチルシクロヘキシル基、デジル基、テトラデシル基、ドコシル基、ドデシル基、トリデシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ノニル基、プロピル基、ヘキサデシル基、ヘキシル基、ヘニコシル基、ヘプタデシル基、ヘプチル基、ペンタデシル基、ペンチル基、メチル基、第三ブチルシクロヘキシル基、第三ブチル基、2-ヘキセニル基、2-メタリル基、アリル基、ウンデセニル基、オレイル基、デセニル基、ビニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタデセニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、第二ペンチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、第三オクチルフェニル基、イソノニルフェニル基、n-ドデシルフェニル基、フェニル基、ベンジル基、1-フェニルメチル基、2-フェニルメチル基、3-フェニルプロピル基、1,1-ジメチルベンジル基、2-フェニルイソプロピル基、3-フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、ビフェニル基等が好ましい。また、これらの基はエーテル基を有していてもよい。
【0043】
有機亜鉛化合物の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0044】
(アミン系防錆剤)
アミン系防錆剤としては、アルコキシジフェニルアミン、脂肪酸のアミン塩、二塩基性カルボン酸の部分アミド等が挙げられるが、脂肪酸のアミン塩が好適である。
【0045】
アミン系防錆剤の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0046】
(カルボン酸系防錆剤)
カルボン酸系防錆剤としては、モノカルボン酸ではラウリン酸、ステアリン酸等の直鎖脂肪酸、ナフテン核を有する飽和カルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸ではコハク酸、アルキルコハク酸、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、コハク酸イミド等のコハク酸誘導体、ヒドロキシ脂肪酸、メルカプト脂肪酸、ザルコシン誘導体、あるいはワックスやペトロラタムの酸化物等の酸化ワックス等を例示できるが、アルケニルコハク酸ハーフエステルが好適である。
【0047】
カルボン酸系防錆剤の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0048】
(エステル系防錆剤)
エステル系防錆剤としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ショ糖、グリセリン酸の多価アルコールとオレイン酸、ラウリル酸等のカルボン酸の部分エステルやオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール等の高級脂肪酸アルコール等が挙げられるが、ソルビトールが好適である。
【0049】
エステル系防錆剤の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0050】
(炭酸塩)
炭酸塩としては、ZnCO_(3)、Li_(2)CO_(3)、BaCO_(3)、K_(2)CO_(3)、Na_(2)CO_(3)が挙げられる。
【0051】
炭酸塩の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?2質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0052】
(安息香酸類)
安息香酸類としては、安息香酸アンモニウム、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0053】
安息香酸類の含有量はグリース組成物全量の0.1?5質量%であり、好ましくは0.5?1質量%である。含有量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えても効果の更なる向上が得られない。
【0054】
(その他)
上記添加剤に加え、例えば、フェニル-1-ナフチルアミン等のアミン系、2,6-ジ-tert-ジブチルフェノール等のフェノール系、硫黄系の酸化防止剤;有機モリブデン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油、モンタン酸ワックス等の油性向上剤;ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等を、単独又は2種以上混合して添加することができる。尚、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではない。
【0055】
本発明のグリース組成物は上記の成分から構成されるが、低温、特に-40℃以下という極低温での潤滑特性を確保するために、-30℃における見かけ粘度が100Pa・s以下であることが好ましい。
【0056】
〔製造方法〕
グリース組成物の製造方法に制限はないが、単一容器に、基油と、トリレンジイソシアネートまたはビトリレンジイソシアネートと、ジフェニルメタンジイソシアネートと、炭素数6?20の芳香族炭化水素基を有するアミンと、炭素数6?12の芳香族炭化水素基を有するアミンとを第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とが前記混合比率となり、かつ、前記増ちょう剤量となるように入れて反応させ、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを同時に合成する。これにより、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とがグリース組成物中で均一に分散する。その結果、増ちょう剤量を少なくすることができ、相対的に基油量が多くなり潤滑性に優れるようになり、-40℃の低温においてもグリース硬化を抑制できる。これに対し、基油を共通とし、第1のジウレア化合物を増ちょう剤とするグリース組成物と、第2のジウレア化合物を増ちょう剤とするグリース組成物とを別々に合成しておき、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを上記混合比率となるように混合する方法では、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物との分散状態が前者の製造方法に比べると悪くなる。その後、添加剤として(A)及び(B)の両方、または(C)をそれぞれ前記添加量で添加する。
【実施例】
【0057】
以下に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1?3、6、7、参考例4、5、比較例1?3)
表1及び表2に示すとおり、基油中で第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを同時合成し、添加剤を添加して試験グリースを調製した。そして、各試験グリースを用いて以下の試験を行った。
【0059】
(1)高温放置後のちょう度変化
ステンレスシャーレ(SUS304)に試験グリースを厚さ3mmとなるように均一に塗布し、180℃で240時間放置した。放置後に試験グリースのちょう度を測定し、放置前のちょう度との差を求めた。結果を表1及び表2に示すが、差が-100以上を合格とした。
【0060】
(2)離油度試験
JIS K2220の離油度試験に準拠し、180℃で100時間放置したときの離油度を測定した。結果を表1及び表2に示すが、離油度10質量%以下を合格とした。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
上記各試験から、本発明に従い、増ちょう剤として第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを30:70?90:10の割合(モル比)で同時合成してなる混合物を用い、平均粒径0.1μm以下の炭酸カルシウムをグリース全量の0.1?3質量%含有する実施例の各試験グリースは、高温でのちょう度変化が少なく、離油度も少ないことがわかる。
【0064】
(実施例8?12)
表3に示すとおり、基油中で第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを同時合成し、添加剤を添加して試験グリースを調製した。そして、上記の(1)高温放置後のちょう度変化及び(2)離油度試験に加え、下記に示す(3)軸受防錆性試験を行った。結果を表3に示す。
【0065】
(3)軸受防錆性試験
内径φ17mm、外径φ47mm、幅14の単列深溝玉軸受に、試験グリースを2.7g封入し、更に0.1%塩化ナトリウム水溶液を軸受内部に0.5mL注入し、非接触シールを取り付けて試験軸受を作製した。試験軸受を回転させて封入グリースと塩化ナトリウム水溶液を軸受内部に行き渡らせた後、50℃、95%RHの環境下に4日間放置した。放置後、試験軸受を分解して内輪軌道面を観察して錆の発生の有無を確認した。結果を表3に示すが、錆が発生している場合を不合格とした。
【0066】
【表3】

【0067】
上記各試験から、本発明に従い、増ちょう剤として第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを30:70?90:10の割合(モル比)で同時合成してなる混合物を用い、特定の添加剤を含有する実施例の各試験グリースは、高温でのちょう度変化及び離油度が少なく、良好な防錆性能を示すことがわかる。
【0068】
(実施例13?17、比較例4?8)
表4及び表5に示すとおり、実施例13?17及び比較例4?6では、基油中で第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを同時合成して試験グリースを調製した。また、比較例7、8では、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを個別に調製し、両者を混合して試験グリースを調製した。尚、何れの試験グリースにも、アミン系防錆剤をグリース全量の0.5質量%添加した。そして、各試験グリースについて、下記に示す(4)-30℃における見かけ粘度を測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0069】
(4)-30℃における見かけ粘度測定
図1に測定原理を示すが、下部ステージと上部プレートとで試験グリースを挟み、上部プレートを回転させて所定の応力を試験グリースに加え、そのときの応力から粘度を求める。試験はREOLOGICA INSTRUMENTS社製「VAR100」を用い、ギャップ(下部ステージと上部プレートとの隙間)1mmとし、下部プレートを冷却して試験グリースを-30℃に維持し、回転を加えて数値が安定してから(通常は回転開示から200?500秒後)測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0070】
また、試験グリースについて、上記の(1)高温放置後のちょう度変化及び(2)離油度試験を行った。結果を表4及び表5に示す。また、実施例13?16及び比較例4?6の試験結果を基に、図2に第2のジウレア化合物の比率とちょう度変化の関係を、図3に第2のジウレア化合物の比率と離油度との関係をそれぞれグラフ化して示す。
【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
上記各試験から、本発明に従い、増ちょう剤として第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを30:70?90:10の割合(モル比)で同時合成してなる混合物を用い、特定の添加剤を含有し、かつ、特定の見かけ粘度を有する実施例の各試験グリースは、高温でのちょう度変化及び離油度が少ないことがわかる。また、比較例7,8から、第1のジウレア化合物と第2のジウレア化合物とを個別に調製し、混合する方法では見かけ粘度が格段に大きくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】見かけ粘度の測定原理を示す模式図である。
【図2】第2のジウレア化合物の比率とちょう度変化の関係を示すグラフである。
【図3】第2のジウレア化合物の比率と離油度との関係を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-03-26 
結審通知日 2018-03-28 
審決日 2018-04-10 
出願番号 特願2008-50764(P2008-50764)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (C10M)
P 1 41・ 852- Y (C10M)
P 1 41・ 853- Y (C10M)
最終処分 成立  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 井上 能宏
原 賢一
登録日 2013-11-29 
登録番号 特許第5417621号(P5417621)
発明の名称 グリース組成物及びその製造方法  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  

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