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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C07H
管理番号 1340417
審判番号 訂正2018-390020  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2018-04-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6182680号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6182680号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項33及び40について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6182680号(以下「本件特許」という。)は、2015年3月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月28日 中国(CN))を国際出願日とする特願2016-559266号の請求項1?41に係る発明について平成29年7月28日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成30年1月31日に本件訂正審判の請求(以下「本件請求」という。)がされたものである。

第2 本件審判請求の趣旨及び内容
1 審判請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6182680号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項33及び40について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。

2 訂正の内容
訂正の内容は次のとおりである。

[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項33において、2カ所の「HIVプロテアーゼ」の記載を、いずれも「HIV逆転写酵素」と訂正する。

[訂正事項2]
特許請求の範囲の請求項40において、2カ所の「HIVプロテアーゼ」の記載を、いずれも「HIV逆転写酵素」と訂正する。

第3 当審の判断
1 目的要件について
(1)訂正事項1について
審判請求人は、訂正事項1について審判請求書第2ページ6.3○(審決注:丸数字)ア(ア)aにおいて、誤記の訂正を目的とするものである旨主張しているので、特許法第126条第1項ただし書第2号を目的とするか否かについて検討する。

(2)判断の前提
特許請求の範囲又は明細書の誤記の訂正を目的とする訂正が認められるためには、特許がされた特許請求の範囲又は明細書の記載に誤記が存在し、それ自体で特許請求の範囲、明細書又は図面の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面から自明な事項として定まる必要がある。
(例えば、参考判決としては、「「誤記の訂正」を目的とする場合には明細書又は図面を訂正することを認めている。ここでいう「誤記」というためには,訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが,当該明細書及び図面の記載や当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで,当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。」(知財高判平18(行ケ)10204号)参照)。

(3)目的要件の判断
訂正前の請求項33の記載は、次のとおり
「【請求項33】
HIVプロテアーゼの阻害、HIVによる感染症の治療もしくは予防、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体における、HIVプロテアーゼを阻害するため、HIVによる感染症の治療もしくは予防のための、または、AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。」であり、必要とする被験体における、(A)HIVプロテアーゼを阻害するため、(B)HIVによる感染症の治療もしくは予防のため、または、(C)AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するためという、(A)?(C)の3つの用途のための請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の発明である。
そして、前記訂正事項1は、要するに、「HIVプロテアーゼ」を「HIV逆転写酵素」と訂正するものであるところ、誤記の訂正を目的としたものとして認められるためには、上述のとおり訂正前の「HIVプロテアーゼ」の記載がそれ自体で、特許された特許請求の範囲又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、特許がされた明細書、特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が「HIV逆転写酵素」であると自明な事項として定まることが必要である。

ア 訂正前の請求項の「HIVプロテアーゼ」との記載がそれ自体で、特許された特許請求の範囲又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるについて検討する。

(ア)請求項33の記載において、「HIVプロテアーゼ」の記載は、技術用語としては存在するものであり、「HIVプロテアーゼの阻害」との技術内容にも不明な点はなく、それ自体で誤りであるとはいえない。

(イ)しかしながら、明細書において、請求項33に対応した唯一の記載である段落0096には、「【0096】
本発明はまた、HIVによる感染症の治療もしくは予防、HIV逆転写酵素の阻害、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体におけるHIVによる感染症を治療もしくは予防するための、HIV逆転写酵素を阻害するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を包含する。」(下線は当審にて追加。以下同様。) との記載があり、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を、前記(A)?(C)の用途のうち、HIVプロテアーゼを阻害するために用いる(A)の用途の場合にのみ整合しなくなる記載が存在する。

(ウ)また、段落0123にも「【0123】
式Iの化合物およびその薬学的に許容され得る塩は、HIV逆転写酵素阻害剤である。化合物は、HIV逆転写酵素を阻害するために、ならびにインビトロおよびインビボでHIV複製を阻害するために有用である。より具体的には、式Iの化合物は、HIV-1逆転写酵素のポリメラーゼ機能を阻害する。下記RTポリメラーゼアッセイに記載されているアッセイにおける本発明の実施例の化合物の試験は、本発明の化合物が、HIV-1逆転写酵素のRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を阻害する能力を例証している。式Iの化合物はまた、HIV-2に対する有用な薬剤であり得る。」との記載があり、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物に相当する請求項33で使用される化合物またはその薬学的に許容され得る塩の作用機序がHIV逆転写酵素阻害であることが示され、その作用機序を評価する試験としてHIV逆転写酵素逆転写酵素阻害能力を例証するアッセイが示され、請求項33の請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩がHIVプロテアーゼ阻害剤であるとの記載と整合しない記載が存在する。

(エ)そして、段落0161の「RTポリメラーゼアッセイ」において、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩に該当する化合物がRT(逆転写酵素)の阻害剤であることを、実際に確認する記載が存在している。

(オ)一方、「HIVプロテアーゼ阻害剤」については、請求項29に「【請求項29】
有効量の請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを含み、抗HIV抗ウイルス剤、免疫調節剤または抗感染剤から選択される有効量の抗HIV剤をさらに含む、医薬組成物。」と記載され、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩にさらに含む抗HIVウイルス剤の例示の一つとして請求項29を引用する請求項30「【請求項30】
前記抗HIV抗ウイルス剤が、HIVプロテアーゼ阻害剤、HIV逆転写酵素阻害剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、HIV融合阻害剤、HIV侵入阻害剤またはHIV成熟阻害剤である、請求項29に記載の医薬組成物。」及び請求項30に対応して明細書の【0102】、【0107】、【0109】に記載があるのみで、特許請求の範囲、明細書全体の他の記載を検討しても、プロテアーゼ阻害剤として請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を使用しているこの記載は一切ない。

そうすると、上記(イ)?(オ)のことからすれば、当業者であれば、請求項1?19いずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用の用途を「HIVプロテアーゼ」の阻害のためと特定した(A)の場合の請求項33の箇所には誤りが存在すると気付くといえる。

イ 訂正後の「HIV逆転写酵素」との記載に関して、特許がされた明細書、特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が「HIV逆転写酵素」であると自明な事項として定まるといえるかについて検討する。

段落0095には、「【0095】
本発明はまた、HIVによる感染症の治療もしくは予防、HIV逆転写酵素の阻害、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体におけるHIVによる感染症を治療もしくは予防するための、HIV逆転写酵素を阻害するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための方法であって、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を前記被験体に投与することを含む方法を包含する。」と記載され、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含むHIV逆転写酵素を阻害するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための方法が記載され、段落0096には「【0096】
本発明はまた、HIVによる感染症の治療もしくは予防、HIV逆転写酵素の阻害、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体におけるHIVによる感染症を治療もしくは予防するための、HIV逆転写酵素を阻害するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を包含する。」と記載され、HIVによる感染症を治療もしくは予防するための、HIV逆転写酵素を阻害するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための医薬の調製に使用するための請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩が記載され、段落0103には「【0103】
(e)(i)上記に定義される式(I)の化合物またはそのプロドラッグもしくは薬学的に許容され得る塩、および(ii)HIV抗ウイルス剤、免疫調節剤および抗感染剤からなる群より選択される抗HIV剤の組み合わせであって、前記化合物および抗HIV剤が、前記組み合わせを、HIV逆転写酵素の阻害のために、HIVによる感染症の治療もしくは予防のために、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症もしくは進行の遅延のために有効なものにする量でそれぞれ用いられる組み合わせ。」と記載され、HIV逆転写酵素の阻害のために、HIVによる感染症の治療もしくは予防のために、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症もしくは進行の遅延のために用いられる請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩および抗HIV剤の組み合わせが記載され、段落0105には「【0105】
(g)HIV逆転写酵素の阻害を必要とする被験体におけるHIV逆転写酵素を阻害するための方法であって、有効量の式(I)の化合物またはそのプロドラッグもしくは薬学的に許容され得る塩を前記被験体に投与することを含む、方法。」と記載され、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含むHIV逆転写酵素を阻害するための方法が記載され、段落0110には、「【0110】
(l)HIV逆転写酵素の阻害を必要とする被験体におけるHIV逆転写酵素を阻害するための方法であって、(a)、(b)、(c)もしくは(d)の医薬組成物または(e)もしくは(f)の組み合わせを前記被験体に投与することを含む、方法。」と記載され、ここで、(a)、(b)の医薬組成物は、「【0099】
本発明の他の実施形態は以下の通りである:
(a)有効量の上記に定義される式(I)の化合物またはそのプロドラッグもしくは薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
【0100】
(b)有効量の式(I)の上記に定義される化合物またはそのプロドラッグもしくは薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを組み合わせること(例えば、混合すること)によって調製される生成物を含む、医薬組成物。」と記載されているから、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物を投与することを含むHIV逆転写酵素を阻害するための方法が記載されている。
すなわち、請求項33で使用される化合物である請求項1?19の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の用途については、HIVによる感染症の治療もしくは予防、HIV逆転写酵素の阻害、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体におけるHIVによる感染症を治療もしくは予防であることが、明細書に記載されているといえる。
前記ア(ウ)(エ)で述べたように、段落0123、0161には、請求項1?19の化合物に相当する式Iの化合物またはその薬学的に許容され得る塩の作用機序がHIV逆転写酵素阻害であることが具体的に示され、請求項1?19に該当する化合物またはその薬学的に許容され得る塩がRT(逆転写酵素)の阻害剤であることを、実際に確認する記載が存在している。
そして、明細書の他の記載をみても、請求項1?19の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の用途について、HIVによる感染症の治療もしくは予防、HIV逆転写酵素の阻害、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体におけるHIVによる感染症を治療もしくは予防であること以外に記載されていない。
したがって、請求項33の「HIVプロテアーゼ」の阻害との記載の箇所に誤りがあると気付いた当業者には、正しい記載が「HIV逆転写酵素」の阻害であると自明な事項として定まるといえる。

ウ 小括
以上のとおり、請求項33の訂正前の「HIVプロテアーゼ」という記載は、明細書の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書から自明な事項として定まるといえる。
よって、訂正前の「HIVプロテアーゼ」を「HIV逆転写酵素」とする訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。

(4)訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項40において、2カ所の「HIVプロテアーゼ」の記載を、いずれも「HIV逆転写酵素」と訂正するものである。
訂正前の請求項40の記載は、次のとおり
「【請求項40】
HIVプロテアーゼの阻害、HIVによる感染症の治療もしくは予防、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体における、HIVプロテアーゼを阻害するため、HIVによる感染症の治療もしくは予防のための、または、AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物。」であり、必要とする被験体における、(A’)HIVプロテアーゼを阻害するため、(B’)HIVによる感染症の治療もしくは予防のため、または、(C’)AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するためという、(A’)?(C’)の3つの用途のための請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の発明である。
ここで、請求項20?27に記載の化合物は、「・・・で示される請求項1に記載の化合物。」との記載からみて、「請求項1に記載の化合物」に該当するものである。
訂正事項2も、訂正事項1と同様の理由により、訂正前の「HIVプロテアーゼ」という記載には、それ自体で又は明細書の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書、特許請求の範囲から自明な事項として定まるといえる。
よって、訂正前の「HIVプロテアーゼ」を「HIV逆転写酵素」とする訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。

2 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
上記1で述べたとおり、訂正事項1、2は、特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものであり、「HIV逆転写酵素」との記載は登録時に記載されていたといえるものであるから、訂正の前後で実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

3 新規事項の追加の有無について
上記2で述べたとおり、段落0096、0123及び0161には、請求項1?19の化合物(式Iの化合物)またはその薬学的に許容され得る塩がHIV逆転写酵素阻害剤であることが記載されていることから、訂正事項1、2によって、「HIV逆転写酵素」と訂正されることで、新たな技術的事項が導入されているとはいえず、明細書の該当箇所は補正されておらず、願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
請求項20、22、24、26に記載の化合物は、請求項1を引用する化合物であり、また、請求項21、23、25、27に記載の化合物は請求項1を引用する化合物の薬学的に許容され得る塩であり、上記のとおり、請求項1の化合物(式Iの化合物)またはその薬学的に許容され得る塩がHIV逆転写酵素阻害剤であることが記載されていることから、訂正事項1、2によって、「HIV逆転写酵素」と訂正されることで、新たな技術的事項が導入されているとはいえず、願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

4 訂正後の発明の独立特許要件について
本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とする訂正を含むので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が同条第7項に適合するものであるかを検討する。
そこで、この点を検討したところ、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項33及び40に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする新たな理由は見当たらない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項、同条第5項?第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I
【化1】

(式中:
Rは、
【化2】

であり、
Xは、Oであり;
Yは、-C≡C-R^(8)または-C≡Nであり;
R^(1)は、-H、-C(O)R^(6)、-C(O)OR^(6)、-C(O)N(R^(6))_(2)、または
【化3】

であり;
R^(2)は、-H、-C(O)R^(6a)、-C(O)OR^(6a)または-C(O)N(R^(6a))_(2)であり;
R^(3)は、-Hであり;
R^(4)は、-N(R^(X))_(2)、-NHC(O)OR^(6b)、-N(C(O)OR^(6b))_(2)、-NHC(O)N(R^(6b))_(2)または-NHC(O)R^(6b)であり;
R^(5)は、-H、ハロ、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、-CN、-OR^(X)、-N(R^(X))_(2)、-C_(3)-C_(7)シクロアルキル、-NHC(O)OR^(6b)、-N(C(O)OR^(6b))_(2)、-NHC(O)N(R^(6b))_(2)または-NHC(O)R^(6b)であり;
R^(6)、R^(6a)およびR^(6b)はそれぞれ独立して、-H、-C_(1)-C_(6)アルキル、または-C_(1)-C_(6)ハロアルキルから出現ごとに選択され;
R^(8)は、-H、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、または-C_(3)-C_(7)シクロアルキルであり;
R^(9)は、-H、ハロ、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、-CN、-OR^(Y)または-N(R^(Y))_(2)であり;
R^(X)は独立して、-H、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、アリールまたは5もしくは6員単環式ヘテロアリールから出現ごとに選択され;
または、R^(4)またはR^(5)のいずれかまたは両方が-N(R^(X))_(2)である場合、各R^(X)は、それらが両方とも結合している窒素と一緒になって、5もしくは6員単環式ヘテロアリールまたは9もしくは10員二環式ヘテロアリールを形成していてもよく;ならびに
R^(Y)は、-H、-C_(1)-C_(6)アルキルまたは-C_(1)-C_(6)ハロアルキルである。)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
Rが
【化4】

である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
構造式II

(式中:
X、Y、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)およびR^(9)は、請求項1において定義されるとおりである。)を有する請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
R^(1)が‐H、
【化6】

であり、
R^(4)が、-N(R^(X))_(2)である、
請求項1?3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
R^(2)が、-Hである、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
Yが-C≡C-R^(8)である、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項7】
R^(4)が-N(R^(X))_(2)である、請求項1?3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項8】
R^(5)が、-H、ハロ、-C_(1)-C_(6)アルキル、-OR^(X)または-N(R^(X))_(2)である、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項9】
Yが-C≡CHである、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項10】
R^(9)が、-H、ハロ、-C_(1)-C_(3)アルキル、-C_(1)-C_(3)ハロアルキル、-CN、-OR^(Y)または-N(R^(Y))_(2)である、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項11】
R^(X)が-H、-C_(1)-C_(6)アルキルまたは-C_(1)-C_(6)ハロアルキルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項12】
Yが-C≡CHであり;
R^(5)が、-H、ハロ、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、-CN、-OR^(X)、-N(R^(X))_(2)、-NHC(O)OR^(6b)、-N(C(O)OR^(6b))_(2)、-NHC(O)N(R^(6b))_(2)または-NHC(O)R^(6b)であり;および
R^(9)が、-H、ハロ、-C_(1)-C_(3)アルキル、-C_(1)-C_(3)ハロアルキル、-CN、-OR^(Y)または-N(R^(Y))_(2)である、請求項1?4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項13】
R^(4)が-N(R^(X))_(2)である、請求項12に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項14】
R^(2)が-Hであり、
R^(4)が-NH_(2)である、請求項12に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項15】
Xは、Oであり;
Yは、-C≡CHまたは-C≡Nであり;
R^(1)は、-H、-C(O)R^(6)、-C(O)OR^(6)、-C(O)N(R^(6))_(2)、または
【化11】

であり;
R^(2)は、-H、-C(O)R^(6a)、-C(O)OR^(6a)もしくは-C(O)N(R^(6a))_(2)であり;
R^(3)は、-Hであり;
R^(4)は、-N(R^(X))_(2)、-NHC(O)OR^(6b)もしくは-NHC(O)N(R^(6b))_(2)であり;
R^(5)は、-H、ハロ、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキル、-CN、-OR^(X)もしくは-N(R^(X))_(2)であり;
R^(6)、R^(6a)およびR^(6b)はそれぞれ独立して、-H、-C_(1)-C_(6)アルキルまたは-C_(1)-C_(6)ハロアルキルから出現ごとに選択され;
R^(9)は、-H、ハロ、-C_(1)-C_(3)アルキル、-C_(1)-C_(3)ハロアルキル、-CN、-OR^(Y)または-N(R^(Y))_(2)であり;
R^(X)は独立して、-H、-C_(1)-C_(6)アルキル、-C_(1)-C_(6)ハロアルキルから出現ごとに選択され;ならびに
R^(Y)は独立して、-H、-C_(1)-C_(6)アルキルまたは-C_(1)-C_(6)ハロアルキルから出現ごとに選択される。)を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項16】
Yは、-C≡CHまたは-C≡Nであり;
R^(1)は、-H、または
【化11】

であり;
R^(2)は、-Hであり;
R^(3)は、-Hであり;
R^(4)は、-NH_(2)であり;
R^(5)は、-H、ハロまたは-NH_(2)であり;
R^(9)は、-H、ハロまたは-CH_(3)である、
請求項1?3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項17】
R^(1)、R^(2)、R^(4)またはR^(5)の一つ以上が、以下から選択される、請求項1?3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩:
R^(1)は、-C(O)R^(6)、-C(O)OR^(6)もしくは-C(O)N(R^(6))_(2)であり;
および/または
R^(2)は、-C(O)R^(6a)、-C(O)OR^(6a)もしくは-C(O)N(R^(6a))_(2)であり;および/または
R^(4)は、-NHC(O)OR^(6b)、-N(C(O)OR^(6b))_(2)、-NHC(O)N(R^(6b))_(2)もしくは-NHC(O)R^(6b)であり;および/または
R^(5)は、-NHC(O)OR^(6b)、-N(C(O)OR^(6b))_(2)、-NHC(O)N(R^(6b))_(2)もしくは-NHC(O)R^(6b)である。
【請求項18】
以下の構造式II
【化12】

(式中、
Xは、Oであり;
Yは、-C≡CHであり;
R^(1)は、-H、または
【化13】

であり;
R^(2)は、-Hであり;
R^(3)は、-Hであり;
R^(4)は、-NH_(2)であり;
R^(5)は、-H、ハロもしくは-NH_(2)であり;
R^(9)は、-H、ハロ、もしくは-CH_(3)である。)を有する化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項19】
【表1】


である請求項1に記載の化合物またはそれらの薬学的に許容され得る塩。
【請求項20】
構造式
【化14】

で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
構造式
【化15】

で示される化合物の薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
構造式
【化16】

で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
構造式
【化17】

で示される化合物の薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
構造式
【化18】

で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
構造式
【化19】

で示される化合物の薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
構造式
【化20】

で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
構造式
【化21】

で示される化合物の薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
有効量の請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項29】
有効量の請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体とを含み、抗HIV抗ウイルス剤、免疫調節剤または抗感染剤から選択される有効量の抗HIV剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項30】
前記抗HIV抗ウイルス剤が、HIVプロテアーゼ阻害剤、HIV逆転写酵素阻害剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、HIV融合阻害剤、HIV侵入阻害剤またはHIV成熟阻害剤である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
アバカビル、アバカビル+ラミブジン、アバカビル+ラミブジン+ジドブジン、アンプレナビル、アタザナビル、AZT、カプラビリン、ダルナビル、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、デラビルジン、ドルテグラビル、ドラビリン、エファビレンツ、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビルDF、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、エルテグラビル、エムトリシタビン、エムトリシタビン+テノホビルDF、エミビリン、エンフビルチド、エトラビリン、ホスアンプレナビルカルシウム、インジナビル、ラミブジン、ラミブジン+ジドブジン、ロピナビル、ロピナビル+リトナビル、マラビロク、ネルフィナビル、ネビラピン、PPL-100、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル フマル酸ジソプロキシル、フマル酸テノホビルアラフェナミド、チプラナビルまたはビクリビロックから選択される一つ以上の抗HIV剤をさらに含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の医薬の製造における使用であって、HIVによる感染症を治療もしくは予防するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための医薬の製造における前記使用。
【請求項33】
HIV逆転写酵素の阻害、HIVによる感染症の治療もしくは予防、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体における、HIV逆転写酵素を阻害するため、HIVによる感染症の治療もしくは予防のための、または、AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、請求項1?19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項34】
前記医薬が、アバカビル、アバカビル+ラミブジン、アバカビル+ラミブジン+ジドブジン、アンプレナビル、アタザナビル、AZT、カプラビリン、ダルナビル、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、デラビルジン、ドルテグラビル、ドラビリン、エファビレンツ、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビルDF、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、エルテグラビル、エムトリシタビン、エムトリシタビン+テノホビルDF、エミビリン、エンフビルチド、エトラビリン、ホスアンプレナビルカルシウム、インジナビル、ラミブジン、ラミブジン+ジドブジン、ロピナビル、ロピナビル+リトナビル、マラビロク、ネルフィナビル、ネビラピン、PPL-100、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル フマル酸ジソプロキシル、フマル酸テノホビルアラフェナミド、チプラナビルまたはビクリビロックから選択される一つ以上の抗HIV剤をさらに含む、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
有効量の請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項36】
有効量の請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容され得る担体とを含み、抗HIV抗ウイルス剤、免疫調節剤または抗感染剤から選択される有効量の抗HIV剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項37】
前記抗HIV抗ウイルス剤が、HIVプロテアーゼ阻害剤、HIV逆転写酵素阻害剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、HIV融合阻害剤、HIV侵入阻害剤またはHIV成熟阻害剤である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
アバカビル、アバカビル+ラミブジン、アバカビル+ラミブジン+ジドブジン、アンプレナビル、アタザナビル、AZT、カプラビリン、ダルナビル、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、デラビルジン、ドルテグラビル、ドラビリン、エファビレンツ、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビルDF、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、エルテグラビル、エムトリシタビン、エムトリシタビン+テノホビルDF、エミビリン、エンフビルチド、エトラビリン、ホスアンプレナビルカルシウム、インジナビル、ラミブジン、ラミブジン+ジドブジン、ロピナビル、ロピナビル+リトナビル、マラビロク、ネルフィナビル、ネビラピン、PPL-100、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル フマル酸ジソプロキシル、フマル酸テノホビルアラフェナミド、チプラナビルまたはビクリビロックから選択される一つ以上の抗HIV剤をさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物の医薬の製造における使用であって、HIVによる感染症を治療もしくは予防するための、またはAIDSを治療し、予防し、もしくはその発症を遅延するための医薬の製造における前記使用。
【請求項40】
HIV逆転写酵素の阻害、HIVによる感染症の治療もしくは予防、またはAIDSの治療、予防もしくはその発症の遅延を必要とする被験体における、HIV逆転写酵素を阻害するため、HIVによる感染症の治療もしくは予防のための、または、AIDSを治療し、予防し、もしくは、その発症を遅延するための医薬の調製に使用するための、請求項20?27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
前記医薬が、アバカビル、アバカビル+ラミブジン、アバカビル+ラミブジン+ジドブジン、アンプレナビル、アタザナビル、AZT、カプラビリン、ダルナビル、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、デラビルジン、ドルテグラビル、ドラビリン、エファビレンツ、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビルDF、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、エルテグラビル、エムトリシタビン、エムトリシタビン+テノホビルDF、エミビリン、エンフビルチド、エトラビリン、ホスアンプレナビルカルシウム、インジナビル、ラミブジン、ラミブジン+ジドブジン、ロピナビル、ロピナビル+リトナビル、マラビロク、ネルフィナビル、ネビラピン、PPL-100、ラルテグラビル、リルピビリン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル フマル酸ジソプロキシル、フマル酸テノホビルアラフェナミド、チプラナビルまたはビクリビロックから選択される一つ以上の抗HIV剤をさらに含む、請求項39に記載の使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-03-29 
結審通知日 2018-04-02 
審決日 2018-04-13 
出願番号 特願2016-559266(P2016-559266)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C07H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 光介伊藤 佑一  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 瀬下 浩一
齊藤 真由美
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6182680号(P6182680)
発明の名称 HIV逆転写酵素阻害剤としての4’置換ヌクレオシド誘導体  
代理人 安藤 健司  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 城山 康文  
代理人 安藤 健司  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 城山 康文  
代理人 金山 賢教  

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