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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1340481
審判番号 不服2017-10657  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-18 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2015-176473「装着ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月21日出願公開、特開2016- 10720、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年8月4日に出願した特願2008-201152号の一部を平成26年3月12日に特願2014-48824号として出願し、さらにその一部を平成27年9月8日に特願2015-176473号として出願されたものであって、平成28年11月8日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月13日付けで手続補正がされ、同年4月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月13日に審判請求人から上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同日出願された下記の出願に係る発明と同一と認められ、かつ、下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願請求項1-3に係る発明は、同日出願された下記の出願の請求項1-3に係る発明と、それぞれ実質同一である。

引用文献等一覧
1.特願2014-48824号(特許第6027994号公報)


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1の「前記第1筐体に装着された前記第2筐体を複数箇所で固定する位置決め手段」を「前記第1筐体に装着された前記第2筐体を複数箇所の何れかの位置で固定する位置決め手段」とする補正は、「位置決め手段」の構造を具体的に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記の補正事項は、願書に最初に添付された明細書の段落【0023】-【0036】、及び図3に開示された事項の範囲において補正をするもので、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年7月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電子機器に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニットであって、
第1筐体と、
前記差し込み口に挿入される長さが可変となるように前記第1筐体に装着され、内部に前記コネクタと接続される端子が固定され、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される第2筐体と、
前記第1筐体に装着された前記第2筐体を複数箇所の何れかの位置で固定する位置決め手段と、
前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材とを具備し、
前記第2筐体は、前記差し込み口に挿入された場合に、前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように長さが変更され、前記位置決め手段により何れかの位置で固定されることを特徴とする装着ユニット。
【請求項2】
前記第2筐体は、前記第1筐体に挿入されることで、前記差し込み口に挿入される長さを可変にすることを特徴とする請求項1記載の装着ユニット。
【請求項3】
前記操作部材は、前記第1筐体の上部に設けられ、
前記第1筐体の内部には、前記操作部材の操作によって駆動される機構部が収納されることを特徴とする請求項1記載の装着ユニット。」


第5 同日出願について
本願と同一出願人による同日の出願とみなされる特願2014-48824号(特許第6027994号公報)の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「同日出願発明1」-「同日出願発明3」という。)は、その掲載公報の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子機器の筐体内に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニットであって、
第1筐体と、
前記第1筐体に装着された、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入される第2筐体と、
前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材とを具備し、
前記差し込み口に前記第2筐体が挿入された場合に、前記第2筐体の先端部に収納された端子が前記コネクタと接続されると共に、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に挿入されない前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように、前記第1筐体の端部から前記第2筐体の先端部までの長さを可変にすることを特徴とする装着ユニット。
【請求項2】
前記第2筐体を、前記差し込み口に挿入される長さが可変となるように前記第1筐体に装着することで、前記第1筐体の端部から前記第2筐体の先端部までの長さを可変にすることを特徴とする請求項1記載の装着ユニット。
【請求項3】
前記操作部材は、前記第1筐体の上部に設けられたつまみであって、
前記第1筐体の内部には、前記つまみの操作によって駆動される機構部が収納されており、
前記第2筐体は、前記第1筐体に対して前記機構部が収納された位置の下方に挿入されることを特徴とする請求項1記載の装着ユニット。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について

(1)同日出願発明1を先願とし、本願発明1を後願と仮定したとき

ア 対比
本願発明1と同日出願発明1とを対比する。
後者における「電子機器の筐体内に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニット」について、「電子機器の筐体」は電子機器の一部を構成するものであり、コネクタが「電子機器の筐体内に設けられ」ていることは、コネクタが電子機器に設けられているといえるから、前者と同様に「電子機器に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニット」といえる。

また、後者の「第1筐体」及び「前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材」は、前者の「第1筐体」及び「前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材」に相当する。

また、後者の「第2筐体」は、前者の「第2筐体」に相当する。

そして、後者の「第2筐体」は、「前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入され」、「前記差し込み口に前記第2筐体が挿入された場合に」、「前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に挿入されない前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように、前記第1筐体の端部から前記第2筐体の先端部までの長さを可変にする」ものであるから、前者と同様に、「前記差し込み口に挿入される長さが可変となるように前記第1筐体に装着され」、「前記差し込み口に挿入された場合に、前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように長さが変更され」ているといえる。

また、後者の「第2筐体」について、前記差し込み口に前記第2筐体が挿入された場合に、「前記第2筐体の先端部に収納された端子が前記コネクタと接続される」ものとなっているが、第2筐体の先端部は第2筐体の一部を構成するものであり、端子が第2筐体の先端部に収納されていることは、端子が第2筐体の内部に固定されているといえるから、前者の「第2筐体」と同様に、「内部に前記コネクタと接続される端子が固定され、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される」ものであるといえる。

したがって、両者の間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「電子機器に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニットであって、
第1筐体と、
前記差し込み口に挿入される長さが可変となるように前記第1筐体に装着され、内部に前記コネクタと接続される端子が固定され、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される第2筐体と、
前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材とを具備し、
前記第2筐体は、前記差し込み口に挿入された場合に、前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように長さが変更される装着ユニット。」

(相違点)
本願発明1は、「前記第1筐体に装着された前記第2筐体を複数箇所の何れかの位置で固定する位置決め手段」を有し、前記第2筐体が「前記位置決め手段により何れかの位置で固定される」のに対し、同日出願発明1では、その点が特定されていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
一般に、装着ユニットにの技術分野において、差し込み口からコネクタまでの奥行きが異なる複数の電子機器の何れに対しても、見栄え良く、また操作がし易いように装着することが可能な装着ユニットとするために、「第1筐体に装着された第2筐体を複数箇所の何れかの位置で固定する位置決め手段」を有し、「前記第2筐体」は、「前記位置決め手段により何れかの位置で固定される」ようにしたものは、本願出願前において周知技術であるといえない。
したがって、本願発明1と同日出願発明1とは、実質同一ではない。


(2)本願発明1を先願とし、同日出願発明1を後願と仮定したとき

ア 対比
同日出願発明1と本願発明1とを対比する。
後者における「電子機器に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニット」について、後者の装着ユニットは、電子機器の差し込み口に差し込まれてコネクタに装着されるといえるから、前者と同様に「電子機器の筐体内に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニット」といえる。

また、後者における「第1筐体」及び「前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材」は、前者の「第1筐体」及び「前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材」に相当する。

また、後者の「第2筐体」は、前者の「第2筐体」に相当する。

そして、後者の「第2筐体」は、「前記差し込み口に挿入される長さが可変となるように」 前記第1筐体に装着され、「前記差し込み口に挿入された場合に、前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように長さが変更され」るものであるから、前者と同様に、「前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入され」、「前記差し込み口に前記第2筐体が挿入された場合に」、「前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に挿入されない前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように、前記第1筐体の端部から前記第2筐体の先端部までの長さを可変にする」ものといえる。

また、後者の、「内部に前記コネクタと接続される端子が固定され、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される第2筐体」について、端子が第2筐体の内部に固定されていることは、端子が第2筐体に収納されているといえ、更に、「コネクタと接続される端子」及び「前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される」点から、端子がコネクタと接続されるといえる。
してみると、後者の、第2筐体の「内部に前記コネクタと接続される端子が固定され、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入された状態で前記コネクタと前記端子とが接続される」点と、前者の、「前記第2筐体の先端部に収納された端子が前記コネクタと接続される」点とは、「前記第2筐体に収納された端子が前記コネクタと接続される」との概念で共通する。

したがって、両者の間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「電子機器の筐体内に設けられたコネクタに差し込み口を通じて装着される装着ユニットであって、
第1筐体と、
前記第1筐体に装着された、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に全体が挿入される第2筐体と、
前記第2筐体が前記差し込み口に挿入された状態にある時に、前記電子機器の筐体外部でプレイヤにより操作可能な、前記第1筐体に設けられた操作部材とを具備し、
前記差し込み口に前記第2筐体が挿入された場合に、前記第2筐体に収納された端子が前記コネクタと接続されると共に、前記差し込み口を通じて前記電子機器の筐体内に挿入されない前記第1筐体の筐体面と前記電子機器の筐体面とが密着されるように、前記第1筐体の端部から前記第2筐体の先端部までの長さを可変にする装着ユニット。」

(相違点)
同日出願発明1は、端子が収納される位置が、第2筐体の「先端部」と特定されているのに対し、本願発明1では、端子が収納される位置が、第2筐体の「内部」にすぎない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
一般に、電子機器のコネクタと接続する端子を、電子機器に挿入される筐体の先端部に設けたものは、例えば、ゲームカートリッジ等にあるように、本願出願前において常套手段であり、本願発明1において、コネクタと接続される端子の収納位置を、第2筐体の先端部とすることは、単に常套手段を適用したにすぎず、かつ、新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差であるから、同日出願発明1と本願発明1とは、実質同一である。


(3)小括
上記(2)のとおり、本願発明1を先願とし、同日出願発明1を後願と仮定したとき、両者は実質同一であるが、上記(1)のとおり、同日出願発明1を先願とし、本願発明1を後願と仮定したときは、両者は実質同一とはいえないから、結局、両者は実質同一ではない。


2.本願発明2-3について
本願発明2-3は、それぞれ、本願発明1の構成を全て引用するものであり、他方、同日出願発明2-3は、それぞれ、同日出願発明1の構成を全て引用するものであり、本願発明1と同日出願発明1とが実質同一ではないのと同様の理由により、本願発明2-3と同日出願発明2-3とは、実質同一ではない。


第7 原査定について
上記「第2」にあるように、原査定の概要は、本願発明1-3と同日出願発明1-3とはそれぞれ実質同一であるというものであるが、上記「第6」のとおりであるから、本願発明1-3と同日出願発明1-3とは実質同一ではない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-22 
出願番号 特願2015-176473(P2015-176473)
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 荒井 隆一
吉村 尚
発明の名称 装着ユニット  
代理人 鵜飼 健  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 飯野 茂  

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