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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1340508
審判番号 不服2016-19144  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-21 
確定日 2018-05-16 
事件の表示 特願2015- 21061「アクティブカニューレシステム、アクティブカニューレ構造に対する方法及びキット」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日出願公開、特開2015-110011〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)8月15日(パリ条約による優先権主張 2006年9月14日 米国、2007年3月2日 米国)を国際出願日として出願した特願2009-527931号の一部を、平成27年2月5日に新たに外国語書面出願したものであって、平成28年1月28日付けで拒絶理由が通知され、同年3月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月29日付けで拒絶査定されたところ、同年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年12月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、請求項1及び16の記載が、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である)。

本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
アクティブカニューレシステムであって:
一式のアークを介して解剖学的領域に関連する目標局在に到達する経路を生成するよう協働的に構成及び寸法決めされる、複数の同心テレスコーピングチューブ、
を有し、
各アークは、前記解剖学的領域に関連付けられるポイントと目標局在との間において決定され、
前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される、
システム。」

本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
アクティブカニューレシステムであって:
一式のアークを介して予め撮像された解剖学的領域の入口点から目標局在を含む三次元画像から前記解剖学的領域に関連する前記目標局在に到達する経路を生成するよう協働的に構成及び寸法決めされる、複数の同心テレスコーピングチューブ、
を有し、
前記一式のアークの各アークは、前記解剖学的領域に関連付けられるポイントと前記目標局在との間において決定され、
前記経路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標局在の場所が選択される、
システム。」

本件補正前の請求項16
「 アクティブカニューレ構造に対する方法であって:
(a)画像を読み込む段階と;
(b)通路を形成するよう、前記画像内における目標点と基点との間において一連の連結経路形状を生成する段階と;
(c)前記生成された通路を介して解剖学的領域に関連する目標局在に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階と、
を有し、
前記通路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記通路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される、
方法。」

本件補正後の請求項16
「 【請求項16】
アクティブカニューレ構造に対する方法であって:
(a)解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像を読み込む段階と;
(b)通路を形成するよう、前記画像内における前記目標点と前記基点との間において一連の連結経路形状を生成する段階と;
(c)前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階と、
を有し、
前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される、
方法。」

2 補正の適否
(1)請求項1に係る補正について
上記請求項1に係る補正は、
ア 補正前の請求項1の「解剖学的領域に関連する目標局在に到達する経路を生成するよう協働的に構成及び寸法決めされる」ことを、「予め撮像された解剖学的領域の入口点から目標局在を含む三次元画像から」行うとする補正、
イ 補正前の「各アーク」を、「前記一式のアークの各アーク」とする補正、
ウ 補正前の「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」を、「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標局在の場所が選択される」とする補正、
を含んでいる。
これらうち、上記ウは、「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標局在の場所が選択される」と補正しているが、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲及び図面において、「スタートポイント」に関する記載は、請求項2に「スタートポイントは、相対自由空間がより小さい場所に基づいて選択される」と記載されているのみであり、「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標局在の場所が選択される」点は、何ら記載されておらず、示唆もされていないから、本件補正事項は、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的に記載された事項とはいえず、また、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項ともいえない。
なお、請求人は、これらの補正は、いずれも明細書の段落【0010】、【0011】、【0014】、【0023】、【0063】、【0064】、図7等の記載に基づくものと主張しているが、これらの記載にも「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標局在の場所が選択される」点が記載されていないことは明らかである。

よって、上記ウに関する本件補正は、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内で補正されたものではないから(新規事項を追加するものであるから)、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)請求項16に係る補正について
請求項16に係る補正は、
ア (a)の「画像」を、「解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像」とする補正、
イ (c)の「前記生成された通路を介して解剖学的領域に関連する目標局在に到達するよう」を、「前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう」とする補正、
ウ (c)の「前記通路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記通路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」を、「前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される」とする補正、
を含んでいる。
これらのうち、上記ウは、「前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される」と補正しているが、「スタートポイント」に関しては、(1)で検討したとおり本願の外国語書面の翻訳文の請求の範囲の請求項2に記載されているのみであり、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲及び図面には、何ら記載されておらず、示唆もされていないから、(1)と同様に、上記ウに関する本件補正は、本願の外国語書面の翻訳文の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内で補正されたものではないから(新規事項を追加するものであるから)、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)独立特許要件について
(1)及び(2)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に、違反がないものとして、さらに検討を進める。
請求項16についての補正は、アに関しては、読み込む「画像」を、「解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像」に限定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イに関しては、本願発明の「テレスコーピングチューブ」が、「前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう」構成及び寸法決めされると「テレスコーピングチューブ」の構成を限定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
ウに関しては、「前記通路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記通路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所」を「前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所」と限定していると解釈することもできるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そうすると、請求項16に係る補正は、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項16に記載された発明(以下、「本件補正発明16」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(4)本件補正発明
本件補正発明16は,上記「1 補正の内容」において,本件補正後の請求項16として引用した,次の記載内容によって特定されるものである。

「 【請求項16】
アクティブカニューレ構造に対する方法であって:
(a)解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像を読み込む段階と;
(b)通路を形成するよう、前記画像内における前記目標点と前記基点との間において一連の連結経路形状を生成する段階と;
(c)前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階と、
を有し、
前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される、
方法。」

(5)引用文献に記載の事項
ア 先願文献に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日(出願遡及日:2006年(平成18年)9月14日)前の他の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2008-541319号(特表2009-515657号公報参照)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という)には、以下の記載がある。

(先願a)「【0029】
図6は、本発明に連関する能動的カニューレを制御するための例示的プロセス600を示す。プロセス600の全部又は一部は、メモリ152上に記憶されホストコンピュータ150及び/又は制御コンピュータ145及び/又は画像プロセッサ165上で実行されるソフトウェアによって行うことができる。プロセス600は、2つのサブプロセス、即ち経路計画(ステップ605?625)と経路計画の実行(ステップ630?655)に分割することができる。
ステップ605において、医療用画像化システム160は患者の体170の内部の画像を取得する。医療用画像化システム160は、進入点175及び手術部位180を含む視野を有するように構成することができる。その画像化態様(例えば、MRI、超音波等)により、医療用画像化システム160は、画像の各画素又は3D画素が画像座標フレームに登録されている患者の体の三次元画像を取得することができる。画像プロセッサ165は、画像、並びに画像登録情報を、画像化ネットワーク接続146bを介してホストコンピュータ150に供給することができる。
【0030】
ステップ610では、医師が進入点175から手術部位180までの所望の経路を決定する。その際、医師は、能動的カニューレ102が通る経路を、経路の周りの誤境界と共に特定することができる。手術部位180の位置及び介入する組織又は器官の存在に応じて、経路は種々の誤境界を有する複雑な経路となり得る。
医師は、経路及びその誤境界を画定するためのユーザインタフェース155を用いることができる。その際、医師は、ステップ605において取得された登録画像内部の点にタグをつけるためにカーソルを用いることができる。ソフトウェアは、登録画像中のこれら選択された点の位置を特定し、これらの位置をメモリ152に記憶する。
【0031】
ステップ615では、ソフトウェアは、ステップ610において選択された経路を達成する能動的カニューレ102の最終構成を計算する。その際、ソフトウェアは、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120の各々の平行移動位置及び回転方向を決定することができ、これによって能動的カニューレ102が経路に適合される。
経路に適合した最終構成を計算するため、ソフトウェアは、重なり合い移行点T1?T5によって画定される一組の領域に能動的カニューレ102を分割する。その際、ソフトウェアは、外部可撓性チューブ110及び中間可撓性チューブ115の各々について、平行移動位置と回転方向位置との最初の組を選択することができる。重なり合い移行点T1?T5の位置は、3つの可撓性チューブの重なり合いに依存する。次いで、重なり合い移行点T1?T5により画定された各領域について、ソフトウェアが、次の関係式により、その領域における瞬時的平衡曲線(x及びy成分)を計算する。

ここで、nは可撓性チューブの数(本実施例ではn=3)であり、κiはその領域内でのi番目の可撓性チューブの瞬時的湾曲であり、Eiは当該i番目の可撓性チューブの材料の弾性係数(ヤング係数)であり、Iiはi番目の可撓性チューブの横断面慣性モーメントであり、θiは作動器の方向で最も近い重なり合い移行点Tにおけるi番目の可撓性チューブの角度方向であり、φは、組み合わされた可撓性チューブの個別の角度方向が既知である場合のこれら組み合わせの平衡角であり、φは当該領域の底部において決定される。言い換えれば、例えば、重なり合い移行点T3とT4によって画定された領域のφは、T3における平衡角に関係する。」

(先願b)「【0033】
ステップ615では更に、ソフトウェアにより、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のチューブ目録から複数の異なるチューブを選択することができる。この場合、複数の各種可撓性チューブが利用可能であり、それらの特性(直線区分の長さ、湾曲区分の長さ、湾曲区分の曲率半径、可撓性等)をメモリ152に記憶することができる。従って、ソフトウェアは、毎回異なるチューブを用いて上記のステップ610において蒸気計算を反復することができる。このようにして、ソフトウェアが2つのこと、即ち、第1に、医師によって決定された経路を能動的カニューレ102によって複製可能か、第2に、どのようなチューブの組合せがそのような経路を達成するかを決定することができる。更に、上記の関係は、3つの可撓性チューブに限られない。従って、ソフトウェアは、医師によって決定された経路を達成するために、使用する可撓性チューブの数を含め、チューブの種々の組み合わせを選択することができる。当業者であれば、4以上の可撓性チューブについて上記の関係式を実施する方法が分かるであろう。
ステップ620では、ソフトウェアは、ステップ615において計算された最終構成を徐々に達成でき、医師によって決定された経路及び誤境界以外に位置することのない能動的カニューレ102の複数の構成を計算する。その際、ソフトウェアは、一連の中間構成を計算し、各中間構成を達成する一組の直線平行移動及び回転を計算することができる。ソフトウェアは、計算された各中間構成を次に計算される中間構成の初期構成としながら、上記ステップ615において行われた計算とほぼ同様の計算を反復的に行うことができる。
【0034】
ステップ620では更に、各中間構成を連続的に達成するために、ソフトウェアは、外部駆動モジュール130、中間駆動モジュール135、及び内部駆動モジュール140の各々の、一連の回転モータ450への回転命令及び直線平行移動モータ435への直線平行移動命令を計算することができる。
ステップ625では、ソフトウェアは、ステップ615及びステップ620においてそれぞれ計算された能動的カニューレの最終及び中間構成を、医療用画像化システム160の座標フレームに登録する。その際、ソフトウェアは、ステップ605において取得された登録画像に、ステップ610において医師が経路を指定したものを取り出し、能動的カニューレ102の最終及び中間構成を登録することができる。この結果、1の中間構成につき1の曲線と最終構成の1の曲線とからなる一組の曲線が得られ、各組の湾曲は重なり合い移行点T1?T5の間の能動的カニューレ102の領域に対応する。ソフトウェアはこれを、能動的カニューレの起点(画像スペースに登録されている)から開始して、進入点175を通り、手術部位180で(又は中間構成における能動的カニューレ102のエンドエフェクタ125において)で終結することによって行うことができる。ソフトウェアはこれらの湾曲の組をメモリ152に格納する。」

(先願c)「図6



イ 先願文献に記載された発明
上記記載事項を総合すると、先願明細書には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「能動的カニューレを制御するためのプロセスであって、
ステップ605において、医療用画像化システム160は、進入点175及び手術部位180を含む視野を有するように構成する患者の体の三次元画像を取得し、
ステップ610では、進入点175から手術部位180までの所望の経路を決定し、
その際、ステップ605において取得された登録画像内部の点にタグをつけるためにカーソルを用いることができ、ソフトウェアは、登録画像中のこれら選択された点の位置を特定し、
ステップ615では、ソフトウェアは、ステップ610において選択された経路を達成する能動的カニューレ102の最終構成を計算し、
ステップ615では更に、ソフトウェアにより、外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120のチューブ目録から複数の異なるチューブを選択することができ、この場合、複数の各種可撓性チューブが利用可能であり、それらの特性(直線区分の長さ、湾曲区分の長さ、湾曲区分の曲率半径、可撓性等)をメモリ152に記憶することができ、このようにして、ソフトウェアが、どのようなチューブの組合せがそのような経路を達成するかを決定し、
ステップ620では、ソフトウェアは、ステップ615において計算された最終構成を徐々に達成でき、決定された経路及び誤境界以外に位置することのない能動的カニューレ102の複数の構成を計算し、その際、ソフトウェアは、一連の中間構成を計算し、
ステップ625では、ソフトウェアは、ステップ615及びステップ620においてそれぞれ計算された能動的カニューレの最終及び中間構成を、医療用画像化システム160の座標フレームに登録し、
この結果、1の中間構成につき1の曲線と最終構成の1の曲線とからなる一組の曲線が得られ、
これらの湾曲の組をメモリ152に格納する
プロセス。」

(3)対比・判断
本件補正発明16と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「能動的カニューレ」は、本件補正発明16の「アクティブカニューレ」に相当し、引用発明の「能動的カニューレを制御するためのプロセス」は、本件補正発明16の「アクティブカニューレ構造に対する方法」に相当する。

イ 引用発明の「進入点175」及び「手術部位180」は、それぞれ本件補正発明16の「基点」及び「目標点」に相当する。そして、「進入点175」及び「手術部位180」は、ともに解剖学的領域にあることは明らかであるから、引用発明の「進入点175」及び「手術部位180」と、本件補正発明16の「基点」及び「目標点」とは、「解剖学的領域」にある点で共通している。そして、引用発明の「ステップ605」では、「医療用画像化システム160は、進入点175及び手術部位180を含む視野を有するように構成する患者の体の三次元画像を取得し」ているから、引用発明の「ステップ605」は、本件補正発明16の「解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像を読み込む段階」に相当する。

ウ 引用発明の「ステップ610」では、「ステップ605において取得された登録画像内部の点にタグをつけるためにカーソルを用いることができ、ソフトウェアは、登録画像中のこれら選択された点の位置を特定し」、「進入点175から手術部位180までの所望の経路を決定し」ているから、引用発明の「プロセス」と、本件補正発明16の「方法」とは、「通路を形成するよう、前記画像内における前記目標点と前記基点との間において一連の連結経路形状を生成する」点で共通している。

エ 引用発明の「湾曲」及び「湾曲の組」は、本件補正発明16の「アーク」及び「一式のアーク」に相当する。そして、引用発明の「ソフトウェアは、ステップ610において選択された経路を達成する」よう計算しており、その計算は、「ステップ615」では、「外部可撓性チューブ110、中間可撓性チューブ115、及び内部可撓性チューブ120」の特性(直線区分の長さ、湾曲区分の長さ、湾曲区分の曲率半径、可撓性等)を基に、これらのチューブ目録から複数の異なるチューブを選択することにより、前記経路を達成するチューブの組み合わせを決定することにより「能動的カニューレ102の最終構成を計算し」、「ステップ620では、ソフトウェアは、ステップ615において計算された最終構成を徐々に達成でき、決定された経路及び誤境界以外に位置することのない能動的カニューレ102の複数の構成を計算」し、「ステップ625」では、「ソフトウェア」は、「ステップ615」及び「ステップ620」においてそれぞれ計算された能動的カニューレの最終及び中間構成を、「医療用画像化システム160」の座標フレームに登録し、この結果、1の中間構成につき1の曲線と最終構成の1の曲線とからなる一組の曲線が得られ、これらの「湾曲の組」を「メモリ152」に格納しているから、引用発明の「プロセス」と、本件補正発明16の「方法」とは、「前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階」を有している点で共通する。

オ 引用発明は、「ステップ615」で、「ステップ610」において選択された経路を達成する「能動的カニューレ102」の「最終構成」を、はじめに計算し、次に「ステップ620」で「一連の中間構成」を計算しているから、引用発明の「プロセス」と、本件補正発明の「方法」とは、「前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される」点で共通している。

カ したがって、本件補正発明16と引用発明とは、
「アクティブカニューレ構造に対する方法であって:
(a)解剖学的領域の基点から目標点を含む三次元画像を読み込む段階と;
(b)通路を形成するよう、前記画像内における前記目標点と前記基点との間において一連の連結経路形状を生成する段階と;
(c)前記生成された通路に基づいて、一式のアークを介して前記解剖学的領域に関連する前記目標点に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階と、
を有し、
前記通路の生成を開始するためのスタートポイントとして、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の前記目標点の場所が選択される、
方法」で一致し、相違点はない。

キ 以上のとおり、本件補正発明16は、引用発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が先願明細書等に記載された発明をした者と同一でなく、また本件出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、請求項1及び16に係る本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、請求項16に係る本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年12月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし22に係る発明は、平成28年3月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1及び16に係る発明(以下「本願発明1及び16」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
アクティブカニューレシステムであって:
一式のアークを介して解剖学的領域に関連する目標局在に到達する経路を生成するよう協働的に構成及び寸法決めされる、複数の同心テレスコーピングチューブ、
を有し、
各アークは、前記解剖学的領域に関連付けられるポイントと目標局在との間において決定され、
前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される、
システム。」

「 【請求項16】
アクティブカニューレ構造に対する方法であって:
(a)画像を読み込む段階と;
(b)通路を形成するよう、前記画像内における目標点と基点との間において一連の連結経路形状を生成する段階と;
(c)前記生成された通路を介して解剖学的領域に関連する目標局在に到達するよう、協働的に構成及び寸法決めされる複数の同心テレスコーピングチューブを生成する段階と、
を有し、
前記通路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記通路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される、
方法。」

2 原査定の概要
原査定(平成28年8月29日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

●理由1(特許法第29条の2)について
・請求項 1-22
・引用文献1
出願人は意見書において、先願発明には、本願発明に係る発明の「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」点を備えていないと主張している。
しかしながら、先願発明では、医師が進入点175から手術部位180までの所望の経路を決定しており、前記進入点175は医師が必要に応じて適宜変更・決定し得るものにすぎない。
そうすると、本願発明と先願発明は実質的に同一であると認められる。

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-22
・引用文献2,3
出願人は意見書において、引用文献2には、本願発明における「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」点が記載されていないと主張している。
しかしながら、引用例2記載の発明におけるテレスコピック式導入器のスタートポイントは、医師が必要に応じて適宜変更・決定し得るものである。
そして、引用例2記載の発明と引用例3記載の発明を組み合わせて本願発明のように構成することは、容易に想到し得たものと認められる。

●理由3(特許法第36条第6項第2号)について
出願人は意見書において、請求項の記載を明確となるよう補正した旨主張しているが、請求項1-22に記載されている「経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所」が依然としてどこを指すのか不明で、その結果発明の構成が不明確である。

<引用文献等一覧>
引用文献1.特願2008-541319号
(特表2009-515657号公報参照)
(優先日:2005年11月15日)
引用文献2.特表2005-533554号公報
引用文献3.特表平10-503105号公報

3 当審の判断
原査定の理由3について検討する。

請求項1には、「前記経路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記経路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記経路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」と記載され、請求項16には、「前記通路の生成を開始するためのスタートポイントは、前記通路に沿った前記解剖学的領域内の空間である相対自由空間が前記通路に沿った他のポイントにおける相対自由空間より小さい場所に基づいて選択される」と記載されている。これらの記載のうち「相対自由空間より小さい場所」が、どの場所を特定しているのか、発明の詳細な説明や図面を参酌しても理解することができない。また、当該技術分野において自明の事項であるとも認められない。よって、本願発明1及び16は明確であるとはいえない。そうすると、本願発明1及び16は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない。また、本願発明1及び16を直接または間接的に引用している請求項2?15及び17?22に係る発明も同様に特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1?22に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないから拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-08 
結審通知日 2017-12-12 
審決日 2017-12-25 
出願番号 特願2015-21061(P2015-21061)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 537- Z (A61B)
P 1 8・ 55- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 福島 浩司
▲高▼見 重雄
発明の名称 アクティブカニューレシステム、アクティブカニューレ構造に対する方法及びキット  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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