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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21Q
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F21Q
審判 全部無効 2項進歩性  F21Q
管理番号 1340525
審判番号 無効2015-800138  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-06-19 
確定日 2018-06-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第3875247号発明「発光装置、面光源装置、表示装置及び光束制御部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.手続の経緯の概要
本件の特許第3875247号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成16年 9月27日 特願2004-278888号出願
平成18年11月 2日 特許第3875247号の設定登録
平成27年 6月19日 審判請求書提出(請求人)
平成27年 7月28日 上申書提出(翻訳)(請求人)
平成27年10月 5日 審判事件答弁書提出(被請求人)
平成28年 1月25日付け 審理事項通知
平成28年 2月24日 口頭審理陳述要領書(1)提出(請求人)
平成28年 2月24日 口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人)
平成28年 2月24日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成28年 3月 4日 手続補正書(抄訳)(請求人)
平成28年 3月 9日 第1回口頭審理
平成28年 4月14日 上申書提出(被請求人)

第2 本件特許発明
特許第3875247号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明11」という。)は、本件の特許明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載されたとおりのものであるところ、分説記号を付したものを示すと次のとおりのものである。
「 【請求項1】
(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、
(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっており、
(1Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、
前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(1Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(1I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(1J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている、
(1L) ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
(2A) 前記光入射面は、前記発光素子の光出射面に密接している
(2B) ことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
(3A) 前記光入射面は、前記発光素子の光出射面に隙間をもって係合している
(3B)ことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
(4A) 前記請求項1乃至3のいずれかに記載された複数の発光装置と、
(4B) これら複数の発光装置からの光を拡散・透過する光拡散部材と、を備え、
(4C) 前記複数の発光装置が互いに等間隔で配置され、
(4D) これら複数の発光装置のうちの隣り合う発光装置からの出射光が混ざり合う位置に前記光拡散部材が配置された、
(4E) ことを特徴とする面光源装置。
【請求項5】
(5A) 前記請求項4に記載の面光源装置と、
(5B) この面光源装置からの光を照射する被照明部材と、
(5C) を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
(6A) 発光素子からの光を封止部材と光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、
(6B) 前記光束制御部材は、前記封止部材に封止された前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(6C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(6D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(6E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(6F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(6G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっており、
(6Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、
前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(6Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(6I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(6J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(6K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている、
(6L) ことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
(7A) 前記光入射面は、前記封止部材に封止された前記発光素子の光出射面に密接している
(7B)ことを特徴とする請求項6の発光装置。
【請求項8】
(8A) 前記光入射面は、前記封止部材に封止された前記発光素子の光出射面に隙間をもって係合している
(8B)ことを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項9】
(9A) 前記請求項6乃至8のいずれかに記載された複数の発光装置と、(9B)これら複数の発光装置からの光を拡散・透過する光拡散部材と、を備え
(9C) 前記複数の発光装置が互いに等間隔で配置され、
(9D)これら複数の発光装置のうちの隣り合う発光装置からの出射光が混ざり合う位置に前記光拡散部材が配置された、
(9E)ことを特徴とする面光源装置。
【請求項10】
(10A) 前記請求項9に記載の面光源装置と、
(10B)この面光源装置からの光を照射する被照明部材と、
(10C)を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
(11A) 発光素子または封止部材に封止された発光素子からの光が入射する光入射面と、
(11B) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(11C) 前記発光素子と共に発光装置を構成するようになっており、
(11D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成された光束制御部材であって、
(11E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(11F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(11G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっており、
(11Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、 前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(11Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(11I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(11J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(11K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている、
(11L) ことを特徴とする光束制御部材。」

[注釈]
上記の記号「1A?1L」、「2A?2B」、「3A?3B」、「4A?4E」、「5A?5C」、「6A?6L」、「7A?7B」、「8A?8B」、「9A?9E」、「10A?10C」及び「11A?11L」は、当審が便宜上付した分説記号である。基本的に請求人が使用するものを採用するものであるが、請求人が使用する「1H」、「6H」及び「11H」については、それぞれ、前提条件と第1の射出面に係る構成とにさらに分説することとし、「1Ha、1Hb」、「6Ha、6Hb」及び「11Ha、11Hb」とした。


第3 請求人の主張と証拠方法
1.請求人が主張する請求の趣旨及び理由
請求人は、「特許第3875247号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その無効の理由の概要は、以下のとおりである。

(1)無効理由1(甲第1号証を主引例とする新規性欠如)
本件特許発明1、2、6及び11は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(甲第2号証を主引例とする新規性欠如)
本件特許発明1及び3は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3(甲第3号証を主引例とする新規性欠如)
本件特許発明1及び3は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許発明1?11は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第1乃至11号証及び甲第14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許発明1?11は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1乃至11号証及び甲第14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(6)無効理由6(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許発明1?11は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第1乃至11号証及び甲第14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(7)無効理由7(明確性要件違反)
本件特許発明1乃至11は明確でないため、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、これらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2.無効理由に係る主張の要点
(1)甲第1号証を主引例とする新規性欠如(無効理由1)について
ア.審判請求書第102頁第6?14行
「甲第1号証の第3図に示されたレンズ部を、広指向性レンズとして使用するためには、光が集まりやすい中央部分では、光を拡散させることが必要である(甲第12号証)。
さらに、光の明るさの均一性を確保するためには、外周部における屈折が大きくなることを防がなければならないから、外周部では光の屈折角を中央部ほどには大きくしない形状とすることが必要である(甲第12号証)。
したがって、甲第1号証の上記記載を見た当業者は、外周部になるにつれて、出射角に対する入射角の比が小さくなるレンズ部を容易に想到する(甲第12号証)。」(以下、「主張1-1-1」という。)

イ.審判請求書第102頁下から第4行?第103頁第10行
「甲第1号証のレンズ部の入射面への光の入射角度(第3図に記載された数値、例えば、『10°』、『20°』)は、レンズ部に入射してレンズ部の出射面に到達した光と、その到達点を通り発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度であるから、本件特許発明1のθ1に対応する。
甲第1号証のレンズ部の出射面からの光の出射角度(第3図の括弧内に記載された数値、例えば、『19°』、『37°』)は、レンズ部の出射面の到達点から出射する光の出射角であるから、本件特許発明1のθ5に対応する。
同図によれば、θ1が10度のときθ5/θ1は1.9であり、θ1が20度のときθ5/θ1は1.85であり、θ1が60度のときθ5/θ1は約1.18であり、θ1が70度のときθ5/θ1は、約1.01である。
したがって、甲第1号証の第3図に記載のレンズの形状は、外周部になるにつれて、出射角に対する入射角の比が小さくなるレンズである(甲第12号証)。
以上より、甲第1号証の第3図に示されたレンズは、θ1の増加とともに、θ5/θ1が減少するレンズの形状である(甲第12号証)。」(以下、「主張1-1-2」という。)

ウ.審判請求書第103頁第11行?第104頁第1行
「また、本件特許の出願審査過程において被請求人が提出した意見書である甲第13号証には『引用例1の第4図に示す樹脂体2(本願発明1、6、11の『光束制御部材(5)』対応するものと思料される)には、審査官殿のご指摘のとおり、本願発明1、6、11の特定事項c-4における『θ5/θ1>1の関係を満たし、θ1の増加にしたがってθ5/θ1の値が小さくなる領域』が開示されていると認められます』(第4頁下6行?下3行、ただし下線を引いた。)との記載がある。
ここでいう『引用例1』は甲第14号証である。
よって、被請求人は、甲第14号証の第4図に示す樹脂体2には、構成要件1-Kが記載されていることを認めている。
・・・・
甲第1号証のレンズ部は甲第14号証の第4図に示す樹脂体2と同様の形状であるから、被請求人は甲第1号証のレンズ部に構成要件1-Kが記載されていることを認めているに等しい。」(以下、「主張1-1-3」という。)

エ.口頭審理陳述要領書(1)第81頁第5?21行
「半値角が20度のLEDを採用することは当業者が適宜なし得る事項であり、半値角が20度であれば5度(光軸近傍)から20度までの範囲で構成要件1J、1Kを満たす公知文献が存在すれば、本件発明1には新規性がないのである。
・・・
しかし、上記第1.1.(2)に記載のとおり、本件発明1で規定されている、(基準光軸近傍を除き)『前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲』は、光源として使用する発光素子によって決定されるものであるから、たとえば、半値角が20度のLEDを使用する場合、5度(光軸近傍)から20度(半値角)まで構成要件1J、1Kを満たす形状になっている、というのが本件発明1(の光束制御部材)である。」(以下、「主張1-1-4」という。)

(2)甲第1号証を主引例とする進歩性欠如(無効理由4)について
ア.審判請求書第135頁第3?8行
「仮に、甲第1号証の第3図で30度等の角度が全反射となっていることが相違点となるとしても、全反射条件を考慮してチップ位置を変更したり、レンズの形状を変更したりすることは、当業者にとって設計事項である。
また、外周部の光は、光軸周辺の光に比べて光が弱いから、光軸周辺の光は屈折比を大きくし、外周部の光は、屈折比を小さくするということは技術常識である(甲第12号証)。」(以下、「主張1-2-1」という。)

イ.口頭審理陳述要領書(1)第83頁第16?22行
「さらにいえば、甲第2号証には、・・・光軸近傍を除いた『最大強度の半分の値となる光が出射される方向』まで構成要件1Hb乃至1Kに係る構成を有するレンズ体が開示されており、かかる甲第2号証の記載に接した当業者にとって、甲1発明のレンズ部を、光軸近傍を除いた「最大強度の半分の値となる光が出射される方向」まで構成要件1Hb乃至1Kに係る構成を備える形状に設計すること容易である。」(以下、「主張1-2-2」という。)

ウ.口頭審理陳述要領書(1)第84頁第11?24行
「出射光が0度?20度、60度?70度の角度範囲で全反射をしていないレンズにおいて、30度?50度の角度範囲の出射光を全反射させないよう想到することは当業者にとって容易な事項であり、その際、上記臨界角が42.5度以下であることを考慮してLEDの形状を選択し、あるいはレンズ部への入射角が臨界角以下となる位置にLEDチップ1を配置することは当業者が適宜なし得る事項ないし設計事項である 。
したがって、甲1発明において30度?50度の角度範囲で出射した光が全反射しないようにして光を均一化させるという設計変更が可能である。
・・・
光学設計の当業者であれば、本件出願当時において、光学シミュレーションソフト等を用いてLEDの形状及びLEDとレンズとの距離を適宜変更することで、LEDからレンズに入射する光束の角度や強度を設計可能である。」(以下、「主張1-2-3」という。)

(3)甲第2号証を主引例とする新規性欠如(無効理由2)について
ア.審判請求書第121頁第10?19行
「甲第2号証には、『本発明に係る照明装置によれば、照明板に照射する光源光の入射区域内において、中心部から外周部に向かつて漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置したから、照明板の中央部付近に集まる光は大きく屈折して、外周に分散され、また外周部に集める光は光線の屈折は小さく、光の分散が小さいので、照明板の各部に照射される光量の差が小さくなり、照明板全体の照度の均一化を図ることができる』(明細書第3頁左下5行?9行)とある。
したがって、甲第2号証の第4図に示されたレンズ体10は、θ1の増加にしたがって(外周部になるにつれて)、θ5(出射角)に対するθ1(入射角)の比が小さくなるレンズである(甲第12号証)。 」(以下、「主張2-1-1」という。)

イ.審判請求書第121頁第20行?第122頁第3行
「また、本件特許の出願審査過程において被請求人が提出した意見書である甲第13号証には『引用例1の第4図に示す樹脂体2(本願発明1、6、11の『光束制御部材(5)』対応するものと思料される)には、審査官殿のご指摘のとおり、本願発明1、6、11の特定事項c-4における『θ5/θ1>1の関係を満たし、θ1の増加にしたがってθ5/θ1の値が小さくなる領域』が開示されていると認められます』(第4頁下6行?下3行、ただし下線を引いた。)との記載がある。
ここでいう「引用例1」は甲第14号証である。
よって、被請求人は、甲第14号証の第4図に示す樹脂体2には、構成要件1-Kが記載されていることを認めている。
・・・
甲第2号証のレンズ体10は甲第14号証の第4図に示す樹脂体2と同様の形状であるから、被請求人は甲第2号証のレンズ体10に構成要件1-Kが記載されていることを認めているに等しい。」(以下、「主張2-1-2」という。)

ウ.口頭審理陳述要領書(1)第22頁下から第2行?第23頁第4行
「しかし、・・・甲2発明では、『光制御出射面』は、『レンズ中心から外周に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されてなる』ものであることから、甲2発明のレンズ体10は、9a9b間において、実質的に本件発明1の構成要件1Hb?1Kに係る構成を満たす形状であり、甲第2号証には、本件発明1の構成要件1Hb?1Kに係る構成が開示されている。」(以下、「主張2-1-3」という。)

エ.口頭審理陳述要領書(1)第23頁第18行?第24頁第5行
「上記のとおり、甲2発明における光源は点光源に限定されるものではなく、9a9b間が照射範囲になるLEDも使用可能である旨甲第2号証に記載されているから、甲2発明には、たとえば半値角30度のLED を採用可能である。
甲第2号証の9a9b間には30度が含まれ、甲第2号証において半値角30度のLEDを用いる場合、甲第2号証は5度から30度までという半値角範囲で、構成要件1Hb?1Kを満たすレンズを開示している。
したがって、甲第2号証には、所定のLEDを採用した場合に、該LEDの(光軸近傍を除いた)半値角まで構成要件1Hb?1Kを満たすレンズが開示されているから、上記被請求人の主張は誤りである。」(以下、「主張2-1-4」という。)

オ.口頭審理陳述要領書(1)第24頁第6行?第25頁第1行
「なお、甲第2号証3頁左下欄第5?第9行には、第2図を参照して説明される実施例と第4図を参照して説明される実施例とを受けて、『以上説明したように、本発明に係る照明装置によれば、照明板に照射する光源光の入射区域内において、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置した』と説明されているのであるから、第2図を参照して説明される実施例と第4図を参照して説明される実施例とはいずれも『中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体』の実施例である。
したがって、甲第2号証における『この実施例では照明板6の中心部B付近において、先の実施例の場合よりも光量が多くなるように修正されるために、例えば第3図において照明板6のBF´間における照度は先の実施例に比べて高くなる』(甲第2号証第3頁右上欄第12?第17行)という記載は、第4図を参照して説明される実施例の照明板に照射する光源光の入射区域内において、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置することを前提として、第2図を参照して説明される実施例と比較して、第4図を参照して説明される実施例の照明板6の中心部B付近の光量が多くなるということを意味するのであって、『凹状レンズ11部分においては、必ずしも、レンズ中心から外周に向かって漸次屈折率が小さくなるようには構成されていない』ということはない。」(以下、「主張2-1-5」という。)

(4)甲第2号証を主引例とする進歩性欠如(無効理由5)について
ア.審判請求書第140頁第3?6行
「仮に、甲第2号証には第4図のP点よりも下部の点について、中心部から外周部に向かうにつれて屈折率が小さくなっていく関係が明示的には記載されていないとして相違点になるとしても、甲第2号証の明細書3ページ左下9?12行を参照すれば実質的に開示されている(甲第12号証)。」(以下、「主張2-2-1」という。)

イ.審判請求書第140頁第7?9行
「また、外周部の光は、光軸周辺の光に比べて光が弱いから、光軸周辺の光は屈折比を大きくし、外周部の光は、屈折比を小さくするということは、設計事項である。」(以下、「主張2-2-2」という。)

(5)甲第3号証を主引例とする新規性欠如(無効理由3)について
ア.審判請求書第132頁第6?19行
「甲第3号証には、『この構成によると、光学発光装置の光軸方向の出射光が20%削減され、同時に、60度から120度にわたって出射光を分散させ、80度で出射光が最大となる』(カラム1、61?66行)とあり、レンズからの出射光の指向角を最大にすることを目的として、集まりやすい光軸方向の光を20%削減し、60度から120度にわたって光を分散することが記載されている。
甲第12号証によると、指向角が最大であるためには、光が集まりやすい中央部分では、光を拡散させることが必要となる。
また、甲第12号証によると、指向角が最大であるためには、外周部における屈折が大きくなることを防がなければならないので、外周部では光の屈折角を中央部ほどには大きくしない形状とすることが必要となる。
したがって、甲第3号証の図8等に示された凹レンズA及び凸レンズEは、外周部になるにつれて(θ1が大きくなるにつれて)、出射角(θ5)に対する入射角(θ1)の比は小さくなるレンズである(甲第12号証)。」(以下、「主張3-1-1」という。)

イ.審判請求書第132頁第20行?第133頁第3行
「なお、本件特許の出願審査過程において被請求人が提出した意見書である甲第13号証には『引用例1の第4図に示す樹脂体2(本願発明1、6、11の『光束制御部材(5)』対応するものと思料される)には、審査官殿のご指摘のとおり、本願発明1、6、11の特定事項c-4における『θ5/θ1>1の関係を満たし、θ1の増加にしたがってθ5/θ1の値が小さくなる領域』が開示されていると認められます』(第4頁下6行?下3行、ただし下線を引いた。)との記載がある。
ここでいう「引用例1」は甲第14号証である。
よって、被請求人は、甲第14号証の第4図に示す樹脂体2には、構成要件1-Kが記載されていることを認めている。
・・・
甲第3号証の凹レンズA及び凸レンズEは甲第14号証の第4図に示す樹脂体2と同様の形状であるから、被請求人は甲第3号証の凹レンズA及び凸レンズEに構成要件1-Kが記載されていることを認めているに等しい。」(以下、「主張3-1-2」という。)

ウ.口頭審理陳述要領書(1)第103頁第12?15行
「審判請求書第132頁第3行?第133頁第5行、甲第12号証鑑定事項3に記載のとおり、甲3発明は指向角が大きい(均一な)照明を目的としていること等から、甲3発明のレンズはθ5/θ1の値はθ1の増加にしたがって小さくなる形状である。」(以下、「主張3-1-3」という。)

エ.口頭審理陳述要領書(1)第105頁第10?15行
「しかし、・・・甲第3号証のFIG.3は照明特性の結果グラフであるところ、照明特性を表す曲線は少なくとも60度程度までなめらかとなっているから、甲3発明のレンズはθ1が大きくなるにつれて、θ5/θ1が徐々に小さくなるレンズである(甲第12号証鑑定事項3、審判請求書第132頁第3行?第133頁第5行)。」(以下、「主張3-1-4」という。)

オ.口頭審理陳述要領書(1)第106頁第11?14行
「半値角が34度の発光素子を採用することは当業者が適宜なし得る事項であり、半値角が34度であれば5度(光軸近傍)から34度までの範囲で構成要件1J、1Kを満たす公知文献が存在すれば、本件発明1には新規性がないのである。」(以下、「主張3-1-5」という。)

(6)甲第3号証を主引例とする進歩性欠如(無効理由6)について
ア.審判請求書第145頁第3?9行
「仮に、甲第3号証には凹レンズ部について、中心部から外周部に向かうにつれて屈折率が小さくなっていく関係が明示的には記載されていないとして相違点になるとしても、甲第3号証の明細書カラム1の39?41行を参照すれば実質的に開示されている(甲第12号証)。
また、外周部の光は、光軸周辺の光に比べて光が弱いから、光軸周辺の光は屈折比を大きくし、外周部の光は、屈折比を小さくするということは、設計事項である。」(以下、「主張3-2-1」という。)

(7)明確性要件違反(無効理由7)について
ア.審判請求書第150頁第2?3行
「構成要件1-Hの『出射光の強度が最大強度の半分の値となる光』は、LEDの形状等によって異なるため、不明確である。」
イ.審判請求書第150頁第4?5行
「構成要件1-H、1-I、1-K、の『徐々に』は、どの程度の変化率を指すのかが不明確である。」
ウ.審判請求書第150頁第6?9行
「構成要件1-Jの『基準光軸近傍の光』は、『θ5/θ1>1の関係』及び『θ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成される』の対象外になる光の範囲であるが、『近傍』がどの範囲を指すのか不明であるため、不明確である。」

3.請求人の提出した証拠方法
請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して以下の甲第1?15号証を提出し、口頭審理陳述要領書(1)に添付して以下の甲第16?29号証を提出している。
なお、抄訳ないし翻訳が提出されている甲号証については、甲第3、5、15号証は1?3の枝番を、甲第6、19、29号証は1?2の枝番を、それぞれ当審が付した(第1回口頭審理調書)。

甲第1号証 特開平2-306289号公報
甲第2号証 特開昭58-152219号公報
甲第3号証の1 米国特許第4907044号明細書
甲第3号証の2 甲第3号証の1の抄訳(審判請求書に添付)
甲第3号証の3 甲第3号証の1の翻訳(上申書に添付)
甲第4号証 実願昭59-147856号
(実開昭61-63712号)のマイクロフィルム
甲第5号証の1 米国特許第6007209号明細書
甲第5号証の2 甲第5号証の1の抄訳(審判請求書に添付)
甲第5号証の3 甲第5号証の1の翻訳(上申書に添付)
甲第6号証の1 米国特許出願公開
第2004/0079957号明細書
甲第6号証の2 甲第6号証の1の翻訳
甲第7号証 特開2004-241644号公報
甲第8号証 特開2004-221042号公報
甲第9号証 特開2001-250986号公報
甲第10号証 特開2000-89694号公報
甲第11号証 特開平11-237850号公報
甲第12号証 鑑定書
甲第13号証 本件の出願(特願2004-278888号)の
審査で平成18年7月28日に提出された意見書
甲第14号証 実願昭63-131573号
(実開平2-52463号)のマイクロフィルム
甲第15号証の1 2015年5月18日付け欧州特許庁拒絶理由通知書
甲第15号証の2 甲第15号証の1の抄訳(審判請求書に添付)
甲第15号証の2 甲第15号証の1の翻訳(上申書に添付)
甲第16号証 鑑定書における誤記についての陳述書
甲第17号証 特開2003-114629号公報
甲第18号証 特開平8-338901号公報
甲第19号証の1 LUMILEDSのapplication brief AB16
「Lumileds SuperFlux LEDs Versus Other LEDs」
Publication No.AB16(Feb 2003)
甲第19号証の2 甲第19号証の1の抄訳
甲第20号証 特開2003-140110号公報
甲第21号証 特開2002-202508号公報
甲第22号証 特開2001-167620号公報
甲第23号証 ソニー株式会社のプレスリリース
(http: //www.sony.jp/CorporateCruise/Press
/200408/08-0819B/)
「News and Information世界初、感動の記憶色を再現す
る広色域LEDバックライト搭載の液晶テレビ 発売」
甲第24号証 八木隆明「液晶テレビ用直下型LEDバックライト」 社団法人電子情報通信学会
信学技報EID2003-41(2004-01)
甲第25号証 特開平11-242219号公報
甲第26号証 特開平5-119707号公報
甲第27号証 特開2004-217066号公報
甲第28号証 特開2003-241191号公報
甲第29号証の1 LUMILEDSのapplication brief AB20-5
「Secondary Optics Design Considerations
for SuperFlux LEDs」
Publication No.AB20-5(Sept2002)
甲第29号証の2 甲第29号証の1の抄訳

なお、以下、各「甲号証の1」については、「の1」を省略して、各「甲号証」という。


第4 被請求人の主張と証拠方法
1.被請求人が主張する答弁の趣旨
被請求人の主張の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由1-1ないし無効理由7はいずれも理由が無い、というものである。

2.無効理由に係る主張の要点
(1)口頭審理陳述要領書第4頁第13?20行(甲第1号証について)
「また、前記構成1αでは、角度30°?50°の範囲で発せられた光がレンズ部で全反射し、後方に向けて放射されることが特定されているところ、全反射した場合、光制御出射面から光が出射しないのであるから、θ5を計測することはできない。したがって、θ1=0°?80°のうち出射光の存在しない範囲を有する甲1発明においては、構成要件1Haの『前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度』(以下「半値角」という。)の範囲内において、θ1の増加にともなってθ5/θ1が徐々に小さくなる関係を認めることはできない。」(以下、「主張A」という。)

(2)口頭審理陳述要領書第10頁第20行?第11頁第2行(甲第2号証について)
「下記図Cは、甲第2号証の第4図において凹状レンズ部分11を透過する光線を着色して示した図である。図Cにおいて赤色の矢印で示されるように、光源4からレンズ体10上のP点へ進んだ光は、EE線上において屈折し虚像点A2,A3を結ぶ直線と照明板6との交点であるP´に到達する(甲第2号証3頁左上欄最終行?右上欄3行)。そして、図Cにおいて水色の矢印で示されるように、P点より下部の任意のR点に当たった光は、虚像点A3から出たように屈折して進み照明板6上のR´点に到達する』(同3頁右上欄6行?8行)。図Cからも把握できるように、水色の矢印よりも、赤色の矢印の方が大きく屈折しているから、レンズ体10の中央の凹状レンズ部分11では、『外周に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されて』いないのである。むしろ、凹状レンズ部分11では、外周に向かって漸次屈折率が大きくなっていると把握できる。」(以下、「主張B」という。)

(3)口頭審理陳述要領書第7頁第1?2行(甲第3号証について)
「甲3発明では、FIG8の記載からすれば、少なくとも26.3°から52.0°の範囲で全反射が生じているのである。」(以下、「主張C」という。)

3.被請求人の提出した証拠方法
被請求人は、証拠方法として、答弁書に添付して以下の乙第1?2号証を提出している。

乙第1号証 無効審判事件(無効2014-800053号)
の審決
乙第2号証 無効審判事件(無効2014-800053号)
の審判請求書


第5 当審の判断
事案に鑑み、無効理由4の判断の後に無効理由1を判断し、無効理由5の判断の後に無効理由2を判断し、無効理由6の判断の後に無効理由3を判断し、その後に無効理由7を判断する。

1.無効理由4(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)についての当審の判断
(1)甲各号証に記載された事項及び発明
(1-1)甲第1号証に記載された事項及び発明
ア.甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、図面と共に、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。以下、同様である。
(1a)
「本発明は発光ダイオード(LED)に関する。更に詳しくは、パネルのバック照明用光源等に用いられるLEDに関する。」(第1頁左下欄第12?14行)
(1b)
「電子複写機等のパネル表示には、パネルの裏面に設置された照明によって、パネルに描かれている表示が見やすくなるように構成したものが知られている。このパネルのバック照明用光源としては、例えばLEDが用いられている。一般にLEDは光源としては小さく、光量も十分でないため、ある程度の大きさのパネルにバック照明用光源として用いた場合、パネルの表示面全体は均一な明るさにはならない。つまり、従来のLEDは指向性が狭いので、パネルの表示面に対する光源からの光の入射角が小さい程、照射される表示面は明るくなり、前記入射角が大きい程、照射される表示面は暗くなる。」(第1頁左下欄第16行?同頁右下欄第8行)
(1c)
「そこで、従来よりパネルのバック照明用光源には、先端部中央に設けられている凹部と、該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成るレンズ部を有するLED等が用いられている。第3図は、このLEDの一例について、先端部の縦断面の形状を示している。この従来例では凹部(3)の曲率半径は1mm,凸部(4)の曲率半径は0.5mm、樹脂成形体(2)内に設けられているLEDチップ(1)の厚さは270μmである。また、レンズ部を形成している樹脂成形体(2)の中心軸であって、凹部(3)の曲率半径の中心とLED(10)内のLEDチップ(1)の発光の中心とを連ねる直線を光軸とすれば、LED(10)の前方に前記光軸に対して10°間隔で80°までの角度をとると、LEDチップ(1)から発せられた光は、第3図中の矢印で示すように進む。同図中、かっこ外の角度はLEDチップ(1)から発せられた直後の光の光軸に対する角度であり、かっこ内の角度はLED(10)外に出た光の光軸に対する角度である。」(第1頁右下欄第9行?第2頁左上欄第6行)
(1d)
「第3図に示されているように、LEDチップ(1)から発せられた光は、前記凹部(3)及び凸部(4)から成るレンズ部によって、方向を変えられる。例えば、同図中、前記光軸に対する角度0°?20°の範囲で発せられた光は0°?37°の範囲に広げられる。また光軸に対する角度30°?50°の範囲で発せられた光は、レンズ部で全反射し、LED(10)の後方に向けて放射される。このLED(10)の後方に向けて放射された光は、第4図に示されているように、LED(10)の側方を囲むように設けられているパラボラ(11)によって反射され、LED(10)の前方に放射される。このように放射された光は、パネル(13)上の表示面(12)を照射する。第3図中、光軸に対する角度60°?80°の範囲で発せられた光も、第4図のパラボラ(11)によって反射され、LED(10)の前方に放射される。
このように、第3図に示されているLED(10)によれば、広指向性を実現することが可能であるので、パネル(13)の表示面(12)の周辺部も明るく照射される。」(第2頁左上欄第7行?同頁右上欄第6行)
(1e)
「しかしながら、従来のLEDをパネルのバック照明用光源とした場合、パネルの表示面に対して垂直方向から表示面を見た場合、LED中のLEDチップを直視することになり、パネル照明の均一性に欠けるという問題がある。例えば第3図中の光軸に対して0°?37°の範囲でLED(10)から放射された光はレンズ部で全反射されていないため、パネル(13)の表示面(14)(第4図)の中心部が特に明るく照射されてしまう。また、パネル(13)の表示面(14)における光の拡散が薄いと、更にパネル照明の均一性が低下する。」(第2頁右上欄第8?18行)
(1f)
「そこで、本発明の目的は、パネルのバック照明に用いたとき、パネルの表示面を均一な明るさに照射することができるLEDを提供することにある。
課題を解決するための手段
上記目的を達成するため、本発明では先端部中央に設けられている凹部と、該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成るレンズ部を有する発光ダイオードにおいて、前記凹部表面に内部からの光を乱反射させる反射体を設けている。」(第2頁右上欄第19行?第2頁左下欄第8行)
(1g)
「前記白色塗膜(5)は、LEDチップ(1)から放射された光によって照射されたとき、光を乱反射させる反射体である。」(第2頁右下欄第18?20行)
(1h)
「白色塗膜(5)が設けられる範囲は、レンズ部の凹部(3)でLEDチップ(1)からの光が全反射されることなくLED(10)外に放射される範囲である。例えば、第3図に示されている従来例においては、光軸上(0°)の光、LEDチップ(1)から光軸に対して10°及び20°の角度で放射された光が、白色塗膜(5)によって乱反射される対象となる。白色塗膜(5)によって乱反射された光は、第4図に示されている従来例と同様に、パラボラ(11)等の反射面によってLED(10)の前方に放射される。」(第3頁左上欄第2?12行)
(1i)
第1?4図。





イ.甲第1号証に記載された発明
(ア)
上記ア.(1c)の「樹脂成形体(2)内に設けられているLEDチップ(1)」から、「LEDチップ(1)」は「樹脂成形体内(2)に設けられている」こと、及び、第3図において、LEDチップ1(以下、摘記以外では、符号の( )を外して表記する。)と樹脂成形体2との境界面から樹脂成形体2に光が入射していることから、樹脂成形体2は、LEDチップ1からの光が樹脂成形体2に入射する光入射面を備えることが明らかである。
(イ)
「第3図に示されているように、LEDチップ(1)から発せられた光は、前記凹部(3)及び凸部(4)から成るレンズ部によって、方向を変えられる。」(上記ア.(1d)を参照)、「レンズ部を形成している樹脂成形体(2)」(上記ア.(1c)を参照)及び第3図から、第3図の樹脂成形体2の外表面は、レンズ部の外表面であり、LEDチップ1から発せられた光の方向を変えることが明らかであるから、樹脂成形体2は、LEDチップ1からの光の方向を変える、レンズ部の外表面を備えているといえるし、第3図のLED10は、LEDチップ1からの光を樹脂成形体2を介して出射するようになっていることが明らかである。
(ウ)
「レンズ部を形成している樹脂成形体(2)の中心軸であって、凹部(3)の曲率半径の中心とLED(10)内のLEDチップ(1)の発光の中心とを連ねる直線を光軸とすれば」(上記ア.(1c)を参照)から、「光軸」は、「LED10」の「光軸」といえること、及び、第2図は実施例の図面であり第3図は従来例の図面であるが、これらの図面で樹脂成形体2自体の基本形状は変わるものではないこと、並びに、第2図及び第3図から、第3図の「樹脂成形体2」は、「LED10の光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いることが明らかである。
(エ)
上記(ア)?(ウ)、上記ア.(1a)?(1i)及び特に第3図から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

[甲1発明]
「LEDチップ1からの光を樹脂成形体2を介して出射するようになっているLED10において、
前記樹脂成形体2は、前記LEDチップ1からの光が前記樹脂成形体2に入射する光入射面と、
前記LEDチップ1からの光の方向を変える、先端部中央に設けられている凹部と該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成る、レンズ部の外表面とを備え、
LED10の光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
光軸に対する角度0°?20°の範囲で発せられた光は、0°?37°の範囲に広げられ、光軸に対する角度30°?50°の範囲で発せられた光は、レンズ部で全反射し後方に向けて放射され、LED10の側方を囲むように設けられているパラボラ11によって反射されて前方に放射され、パネル13上の表示面12を照射し、光軸に対する角度60°?80°の範囲で発せられた光も、パラボラ11によって反射され前方に放射される、
LED10。」

(1-2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証に記載された事項は、後記3.(1)(1-1)ア.のとおりである。

(1-3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証に記載された事項は、後記5.(1)(1-1)ア.のとおりである。

(1-4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、第1?6図と共に、次の事項が記載されている。
(4a)
「この際、被照射面4へ達する光束の分布は全面にわたり均一となるようにすることもできるし、特定の部分の光束密度が高くまたは低くなるようにすることもできる。これは、光制御レンズ2の断面形状によって自由に変えることができる。」(明細書第4頁第7?12行)
(4b)
「Aで示す断面形状の場合には、光束が最も広げられるが、この場合、両側膨出部2a、2aは最も大きく、前端面は凹入部2cを有する。」(明細書第5頁第2?5行)
(4c)
「光源の外表面1aと光制御レンズ2の凹入部2bとの問に僅かな隙間または溝を形成してもよい。」(明細書第5頁第17?19行)
(4d)
「光源は前述のような長さをもつ線光源でなくてもよく、球状などの点光源であってもよい。」(明細書第9頁第16?17行)
(4e)
「光制御レンズ2Aの立体形状は四角形の光透過性拡散板17の全面に均一分布の光束が到達するようにでき、」(明細書第9頁第20行?第10頁第2行)




(1-5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、FIG.3?4と共に、次の事項が記載されている。
(5a)
「the flat panel display 26.」(第3欄第31行)
和訳:「平板パネルディスプレイ26」
(5b)
「light emitting diodes (LEDs) 12 and 13」(第3欄第33?34行)
和訳:「複数のLED12、13」
(5c)
「a diffuser 20」(第3欄第36行)
和訳:「拡散部材20」
(5d)
「a color filter 24」(第3欄第37行)
和訳:「カラーフィルター24」






(1-6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、FIG.3が記載されている。



(1-7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、「カード型LEDモジュール、その製造方法、照明装置及び表示装置」に関して、図2が記載されている。


(1-8)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、「パワーLEDを利用したスポット照明装置」に関して、図1?3が記載されている。


(1-9)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、「ドットマトリクス表示装置」に関して、図1及び3が記載されている。





(1-10)甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、「ドットマトリクス表示装置」に関して、図1?3が記載されている。





(1-11)甲第11号証に記載された事項
甲第11号証には、「LED表示装置」に関して、図1及び5が記載されている。





(1-12)甲第14号証に記載された事項
甲第14号証には、第4図と共に、次の事項が記載されている。
(14a)
「本考案は自動車のサイドマーカーランプ等に使用して好適な発光ダイオードに関する。」(明細書第1頁第14?15行)
(14b)
「n>l.0(nは屈折率)であることを利用して半導体チップ1との屈折率の整合および光の方向性を高める光学レンズとしての機能を有している。」(明細書第2頁第12?14行)
(14c)
「簡単な構成で比較的平坦な輝度分布が得られ配光の無効部分が少ない広指向性を有する発光ダイオードを提供することを目的とするものである。」(明細書第4頁第1?4行)
(14d)
「第4図はこのような2光軸構成からなるLEDの輝度分布を示すもので、樹脂体2の長さ方向に長くかつ中央部が平坦で、広い半値幅Pを有し、しかも自己光の無効部分(斜線部分)が少ない。したがって、第9図に示した配光パターンが要求されるリアサイドマーカーランプの光源に使用した場合、LEDの数を削減でき、また配光範囲を全面に亘って略均一な明るさとすることができる。」(明細書第6頁第3?10行)





(2)本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
ア.対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)
甲1発明の「LEDチップ1」、「LED10」及び「光軸」は、それぞれ、本件特許発明1の「発光素子」、「発光装置」及び「基準光軸」に相当する。
(イ)
甲1発明の「レンズ部の外表面」は、全反射する部分も含め、「LEDチップ1からの光の方向を変える」から、光が出射しているか否かにかかわらず、LEDチップ1(発光素子)からの光の出射を制御する面であり、甲1発明の「レンズ部の外表面」と、本件特許発明1の「光制御出射面」とは、LEDチップ1(発光素子)からの光の出射を制御する面という意味の「光制御出射面」という限りで共通する。
(ウ)
甲1発明の「樹脂成形体2」は、「レンズ部の外表面」を備え、このレンズ部の外表面は、発光素子から光の出射を制御する光制御出射面である(上記(イ)を参照)から、甲1発明の「樹脂成形体2」は、本件特許発明1の「光束制御部材」に相当する。
(エ)
上記(ア)及び(ウ)から、甲1発明の「LEDチップ1からの光を樹脂成形体2を介して出射するようになっているLED10」は、本件特許発明1の「(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている、(1L) 発光装置」に相当する。
(オ)
甲1発明の「レンズ部の外表面」は、「先端部中央に設けられている凹部と該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成る」ものであり、併せて、凹部は曲率半径R1を凸部は曲率半径R0.5を備えていること(上記(1)(1-1)ア.(1c)の「凹部(3)の曲率半径は1mm,凸部(4)の曲率半径は0.5mm」という記載及び第3図を参照)及び上記(イ)、並びに、第2図及び第3図を参照すると、甲1発明の「LEDチップ1からの光の方向を変える、先端部中央に設けられている凹部と該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成る、レンズ部の外表面(光制御出射面)」の構成と、本件特許発明1の「光制御出射面は、発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し」ている構成とは、発光素子からの光の出射を制御する面という意味では、「光制御出射面は、発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し」ている構成の限りで共通する。
(カ)
レンズ表面を滑らかに形成することが技術常識であることを踏まえて第3図を見ると、レンズ部の外表面では、凹部と凸部とが滑らかに接続されていることが看取できること、及び、甲1発明の「レンズ部」はLEDの狭い指向性を補い均一な明るさとするものであり(上記(1)(1-1)ア.(1b)を参照)、当該接続を不連続とするような特殊なレンズではないといえることから、甲1発明の「レンズ部の外表面」は、凹部の曲率半径R1が凸部の曲率半径R0.5に移行する接続部分が変曲点となっているといえる。
(キ)
上記(オ)及び(カ)から、甲1発明の「LEDチップ1からの光の方向を変える、先端部中央に設けられている凹部と該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成る、レンズ部の外表面(光制御出射面)」の構成と、本件特許発明1の「光制御出射面は、発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている」構成とは、発光素子からの光の出射を制御する面という意味では、「光制御出射面は、発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている」構成の限りで共通する。
(ク)
上記(ア)?(ウ)及び(キ)から、
甲1発明の
「前記樹脂成形体2は、前記LEDチップ1からの光が前記樹脂成形体2に入射する光入射面と、
前記LEDチップ1からの光の方向を変える、先端部中央に設けられている凹部と該凹部の周囲を環状に取り囲む凸部とから成る、レンズ部の外表面とを備え、
LED10の光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いる構成と、
本件特許発明1の
「(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている」構成とは
LEDチップ1(発光素子)からの光の出射を制御する面という意味では、
「(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている」構成の限りで共通する。

イ.一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
なお、上記ア.(イ)で述べたとおり、「光制御出射面」は、「LEDチップ1(発光素子)からの光の出射を制御する面」という意味において一致点とするものであり、その具体的な機能及び構造については相違点で判断する。
<一致点>
「(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、
(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている
(1L) 発光装置。」

<相違点>
本件特許発明1では、「光制御出射面」は、
「(1Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、
前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(1Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(1I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(1J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている」のに対して、
甲1発明では、
「光軸に対する角度0°?20°の範囲で発せられた光は、0°?37°の範囲に広げられ、光軸に対する角度30°?50°の範囲で発せられた光は、レンズ部で全反射し後方に向けて放射され、LED10の側方を囲むように設けられているパラボラ11によって反射されて前方に放射され、パネル13上の表示面12を照射し、光軸に対する角度60°?80°の範囲で発せられた光も、パラボラ11によって反射され前方に放射される」点。

ウ.判断
以下、相違点について検討する。
なお、以下では、本件特許発明1?11の構成を、分説記号を用いて示すこともある。
(ア)
本件特許発明1の(1E)?(1K)は、光制御出射面の構成を特定する事項であり、当該(1K)を備える光制御出射面は、その前提として(1E)?(1G)で特定される光制御出射面であるから、上記一致点に係る(1E)?(1G)の構成(発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている構成)を備えている。
(イ)
甲1発明では、光軸に対する角度30°?50°の範囲で発せられた光は、全反射しているところ、甲第1号証の「白色塗膜(5)が設けられる範囲は、レンズ部の凹部(3)でLEDチップ(1)からの光が全反射されることなくLED(10)外に放射される範囲である。」(上記(1)(1-1)ア.(1h)を参照)という記載から、全反射する角度範囲の下限値は実質的に凹レンズ部といえること、及び、第3図から、角度40°以下で角度30°近傍の部分は凹レンズ部であり、上限値側の角度50°は凸レンズ部であることが看取し得るから、全反射している光軸に対する角度30°?50°の範囲に、上記(1E)?(1G)の構成の、凹み形状の第1の出射面と、この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている構成が位置しているといえる。
(ウ)
第1の出射面、接続部分及び第2の出射面が位置している、光軸に対する角度30°?50°の範囲(上記(イ)を参照)では、光は全反射しているから、そもそも光が出射することはなく、出射光が存在していないのであるから、出射光が屈折することもなく、入射光に対して出射光が特定の関係のパラメータ((1K)など)を示すこともない。
したがって、甲1発明では、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。
(エ)
甲第1号証では、「パネルの表面を均一な明るさに照射することができるLEDを提供すること」を目的とし、その課題を解決するための手段では、「上記目的を達成するため、・・・凹部表面に内部からの光を乱反射させる反射体(白色塗膜(5))を設け」(上記(1)(1-1)ア.(1f)及び(1g)を参照)、「白色塗膜(5)によって乱反射された光は、第4図に示されている従来例と同様に、パラボラ(11)等の反射面によってLED(10)の前方に放射される」(上記(1)(1-1)ア.(1h)を参照)から、甲第1号証の従来例に対応している甲1発明において、パラボラ11を設けない態様を想定することはありえず、パラボラ11を利用している全反射部位(光軸に対する角度30°?50°の範囲)において、全反射させないようにして、(1K)の構成を採用する動機付けはないといえる。
(オ)
さらに、以下に示すように、他の証拠(甲第2?11及び14号証)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえないし、当該技術事項が技術常識であるという根拠も存在しない。
甲第4号証(上記(1)(1-4)を特に参照)、甲第14号証(上記(1)(1-12)及び後述のオ.(ウ)を特に参照)には、全体の記載を見ても、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第5?11号証は、LEDの等間隔配置や拡散板について、もっぱら発明の名称ないし図を引用するだけであり(上記(1)(1-5)?(1-11)を参照)、光制御出射面についての技術事項を引用するものとはいえないから、光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第2号証(後記3.(1)(1-1)ア.を参照)及び甲第3号証(後記5.(1)(1-1)ア.を参照)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
(カ)
したがって、甲1発明は、(1K)の構成を備えておらず(上記(ウ)を参照)、甲1発明の全反射部位(光軸に対する角度30°?50°の範囲)に(1K)の構成を採用する動機付けもなく(上記(エ)を参照)、甲第2?11及び14号証にも(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない(上記(オ)を参照)から、上記相違点に係る本件特許発明1の構成(特に、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面の(1K)の構成)は、甲1発明並びに甲第1?11及び14号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。

エ.作用効果について
上記相違点に係る本件特許発明1の構成などにより、本件特許発明1は、顕著な作用効果(本件明細書の段落【0012】等参照)を奏するものである。

オ.請求人の主張について
(ア)主張1-1-1について
甲第12号証の記載に基づいて、甲第1号証の記載を見た当業者は、外周部になるにつれて、出射角に対する入射角の比が小さくなるレンズ部を容易に想到する旨、請求人は主張するが、甲第12号証には、甲第1号証のレンズにおいて、(1K)を、導き出すための具体的な根拠(本件明細書の段落【0035】及び【0035】に記載の数1及び数2の計算式など)が記載されているとはいえない。
甲第12号証の第9頁第1?16行の「広指向性レンズとして使用する」(第9頁第9行)及び「明るさの均一性を確保する」(第9頁第11行)という事項について、甲第1号証には、第3図のレンズ単体だけでなし得るとまでは記載されておらず、また、当該事項は、レンズのどの範囲について述べているのかも定かでないところ、甲1発明は、全反射部分を含んでおり、反射はパラボラ11等にも関連しているから、当該事項は、レンズと他の構成要素との相互作用で達成される蓋然性が高く、上記(2)ウ.(ウ)で述べたとおり、甲1発明では、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(イ)主張1-1-2について
甲第1号証の特定の入射角度(θ1が10度、20度、60度)については、(1K)を満たしているから、甲1発明のレンズの形状は(1K)を満たす旨、請求人は主張するが、上記(2)ウ.(ウ)で述べたとおり、甲1発明において、全反射する部分については(1K)は満たされておらず、甲1発明では、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(ウ)主張1-1-3について
甲第1号証のレンズと同様の形状の甲第14号証のレンズについて、被請求人は(1K)を認めている(甲第13号証)から、同様のことを甲第1号証についても認めているに等しい旨、請求人は主張するが、甲第1号証の第3図のレンズ部と甲第14号証の第4図のレンズ(樹脂体2)とは、明らかに凹部の形状が大幅に異なり、甲第14号証には、上記(1)(1-12)の事項等を参照しても、本件特許発明1の凹レンズ部分に関する具体的な構成(1K)は開示されていない。
本件にも甲第1号証にも何ら関連しない上記甲第14号証に対して、被請求人が、(1K)を満たす領域が存在しているというだけの意見(答弁書第29頁第5?10行を参照)を述べた、甲第13号証の内容に基づく主張は、意味がない。

(エ)主張1-1-4について
甲1発明において、半値角が20度のLEDを使用すれば、上記相違点に係る本件特許発明1の構成(特に、(1K)の構成)を満たす旨主張するが、甲1発明において、30度以下の部分は凹レンズであるから(上記(2)ウ.(イ)を参照)、(1K)の構成の上限値となる20度の光制御出射面は凹レンズの光制御出射面であり、甲1発明は、凹レンズから凸レンズまで連続して(1K)の構成を満たしている、すなわち、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備えている、とはいえない。

(オ)主張1-2-1について
全反射条件を考慮して・・・レンズ形状を変更することは設計事項である、及び、光の強度に対応して屈折比を変更することは技術常識である旨、請求人は主張するが、その主張の根拠として示している甲第12号証には、設計事項及び技術常識につて記載はなく、当該主張の根拠は示されていない。
また、仮に、上記の設計事項及び技術常識の根拠が示されたとしても、上記(2)ウ.(エ)で述べたとおり、甲1発明において、パラボラ11を設けない態様を想定することはありえないから、当該設計事項及び技術常識を採用しようとしても、甲1発明は阻害要因を含んでいる。

(カ)主張1-2-2について
甲第2号証に記載の技術事項を甲1発明に適用する旨、請求人は主張するが、その旨は、審判請求書において主張していなかった内容であるので、理由の要旨変更になる虞もあるのだが、その旨が要旨変更であるか否かを判断するまでもなく、甲第2号証に記載の技術事項を甲1発明に適用しようとしても、適用の動機付けも存在せず、阻害要因があること(上記(オ)、上記(2)ウ.(エ)を参照)、及び、甲第2号証においても、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえないこと(後記3.(1)(1-1)ア.イ.及びウ.(カ)を参照)から、甲第2号証に記載の技術事項を甲1発明に適用して、光制御出射面が、(1K)の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(キ)主張1-2-3について
甲1発明において、シミュレーションソフトを用いてLEDチップ1の位置を変更することで、全反射している部分を全反射させないようにすることは当業者であれば容易である旨、請求人は主張するが、甲1発明においては、全反射している部分を全反射させないようにする動機付けは存在しておらず、阻害要因もあり(上記(オ)及び上記(2)ウ.(エ)を参照)、甲1発明において、全反射させないようにすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(ク)甲第15号証について
請求人は、甲第15号証に基づく主張もしているが(審判請求書第104頁第2?17行)、甲第15号証は、本件特許に対応する欧州特許出願に対する欧州特許庁の拒絶理由通知通であり、本件特許の対応特許に関連するものではあるが、本件特許につて直接関係するものではなく、被請求人が、甲第15号証(外国の他の庁の拒絶の理由)に応答していなかったとしても、当該理由の内容自体を認めているか否かは不明であり、当審の判断は、上記ウ.に述べたとおりであるから、甲第15号証(他庁の拒絶の理由)に基づく主張は採用できない。

(ケ)請求人の主張についてのまとめ
上記(ア)?(ク)のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。

カ.小括
したがって、上記イ.の相違点に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易になし得たとはいえないので、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2?11と甲1発明との対比・判断
ア.本件特許発明6について
本件特許発明6の(6Ha)、(6Hb)、(6I)、(6J)及び(6K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明6と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

イ.本件特許発明11について
本件特許発明11の(11Ha)、(11Hb)、(11I)、(11J)及び(11K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明11と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

ウ.本件特許発明2?5及び7?10について
本件特許発明1に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明2?5については、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりであり、本件特許発明6に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明7?10については、上記ア.に示したとおりである。

エ.小括
上記ア.?ウ.のとおりであるから、本件特許発明2?11は、甲1発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由4(甲第1号証を主引用例とする進歩性の欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?11に係る発明(本件特許発明1?11)は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

2.無効理由1(甲第1号証を主引例とする新規性欠如)についての当審の判断
上記1.で述べたとおり、本件特許の請求項1、2、6及び11に係る発明(本件特許発明1、2、6及び11)と甲第1号証に記載された発明(甲1発明)とは、少なくとも上記1.(2)イ.の相違点で相違しており、本件特許の請求項1、2、6及び11に係る発明(本件特許発明1、2、6及び11)は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

3.無効理由5(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)についての当審の判断
(1)甲各号証に記載された事項及び発明
(1-1)甲第2号証に記載された事項及び発明
ア.甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(2a)
「光源と照明板との間にレンズ体を配置し、光源からの光をレンズ体により分散して照明板に照射するようにした照明装置において、上記レンズ体は、少なくとも照明板に照射する光源光の入射区域内において、レンズ中心から外周に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されてなる照明装置。」(第1頁左下欄第5?11行)
(2b)
「しかしながら、このような従来の照明装置にあっては、例えば第1図に光線l_(1)と光線l_(2)とで示したように、凹レンズ5の特性上、レンズ中心から離れた部分を通る光線ほど光の屈折率が大きくなるために、照明板6における中心部B付近に集まる光をその周りに分散させ、中心部Bとその周囲の照度の均一化を図る効果はあるものの、外縁部C,D付近では光が分散し過ぎて該部分に集まる光量が少なく、中心部Bに比べて暗くなり、照明板6全体の照度の均一化を図ることができなかった。」(第1頁右下欄第12?第2頁左上欄第2行)
(2c)
「第2図は本発明に係る照明装置の一実施例を示したもので従来と同様、点光源4と照明板6との間にレンズ体7を配設し、該レンズ体7の中心が光源4と照明板6の中心部Bとを直線で結ぶ光源軸8上に位置するようにしたものであるが、従来とは異なり上記レンズ体7は特殊形状に構成されている。即ち、本実施例に係るレンズ体7は、光源4側に凹部を有する凸レンズの一端を光源軸8上に置き、該光源軸8を同転中心として上記凸レンズを回転させたときにできる回転軌跡と同一の形状で構成されており、光源軸8上にレンズ体7のレンズ中心が位置している。従って、中心を通る任意の断面で見たときに、このレンズ体7は、第2図に示すようにあたかも同一形状の2つの凸レンズ7a,7bが光源軸8上で接続されているように見える。」(第2頁右上欄第1?16行)
(2d)
「従って、上記のように構成されるレンズ体7においては、凸レンズ本来の特性により、レンズ体7の中心部において最も屈折率が大きく、かつ外周部へ向かうに従って漸次屈折率が小さくなっていき、各凸レンズ7a,7bの光軸9a,9b上で略零に等しくなり、更にレンズ外周部へ向かって再び屈折率が大きくなっていく。尚、この実施例ではレンズ体7の製造工程上、光源光の入射区域外の部分、即ち光軸9a,9bの外側部分もレンズ体7として成形されるが、該部分を省いてレンズ体7を構成してもよい。」(第2頁左下欄第5?15行)
(2e)
「第3図は、該レンズ体7によって屈折する光線を従来の凹レンズを使用した場合の光線との比較において模式的に説明したものである。・・・照明板6のBF間においては、レンズ体によった場合の方が照射光量が少なくなるので、凹レンズに比べて若干暗くなる。・・・このようにレンズ体を使用することにより、照明板6の中心部Bから離れた部分をより明るくすることができ、照明板6における照度の均一化を図ることができる。」(第2頁左下欄第16行?第3頁左上欄第8行)
(2f)
「第4図は本発明の他の実施例に係るレンズ体10を示したものであり、先の実施例と同様、任意の断面形状を見た場合に同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bにより構成されているが、先の実施例とは異なり、P点を境にしてレンズ体10の中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11で構成したものである。」(第3頁左上欄第9?15行)
(2g)
「この実施例では凹状レンズ11によってできる光源4の虚像点A_(3)を、凸レンズ10aによってできる光源4の虚像点A_(2)と上記レンズ体10上のP点とを結ぶ直線上に結ばれるように構成してある。従って、光源4からレンズ体10上のP点へ進んだ光は、EE線上において屈折し虚像点A_(2),A_(3)を結ぶ直線と照明板6との交点であるP’に当たり、また、P点より上部の任意のQ点に当たった光は先の実施例と同様虚像点A_(2)とを結ぶ直線上を進み照明板6上のQ’点に当たる。一方、P点より下部の任意のR点に当たった光は虚像点A_(3)から出たように屈折して進み照明板6上のR’点に到達する。この場合に、先の実施例におけるレンズ体7の場合にはR点に入射された光は虚像点A_(2)から出たように大きく屈折して進み、一点鎖線で示したように照明板6上においてR’点より上部位置のR”点に到達する。」(第3頁左上欄第16行?第3頁右上欄第12行)
(2h)
「従って、この実施例では照明板6の中心部B付近において、先の実施例の場合よりも光量が多くなるように修正されるために、例えば第3図において照明板6のBF’間における照度は先の実施例に比べて高くなると共に、レンズ体10の接続部P点においても明るさむらを生ずることがない。」(第3頁右上欄第12?18行)
(2i)
「また光源4についても点光源に限定されるものではなく、線光源にも適用できることはいうまでもない。」(第3頁左下欄第2?4行)
(2j)
「以上説明したように、本発明に係る照明装置によれば、照明板に照射する光源光の入射区域内において、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置したから、照明板の中央部付近に集まる光線は大きく屈折して外周に分散され、また外周部に集まる光線の屈折は小さく、光の分散が少ないので、照明板の各部に照射される光量の差が少なくなり、照明板全体の照度の均一化を図ることができる。従って、例えば液晶表示板に利用した場合には表示部全体を均一に照明することができ、表示がはっきり認識できると共に、車室内の外観品質を向上させることができる。」(第3頁左下欄第5?18行)
(2k)
「更に本発明の照明装置は液晶表示板に限らず、広い面積を照明する場合に応用でき、利用価値が大きい。」(第3頁右下欄第3?5行)
(2l)
第1図、第2図及び第4図。





イ.甲第2号証に記載された発明
(ア)
第4図では、「光源4からレンズ体10上へ進んだ光は、EE線上において屈折し」ているが(上記ア.(2g)を参照)、これは、光源4の虚像(虚像点A2,A3)を用いることで、レンズ体10への光の入射とレンズ体10の外表面からの光の出射との状態を説明する手法であり、実際は、少なくともレンズ体10の外表面で光が屈折することで光の出射が制御されているといえる。
そうすると、第4図の図示内容は、光源4からの光をレンズ体10を介して出射するようになっていること、及び、レンズ体10は、光源4からの光がレンズ体10に入射する光入射面と、光源4からの光の出射を制御する光制御出射面とを備えていることを、開示しているといえる。
(イ)
甲第2号証のレンズ体の実施例は2つであり、第2図にはレンズ体7の実施例が、第4図にはレンズ体10の実施例が、それぞれ示されているところ、甲第2号証の第4図についての説示(第3頁左上欄第9行?同頁右上欄第18行)において、「第4図は本発明の他の実施例に係るレンズ体10を示したものであり、先の実施例と同様、・・・構成されている・・・」(上記ア.(2f)を参照)及び「この実施例では・・・と上記レンズ体10上のP点とを結ぶ直線上に結ばれるように構成してある。」(上記ア.(2g)を参照)と記載されていることから、当該第4図についての説示において、「先の実施例」が第2図の実施例を、「この実施例」が第4図の実施例を、それぞれ示していることが明らかであるから、以下、「先の実施例」及び「この実施例」という記載を、これら実施例の図との対応関係が明確になるように、「先の実施例(第2図の実施例)」及び「この実施例(第4図の実施例)」として表記する。
(ウ)
第2図の実施例について、「レンズ体7は、光源4側に凹部を有する凸レンズの一端を光源軸8上に置き、該光源軸8を回転中心として上記凸レンズを回転させたときにできる回転軌跡と同一の形状で構成されており、光源軸8上にレンズ体7のレンズ中心が位置している。従って、中心を通る任意の断面で見たときに、このレンズ体7は、第2図に示すようにあたかも同一形状の2つの凸レンズ7a,7bが光源軸8上で接続されているように見える。」(上記ア.(2c)を参照)と説示されているところ、上記(イ)から、第4図の実施例について、「第4図は本発明の他の実施例に係るレンズ体10を示したものであり、先の実施例(第2図の実施例)と同様、任意の断面形状を見た場合に同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bにより構成されているが、先の実施例(第2図の実施例)とは異なり、P点を境にしてレンズ体10の中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11で構成したものである。」(上記ア.(2f)を参照)と説示されている。
(エ)
上記(ウ)から、第4図の実施例では、レンズ体10の凸レンズ部分は、第2図の実施例と同様、光源4側に凹部を有する凸レンズを光源軸8を回転中心軸として回転させたときにできる回転軌跡と同一の形状となり、回転軌跡であるために、光源軸8(回転中心軸)を含む任意の断面形状を見た場合に、どの断面であっても、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bで構成されているように見える。
(オ)
また、上記(ウ)から、第4図の実施例は、「先の実施例(第2図の実施例)とは異なり、P点を境にしてレンズ体10の中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11で構成したものである」から、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、境のP点は、凸レンズ10a,10bと凹状レンズ11との接続部を示しているといえるが、厳密には、第4図のP点を含む縦の点線で示される部分が接続部であるといえる。以下、P点を含む縦の点線で示される部分を「接続部P点」という。
そして、当該接続部「P点を境にしてレンズ体10の中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11」も、凸レンズ部分と同様に回転軌跡の形状となることが明らかであり、光源軸8(回転中心軸)を含む任意の断面形状を見た場合は、どの断面であっても、同じ形状(第4図の形状)となっている。
(カ)
上記(ウ)?(オ)から、第4図の実施例のレンズ体10は、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bと、当該凸レンズ10a,10bとの接続部P点を境にして中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11とで構成されているといえる。
(キ)
レンズ体10の実施例である第4図では、光源4からレンズ体10上のR点、P点、Q点へ進んだ光は、それぞれ屈折し、照明板6の、R’点、P’点、Q’点に当たり(上記ア.(2g)を参照)、レンズ体10の中心部から外周部に向かって、屈折した光が、R’点、P’点、Q’点の順で照明板6に当たっていることが明らかであり、それぞれの屈折の特性を、凹状レンズ11によってできる光源4の虚像点A3と凸レンズ10aによってできる光源4の虚像点A2とを用いて示すと、以下(a)?(c)のとおりである。
(a)R’点への屈折の特性
第4図から、R点は凹レンズ上に位置していることが明らかであり、上記ア.(2g)から、光源4からR点に当たった光は、凹状レンズ11によってできる光源4の虚像点A3から出たように屈折して進み照明板6上のR’点に到達する(以下、このような光の屈折の特性を、記号を用いて「4RR’」のように示す。)。すなわち、「凹状レンズ11で4RR’」の屈折特性を示す。
(b)P’点への屈折の特性
P点は、凸レンズ10a,10bと凹状レンズ11の接続部P点であり、上記ア.(2g)から、光源4からレンズ体10上のP点へ進んだ光は、EE線上において屈折し、凸レンズ10aによってできる光源4の虚像点A2,凹状レンズ11によってできる光源4の虚像点A3を結ぶ直線と照明板6との交点であるP’に当たる。すなわち、「接続部P点で4PP’」の屈折特性を示す。
(c)Q’点への屈折の特性
第4図から、Q点は凸レンズ10a,10b上に位置していることが明らかであり、上記ア.(2g)から、光源4からQ点に当たった光は、先の実施例(第2図の実施例)と同様凸レンズ10aによってできる光源4の虚像点A2とを結ぶ直線上を進み照明板6上のQ’点に当たる。すなわち、「凸レンズ10a,10bで4QQ’」の屈折特性を示す。
また、当該屈折特性は、「先の実施例(第2図の実施例)と同様」であることから、レンズ体10の凸レンズ10a,10bは、レンズ体7(凸レンズ7a,7b)と同様の特性を有し、「凸レンズ本来の特性により、・・・外周部へ向かうに従って漸次屈折率が小さくなってい」くように構成されている(上記ア.(2d)を参照))といえる。
(ク)
上記(ア)(カ)(キ)、上記ア.(2a)?(2l)及び特に第4図から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

[甲2発明]
「光源4からの光をレンズ体10を介して出射するようになっている照明装置において、
レンズ体10は、光源4からの光がレンズ体10に入射する光入射面と、光源4からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
レンズ体10は、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bと、当該凸レンズ10a,10bとの接続部P点を境にして中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11とで構成され、
レンズ体10は、中心部から外周部に向かって、凹状レンズ11で4RR’、接続部P点で4PP’、凸レンズ10a,10bで4QQ’の順に屈折する特性を有し、当該レンズ体10の凸レンズ10a,10bは、外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されている、
照明装置。」

(1-2)甲第1、3?11及び14号証に記載された事項
甲第1号証に記載された事項は、上記1.(1)(1-1)ア.のとおりである。
甲第3号証に記載された事項は、後記の5.(1)(1-1)ア.のとおりである。
甲第4?11及び14号証に記載された事項は、上記1.(1)(1-4)?(1-12)のとおりである。

(2)本件特許発明1と甲2発明との対比・判断
ア.対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)
甲2発明の「光源4」と、本件特許発明1の「発光素子」とは、「光源」の限りにおいて共通するといえる。
(イ)
甲2発明の「照明装置」と、本件特許発明1の「発光装置」とは、「光源を有する装置」の限りにおいて共通するといえる。
(ウ)
甲2発明の「光源軸8」は、本件特許発明の「基準光軸」に相当するところ、甲2発明の「レンズ体10は、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bと、当該凸レンズ10a,10bとの接続部P点を境にして中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11とで構成され」ている(レンズ体10を断面形状によって特定している)ことから、レンズ体10の立体形状を特定すると、光源軸8を回転軸として、当該任意の断面形状(第4図を参照)を回転させた回転軌跡の形状が、レンズ体10の立体形状であり(上記(1)(1-1)イ.(エ)及び(オ)を参照)、当該回転軌跡の形状を光基準軸8に沿った方向から見れば円形形状となることは自明な事項であり、甲2発明の「レンズ体10」は、「光源軸8(基準光軸)に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されている」ことが明らかである。
(エ)
甲2発明の「レンズ体10」は、「光の出射を制御する光制御出射面」を備えるから、「光束制御部材」といえること、上記(ア)?(ウ)及び甲第2号証の第4図から、
甲2発明の
「光源4からの光をレンズ体10を介して出射するようになっている照明装置において、
レンズ体10は、光源4からの光がレンズ体10に入射する光入射面と、
光源4からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
レンズ体10は、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bと、当該凸レンズ10a,10bとの接続部P点を境にして中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11とで構成されている、
照明装置。」と、
本件特許発明1の
「(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、
(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されている
(1L) ことを特徴とする発光装置。」とは、
「(1A’) 光源からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている光源を有する装置において、
(1B’) 前記光束制御部材は、前記光源からの光が前記束制御部材に入射する光入射面と、
(1C’) 前記光源からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D’) 前記光源を有する装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されている
(1L’) 光源を有する装置。」の限りにおいて共通する。
(オ)
甲2発明の「レンズ体10」の「光制御出射面」が、「凹状レンズ11」の外表面と「凸レンズ10a,10b」の外表面とを備えていることは、甲第2号証の第4図から明らかである。
(カ)
ここで、甲2発明の「レンズ体10」の「中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11」の外表面の形状について、上記(ウ)と同様に、断面の外表面の形状から立体の外表面の形状を特定する。
断面(第4図)における当該凹状レンズ11の外表面の凸レンズとの接続部(接続部P点の位置に対応)を、光源軸8を回転軸として回転させた回転軌跡は円となり、断面(第4図)における「中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11」の外表面を、光源軸8を回転軸として回転させた回転軌跡は、立体の外表面の形状を示し、光源軸8(回転軸)に軸対象で、上記円を上縁とする下方に湾曲した凹曲面となるから、「球の一部を切り取ったような凹み形状」であるという程度には特定できるし、上記円を上縁とする下方に湾曲した凹曲面は、「光源軸8近傍で且つ光源軸8を中心とする所定範囲に位置する」といえる(第4図を参照)。
そうすると、甲2発明の「レンズ体10」の「中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11」の立体の外表面の形状は、「照明装置の光源軸8近傍で且つ光源軸8を中心とする所定範囲に位置する」「球の一部を切り取ったような凹み形状」であると特定できる。
また、甲2発明の「レンズ体10」の「凸レンズ10a,10b」の立体の外表面は、凹状レンズ11の上記凹曲面(球の一部を切り取ったような凹み形状)の上縁である上記円(周囲)に連続して形成されることが、明らかである。
(キ)
上記(ア)(オ)(カ)から、甲2発明の「レンズ体10」の「中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11」の外表面(光源軸8を回転軸として回転させた回転軌跡)は、照明装置(光源を有する装置)の光源軸8(基準光軸)近傍で且つ光源軸8(基準光軸)を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状であるから、本件特許発明1の「第1の出射面」に相当し、甲2発明の「レンズ体10」の「凸レンズ10a,10b」の外表面(回転軌跡)は、凹状レンズ11の当該凹曲面(球の一部を切り取ったような凹み形状)の上縁である上記円(周囲)に連続して形成されるから、本件特許発明1の「第2の出射面」に相当する。
(ク)
上記(ア)(イ)(オ)?(キ)及び甲第2号証の第4図から、
甲2発明の
「前記レンズ体10は、・・・光制御出射面とを備え、レンズ体10は、光源軸8を含む任意の断面形状を見た場合に、同一形状からなる二個の凸レンズ10a,10bと、当該凸レンズ10a,10bとの接続部P点を境にして中心部を光源軸8に対し直角に交わる凹状レンズ11とで構成され、」たものと、
本件特許発明1の
「(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し」ているものとは、
「(1E’) 前記光制御出射面は、
前記光源を有する装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F’) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し」ているものの限りで共通する。

イ.一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「(1A’) 光源からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている光源を有する装置において、
(1B’) 前記光束制御部材は、前記光源からの光が前記束制御部材に入射する光入射面と、
(1C’) 前記光源からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D’) 前記光源を有する装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E’) 前記光制御出射面は、
前記光源を有する装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F’) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有する、
(1L’) 光源を有する装置。」

<相違点1>
「光源」及び「光源を有する装置」に関して、本件特許発明1は、「発光素子」及び「発光装置」であるのに対して、甲2発明は、光源の種類は特定されていない「照明装置」である点。
<相違点2>
本件特許発明1では、「第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となって」いるのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。
<相違点3>
本件特許発明1では、「光制御出射面」は、
「(1Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、
前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(1Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(1I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(1J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている」のに対して、
甲2発明では、
「レンズ体10は、中心部から外周部に向かって、凹状レンズ11で4RR’、接続部P点で4PP’、凸レンズ10a,10bで4QQ’の順に屈折する特性を有し、当該レンズ体10の凸レンズ10a,10bは、外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されている」点。

ウ.判断
以下、事案に鑑み相違点3から検討する。
<相違点3について>
(ア)
第4図の実施例では、凸レンズ10a,10bと凹状レンズ11の接続部P点における屈折特性4PP’を見ると、照明板6との交点であるP’は、凹状レンズ11によってできる光源4の虚像点A3と凸レンズ10aによってできる光源4の虚像点A2とを結ぶ直線上にあること(上記(1)(1-1)イ.(キ)(b)を参照)、及び、「レンズ体10の接続部P点においても明るさむらを生ずることがない」(上記(1)(1-1)ア.(2h)を参照)ことから、甲2発明の当該接続部P点近傍の屈折率は、凸レンズ10a,10bの屈折率から凹状レンズ11の屈折率に滑らかに変化している蓋然性が高いといえる。
(イ)
第4図の実施例についての説示では、「この実施例(第4図の実施例)では照明板6の中心部B付近において、先の実施例(第2図の実施例)の場合よりも光量が多くなるように修正されるために、」(上記(1)(1-1)ア.(2h)を参照)とされており、甲2発明のレンズ体10(第4図の実施例のレンズ体10)では、中心部B付近において、第2図の凸レンズ7a,7bで構成されたレンズ体7(上記(1)(1-1)ア.(2c)を参照)よりも光量が多くなるように修正されるといえる。
(ウ)
「先の実施例(第2図の実施例)におけるレンズ体7の場合にはR点に入射された光は・・・大きく屈折して進み、・・・照明板6上においてR’点より上部位置のR”点に到達する」こと(上記(1)(1-1)ア.(2g)を参照)と併せて第4図の光の屈折特性を見ると、甲2発明の凹状レンズ11での4RR’は、第2図の凸レンズ7a,7bで構成されたレンズ体7の凹部の4RR”よりも、より中心部側に屈折するようになっているといえる。
(エ)
凸レンズ7a,7bで構成されたレンズ体7(第2図の実施例)と比較すると、甲2発明のレンズ体10は、中心部B付近で光量が多くなるように修正され(上記(イ))、レンズ体10の凹状レンズ11での4RR’(光の屈折の特性)は、より中心部側に屈折している(上記(ウ))から、甲2発明のレンズ体10は、中心部B付近へ光を出射する光制御出射面において、「従来の照明装置」のように「第1図に光線l_(1)と光線l_(2)とで示したように、凹レンズ5の特性上、レンズ中心から離れた部分を通る光線ほど光の屈折率が大きくなる」(上記(1)(1-1)ア.(2b)を参照)屈折特性(すなわち、中心部に光を集める屈折特性)を示しているといえる。
(オ)
甲2発明のレンズ体10の凹状レンズ11は、中心部B付近の光の出射を制御している光制御出射面を備えていることが明らかであること(上記ア.(オ)及び第4図を参照)、及び、上記(ア)及び(エ)から、甲2発明のレンズ体10の凹状レンズ11の光制御出射面は、凸レンズ10a,10bの屈折率から凹状レンズ11の屈折率に滑らかに変化している屈折特性を備える(上記(ア))ものの、当該凹状レンズ11の光制御出射面は、中心部に光を集める屈折特性、すなわち、第1図に示される従来の凹レンズ5のような、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が大きくなる屈折特性(上記(エ))を備えていると解することが妥当である。
(カ)
甲第2号証には、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなる旨説示されているが(上記(1)(1-1)ア.(2a)及び(2j)を参照)、上記(オ)のとおり、甲2発明のレンズ体10(第4図の実施例のレンズ体10)の凹状レンズ11の光制御出射面は、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が大きくなる屈折特性を備えているといえるから、当該旨の説示は、甲2発明のレンズ体10の凹状レンズ11の屈折特性について説示するものとはいえない。
当該旨の説示は、外周部へ向かうに従って漸次屈折率が小さくなっていく凸レンズ本来の特性(上記ア.(1-1)(2b)を参照)を示すものであり、各実施例の凸レンズ(第2図の実施例の凸レンズ7a,7b及び第4図の実施例の凸レンズ10a,10b)について述べたものであると理解することが当を得ている。
したがって、甲2発明の(1E)?(1G)で特定される光制御出射面(少なくとも凹状レンズ11の光制御出射面)は、(1K)の構成を備えているとはいえない。
(キ)
甲2発明(第4図の実施例が対応)は、第2図の実施例を改良したものであるが(上記(イ)を参照)、それを更に、特殊な凹状レンズ(例えば、(1K)のような屈折特性を有する凹状レンズ)などを採用して改良することについては、甲第2号証に記載されていない。
また、甲2発明において、凹状レンズ11で構成される箇所も含めて、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようにしようとする場合、凸レンズだけで構成しようとする動機付けはある(改良前の第2図の実施例に戻せばよい)といえるが、凹状レンズ11を、凹レンズのままで、外周部に光を集める、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなる屈折特性(すなわち、(1K)の構成)にする動機付けについては、甲第2号証には記載されておらず示唆もない。
(ク)
さらに、以下に示すように、他の証拠(甲第1、3?11及び14号証)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえないし、当該技術事項が技術常識であるという根拠も存在しない。
甲第4号証(上記1.(1)(1-4)を特に参照)、甲第14号証(上記1.(1)(1-12)及び後述のオ.(イ)を特に参照)には、全体の記載を見ても、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第5?11号証は、LEDの等間隔配置や拡散板について、もっぱら発明の名称ないし図を引用するだけであり(上記1.(1)(1-5)?(1-11)を参照)、光制御出射面についての技術事項を引用するものとはいえないから、光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第1号証(上記1.(1)(1-1)ア.を参照)及び甲第3号証(後記5.(1)(1-1)ア.を参照)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
(ケ)
したがって、甲2発明は、(1K)を備えておらず(上記(カ)を参照)、甲2発明の凹状レンズ11に(1K)の構成を採用する動機付けもなく(上記(キ)を参照)、甲第1、3?11及び14号証にも(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない(上記(ク)を参照)から、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成(特に、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面の(1K)の構成)は、甲2発明並びに甲第1?11及び14号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。

エ.作用効果について
上記相違点3に係る本件補正発明1の構成などにより、本件補正発明1は、顕著な作用効果(本件明細書の段落【0012】等参照)を奏するものである。

オ.請求人の主張について
(ア)主張2-1-1について
甲第2号証の明細書第3頁左下5行?14行の「・・・中心部から外周部に向かつて漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置したから、照明板の中央部付近に集まる光は大きく屈折して、外周に分散され、また外周部に集める光は光線の屈折は小さく、・・・」という記載を根拠として、甲第2号証の第4図に示されたレンズ体10は、(1K)を備えるレンズである(甲第12号証)旨、請求人は主張しているが、当該記載は、甲第2号証の第4図を直接説明する記載ではなく、上記(2)ウ.(カ)で述べたとおり、甲第2号証の第4図(甲2発明)においては、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面(少なくとも凹状レンズ11の光制御出射面)が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(イ)主張2-1-2について
甲第2号証のレンズと同様の形状の甲第14号証のレンズについて、被請求人は(1K)を認めている(甲第13号証)から、同様のことを甲第2号証についても認めているに等しい旨、請求人は主張するが、甲第2号証の第4図のレンズ体10と甲第14号証の第4図のレンズ(樹脂体2)とは、明らかに凹部の形状が大幅に異なり、甲第14号証には、上記(1)(1-12)の事項等を参照しても、本件特許発明1の凹レンズ部分に関する具体的な構成(1K)は開示されていない。
本件にも甲第2号証にも何ら関連しない上記甲第14号証に対して、被請求人が、(1K)を満たす領域が存在しているというだけの意見(答弁書第29頁第5?10行を参照)を述べた、甲第13号証の内容に基づく主張は、意味がない。

(ウ)主張2-1-3について
甲2発明では、光制御出射面は、レンズ中心から外周に向かって漸次屈折率が小さくなるように構成されてなるものである旨、請求人は主張するが、上記(2)ウ.(カ)で述べたとおり、甲第2号証の第4図(甲2発明)においては、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面(少なくとも凹状レンズ11の光制御出射面)が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(エ)主張2-1-4について
甲第2号証において半値角30度のLEDを用いる場合、甲第2号証は5度から30度までという半値角範囲で、構成要件1Hb?1Kを満たすレンズを開示している旨、請求人は主張するが、甲第2号証の第4図のレンズ体10では、5度から30度までという半値角範囲に、少なくとも凹レンズ11が含まれていることは明らかであり、上記(2)ウ.(カ)で述べたとおり、甲2発明(甲第2号証の第4図)のレンズ体10の凹状レンズ11の光制御出射面は(1K)の構成を備えているとはいえず、甲第2号証の第4図では、5度から30度までという半値角範囲で、構成要件(1Hb)?(1K)を満たすレンズを開示しているとはいえない。

(オ)主張2-1-5について
凸レンズ部分に限れば、請求人が主張するとおり、「第2図を参照して説明される実施例と第4図を参照して説明される実施例とはいずれも『中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体』の実施例である」とはいえる。
しかしながら、上記(2)ウ.(カ)で述べたとおり、甲第2号証の第4図(甲2発明)においては、凹状レンズ11の光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない(すなわち、凹状レンズ11はレンズ中心から離れた部分を通る光線ほど光の屈折率が大きくなる従来の凹レンズ(上記(1)(1-1)ア.(2b)を参照)である)から、「第4図を参照して説明される実施例の照明板に照射する光源光の入射区域内において、中心部から外周部に向かって漸次屈折率が小さくなるようなレンズ体を光源と照明板との間に配置することを前提として、第2図を参照して説明される実施例と比較して、第4図を参照して説明される実施例の照明板6の中心部B付近の光量が多くなるということを意味するのであって」という請求人の主張は、その前提が失当であり、「『凹状レンズ11部分においては、必ずしも、レンズ中心から外周に向かって漸次屈折率が小さくなるようには構成されていない』ということはない」とはいえないのである。

(カ)主張2-2-1について
甲第2号証には第4図のP点よりも下部の点について、中心部から外周部に向かうにつれて屈折率が小さくなっていく関係が明示的には記載されていないとして相違点になるとしても、甲第2号証の明細書3ページ左下9?12行を参照すれば実質的に開示されている旨、請求人は主張しているが、上記(ア)で述べたとおりであって、甲第2号証の第4図のP点よりも下部の点(凹状レンズ11の光制御出射面)では、(1K)の構成を備えているとはいえない。
また、甲第2号証には、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面について、(1K)を導き出すための具体的な根拠(本件明細書の段落【0035】及び【0035】に記載の数1及び数2の計算式など)が記載されているとはいえない。
そして、上記(2)ウ.(カ)?(ケ)で述べたとおり、甲2発明において、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(キ)主張2-2-2について
外周部の光は、光軸周辺の光に比べて光が弱いから、光軸周辺の光は屈折比を大きくし、外周部の光は、屈折比を小さくするということは、設計事項である旨、請求人は主張しているが、当該主張は、一般的なLEDについて述べたことか、甲第2号証について述べたことか、何にどのように採用するのか不明であり、当該主張の意図は明確とはいえないが、そもそも設計事項であるという具体的な根拠も示されておらず、単に設計事項であると主張するだけである。

(ク)甲第15号証について
請求人は、甲第15号証に基づく主張もしているが(審判請求書第135頁末行?第136頁第14行)、上記1.(2)オ.(ク)で述べたとおりであるから、当該主張は採用できない。

(ケ)請求人の主張についてのまとめ
上記(ア)?(ク)のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。

カ.小括
したがって、少なくとも上記イ.の相違点3に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易になし得たとはいえないので、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2?11と甲2発明との対比・判断
ア.本件特許発明6について
本件特許発明6の(6Ha)、(6Hb)、(6I)、(6J)及び(6K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明6と甲2発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点3で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

イ.本件特許発明11について
本件特許発明11の(11Ha)、(11Hb)、(11I)、(11J)及び(11K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明11と甲2発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点3で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

ウ.本件特許発明2?5及び7?10について
本件特許発明1に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明2?5については、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりであり、本件特許発明6に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明7?10については、上記ア.に示したとおりである。

エ.小括
上記ア.?ウ.のとおりであるから、本件特許発明2?11は、甲2発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由5(甲第2号証を主引用例とする進歩性の欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?11に係る発明(本件特許発明1?11)は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明)並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

4.無効理由2(甲第2号証を主引例とする新規性欠如)についての当審の判断
上記3.で述べたとおり、本件特許の請求項1及び3に係る発明(本件特許発明1及び3)と甲第2号証に記載された発明(甲2発明)とは、少なくとも上記3.(2)イ.の相違点3で相違しており、本件特許の請求項1及び3に係る発明(本件特許発明1及び3)は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明)であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

5.無効理由6(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如)についての当審の判断
(1)甲各号証に記載された事項及び発明
(1-1)甲第3号証に記載された事項及び発明
ア.甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(3a)
「According to this invention, an improved optical emission device is provided wherein the cover has a light aperture is composed of a concave lens for radiating light into a solid angle of maximum size. Preferrably, the cover includes a convex lens and concave lens for uniform distribution of light into a solid angle of maximum size. The convex lens contacts the concave lens such that there is a smooth transition region between the lenses.」(第1欄第35?43行)
〔和訳〕
「本発明によると、改良された発光装置が提供される。該発光装置において、カバーは凹レンズから形成された、最大サイズの立体角に光を照射する光開口部を有している。好ましくはカバーは凸レンズおよび凹レンズを含み、凹レンズ及び凸レンズは最大の指向角とするための光の均一な分散のためのものである。凸レンズは、レンズ間にスムーズな移行領域を設けるような様式で凹レンズに接している。」
(3b)
「In an optical emission device according to the invention, the light energy is emitted into as large a solid angle as is possible. In contrast to conventional LEDs, in which the emitter semiconductor chip is mounted in specifically shaped reflectors in the LED carrier, the optical emission device according to the invention utilizes a planer chip carrier. The optical emission device can be formed using an emitter semiconductor chip with a lambertian surface and a concave lens integrally formed over the emitter semiconductor chip on the epoxy body of the optical emission device. In this configuration, the radiation in the axial direction of the optical emission device is reduced to 20% and simultaneously distributed over a solid angle from 60 degrees to 120 degrees with a maximum of the radiation at 80 degrees. The uniform distribution of the radiation over this angle is achieved through the convex lens which forms a tangent on the concave lens.
The radiation emerging under a large angle is uniformly deflected over an exterior reflector onto the area to be illuminated. Size and shape of the reflector are developed so that the area to be illuminated is uniformly illuminated. A diffusion screen on the reflector serves to make the radiation of the optical emission device homogeneous.」(第1欄第51?第2欄第7行)
〔和訳〕
「本発明による発光装置では、できるだけ大きい立体角に光エネルギーが発射される。従来のLEDでは、LEDキャリア内の特別な形状を有するリフレクタにエミッタ半導体チップが搭載されている。本発明による発光装置は、従来のLEDとは対称的に、平面チップキャリアを用いる。発光装置は、ランバート面を有するエミッタ半導体チップと、エミッタ半導体チップ上に一体的に形成された凹レンズとを用いて、発光装置のエポキシボディ上に形成し得る。この構成によると,光学発光装置の光軸方向の出射光が20%削減され、同時に、60度から120度にわたって出射光を分散させ、80度で出射光が最大となる。この角度に亘って照射が均一に分布することは、凹レンズの接線を形成する凸レンズによって達成される。
大きな角度での照射は、外部リフレクタによって照明すべき領域に向かって均一に向きを変えられる。リフレクタのサイズおよび形状は、照明すべき領域が均一に照明されるように開発される。リフレクタ上の拡散スクリーンは、発光装置の照射を均一にするのに役立つ。」
(3c)
「FIG. 2 represents an optical emission device according to the invention together with an external reflector and a diffusion screen;
FIG. 3 represents the radiation characteristics of an optical emission device according to the invention;」(第2欄第22?26行)
〔和訳〕
「図2は、本発明による発光装置を、外部リフレクタおよび拡散スクリーンと共に示す。
図3は、本発明による発光装置の照射特性を示す。」
(3d)
「FIG. 3 illustrates the radiation characteristic of an optical emission device O which radiates in the axial direction (0 degrees) with only 20% of the maximum value.
FIG. 4 illustrates the structure of an optical emission device O with an emitter semiconductor chip C, including a cover having a concave lens A and a convex lens E which surrounds the concave lens A. Manufacturing the optical emission device O can be accomplished using substantially the same concepts used in manufacturing standard LEDs. This also applies to the manufacture of the LED chips C. Standard LEDs are structured so that the maximum radiation is concentrated in the axial direction. (See FIG. 1 at 0 degrees.) Radiation characteristics of standard LEDs, as shown in FIG. 1, are achieved by mounting the LED chip in a specifically shaped reflector and an epoxy body developed as convex lens.
In contrast to standard LEDs, an optical device emission device O is formed so that
radiation in a of maximum size solid angle results (FIG. 3). In an optical emisssion device O this is achieved by using a carrier T which is not equipped with a reflector, and an epoxy body built as a concave lens A. In order to avoid creating bright zones (hot spots) in an area to be illuminated by the optical emission device, the radiation in the axial direction (forward radiation) is reduced to approximately 20% of the maximum value (FIG. 3) by utilizing the concave lens A.」(第2欄第43行?第3欄第3行)
〔和訳〕
「図3は、最大値の僅か20%で軸方向(0度)に照射する発光装置Oの照射特性を示す。
図4はエミッタ半導体チップCを備えた発光装置Oの構成を示す。この発光装置Oは、凹レンズA及び凹レンズAを取り囲む凸レンズEを有するカバーを含む。発光装置Oの製造は、標準的なLEDの製造に用いられるものと実質的に同一のコンセプトを用いて行うことができる。このことはLEDチップCの製造にも当てはまる。標準的なLEDは、最大照射が軸方向に集めるように構成されている(図1の0度参照)。標準的なLEDの照射特性は図1に示すように、特別の形状を有するリフレクタおよび凸レンズとして開発されたエポキシボディにLEDチップを搭載することによって達成される。
発光装置Oは標準的なLEDとは対照的に、最大サイズの立体角で照射が得られるように構成されている(図3)。発光装置Oでは、このことはリフレクタを備えないキャリアTと凹レンズAとして構築されたエポキシボディとを用いて達成される。発光装置によって照明すべき領域に明るいゾーン(ホットスポット)が形成されることを避けるために、凹レンズAを用いて軸方向の照射(前方照射)を最大値の約20%まで減少させる(図3)。」
(3e)
「FIG. 7 illustrates the light distribution within reflector R when using an arrangement according to FIG. 2. As illustrated in FIG. 7, the diffusion screen S on the reflector R, is uniformly illuminated.」(第3欄第7?10行)
〔和訳〕
「図7は、図2による構造を用いた場合のリフレクタR内の光分布を示す。図7に示すように、リフレクタR上の拡散スクリーンSは均一に照射されている。」
(3f)
「FIG. 8 illustrates an embodiment of an optical emission device O including an SMD component which can be mounted directly on a surface. As shown in FIG. 8, the curvature of the convex lens E is twice the curvature of concave lens A. It is, further, shown that at the transition between concave lens A and convex lens E the tangents on both lenses are identical. Additionally, the convex lens contacts the concave lens such that there is a smooth transition between the lenses. This type of transition eliminates the need for an additional lens which can have undesirable effects. The radius of curvature of the concave lens is more than twice that of the distance between chip C and that point of the concave lens A closest to chip C. The radius of curvature of the concave lens A is 2.5 times as large as this distance between chip C and the point of the concave lens A lying closest to chip C.」(第3欄第11?27行)
〔和訳〕
「図8は、SMDコンポーネントを含む発光装置Oの一実施形態を示す。SMDコンポーネントは、表面上に直接搭載可能である。図8に示すように、凸レンズEの曲率は凹レンズAの曲率の2倍である。さらに凹レンズAと凸レンズEとの移行部において、両レンズの接線は同一であることが示されている。さらに凸レンズは、レンズ間の移行がスムーズになるような様式で凹レンズに接している。このタイプの移行によって、望ましくない影響を与え得る追加のレンズを用いる必要がなくなる。凹レンズの曲率半径は、チップCと凹レンズAのうちチップCから最短の点との間の距離の2倍より大きい。凹レンズAの曲率半径は、チップCと凹レンズAのうちチップCから最短の点との間の距離の2.5倍である。」
(3g)
「In many cases replacing light bulbs with optical emitter components O is readily possible. For optimum replacement it may become necessary to use an appropriately shaped reflector R as well as a diffusion screen S.」(第3欄第63行?第3欄第67行)
〔和訳〕
「多くの場合、電球に代えて発光コンポーネントOを用いることは容易に可能である。最適に取り替えるためには、適切な形状のリフレクタRおよび拡散スクリーンSを用いることが必要となり得る。」
(3h)
FIG1?8。





イ.甲第3号証に記載された発明
(ア)
上記ア.(3d)の「図4は・・・半導体チップCを備えた発光装置Oの構成を示す。この発光装置Oは、凹レンズA及び凹レンズAを取り囲む凸レンズEを有するカバーを含む」及び「LEDチップC」という記載、並びに、FIG4?8から、「半導体チップC」と「LEDチップC」とはいずれもFIG4の記号Cを示していること、及び、FIG4の当該LEDチップCが凹レンズA及び凹レンズAを取り囲む凸レンズEを有するカバーで覆われていること、及び、発光装置Oの当該カバーは、凹レンズA及び凹レンズAを取り囲む凸レンズEを有するから、LEDチップCからの光の入射面とその入射した光の方向を変えることで光を制御する出射面とを備えていることが明らかである。
したがって、甲第3号証には、「LEDチップCからの光をカバーを介して出射するようになっている発光装置O」の構成及び「カバーは、前記LEDチップCからの光がカバーに入射する光入射面と、LEDチップCからの光の出射を制御する出射面とを備える」構成が、開示されているといえる。
(イ)
FIG4?6(特に、FIG6は発光装置Oの光軸に沿った方向から見た図であることが明らかであること、及び、FIG5のφ3,1が直径を示すと考えられること)から、甲第3号証には、「カバーは、発光装置Oの光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いることが開示されているといえる。
(ウ)
上記ア.(3b)の「光学発光装置の光軸方向」は、「発光装置Oの光軸方向」といえること、「凹レンズAを用いて軸方向の照射(前方照射)を最大値の約20%まで減少させる(図3)。」(上記ア.(3d)を参照)と記載されていること、及び、FIG3から、上記ア.(3b)の「光学発光装置の光軸方向の出射光が20%削減され」ることは、「発光装置Oの光軸方向の出射光が最大値の約20%まで削減され」ることを意味しているといえる。
(エ)
「図3は、・・・発光装置Oの照射特性を示す。図4は、・・・チップCを備えた発光装置Oの構成を示す。この発光装置Oは、凹レンズA及び凹レンズAを取り囲む凸レンズEを有するカバーを含む。」及び「発光装置Oは標準的なLEDとは対照的に、最大サイズの立体角で照射が得られるように構成されている(図3)。発光装置Oでは、このことはリフレクタを備えないキャリアTと凹レンズAとして構築されたエポキシボディとを用いて達成される。」(上記ア.(3d)を参照)から、FIG3は、外部のリフレクタを含まないFIG4?6及び8等のLEDチップCをレンズで覆った発光装置Oの照射特性を示しているものと考えられ、当該FIG3から、「発光装置Oの出射光の分布は、約40度以下では、発光装置Oの光軸方向の出射光が最大値の約20%まで削減され、約40度から60度までは徐々に増加し、約60度?約80度ではムラがあり、80度で最大値となる」ことが、看取される。
「発光装置Oの出射光の分布は、・・・80度で最大値となる」ことは、「80度で出射光が最大となる」(上記ア.(3b)を参照)という記載からしても、明らかである。
(オ)
上記(ア)?(エ)、上記ア.(3a)?(3h)並びに特にFIG3?6及び8から、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

[甲3発明]
「LEDチップCからの光をカバーを介して出射するようになっている発光装置Oにおいて、
凹レンズ、及び、凹レンズを取り囲みレンズ間にスムーズな移行領域を設けるような様式で凹レンズに接している凸レンズを有する、前記カバーは、前記LEDチップCからの光が前記カバーに入射する光入射面と、前記LEDチップCからの光の出射を制御する出射面とを備え、
発光装置Oの光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
発光装置Oの出射光の分布は、約40度以下では、発光装置Oの光軸方向の出射光が最大値の約20%まで削減され、約40度から60度までは徐々に増加し、約60度?約80度ではムラがあり、80度で最大値となり、
60度から120度に渡って出射光を分散させ、この角度に亘って照射が均一に分布することは、凹レンズの接線を形成する凸レンズによって達成される、
発光装置O。」

(1-2)甲第1、2、4?11及び14号証に記載された事項
甲第1号証に記載された事項は、上記1.(1)(1-1)ア.のとおりである。
甲第2号証に記載された事項は、上記3.(1)(1-1)ア.のとおりである。
甲第4?11及び14号証に記載された事項は、上記1.(1)(1-4)?(1-12)のとおりである。

(2)本件特許発明1と甲3発明との対比・判断
ア.対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)
甲3発明の「LEDチップC」、「カバー」、「発光装置O」及び「光軸」は、それぞれ、本件特許発明1の「発光素子」、「光束制御部材」、「発光装置」及び「基準光軸」に相当する。
(イ)
上記(ア)から、甲3発明の「LEDチップCからの光をカバーを介して出射するようになっている発光装置Oにおいて、・・・・前記カバーは、前記LEDチップCからの光が前記カバーに入射する光入射面」を備える構成は、本件特許発明1の「(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面」を備える構成に相当する。
(ウ)
甲3発明の「前記カバー(光束制御部材)」の「LEDチップCからの光の出射を制御する出射面」は、本件特許発明1の「光制御出射面」に相当すること、及び、上記(ア)から、甲3発明の「LEDチップCからの光をカバーを介して出射するようになっている・・・前記カバーは、・・・前記LEDチップCからの光の出射を制御する出射面」を備え、「発光装置Oの光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いる構成は、本件特許発明1の「前記光束制御部材は、・・・(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面」を備え、「(1D) 発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いる構成に相当する。
(エ)
甲3発明の「凹レンズ、及び、凹レンズを取り囲みレンズ間にスムーズな移行領域を設けるような様式で凹レンズに接する凸レンズを有する、前記カバー」が備える「前記LEDチップCからの光の出射を制御する出射面」は、「凹レンズ」の「出射面」と「凸レンズ」の「出射面」とから構成されているといえる。
そして、当該「凹レンズ」の「出射面」は、「凹レンズの曲率半径」(上記(1)(1-1)ア.(3f)を参照)及びFIG.4?8を参照すると、「球の一部を切り取ったような凹み形状」であるといえるし、「発光装置の光軸(基準光軸)近傍で且つ前記光軸(基準光軸)を中心とする所定範囲に位置」しているといえる。
(オ)
甲3発明の「凹レンズ、及び、凹レンズを取り囲みレンズ間にスムーズな移行領域を設けるような様式で凹レンズに接する凸レンズを有する、前記カバー」の「スムーズな移行領域」は、凹レンズの出射面から凸レンズの出射面に渡っているといえるし、「凹レンズと凸レンズとの移行部において、両レンズの接線は同一である」(上記(1)(1-1)ア.(3f)を参照)から、凹レンズの出射面と凸レンズの出射面の接続部分は変曲点となっているといえる。
(カ)
甲3発明の「凹レンズ」の「出射面」及び「凸レンズ」の「出射面」は、それらの接続部分が変曲点となっている(上記(オ)を参照)から、それぞれ、本件特許発明1の「第1の出射面」及び「第2の出射面」に相当する。
(キ)
上記(ア)、(エ)、(オ)及び(カ)から、甲3発明の「凹レンズ、及び、凹レンズを取り囲みレンズ間にスムーズな移行領域を設けるような様式で凹レンズに接している凸レンズを有する、前記カバーは、・・・前記LEDチップCからの光の出射を制御する出射面とを備え、発光装置Oの光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されて」いる構成は、本件特許発明1の「(1E) 光制御出射面は、発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている」構成に相当する。

イ.一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「(1A) 発光素子からの光を光束制御部材を介して出射するようになっている発光装置において、
(1B) 前記光束制御部材は、前記発光素子からの光が前記光束制御部材に入射する光入射面と、
(1C) 前記発光素子からの光の出射を制御する光制御出射面とを備え、
(1D) 前記発光装置の基準光軸に沿った方向から見た形状が略円形形状となるように形成されており、
(1E) 前記光制御出射面は、
前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と、
(1F) この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている、
(1L) 発光装置。」
<相違点>
本件特許発明1では、「光制御出射面」は、
「(1Ha) 前記発光素子から出射した光のうち、少なくともその最大強度の光が出射される方向から出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向までの角度範囲内に出射される光について、前記光束制御部材に入射して前記光制御出射面に到達した前記角度範囲内の光とその到達点(Px)を通り前記発光装置の基準光軸と平行な線とのなす角度をθ1とし、
前記到達点(Px)を通り且つ前記基準光軸に直交する線(A)と前記到達点(Px)における輪郭線に対する接線(B)とのなす角度をθ3とし、
前記光制御出射面の前記到達点(Px)から出射する光の出射角をθ5とすると、
(1Hb) 前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し、
(1I) 前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており、
(1J) 前記到達点(Px)からの出射光が、前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き、θ5/θ1>1の関係を満足するとともに、
(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている」のに対して、
甲3発明では、
「発光装置Oの出射光の分布は、約40度以下では、発光装置Oの光軸方向の出射光が最大値の約20%まで削減され、約40度から60度までは徐々に増加し、約60度?約80度ではムラがあり、80度で最大値となり、
60度から120度に渡って出射光を分散させ、この角度に亘って照射が均一に分布することは、凹レンズの接線を形成する凸レンズによって達成される」点。

ウ.判断
以下、相違点について検討する。
(ア)
甲3発明の照射特性(FIG3の出射光の分布)は、LEDチップC自体の照射特性、レンズの材質、レンズの屈折特性など、種々のパラメータによって定まるものであり、レンズの照射特性とレンズの屈折特性とが必ずしも一定の関係にあるものとはいえないから、甲3発明の「出射光の分布は、約40度以下では、発光装置Oの光軸方向の出射光が最大値の約20%まで削減され、約40度から60度までは徐々に増加」する照射特性から、甲3発明のレンズの屈折特性(特に、入射角(θ1)と出射角(θ5)との関係)を求められるものではない。
(イ)
FIG3では、90度を超える範囲でも光が出射していることと、FIG7を併せ見ると、FIG3の90度を超える範囲では、全反射などをした光が出射している蓋然性が高く、本件特許発明1のように発光素子からの光が直接凹レンズ部及び凸レンズ部から出射しているものとは異なっている。
(ウ)
本件の図10において、破線Bは図15に示す光束制御部材が凸レンズだけで構成されている従来技術の出射光量の分布を、実線Aは本件特許発明1の出射光量の分布を、それぞれ示しており(本件の明細書の段落【0059】及び図15を参照)、甲第3号証において、FIG1は光束制御部材が凸レンズだけで構成されている甲3発明の従来技術の照射特性(上記(1)(1-1)ア.(3d)の「標準的なLEDの照射特性は図1に示すように、・・・凸レンズとして・・・達成される。」を参照)を、FIG3は甲3発明の発光装置Oの照射特性(上記(1)(1-1)イ.(エ)を参照)をそれぞれ示しているところ、本件の図10と甲第3号証FIG1及びFIG3とは、縦軸及び横軸のパラメータがそれぞれ異なるものの、出射光の分布を示す点では共通しているから、FIG3の90度を超える範囲を除いて(上記(イ)を参照)、甲3発明と本件特許発明1の従来技術同士の出射光の分布傾向を比較すること及び甲3発明の出射光の分布傾向と本件特許発明1の出射光の分布傾向とを比較することはできる。
(エ)
光束制御部材が凸レンズだけで構成されている、甲3発明の従来技術の照射特性(FIG1)と本件特許発明1の従来技術の照射特性(本件の図10の点線A)は、いずれも、光量が中心(0度)で最大となり角度が大きくなるほど減少していく山型形状であり、類似の照射特性を示しているといえる。
ところが、甲3発明の出射光の分布(FIG3)は、光量が、中心部付近を含む約40度以下では最大値の約20%であり、かなり暗く、明るさの最大値(80度)が存在する外周側の60度?80度はムラがあり、かつ、明るいのに対して、本件特許発明1の出射光の分布(図10)は、光量が、中心部付近では40%を超え、それほど暗くはなく、角度が大きくなるほど減少していく山型形状となっており、両者の照射特性は明らかに相違しているといえる。
(オ)
したがって、甲3発明のレンズは、入射角(θ1)と出射角(θ5)との関係、すなわち、屈折特性を特定することができず(上記(ア)を参照)、さらに、本件特許発明1に比較して照射特性も明らかに相違している(上記(エ)を参照)から、甲3発明のレンズの出射面((1E)?(1G)で特定される光制御出射面)が、(1K)の構成を備えているとはいえない。
(カ)
甲3号証には、入射角(θ1)と出射角(θ5)との関係(屈折特性)についての記載はないから、屈折特性のパラメータに着目する根拠は存在せず、照射特性からだけではレンズの屈折特性を導き出せるものでもないから((上記(ア)を参照)、甲第3号証には、屈折特性を得るために、(1K)の構成を採用しようとする動機付けが示唆されているとはいえない。
(キ)
さらに、以下に示すように、他の証拠(甲第1、2、4?11及び14号証)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえないし、当該技術事項が技術常識であるという根拠も存在しない。
甲第4号証(上記1.(1)(1-4)を特に参照)、甲第14号証(上記1.(1)(1-12)及び後述のオ.(イ)を特に参照)には、全体の記載を見ても、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第5?11号証は、LEDの等間隔配置や拡散板について、もっぱら発明の名称ないし図を引用するだけであり(上記1.(1)(1-5)?(1-11)を参照)、光制御出射面についての技術事項を引用するものとはいえないから、光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
甲第1号証(上記1.(1)(1-1)ア.を参照)及び甲第3号証(上記3.(1)(1-1)ア.を参照)にも、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
(ク)
したがって、甲3発明は、(1K)の構成を備えておらず(上記(オ)を参照)、甲3発明の凹レンズに(1K)の構成を採用する動機付けもなく(上記(カ)を参照)、甲第1、2、4?11及び14号証にも(1K)の構成を備える技術事項が記載ないし示唆されているとはいえない(上記(キ)を参照)から、上記相違点に係る本件特許発明1の構成(特に、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面の(1K)の構成)は、甲3発明並びに甲第1?11及び14号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。

エ.作用効果について
上記相違点に係る本件補正発明1の構成などにより、本件補正発明1は、顕著な作用効果(本件明細書の段落【0012】等参照)を奏するものである。

オ.請求人の主張について
(ア)主張3-1-1について
指向角が最大であるためには、光が集まりやすい中央部分では、光を拡散させることが必要となり、外周部における屈折が大きくなることを防がなければならないので、外周部では光の屈折角を中央部ほどには大きくしない形状とすることが必要となる、したがって、甲第3号証の図8等に示された凹レンズA及び凸レンズEは、(1K)を満たすレンズである(甲第12号証)旨、請求人は主張しているが、指向角を最大とするために、当該主張のとおり、中央部分で光を拡散させ(中央部分で光を拡散させることは、従来の凹レンズでも対応できるといえる。)、外周部では光の屈折角を中央部ほどには大きくしない形状としようとする場合、凹レンズA及び凸レンズEを前提としても、その手法は、例えば反射を利用するなど種々想定され、光の拡散状態についても種々の態様が想定されるから、指向角の範囲で、具体的に(1K)の構成で得られる屈折特性(特に、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面において、(1K)の「徐々に」)を想到し得るものではない。
また、甲第12号証では、(1K)を具体的な根拠(数式など)に基づいて導き出していないから、甲第12号証が、甲第3号証において(1K)の構成を採用できるという根拠とはなり得ないし、上記ウ.(オ)で述べたとおり、甲第3号証については、屈折特性を特定することはできず、本件特許発明1に比較して照射特性も明らかに相違しており、甲3発明の(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(イ)主張3-1-2について
甲第3号証のレンズと同様の形状の甲第14号証のレンズについて、被請求人は(1K)を認めている(甲第13号証)から、同様のことを甲第3号証についても認めているに等しい旨、請求人は主張するが、甲第3号証のFIG.4?8のレンズであるカバーと甲第14号証の第4図のレンズ(樹脂体2)とは、明らかに凹部の形状が大幅に異なり、甲第14号証には、上記(1)(1-12)の事項等を参照しても、本件特許発明1の凹レンズ部分に関する具体的な構成(1K)は開示されていない。
本件にも甲第3号証にも何ら関連しない上記甲第14号証に対して、被請求人が、(1K)を満たす領域が存在しているというだけの意見(答弁書第29頁第5?10行を参照)を述べた、甲第13号証の内容に基づく主張は、意味がない。

(ウ)主張3-1-3について
審判請求書第132頁第3行?第133頁第5行、甲第12号証鑑定事項3に記載のとおり、甲3発明は指向角が大きい(均一な)照明を目的としていること等から、甲3発明のレンズはθ5/θ1の値はθ1の増加にしたがって小さくなる形状である旨、請求人は主張しているが、上記(ア)で述べたとおり、指向角が大きい(均一な)照明であっても、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(エ)主張3-1-4について
甲第3号証のFIG.3は照明特性の結果グラフであるところ、照明特性を表す曲線は少なくとも60度程度までなめらかとなっているから、甲3発明のレンズはθ1が大きくなるにつれて、θ5/θ1が徐々に小さくなるレンズである(甲第12号証鑑定事項3、審判請求書第132頁第3行?第133頁第5行)旨、請求人は主張するが、甲第3号証のFIG.3の照射特性は、本件特許発明1とは大幅に相違し(上記(2)ウ.(エ)を参照)、甲第3号証については、屈折特性も特定することはできず、甲3発明の(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない(上記(2)ウ.(オ)を参照)。

(オ)主張3-1-5について
半値角が34度の発光素子を採用することは当業者が適宜なし得る事項であり、半値角が34度であれば5度(光軸近傍)から34度までの範囲で構成要件1J、1Kを満たす公知文献が存在すれば、本件発明1には新規性がない旨、請求人は主張するが、甲3発明は、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえないから((上記(2)ウ.(オ)を参照)、半値角について検討してみても意味はない。
なお、甲第3号証のFIG.2において、半値角が34度であれば、半値角が凹レンズ部分に位置する蓋然性が高く、ますます、(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえない。

(カ)主張3-2-1について
甲第3号証には凹レンズ部について、中心部から外周部に向かうにつれて屈折率が小さくなっていく関係が明示的には記載されていないとして相違点になるとしても、甲第3号証の明細書カラム1の39?41行(凹レンズ及び凸レンズは最大の指向角とするための光の均一な分散のためのものである。)を参照すれば実質的に開示されている(甲第12号証)、外周部の光は、光軸周辺の光に比べて光が弱いから、光軸周辺の光は屈折比を大きくし、外周部の光は、屈折比を小さくするということは、設計事項である旨、請求人は主張するが、主張の根拠として示す引用箇所が異なっていても、当該主張は、主張3-1-1と実質的に同じといえるから、上記(ア)で述べたとおり、甲3発明の(1E)?(1G)で特定される光制御出射面が、(1K)の構成を備えているとはいえないし、上記(2)ウ.(オ)?(ク)で述べたとおり、当該(1K)の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(キ)甲第15号証について
請求人は、甲第15号証に基づく主張もしているが(審判請求書第146第1?15行)、上記1.(2)オ.(ク)で述べたとおりであるから、当該主張は採用できない。

(ク)請求人の主張についてのまとめ
上記(ア)?(キ)のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。

カ.小括
したがって、上記イ.の相違点に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易になし得たとはいえないので、本件特許発明1は、甲3発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2?11と甲3発明との対比・判断
ア.本件特許発明6について
本件特許発明6の(6Ha)、(6Hb)、(6I)、(6J)及び(6K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明6と甲3発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

イ.本件特許発明11について
本件特許発明11の(11Ha)、(11Hb)、(11I)、(11J)及び(11K)と、本件特許発明1の(1Ha)、(1Hb)、(1I)、(1J)及び(1K)とは、同じ構成であるから、本件特許発明11と甲3発明とを対比すると、少なくとも、上記(2)イ.に示した相違点で相違しており、その相違点についての判断は、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりである。

ウ.本件特許発明2?5及び7?10について
本件特許発明1に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明2?5については、上記(2)ウ.?カ.に示したとおりであり、本件特許発明6に他の発明特定事項を直列的に付加している本件特許発明7?10については、上記ア.に示したとおりである。

エ.小括
上記ア.?ウ.のとおりであるのから、本件特許発明2?11は、甲3発明並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)無効理由6(甲第3号証を主引用例とする進歩性の欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?11に係る発明(本件特許発明1?11)は、甲第3号証に記載された発明(甲3発明)並びに甲第1?11及び14号証に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

6.無効理由3(甲第3号証を主引例とする新規性欠如)についての当審の判断
上記5.で述べたとおり、本件特許の請求項1及び3に係る発明(本件特許発明1及び3)と甲第3号証に記載された発明(甲3発明)とは、少なくとも上記5.(2)イ.の相違点で相違しており、本件特許の請求項1及び3に係る発明(本件特許発明1及び3)は、甲第3号証に記載された発明(甲3発明)であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとはいえない。

7.無効理由7(明確性要件違反)についての当審の判断
(1)「出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向」について
請求人は、「構成要件1-Hの「出射光の強度が最大強度の半分の値となる光」は、LEDの形状等によって異なるため、不明確である。」(第3 2.(7)ア.)と主張する。
しかしながら、本件特許発明1は、
「(1E)前記光制御出射面は、・・・第1の出射面と、
(1F)・・・第2の出射面とを有し、
(1G) これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっている、
・・・
(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている」から、
「前記光制御出射面」を特定している「(1K) このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている」事項は、前記光制御出射面を構成している、第1の出射面から変曲点を超えて第2の出射面に渡って該当しているから、大きい方でθ1の角度の範囲を規定する「出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向(すなわち、半値角)」は、第2の出射面(凸レンズ部分)に位置しているものとして構成を特定することができるので、本件特許発明1の「出射光の強度が最大強度の半分の値となる光が出射される方向」という発明特定事項は、明確でないとはいえない。
このように、本件特許発明1は、半値角の範囲で照射特性を特定するものであるから、半値角がLEDの形状等によって異なったとしても、不明確となるものではなく、請求人の上記主張は採用できない。

(2)「徐々に」について
請求人は、「構成要件1-H、1-I、1-K、の「徐々に」は、どの程度の変化率を指すのかが不明確である。」(第3 2.(7)イ.)と主張する。
しかしながら、「徐々」という文言は、「(多く「?に」の形で)ゆるやかに進むさま。少しずつ変化するさま。ゆっくり。だんだん。「?に歩を進める」「?に水位があがる。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]という意味であり、本件特許発明1の1Kの「徐々に」という発明特定事項は、構成を特定できるから、明確でないとはいえない。
そして、「徐々に」は、請求人が主張する「どの程度の変化率」かについてまで、特定するものではないから、請求人の上記主張は採用できない。

(3)対象外になる光の範囲を規定する「近傍」の範囲につて
請求人は、「構成要件1-Jの「基準光軸近傍の光」は、「θ5/θ1>1の関係」及び「θ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成される」の対象外になる光の範囲であるが、「近傍」がどの範囲を指すのか不明であるため、不明確である。」(第3 2.(7)ウ.)と主張する。
しかしながら、本件特許発明1の(1K)が該当する光の範囲は、光制御出射面でいうと、第1の出射面から変曲点を超えて第2の出射面に渡っているものであるから(上記(1)を参照)、対象外になる光の範囲を規定する「近傍」は、変曲点よりも光中心軸寄りであると特定できるし、明細書の段落【0034】の「近傍は、例えば、θ1が±5°以内程度とされることが好ましい。」という記載などを参酌すれば、その意味及び構成は明らかであり、本件特許発明1の構成要件1-Jの「基準光軸近傍の光」の「近傍」という発明特定事項は、構成を特定できるから、明確でないとはいえない。
したがって、「構成要件1-Jの「基準光軸近傍の光」は、・・・、不明確である。」とはいえず、請求人の上記主張は採用できない。

(4)
上記(1)?(3)は、本件特許発明1と同様の構成を少なくとも備える、本件特許発明6及び本件特許発明11についてもいえるから、本件特許発明1、本件特許発明6、本件特許発明11、本件特許発明1を直接または間接に引用する本件特許発明2?5、及び、本件特許発明6を直接または間接に引用する引用する本件特許発明7?10は、明確でないとはいえない。

(5)無効理由7(明確性要件違反)についてのまとめ
以上から、本件特許の請求項1?11に係る発明(本件特許発明1?11)は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないものではなく、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきであるものではない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?11に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2016-07-22 
結審通知日 2016-07-27 
審決日 2016-08-23 
出願番号 特願2004-278888(P2004-278888)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (F21Q)
P 1 113・ 121- Y (F21Q)
P 1 113・ 113- Y (F21Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 拓  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 和田 雄二
出口 昌哉
登録日 2006-11-02 
登録番号 特許第3875247号(P3875247)
発明の名称 発光装置、面光源装置、表示装置及び光束制御部材  
復代理人 鈴木 佑一郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 安友 雄一郎  
代理人 若山 俊輔  
代理人 朝吹 英太  
代理人 安國 忠彦  
代理人 野中 信宏  
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