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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1340546
審判番号 不服2017-8364  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-08 
確定日 2018-06-05 
事件の表示 特願2013-108014「光ファイバテープ心線及び光ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 8日出願公開、特開2014-228688、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月22日の出願であって、平成28年8月18日付け(同年9月6日発送)で拒絶理由通知がされ、同年11月4日付けで手続補正がされ、平成29年3月30日付け(同年4月4日送達)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年8月8日に前置報告がされ、同年10月18日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年3月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 本願請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献1、3?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-088445号公報
3.実願昭61-126582号(実開昭63-033110号)のマイクロフィルム
4.特開2007-279226号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

平成29年6月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成28年11月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?3を次のように補正することを含むものである。

(補正事項1) 補正前の請求項1に記載された「光ファイバ心線」に、「前記両端のうち少なくとも一端の隣り合う2本の光ファイバ心線の外被部分のみに、前記光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングが付与されていること」という事項を追加する補正。

(補正事項2) 補正前の請求項2を削除し、本件補正前の引用形式で記載された請求項3を、補正後の引用形式で記載された請求項2に繰り上げるとともに、その引用する項番を正す補正。

1 補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項2に係る発明特定事項を、補正前の請求項1に係る発明に追加したことにより、補正前の請求項1を削除したものであるから、特許請求の範囲の削除を目的とするものである。
そして、補正事項1は、当初明細書の段落【0012】、【0026】?【0029】に記載されているから、新規事項を追加するものではない。

2 補正事項2について
補正事項2は、特許請求の範囲の削除を目的とするものである。

したがって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たしている。また、補正後の請求項1?2に係る発明は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明(以下、それぞれ「本願補正発明1」?「本願補正発明2」)とする。)は、平成29年6月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの本願補正発明1は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
6本以上の光ファイバ心線が平行一列に配列され、全体に共通の樹脂からなる共通被覆が形成された光ファイバテープ心線であって、
両端の光ファイバ心線と該両端の光ファイバ心線と隣り合う光ファイバ心線との間の長手方向には、前記共通被覆からなる連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され、
前記両端の光ファイバ心線に挟まれた内部の各光ファイバ心線は、一方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に前記共通被覆からなる連結部と前記共通被覆に入れた切れ込みからなる非連結部とが間欠的に形成された間欠連結部が形成され、他方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に前記共通被覆からなる連結部が連続的に形成された連続連結部が形成されており、
前記両端のうち少なくとも一端の隣り合う2本の光ファイバ心線の外被部分のみに、前記光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングが付与されていることを特徴とする光ファイバテープ心線。」

第5 引用文献等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-088445号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。

(1) 「【0055】
図4(a)に示すように、この多心光ファイバテープは、複数本(この例では2本)の少心光ファイバテープ11a、11b同士を長手方向の所定間隔ごとに部分的に連結部3によって連結させたものである(なお、以下の実施形態において、少心光ファイバテープ11a、11bは、多心光ファイバテープの構成単位となる為、単位光ファイバテープと呼ぶことも出来る)。少心光ファイバテープ11a、11bのそれぞれは、複数本(この例では2本)の光ファイバ心線1、1を並列させてなる。前記各少心光ファイバテープ11a、11b内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施されている。例えば少心光ファイバテープ11aは、2本の光ファイバ心線1、1に対して、一括して被覆2を施して一体化して成るものである。なお、少心光ファイバテープ11a、11bを構成する光ファイバ心線1の本数は、2本に限定されず、1本でもよいし、3本以上であってもよい。また光ファイバ心線1は、単一の光ファイバのみならず、複数の光ファイバが束ねられて一体化されたものや、複数の光ファイバがテープ状に結合されたものであってもよい。
【0056】
連結部3は、合成樹脂材料よりなり、並列された少心光ファイバテープ11a、11bの被覆2同士を連結させている。すなわち、連結部3は、一端部が少心光ファイバテープ11aに属する光ファイバ心線1の被覆2に接合され、他端部が少心光ファイバテープ11bに属する光ファイバ心線1の被覆2に接合されている。すなわちこの実施形態においては、2本の光ファイバ心線1,1からなる少心光ファイバテープ11a、11bを2本並列させ、これらを連結部3によって連結して光ファイバテープが構成されている。
【0057】
この光ファイバテープにおいて、光ファイバ心線1の被覆2をなす樹脂材料と、連結部3をなす樹脂材料とは、異なる材料から形成されている。」

(2) 「【0080】
この光ファイバテープは、図7(a)に示すように、一、または、複数の光ファイバ心線1からなる少心光ファイバテープを、3本以上並列させて構成してもよい。図7においては、4本の少心光ファイバテープ2a,2b,2c,2dを並列させ、連結部3によって連結した光ファイバテープを例示している。

(3) 図4は、次のものである。


(4) 図7は、次のものである。


(5) 図7を参考にすると、上記(1)の「この多心光ファイバテープは、複数本(この例では2本)の少心光ファイバテープ11a、11b同士を長手方向の所定間隔ごとに部分的に連結部3によって連結させたものである(なお、以下の実施形態において、少心光ファイバテープ11a、11bは、多心光ファイバテープの構成単位となる為、単位光ファイバテープと呼ぶことも出来る)。少心光ファイバテープ11a、11bのそれぞれは、複数本(この例では2本)の光ファイバ心線1、1を並列させてなる。前記各少心光ファイバテープ11a、11b内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施されている。」及び上記(2)の「4本の少心光ファイバテープ2a,2b,2c,2dを並列させ、連結部3によって連結した光ファイバテープ」からみて、
4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dを並列させ、長手方向の所定間隔ごとに部分的に合成樹脂材料からなる連結部3によって連結させ、
前記少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dのそれぞれは、2本の光ファイバ心線1、1を並列させて構成し、
前記各少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施されていることが読み取れる。

これらの記載によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用文献1発明」とする。)が記載されている。

「4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dを並列して構成された多心光ファイバテープであって、
前記少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dのそれぞれは、2本の光ファイバ心線1、1を並列させて構成し、
前記4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dは、長手方向の所定間隔ごとに部分的に合成樹脂材料からなる連結部3によって連結され、
前記各少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施された、
多心光ファイバテープ。」

2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(実願昭61-126582号(実開昭63-033110号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 「考案が解決しようとする問題点
上述のようなテープ状光ファイバ心線は、例えば接続の際等に、その共通被覆を除去して、各光ファイバ素線毎に処理する必要が生じる場合がある。ところが、第5図にも示すように、多くのテープ状光ファイバ心線では、これを構成する複数の光ファイバ素線が、光ファイバ素線の配列平面に直角な対称軸について線対称に配列されているので、長い光ファイバ心線の両端で対応する各光ファイバ素線を識別することが困難になる場合がある。
即ち、第5図に示したテープ状光ファイバ心線の場合は、図面上の左右が対称なために、長いケーブルの両端で対応する光ファイバ素線を識別することが困難である。
そこで、従来のテープ状光ファイバ心線では、第5図に斜線で示すように、その共通被覆層の表面の一部にインキ等により表示50を設け、これによって光ファイバ素線を識別するように構成していた。
しかしながら、このような従来の表示方法は、一般に紫外線硬化性あるいは熱硬化性等の樹脂等の濡れ性の悪い共通被覆層の表面にインキを塗布して形成しているので、インキとテープ心線被覆の間の接着が不十分であり、こすれや引っかきによってインキが簡単に剥がれ、実際の使用状態では表示が消滅してしまうという問題があった。
そこで、本考案の目的は、容易に消えることのない表示を備え、各光ファイバ素線を確実且つ容易に識別することのできるテープ状光ファイバ心線を提供することにある。
しかしながら、このような従来の表示方法は、一般に紫外線硬化性あるいは熱硬化性等の樹脂等の濡れ性の悪い共通被覆層の表面にインキを塗布して形成しているので、インキとテープ心線被覆の間の接着が不十分であり、こすれや引っかきによってインキが簡単に剥がれ、実際の使用状態では表示が消滅してしまうという問題があった。
そこで、本考案の目的は、容易に消えることのない表示を備え、各光ファイバ素線を確実且つ容易に識別することのできるテープ状光ファイバ心線を提供することにある。

問題点を解決するための手段
即ち、本考案に従って、各々が保護被覆層を備える複数の光ファイバ素線を同一平面上に平行に配列し、該複数の光ファイバ素線を共通の被覆層により一体に被覆して構成されるテープ状光ファイバ心線であって、前記光ファイバ素線の配列平面に直角な対称軸について非対称に、前記共通被覆層と一体に形成された着色部が、該テープ状光ファイバ心線の長さ方向に該テープ状光ファイバ心線の外部から目視できるように設けられていることを特徴とするテープ状光ファイバ心線が提供される。
また、本考案の好ましい態様のひとつとして、前記着色部は、硬化前の前記共通被覆層に圧入された着色樹脂であることを特徴とするテープ状光ファイバ心線が挙げられる。
更に、本考案の異なる態様として、前記共通被覆層が光硬化性樹脂により形成されおり、前記着色部が該共通被覆層の表面から実質的に一定の厚さを保って形成されていることを特徴とするテープ状光ファイバ心線が挙げられる。
また更に、前記共通被覆層が透明あるいは半透明であり、前記着色部は、前記複数の光ファイバ素線のうちの他の光ファイバ素線とは異なる色彩を有する所定の少なくとも1本が備える前記保護被覆層であることを特徴とするテープ状光ファイバ心線も挙げられるが、また、これらに限定されるものではない。」(4頁8行?7頁8行)

(2) 「 以下に本考案をより具体的に詳述するが、以下に示されるものは本考案の実施例に過ぎず、本考案の技術的範囲を何等制限するものではない。
第1図(a)は、本考案の好ましい態様のひとつを示すものであり、各々が保護被覆層12を備えた光ファイバ素線11を5本共通被覆層13により一体に被覆してテープ状光ファイバ心線として作製したものである。このとき、共通被覆層13の一部が着色層14として着色されており、以ってテープ状光ファイバ心線の外観を左右非対称なものとしている。
第1図の(b)?(f)は、同様な構成を有するテープ状光ファイバ心線であって、着色層の形態が異なっているものを断面にて示している。
即ち、第1図(b)では、共通被覆層を2分して互いに色の異なる材料による共通被覆層13並びに着色層14とし、これらを以って実質的な共通被覆層を形成している。
第1図(c)は、着色層14を共通被覆層13の約1/4に代わって形成した場合であり、前述のような光硬化性樹脂材料の着色による硬化の変化を軽減している。
第1図(d)は、第1図(c)の着色層14の一部が下に回り込むように形成した場合を示している。
第1図(e)および第1図(f)は、第1図(c)の思想をより進めたものであり、特に第1図(e)に示したものは着色層14を極限まで縮小しているが、これでも着色層14による“表示”機能は達せられる。
このような本考案に従うテープ状光ファイバ心線の形成方法について以下に具体的に述べるが、また、これに限定されるものではない。」(10頁13行?12頁3行)

(3) 「第2図(a)および(b)は、テープ状光ファイバ心線の共通被覆層の約半分を着色層とした場合を示し、第2図(c)並びに(d)は、共通被覆層の約1/4を着色層とした場合を示している。そして、第2図(a)および(c)はは着色層を表層のみとした場合であり、該2図(b)および(d)は、着色層が素線の表面まで達する厚さを有している。また、いずれの場合も各線間に形成される凹部25には着色部は存在しない。
前述したように、着色された光硬化性樹脂はそれ自体の硬化が遅い上に、第3図(a)に示すように、硬化の際に照射する光を着色層24が遮ることになる。従って、第2図(a)あるいは(c)に示すように着色層24の厚さを制限することも有効である。また、第2図(c)あるいは(d)に示すように、着色層24の形成位置を制限して、着色層24によって包囲される部分が共通被覆層23の一部に形成されないように構成することが有効である。何故ならば、第3図(a)に示すように、テープ状光ファイバ心線の図中の右側が着色層24によって包囲されていると、樹脂硬化のための光が着色層24によって遮られ、その内側に在る光硬化性樹脂による共通被覆層23の硬化が遅れる場合があるからである。従って、第2図の(c)、(d)のような構造にすれば、第3図(b)に示すように、着色層の外側から照射される光だけでなく、心線の反対側から光ファイバを介して透過してくる光によっても硬化することが期待できるからである。」(13頁1行?14頁8行)

(4) 「また、本考案の異なる態様として、第4図(a)に示すように、“表示”となるべき部位44とその他の部位43を異なる色で彩色することによって被覆層の全てを着色し、硬化を均一にすることも考えられる。
また、本考案の更に異なる実施例として、第4図(b)に示すように、透明な共通被覆層43を形成する際に、硬化以前の共通被覆層43の例えば側面から着色した樹脂44aを圧入し、これらを硬化してテープ状光ファイバ心線を形成することが挙げられる。第4図(b)にも示されるように、このような形成方法によれば、着色層44aよりも表面側に無色の共通被覆層43が形成されるので、この部分の光硬化は他の部分と全く同様に行われ、共通被覆層43表面の性状が優れ、保護被覆としての機能が安定するという利点がある。
更に異なる態様として、第4図(c)に示すように、特定の光ファイバ素線41bの保護被覆層42bの表面を塗装する、あるいは保護被覆層42bそのものを着色した材料により形成する方法もある。即ち、共通被覆層43は、前述のように透明あるいは半透明である場合が多い。それ故、光ファイバ素線41の保護被覆層42が着色されていれば、これが透けて見える。従って、第4図(c)に示すように、テープ状光ファイバ心線に含まれる光ファイバ素線の内の特定の1本あるいは所定の複数本の保護被覆層42bを着色すれば、テープ状光ファイバ心線の外側からこれを識別することが可能である。」(15頁19行?17頁6行)

(5) 「考案の効果
以上説明したように、本考案に従うテープ状光ファイバ心線は、テープ心線被覆自体がまたは内部に色彩を帯びているため、外部の擦過、摩擦等によって“表示”が剥がれあるいは磨滅することがない。このような識別表示を備えたテープ状光ファイバ心線は、各光ファイバ素線を容易に識別することができ、取り扱いが極めて容易である。」(17頁8?15行)

(6) 第1図は、次のものである。


(7) 第2図?第4図は、次のものである。


これらの記載によると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用文献3発明」とする。)が記載されている。

「光ファイバ素線の配列平面に直角な対称軸について非対称に、前記共通被覆層と一体に形成された着色部が、該テープ状光ファイバ心線の長さ方向に該テープ状光ファイバ心線の外部から目視できるように設けられた
テープ状光ファイバ心線。」

3 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007-279226号公報))には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 「【0038】
図4を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブル13はセンタチューブ型の光ファイバケーブルであって、前述したテープ心線1が、図4の2点鎖線に示されているように光ファイバ3をテープ心線1の幅方向に丸めるようにバンドル状態にして集合せしめてケーブルコア15を形成する。このバンドル状態に集合したテープ心線1の外周に熱可塑性樹脂をチューブ状に押出成形し、このチューブの外周にポリエチレンなどの外被19でシースして構成されている。
【0039】
以上のように、テープ心線1がバンドル状態に集合されるときは、図4に示されているように光ファイバケーブル13の長手方向に対して垂直面で考慮すると、この実施の形態のテープ心線1は従来のようにテープ心線の全幅方向でテープ状に連結されておらず、テープ心線1の幅方向で隣り合う連結部5同士の間が互いに接触しないように離間距離を設
けているので、連結部5で連結されている2心の光ファイバ3では曲げられないが、他の光ファイバ3ではフリーの状態となるために、あたかも単心線が実装されるような状態となる。そのために殆ど実装密度が下がることがない。」

上記記載によると、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用文献4発明」とする。)が記載されている。

「センタチューブ型の光ファイバケーブルであって、テープ心線1が、光ファイバ3をテープ心線1の幅方向に丸めるようにバンドル状態にして集合せしめてケーブルコア15を形成し、
前記バンドル状態に集合したテープ心線1の外周に熱可塑性樹脂をチューブ状に押出成形し、このチューブの外周にポリエチレンなどの外被19でシースして構成された、
光ファイバケーブル。」

4 前置報告書で引用された引用文献1について
前置報告書において引用文献1として引用された特開平1-138516号公報(以下、「引用文献5」とする。)には、次の事項が記載されている。

(1) 「 第2図は上記実施例の変形例を示す断面図である。同図(a)のテープ状光ファイバ心線では、右側の2本のガラスファイバ1を含む一方の側の光ファイバ心線と、左側の3本のガラスファイバ1を含む他方の光ファイバ心線との間の被覆層3はくびれており、この部分に切り欠き開口9が形成されている。従って、この部分を引き裂くことにより、心線を2本に分岐することができる。
同図(b)のテープ状光ファイバ心線では、それぞれ2本のガラスファイバ1を含む3本の光ファイバ心線との間の被覆層3はくびれており、この部分に切り欠き溝9a,9bが形成されている。従って、この部分を引き裂くことにより、2本の心線に分岐することができる。」(3頁右上欄16行?左下欄9行)

上記記載によると、引用文献5には、以下の発明(以下、「引用文献5発明」とする。)が記載されている。

「2本のガラスファイバ1を含む一方の側の光ファイバ心線と、
3本のガラスファイバ1を含む他方の光ファイバ心線との間の被覆層3はくびれており、この部分に切り欠き開口9が形成された
テープ状光ファイバ心線。」

5 前置報告書で引用された引用文献2について
前置報告書において引用文献2として引用された特開2009-93077号公報(以下、「引用文献6」とする。)には、次の事項が記載されている。

(1) 「【0020】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバテープ心線1(以下、単に、「テープ心線」という)は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3が複数本を並列して構成されるものであり、この実施の形態では合計8本の光ファイバ3としての例えば光ファイバ着色心線が並列に配置され、前記8本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5(テープ化材)が施されている。
【0021】
しかも、隣接する前記光ファイバ3の間の境目の位置に相当する前記一括被覆5の位置には、前記光ファイバ3の間を離隔した前記一括被覆5の離隔部5Aが設けられており、この離隔部5Aの位置には、前記一括被覆5の厚さ方向に貫通するスリット7が前記一括被覆5の長手方向にわたって間欠的に設けられている。前記各光ファイバ3は、図1において左から順に#1,#2,#3,・・・,#7,#8とすると、この実施の形態では、#4と#5の間の離隔部5Aの一括被覆5に上記のスリット7が間欠的に設けられている。換言すれば、スリット7で分離されている部分(分離部)と、スリット7が無く互いに接着されているスリット間隔部9(接着部)が交互に設けられている。
【0022】
上記のスリット7を間欠的に設けたことで、容易に分岐可能となるが、これだけでは、例えば、従来の特許文献4の光ファイバテープ心線のように、テープ心線1を左右に引っ張ってちぎるか、あるいは、引き裂き線11の図1において左右の一方では上げ、他方では下げることで引き裂くのでは、光ファイバ3の伝送特性の劣化(ロス変動)や断線を引き起こす要因となる捻りや曲げを生じさせてしまう。これを避けるために、この実施の形態では、図2に示されているように、前記スリット7に縦裂き用部材としての例えば縦裂き用線材13を挿通して、この縦裂き用線材13をテープ心線1の長手方向に移動することで、前記一括被覆5を縦裂くことを可能とするものである。」

(2) 「【0038】
なお、前述した実施の形態では、8心テープ心線1で#4と#5の間にスリット7を有しているが、テープ心線1の心線数は任意、つまり4心テープ、12心テープ、あるいはその他の複数の心線数でも良い。また、スリット7を設ける箇所は、前述した実施の形態のように#4と#5の間に限らず、任意の光ファイバ3の間に設けても良い。また、図4に示されているように、テープ心線1の複数の心線間にスリット7を設けてもよい。」

(3) 図4は、次のものである。

(4) 図4を参考にすると、上記(1)の「この実施の形態に係る光ファイバテープ心線1(以下、単に、「テープ心線」という)は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3が複数本を並列して構成されるものであり、この実施の形態では合計8本の光ファイバ3としての例えば光ファイバ着色心線が並列に配置され、前記8本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5(テープ化材)が施されている。」、及び、
「前記各光ファイバ3は、図1において左から順に#1,#2,#3,・・・,#7,#8とすると、この実施の形態では、#4と#5の間の離隔部5Aの一括被覆5に上記のスリット7が間欠的に設けられている。換言すれば、スリット7で分離されている部分(分離部)と、スリット7が無く互いに接着されているスリット間隔部9(接着部)が交互に設けられている。」の記載からみて、
8本の光ファイバ3が並列に配置され、前記8本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5が施されて構成された光ファイバテープ心線1であって、
前記各光ファイバ3を、光ファイバ#1?光ファイバ#8とすると、前記光ファイバ#2と前記光ファイバ#3の間、前記光ファイバ#4と前記光ファイバ#5の間、前記光ファイバ#6と前記光ファイバ#7の間にスリット7で分離されている部分と、スリット7が無く互いに接着されているスリット間隔部9が交互に設けられていることが読み取れる。

これらの記載によると、引用文献6には、以下の発明(以下、「引用文献6発明」とする。)が記載されている。

「8本の光ファイバ3が並列に配置され、前記8本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5が施されて構成された光ファイバテープ心線1であって、
前記各光ファイバ3を、光ファイバ#1?光ファイバ#8とすると、前記光ファイバ#2と前記光ファイバ#3の間、前記光ファイバ#4と前記光ファイバ#5の間、前記光ファイバ#6と前記光ファイバ#7の間にスリット7で分離されている部分と、スリット7が無く互いに接着されているスリット間隔部9が交互に設けられている、
光ファイバテープ心線1。」

第6 対比・判断
1 本願補正発明1について
(1) 対比・一致点・相違点
本願補正発明1と引用文献1発明とを対比する。

ア 本願補正発明1の「6本以上の光ファイバ心線が平行一列に配列され、全体に共通の樹脂からなる共通被覆が形成された光ファイバテープ心線」と、
引用文献1発明の「4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dを並列して構成された多心光ファイバテープ」、及び、「前記少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dのそれぞれは、2本の光ファイバ心線1、1を並列させ」た構成とを対比する。

引用文献1発明の「4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d」は、各々が2本の光ファイバ心線で構成されているから、8本の光ファイバ心線が並列に配置、すなわち、平行一列に配列されている。

したがって、両者は、「6本以上の光ファイバ心線が平行一列に配列され、被覆が形成された光ファイバテープ心線」という点で一致する。

イ 本願補正発明1の「両端の光ファイバ心線と該両端の光ファイバ心線と隣り合う光ファイバ心線との間の長手方向には、前記共通被覆からなる連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され、
前記両端の光ファイバ心線に挟まれた内部の各光ファイバ心線は、一方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に前記共通被覆からなる連結部と前記共通被覆に入れた切れ込みからなる非連結部とが間欠的に形成された間欠連結部が形成され、他方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に前記共通被覆からなる連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され」る構成と、
引用文献1発明の「前記4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dは、長手方向の所定間隔ごとに部分的に合成樹脂材料からなる連結部3によって連結され」る構成及び「前記各少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施された」構成とを対比する。

引用文献1発明の「前記4本の少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2dは、長手方向の所定間隔ごとに部分的に合成樹脂材料からなる連結部3によって連結され」る構成は、前記各少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d内の光ファイバ心線1、1の外周部には、合成樹脂材料からなる被覆2が施されているから、8本の光ファイバ心線は、光ファイバ心線は、隣り合う一方の光ファイバ心線とは被覆2により連続的に連結しており、隣り合う他方の光ファイバ心線とは、所定間隔毎に連結部で連結されている。

したがって、両者は、「両端の光ファイバ心線と該両端の光ファイバ心線と隣り合う光ファイバ心線との間の長手方向には、連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され、
前記両端の光ファイバ心線に挟まれた内部の各光ファイバ心線は、一方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に連結部と非連結部とが間欠的に形成された間欠連結部が形成され、他方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され」る点で一致する。

したがって、本願補正発明1と引用文献1発明とは、
(一致点)
「6本以上の光ファイバ心線が平行一列に配列され、被覆が形成された光ファイバテープ心線であって、両端の光ファイバ心線と該両端の光ファイバ心線と隣り合う光ファイバ心線との間の長手方向には、連結部が連続的に形成された連続連結部が形成され、
前記両端の光ファイバ心線に挟まれた内部の各光ファイバ心線は、一方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に連結部と非連結部とが間欠的に形成された間欠連結部が形成され、他方の隣り合う光ファイバ心線との間には長手方向に連結部が連続的に形成された連続連結部が形成されている、
光ファイバテープ心線。」
という点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
光ファイバテープ心線(多心光ファイバテープ)が、本願補正発明1では、「全体に共通の樹脂からなる共通被覆が形成された」ものであるのに対し、引用文献1発明では、
各少心光ファイバテープ2a、2b、2c、2d内の光ファイバ心線1、1の外周部が、合成樹脂材料からなる被覆2が施され、かつ、少心光ファイバテープは、合成樹脂材料からなる接続部3で連結されているが、全体を被覆するものではない点。

(相違点2)
間欠連結部と連続連結部が、本願補正発明1では、「前記共通被覆に入れた切れ込みからなる非連結部とが間欠的に形成された間欠連結部」、「前記共通被覆からなる連結部が連続的に形成された連続連結部」であるのに対し、引用文献1発明では、多心光ファイバテープは、4本の少心光ファイバテープが、合成樹脂材料からなる接続部3で連結され、全体が被覆される構造でないため、そのような構成ではない点。

(相違点3)
本願補正発明1では、「前記両端のうち少なくとも一端の隣り合う2本の光ファイバ心線の外被部分のみに、前記光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングが付与されている」のに対し、引用文献1発明では、マーキングに関する構成がない点。

(2) 相違点についての判断
ア 上記相違点3について検討する。

(ア) 引用文献3発明は、上記第6「2」(1)で摘記した記載からみて、「多くのテープ状光ファイバ心線では、これを構成する複数の光ファイバ素線が、光ファイバ素線の配列平面に直角な対称軸について線対称に配列されているので、長い光ファイバ心線の両端で対応する各光ファイバ素線を識別することが困難になる場合がある。」、すなわち、「図面上の左右が対称なために、長いケーブルの両端で対応する光ファイバ素線を識別することが困難である。」ことを課題としたものであり、
これを解決するために、「前記光ファイバ素線の配列平面に直角な対称軸について非対称に、前記共通被覆層と一体に形成された着色部が、該テープ状光ファイバ心線の長さ方向に該テープ状光ファイバ心線の外部から目視できるように設けられ」た発明であることが記載されている。
したがって、引用文献3発明は、テープ状光ファイバ心線において、テープ状光ファイバ心線を構成する複数の光ファイバ素線のうちの両端部光ファイバ素線の違いを識別する目的で、テープ状光ファイバ心線に着色部すなわちマーキングを施す技術である。

しかしながら、引用文献3発明の「着色部」は、テープ状光ファイバ心線を構成する複数の光ファイバ素線のうちの両端部光ファイバ素線の違いを識別する目的で施されたものであり、テープ状光ファイバ心線の違いを識別するためのものでない。そして、「着色部」の位置も、テープ状光ファイバ心線の両端のうち少なくとも一端の隣り合う2本の光ファイバ素線の外被部分のみ」とするものでない。

そして、引用文献3には、テープ状光ファイバテープ心線を識別するための着色部を付与することを示唆する記載もない。

また、引用文献4発明?引用文献6発明は、テープ状光ファイバ心線に係る発明であるが、テープ状光ファイバ心線を識別するためのマーキングを施す技術ではなく、引用文献4?6には、そのような技術を示唆する記載もない。

そうすると、引用文献1発明、引用文献3発明?引用文献6発明は、上記相違点3に係る本願補正発明1の発明特定事項を備えるものではなく、上記相違点3に係る本願補正発明1の発明特定事項が、本出願の出願前に周知の技術であるともいえない。

そして、本願補正発明1は、相違点3に係る構成を採用することにより、「間欠加工を行わない端部2本の光ファイバ心線間には単心部が存在しないため、これら2本の光ファイバ心線の外被部分にマーキングを印字することで、より識別性を向上させることができる。」という効果を奏するものである。

イ 上記のとおりであるから、相違点3に係る本願補正発明1の構成は、引用文献1発明、及び、引用文献3発明?引用文献6発明に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(3) まとめ
相違点1?2について検討するまでもなく、本願補正発明1は、引用文献1発明、及び、引用文献3発明?引用文献6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願補正発明2について
本願補正発明2は、本願補正発明1の相違点3に係る構成を全て備えるものであるから、本願補正発明1と同じ理由により、引用文献1発明、及び、引用文献3発明?引用文献6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第1項第3号)について

上記「第6」の「1(1)」において検討したとおり、本願補正発明1と引用文献1発明とは相違点3において相違する。

また、本願補正発明2は本願補正発明1をさらに限定したものであるから、本願補正発明2と引用発明1とは少なくとも相違点3において相違する。
よって、本願補正発明1?2は引用文献1発明ではない。

したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第29条第2項)について

上記「第6 対比・判断」において検討したとおり、本願補正発明1?2は引用文献1発明、及び、引用文献3発明?引用文献6発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものではないから、本願補正発明1?2は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、3?4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-22 
出願番号 特願2013-108014(P2013-108014)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 一石佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 居島 一仁
村井 友和
発明の名称 光ファイバテープ心線及び光ケーブル  
代理人 岡田 宏之  
代理人 岡田 宏之  
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