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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1340554
審判番号 不服2017-12326  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-21 
確定日 2018-06-08 
事件の表示 特願2015-100938「液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム及びそれを用いたバックライト」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月10日出願公開,特開2015-163986,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 出願の経緯
特願2015-100938号(以下「本件出願」という。)の出願までの経緯は,以下のとおりである。
(1) 特願2011-523235号(以下「もとの特許出願」という。)は,2011年(平成23年)2月18日(優先権主張:2010年(平成22年)2月24日及び同年10月6日))に出願したものとみなされた特許出願(日本語特許出願)である。
(2) 本件出願は,もとの特許出願の一部を平成26年2月17日に新たな特許出願とした特願2014-27517号の一部を,さらに平成27年5月18日に新たな特許出願としたものである。

2 手続等の経緯
本件出願は,もとの特許出願の時にしたものとみなされるところ,その手続等の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年 6月 9日 :手続補正書の提出
平成28年 4月22日付け:拒絶理由通知
平成28年 6月22日 :意見書の提出
平成28年 6月22日 :手続補正書の提出
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)
平成28年11月28日付け:拒絶理由通知
平成29年 5月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 8月21日 :拒絶査定不服審判の請求

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項6に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
次の(i)?(iii)を満たす液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。
(i)剛性度が3?10mN・mであること。
(ii)少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されており,該凸部の最大高さが15?60μmであること。
(iii)前記面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率が12%以上であること。

【請求項2】
基材白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有した塗布層を有しており,該球状粒子の圧縮強度が0.1?2.0kgf/mm^(2)である,請求項1に記載の液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。

【請求項3】
前記球状粒子がナイロンである,請求項2に記載の液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。

【請求項4】
前記ナイロンが,ナイロン12,及び/又は,ナイロン6とナイロン12の共重合体である,請求項3に記載の液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。

【請求項5】
前記球状粒子の比重が0.8?1.10である,請求項2?4のいずれかに記載の液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。

【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルムと,発光ダイオードを含む光源とを備え,かつ,バックライトサイズが76.2cm(30インチ)以上である液晶ディスプレイ用バックライト。」

4 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明1?本願発明6は,本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
原査定において引用された文献は,以下のとおりである。
引用文献1:国際公開第2008/139861号
引用文献2:特表2008-512719号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2000-258612号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:国際公開第2008/144636号(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2002-90515号公報
引用文献6:特開2009-179037号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:国際公開第2009/075227号(周知技術を示す文献)

第2 当合議体の判断
1 引用文献等の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用され,本件出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された上記引用文献1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,液晶バックライトの輝度向上を図る白色反射フィルムに関するものであって,さらに詳しくは液晶ディスプレイ用の,エッジライト型及び/又は直下型のバックライトにおける面光源の反射板として好適に用いられる部材に関するものである。」

イ 「背景技術
[0002] 液晶ディスプレイでは液晶セルを照らすバックライトが用いられており,液晶ディスプレイの種類に応じて,液晶モニターではエッジライト型のバックライト,液晶テレビでは直下型のバックライトが採用されている。
…(省略)…
発明が解決しようとする課題
[0004] 成長著しい液晶テレビ用反射フィルムにおいては,低コスト化が強く求められる一方,従来以上に反射フィルムの反射率の向上も同時に求められている。この理由は,反射フィルムの反射特性の向上によりバックライトとしての輝度が向上できれば,光源上部に配置している高価なシートを削減することができるからである。
…(省略)…
[0005] 本発明は,上記した従来の方法とは異なり,白色フィルムの光源側表面を工夫することにより反射率を向上させるものである。具体的には,白色フィルムの少なくとも片面に特定の塗布層を設けることで反射率を向上させ,ひいては,バックライトの輝度向上に寄与する白色反射フィルムを提供せんとするものである。」

ウ 「課題を解決するための手段
[0006] 本発明は,かかる課題を解決するために,次のいずれかの手段を採用するものである。
(1)白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を有し,その塗布層を形成する該球状粒子とバインダー樹脂との屈折率差の絶対値が0.10以下で,且つ,該球状粒子が無孔質である白色反射フィルム。
…(省略)…
(6)前記白色フィルムが3層からなり,中間層が気泡を含有した層であり,2つの表層の少なくとも一方がポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を含有させた層であり,かつ,無機粒子および/または有機粒子を含有する表層は,該層の重量に対して0.5重量%以下の範囲で該無機粒子および/または有機粒子を含有している,前記(1)?(5)のいずれかに記載の白色反射フィルム。
(7)前記(1)?(6)のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けたエッジライト型の液晶バックライト。
(8)前記(1)?(6)のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けた直下型の液晶バックライト。
…(省略)…
発明の効果
[0007] 本発明によれば,白色フィルムの少なくとも片面に特定の塗布層を設けた白色反射フィルムとすることで,反射率を向上させ,ひいてはバックライトに用いた際にバックライトの輝度向上に寄与することができる。」

エ 「発明を実施するための最良の形態
[0010] 本発明は,前記課題,つまり,白色フィルムの光源側の塗布層を工夫することで反射率が向上し,バックライトの輝度向上に寄与する白色反射フィルムについて鋭意検討した。その結果,白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を塗布し,含有する球状粒子と塗布層を形成するバインダー樹脂との屈折率差の関係,及びかかる球状粒子の細孔様態について特定の条件のものを用いてみたところ,白色フィルム単体の場合よりも,バックライトに用いた際の輝度向上効果が確認でき,かかる課題を解決することを究明したものである。
[0011]…(省略)…塗布層表面には,球状粒子により表面が滑らかな凸状部が形成されることになるので,白色フィルム面で反射して塗布層内を透過してきた光が,塗布層表面の凸状部でのレンズ効果により光をロスすることなく集光され,バックライトの正面方向の輝度の向上に寄与しているとも推定される。
…(省略)…
[0044] 本発明おいて,基材の白色フィルムは,可視光線反射率が高ければ高い方が良く,このためには内部に気泡を含有する白色フィルムが使用される。これらの白色フィルムとしては限定されるものではないが,多孔質の未延伸,あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム,多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが例として好ましく用いられる。これらの製造方法等については特開平8-262208号公報の〔0034〕?〔0057〕,特開2002-90515号公報の〔0007〕?〔0018〕,特開2002-138150号公報の〔0008〕?〔0034〕等に詳細に開示されている。中でも特開2002-90515の号公報中(当合議体注:「の号公報」は「号公報」の誤記である。)に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明における白色フィルムとして特に好ましい。
…(省略)…
[0059] このようにして得られる本発明の白色反射フィルムは,液晶バックライトの輝度向上を図ることができ,さらに好ましい態様によれば,長時間使用しても反射率の低下が少ないので,液晶画面用のエッジライト型および直下型バックライトなどの面光源の反射板,およびエッジライト型バックライド(当合議体注:「バックライド」は「バックライト」の誤記である。)におけるランプリフレクターとして好都合に使用することができる。
[0060] 具体的には,エッジライト型バックライトとは,図1に示すように,バックライトの方端,両端,周囲4方のいずれかに光源2を1本ないし複数本設置し,その光源2の光を導光板3を介して伝搬させ画面側を照らすものである。本発明の白色反射フィルムは,その導光板の下に設けられる反射板4として,もしくは光源2の導光板とは反対側の周囲を囲み込むように設置されるランプリフレクター5として,バックライト構成に合わせてそのままの状態で使用したり,各種金属,合金やその他支持体と組み合わせて使用したり,また適宜,折り曲げたりして使用する。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)


オ 「[0061] また,直下型バックライト10とは,図2に示すように,各種金属,合金やその他樹脂性筐体内の面方向に間隔を開けて光源12を設置し,また光源を挟んで筐体16とは反対側に拡散や集光機能を有する樹脂板,フィルム,シート等13を設置することにより,筐体16とは反対側すなわち画面側を照らすものであり,本発明の白色反射フィルムは筐体面に設置する反射板14として使用される。これにより,筐体側に伝搬した光を画面側に反射することができ,その結果,画面の輝度を向上しより明るくすることができる。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)


カ 「[0076] (実施例2)
“ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:14.5g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無):1.75gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を準備した。250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SL)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,120℃,1分間乾燥し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。
[0077] (実施例3)
白色フィルムに,250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SQ,3層構造,2つの表層それぞれに二酸化ケイ素を各表層重量に対し0.0004重量%ずつ含有,中間層は気泡を含有)を使用した以外は,実施例2と同様にして,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。
…(省略)…
[0097]
[表1]

[0098]
実施例1?12のいずれにおいても,塗布層を設けない同種類の白色フィルムに対して輝度向上効果(つまり,白色反射フィルム自体の反射率の向上効果)が見られた。
…(省略)…
[0099]…(省略)…表層の添加粒子量をある一定の範囲にした白色フィルム上に,同様の塗布層を設けると,輝度がさらに向上した(実施例3)。」

(2) 引用発明
ア 引用発明A
引用文献1の[0001]及び[0006]の記載からみて,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明A」という。)。
「 白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を有し,その塗布層を形成する該球状粒子とバインダー樹脂との屈折率差の絶対値が0.10以下で,かつ,該球状粒子が無孔質である白色反射フィルムであって,
前記白色フィルムが3層からなり,中間層が気泡を含有した層であり,2つの表層の少なくとも一方がポリエステルに無機粒子及び/又は有機粒子を含有させた層であり,かつ,無機粒子及び/又は有機粒子を含有する表層は,該層の重量に対して0.5重量%以下の範囲で該無機粒子及び/又は有機粒子を含有している,
液晶ディスプレイ用の,エッジライト型及び/又は直下型のバックライトにおける面光源の反射板として好適に用いられる,
白色反射フィルム。」

イ 引用発明B
引用文献1の[0001],[0076]及び[0077]の記載からみて,引用文献1には,実施例3として,次の発明も記載されている(以下「引用発明B」という。)。
「 “ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:14.5g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無):1.75gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を準備し,
250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SQ,3層構造,2つの表層それぞれに二酸化ケイ素を各表層重量に対し0.0004重量%ずつ含有,中間層は気泡を含有)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,120℃,1分間乾燥し,塗布量が4.0g/m^(2)である,
液晶バックライトの輝度向上を図る白色反射フィルム。」

(3) 引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由において引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である,上記引用文献5には,以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,面光源反射部材用に使用される白色フィルムの改良に関し,さらに詳しくは液晶画面用のエッジライトおよび直下型ライトの面光源の反射板,およびリフレクターに用いられる部材であって,長期間使用しても輝度の低下が少ない白色フィルムに関するものである。
…(省略)…
【0004】
【発明が解決しようとする課題】…(省略)…液晶テレビのような大画面で,長時間使用などの要求に応えるためには,より高い輝度と耐久性が求められる。特に直下型の光源を使用する場合においては光源から発光される光が直接当たることになり,より高度な反射板の耐久性が求められる。しかしながら従来のフィルムを使用したリクレクターや反射板では,長時間使用するとフィルムの劣化に伴う黄変が発生し,反射特性を低下させ,ひいては画面の輝度を低下させるという問題が生じる。
【0005】本発明は,上記の問題を解決し,長時間使用においても輝度の経時的低下が少なく高画質の画像を長期にわたって維持できる面光源反射部材,及び面光源反射部材用白色フィルムを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は,上記目的を達成するために,内部に気泡を含有する白色フィルムの少なくとも片面に光安定剤を含有する塗布層が設けられた面光源反射部材用白色フィルムとするものである。
…(省略)…
【0011】以下,本発明の好ましい例としてポリエステルを白色フィルム基材とした場合について詳述する。基材としてポリエステルを用い,これを白色化するには,各種の白色染料,白色顔料を添加する方法,上記した内部に微細な気泡を含有させる方法などがあるが,本発明の効果をより顕著に発現させるには,内部に微細な気泡を含有させる方法が好ましい。このような微細な気泡を含有させる方法としては,…(省略)…有機もしくは無機の微粒子を添加して溶融押出後,1軸または2軸に延伸する方法などを挙げることができる。
…(省略)…
【0039】本発明における白色フィルムの厚みは10?500μmが好ましく,20?300μmがより好ましい。厚みが10μm未満の場合,反射率あるいは白色度,色目が低レベルである他,取り扱い性が低下する傾向にある。一方,500μmより厚い場合,面光源反射部材として液晶ディスプレイなどに用いた場合,重量が重くなりやすく,さらには高コストとなり易い。
…(省略)…
【0046】[実施例1]押出機Aと押出機Bを有する複合製膜装置に,下記組成の原料を供給した。
・押出機A:180℃で4時間真空乾燥したPETチップ90重量部,ポリメチルペンテン10重量部,及び,分子量4000のポリエチレングリコール1重量部。
・押出機B:平均粒径1μmの硫酸バリウム15重量%を含有したPETチップを180℃で4時間真空乾燥したもの100重量部,及び,蛍光増白剤(OB-1:イーストマン社製)を1重量%含有したPETマスターチップを180℃4時間真空乾燥したもの3重量部。
【0047】押出機A,Bからそれぞれの原料を290℃で溶融押出し,押出機Aの溶融原料が内層に,押出機Bの溶融原料が両表面層となるように合流させTダイよりシート状に押出した。複合フィルムの厚み構成比はB/A/B(5/90/5)であった。このシートを表面温度20℃の鏡面冷却ドラム上でキャストして未延伸シートとした。このシートを90℃に加熱されたロール群で予熱し,95℃で長手方向に3.5倍延伸した。この1軸延伸シートの片面に空気中でコロナ放電処理を行い,ポリウレタンエマルジョン液(AP-40:大日本インキ(株)製)を乾燥後の厚みで0.3μmとなるように塗布した。その後,シート端部をクリップで把持して105℃に加熱されたテンター内に導き,塗布層の水分を除去した。その後連続的に110℃の雰囲気中で幅方向に3.5倍延伸した。更に連続的に215℃の雰囲気中で8秒間の熱処理を行い,総厚み188μmの白色基材フィルムを得た。
…(省略)…
【0055】
【発明の効果】本発明の面光源反射部材用白色フィルムでは,気泡を含有した白色基材フィルム上に光安定剤を含有する塗布層が設けられているので,光源による経時的劣化が小さく,液晶ディスプレイの画質,明るさを長期に渡って維持することができる。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)


(4) 引用文献6の記載
原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である,上記引用文献6には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,電子部品等に使用する難燃性を有する積層フィルムに関するものである。さらに詳しくは,液晶ディスプレイ用バックライト等に組み込む積層フィルム,太陽電池モジュールの封止フィルムやバックシート用の積層フィルム,回路材料用の積層フィルムである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビや太陽電池モジュールでは生産性や価格等の観点から多数の熱可塑性樹脂フィルムが使用されている。例えば液晶テレビではバックライトに,太陽電池モジュールでは裏面封止用シートに,それぞれ光源の光や太陽光を反射するための反射フィルムが用いられている。これら反射フィルムとしては,気泡により形成された多孔質の白色熱可塑性樹脂フィルムが一般的に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
液晶テレビや太陽電池モジュールに用いられる反射フィルムにおいては,反射特性の向上が強く求められる一方,従来以上に難燃性も同時に求められている。
…(省略)…
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,かかる課題を解決するために,次のような手段を採用する。すなわち,本発明は,基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に,難燃剤とシランカップリング剤を含有する塗布層が1層以上設けられ,該塗布層中のバインダー樹脂とシランカップリング剤が結合している積層フィルムである。
【0007】
また,本発明のバックライト用ランプリフレクター,直下型バックライトおよびLEDを搭載した直下型バックライトは,それぞれ本発明の積層フィルムを用いて構成されているものである。」

イ 「【0043】
本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムは,バックライトや太陽電池モジュールの反射フィルムとして使用する場合には可視光線反射率が高ければ高い方が良い。このためには内部に気泡及び/又は非相溶の粒子を含有する白色熱可塑性樹脂フィルムが好ましく使用される。これらの白色熱可塑性樹脂フィルムとしては限定されるものではないが,多孔質の未延伸,あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム,多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリオレフィン系やポリエステル系が例として好ましく用いられ,特に成形性や生産性の点からポリエステル系が好ましく用いられる。
【0044】
これらの製造方法等については特開平8-262208の〔0034〕?〔0057〕,特開2002-90515の〔0007〕?〔0018〕,特開2002-138150の〔0008〕?〔0034〕等に詳細に開示されている。中でも特開2002-90515の中に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムとして好ましい。
…(省略)…
【0054】
かかる基材熱可塑性樹脂フィルムの例としては,まず,単層構成の白色フィルムとしては,ルミラー(登録商標)E20(東レ(株)製),SY64(SKC製)などが挙げられ,2層構成の白色フィルムとしては,テトロン(登録商標)フィルムUXZ1(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられ,3層構成の白色フィルムとしては,ルミラー(登録商標)E6SL,E6SR,E6SQ,E6Z(東レ(株)製),テトロン(登録商標)フィルムUX(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられる。
…(省略)…
【実施例】
【0063】
以下,本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが,本発明は,これら実施例により限定されるものではない。
…(省略)…
【0077】
基材熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SQ,厚み300μm)を準備した。」

(5) 引用文献7の記載
原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である,上記引用文献7にも,引用文献6と同様の記載がある。

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明1と引用発明Aを対比する。
ア 白色反射フィルム
引用発明Aの「白色反射フィルム」は,「液晶ディスプレイ用の,エッジライト型及び/又は直下型のバックライトにおける面光源の反射板として好適に用いられる」ものである。
そうしてみると,引用発明Aの「白色反射フィルム」は,液晶ディスプレイのバックライト用のものといえる。また,引用発明Aの「白色反射フィルム」は,その文言が意味するとおり白色の反射フィルムである。
したがって,引用発明Aの「白色反射フィルム」は,本願発明1の「白色反射フィルム」に相当する。また,両者は,「液晶ディスプレイの」「バックライト用」である点で,共通する。

イ 凸部
引用発明Aの「白色反射フィルム」は,「白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を有し」ている。
そうしてみると,引用発明Aの「白色反射フィルム」は,その少なくとも片側の面に凸部が形成されているといえる(引用文献1の[0011]の記載からも,確認できる事項である。)。また,その片側の面を「(A)」と称することは,呼び方の問題にすぎない。
そうしてみると,引用発明Aの「白色反射フィルム」と本願発明1の「白色反射フィルム」は,「少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されており」という要件を満たす点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明Aは,次の構成で一致する。
「 次の要件を満たす液晶ディスプレイのバックライト用白色反射フィルム。
要件:少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されている。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明Aは,次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の「白色反射フィルム」は,液晶ディスプレイの「エッジライト型」バックライト用白色反射フィルムであるのに対して,引用発明Aの「白色反射フィルム」は,「エッジライト型及び/又は直下型」のものである点。

(相違点2)
本願発明1の「白色反射フィルム」は,「剛性度が3?10mN・mである」という要件を満たすのに対して,引用発明Aは,これが明らかではない点。

(相違点3)
本願発明1の「白色反射フィルム」は,「凸部の最大高さが15?60μmである」という要件を満たすのに対して,引用発明Aは,これが明らかではない点。

(相違点4)
本願発明1の「白色反射フィルム」は,「前記面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率が12%以上である」という要件を満たすのに対して,引用発明Aは,これが明らかではない点。

(3) 判断
ア 前記1(2)イで述べたとおり,引用文献1には,引用発明Bの白色反射フィルムが記載されている。
そうしてみると,引用発明Aの「白色反射フィルム」における「白色フィルム」として,引用発明Bの「白色フィルム」,すなわち,「250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム」である「“ルミラー”E6SQ」を採用することは,引用発明Aを具体化する当業者における一選択肢といえる。
しかしながら,本件出願の明細書の【0095】には,実施例10として,商品名が「ルミラー」で型番が「E6SQ」である,「250μm厚の多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム」が開示されている。そして,【0110】(表1)からは,その白色反射フィルムの剛性度が,2.2mN・mにとどまることが理解できる。
そうしてみると,仮に当業者が,上述のとおり引用発明Aの「白色フィルム」として引用発明Bのものを組み合わせたとしても,少なくとも相違点2に係る本願発明1の構成には到らないと考えられる。

イ 引用文献1には,引用発明Bの「白色フィルム」とは異なる型番(E6SL)の白色フィルムも開示されている。しかしながら,その剛性度は不明である。すなわち,引用文献1には,剛性度に関する記載がない。また,型番が「E6SL」の白色フィルムの厚さも,引用発明Bの白色フィルムと同じ250μmである。そうしてみると,型番が「E6SL」の白色フィルムの剛性度が,「3?10mN・m」の範囲にあるということはできない。
したがって,当業者が,引用文献1の実施例の記載を参考にして引用発明Aを具体化したとしても,少なくとも相違点2に係る本願発明1の構成には到るということはできない。

ウ ところで,引用文献1の[0044]には,「本発明おいて,基材の白色フィルムは,可視光線反射率が高ければ高い方が良く,このためには内部に気泡を含有する白色フィルムが使用される…(省略)…中でも特開2002-90515号公報中に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明における白色フィルムとして特に好ましい。」と記載されている。
そこで,特開2002-90515号公報,すなわち,引用文献5に開示されている,多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを参照する。
引用文献5の【0046】及び【0047】には,「多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に該当する白色基材フィルムが開示されている(実施例1)。
しかしながら,引用文献5には,剛性度に関する記載がない。また,この白色基材フィルムの厚みは,188μmである。厚みが引用発明Bの白色フィルムよりも,さらに薄いことを考慮すると,引用文献5に記載された「多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の剛性度が,「3?10mN・m」の範囲にあるということはできない。
したがって,当業者が,引用文献1の[0044]の記載を手がかりに,引用文献5を参照して引用発明Aを具体化したとしても,少なくとも相違点2に係る本願発明1の構成には到るということはできない。

エ なお,引用文献5の【0039】には,「本発明における白色フィルムの厚みは10?500μmが好ましく,20?300μmがより好ましい。」と記載されている。また,引用文献6の【0077】の記載によると,「“ルミラー”E6SQ」には,厚さ300μmの商品もあると考えられる。
しかしながら,引用文献1の[0044]の記載からみて,当業者が着目する引用文献5に記載された技術的事項は,「多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であり,「白色フィルムの厚み」ではないと考えられる。すなわち,引用文献5の【0039】の記載は,「多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」とは限らない,「白色フィルムの厚み」に関する記載にすぎない。また,引用文献6に記載された積層フィルムの用途は,「バックライト用ランプリフレクター,直下型バックライトおよびLEDを搭載した直下型バックライト」(【0007】)である。したがって,当業者が,仮に,引用発明Aを「直下型のバックライト」の用途において具体化する場合においては,厚さ300μmの「“ルミラー”E6SQ」を採用する可能性があるといえる。しかしながら,当業者が,「エッジライト型バックライト」の用途において,引用発明Bのものより厚い,厚さ300μmの「“ルミラー”E6SQ」を採用するとまではいえない。

オ 本願発明1の効果に関して,本件出願の明細書の【0011】には,「白色反射フィルムの剛性度を特定の範囲にし,少なくとも一方の面(A)(使用時における反射面側,導光板に対向する側)に特定の大きさの凸部を形成し,さらに,該(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率を特定の大きさ以上にすることで,特にエッジライト型バックライトにおいて輝度ムラを改善するのに好適な白色反射フィルムを提供することができる。」と記載されている。
そうしてみると,本願発明1は,(i)白色反射フィルムの剛性度,(ii)白色反射フィルムの片側の面(A)に形成された凸部の最大高さ,(iii)白色反射フィルムの面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率の組み合わせによって,特にエッジライト型バックライトにおいて輝度ムラを改善するのに好適な白色反射フィルムを提供するという効果が得られた発明と理解される。

しかしながら,引用文献1には,(i)白色反射フィルムの剛性度に関する記載がない。すなわち,引用文献1には,剛性度を左右する,白色フィルムの厚さに関する記載がない。そして,引用文献1に記載された白色フィルムは,可視光線反射率が高ければ高い方が良いもの([0044])にとどまる。
また,引用文献1には,(ii)白色反射フィルムの片側の面(A)に形成された凸部の最大高さに関する記載もない。すなわち,引用文献1に記載された凸状部は,レンズ効果を考慮したもの([0011])にとどまる。
さらに,引用文献1には,(iii)白色反射フィルムの面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率に関する記載もない。すなわち,既に述べたとおり,引用文献1に記載された白色フィルムは,可視光線反射率が高ければ高い方が良いもの([0044])にとどまる。なお,引用文献1の図1から看取される筐体6は,白色反射フィルムの面(B)の側に,クッション性を求めるような形状をしていない。
加えて,引用文献1の白色反射フィルムは,エッジライト型バックライトにおいて輝度ムラを改善することに関する記載もない。すなわち,引用文献1の白色反射フィルムは,「エッジライト型及び/又は直下型のバックライト」を用途とし,白色反射フィルムの反射率を向上させるもの([0007])にとどまる。

そうしてみると,本願発明1の「白色反射フィルム」における「(i)剛性度が3?10mN・mであること」,「(ii)少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されており,該凸部の最大高さが15?60μmであること」及び「(iii)前記面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率が12%以上であること」という構成は,特に「液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト」の用途に対応した,引用発明A及び引用発明B,並びに,引用文献1の記載からは予測できない,異質な効果を奏するものと理解される。

カ 念のために,当業者が引用発明Bに基づいて発明をする場合についても検討すると,以下のとおりである。
すなわち,引用発明Bの白色フィルムの厚さからみて,引用発明Bの白色反射フィルムの剛性度が「3?10mN・m」の範囲にないことは,前記アで述べたとおりである。
また,引用発明Bの白色フィルムは,引用文献1の[0045]において言及された,引用文献5に開示された多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルムに合致するものである。
そうしてみると,たとえ引用文献1の[0045]の記載を考慮しても,引用文献Bに記載の白色フィルムを他のものに替える動機がない。
したがって,当業者が,引用発明Bに基づいて発明するとしても,「剛性度が3?10mN・mである」という構成を具備する白色反射フィルムに到ることはないといえる。

キ 以上勘案すると,本願発明1は,当業者が,引用文献1に記載された発明,引用文献5に記載された事項,及び周知技術に基づいて,容易に発明をすることができたものということができない。この点は,原査定の拒絶の理由で引用された他の引用文献の記載を考慮しても,同じである。

(4) 本願発明2?本願発明6について
本願発明2?本願発明5は,本願発明1の構成を具備し,さらに,他の構成を具備した白色反射フィルムの発明である。また,本願発明6は,少なくとも,本願発明1の構成を具備する白色反射フィルムを備える,バックライトの発明である。
そうしてみると,前記(3)で述べたのと同じ理由により,本願発明2?本願発明6は,当業者が,引用文献1に記載された発明,引用文献5に記載された事項,及び周知技術に基づいて,容易に発明をすることができたものということができない。この点は,原査定の拒絶の理由で引用された他の引用文献の記載を考慮しても,同じである。

第3 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-29 
出願番号 特願2015-100938(P2015-100938)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
発明の名称 液晶ディスプレイのエッジライト型バックライト用白色反射フィルム及びそれを用いたバックライト  
代理人 細田 浩一  
代理人 伴 俊光  
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