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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1340567
審判番号 不服2017-8088  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-06 
確定日 2018-05-17 
事件の表示 特願2016- 35293「偏光板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-118804〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月29日に出願した特願2011-71905号の一部を平成27年7月13日に新たな特許出願とした特願2015-139408号の一部をさらに平成28年2月26日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月12日付け:拒絶理由通知書
平成29年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月 1日付け:拒絶査定
平成29年 6月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年6月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法であって、
紫外線照射装置から発せられる光を、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルターに通すことで、400nm以上の波長の光を実質的に遮断することにより、実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、
前記実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線の積算光量が、510?2000mJ/cm^(2)であり、
前記透明樹脂フィルムは、酢酸セルロース系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂から形成され、
前記透明樹脂フィルムの厚みは、10?85μmであることを特徴とする偏光板の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年2月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法であって、
紫外線照射装置から発せられる光を、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルターに通すことで、400nm以上の波長の光を実質的に遮断することにより、実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、
前記実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線の積算光量が、510?2000mJ/cm^(2)であることを特徴とする偏光板の製造方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「透明樹脂フィルム」について、上記の「酢酸セルロース系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂から形成され」、「厚みは、10?85μmである」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-59488号公報(平成23年3月24日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(ア)「【0142】
上記接着剤層を介して積層された偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体に対して活性エネルギー線を照射し、接着剤層を硬化させることにより、本発明の偏光板を得ることができる。
【0143】
用いられる活性エネルギー線としては、たとえば、波長が1pm?10nmのX線、10?400nmの紫外線、および400?800nmの可視光線等が挙げられる。中でも、利用の容易さ、活性エネルギー線硬化性組成物の調製の容易さおよびその安定性、ならびにその硬化性能の点で紫外線が好ましく用いられる。
【0144】
用いる光源は、特に限定されるものではないが、たとえば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、およびメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0145】
照射強度は、活性エネルギー線硬化性組成物や照射時間によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、たとえば、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1?1000mW/cm^(2)であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性組成物への光照射強度が0.1mW/cm^(2)未満であると、硬化反応時間が長くなる、すなわち長い照射時間をかけなければ硬化せず、生産性向上に不利となる場合がある。また、1000mW/cm^(2)を超えると、ランプから輻射される熱、および活性エネルギー線硬化性組成物の重合時の発熱により、活性エネルギー線硬化性組成物の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる場合がある。
【0146】
照射時間は、活性エネルギー線硬化性組成物や照射強度によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、たとえば、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10?5,000mJ/cm^(2)となるように設定されることが好ましい。活性エネルギー線硬化性組成物への積算光量が10mJ/cm^(2)未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる場合がある。また、5,000mJ/cm^(2)を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上に不利となる場合がある。」

(イ)「【0225】
<実施例1>
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0226】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R_(0):2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R_(0):63nm、厚み方向位相差値R_(th):225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。
【0227】
次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。」

イ 上記アから、引用文献1には、実施例1(【0225】?【0227】)の偏光板の製造方法に対応した次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得て、
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R_(0):2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工し、
厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R_(0):63nm、厚み方向位相差値R_(th):225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工し、
次いで、上記偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合し、この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とし、その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させる、
偏光板の製造方法。」

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-107432号公報には、次の記載がある。

「【0066】
前記光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、オゾンレス水銀ランプ、キセノンランプ、ヒュージョンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。前記光源の波長は、硬化時間や紫外線の浸透深さ等の観点から、適宜、選択され得るが、例えば100nm?400nmの範囲であり、好ましくは210nm?380nmの範囲である。前記光源からの積算光量は、好ましくは50mJ/cm^(2)?1000mJ/cm^(2)の範囲である。
【0067】
前記照射器は、紫外線を被照射物に効率的に照射するために用いられる。前記照射器は、好ましくは、偏光子への熱的ダメージを小さくするために、赤外線および可視光線の波長をカットするためのフィルタ(例えば、熱線カットフィルタ)を備える。」

エ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-334307号公報には、次の記載がある。

「【0071】
前記紫外線照射手段は、例えば、光源、照射器、冷却装置、及び電源装置を含む。前記光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、オゾンレス水銀ランプ、キセノンランプ、ヒュージョンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。前記光源の波長は、硬化時間や紫外線の浸透深さ等を考慮して、適宜、選択され得る。前記光源の波長は、例えば、100nm?400nmの範囲であり、好ましくは210nm?380nmの範囲である。照射光の積算光量は、好ましくは、50mJ/cm^(2)?1000mJ/cm^(2)の範囲である。
【0072】
前記照射器は、偏光子への熱的ダメージを小さくするために、赤外線及び可視光線の波長をカットするためのフィルタ(例えば、熱線カットフィルタ)を備えることが、好ましい。前記冷却装置及び電源装置は、光源と照射器全体の温度を一定に保ち、安定して光源を点灯させるために用いられる。前記冷却装置としては、例えば、空冷(排風又は送排風)方式や水冷方式等の冷却装置が挙げられる。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)偏光フィルム
引用発明の「偏光フィルム」は、本件補正発明の「偏光フィルム」に相当する。引用発明の「偏光フィルム」は、「ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された」ものであるため、本件補正発明の「偏光フィルム」の「ポリビニルアルコール系樹脂からなる」との要件を満たす。

(イ)透明樹脂フィルム
引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、偏光板に用いられるフィルムであるため、透明であることは技術常識であるから、本件補正発明の「透明樹脂フィルム」に相当する。引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、文字どおりポリエチレンテレフタレートからなり、ポリエチレンテレフタレートは「ポリエステル樹脂」であるから、本件補正発明の「透明樹脂フィルム」の「酢酸セルロース系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂から形成され」るとの要件を満たす。引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の厚みは「38μm」であるから、本件補正発明の「透明樹脂フィルム」の「厚みは、10?85μmである」との要件を満たす。

(ウ)偏光板
引用発明の「活性エネルギー線硬化性接着剤組成物」、「偏光板」は、それぞれ、本件補正発明の「接着剤」、「偏光板」に相当する。引用発明は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工し、」「偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、」「接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合し、」「メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させ」て偏光板を得ており、「320?400nmの波長」が紫外線であることは技術常識であるから、本件補正発明の「偏光板を製造する方法」における「偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ」るとの要件を満たす。また、引用発明は、「メタルハライドランプを320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射し、両面の接着剤を硬化させ」ており、引用発明のメタルハライドランプを有する光を照射する部分が、本件補正発明の「紫外線照射装置」に相当し、本件補正発明の「紫外線照射装置から発せられる」「紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ」るとの要件を満たす。

(エ)偏光板の製造方法
本件補正発明と引用発明とは、上記(ア)?(ウ)の点で共通する「偏光板の製造方法」であるといえる。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア)一致点
「ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに紫外線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、そこに紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、偏光板を製造する方法であって、
紫外線照射装置から発せられる紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ、
前記透明樹脂フィルムは、酢酸セルロース系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂から形成され、
前記透明樹脂フィルムの厚みは、10?85μmである
偏光板の製造方法。」

(イ)相違点1
紫外線の積算光量について、本件補正発明は、「前記実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線の積算光量が、510?2000mJ/cm^(2)」であるのに対し、引用発明は、「320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)となるように照射」している点。

(ウ)相違点2
照射する波長について、本件補正発明は、「紫外線照射装置から発せられる光を、400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルターに通すことで、400nm以上の波長の光を実質的に遮断することにより、」「実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射」するのに対し、引用発明は、「紫外線照射装置から発せられる紫外線を照射して前記接着剤を硬化させ」ているものの、当該「400nm以上の波長の光をカットできる波長フィルター」を有するか不明な点。

(4)判断
ア 相違点1について
引用発明において、320nm以下の波長の紫外線の積算光量は不明であるが、引用文献1において、「320?400nm」が接着剤組成物の硬化に寄与する主要な波長帯であるから、この範囲における紫外線の積算光量を示したものと考えられる。そうすると、メタルハライドランプも主に320?400nmの波長の紫外線を発生するものを選択するはずである。引用発明は、「320?400nmの波長における積算光量が600mJ/cm^(2)」であるから、320nm以下の波長の紫外線の積算光量を足したとしても、本件補正発明の「2000mJ/cm^(2)」を超えない蓋然性が高く、この点は実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、引用発明において、主に320?400nmの波長の紫外線を発生するメタルハライドランプを選択して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。あるいは、引用文献1の【0146】には、「照射時間は、活性エネルギー線硬化性組成物や照射強度によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、たとえば、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10?5,000mJ/cm^(2)となるように設定されることが好ましい。」と記載されており、引用発明において400nm以下の「紫外線の積算光量」を、用いられる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の種類に応じて、引用文献1に記載された数値範囲に含まれる「510?2000mJ/cm^(2)」の範囲内とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
偏光フィルム(偏光子)に塗布された紫外線硬化樹脂を硬化させるために、光源から紫外線を照射する場合において、「偏光子への熱的ダメージを小さくするために、赤外線および可視光線の波長をカットするためのフィルタ(例えば、熱線カットフィルタ)」を採用することは、周知の技術である(例えば、上記(2)ウ、エ参照。)。
引用発明についても、偏光子に塗布された紫外線硬化樹脂である活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の硬化を目的として、400nm以下の紫外線の照射を行っている以上、偏光子への熱的ダメージという問題(悪影響)が生じ得ることは当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明においても、可視光線等による熱的ダメージという課題は、その明示がなくても潜在的に存在する課題であるから、「偏光子への熱的ダメージを小さくする」ことを動機付けとして、目的外の波長である400nm以上の赤外線及び可視光線の波長をカットするためのフィルタを適用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。そして、その結果として、「400nm以上の波長の光を実質的に遮断することにより」、「実質的に400nm以下の波長のみからなる紫外線を照射」することとなる。

ウ 効果について
本願の発明の詳細な説明には、「紫外線照射装置から発生する熱によって、紫外線が照射される透明樹脂フィルム面に「熱ムラ」と呼ばれる微小な変形を生じ、偏光板の外観を損なう」ことが課題であり(【0005】)、効果として「熱ムラの発生が抑制された偏光板を製造することができる」と記載されている(【0014】)。
しかしながら、一般に、紫外線照射装置において、照射の必要のある紫外線の波長以外の光をフィルターでカットして、照射対象への熱による悪影響を防ぐことは、周知の事項である(例えば、上記(2)ウ、エに例示した文献、特開2004-26898号公報(【0024】等)、特開2003-20452号公報(【0024】等)を参照。)。
したがって、本件補正発明の奏する作用効果は、周知技術の奏する作用効果から、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月6日にされた本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?5等にみられる周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2011-59488号公報
引用文献2:特開2008-107432号公報
引用文献3:特開2007-334307号公報
引用文献4:特開2009-134190号公報
引用文献5:特開2010-54720号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「透明樹脂フィルム」について、上記の「酢酸セルロース系樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂またはポリエステル樹脂から形成され」、「厚みは、10?85μmである」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-14 
結審通知日 2018-03-20 
審決日 2018-04-03 
出願番号 特願2016-35293(P2016-35293)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横川 美穂  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 多田 達也
関根 洋之
発明の名称 偏光板の製造方法  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  
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