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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E06B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E06B
審判 全部無効 2項進歩性  E06B
管理番号 1340628
審判番号 無効2016-800061  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-27 
確定日 2018-06-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第4839108号発明「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4839108号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項6に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。

第2 手続の経緯
本件特許は、特許法第41条により特願2002-64460号に基づいて優先権を主張して出願した特願2003-62183号(以下「原出願」という。)の一部を、特許法第44条第1項の規定により新たな出願とした特願2006-74123号(以下「本件特許出願」という。)に係るものであり、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。

平成14年 3月 8日 優先基礎出願(特願2002-64460号)
平成15年 3月 7日 原出願(特願2003-62183号)

平成18年 3月17日 本件特許出願(特願2006-74123号)
平成23年10月 7日 設定登録
平成28年 5月27日 本件審判請求
平成28年 8月 5日 審判事件答弁書
平成28年10月11日 審理事項通知書
平成28年11月 9日 口頭審理陳述要領書、証拠説明書(請求人)
平成28年11月25日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成28年12月 7日 上申書、証拠説明書(2)(請求人)
平成28年12月 8日 証拠説明書(被請求人)
平成28年12月 8日 口頭審理
平成28年12月22日 上申書(被請求人)
平成29年 1月12日 上申書、証拠説明書(3)(請求人)

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項2】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し、前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し、前記改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項3】
建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に、室内側案内レールを切断して撤去し、前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。
【請求項4】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項5】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、
前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。
【請求項6】
建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し、前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に、室内側案内レールは切断して撤去され、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明1ないし6の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成28年11月9日付け口頭審理陳述要領書、平成28年12月7日付け上申書、平成29年1月12日付け上申書、第1回口頭審理調書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証の7を提出している。

(1)無効理由1(明確性要件違反)
本件特許発明1ないし6は明確ではないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(2)無効理由2(サポート要件違反)
本件特許発明1ないし6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(3)無効理由3(実施可能要件違反)
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし6を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(4)無効理由4(進歩性欠如)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の原出願日前に公然知られた発明ないし公然実施された発明(甲第5号証の1ないし5)、甲第6号証に記載された発明及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5(進歩性欠如)
本件特許発明1ないし6は、甲第6号証に記載された発明、甲第23号証に記載された発明及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特許第4839108号公報(本件特許の特許公報)
甲第2号証:本件特許の拒絶査定不服審判手続における平成23年6月21日付け拒絶理由通知書
甲第3号証:本件特許の拒絶査定不服審判手続における平成23年7月8日付け手続補正書
甲第4号証:「広辞苑第六版」、株式会社岩波書店、「ほぼ」の項
甲第5号証の1:工事名「広電己斐寮浴室改修工事」の設計図面等
甲第5号証の2:甲第5号証の1の4/4頁に記載された改修サッシの縦断面図
甲第5号証の3:甲第5号証の1の4/4頁に記載された改修サッシの横断面図
甲第5号証の4:株式会社新和の代表取締役宇吹正樹による平成27年7月24日付け証明書
甲第5号証の5:株式会社新和の代表取締役宇吹正樹による平成28年2月1日付け証明書
甲第6号証:実公昭58-45431号公報
甲第7号証:実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特許第3223993号公報
甲第10号証:特開昭61-229086号公報
甲第11号証:特開平7-286439号公報
甲第12号証:特開平9-287355号公報
甲第13号証:特開平8-114057号公報
甲第14号証:特開平7-173945号公報
甲第15号証:特開平10-30377号公報
甲第16号証:特公昭62-45948号公報
甲第17号証:特開2002-285757号公報
甲第18号証:特開平8-209262号公報
甲第19号証:特開平10-88906号公報
甲第20号証:「Al ある」、第76号、株式会社軽金属通信社、昭和47年5月19日発行、表紙、14頁、15頁、裏表紙
甲第21号証:特開平9-177437号公報
甲第22号証:特開平8-93325号公報
甲第23号証:特開2001-227244号公報
甲第24号証:本件特許の審査手続における平成21年7月10日付け拒絶理由通知書
甲第25号証:本件特許の審査手続における平成21年9月14日付け手続補正書
甲第26号証:本件特許に係る拒絶査定不服審判の平成23年9月2日付け審決
甲第27号証:「かぶせ工法による建具取替え工事 標準仕様と施工指針(2002)」、建築改装協会、平成14年、表紙、目次、8頁、9頁、12頁、13頁、裏表紙
甲第28号証の1:工事名「広電己斐寮浴室出入口サッシ修繕工事」の納品書
甲第28号証の2:株式会社新和の代表取締役宇吹正樹による平成28年11月7日付け証明書
甲第29号証:三協立山株式会社法務知財部部長小栗裕一による平成28年10月31日付け写真撮影報告書
甲第30号証:株式会社新和の代表取締役宇吹正樹外1名による平成28年11月7日付け証明書
甲第31号証:東京地裁平成26年(ワ)第7643号に係る原告ら第3準備書面
甲第32号証:特開昭50-47434号公報
甲第33号証の1:三協アルミニウム工業株式会社から財団法人ベターリビングに平成14年4月15日付けで提出された優良住宅部品変更申請書
甲第33号証の2:財団法人ベターリビングによる平成14年8月2日付けの変更評価書
甲第33号証の3:財団法人ベターリビングより三協アルミニウム工業株式会社に宛てた「優良住宅部品の仕様等の一部変更について」と題する文書
甲第34号証:YKKアーキテクチュラルプロダクツ株式会社が提出したBL部品認定の申請書に添付された図面
甲第35号証:日本建鉄株式会社が提出したBL部品認定の申請書に添付された図面
甲第36号証:新日軽株式会社が提出したBL部品認定の申請書に添付された図面
甲第37号証:「建築改装のあゆみII 協会創立30周年記念誌」、建築改装協会、平成21年9月、表紙、目次、25-27頁、90-95頁、103頁
甲第38号証:「軽金属ダイジェスト」、No.1621(2003年02月03日号)、URL:http://www.kallos.co.jp/member/today1621.html
甲第39号証:新日軽株式会社カタログ「ビル建材改装シリーズ」、第2版、平成15年10月、表紙、23頁、裏表紙
甲第40号証:本件特許の審査手続における平成21年9月14日付け意見書
甲第41号証:知財高裁平成21年(ネ)第10040号判決
甲第42号証:本件特許の審査手続における平成22年1月14日付け拒絶査定
甲第43号証:本件特許の拒絶査定不服審判手続における平成23年3月10日付け拒絶理由通知書
甲第44号証の1:請求人代理人面山結による平成28年12月16日付け照会申出書
甲第44号証の2:照会を求める理由(差し替え版)
甲第44号証の3:株式会社LIXIL日本法務本部商事法務室による平成29年1月6日付け回答書
甲第45号証の1:平成13年度技術施工委員会第1回建具金物部会議事録
甲第45号証の2:平成13年度技術施工委員会第3回建具金物部会議事録
甲第45号証の3:平成13年度技術施工委員会第4回建具金物部会議事録
甲第45号証の4:平成13年度技術施工委員会第5回建具金物部会議事録
甲第45号証の5:平成13年度技術施工委員会第6回建具金物部会議事録
甲第45号証の6:平成13年度技術施工委員会第7回建具金物部会議事録
甲第45号証の7:平成13年度技術施工委員会第11回建具金物部会議事録

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1(明確性要件違反)について
ア 「ほぼ同じ高さ」の「ほぼ」とは、広辞苑第六版(新村出編、岩波書店、平成20年)によれば「おおかた。およそ。」という意味にすぎず(甲4)、本件各特許の特許請求の範囲に記載されている発明特定事項のみでは、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が具体的にどの程度の範囲内に含まれるものであれば、「ほぼ同じ高さ」に該当するかが明確ではない。そして、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差がどの程度の範囲内であれば、「ほぼ同じ高さ」に該当するのかについて、技術常識も存在しない。
(審判請求書12頁下から3行ないし13頁4行)

イ 本件各発明の実施例としては、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が同一のもの(図1)から相当程度の差があるもの(図10及び図11)まで多様なものが挙げられている。しかも、図10などは、本件明細書の段落【0092】において背後壁よりも「若干上方に突出」していると記載されている支持壁89よりも更に上方に、改修用下枠の上端が位置している。
このような本件明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載からすれば、その記載を参酌しても、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が具体的にどの程度のものであれば、「ほぼ同じ高さ」に該当するのかは全く明確でない。
(審判請求書17頁1ないし9行)

ウ 本件各発明の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」という構成と「有効開口面積が減少することなく、広い開口面積を確保する」という効果の関係を様々な寸法の既設建具において維持することができる技術常識は存在しないのであって、結局、背後壁の上端と改修用下枠の上端との差がどの程度の差であれば「開口面積が減少しない」という効果を奏する「ほぼ同じ高さ」に当たるのかが分からない。
(口頭審理陳述要領書14頁20ないし末行)

(2)無効理由2(サポート要件違反)
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明4の構成の全てを備える実施形態の記載はされておらず、さらには、本件発明4における各構成の関連性についても記載されていない。すなわち、本件明細書の詳細な説明には、各構成が開示されているにすぎず、各構成が併せて備えられることで、有機的に何らかの作用効果を奏することは何ら開示されていない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明4の各構成を備えることによって、それらが有機的につながりを持ち、総合的に何らかの作用効果を奏するという技術思想は開示されておらず、結局、本件発明4は開示されていない。そして、本件発明4について述べた点は、本件発明1ないし3並びに本件発明5及び6にも当てはまるから、本件発明1ないし3並びに本件発明5及び6も本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。
(口頭審理陳述要領書8頁10ないし20行)

(3)無効理由3(実施可能要件違反)
無効理由1における主張のとおり、そもそも本件明細書の記載から発明を明確に把握することができないのであるから、当業者が本件各発明を実施しようとしても、その発明をどのように実施するのかを理解することができない。すなわち、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件各発明を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(審判請求書19頁下から3行ないし20頁2行)

(4)無効理由4(進歩性欠如)
ア 主引用例1及び2について
平成12年11月24日に己斐寮浴室において行われた浴室ドア改修工事により設置された改修引戸装置及び引戸装置の改修方法(以下、当該改修引戸装置を「主引用例1」、当該引戸装置の改修方法を「主引用例2」という。)は以下の構成を備えている。
【主引用例1】
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金の既設サッシは、アルミニウム合金から成る既設上枠、脱衣室側案内レールと浴室側案内レールを備えたアルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し、
既設下枠の脱衣室寄りに逆L字状の部材sを設け、その逆L字状の部材sが既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣室側の端部に連なる壁部m5の浴室側面にビスで固着して取り付けてあり、
この既設サッシ内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用サッシが挿入され、
この改修用サッシの改修用下枠の浴室側寄りが、断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持されると共に、
前記改修用下枠の脱衣室側寄りが、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接されるとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスにより、固定されており、
前記壁部m5の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さである、
ことを特徴とする改修引戸装置。
【主引用例2】(主引用例1を方法の発明として特定したもの)
建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の脱衣室寄りに逆L字状の部材sを設け、この逆L字状の部材sを既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣室側の端部に連なる壁部m5の浴室側面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠、アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修サッシを、前記既設サッシ内に浴室側から挿入し、
その改修用下枠の浴室寄りを、断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室寄りに支持されると共に、前記改修用下枠の脱衣室寄りが、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接されるとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスにより、固定されており、
前記壁部m5の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
改修用サッシを逆L字状の部材sを基準として取付ける
ことを特徴とする引戸装置の改修方法。
(審判請求書22頁下から3行ないし24頁12行)

イ 公知公用について
甲第5号証の4に記載のとおり、己斐寮浴室の浴室ドア改修工事により設置された改修引戸装置は、甲第5号証の1の設計図面等に基づいて、当時三協アルミニウム工業株式会社の代理店であった有限会社新和建装により当該設計図面のとおりに施工され、本件各特許の原出願日前である平成12年11月24日に竣工されたものであり、当該設計図面等には己斐寮浴室の改修工事により設置された改修引戸装置(主引用例1)及び引戸装置の改修方法(主引用例2)が記載されているところ、同社において当該設計図面等の内容について秘密に取り扱ったことはなく、また、当該設図面等の設計等を担当した同社従業員にも秘密保持義務を課していなかった。これらに加えて、己斐寮は会社独身寮として利用されており、多人数の独身従業員による利用がされていたことからすれば、主引用例1及び2が本件各特許の原出願日前に日本国内において公然知られた発明(特許法29条1項1号)ないし本件各特許の原出願日前に日本国内において公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)に当たることは明らかである。
(審判請求書24頁13行ないし25頁1行)

ウ 本件特許発明4について
(ア)本件特許発明4と主引用例1との相違点
a (相違点1-1)
本件特許発明4は、既設引戸枠が残存する建物の開口部は、室内外を連絡する開口部であって、一方側が室内側であり、他方側が室外側であるのに対して、主引用例1は、既設引戸枠が残存する建物の開口部は、建物内の浴室と脱衣室とを連絡する開口部であって、一方側が脱衣室側であり、他方側が浴室側である点。
(相違点1-2)
本件特許発明4は、既設下枠の室外側案内レールが付け根付近から切断して撤去されているのに対して、主引用例1は、既設下枠の外側に配置されるレールである浴室側案内レールは切断されておらず残存している点。
(相違点1-3)
本件特許発明4は、改修用下枠が、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠であるのに対して、主引用例1は、平坦な底壁を備えた改修用下枠である点。
(相違点1-4)
本件特許発明4は、改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対して、主引用例1は、改修用下枠の浴室側寄りが、断面逆L字状の部材tを介して既設下枠の浴室側寄りに支持される点。
(相違点1-5)
本件特許発明4は、改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されているのに対して、主引用例1は、改修用下枠の前壁が既設下枠の前壁に固定されていない点。
(相違点1-6)
本件特許発明4は、既設引戸枠が、アルミニウム合金の押出し形材であるのに対し、主引用例1は、既設引戸枠が、アルミニウム合金ではあるものの押出し形材であるかどうか不明である点。
(審判請求書33頁15行ないし34頁19行)

b 本件特許発明4の「取付け補助部材」は、改修用下枠を取付ける際に補助となる部材にすぎず、本件特許発明4の「その逆L字状の部材sが既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣室側の端部に連なる壁部m5の浴室側面にビスで固着して取り付けてあり」という構成と、「前記改修用下枠の脱衣室側寄りが、…逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスにより、固定されて」いるという構成を有する主引用例1の逆L字状の部材sとは、何ら変わるものではない。
(口頭審理陳述要領書26頁5ないし13行)

(イ)相違点1-3についての検討
副引用例1(甲6)には、改修用下枠である新窓枠5が、階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成していることが開示されている。主引用例1は浴室ドアの改修に関する技術であり、浴室ドアの改修においては水はけや躓きの防止などの観点から浴室側に向かって下り勾配に形成する要請があることは当業者にとって当然のことであるところ、副引用例1は改修用下枠が階段状を呈して室外に向かって下り勾配を形成するように改修するサッシ改修に関する技術であるから、主引用例1に副引用例1を適用する動機付けがある。
また、実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(甲7)や実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム(甲8)にも、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠が開示されており、下枠として、室外に向かって下り勾配となっているサッシは、最も一般的な周知のサッシであって、建具の改修技術において改修用サッシとしてそのような一般的な周知のサッシを採用することはごく普通のことである。
(審判請求書35頁10行ないし36頁1行)

(ウ)相違点1-4についての検討
a 主引用例1において採用されている平坦な底壁を備えた改修用下枠に代えて、副引用例1(甲6)で開示されているような室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を用いることは当業者が容易になし得たものであるところ、それに伴って、副引用例1の改修用下枠の室外側が既設下枠の室外側で支持されるように、改修用下枠の室外側を何らかの方法で既設下枠で支持することは、当業者が当然考慮すべきことである。
(審判請求書36頁11ないし17行)

b 本件特許発明4の属する技術分野において、部材の組立誤差等を吸収し、部材間の間隔を埋めて部材同士をガタつきなく接合するために部材をスペーサを介して支持することは、特許第3223993号公報(甲9)、特開昭61-229086号公報(甲10)、特開平7-286439号公報(甲11)にも開示されているように、サッシの改修の技術分野において周知であることを考えると、主引用例1に副引用例1の改修用下枠を適用することによって、改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるとの構成を採用することは、当業者が適宜なし得るものである。
(審判請求書36頁末行ないし37頁9行)

(エ)相違点1-1についての検討
開口部の配置された場所の相違によって、改修用引戸枠自体の構成に必ずしも相違が生じるものではなく、建物内の部屋間を仕切る壁面の開口部に配置された既設引戸枠の改修技術を、室内外を連絡する開口部に配置された既設引戸枠の改修に利用できない理由もない。実際、引戸の下枠にレール部材を連結させる発明の特開平9-287355号公報(甲12)の段落【0014】、引戸に関する発明の特開平8-114057号公報(甲13)の段落【0018】や引戸の組立作業を容易にすることを目的とする引戸の下枠構造に関する発明の特開平7-173945号公報(甲14)の段落【0041】などには、浴室の引戸だけでなく屋外に面する引戸等にも当該発明を用いることができることについて示唆する記載がある。
したがって、主引用例1を、室内外を連絡する開口部に配置された既設引戸枠の改修に適用しようと考えることは、当業者にとって何ら特別なことではない。
(審判請求書37頁下から3行ないし38頁10行)

(オ)相違点1-2についての検討
実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)のマイクロフィルム(甲7)の明細書14?15頁、特開平10-30377号公報(甲15)の段落【0019】、特公昭62-45948号公報(甲16)の7欄8?同欄22行や特開2002-285757号公報(甲17)にも引戸枠の改修に際し、既設下枠のレールを撤去することが開示されているように、サッシの改修の技術分野において既設下枠のレールを撤去することは周知の技術であって、主引用例1に副引用例1(甲6)で開示されているような室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を適用することによって、既設下枠の室外側案内レールが邪魔になるのであれば、それを除去しようと上記周知の技術を用いることは当業者にとって当然のことにすぎない。
(審判請求書38頁末行ないし39頁10行)

(カ)相違点1-5についての検討
副引用例1(甲6)には、新窓枠5の外側フランジ5a(改修用下枠の前壁)をビスによって旧下枠の垂下フランジ1b(既設下枠の前壁)にビスにより固定することが開示されている。そして、それは、実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム(甲8)にも開示されているとおり、サッシの改修の技術分野において周知の技術である。
(審判請求書39頁下から4行ないし40頁2行)

(キ)相違点1-6についての検討
サッシにアルミニウム合金製の押出し形材を用いることは特開平8-209262号公報(甲18)、特開平10-88906号公報(甲19)に、また、浴室のサッシにおいてアルミ押出し形材を用いていることは甲第20号証に記載されているように、当業者にとって周知技術であり、単なる任意選択事項にすぎない。
(審判請求書40頁10ないし14行)

エ 本件特許発明5について
(ア)本件特許発明5と主引用例1との相違点
本件特許発明5と主引用例1とを対比すると、本件発明4と主引用例1との一致点と同様の点で一致し、本件特許発明4と主引用例1との相違点と同様の点で相違すると共に、さらに、以下の点で相違している。
(相違点1-7)
本件特許発明5は、改修用引戸枠には、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着してあり、前記既設引戸枠内に室外側から挿入した際に、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対して、主引用例1には、そのようなシール材がない点。
(審判請求書41頁10ないし19行)

(イ)相違点1-7についての検討
「改修用引戸枠には、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着してあり、前記既設引戸枠内に室外側から挿入した際に、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接する」ことは、特開平9-177437号公報(甲21)や特開平8-93325号公報(甲22)に開示されているように、周知の技術である。
(審判請求書42頁2ないし7行)

オ 本件特許発明6について
(ア)本件特許発明6と主引用例1との相違点
本件特許発明6と主引用例1とを対比すると、本件発明4と主引用例1との一致点と同様の点で一致し、本件特許発明4と主引用例1との相違点と同様の点で相違すると共に、さらに、以下の点で相違している。
(相違点1-8)
本件特許発明6は、既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対して、主引用例1は、そうではない点。
(審判請求書42頁15ないし末行)

(イ)相違点1-8についての検討
サッシの改修の技術分野において既設下枠のレールを撤去することは周知の技術であって、主引用例1に副引用例1(甲6)で開示されているような室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を適用することによって、既設下枠の室外側案内レールとともに室内側案内レールが邪魔になるであれば、それを除去しようと上記周知の技術を用いることは当業者にとって当然のことにすぎない。
(審判請求書43頁6ないし12行)

カ 本件特許発明1ないし3について
本件特許発明1ないし3は、本件特許発明4ないし6の各改修引戸装置について、それぞれ引戸装置の改修方法として特定したものであって、実質的に本件特許発明4ないし6と変わるものではない。
そして、本件特許発明1ないし3と、主引用例1を方法の発明として特定した主引用例2との一致点及び相違点についても、本件特許発明4ないし6と主引用例1との一致点及び相違点と実質的に同様であり、各相違点について述べたところは、カテゴリーが異なることによって変わるものでもない。
(審判請求書43頁下から3行ないし44頁4行)

(5)無効理由5(進歩性欠如)
ア 主引用例3及び4について
甲第6号証に記載されたサッシ及びサッシの改修方法(以下、当該サッシを「主引用例3」、当該サッシの改修方法を「主引用例4」という。)は、以下の構成を備えている。
【主引用例3】
既存のスチール製の旧窓枠内に、アルミニウム合金型材から成り、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた下枠を有し、方形に組み立てられて成る新窓枠が挿入され、
この新窓枠の下枠の室外側が、電食防止テープ12を介して、旧窓枠の下枠の室外側に接して支持されると共に、前記新窓枠の下枠の室内側がアンカー6により支持され、該アンカー6が旧窓枠の下枠にビス止めされており、
前記新窓枠の下枠の外側フランジ5aが、ビスによって旧窓枠の下枠の垂下フランジ1bに固定されている
改修サッシ。
【主引用例4】(主引用例3を方法の発明として特定したもの)
建物の開口部に取付けてあるスチール製の旧窓枠を残存し、
この後に、アルミニウム合金型材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し、方形に組み立てられて成る新窓枠を、前記旧窓枠内に挿入し、
その改修用下枠の室外寄りを、電食防止テープ12を介して、旧窓枠の下枠の室外側に接して支持すると共に、前記新窓枠の下枠の室内側がアンカー6により支持され、該アンカー6が旧窓枠の下枠にビス止めされ、
前記新窓枠の下枠の外側フランジ5aが、ビスによって旧窓枠の下枠の垂下フランジ1bに固定され、
前記新窓枠をアンカー6を基準として取付ける
ことを特徴とするサッシの改修方法。
(審判請求書46頁11行ないし47頁12行)

イ 本件特許発明4について
(ア)本件特許発明4と主引用例3との相違点
(相違点2-1)
本件特許発明4は、既設窓枠がアルミニウム合金の押出し形材から成る引戸枠であるのに対して、主引用例3では、既設窓枠がスチール製であり、引戸枠であるかが不明な点。
(相違点2-2)
本件特許発明4は、既設下枠が室外側案内レールと室内側案内レールとを備え、室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するのに対して、主引用例3では、既設下枠が室外側案内レールと室内側案内レールとを備えているか、また、室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去しているかが不明である点。
(相違点2-3)
本件特許発明4は、取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁にビスで取り付けられており、改修用下枠の室内寄りが前記取付け補助部材で支持されているのに対して、主引用例3では、取付け補助部材が改修用下枠の室内側に固定されており、前記取付け補助部材が既設下枠にビス止めされている点。
(相違点2-4)
本件特許発明4では、改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されているのに対して、主引用例3では、電食防止テープを介して既設下枠の室外側に接して支持されている点。
(相違点2-5)
本件特許発明4は、既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対して、主引用例3は、既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の上端よりも改修用下枠の上端が上方に位置している点。
(審判請求書49頁下から2行ないし51頁1行)

(イ)相違点2-3についての検討
a 改修用下枠を取付け補助部材を介して既設下枠で支持することは、例えば実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム(甲8)、特許第3223993号公報(甲9)、特開2002-285757号公報(甲17)にも開示されているように、当業者にとって周知の技術であり、取付け補助部材の構成も、既設下枠と改修用下枠とに応じて、さまざまな形状、構造のものが本件各特許の原出願日前に知られている。その一つとして、既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁にビスで取り付けられ、改修用下枠の室内寄りを支持する取付け補助部材も、副引用例2(甲23)に開示されている。
(審判請求書51頁19行ないし52頁3行)

b 主引用例3において、改修用下枠の室内側を支持する取付け補助部材の構成がアンカーでなくてはならない必然的な事情もない。また、改修の際に、改修用引戸枠の取付けに邪魔になる既設下枠の部分を切断して除去することは、実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)のマイクロフィルム(甲7)、特開平10-30377号公報(甲15)の段落【0019】、特公昭62-45948号公報(甲16)や特開2002-285757号公報(甲17)にも開示されているように、サッシの改修の技術分野において周知の技術であることから、主引用例3に副引用例2の取付け補助部材を適用するに際して、主引用例3の既設下枠に邪魔な部分(既設下枠の上表面1a)が存在する場合にそれを切断して除去することは、甲第16号証の第12図にも同様の部材を切断して除去する例が開示されているとおり、当業者にとって何ら困難ではない。
(審判請求書52頁7ないし18行)

(ウ)相違点2-5についての検討
既設下枠の最も室内側の端部に連なる背後壁の上端と改修用下枠の上端とをほぼ同じ高さとすることは、副引用例2に開示されている。既設引戸枠を残存させた状態で改修用引戸枠を挿入して改修することは周知の改修技術であるところ、そのような改修を行うに際して、できる限り開口面積を減少させないようにすることは、甲第7号証の明細書5頁5?同頁16行にも記載されているように、当業者であれば当然に考慮することである。
そして、主引用例3において、改修用下枠の上端を既設下枠の背後壁の上端よりも上方に配置しなければならない理由はないから、主引用例3に副引用例2(の取付け補助部材)を適用して、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端とをほぼ同じ高さにすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
(審判請求書52頁下から4行ないし53頁12行)

(エ)相違点2-1についての検討
窓枠を構成する各枠材をアルミニウム合金の押出し形材によって形成することは、特開平8-209262号公報(甲18)、特開平10-88906号公報(甲19)や甲第20号証の15頁にも開示されているように、周知の技術であるし、窓枠を引戸枠とすることも周知の技術であることから、主引用例3を、当該周知の構成を備える既設引戸枠の改修工事において用いることに技術的差異はなく、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(審判請求書53頁19ないし末行)

(オ)相違点2-2についての検討
主引用例3が、どのような構成の既設窓枠を改修の対象としているのかは明らかではないが、全体として室外側を既設下枠により支持し、室内側を取付け補助部材を介して既設下枠に支持する主引用例3の改修用窓枠によって改修できる既設窓枠であれば、どのような構成の既設窓枠を改修するかは、当業者が適宜決定できる事項である。
ここで、主引用例3の改修用引戸枠によって、下枠に室外側案内レールと室内側案内レールとを備える普通のタイプの既設引戸枠を改修しようとすれば、既設下枠のレール部分が障害となることは当業者にとって容易に推測できるところである。もっとも、上記適用に伴って生じる障害を取り除くべく構成を変更することは、当業者であれば当然に考えることであり、既設下枠のレールを撤去することについては、実願昭62-39866号(実開昭63-146085号)のマイクロフィルム(甲7)、特開平10-30377号公報(甲15)の段落【0019】、特公昭62-45948号公報(甲16)や特開2002-285757号公報(甲17)にも開示されているように、サッシの改修の技術分野において周知の技術である。
(審判請求書54頁9ないし23行)

(カ)相違点2-4についての検討
本件発明の属する技術分野において、部材の組立誤差等を吸収し、部材間の間隔を埋めて部材同士をガタつきなく接合するために部材をスペーサを介して支持することは、特許第3223993号公報(甲9)、特開昭61-229086号公報(甲10)、特開平7-286439号公報(甲11)にも開示されているように、サッシの改修の技術分野において周知である。
そして、上記スペーサを介して当接、支持することによって生じる作用効果は主引用例3にとっても有効であるから、スペーサを介して当接、支持させるという上記周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
(審判請求書55頁13ないし24行)

ウ 本件特許発明5について
(ア)本件特許発明5と主引用例3との相違点
本件特許発明5と主引用例3とを対比すると、本件特許発明4と主引用例3との一致点と同様の点で一致し、本件特許発明4と主引用例3との相違点と同様の点で相違すると共に、さらに、以下の点で相違している。
(相違点2-6)
本件特許発明5は、改修用引戸枠には、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着してあり、前記既設引戸枠内に室外側から挿入した際に、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対して、主引用例3には、そのようなシール材がない点。
(審判請求書56頁14ないし末行)

(イ)相違点2-6についての検討
改修用引戸枠には、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着してあり、前記既設引戸枠内に室外側から挿入した際に、その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接することは、特開平9-177437号公報(甲21)や特開平8-93325号公報(甲22)に開示されているように、周知の技術である。
(審判請求書57頁6ないし11行)

エ 本件特許発明6について
(ア)本件特許発明6と主引用例3との相違点
本件特許発明6と主引用例3とを対比すると、本件特許発明4と主引用例3との一致点と同様の点で一致し、本件特許発明4と主引用例3との相違点と同様の点で相違すると共に、さらに、以下の点で相違している。
(相違点2-7)
本件特許発明6は、既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対して、主引用例3は、そうではない点。
(審判請求書57頁下から3行ないし58頁3行)

(イ)相違点2-7についての検討
サッシの改修の技術分野において既設下枠のレールを撤去することは周知の技術であって、主引用例3に副引用例2で開示されているような室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を適用することによって、既設下枠の室外側案内レールとともに室内側案内レールが邪魔になるであれば、それを除去しようと上記周知の技術を用いることは当業者にとって当然のことにすぎない。
(審判請求書58頁9ないし15行)

オ 本件特許発明1ないし3について
本件発明1ないし3は、本件発明4ないし6の各改修引戸装置について、それぞれ引戸装置の改修方法として特定したものであって、実質的に本件発明4ないし6と変わるものではない。
そして、本件発明1ないし3と、主引用例3を方法の発明として特定した主引用例4との一致点及び相違点についても、本件発明4ないし6と主引用例3との一致点及び相違点と実質的に同様であり、各相違点について述べたところは、カテゴリーが異なることによって変わるものでもない。
(審判請求書59頁4ないし10行)

(6)無効理由4及び5についての補足(技術常識)
本件各発明において、単なる周知技術の適用にすぎない構成は、「室外側案内レールを切断して撤去する点」に限るものではなく、既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を背後壁の立面にビスで固定する点等、ほぼ全ての構成要件が、原出願当時の当業者における普通の技術水準のものでしかなかったことは明らかである。
まず、甲第33号証ないし甲第36号証に示す建具各社から提出された財団法人ベターリビング(現:一般財団法人ベターリビング)へのBL部品の申請書類等の記載から、上記構成要件が当業者における普通の技術水準のものでしかなかったことが分かる。
(口頭審理陳述要領書37頁10ないし18行)

第5 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論し(平成28年8月5日付け審判事件答弁書、平成28年11月25日付け口頭審理陳述要領書、平成28年12月22日付け上申書を参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:知財高裁平成25年(行ケ)第10321号判決
乙第2号証:知財高裁平成24年(行ケ)第10418号判決
乙第3号証:「特許・実用新案審査基準」、第II部・第2章・第2節サポート要件・2.2サポート要件の違反の類型、及び、第III部・第2章・第2節進歩性・3.3進歩性の判断における留意事項
乙第4号証:知財高裁平成26年(行ケ)第10243号判決

3 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1(明確性要件違反)について
ア 「ほぼ同じ」は、当該技術分野の平均的な技術水準において、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さが同じということであり、おおむね同じ、だいたい同じということで、完全に同じであることを要しないという程度の意味合いであって、「ほぼ」なる用語を用いたからといって直ちにその技術的意義が不明瞭になるとか、その範囲が不明確となるものではない。
(答弁書8頁9ないし13行)

イ 「ほぼ同じ高さ」とは、既設下枠の室外側案内レールを切断撤去し、取付け補助部材で改修用下枠の室内寄りを支持したときに得られる程度における改修用下枠の上端と背後壁の上端との高さの同一性を意味することが明確に把握できる。
(答弁書9頁16ないし19行)

ウ 本件各特許発明においては、これらの場合における既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端との高さの差は、上述のように室外側案内レールの切断長さより小さくなければそもそも本件各特許発明の効果を得ることができないのであり、室外側案内レールの切断長さの範囲の高さを「ほぼ同じ高さ」と称したのである。
(口頭審理陳述要領書10頁20ないし24行)

(2)無効理由2(サポート要件違反)について
ア 本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件特許発明は、従来技術において、(ア)改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題と、(イ)改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され、その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)があったため、これらの問題(課題)を、(1)既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1)、(2)既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し、取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより解決したものであり、構成1及び2を探ることにより、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、広い開口面積を確保でき、構成2とすることにより、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。
そして、本件特許発明の「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」(請求項1ないし3)する、又は「改修用下枠の室内寄りが、取付け補助部材で支持され」(請求項4ないし6)る具体的な構成として、取付け補助部材106の上壁部109において改修用下枠69の室内側脚部分91及び支持壁89とを支持する場合における構成1及び2の具体的な構成(実施形態)は、本件明細書の段落【0070】(ただし、構成2のうち、取付け補助部材を既設下枠の室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する構成部分については、【0100】)に記載されている。
以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者において、特許請求の範囲に記載された本件特許発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。
(答弁書18頁5行ないし19頁7行)

イ 本件各特許発明についてみると、その各構成要素が全て本件明細書の発明の詳細な説明中に記載されており、しかも、各構成要素の異なる組み合わせを備えた実施形態が複数記載されているのであるから、これらの記載を参酌すれば、本件各特許発明の改修用引戸枠などの作用効果を実現可能な改修用引戸枠などが実施できることは明らかである。
(答弁書21頁下から5ないし末行)

(3)無効理由3(実施可能要件違反)について
請求人の無効理由3についての主張の前提(無効理由1)がそもそも誤りであり、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件各発明を当業者がその実施することが出来る程度に明確かつ十分に記載したものであるから、請求人のこの主張は誤りである。
(答弁書22頁17ないし20行)

(4)無効理由4(進歩性欠如)について
ア 請求人が主引用例1と称する甲第5号証の1の図面について、それが公知又は公然実施されたことの証明は、甲第5号証の4及び甲第5号証の5の各証明書のみであり、いずれの証明書も私人の作成に係るものであり、証明者本人が実際に工事に携わったか否かも明らかではない、しかもその内容の信ぴょう性について何の証明もなされておらず全く信用できない。
加えて、甲第5号証の1の図面などでは、その改修用引戸枠についての具体的構成が不明瞭であるだけではなく、技術的説明も全く不十分である。
したがって、これらは本件無効審判事件の証拠としての価値がなく当然のことながら採用に値しない。
(答弁書23頁8ないし16行)

イ 甲第28号証の1(納品書)が甲第5号証の1、2に係る改修引戸装置のものか否かこの納品書では分からない。また、甲第29号証(写真撮影報告書)には引戸の全体およびその部分の外観が撮影されているだけであって、その写真から、それらが甲第5号証の1、2に係る内部構成を備えたあるいは引戸装置の改修方法が実施された改修引戸装置であると同定することはできない。また、甲第30号証の証明書は、私人の作成したものであってそのまま信用することはできない。
(口頭審理陳述要領書11頁19ないし25行)

ウ 「逆L字状の部材s」は、甲第5号証の1(甲第5号証の2)からみて、その取付け時において、既設下枠の横向片の部分m6が改修用下枠を取付ける際の基準になっているから、「逆L字状の部材s」が改修用下枠の取付けの基準となることは有り得ない。
つまり、己斐寮浴室の浴室サッシにおいて、改修用引戸枠を既設引戸枠内に取付ける際に、改修用引戸枠は、仮に浴室側から挿入されたものであるとしても、その挿入の際に、「逆L字状の部材s」が改修用引戸枠の既設引戸枠に取付ける基準とされたということはあり得えないし、そもそも改修用引戸枠が「逆L字状の部材s」に取付かないことから取付け機能を果たすことは不可能である。
さらに、「逆L字状の部材s」は、前述のとおり取付け時の基準にならず、単に既設下枠の延設部分m7の下面に当接しているに過ぎないから、「既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる」との効果をしないことも明らかである。
したがって、甲第5号証の1(甲第5号証の2)の「逆L字状の部材s」を、本件特許発明4の「取付け補助部材」とみるのは誤りであり、請求人が主張するように本件特許発明4の「取付け補助部材」には対応していない。
(答弁書25頁12ないし末行)

エ 「基準として」の意味は、既設下枠に対して改修用下枠を取り付ける際に、取付け補助部材がその位置決めの基準となるという意味で、請求人がいうような単に既設下枠に対して改修用下枠が取付け補助部材を介して支持されることとは全く意味が相違する。
(口頭審理陳述要領書24頁7ないし10行)

公然実施品に基づき進歩性欠如を主張するのであれば、主引用例1が如何なる発明か明確にする必要がある。しかし、請求人は、主引用例1が如何なる発明かを明確にしておらず、これでは、主引用例1に具現された発明に副引用例1を組み合わせる動機など生ずることがなく、しかも、主引用例1は、具体的実施態様を示すものとして、各部材がひとまとまりの構成として存在するから、当該ひとまとまりの構成を形成する実施態様から一部材をとり出して、他の引用例により示された、部材に代えることは不可能である。
(答弁書28頁8ないし15行)

カ 主引用例1に副引用例1を適用するということ自体、何の動機付けもなく、それは単に本件発明を知ったから、つまり後知恵に過ぎない。また、その点を措くとしても、主引用例1に副引用例1を適用したからといって、直ちに「既設下枠の室外側案内レールが邪魔になる」わけではなく、また当然邪魔になるということでもない。したがって、仮に主引用例1に副引用例1を適用できたとしても、請求人が指摘する周知技術に関わりなく相違点1-2に係る構成を容易に想到できるわけではない。
(答弁書28頁下から2行ないし29頁5行)

(5)無効理由5(進歩性欠如)について
ア 本件特許発明4の取付け補助部材は、単に背後壁にビスで取付けられているのではなく、背後壁の立面にビスで固着して取付けられているのであり、他方、主引用例3(甲第6号証)のアンカー6は、そのアンカーフランジ6bが、室内側立上り壁より延出した先端が屈曲して逆U字形を形成された既存のスチール製下枠の上表面1aの平面上にビス止めされている(2欄8?10行、3欄14?16行)のであるから、請求人が主張する相違点は正しくない。
(答弁書33頁14ないし20行)

イ 本件特許発明4の取付け補助部材は、本件明細書に記載のとおり、既設引戸枠に改修引戸枠を挿入して取付ける際に、取付けの基準となるものであって、且つ、「既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる」との効果も奏することを要するものであり、そのような取付け補助部材は周知とは言えない。また、請求人は、「取付け補助部材の構成も、既設下枠と改修用下枠とに応じて、さまざまな形状、構造のものが本件各特許の原出願日前に知られている」と主張するが誤りである。
(答弁書34頁18ないし26行)

ウ 請求人がいう周知の技術を前提にしても、甲第6号証が、室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去したものを表していると断定することはできない。
(答弁書41頁6ないし8行)

第6 当審の判断
1 本件特許発明の進歩性判断の基準日について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ること、及び、請求項4ないし6に記載された「取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあ」ることは、原出願の出願当初の明細書には記載されているが、優先基礎出願の出願当初の明細書には記載されていない。
したがって、本件特許出願は、本件特許発明1ないし6についての特許法第29条第2項の規定の適用にあたっては、優先基礎出願の時にされたものとみなすことはできず、原出願の出願の時にされたものとみなされる。

2 各甲号証の記載
(1)甲第5号証の1ないし5、甲第28号証の1及び2、甲第29号証、甲第30号証
ア 公知公用について
甲第5号証の1は、その記載内容からみて、平成12年11月24日竣工の「広電己斐寮浴室改修工事」に係る設計図面等であると認められるところ、甲第5号証の4の証明書、甲第28号証の1の納品書、甲第28号証の2の証明書、甲第29号証の写真撮影報告書の記載をも踏まえると、本件特許の原出願日前の平成12年11月24日に当該設計図面等に記載されたとおりに「広電己斐寮浴室改修工事」が竣工されたものと一応推認できる。
そして、甲第5号証の4の証明書には、上記「広電己斐寮浴室改修工事」を施工した新和建装において、改修工事の内容や設計図面等内容について秘密に取り扱ったことはなく、担当した従業員にも秘密保持を課していないことが記載されている。また、施工にあたり施主である広島電鉄株式会社から問い合わせがあれば、新和建装は、当然、設計図面等に記載された事項を含め改修工事の内容を説明したであろうと認められるし、広島電鉄株式会社は、改修されたサッシを調査して、その構造や取付状態を知ることが可能である。
してみると、甲第5号証の1等の記載から把握される「広電己斐寮浴室改修工事」に係る下記イ(オ)の甲5発明1及び甲5発明2は、本件特許の原出願日前に公然知られた発明又は公然実施された発明であると一応推認できる。

イ 甲第5号証の1(甲第5号証の2、甲第5号証の3)、甲第5号証の5、甲第29号証、甲第30号証の記載
(ア)甲第5号証の1(甲第5号証の2、甲第5号証の3)
工事名「広電己斐寮浴室改修工事」の設計図面等が記載された甲第5号証の1には、以下の事項が記載されている。なお便宜上、甲第5号証の1の4/4頁の左図面(以下「縦断面図」という。)を拡大した甲第5号証の2、及び、同じく右図面(以下「横断面図」という。)を拡大した甲第5号証の3に付された記号を用いて記載する。

a 甲第5号証の2(縦断面図)は、次のものである。


b 甲第5号証の3(横断面図)は、次のものである。


c 縦断面図をみると、下方には、点線L1により、既設下枠が示されている。既設下枠には、脱衣側から浴室側に向かって段々に低くなる底壁部分m1、底壁部分m1より上方に向かって延びる脱衣側レールm2、浴室側レールm3が形成されており、底壁部分m1の最も浴室側の端部から上方に向かって延びる壁部m4が形成され、底壁部分m1の最も脱衣側の端部から立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され、壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに、横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成されていることがみてとれる。

d 縦断面図をみると、上方には、点線L2により、既設上枠が示されている。既設上枠には、脱衣側レールn2、浴室側レールn3が形成されている。また、実線L4で改修用上枠が示されており、改修用上枠は、既設上枠にビスによって固定されたクランク状の部材uに浴室側から当接し、ビスによって固定されていることがみてとれる。

e 縦断面図をみると、その右側に「既設サッシH=2,000」と寸法線l1とともに記載されており、寸法線l1の下端位置は、縦断面図の下方において点線L1で示される横向片の部分m6の上面と同一高さ位置であるとともに、寸法線l1の上端位置は、縦断面図の上方において点線L2で示される既設上枠の下端位置と略同一高さ位置であることがみてとれる。

f 縦断面図をみると、上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sが、上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに、その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定されていることがみてとれ、L字状の部材sには、「AL L-15×12(三協)」との記載が付されている。

g 縦断面図をみると、点線L1により示される壁部m4には、逆L字状の部材tがビスで固定されていることがみてとれ、逆L字状の部材tには、「AL L-50×12×2.0(新和手配)」との記載が付されている。

h 縦断面図をみると、実線L3により、改修用下枠が示されている。実線L3で示される改修用下枠の底壁は、平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一であることがみてとれる。また、実線L3で示される改修用下枠は、その脱衣側端の水平部の上面と浴室側のレール及び脱衣側のレールの上端の高さが同一であり、既設下枠の上端である点線L1により示される壁部m5の上端(横向片の部分m6の上面)との高さの差が「3」(mm)であることがみてとれる。

i 縦断面図をみると、実線L3で示される改修用下枠は、その脱衣室側端が下方に屈曲して点線L1により示される横向片の部分m6の上面に当接されるとともに、延設部分m7のさらに浴室側において逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスにより固定されていることがみてとれる。また、実線L3で示される改修用下枠は浴室側において、その底壁が逆L字状の部材tの上部にビスで固定されていることがみてとれる。

j 横断面図をみると、点線L5、L6により、既設縦枠が示されている。実線L7、L8で示される改修用竪枠の浴室側及び脱衣側が、それぞれ点線L5で示される壁部p3及び点線L6で示される壁部q3と、クランク状の部材wの内周片w1及び断面L字状の部材yの内周片y1とに浴室側から当接し、それぞれビスによって固定されていることがみてとれる。

k 縦断面図をみると、改修用上枠と改修用下枠のレールの間に引戸が設置されており、改修用上枠、改修用下枠及び改修用竪枠が引戸枠であることがみてとれる。また、既設上枠の脱衣側レールn2、浴室側レールn3と既設下枠の脱衣側レールm2、浴室側レールm3が対向して設けられており、既設上枠、既設下枠及び既設竪枠も引戸枠であることがみてとれる。

(イ)甲第5号証の5
甲第5号証の5は、株式会社新和の代表取締役宇吹正樹が請求人に宛てた平成28年2月1日付けの証明書であって、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

「弊社は、広島電鉄株式会社殿の広島電鉄己斐寮…において、弊社が作成した平成27年7月24日付け証明書別紙設計図面等に基づき、平成12年11月24日に竣工させた浴室ドア改修工事に関して、下記のとおり証明致します。
……
1.上記改修工事における既設サッシはアルミニウム合金製であったところ、……
2.改修用引戸枠を既設引戸枠内に取り付けるに際しては浴室側から挿入したこと。
3.上記改修工事において、広島電鉄株式会社殿から開口面積ができるだけ小さくならないようにとの要望があり、この点に配慮して設計をしたこと。」

(ウ)甲第29号証
甲第29号証は、請求人である三協立山株式会社法務知財部部長小栗裕一が作成した写真撮影報告書であって、平成27年6月5日に広島電鉄株式会社己斐寮の浴場内の脱衣室側と浴室側とを仕切る引違い戸を撮影したものと一応認められるところ、5頁ないし8頁の写真をみると、改修用サッシはアルミニウム合金からなるものと認められる。

(エ)甲第30号証
甲第30号証は、株式会社新和の代表取締役宇吹正樹が請求人に宛てた平成28年11月7日付けの証明書であって、以下の記載がある。

「弊社は、広島電鉄株式会社殿の広島電鉄己斐寮…において、弊社が作成した平成27年7月24日付け証明書別紙設計図面等に基づき、平成12年11月24日に竣工させた浴室ドア改修工事に関して、下記のとおり証明致します。
……
別紙の図1は、上記浴室ドア改修工事に関する改修用サッシの縦断面図……を拡大したものに、便宜上記号を付した図で、別紙の図2は、図1のうち下枠の脱衣側部分を拡大した図です。
この図2を見ると分かるとおり、横向片の部分m6の左側、すなわち、横向片の部分m6、改修用下枠、横向片の部分m7及び逆L字状の部材sの上壁s1で囲われた部分には、何らの部材も存在しません。また、改修用下枠及び逆L字状の部材sの上壁s1が直接ネジにより連結されているため、逆L字状の部材sに対して改修用下枠が上下左右にずれることはなく、改修用下枠は、ネジを介して、逆L字状の部材sの上壁s1で支持されています。」

(オ)「広電己斐寮浴室改修工事」に係る発明
上記(ア)ないし(エ)によると、「広電己斐寮浴室改修工事」に係る浴室の引戸枠の施工方法及び構造に関し、次の発明が認めれる。

a 甲5発明1
「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には、立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され、壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに、横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され、
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを、上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに、その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定し、
既設下枠の浴室側の壁部m4には、逆L字状の部材tをビスで固定し、
この後に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠、アルミニウム合金から成り、平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、既設引戸枠内に浴室側から挿入し、
改修用下枠の浴室寄りを、逆L字状の部材tの上部にビスで固定し、改修用下枠の脱衣寄りを、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定し、
既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである引戸装置の改修方法。」

b 甲5発明2
「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠、脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えたアルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し、
既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には、立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され、壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに、横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され、
上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを、上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに、その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定してあり、
既設下枠の浴室側の壁部m4には、逆L字状の部材tをビスで固定してあり、
既設引戸枠内に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成り、平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠を挿入し、
改修用引戸枠の改修用下枠の浴室寄りを、断面逆L字状の部材tの上部にビスで固定し、改修用下枠の脱衣寄りを、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定してあり、
既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである改修引戸装置。」

(2)甲第6号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。

ア 「(1)旧窓枠に新窓枠を取付ける改装サツシにおいて、新窓枠の外側フランジを旧窓枠にビス止めし、内側面の長手方向に形成したC形溝に新アンカー片の基板を係止するとともに、該基板から延出したフランジを旧窓枠にビス止めしたことを特徴とする新窓枠の取付構造。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「本考案は旧窓枠に新窓枠を取付けるとき、新窓枠の見込寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関する。
従来改装サツシに於て旧窓枠に対して見込寸法の小なる新窓枠を其のま丶利用して簡単に取付ける横取は無く極めて複雑な手法が採用されて来た。本考案は単純な形状のアンカー片を付加することにより見込寸法の異なる旧窓枠に順応して取付可能なる新窓枠の取付け構造を提供するものにして特に改装サツシの下枠に応用して効を奏するものである。」(1頁1欄31行ないし同頁2欄4行)

ウ 「図に於て1は既存のスチール製下枠にして室内側立上り壁より延出した先端は屈曲して逆U字形を形成し上表面1aは平面である。2は既存のスチール製水切板で先端の水切部は図示を略されており室内側の立上り壁2aは旧下枠の垂下フランジ1bに内装している。3は建造物壁体にして通常コンクリートである。4は内障子用の敷居材である。以上が既設スチールサツシ障子を取り除いた旧窓枠の状態である。5は新窓枠にして其の側面形状は階段状を呈して室外に向つて下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5cを形成してる。6はアンカー片にして6aはその基板にして6bは基板と直交するフランジである。」(1頁2欄7ないし23行)

エ 「7は額縁にして実質的には膳板の役目を果しており、既設の構成に合致する如き寸法にてアンカー片6と既存の下枠1とを覆う化粧板であり一般には窓枠と同一材料の型材を使用すれば良い。本実施例にては型材はアルミニウム合金型材に表面処理を施した材料が使用されている。」(2頁3欄6ないし11行)

オ 「次に取付工法の一例を概説すると、アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠を現地に運搬し新窓枠の外側フランジ5aを複数本のビス8にて新水切板2′を介して旧窓枠にビス止めする。この場合外側フランジ5aの内壁面に長手方向に装着されたるパツキンを介してビス止めされた状態を図示してる。一方アンカーのフランジ6bを上方より複数本のビス8にて旧窓枠にビス止めする。……なお図示の12はアルミニウム型材と旧スチール枠間にて腐食の発生を防止するための養生である電食防止テープである。」(2頁3欄12行ないし同頁4欄7行)

カ 「以上説明したとおり本考案によれば旧窓枠と新窓枠との見込寸法が異なる場合に、新窓枠の内側面の長手方向にC形溝を設けておき、アンカーと新しい額縁のみを準備すれば、寸法の異なる既設窓枠に新窓枠を簡単に装着可能にして、又C形溝を利用したので現場でのビス孔の穿孔手数も省け経済的見地より実用的価値の高いものである。」(2頁右欄8ないし14行)

キ 第1図をみると、新窓枠5の下枠は、その外側フランジ5aが既存のスチール製下枠1の垂下フランジ1bにビス止めされることがみてとれる。また、第1図に記載された新窓枠5及び既存のスチール製下枠1の形状及び新窓枠5の取付態様からみて、方形に組立てられた新窓枠5は旧窓枠1に室外側から挿入されるものであることが理解できる。

ク 上記アないしキによると、甲第6号証には、次の発明が記載されていると認めれる。

(ア)甲6発明1
「旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取付けるサツシの改装方法において、
新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し、
アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し、
新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めするサツシの改装方法。」

(イ)甲6発明2
「旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取付ける改装サツシにおいて、
新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し、
方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し、新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、C形溝5bに係止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした改装サツシ。」

(3)甲第7号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。

ア 「既設サッシの窓中心側に新設サツシを取付けるための、両サッシ間に介在させるサッシ取付け部材(3),(6)のうちの下側サツシ部分(1),(2)に介在させるサッシ取付け部材であつて、前記既設サッシの下側レール部(2a)の内外方向全幅に相当する幅を有する帯状部(3a)と該帯状部(3a)の室外側となるべき端部から下方に垂設された縁部(3b)とを有し、その断面形状が略L字状に形成され、前記縁部(3b)を既設サッシの下側レール部(2a)外縁の室外側垂直部(2c)に当て付けるとともにL字状取付け捨枠台(7)を介して既設サッシに固設する一方、前記帯状部(3a)を前記下側レール(2a)に支持させるべく構成してあるサッシ取付け部材。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「第3図は、既設サッシの下側サッシ部分(2)における突条レールを切除したレール部(2a)の上に取付け部材(3)を介して新設サッシの下側サッシ部分(1)を取付けた構造を示す。……この第3図の構造の場合は、既設サッシのレール部(2a)の突状レールを切除したので、その分新設サッシの窓枠を大きく形成することができる。」(明細書14頁8行ないし15頁8行)

ウ 第3図をみると、新設サッシの下側サッシ部分(1)は、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えていることがみてとれる。

(4)甲第8号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の記載がある。

ア 「第1図及び第2図において、(A)は老朽化したアルミ製サッシ枠(以下単に旧サッシ枠という)を示し、上枠材(1)、下枠材(2)、左竪枠材(3)及び右竪枠材(図示せず)を連結して成るものである。
(B)は、新しく取付けられる改装用サッシ枠を示し、上枠材(4)、下枠材(5)、左竪枠材(6)及び右竪枠材(図示せず)を連結して成るものである。
この改装用サツシ枠(B)の各枠材室外側には旧サッシ枠(A)の各枠材室外側面に当接する支片(7)(8)(9)が設けられるが、下枠材(5)の支片(8)は、建物躯体を成す窓台(10)に固着されるものであるから、旧サッシ下枠材(2)の固着片(11)に当接するように、その下端は室内側へ屈折している。
又、改装用サッシ下枠材(5)の室内側には、旧サッシ下枠材(2)の室内側に添設された木部(12)上に載置固定される取付け片(13)が突設されている。
この取付け片(13)は改装用サッシ枠(5)を室外側から室内側へ向って嵌め込む際に、旧サッシ下枠材(2)の室内側立上り片(14)にぶつからないように、これより上方位置に突設されているので、木部(12)はこの取付け片(13)と窓台(10)の間を埋めるため、及び旧サッシ下枠材(2)を隠蔽するために必要としている。
……
新旧サッシ枠(A)(B)の間に介在する支持部材(C)は、改装用サッシ枠材(4)(5)(6)の取付け時の安定性をよくするために用いられ、……スチール材から成る。この支持部材(C)は各枠材の全長にわたって介在させてもよく、又所々に介在させてもよい。……下枠用の支持部材(C)については、浸水防止の観点から下枠を貫通する固定部材を使用しないので、第1図に示すように旧サッシ下枠(2)のレール(16)を利用してネジ止めされる。
而して、枠組み連結した改装用サッシ枠(B)を、旧サッシ枠(A)を取付けたままの窓開口部へ嵌め込み、改装用サッシ下枠材(5)を支持部材(C)上に載置するとともに、その取付け片(13)を木部(12)上に載置して、各枠材(4)(5)(6)の室外側当接用支片(7)(8)(9)を、対応する旧サッシ枠材(1)(2)(3)の室外面に当接する。
そして、改装用下枠材(5)については、上記取付け片(13)を木部(12)にネジ止めし、当接用支片(8)の下端を旧サッシ下枠(2)と重合状態で建物躯体を成す窓台(10)に釘打ち固定する。」(明細書4頁7行ないし6頁17行)

イ 第1図をみると、改装用下枠材(5)は、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えていることがみてとれる。

(5)甲第9号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の記載がある。

ア 「【0002】
【従来の技術】従来、旧窓枠を利用して、この窓枠に改装サッシを取り付ける場合、図10に示すように旧窓枠1Aに取付ねじ11Aを介して取付補助枠58Aを固着し、改装サッシの新窓枠21Aと取付補助枠58Aとの間の隙間に、図6に示す形状の従来のスペーサ13を数枚重ねて挿入して、このスペーサ13,新窓枠21A,取付補助枠58Aを旧窓枠1Aに取付ねじ100Aにより一体固定するようにしていた。」

イ 「【0006】
【実施例】次に、図面により本願の実施例について説明する。図2,3において、旧窓枠1は建物の開口部材3内面に周知の如く取付けられ、上枠4、下枠5および左右の竪枠6、7を枠組みして構成されている。……下枠5と取付補助枠59との間には、複数枚の下枠用スペーサ13が差し込まれている。この下枠用スペーサ13は、図6に示すように長方形の板状に形成され、その前方にはねじ用切欠部14が形成されている。このねじ用切欠部14を介して下枠用スペーサ13,下枠5及び取付補助枠59が取付ねじ11により旧下枠5に一体固着されている。」

ウ 「【0009】次に、新窓枠21を旧窓枠1に取付ける作業手順について説明する。……また、旧窓枠1の下枠5には適宜枚数の下枠用スペーサ13を挾み込んで下枠用取付補助枠59を取付ねじ11によりねじ止めする。それから、新窓枠21を室外側より旧窓枠1内に嵌め込み、旧窓枠1の取付片15及び係止突片18に新窓枠21の螺着片34,36を当接させる。」

(6)甲第10号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の記載がある。

「上記問題点を解決するために、本発明は、建造物躯体1より除去することなく残存せしめた古い窓枠2に新しい窓枠3を取付ける窓の改装法において、古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを固着して該下枠用取付金物4bに見込み及び見付け方向の取付基準片部6,7を設け、一方四周枠伏に枠組した新しい窓枠3のうち下枠3bを除いた上枠3a及び左右縦枠3c,3dに上枠及び左右縦枠用取付金物4a,4c,4dを固着したものを一体物5として、これを室内側より古い窓枠2に嵌入れて新しい窓枠3の下枠3bを前記下枠用取付金物4bの取付基準片部6,7に直接に、またはライナーなどの調整具8を介して間接に当てつけることによって新しい窓枠3の見込み及び見付け方向の取付面の心出しを行い、しかる後上枠及び左右縦枠用取付金物4a,4c,4dを古い窓枠2の上枠2a及び左右縦枠2c,2dに固着すると共に、新しい窓枠3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着してなる窓の改装法を採用するものである。」(2頁左上欄15行ないし同頁右上欄13行)

(7)甲第11号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第11号証には、以下の記載がある。

ア 「【0011】
【実施例】図1,図2は、コンクリート造の建築物における窓の個所を示しており、外壁等の躯体2に開口部1が形成されている。また、開口部1の内周面に沿って開口部枠4(窓枠4)を取り付けるための上部捨て枠3a、下部捨て枠3b及び左右の側部捨て枠3cが配設されている。これら捨て枠3a,3b,3cは合成樹脂を素材とする押し出し形材であり、コンクリートの躯体2に埋設されていると共に、その内周面が開口部1を囲むように躯体2の表面に露出されている。
【0012】窓枠4は上枠4a,下枠4b及び左右の縦部4cで方形に形成されている。上部捨て枠3aの下面には上枠4a及び上部補助部材6aがスペーサ5を介してビス18aで取付けられている。上部捨て枠3aは、開口部1の左右幅方向に沿うと共に、上下面が水平面である中空部7を備え、中空部7の上面の室内寄りと室外寄りには、先端が互いに内向きに屈曲された断面L字状のコンクリート定着片8a,8aが形成されている。また、中空部7の室内側面及び室外側面には躯体2への定着性を増すために凹溝17,17が形成されている。」

イ 「【0015】下部捨て枠3bの上面には下枠4b及び下部補助部材6bがスペーサ5及び固定金具20を介して取付けられている。下部捨て枠3bの上方には、雨水を排出するために室外側下方に傾斜する水切部材14が装着されるので、下部捨て枠3bは、その水平面15の上面の室内寄りに最も高い第1の矩形中空部16が設けられ、室内外方向中間部にこれより低い第2の矩形中空部16´が設けられて、室内側が高い略階段状に形成されている。」

(8)甲第12号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第12号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 見込み片とその見込み方向両側から立ち上がる見付け片を持つ下枠本体と、見込み片に複数本のレールが形成され、下枠本体の両見付け片間距離より小さい見込み幅のレール部材からなり、レール部材は下枠本体のいずれか一方の見付け片に突き当たった状態で下枠本体の見込み片上に載り、レール部材が突き当たった前記見付け片の反対側の見付け片とレール部材間には両者に挟まれ、レール部材と下枠本体に跨る拘束部材が配置され、レール部材はこの拘束部材で下枠本体に拘束されている引き戸の下枠。」

イ 「【0014】
【発明の実施の形態】この発明は図1,図2に示すように下枠本体2と、複数本のレール32が形成されたレール部材3とに分割され、拘束部材4によって互いに連結された状態で使用される引き戸の下枠1である。図6は下枠1を浴室の引き戸に使用した場合を示すが、下枠1は引き戸を使用する開口部であれば使用対象を問わず、玄関引き戸やテラス戸のように屋外に面する引き戸や水回りに設置される引き戸の下枠として使用される。」

(9)甲第13号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 下部が開放された上枠を有する方形の枠体と、該枠体内に引違い式に並列に設けられる少なくとも三枚の障子と、各障子の上端両側部に設けられた吊りローラと、該吊りローラを案内するために上記上枠の内部に設けられたガイドレールと、該ガイドレールの一部を上記少なくとも対の吊りローラ間の外のり寸法で分離し、上記上枠の内部に取外し可能に取付けられた分離レールとを備えたことを特徴とする引戸。」

イ 「【0018】……また、障子の枚数は、4枚以上であってもよい。本発明に係る引戸は、浴室用に限らず、窓用等にも適用可能である。」

(10)甲第14号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第14号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 第1室および第2室の各床面はほぼ一平面に沿って延び、第1室および第2室間には、障子と、この障子を開閉自在に保持する枠体とが設けられ、この枠体の下枠が各床面間に配置される引戸の下枠構造であって、
前記下枠は、下枠本体と、この下枠本体に着脱自在に連結される少なくとも1つの下枠補助部材とを有し、
前記下枠本体は、上部が前記一平面よりも下方に設けられる基部と、この基部の第1室寄りの一側部から上方に屈曲して連なり、最上面が前記一平面とほぼ同一平面上に形成される立上がり部とを有し、
前記下枠補助部材は、下枠本体の基部の上部に第1室側で連結される下フランジと、下フランジにほぼ直角に連なり、水抜き孔が形成されるウエブと、ウエブにほぼ直角に連なり、最上面が前記一平面とほぼ同一平面上に形成される上フランジとを有することを特徴とする引戸の下枠構造。」

イ 「【0041】また上述の実施例では、連動引戸1によって浴室4と更衣室5とを仕切るようにしたけれども、本発明の他の実施例として、第1室から第2室へ向けて水が飛散するような環境、たとえばベランダと室内とを遮断するためにも本発明を有利に実施することができる。」

(11)甲第15号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第15号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 建造物基台より既設のアルミニウム製窓枠(以下既設窓枠という)を撤去することなく残存せしめ、この既設窓枠のうち不要な突出部分を除去して窓枠内周面を平坦面に形成し、この窓枠内周平坦面に直接に新しい金属製窓枠(以下新設窓枠という)をビス止めによって取り付け、且つ既設窓枠の室内外側部の露出部を覆う水切り枠および室内外添枠が前記新設窓枠または前記既設窓枠に一体にまたは一体的に取り付けられる窓枠の改装方法。」

イ 「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図6は改装前の既設のアルミニウム製窓枠2の建造物基台1に対する取付状態を示す側面図であり、図7は同じく平面図である。
【0018】この改装前の既設窓枠2にあっては、通常の単板ガラスからなる室内外の引戸障子17,17を備えており、図6に示すように、上下枠2a,2bの内周面には引戸障子17,17を案内するためのレール18,19が一体に突設されている。また図7に示すように、既設窓枠2の左右縦枠2c,2dの内周面には、引戸障子17,17の戸当り20,21が一体に突設されている。
【0019】しかして、この改装前の窓枠を新設窓枠8に改装するに当たって、改装前の既設窓枠2は建造物基台1から撤去することなく、そのまま残存せしめ、単に図6に示すように既設窓枠2の上下枠2a,2bの内周面に突設されるレール18,19および図7に示すように既設窓枠2の左右縦枠2c,2dの内周面に突設される戸当り20,21と室内側の縦側片22の一部とを太線で示すように削り取って、図1及び図2に示すように既設窓枠2の上下枠2a,2bの内周面および左右縦枠2c,2dの内周面を平坦面7に形成する。」

(12)甲第16号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第16号証には、以下の記載がある。

ア 「本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、……新設窓枠の開口面積が小さくならずに十分なる採光が得られる様にした窓の改装方法を提供することである。」(2頁3欄16ないし24行)

イ 「下枠2は第11図に示すように、窓枠取付開口Cよりも内方に突出した室内壁2a及び、連結壁2bに固着したレール2dにおける新設窓枠Dの下枠30を取付ける際に邪魔になる内方に突出した一部分2′a,2′dを切断して除去し、新設窓枠Dの下枠30を、既設窓枠の下枠2における残存部分に載置してビス固着して取付け、下枠2,30相互間の隙間に充填材36を充填する。
この時、水切り板31も同時に取付ける。
なお、新設窓枠Dの下枠30の形状が異なる場合には、第12図に示すように、既設窓枠の下枠2の室内壁2a、レール2dにおける内方へ突出した邪魔になる部分2′a,2′dを切断して除去し、下枠30を取付ければ良い。」(4頁7欄8ないし22行)

(13)甲第17号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第17号証には、以下の記載がある。

ア 「【0021】前記残存した既存の金属枠体3における上枠4、下枠5、縦枠6の各内向突片8の図1、図2に斜線で示す部分を切断して除去する。」

イ 「【0024】図3、図4に示すように、各枠の枠本体7に下地材12をそれぞれ取付けて穴11を形成した各枠を補強する。この四周の下地材12が新設の断熱引き違い窓の取付用開口部で、前記上枠4、下枠5、縦枠6の内向突片8が切断して除去してあるので、その取付用開口部が大きい。……前記下地材12の室内側部材13が枠本体7のスリット状の穴11よりも室内寄りの室内側部にビス16で取付けられる。」

(14)甲第18号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第18号証には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】従来から、例えば建材に使われるアルミ合金は多種類にわたるが、玄関や雨戸等のサッシに適するものとしては、JIS規格に記号A6063で規定された合金がある。このA6063のアルミ合金はアルミニウム(Al)に少量のマグネシウム(Mg)と珪素(Si)を添加した押出性及び表面処理性に優れた合金であり、この合金を使った押出製品は、強度、可塑加工性、切削加工性ともに優れ、耐食性には特に優れた性能をもつ。」

(15)甲第19号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第19号証には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】窓、戸などの建具に使用されている形材は、いわゆる、アルミニウム・サッシが多く、このアルミニウム・サッシは、一般的に、アルミ合金の塊を押し出し機に入れて、トコロテン式に押し出し、ダイスを介在して、サッシを形成している。」

(16)甲第20号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第20号証の15頁右下の「不二のサニタリーユニット”浴室専用”UBKP-Y1216B2-B」の構成部材についての表の「枠」の備考欄に「アルミ押出形材 63S-T5」と記載されている。

(17)甲第21号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第21号証には、以下の記載がある。

「【0020】前記窓ユニット1の窓枠10の内、上枠10A、側枠10C、10Dの外周面に対しては、改装後状態で躯体開口面(モルタルMによる見込み面)に接触する舌片状タイト部材17、12…(以下、レインバリヤという。)が設けられ、外側からのシール施工なしに気密性、水密性が保たれるようになっている。」

(18)甲第22号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第22号証には、以下の記載がある。

「【0012】このような下地枠30には、前記新設窓枠33が固定される。この新設窓枠33は、下地枠30の上枠部材30a、下枠部材30bおよび各縦枠部材30c,30dに対応してそれぞれ設けられる上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dによって構成され、これらの上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dはアルミニウム合金から成る押出し形材である。また上枠部材33a、下枠部材33bおよび各縦枠部材33c,33dには、その長手方向に延びる蟻溝39a?39dがそれぞれ形成され、これらの蟻溝39a?39dにはガスケット40a?40dが嵌着される。……このようなガスケット40a?40dによって水密性が達成される。」

(19)甲第23号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第23号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 室の内外を仕切る躯体の出入口に介在する障子の戸車を受けるレールが、室内の床面又は該床面よりも一段高い位置にある膳板の上面よりも低い位置にある既設サッシ下枠の上に重ねて取り付ける改装サッシ下枠において、
障子の戸車を受けるレールを含む突設要素の上端が所定の略同じ高さで形成してある上板部と、この上板部から下方に伸長して前記既設サッシ下枠に固定される固定脚部と、を備え、固定脚部の高さ方向に沿う長さが、固定脚部を前記既設サッシ下枠に固定させた状態で、前記突設要素の上端に室内の床面又は膳板の上面と略同じ高さ位置を与える長さとして形成されていることを特徴とする改装サッシ下枠。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、既設サッシ下枠をそのまま残した状態でその上に重ねて設置する改装サッシ下枠と、この改装サッシ下枠を利用した所謂カバー工法による改装工法に関する。」

ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】こうした背景に基づいてなされたのが本発明であって、その目的は、上述のような結合部材が不要で、取付状態で室内の床面又は膳板の上面に対して略面一にできるような改装サッシ下枠と、この改装サッシ下枠を利用する改装工法を提供することにある。さらに本発明は、室内の床面又は膳板の上面と、改装サッシ下枠の上端と、バルコニーの床面とを面一にしてバリアフリー化を実現する改装工法を提供することにもある。」

エ 「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明による改装サッシ下枠と、それを利用する改装工法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態では、引き違い戸用の改装サッシ枠を例示するが、片引き戸用の改装サッシ枠として構成することも可能である。
【0023】第1実施形態;先ず第1実施形態として、本発明の改装サッシ下枠と改装工法に基づいて、室内の床面からバルコニーにかけて段差をなくす改装例について説明する。
【0024】〔改装サッシ枠1の説明〕
【0025】図1で示すように、改装サッシ枠1は、改装下枠2、一対の改装縦枠3及び改装上枠4で構成され、室外側の障子Soと室内側の障子Siを引違い方向xで互いちがいに引き違えて開閉可能となっている。そして、後述するように改装サッシ枠1を構成する改装下枠2、改装縦枠3及び改装上枠4は、それぞれ既設サッシ枠の既設下枠12、既設縦枠13及び既設上枠14に被せて取り付けるようになっている。
【0026】改装下枠2の説明; 改装下枠2は、アルミ材の押し出し成形によって、図2及び図3に表れるような断面形状として形成されている。上板部21上には、室外側から室内側にかけて“突設要素”としての縁壁21aと、図示せぬ網戸の戸車を受けるレール21bと、障子So,Siの戸車を受ける二つのレール21cと、立壁21dが突設されており、これらの上端は所定の同じ高さとなっている。
【0027】縁壁21aは改装下枠2の室外側端部であることを示す部分である。その反対側の立壁21dは、主として改装下枠2に対する室内の水密性・気密性を与える機能を担っている。……」

オ 「【0034】排水受け室23の底壁23fには下向きに垂下させた固定片23hが形成されている。固定片23hにはネジ孔が穿孔してあり、ネジNによって既設下枠12の上板部12aに突設された室外側のレール12bに対して固定されている。そして、この固定片23hと排水受け室23を画成する壁とによって“固定脚部”が構成されている。これらの固定片23hと排水受け室23の高さ方向に沿う長さサイズは、固定片23hを既設下枠12のレール12bに固定した状態で、改装下枠2の“突設要素”としての縁壁21a、レール21b、21c、立壁21d、立壁部22dの各上端が、室内の床面Rfと略同じ高さ位置となるようなサイズで形成されている。従って、室内の床面Rfに対する改装下枠2の“バリアフリー化”が実現されている。
【0035】また、上板部21の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材24を備えていて、その横板部24aは上板部21に対してネジ固定されており、縦板部24bは室内の床に対してネジ固定されていて、上板部21に作用する荷重を支持するようになっている。なお、本例では支持部材24を改装下枠2と別体としてあるが、その理由は改装対象とする既設サッシ下枠の上板部12aの水平方向に対する傾斜の緩急がまちまちであるため、特定の長さで支持部材を改装サッシ下枠と一体成形すると、縦板部に相当する部分が長すぎて取り付けられないような場合があるからである。」

カ 「【0058】
【発明の効果】本発明の改装サッシ下枠によれば、室内の床面や膳板の上面に対して改装サッシ下枠の上端を略面一にすることができる。……さらに、本発明の改装サッシ下枠と改装工法によれば、従来の改装サッシ枠よりも改装サッシ枠の開口寸法を高さ方向で大きくすることができる。」

キ 上記オの記載を踏まえて図2をみると、上板部21の室内側端部及び逆L字状の支持部材24の縦板部24bが既設サッシ下枠12の上板部12aの最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材24の縦板部24bが該縁壁にネジ固定されていることがみてとれる。

ク 上記アないしキによると、甲第23号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「室の内外を仕切る躯体の出入口に介在する障子の戸車を受けるレールが、室内の床面又は該床面よりも一段高い位置にある膳板の上面よりも低い位置にある既設サッシ下枠の上に重ねて取り付ける改装サッシ下枠において、
改装サッシ下枠は、障子の戸車を受けるレールを含む突設要素の上端が所定の略同じ高さで形成してある上板部と、この上板部から下方に伸長して前記既設サッシ下枠に固定される固定脚部と、を備え、固定脚部の高さ方向に沿う長さが、固定脚部を前記既設サッシ下枠に固定させた状態で、前記突設要素の上端に室内の床面又は膳板の上面と略同じ高さ位置を与える長さとして形成されており、
改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており、その横板部は上板部に対してネジ固定され、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定されること。」

(20)甲第27号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第27号証には、以下の記載がある。

ア 「既存開口寸法に対するかぶせ工法によるせばまり寸法は一般的標準サッシ・ドアにおいては表-1、表-2による。」(9頁7ないし8行)

イ 9頁の表-1には、「高さ寸法」欄に「100mm以下」と記載されている。

ウ 「新しい建具の取付けは下記の仕様による。
(1)接合および取付用補助材(スペーサー)仕様は表-6による。
……
(2)取付用補助材(スペーサー)及びアンカーピース等は既存枠へねじ留め又は溶接で確実に固定する。」(12頁2ないし4行)

エ 12頁の表-6には、「使用区分」欄には「下枠部」と、「製作仕様」欄には「下枠の取付用補助材(スペーサー)は通し材とする。」と、「ねじ受け部の板厚仕様」欄の「アルミ形材」の項には「1.5mm以上」と、それぞれ記載されている。

オ 「取付け精度は表7の通りとする。
……
ただし、既存枠と旧仕上面等との取り合いで、精度が維持できない場合には、事前に当事者間で協議のうえ建具の機能及び性能が保持できる範囲で取付ける。」(12頁9ないし11行)

カ 12頁の表-7には、「使用区分」欄の「枠のレベル差」の項に対応する「許容差」欄には、「±2.0mm以内」と記載されている。

(21)甲第32号証
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第32号証には、以下の記載がある。

ア 「本発明を図面に示す実施例について説明すると、第1図に示すアルミニウム製窓枠1を工場で製造するに際し下枠2の下部に屈曲鋼板によるアンカー3をビス4,4によって固定するものである。このようにした窓枠1を室内に搬入し既設鋼製窓枠5に嵌装されている鋼製框によるガラス障子を取外し、直ちに既設鋼製下枠6の室内側突縁6’の上面に上記アンカー3の室内側下面3’を支持し、同支持部を支点としたアルミニウム製窓枠1を直立させると同窓枠1の上枠7および縦枠8、8が既設鋼製上枠9および縦枠10、10と対面するものである。」(1頁右下欄10行ないし2頁左上欄1行)

イ 「…22は同支持脚21と鋼製下枠6上面間に介在させた高低調節座金、23はアンカー3固定用ビス、……又アンカー3はアルミニウム製下枠2の下端に既設鋼製下枠6の室内側突縁6’に接する水平部分3’と同鋼製下枠6の低部33に高低調節座金22を介して接する支持脚21を有するものであり、……」(2頁左上欄12行ないし同頁右上欄3行)

(22)甲第33号証の1
甲第33号証の1の5頁目の右側の表には、「品目」欄に「RC造住宅用サッシ」と、「備考」欄に「カバー工法(ねじ止め方式)」と、「図面名称」欄に「10.改修用サッシ 標準納まり図 引違い戸」と、それぞれ記載されている。
同頁の図面の右下には、「一点鎖線箇所は、工場取付ねじ。ねじ明記箇所は、現地取付ねじ。」と記載されている。
同頁の左側の図面をみると、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールの端部が斜線で塗りつぶされるとともに、「既設レール端部(50mm)カット」との記載が付されていることがみてとれる。また、改修用下枠が工場で取付けられた断面逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側端部上面にねじで固着されることがみてとれる。

(23)甲第34号証
甲第34号証の1頁目の右側の表には、「品目」欄に「サッシ(RC造住宅用サッシ)」と、「図面名称」欄に「引違い窓 ・カバー工法(ビス止メ方式)」と、それぞれ記載されている。
同頁の左側の図面をみると、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールが斜線で塗りつぶされている。また、改修用下枠が断面逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側端部上面にねじで固着されることがみてとれる。

(24)甲第35号証
甲第35号証の右側の表には、「品名」欄に「RC造住宅用サッシ」と、「図面名称」欄に「改修用サッシ工法 カバー工法(ビス止め方式) 標準納り図 腰窓」と、それぞれ記載されている。
左側の図面をみると、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールが斜線で塗りつぶされるとともに、「両端レールカット」との記載が付されている。また、改修用下枠が断面逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側端部上面にねじで固着されることがみてとれる。

(25)甲第36号証
甲第36号証の右側の表には、「品名」欄に「RC造住宅用サッシ」と、「図面名称」欄に「10.改修用サッシ工法 カバー工法(ビス止め方式) 標準納り図 腰窓」と、それぞれ記載されている。また、左側の図面をみると、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールが斜線で塗りつぶされるとともに、「両端レールカット」との記載が付されている。また、改修用下枠が断面逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側端部上面にねじで固着されることがみてとれる。

(26)甲第37号証
甲第37号証の26頁から27頁に記載された「建築改装協会・ベターリビング関係年表」の「2001年(平成13年)」の欄には「アルミ→アルミの改修用サッシをBL認定」と記載されている。」

(27)甲第38号証
甲第38号証には、以下の記載がある。

「日本建鉄は4月1日付けでビル用サッシ・カーテンウォールなどのアルミ建材事業をトステムに全面営業譲渡する」(3/6頁4ないし5行)

(28)甲第39号証
甲第39号証の23頁の左下の図をみると、既存枠の2本のレールのうち室外側のレールに、「両端レールカット」との記載が付されている。また、断面逆L字状の部材が既存枠の室内側立面にビス止めされ、当該断面逆L字状の部材に改修用下枠がビス止めされていることがみてとれる。

(29)甲第44号証の1ないし甲第44号証の3
甲第44号証の1の照会申出書への回答書である甲第44号証の3には、甲第44号証の1の添付資料1(甲第36号証)の財団法人ベターリビングへの提出日が平成14年1月22日である旨、同添付資料2(甲第39号証)の23頁下段の図に係る製品を発売した日付が平成14年7月15日である旨が記載されている。

3 無効理由1(明確性要件違反)について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1ないし6は、それぞれ「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることを要件としているが、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が具体的にどの程度の範囲内に含まれるものであれば、「ほぼ同じ高さ」に該当するかが明確ではなく、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差がどの程度の範囲内であれば、「ほぼ同じ高さ」に該当するのかについて技術常識も存在しない旨主張する。

(2)判断
本件特許発明1ないし6において、「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がおおかた同じ高さである、すなわち完全に同じであることは要しない程度に高さが同じであるといった意味ととらえられるから、当該事項によって本件特許発明1ないし6が直ちに不明確であるとはいえない。
一方、本件特許の明細書には、以下の記載がある。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の技術では、改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので、改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1が小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題がある。
【0011】
また、改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され、その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することである。」
イ 「【発明の効果】
【0018】
請求項1?6記載の本発明によれば、既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することがなく、広い開口面積が確保できる。
また、既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」
ウ 「【0092】
(2)また、前述の(1)と室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることによって、室内側案内レール115の立上り寸法が大きな既設下枠56にも同一形状の改修用下枠69を取付けできる。
例えば、図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し、かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。
室内側下枠シール材300を前壁102に当接する。
この場合には、支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。」

上記ア、イの記載に照らせば、本件特許発明1ないし6において、「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることの技術的意義は、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することがないようにすることであると認められる。
そして、上記イ、ウの記載に照らせば、本件特許発明1ないし6における改修用下枠は、改修用引戸枠を取付け補助部材で支持して取付けることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠にも取付けられるものであると解されるところ、既設引戸枠の形状、寸法によっては、例えば本件特許の図10に示す実施の形態のように、背後壁の上端と改修用下枠の上端を完全に同じ高さとし得ない場合もあることが理解できる。
してみると、本件特許発明1ないし6において、「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは、既設下枠の形状、寸法等に起因する、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さのわずかな違いは許容するが、積極的に背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さを変えることを意図するものではなく、実質的に有効開口面積が減少するものではないということを意味すると解される。
そうすると、本件特許発明1ないし6の「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとの特定事項について、当業者は実質的に有効開口面積が減少しないよう、できるだけ既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端が同じ高さとなるようにすればよいと理解するものであり、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲を認識する必要はない。すなわち、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差の許容範囲が示されていなければ、本件特許発明1ないし6の要旨が認定できないわけではない。
よって、本件特許発明1ないし6には、請求人が主張するような不明確な点は存在しないから、請求人の主張は採用できない。
また、本件特許の請求項1ないし6には、他に不明確な記載は認められない。
したがって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではないから、請求人が主張する無効理由1により、無効にすることはできない。

4 無効理由2(サポート要件違反)について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし6の構成の全てを備える実施形態の記載はされておらず、さらには、本件発明1ないし6における各構成の関連性についても記載されていないから、本件特許発明1ないし6は発明の詳細な説明に開示されてたものではない旨主張する。

(2)判断
ア 本件特許発明1及び4について
(ア)本件特許の明細書の段落【0019】ないし【0060】には、図1ないし図4に記載された発明の実施の形態(以下「実施形態1」という。)について次の記載がある。
「【0019】
図1は本発明の実施の一形態の改修用引戸装置50が設置された窓51の鉛直断面図であり、図2は図1の切断面線II-IIから見た窓51の水平断面図である。本実施の形態の改修用引戸装置50は、建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に、略水平(図1の紙面に垂直な方向)に固定される既設下枠56と、開口部53の前記開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直(図1の上下方向)にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と、開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。
【0020】
この改修用引戸装置50は、引戸障子64,65を略水平な矢符A1,A2で示す間口方向に移動自在に支持する複数の案内レール66,67を有し、既設下枠56に室外73側から当接して支持される改修用下枠69と、各既設竪枠59,60に室外73側から当接して支持される一対の改修用竪枠70,71と、既設上枠62に室外73側から当接して支持される改修用上枠72と、……を含む。
……
【0023】
上記の改修用下枠69、各改修用竪枠70,71、改修用上枠72、各竪枠用保持部材74,75、および上枠用保持部材76は、アルミニウム合金の押出し形材から成る。上記の既設下枠56、各既設竪枠59,60、および既設上枠62もまた、アルミニウム合金の押出し形材から成る。
【0024】
改修用下枠69およびそれに関連する構成について述べる。前記改修用下枠69には、この改修用下枠69と既設下枠56との間の空間S1を室外73に臨んで開放する水抜き孔84が、改修用下枠69の長手方向に間隔をあけて複数形成される。この改修用下枠69は、室外73に臨んで略水平な間口方向(図2の左右方向)に延びる前壁80と、前壁80の上端部に室内68側へ屈曲して連なり、室外73から室内68に向かって上方へ段差を成して傾斜する底壁81と、底壁81の最も室内68寄りの端部付近から下方へ突出する支持壁89と、底壁81から上方へ突出する上記の2本の案内レール66,67と、底壁81の最も室外73側の端部から上方へ立ち上がる網戸レール83とを有する。
【0025】
底壁81は、室外73から室内68に向かって第1?第3底壁部85,86,87を有する。第1底壁部85は、前記網戸レール83と室外側案内レール66とにわたって形成され、室外73から室内68に向かって上方に傾斜する水切り勾配i1を有する。第2底壁部86は、室外側案内レール66と室内側案内レール67とにわたって形成され、断面が略L字状の段差部分90と、室内側案内レール67の直下に形成される断面が逆T字状の室内側脚部分91と、段差部分90の室外側案内レール66寄りの端部付近から下方に突出する室外側脚部分92とを有する。第3底壁部87は、室内側脚部分91と室内側案内レール67との交差部から室内68側へ水平に突出し、前記間口方向に延びる。この第3底壁部87の室内68側の端部付近の下面には、前記支持壁89が一体的に形成される。
【0026】
前記段差部分90は、略水平で前記間口方向に延びる水平部分93と、水平部分93の室内68側の端部から上方へ直角に屈曲して立ち上がる立上がり部分94とを有する。この立上がり部分94の上端部は、前記室内側脚部分91に連なる。この室内側脚部分91および室内側案内レール67には、室外73側に臨んで開放する嵌合凹部95,96がそれぞれ形成され、これらの嵌合凹部95,96にはパッキン97,98が嵌着される。各パッキン97,98は、たとえばクロロプレーンゴムなどの可撓性および弾発性を有する撥水性材料から成り、この改修用下枠69から各改修用竪枠70,72を経て改修用上枠72にわたって周方向全周に設けられる。
【0027】
前記既設下枠56は、下縁部55の室外73に臨む壁面100に室外73側から当接して支持される断面がL字状の室外側脚部101と、室外側脚部101の前記壁面100か
ら最も離れた遊端部に直角に連なる前壁102と、前壁102の上端部から室内68に向かって上方へ傾斜する排水勾配i2を有する底壁103と、底壁103の最も室内68側の端部に連なり、室内側案内レール67と同一高さまで立ち上がる背後壁104と、背後壁104と前記底壁103との交差部から下方へ突出する断面がL字状の室内側脚部105と、室外側案内レール114と、室内側案内レール115とを有する。
【0028】
前記室外側案内レール114は、改修用下枠69を装着するにあたって、改修用下枠69の取付けスペースを確保するため、図1および後述の図3の仮想線で示されるように、付け根付近から切断されて撤去されている。
【0029】
このような既設下枠56と改修用下枠69との間には、取付け補助部材106が介在される。この取付け補助部材106は、室外側壁部107と、室内側壁部108と、室外側壁部107および室内側壁部108の各上端部に連なる上壁部109とを有し、断面逆U字状の長尺材から成る。この取付け補助部材106は、既設下枠56に、室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ、かつ背後壁104に室外73側から室内側壁部108を当接させた状態で、前記上壁部109を上方にして装着される。前記室外側壁部107は、室内側案内レール115にビス110によって固定される。
【0030】
取付け補助部材106の上壁部109には、装着された改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89とが支持され、第3底壁部87がビス111によって固定される。また、前壁80は、ビス112によって既設下枠56の前壁102に固定される。
【0031】
このようにして改修用下枠69が既設下枠56に取付けられた状態では、第3底壁部86の最も室内68側の端部112が既設下枠56の背後壁104に室外73側から当接し、前記前壁80が既設下枠56の前壁102に当接して、改修用下枠69が既設下枠56に対して図1の左右方向である見込み方向に位置決めされ、位置決め作業に手間がかからず、容易に取付けることができる。
【0032】
また、前壁80を室外73側から室内68側に向かって螺着されたビス112によって既設下枠56の前壁102に固定するので、取付け作業中に改修用下枠69が既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防がれ、単にビス112を締付ければ、改修用下枠69を既設下枠56に対して位置決めされ、取付け作業の効率が向上される。
……
【0051】
図3は改修用引戸装置50の既設引戸枠63への取付け手順を説明するための鉛直断面を示す分解図であり、図4は図3の切断面線IV-IVから見た水平断面を示す分解図である。既設引戸枠63に改修用引戸装置50を取付けるにあたって、まず既設下枠56の室外側案内レール114がその付け根付近から切断されて撤去され、室内側案内レール115には取付け補助部材106が上壁部109を上方にして装着され、ビス110によって固定される。こうして取付け補助部材106が室内側案内レール115に取付けられた状態では、前記上壁部109はほぼ水平に配置されている。
前記取付け補助部材106は長手方向全長に亘って取付けても良いし、長手方向複数位置に取付けても良い。
【0052】
改修用下枠69、各改修用竪枠70,71および改修用上枠72は、相互に連結されて四角形の改修用引戸枠78が組立てられ、この組立てられた改修用引戸枠78が前記既設引戸枠63に室外73側から嵌め込まれて装着された後、各竪枠用保持部材74,75が前記装着された改修用引戸枠78の各改修用竪枠70,71と各既設竪枠59,60との間に室内68側からそれぞれ装着される。また改修用上枠72と既設上枠62との間には、上枠用保持部材76が室内68側から装着される。
……
【0055】
このように改修用引戸枠78および各竪枠用保持部材74,75および上枠用保持部材76が既設引戸枠63に装着されると、ビス154,174によって各竪枠保持部74,75を各既設竪枠59,60にそれぞれ固定し、室外73側からビス112によって改修用下枠69を既設下枠56に固定し、内側からビス153,173によって各竪枠保持部材74,75と各改修用竪枠70,71とを連結し、ビス134,136によって上枠用保持部材76と改修用上枠72とを連結し、さらにビス110によって改修用下枠69を取付け補助部材106に固定する。その後、各引戸障子64,65を各案内レール66,
67上に建て込むことによって、改修用引戸装置50の設置作業が終了する。
【0056】
以上のように本実施の形態によれば、改修用下枠69は既設下枠56に室外73側から当接して支持され、各改修用竪枠70,71は各既設竪枠59,60に室外73側から当接して支持され、改修用上枠72は既設上枠62に室外73側から当接して支持される。また、各竪枠用保持部材74,75は各既設竪枠59,60に室内68側から当接して支持されて、前記各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結され、こうして各改修用竪枠70,71が前記竪枠用保持部材74,75と協働して既設竪枠59,60に取付けられる。……
……
【0060】
さらに本実施の形態によれば、前記改修用下枠69には水抜き孔84が形成されるので、改修用下枠69と既設下枠56との間の空間S1に外部から浸入した水、および空間S1内の結露によって生じた結露水などを室外73に排出して、室内68への水の浸入および漏洩を確実に遮断することができる。
また、本実施の形態によれば既設下枠56の室外側案内レール114を切断して撤去し、取付け補助部材106の上壁部109に改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89を支持しているので、改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅が大きく、有効開口面積が減少することが少ない。
しかも、取付け補助部材106を基準として改修用下枠69を取付けできるから、既設下枠56の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付補助部材106を用いることで、同一の改修用下枠69を取付けできる。……」

(イ)本件特許の明細書の段落【0067】ないし【0100】には、図6及び図7に記載された発明の実施の形態(以下「実施形態2」という。)及び図14に記載された実施形態2の変形例(以下「実施形態3」という。)について次の記載がある。
「【0067】
図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で、図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水平断面図である。なお、前述の図1、図2に示す実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施の形態の改
修用引戸装置50bは、基本的には前述の図1、図2に示す実施形態の改修用引戸装置50と同様に構成され、建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に、略水平に固定される既設下枠56と、開口部53の前記開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と、開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される改修用引戸装置50bであって、図示を省略した引戸障子を略水平な方向に移動自在に支持する複数の案内レール66,67を有し、既設下枠56に室内68側から支持される改修用下枠69と、各既設竪枠59,60に室内68側から支持される一対の改修用竪枠70,71と、既設上枠62に室内68側から支持され、前記引戸障子を略水平な方向に移動自在に支持する室外側リブ123、室内側リブ124を有する改修用上枠72より成る改修用引戸枠250及び、各既設竪枠59,60に室外73側から支持され、各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結される一対の竪枠用保持部材74,75と、既設上枠62に室外73側から支持され、改修用上枠72に連結される上枠用保持部材76と、既設下枠56に取付けた取付け補助部材106とを含む。
【0068】
この実施の形態では既設引戸枠63、改修用引戸枠78は開口部53の室内外側方向の中間に位置し、改修用引戸枠78の室外側部よりも開口部53が室外側に突出している。
【0069】
この実施の形態の既設下枠56、改修用下枠69、取付け補助部材106は前述の図1、図2に示す実施の形態の既設下枠56、改修用下枠69、取付け補助部材106とほぼ同様で、既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し、この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること、改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され、この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることが大きく相違する。
【0070】
具体的には、既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし、若干残して撤去しても良い。
取付け補助部材106は、その室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110で固着して取付けられる。
改修用下枠69の支持壁89、室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持され、底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され、ビス112で取付け補助部材106に固定される。
【0071】
前記既設上枠62と改修用上枠72と上枠用保持部材76は図1と図2に示す既設上枠62、改修用上枠72、上枠用保持部材76とほぼ同様で、改修用上枠72の室外側部に乾式の室外側上枠シール材302が装着してあること、上枠用保持部材76がカバー303を備えていることが大きく相違する。
【0072】
具体的には、改修用上枠72の前壁120における底壁122より上方に突出した部分127には室内側に向かうシール材取付部304が設けてあり、このシール材取付部304に乾式の室外側上枠シール材302が装着してある。
この室外側上枠シール材302は室外側ヒレ302aと室内側ヒレ302bを有する。好ましくは断面上向きコ字状で、室外側ヒレ302aと室内側ヒレ302bとの間に上向き凹状の排水溝302cを有する。
前記室外側ヒレ302aが建物52の開口部53の上縁部61における既設シール材305よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。
前記室内側ヒレ302bが既設上枠62の室外側部、例えば室外側フランジ126に圧
接して2次タイトの役目をする。
【0073】
つまり、室外側ヒレ302aによって雨水等が室内側ヒレ302bに浸入し難くし、室内側ヒレ302bは室外側ヒレ302aのシール部から浸入したした雨水等及び建物52内部を通り既設シール材305より浸入した雨水等が既設上枠62の室外側部と改修用上枠72の室外側部との間に浸入することを防止する。
好ましくは、前述の浸入した各雨水等を排水溝302cを伝わって外部に排水する。
つまり、既設引戸枠63を改修する時には、建物52(躯体)や既設シール材305が劣化しており、それらから雨水等が浸入することがある。
【0074】
前記上枠用保持部材76のフランジ130にカバー303がスナップ式に取付けてある。
このフランジ130のウエブ131よりも上方の部分が既設上枠62の室内側フランジ306にビス136で固着され、前記フランジ130のウエブ131よりも下方の部分が上枠用シール材78を介して改修用上枠72の背後壁121に接し、ビス134で固着して改修用上枠72と上枠用保持部材76を連結している。
前記カバー303はビス134、ビス136を螺合した後に取付けられ、それらのビス134,136が室内から見えないように覆う。
前記既設上枠62の室内側フランジ306には室内68側に向かう横向片306aが設けてある。
【0075】
前記既設竪枠59,60と改修用竪枠70,71と竪枠用保持部材74,75は、前述の図1、図2に示す既設竪枠59,60、改修用竪枠70,71、竪枠用保持部材74,75とほぼ同様で、改修用竪枠70,71の室外側部に乾式の室外側竪枠シール材310とがた防止部材311が装着してあること、竪枠用保持部材74,75がカバー312をスナップ式に取付けてあることが大きく相違する。
具体的には、一方の改修用竪枠70の前壁140のウエブ142よりも既設竪枠59側に突出した部分に室内側に向かうシール材装着部313が一体的に設けてある。このシール材装着部313に室外側竪枠シール材310が側方に向けて装着してある。
この室外側竪枠シール材310は室外側ヒレ310aと室内側ヒレ310bを有する。好ましくは断面横向きコ字状で、その室外側ヒレ310aと室内側ヒレ310bとの間に横向き凹状の排水溝310cを有する。
前記室外側ヒレ310aが建物52の開口部53の一方の縦縁部57における既設シール材314よりも室外寄りに接して1次タイトの役目を果たす。
前記室内側ヒレ310bが一方の既設竪枠59の室外側部、例えば室外側フランジ146に圧接して2次タイトの役目をする。
【0076】
つまり、室外側ヒレ310aによって雨水等が室内側ヒレ310bに浸入し難くし、室内側ヒレ310bは室外側ヒレ310aのシール部から浸入した雨水及び建物52内部を通って浸入した雨水等が一方の既設竪枠59の室外側部と一方の改修用竪枠70の室外側部との間から浸入することを防止する。
……
【0084】
次に、改修用引戸枠250の既設引戸枠63への取付け手順を説明する。この手順は図1、図2に示す改修用引戸装置50の取付け手順とほぼ同様であるが、改修用竪枠と竪枠用保持部材を締付けた状態でビス止めして連結することが大きく相違する。
(手順1)
既設下枠56の室外側案内レール114を切断して撤去する。この切断作業は丸鋸や専用の切断工具で実施する。
(手順2)
既設下枠56の室内側案内レール115に取付け補助部材106をビス110で取付ける。この取付け補助部材106は室内側案内レール115の全長に亘っても良いし、短尺な取付け補助部材106を長手方向に間隔を置いて複数取付けても良い。
(手順3)
改修用下枠69、改修用竪枠70,71、改修用上枠72を方形枠組みした改修用引戸枠78に、下枠用シール材79、室外側下枠用シール材300、室外側上枠用シール材302、室外側竪枠用シール材310を装着し、その改修用引戸枠250を、開口54の室外73側から既設引戸枠63内に挿入し、下枠シール材79を既設下枠56の背後壁104に接すると共に、室外側下枠用シール材300を既設下枠56の前壁102に接する。
この状態で、改修用下枠69と取付け補助部材106をビス112で固着して改修用下枠69を既設下枠56に取付ける。
……
【0091】
この実施の形態によれば、図1と図2と同様な作用効果を奏すると共に、次のような作用効果を奏する。
(1)既設下枠56に取付け補助部材106を取付け、改修用下枠69の室内側脚部分91、支持壁89(つまり、改修用下枠69の室内側部分)を取付け補助部材106に載置し、その取付け補助部材106にビス112で固着して取りと付けたことをによって、その取付用補助部材106の高さ寸法を変えることで、異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56を、その支持壁89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。
……
【0100】
また、図14に示すように、既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し、取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。
例えば、取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し、そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」

(ウ)本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件特許発明1ないし6は、従来技術において、(a)改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題と、(b)改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され、その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり、有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)があったため、これらの問題(課題)を、(1)既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1)、(2)既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し、取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより解決したものであり、構成1及び2を採ることにより、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、広い開口面積を確保でき、構成2とすることにより、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。
そして、本件特許発明1ないし3の「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」する、又は本件特許発明4ないし6の「改修用下枠の室内寄りが、取付け補助部材で支持され」る具体的な構成として、取付け補助部材106の上壁部109において改修用下枠69の室内側脚部分91及び支持壁89とを支持する場合における構成1及び2の具体的な構成(実施形態)は、本件特許の明細書の段落【0070】(ただし、構成2のうち、取付け補助部材を既設下枠の室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する構成部分については、【0100】)に記載されている。
以上によれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、当業者において、本件特許発明1ないし6の課題とその解決手段その他当業者が本件特許発明1ないし6を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。

(エ)本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された上記実施形態1と本件特許発明1及び4と対比すると、本件特許発明1及び4では、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持するのに対し、実施形態1では、そのような構成を有していない点、及び、本件特許発明1及び4では、取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けるのに対し、実施形態1では、取付け補助部材106は、既設下枠56の室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ、当該室外側壁部107を室内側案内レール115にビス110によって固定する点で、それぞれ相違するが、改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することを含め、その余の構成は一致している。
一方、上記実施形態3では、取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着することことが記載されている。実施形態3は、本件特許発明1及び4と対比すると、本件特許発明1及び4では、改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し、実施形態3では、改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され、この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接している点で相違するが、取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けること、及び、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することを含め、その余の構成は一致している。
そして、本件特許の明細書の記載及び図1、図14の記載に照らせば、実施形態1と実施形態3とは、改修下枠、取付け補助部材及び既設下枠の基本的な構造が共通し、改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく、広い開口面積を確保でき、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという作用効果を奏する点でも共通しているから、実施形態1において、実施形態3の如く、取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着してもよいこと、及び、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持してもよいことは当業者にとって自明の事項である。また、逆に、実施形態3において、実施形態1の如く、改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定してもよいことも同様に当業者にとって自明の事項である。
さらに、上記の如く実施形態1に実施形態3の構成を適用した場合や実施形態3に実施形態1の構成を適用した場合における改修用下枠、取付け補助部材、スペーサ及び既設下枠等の各構成部材の位置関係や取付態様も上記本件特許明細書及び図面の記載に照らし明らかである。
よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、当業者において、本件特許発明1及び4の課題とその解決手段その他当業者が本件特許発明1及び4を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえるから、請求人の主張は採用できない。

イ 本件特許発明2、3、5及び6について
上記アの実施形態3は、本件特許発明2、3、5及び6と対比すると、本件特許発明2及び5では、改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定するのに対し、実施形態3では、改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され、この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接している点で相違するが、その余の構成は一致している。
そして、実施形態3において、実施形態1の如く改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定してもよいことは、上記アにおいて検討したとおり当業者にとって自明の事項である。
また、上記の如く実施形態3に実施形態1の構成を適用した場合における改修用下枠、取付け補助部材、スペーサ及び既設下枠等の各構成部材の位置関係や取付態様も本件特許明細書及び図面の記載に照らし明らかである。
よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、当業者において、本件特許発明2、3、5及び6の課題とその解決手段その他当業者が本件特許発明2、3、5及び6を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえるから、請求人の主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではないから、請求人が主張する無効理由2により、無効にすることはできない。

5 無効理由3(実施可能要件違反)について
(1)請求人の主張
請求人は、無効理由1における主張のとおり、本件特許発明1ないし6は、本件明細書の記載から発明を明確に把握することができないのであるから、当業者が本件特許発明1ないし6を実施しようとしても、その発明をどのように実施するのかを理解することができない旨主張する。

(2)判断
上記3において検討したとおり、本件特許発明1ないし6は明確であるから、請求人の主張は採用できない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面は、当業者が本件特許発明1ないし6の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されている。
よって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではないから、請求人が主張する無効理由3により、無効にすることはできない

6 無効理由4(進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲5発明1とを対比する。

(ア)本件特許発明1の「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存」することと、甲5発明1の「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存」することとを対比する。
本件特許発明1の「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成」る「既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠」と甲5発明1の「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存したアルミニウム合金から成る既設上枠」、「アルミニウム合金から成」る「既設下枠」、「アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠」は、「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠」である点で共通する。
また、本件特許発明1の「室内側案内レール」及び「室外側案内レール」と甲5発明1の「脱衣側レールm2」及び「浴室側レールm3」は、「一方側案内レール」及び「他方側案内レール」である点で共通する。
してみると、両者は、「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存する」点で共通する。

(イ)本件特許発明1の「前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ることと、甲5発明1の「既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には、立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され、壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに、横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され」、「上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを、上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに、その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定」することとを対比する。
「補助」とは、「おぎない助けること。また、その助けになるもの。」(広辞苑第六版)を意味するところ、本件特許発明1の「取付け補助部材」は「既設下枠」に取り付けられ、「改修用下枠」の取付けにあたり、「改修用下枠の室内寄り」を「支持」するものであるから、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であると認められる。
そして、甲5発明1の「逆L字状の部材s」は、「その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定し」、「改修用下枠の脱衣寄り」を、その「上壁s1に対してビスで固定」するものであって、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であるといえるから、本件特許発明1の「取付け補助部材」に相当する。
また、本件特許発明1の「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面」と甲5発明1の「既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部」の「立ち上がって浴室側面となる壁部m5」は、「既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面」である点で共通する。
してみると、両者は、「既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付ける」点で共通する。

(ウ)本件特許発明1の「この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入」することと、甲5発明1の「この後に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠、アルミニウム合金から成り、平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠を有する改修引戸枠を、既設引戸枠内に浴室側から挿入」することとを対比すると、両者は、「この後に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠、アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修用引戸枠を、既設引戸枠内に他方側から挿入する」点で共通する。

(エ)本件特許発明1の「その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し」、「前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」ことと、甲5発明1の「既設下枠の浴室側の壁部m4には、逆L字状の部材tをビスで固定し」、「改修用下枠の浴室寄りを、逆L字状の部材tの上部にビスで固定し、改修用下枠の脱衣寄りを、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定」することとを対比する。
甲5発明1の「逆L字状の部材s」は、「改修用下枠の脱衣寄り」を、その「上壁s1に対してビスで固定」するものであるから、「改修用下枠」を「支持」するものといえる。
本件特許発明1は、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」ものであるところ、「基準」とは、「物事の基礎となるよりどころ」(デジタル大辞泉)を意味すること、また本件特許の明細書には、「既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」(段落【0018】)と記載されていることに照らせば、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」とは、取付け補助部材を既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとして、改修用引戸枠を取付けることを意味するものと認められる。
これに対し、甲5発明1では、「逆L字状の部材s」は「上壁s1を延設部分m7の下面に当接」させるものであって、「改修用下枠」は、その「脱衣寄りを、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接」させるものであるから、甲5発明1の「改修用引戸枠」は、「既設下枠の横向片の部分m6」を「基準として取付ける」ものであって、「逆L字状の部材s」を「基準として取付ける」ものとはいえない。
してみると、両者は、「改修用下枠の一方寄りを取付け補助部材で支持し」、「改修用下枠をビスによって既設下枠に固定することで、改修用引戸枠を取付ける」点で共通する。

(オ)本件特許発明1の「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることと、甲5発明1の「既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである」こととを対比する。
上記3において検討したとおり、本件特許発明1において、「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは、既設下枠の形状、寸法に起因する、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さのわずかな違いは許容するが、積極的に背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さを変えることを意図するものではなく、実質的に有効開口面積が減少するものではないということを意味すると解される。
そして、甲第5号証の2には、「既設サッシH=2,000」と記載されており(上記2(1)イ(ア)cを参照。)、既設上枠と既設下枠との間の距離、すなわち開口部の高さが2000mmであることに照らせば、既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmであることは、実質的に有効開口面積が減少するものではないといえるから、甲5発明1は、「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さである」との構成を備えている。

(カ)以上によれば、本件特許発明1と甲5発明1とは以下の点で一致する。
<一致点>
「建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し、
前記既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、
この後に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠、アルミニウム合金から成る改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に他方側から挿入し、前記改修用下枠の一方寄りを前記取付け補助部材で支持し、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠をビスによって既設下枠に固定することで、改修用引戸枠を取付ける引戸装置の改修方法。」

(キ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-1>
引戸装置が設けられる建物の開口部に関し、本件特許発明1は、室外と室内の間の開口部であるのに対し、甲5発明1は、浴室と脱衣室との間の開口部である点。

<相違点1-2>
既設引戸枠及び改修用引戸枠の材料に関し、本件特許発明1は、既設上枠、既設下枠、既設竪枠、改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠がアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲5発明1は、アルミニウム合金から成るが押出し形材であるかは不明である点。

<相違点1-3>
既設下枠の案内レールに関し、本件特許発明1では、既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するのに対し、甲5発明1では、既設下枠の浴室側レールm3を撤去しない点。

<相違点1-4>
改修用下枠の構成に関し、本件特許発明1では、改修用下枠は室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えるのに対し、甲5発明1では、改修用下枠は平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備える点。

<相違点1-5>
改修用引戸枠の取付構造に関し、本件特許発明1では、改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し、改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けるのに対し、甲5発明1では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
(ア)相違点1-3ないし1-5について
まず、上記相違点1-3ないし1-5について、まとめて検討する。
a 甲第6号証には甲6発明1として、「旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取付けるサツシの改装方法において、新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し、アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し、新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めするサツシの改装方法。」の発明が記載されている(上記2(2)を参照。)。
そして、甲6発明1の「旧窓枠1」と本件特許発明1の「既設引戸枠」とは、「既設枠」である点で共通する。また、甲6発明1の「新窓枠5」は、本件特許発明1の「改修用引戸枠」に相当し、以下同様に、「その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し」た「下枠」は、「室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた」「改修用下枠」に、「新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを」既存の「下枠の垂下フランジ1bにビス止め」することは、「改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定する」ことにそれぞれ相当する。
b 室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠は、甲第7号証及び甲第8号証に記載のように周知である(上記2(3)、(4)を参照。)。
c 甲第9号証には、旧窓枠1の下枠5と取付補助枠59との間に複数枚の下枠用スペーサ13を差し込むことが記載されており(上記2(5)を参照。)、「下枠5」及び「下枠用スペーサ13」は、本件特許発明1の「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
甲第10号証には、古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを固着して、該下枠用取付金物4bの取付基準片部6、7にライナーなどの調整具8を介して当てつけることによって、新しい窓枠3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着することが記載されており(上記2(6)を参照。)、「下枠2b」、「調整具8」及び「下枠3b」は、本件特許発明1の「既設下枠」、「スペーサ」及び「改修用下枠」にそれぞれ相当する。
甲第11号証には、下部捨て枠3bの上面にスペーサ5及び固定金具20を介して下枠4b及び下部補助部材6bが取付けられることが記載されており(上記2(7)を参照。)、「スペーサ5」は、本件特許発明1の「スペーサ」に相当する。
甲第27号証には、既存の下枠に取付用補助材(スペーサー)を固定することが記載されている(上記2(20)を参照。)。
甲第32号証には、下枠2の下部に固定されたアンカー3の支持脚21が既設鋼製下枠6の低部33と高低調節座金22を介して接することが記載されており(上記2(21)を参照。)、「下枠2」、「既設鋼製下枠6」及び「高低調節座金22」は、本件特許発明1の「改修用下枠」、「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
d 改修用下枠を取付けるにあたり、邪魔になる既設下枠の案内レールを切断して撤去することは、甲第7号証、甲第15号証ないし甲第17号証に記載のように周知である(上記2(3)、(11)ないし(13)を参照。)。
e 改修用下枠を取付けるにあたり、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールを切断して撤去すること、改修用下枠を逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側にねじで固着することは、甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証(特に甲第36号証及び甲第39号証)に記載のように周知である(上記2(22)ないし(25)、(28)を参照。)
f しかし、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すること、及び、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることは、上記いずれの証拠にも記載されておらず、周知技術であるとも認められない。また、甲5発明1の「逆L字状の部材s」は「上壁s1を延設部分m7の下面に当接」させるものであるから、「改修用引戸枠」を「既設引戸枠」に取付ける際に「基準」とはなり得ない。
また、甲6発明1は、そもそも「旧窓枠に新窓枠を取付けるとき、新窓枠の見込寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関する」(上記2(2)イを参照。)ものであるところ、甲5発明1は、改修用引戸枠の見付寸法は既設引戸枠の見付寸法より小さくはなく、甲5発明1と甲6発明1とは、改修用下枠の脱衣側(室内側)の支持構造も全く異なるものであるから、甲6発明1の「側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」の形状、及び、「下枠5の外側フランジ5aを」既存の「下枠1の垂下フランジ1bにビス止め」する構成のみを取り出し、甲5発明1に適用する動機付けはない。
してみると、上記周知技術に照らし、仮に甲5発明1において、改修用下枠として、浴室側から脱衣側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、浴室寄りが低く、脱衣寄りが浴室寄りよりも高い底壁を備えたものを採用し、改修用下枠の取付けにあたり邪魔となる既設下枠の浴室側レールm3を付け根付近から切断して撤去することが当業者にとって容易になし得ることであったとしても、その際に更に、改修用下枠の浴室寄りをスペーサを介して既設下枠の浴室寄りに接して支持することや、改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を逆L字状の部材sを基準として取付けるようにすることまでもが当業者にとって容易であるとすることはできない。
なお、甲第12号証ないし甲第14号証は、浴室に用いる引戸装置が屋外に面する開口にも用いられることを示す証拠として提出されたものであり、甲第18号証ないし甲第20号証は、引戸枠にアルミニウム合金の押出形材を用いることが周知であることを示す証拠として提出されたものであり、甲第21号証及び甲第22号証は、改修用上枠及び改修用竪枠の室外側部にシール材を装着し、当該シール材を建物の開口部に接することが周知であることを示す証拠として提出されたものであって、いずれも甲5発明1において、上記相違点1-3ないし1-5に係る構成とすることを教示するものではない。
よって、甲5発明1において、上記相違点1-3ないし相違点1-5に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。

(イ)請求人の主張について
請求人は、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」との構成において、「基準」との特定に特別な意味はなく、単に、改修用引戸枠が取付け補助部材によって固定されることで動かなくなる(位置が決まる)程度のことを意味するにすぎない旨主張する(口頭審理陳述要領書12頁1ないし5行)。
しかし、本件特許発明1において、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」ことの意味は上記ア(エ)において検討したのとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、上記相違点1-1及び相違点1-2については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明1、甲6発明1及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明1において、更に「改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した」こと、及び、改修用引戸枠を既設引戸枠内に挿入する際に、「室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明2と甲5発明1とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-5に加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点1-6>
本件特許発明2では、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着し、室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対し、甲5発明1では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲5発明1において、上記相違点1-3ないし相違点1-5に係る本件特許発明2の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(1)イと同様である。
よって、上記相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-6については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲5発明1、甲6発明1及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明1において、更に「室内側案内レールを切断して撤去」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明3と甲5発明1とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-5に加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点1-7>
既設下枠の案内レールに関し、本件特許発明3では、既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対し、甲5発明1では、既設下枠の脱衣側レールm3を撤去しない点。

イ 判断
甲5発明1において、上記相違点1-3ないし相違点1-5に係る本件特許発明3の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(1)イと同様である。
よって、上記相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-7については検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲5発明1、甲6発明1及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲5発明2とを対比する。

(ア)本件特許発明4の「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有」することと、甲5発明2の「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠、脱衣側レールm2と浴室側レールm3を備えたアルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有」することとを対比する。
本件特許発明4の「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成」る「既設下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有」することと、甲5発明2の「建物内の浴室と脱衣室との間の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠」、「アルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有」することとは、「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成る既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する」点で共通する。
また、本件特許発明4の「室内側案内レール」及び「室外側案内レール」と甲5発明2の「脱衣側レールm2」及び「浴室側レールm3」は、「一方側案内レール」及び「他方側案内レール」である点で共通する。
してみると、両者は、「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有する」点で共通する。

(イ)本件特許発明4の「その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあ」ることと、甲5発明2の「既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部には、立ち上がって浴室側面となる壁部m5が形成され、壁部m5の上端には脱衣側に屈曲して横向片の部分m6が形成されるとともに、横向片の部分m6の浴室側には浴室側に延びる延設部分m7が形成され」、「上壁s1を浴室側に延ばした逆L字状の部材sを、上壁s1を延設部分m7の下面に当接させるとともに、その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定してあ」ることとを対比する。
「補助」とは、「おぎない助けること。また、その助けになるもの。」(広辞苑第六版)を意味するところ、本件特許発明4の「取付け補助部材」は「既設下枠」に取り付けられ、「改修用下枠」の取付けにあたり、「改修用下枠の室内寄り」を「支持」するものであるから、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であると認められる。
そして、甲5発明2の「逆L字状の部材s」は、「その縦壁s2を壁部m5の浴室側面にビスで固定し」、「改修用下枠の脱衣寄り」を、その「上壁s1に対してビスで固定」するものであって、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であるといえるから、本件特許発明4の「取付け補助部材」に相当する。
また、本件特許発明4の「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面」と甲5発明2の「既設下枠の底壁部分m1の最も脱衣側の端部」の「立ち上がって浴室側面となる壁部m5」は、「既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面」である点で共通する。
してみると、両者は、「その既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあ」る点で共通する。

(ウ)本件特許発明4の「この既設引戸枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され」ることと、甲5発明2の「既設引戸枠内に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成り、平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠を挿入」することとを対比すると、両者は、「この既設引戸枠内に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用下枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され」る点で共通する。

(エ)本件特許発明4の「この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され」、「前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」ことと、甲5発明2の「既設下枠の浴室側の壁部m4には、逆L字状の部材tをビスで固定してあり」、「改修用引戸枠の改修用下枠の浴室寄りを、断面逆L字状の部材tの上部にビスで固定し、改修用下枠の脱衣側りを、既設下枠の横向片の部分m6の上面に当接するとともに、逆L字状の部材sの上壁s1に対してビスで固定してあ」ることとを対比する。
甲5発明2の「逆L字状の部材s」は、「改修用下枠の脱衣寄り」を、その「上壁s1に対してビスで固定」するものであるから、「改修用下枠」を「支持」するものといえる。
してみると、両者は、「改修用下枠の一方寄りが取付け補助部材で支持され」、「改修用下枠がビスによって既設下枠に固定されている」ことで共通する。

(オ)本件特許発明4の「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」ることと、甲5発明2の「既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmである」こととを対比する。
上記3において検討したとおり、本件特許発明4において、「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであ」るとは、既設下枠の形状、寸法に起因する、既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さのわずかな違いは許容するが、積極的に背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さを変えることを意図するものではなく、実質的に有効開口面積が減少するものではないということを意味すると解される。
そして、甲第5号証の2には、「既設サッシH=2,000」と記載されており(上記2(1)イ(ア)cを参照。)、既設上枠と既設下枠との間の距離、すなわち開口部の高さが2000mmであることに照らせば、既設下枠の壁部m5の上端と改修用下枠の上端の高さの差が3mmであることは、実質的に有効開口面積が減少するものではないといえるから、甲5発明2は、「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さである」との構成を備えている。

(カ)以上によれば、本件特許発明4と甲5発明2とは以下の点で一致する。
<一致点>
「建物の開口部に残存した既設引戸枠は、アルミニウム合金から成る既設上枠、アルミニウム合金から成り一方側案内レールと他方側案内レールを備えた既設下枠、アルミニウム合金から成る既設竪枠を有し、その既設下枠の一方寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も一方側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、
この既設引戸枠内に、アルミニウム合金から成る改修用上枠、アルミニウム合金から成る改修用下枠、アルミニウム合金から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
この改修用引戸枠の改修用下枠の一方寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり、
前記改修用下枠が、ビスによって既設下枠に固定されている改修引戸装置。」

(キ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-A>
引戸装置が設けられる建物の開口部に関し、本件特許発明4は、室外と室内の間の開口部であるのに対し、甲5発明2は、浴室と脱衣室との間の開口部である点。

<相違点1-B>
既設引戸枠及び改修用引戸枠の材料に関し、本件特許発明4は、既設上枠、既設下枠、既設竪枠、改修用上枠、改修用竪枠及び改修用下枠がアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲5発明2は、アルミニウム合金から成るが押出し形材であるかは不明である点。

<相違点1-C>
既設下枠の案内レールに関し、本件特許発明4では、既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるのに対し、甲5発明2では、既設下枠の浴室側レールm3を撤去しない点。

<相違点1-D>
改修用下枠の構成に関し、本件特許発明4では、改修用下枠は室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えるのに対し、甲5発明2では、改修用下枠は平坦で、浴室側と脱衣側の高さが同一である底壁を備える点。

<相違点1-E>
改修用引戸枠の取付構造に関し、本件特許発明4では、改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されているのに対し、甲5発明2では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
まず、上記相違点1-Cないし1-Eについて、まとめて検討する。
(ア)甲第6号証には甲6発明2として、「旧窓枠1にアルミニウム型材からなる新窓枠5を取付ける改装サツシにおいて、新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し、その側端に近接した位置より垂下したる外側フランジ5aを形成し、又内側面には縦長のC形溝5bを長手方向に形成しその上端より室内側へ水平フランジ5Cを形成し、方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し、新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、C形溝5bに係止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした改装サツシ。」の発明が記載されている(上記2(2)を参照。)。
そして、甲6発明2の「旧窓枠1」と本件特許発明4の「既設引戸枠」とは、「既設枠」である点で共通する。また、甲6発明2の「新窓枠5」は、本件特許発明4の「改修用引戸枠」に相当し、以下同様に、「その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し」た「下枠」は、「室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた」「改修用下枠」に、「新窓枠5」の「下枠の外側フランジ5aを」既存の「下枠の垂下フランジ1bにビス止め」することは、「改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」ことにそれぞれ相当する。
(イ)室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠は、甲第7号証及び甲第8号証に記載のように周知である(上記2(3)、(4)を参照。)。
(ウ)甲第9号証には、旧窓枠1の下枠5と取付補助枠59との間に複数枚の下枠用スペーサ13を差し込むことが記載されており(上記2(5)を参照。)、「下枠5」及び「下枠用スペーサ13」は、本件特許発明4の「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
甲第10号証には、古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを固着して、該下枠用取付金物4bの取付基準片部6、7にライナーなどの調整具8を介して当てつけることによって、新しい窓枠3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着することが記載されており(上記2(6)を参照。)、「下枠2b」、「調整具8」及び「下枠3b」は、本件特許発明4の「既設下枠」、「スペーサ」及び「改修用下枠」にそれぞれ相当する。
甲第11号証には、下部捨て枠3bの上面にスペーサ5及び固定金具20を介して下枠4b及び下部補助部材6bが取付けられることが記載されており(上記2(7)を参照。)、「スペーサ5」は、本件特許発明4の「スペーサ」に相当する。
甲第27号証には、既存の下枠に取付用補助材(スペーサー)を固定することが記載されている(上記2(20)を参照。)。
甲第32号証には、下枠2の下部に固定されたアンカー3の支持脚21が既設鋼製下枠6の低部33と高低調節座金22を介して接することが記載されており(上記2(21)を参照。)、「下枠2」、「既設鋼製下枠6」及び「高低調節座金22」は、本件特許発明4の「改修用下枠」、「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
(エ)改修用下枠を取付けるにあたり、邪魔になる既設下枠の案内レールを切断して撤去することは、甲第7号証、甲第15号証ないし甲第17号証に記載のように周知である(上記2(3)、(11)ないし(13)を参照。)。
(オ)改修用下枠を取付けるにあたり、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールを切断して撤去すること、改修用下枠を逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側にねじで固着することは、甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証(特に甲第36号証及び甲第39号証)に記載のように周知である(上記2(22)ないし(25)、(28)を参照。)
(カ)しかし、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することは、上記いずれの証拠にも記載されておらず、周知技術であるとも認められない。
また、甲6発明2は、そもそも「旧窓枠に新窓枠を取付けるとき、新窓枠の見込寸法が旧窓枠のそれより小なる場合の取付け構造に関する」(上記2(2)イを参照。)ものであるところ、甲5発明2は、改修用引戸枠の見付寸法は既設引戸枠の見付寸法より小さくはなく、甲5発明2と甲6発明2とは、改修用下枠の脱衣側(室内側)の支持構造も全く異なるものであるから、甲6発明2の「側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成」した「新窓枠の下枠5」の形状、及び、「下枠5の外側フランジ5aを」既存の「下枠1の垂下フランジ1bにビス止め」する構成のみを取り出し、甲5発明2に適用する動機付けはない。
してみると、上記周知技術に照らし、仮に甲5発明2において、改修用下枠として、浴室側から脱衣側に向かって上方へ段差を成して傾斜し、浴室寄りが低く、脱衣寄りが浴室寄りよりも高い底壁を備えたものを採用し、改修用下枠の取付けにあたり邪魔となる既設下枠の浴室側レールm3を付け根付近から切断して撤去することが当業者にとって容易になし得ることであったとしても、その際に更に、改修用下枠の浴室寄りがスペーサを介して既設下枠の浴室寄りに接して支持され、改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されるよう構成することまでもが当業者にとって容易であるとすることはできない。
なお、甲第12号証ないし甲第14号証は、浴室に用いる引戸装置が屋外に面する開口にも用いられることを示す証拠として提出されたものであり、甲第18号証ないし甲第20号証は、引戸枠にアルミニウム合金の押出形材を用いることが周知であることを示す証拠として提出されたものであり、甲第21号証及び甲第22号証は、改修用上枠及び改修用竪枠の室外側部にシール材を装着し、当該シール材を建物の開口部に接することが周知であることを示す証拠として提出されたものであって、いずれも甲5発明2において、上記相違点1-Cないし1-Eに係る構成とすることを教示するものではない。
よって、甲5発明2において、上記相違点1-Cないし相違点1-Eに係る本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、上記相違点1-A及び相違点1-Bについては検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲5発明2、甲6発明2及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5)本件特許発明5について
ア 対比
本件特許発明5は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明4において、更に「改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接」すること、及び、「改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明5と甲5発明2とを対比すると、上記相違点1-Aないし1-Eに加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点1-F>
本件特許発明5では、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接するのに対し、甲5発明2では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲5発明2において、上記相違点1-Cないし相違点1-Eに係る本件特許発明5の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(4)イと同様である。
よって、上記相違点1-A、相違点1-B及び相違点1-Fについては検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲5発明2、甲6発明2及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(6)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明4において、更に「室内側案内レールは切断して撤去され」ることを限定したものといえる。
よって、本件特許発明6と甲5発明2とを対比すると、上記相違点1-Aないし1-Eに加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点1-G>
既設下枠の案内レールに関し、本件特許発明6では、室内側案内レールは切断して撤去されるのに対し、甲5発明2では、既設下枠の脱衣側レールm3を撤去しない点。

イ 判断
甲5発明2において、上記相違点1-Cないし相違点1-Eに係る本件特許発明6の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(4)イと同様である。
よって、上記相違点1-A、相違点1-B及び相違点1-Gについては検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲5発明2、甲6発明2及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、当業者が甲5発明1、甲6発明1及び周知技術等に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、本件特許発明4ないし6は、当業者が甲5発明2、甲6発明2及び周知技術等に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、甲5発明1及び甲5発明2が本件特許の原出願日前に公然知られた発明又は公然実施された発明であるか否かにかかわらず、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、請求人が主張する無効理由4により無効にすることはできない。

7 無効理由5(進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲6発明1とを対比する。

(ア)甲6発明1の「旧窓枠1」と本件特許発明1の「既設引戸枠」とは、「既設枠」である点で共通する。また、甲6発明1の「既存の」「下枠」、「新窓枠5」、「新窓枠5の下枠」及び「サツシの改装方法」は、本件特許発明1の「既設下枠」、「改修用引戸枠」、「改修用下枠」及び「引戸装置の改修方法」にそれぞれ相当する。

(イ)甲6発明1の「旧窓枠1」が建物の開口部に設けられること、「下枠」の他に上枠及び竪枠を有すること、及び上枠及び竪枠も下枠と同様にスチール製であることは自明の事項である。また、甲6発明1は、「旧窓枠1」に「新窓枠5を取付ける」から、「旧窓枠1」を残存することは明らかである。
そして、甲6発明1の「旧窓枠1」の「上枠」及び「竪枠」は、本件特許発明1の「既設上枠」及び「既設竪枠」に相当するから、甲6発明1は、「建物の開口部に取付けてある」「既設上枠」、「既設下枠」、「既設竪枠を有する既設枠を残存」するとの構成を備えている。

(ウ)甲6発明1の「新窓枠5」が「下枠」の他に上枠及び竪枠を有することは自明の事項である。
また、甲6発明1の「アルミニウム型材」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金の押出し形材」に相当し、同様に、「新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し」たことは、本件特許発明1の「改修用下枠」が「室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた」ことに相当する。
してみると、甲6発明1は、「アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠」を備えている。

(エ)本件特許発明1の「前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」、「この後に」、「改修用引戸枠を、前記既設引戸枠内に室外側から挿入し、その改修用下枠の室外寄りを、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に、前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し」、「前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」ことと、甲6発明1の「アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し」、「新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めする」こととを対比する。
a 「補助」とは、「おぎない助けること。また、その助けになるもの。」(広辞苑第六版)を意味するところ、本件特許発明1の「取付け補助部材」は「既設下枠」に取り付けられ、「改修用下枠」の取付けにあたり、「改修用下枠の室内寄り」を「支持」するものであるから、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であると認められる。
そして、甲6発明1の「アンカー6」は、「新窓枠5の下枠」の「内側面」に形成された「C形溝5b内に挿入され」、その「フランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めする」ものであるから、新窓枠5の下枠の既存のスチール製下枠への取付けを補い助ける部材であるといえ、本件特許発明1の「取付け補助部材」に相当し、また「新窓枠5の下枠」の室内寄りを「支持」するものといえる。
b 甲6発明1の「アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入」することと、本件特許発明1の「改修用引戸枠を」「既設引戸枠内に室外側から挿入」することとは、「改修用引戸枠を既設枠内に室外側から挿入する」点で共通する。
c 甲6発明1の「『新窓枠5の下枠』の『外側フランジ5a』」及び「『既存』の『下枠』の『垂下フランジ1b』」は、本件特許発明1の「『改修用下枠』の『前壁』」及び「『既設下枠』の『前壁』」にそれぞれ相当し、甲6発明1の「新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存」の「下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、アンカー6のフランジ6bを既存」の「下枠にビス止めする」ことは、本件特許発明1の「前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定する」ことに相当する。
d 本件特許発明1は、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」ものであるところ、「基準」とは、「物事の基礎となるよりどころ」(デジタル大辞泉)を意味すること、また本件特許の明細書には、「既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに、この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので、既設引戸枠の形状、寸法に応じた形状、寸法の取付け補助部材を用いることで、形状、寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」(段落【0018】)と記載されていることに照らせば、「改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付ける」とは、取付け補助部材を既設引戸枠に対する改修用引戸枠の位置を決めるよりどころとして、改修用引戸枠を取付けることを意味するものと認められる。
これに対し、甲6発明1は、予め「新窓枠5の下枠」の「C形溝5b内に挿入され」た「アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めする」ものであるから、「新窓枠5」を「アンカー6」を「基準として取付ける」ものとはいえない。
e してみると、両者は、「改修用引戸枠を、前記既設枠内に室外側から挿入し、前記改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し」、「前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定することで、改修用引戸枠を取付ける」点で共通する。

(オ)以上によれば、本件特許発明1と甲6発明1とは以下の点で一致する。
<一致点>
「建物の開口部に取付けてある既設上枠、既設下枠、既設竪枠を有する既設枠を残存し、
この後に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を、前記既設枠内に室外側から挿入し、
前記改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し、前記改修用下枠の前壁をビスによって既設下枠の前壁に固定し、改修用引戸枠を取付ける引戸装置の改修方法。」

(カ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-1>
既設枠の材料に関し、本件特許発明1では、既設引戸枠はアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲6発明1では、旧窓枠1はスチール製である点。

<相違点2-2>
既設下枠に関し、本件特許発明1の既設下枠は、引戸枠の下枠であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えており、室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するのに対し、甲6発明1の既存のスチール製下枠は、引戸枠の下枠であるか否か不明であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か、室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去するか否かも不明である点。

<相違点2-3>
改修用引戸枠の取付け手順に関し、本件特許発明1では、取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、この後に、改修用引戸枠を既設引戸枠内に室外側から挿入し、改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持するのに対し、甲6発明1では、アンカー6がC形溝5b内に挿入されて方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入し、アンカー6のフランジ6bを既存の下枠にビス止めする点。

<相違点2-4>
改修用引戸枠の取付け構造に関し、本件特許発明1では、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持し、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けるのに対し、甲6発明1では、そのような構成を有しない点。

<相違点2-5>
既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さに関し、本件特許発明1では、背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲6発明1では、ほぼ同じ高さであるか否か不明である点。

イ 判断
(ア)相違点2-3及び2-4について
まず、上記相違点2-3及び2-4について、まとめて検討する。
a 甲第23号証には、「室の内外を仕切る躯体の出入口に介在する障子の戸車を受けるレールが、室内の床面又は該床面よりも一段高い位置にある膳板の上面よりも低い位置にある既設サッシ下枠の上に重ねて取り付ける改装サッシ下枠において、改装サッシ下枠は、障子の戸車を受けるレールを含む突設要素の上端が所定の略同じ高さで形成してある上板部と、この上板部から下方に伸長して前記既設サッシ下枠に固定される固定脚部と、を備え、固定脚部の高さ方向に沿う長さが、固定脚部を前記既設サッシ下枠に固定させた状態で、前記突設要素の上端に室内の床面又は膳板の上面と略同じ高さ位置を与える長さとして形成されており、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており、その横板部は上板部に対してネジ固定され、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定されること。」(上記2(19)を参照。以下「甲23技術」という。)が記載されている。
そして、甲23技術の「既設サッシ下枠」及び「改装サッシ下枠」は、本件特許発明1の「既設下枠」及び「改修用下枠」に相当し、甲23技術の「改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており、その横板部は上板部に対してネジ固定され、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定される」ことは、本件特許発明1の「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ること、及び「前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持」することに相当する。
b 甲第9号証には、旧窓枠1の下枠5と取付補助枠59との間に複数枚の下枠用スペーサ13を差し込むことが記載されており(上記2(5)を参照。)、「下枠5」及び「下枠用スペーサ13」は、本件特許発明1の「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
甲第10号証には、古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを固着して、該下枠用取付金物4bの取付基準片部6、7にライナーなどの調整具8を介して当てつけることによって、新しい窓枠3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着することが記載されており(上記2(6)を参照。)、「下枠2b」、「調整具8」及び「下枠3b」は、本件特許発明1の「既設下枠」、「スペーサ」及び「改修用下枠」にそれぞれ相当する。
甲第11号証には、下部捨て枠3bの上面にスペーサ5及び固定金具20を介して下枠4b及び下部補助部材6bが取付けられることが記載されており(上記2(7)を参照。)、「スペーサ5」は、本件特許発明1の「スペーサ」に相当する。
甲第27号証には、既存の下枠に取付用補助材(スペーサー)を固定することが記載されている(上記2(20)を参照。)。
甲第32号証には、下枠2の下部に固定されたアンカー3の支持脚21が既設鋼製下枠6の低部33と高低調節座金22を介して接することが記載されており(上記2(21)を参照。)、「下枠2」、「既設鋼製下枠6」及び「高低調節座金22」は、本件特許発明1の「改修用下枠」、「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
c 改修用下枠を取付けるにあたり、邪魔になる既設下枠の案内レールを切断して撤去することは、甲第7号証、甲第15号証ないし甲第17号証に記載のように周知である(上記2(3)、(11)ないし(13)を参照。)。
d 引戸枠にアルミニウム合金の押出形材を用いることは、甲第18号証ないし甲第20号証に記載のように周知である(上記2(14)ないし(16)を参照。)
e 既設引戸枠の下枠に改修用下枠を取付けるにあたり、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールを切断して撤去すること、改修用下枠を逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側にねじで固着することは、甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証(特に甲第36号証及び甲第39号証)に記載のように周知である(上記2(22)ないし(25)、(28)を参照。)
f しかし、甲6発明1は、旧窓枠に対して見込寸法の小なる新窓枠を簡単に取付可能となる新窓枠の取付け構造を提供することを課題とするものであって(上記2(2)イを参照。)、当該課題を解決する手段として、下枠の内側面に形成したC形溝5b内にアンカー6がを挿入し、アンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めするよう構成したものであるのに対し、甲23技術は、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、改装サッシ下枠の裏面に固定された逆L字状の支持部材が該縁壁にネジ固定されるものであって、既設サッシ下枠に対して見込寸法の小なる改装サッシ下枠の取付け構造に係るものではないから、甲23技術に係る逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造は、甲6発明1のアンカー6による取付け構造に代えて直ちに適用できるものではない。
よって、甲6発明1においてアンカー6による取付け構造に代えて、甲23技術の逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造を適用することに動機付けはない。甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証に開示された周知技術の逆L字状の部材についても同様である。
また、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すること、及び、改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることは、上記いずれの証拠にも記載されておらず、周知技術であるとも認められない。
してみると、上記証拠及び周知技術に照らしても、甲6発明1において、取付け補助部材を既存のスチール製下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け、新窓枠5の下枠の室外寄りをスペーサを介して既存のスチール製下枠の室外寄りに接して支持すると共に、新窓枠5の下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し、新窓枠5の下枠を取付け補助部材を基準として取付けることが当業者にとって容易であるとすることはできない。
なお、甲第7号証及び甲第8号証は、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠が周知であることを示す証拠として提出されたものであり、甲第12号証ないし甲第14号証は、浴室に用いる引戸装置が屋外に面する開口にも用いられることを示す証拠として提出されたものであり、甲第21号証及び甲第22号証は、改修用上枠及び改修用竪枠の室外側部にシール材を装着し、当該シール材を建物の開口部に接することが周知であることを示す証拠として提出されたものであって、いずれも甲6発明1において、上記相違点2-3及び2-4に係る構成とすることを教示するものではない。
よって、甲6発明1において、上記相違点2-3及び2-4に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。

(イ)請求人の主張について
請求人は、甲6発明1も甲23技術も、ともに改装サッシに関する技術であって非常に狭い同一の技術分野に属するものであり、当業者であれば同一の技術分野に属する複数の公知技術を組み合わせることは、当然行う設計事項でしかないから、甲6発明1に甲23技術の逆L字状の支持部材を、それによる作用効果(小型化等)を求めて適用することは当業者であれば当然行うことであり、十分な動機付けがある旨主張する(口頭審理陳述要領書30頁19行ないし31頁2行)。
しかし、上記(ア)fのとおりであって、甲6発明1に甲23技術を適用する動機付けはないから、請求人の主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、上記相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-5については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明1、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明1において、更に「改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した」こと、及び、改修用引戸枠を既設引戸枠内に挿入する際に、「室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明2と甲6発明1とを対比すると、上記相違点2-1ないし2-5に加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点2-6>
本件特許発明2では、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に、前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着し、室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に、室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接するのに対し、甲6発明1では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲6発明1において、上記相違点2-3及び相違点2-4に係る本件特許発明2の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(1)イと同様である。
よって、上記相違点2-1、相違点2-2、相違点2-5及び相違点2-6については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲6発明1、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明1において、更に「室内側案内レールを切断して撤去」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明3と甲6発明1とを対比すると、上記相違点2-1ないし2-5に加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点2-7>
既設下枠に関し、本件特許発明3の既設下枠は、引戸枠の下枠であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えており、既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するのに対し、甲6発明1の既存のスチール製下枠は、引戸枠の下枠であるか否か不明であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か、室内側案内レールを切断して撤去するか否かも不明である点。

イ 判断
甲6発明1において、上記相違点2-3及び相違点2-4に係る本件特許発明3の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(1)イと同様である。
よって、上記相違点2-1、相違点2-2、相違点2-5及び相違点2-7については検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲6発明1、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲6発明2とを対比する。

(ア)甲6発明2の「旧窓枠1」と本件特許発明4の「既設引戸枠」とは、「既設枠」である点で共通する。また、甲6発明2の「既存の」「下枠」、「新窓枠5」、「新窓枠5の下枠」及び「改装サツシ」は、本件特許発明4の「既設下枠」、「改修用引戸枠」、「改修用下枠」及び「改修引戸装置」にそれぞれ相当する。

(イ)甲6発明2の「旧窓枠1」が建物の開口部に設けられること、「下枠」の他に上枠及び竪枠を有すること、及び上枠及び竪枠も下枠と同様にスチール製であることは自明の事項である。また、甲6発明2は、「旧窓枠1」に「新窓枠5を取付ける」から、「旧窓枠1」を残存することは明らかである。
そして、甲6発明2の「旧窓枠1」の「上枠」及び「竪枠」は、本件特許発明4の「既設上枠」及び「既設竪枠」に相当するから、甲6発明2は、「建物の開口部に残存した既設枠は、既設上枠、既設下枠、既設竪枠を有」するとの構成を備えている。

(ウ)甲6発明2の「新窓枠5」が「下枠」の他に上枠及び竪枠を有することは自明の事項である。
また、甲6発明2の「アルミニウム型材」は、本件特許発明4の「アルミニウム合金の押出し形材」に相当し、同様に、「新窓枠5の下枠は、その側面形状が階段状を呈して室外に向って下り勾配を形成し」たことは、「改修用下枠」が「室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた」ことに相当する。
してみると、甲6発明2は、「アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠」を備えている。

(エ)甲6発明2の「方形に組立てられた新窓枠5を旧窓枠1に室外側から挿入」することと、本件特許発明4の「この既設引戸枠内に」、「改修用引戸枠が挿入され」ることとは、「既設枠内に改修用引戸枠が挿入される」点で共通する。

(オ)本件特許発明4の「その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり」、「この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され」、「前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」ことと、甲6発明2の「下枠5の外側フランジ5aを既存のスチール製下枠の垂下フランジ1bにビス止めし、C形溝5bに係止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした」こととを対比する。
a 「補助」とは、「おぎない助けること。また、その助けになるもの。」(広辞苑第六版)を意味するところ、本件特許発明4の「取付け補助部材」は「既設下枠」に取り付けられ、「改修用下枠」の取付けにあたり、「改修用下枠の室内寄り」を「支持」するものであるから、改修用下枠の既設下枠への取付けを補い助ける部材であると認められる。
そして、甲6発明2の「アンカー6」は、「新窓枠5の下枠」の「内側面」に形成された「C形溝5bに係止され」、その「フランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めした」ものであるから、新窓枠5の下枠の既存のスチール製下枠への取付けを補い助ける部材であるといえ、本件特許発明4の「取付け補助部材」に相当し、また「既設下枠の室内寄り」に設けられ、「改修用下枠の室内寄り」を「支持」するものといえる。
b 甲6発明2の「『新窓枠5の下枠』の『外側フランジ5a』」及び「『既存』の『下枠』の『垂下フランジ1b』」は、本件特許発明4の「『改修用下枠』の『前壁』」及び「『既設下枠』の『前壁』」にそれぞれ相当し、甲6発明2の「新窓枠5の下枠の外側フランジ5aを既存」の「下枠の垂下フランジ1bにビス止め」することは、本件特許発明4の「前記改修用下枠の前壁を、ビスによって既設下枠の前壁に固定する」ことに相当する。
c してみると、両者は、「その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け」、「前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され」、「前記改修用下枠の前壁が、ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」点で共通する。

(オ)以上によれば、本件特許発明4と甲6発明2とは以下の点で一致する。
<一致点>
「建物の開口部に残存した既設枠は、既設上枠、既設下枠、既設竪枠を有し、その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、
この既設枠内に、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠、アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠、アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され、
前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持され、前記改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されている改修引戸装置。」

(カ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-A>
既設枠の材料に関し、本件特許発明4では、既設引戸枠はアルミニウム合金の押出し形材から成るのに対し、甲6発明2では、旧窓枠1はスチール製である点。

<相違点2-B>
既設下枠に関し、本件特許発明4の既設下枠は、引戸枠の下枠であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えており、室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるのに対し、甲6発明2の既存のスチール製下枠は、引戸枠の下枠であるか否か不明であって、室内側案内レールと室外側案内レールを備えているか否か、室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されるか否かも不明である点。

<相違点2-C>
改修用引戸枠の取付け構造に関し、本件特許発明4では、取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、改修用下枠の室外寄りがスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されるのに対し、甲6発明2は、そのような構成を有しない点。

<相違点2-D>
既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さに関し、本件特許発明4では、背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであるのに対し、甲6発明2では、ほぼ同じ高さであるか否か不明である点。

イ 判断
まず、上記相違点2-Cについて検討する。
(ア)甲第23号証には、「室の内外を仕切る躯体の出入口に介在する障子の戸車を受けるレールが、室内の床面又は該床面よりも一段高い位置にある膳板の上面よりも低い位置にある既設サッシ下枠の上に重ねて取り付ける改装サッシ下枠において、改装サッシ下枠は、障子の戸車を受けるレールを含む突設要素の上端が所定の略同じ高さで形成してある上板部と、この上板部から下方に伸長して前記既設サッシ下枠に固定される固定脚部と、を備え、固定脚部の高さ方向に沿う長さが、固定脚部を前記既設サッシ下枠に固定させた状態で、前記突設要素の上端に室内の床面又は膳板の上面と略同じ高さ位置を与える長さとして形成されており、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており、その横板部は上板部に対してネジ固定され、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定されること。」(上記2(19)を参照。以下「甲23技術」という。)が記載されている。
そして、甲23技術の「既設サッシ下枠」及び「改装サッシ下枠」は、本件特許発明4の「既設下枠」及び「改修用下枠」に相当し、甲23技術の「改装サッシ下枠の上板部の室内側端部の裏面には逆L字状の支持部材を備えており、その横板部は上板部に対してネジ固定され、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部及び逆L字状の支持部材の縦板部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、逆L字状の支持部材の縦板部が該縁壁にネジ固定される」ことは、本件特許発明4の「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ること、及び「前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持」することに相当する。
(イ)甲第9号証には、旧窓枠1の下枠5と取付補助枠59との間に複数枚の下枠用スペーサ13を差し込むことが記載されており(上記2(5)を参照。)、「下枠5」及び「下枠用スペーサ13」は、本件特許発明4の「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
甲第10号証には、古い窓枠2の下枠2bに下枠用取付金物4bを固着して、該下枠用取付金物4bの取付基準片部6、7にライナーなどの調整具8を介して当てつけることによって、新しい窓枠3の下枠3bを下枠用取付金物4bに固着することが記載されており(上記2(6)を参照。)、「下枠2b」、「調整具8」及び「下枠3b」は、本件特許発明4の「既設下枠」、「スペーサ」及び「改修用下枠」にそれぞれ相当する。
甲第11号証には、下部捨て枠3bの上面にスペーサ5及び固定金具20を介して下枠4b及び下部補助部材6bが取付けられることが記載されており(上記2(7)を参照。)、「スペーサ5」は、本件特許発明4の「スペーサ」に相当する。
甲第27号証には、既存の下枠に取付用補助材(スペーサー)を固定することが記載されている(上記2(20)を参照。)。
甲第32号証には、下枠2の下部に固定されたアンカー3の支持脚21が既設鋼製下枠6の低部33と高低調節座金22を介して接することが記載されており(上記2(21)を参照。)、「下枠2」、「既設鋼製下枠6」及び「高低調節座金22」は、本件特許発明4の「改修用下枠」、「既設下枠」及び「スペーサ」にそれぞれ相当する。
(ウ)改修用下枠を取付けるにあたり、邪魔になる既設下枠の案内レールを切断して撤去することは、甲第7号証、甲第15号証ないし甲第17号証に記載のように周知である(上記2(3)、(11)ないし(13)を参照。)。
(エ)引戸枠にアルミニウム合金の押出形材を用いることは、甲第18号証ないし甲第20号証に記載のように周知である(上記2(14)ないし(16)を参照。)
(オ)既設引戸枠の下枠に改修用下枠を取付けるにあたり、既設下枠の2本のレールのうち室外側のレールを切断して撤去すること、改修用下枠を逆L字状の部材を介して既設下枠の室内側にねじで固着することは、甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証(特に甲第36号証及び甲第39号証)に記載のように周知である(上記2(22)ないし(25)、(28)を参照。)
(カ)しかし、甲6発明2は、旧窓枠に対して見込寸法の小なる新窓枠を簡単に取付可能となる新窓枠の取付け構造を提供することを課題とするものであって(上記2(2)イを参照。)、当該課題を解決する手段として、下枠の内側面に形成したC形溝5bに係止されたアンカー6のフランジ6bを既存のスチール製下枠にビス止めしたものであるのに対し、甲23技術は、改装サッシ下枠の上板部の室内側端部が既設サッシ下枠の上板部の最も室内側の端部に連なる縁壁に当接した状態で、改装サッシ下枠の裏面に固定された逆L字状の支持部材が該縁壁にネジ固定されるものであって、既設サッシ下枠に対して見込寸法の小なる改装サッシ下枠の取付け構造に係るものではないから、甲23技術に係る逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造は、甲6発明2のアンカー6による取付け構造に代えて直ちに適用できるものではない。
よって、甲6発明2においてアンカー6による取付け構造に代えて、甲23技術の逆L字状の支持部材による改装サッシ下枠の支持構造を適用することに動機付けはない。
甲第33号証の1、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第39号証に開示された周知技術の逆L字状の部材についても同様である。
また、改修用下枠の室外寄りをスペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持することは、上記いずれの証拠にも記載されておらず、周知技術であるとも認められない。
してみると、上記証拠及び周知技術に照らしても、甲6発明2において、既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け、その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり、改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが、スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に、前記改修用下枠の室内寄りが、前記取付け補助部材で支持されるよう構成することが当業者にとって容易であるとすることはできない。
なお、甲第7号証及び甲第8号証は、室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し、室外寄りが低く、室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠が周知であることを示す証拠として提出されたものであり、甲第12号証ないし甲第14号証は、浴室に用いる引戸装置が屋外に面する開口にも用いられることを示す証拠として提出されたものであり、甲第21号証及び甲第22号証は、改修用上枠及び改修用竪枠の室外側部にシール材を装着し、当該シール材を建物の開口部に接することが周知であることを示す証拠として提出されたものであって、いずれも甲6発明2において、上記相違点2-Cに係る構成とすることを教示するものではない。
よって、甲6発明2において、上記相違点2-Cに係る本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、上記相違点2-A、相違点2-B及び相違点2-Dについては検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲6発明2、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5)本件特許発明5について
ア 対比
本件特許発明5は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明4において、更に「改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接」すること、及び、「改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接」することを限定したものといえる。
よって、本件特許発明5と甲6発明2とを対比すると、上記相違点2-Aないし2-Dに加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点2-E>
本件特許発明5では、改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され、この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し、改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され、この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接するのに対し、甲6発明2では、そのような構成を有していない点。

イ 判断
甲6発明2において、上記相違点2-Cに係る本件特許発明5の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(4)イと同様である。
よって、上記相違点2-A、相違点2-B、相違点2-D及び相違点2-Eについては検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲6発明2、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(6)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6は独立請求項として記載されたものであるが、実質的に本件特許発明4において、更に「室内側案内レールは切断して撤去され」ることを限定したものといえる。
よって、本件特許発明6と甲6発明2とを対比すると、上記相違点2-Aないし2-Dに加え、両者は以下の点で相違する。

<相違点2-F>
既設下枠の案内レールに関し、本件特許発明6では、室内側案内レールは切断して撤去されるのに対し、甲6発明2では、室内側案内レールを備えているか否か、室内側案内レールは切断して撤去されるか否か不明である点。

イ 判断
甲6発明2において、上記相違点2-Cに係る本件特許発明6の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(4)イと同様である。
よって、上記相違点2-A、相違点2-B、相違点2-D及び相違点2-Fについては検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲6発明2、甲23技術及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、当業者が甲6発明1、甲23技術及び周知技術等に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、本件特許発明4ないし6は、当業者が甲6発明2、甲23技術及び周知技術等に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、請求人が主張する無効理由5により無効にすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1ないし5によっては、本件特許発明1ないし6の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-27 
結審通知日 2017-03-02 
審決日 2017-03-16 
出願番号 特願2006-74123(P2006-74123)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (E06B)
P 1 113・ 121- Y (E06B)
P 1 113・ 536- Y (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子伊藤 昌哉  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
中田 誠
登録日 2011-10-07 
登録番号 特許第4839108号(P4839108)
発明の名称 引戸装置の改修方法及び改修引戸装置  
代理人 加治 信貴  
代理人 櫻井 彰人  
代理人 根本 恵司  
代理人 根本 恵司  
代理人 岩▲崎▼ 孝治  
代理人 加治 信貴  
代理人 櫻井 彰人  
代理人 三村 量一  
代理人 面山 結  
代理人 羽鳥 貴広  
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