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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1340695
審判番号 不服2017-11883  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2018-06-12 
事件の表示 特願2013-132443「表示装置、表示制御方法、表示制御装置、および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 7691、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月25日の出願であって、平成28年2月2日付けで手続補正がされ、同年11月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月30日付けで手続補正がされ、同年6月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ(送達日:同年7月4日)、これに対し、同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1 理由1(新規性)について
・請求項1-2、4,9-12、14-16、18-20
・引用文献等1

2 理由2(進歩性)について
・請求項1-6、9-16、18-20
・引用文献等1

・請求項7
・引用文献等1、3

・請求項8、17
・引用文献等1、4

引用文献等一覧
1.国際公開第2012-157553号
3.特開2009-020384号公報
4.特開2007-206698号公報


第3 本願発明
本願請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、平成29年8月8日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、16-18は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
互いに異なる色光を射出する所定数の発光部と、
前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部を決定し、その1または複数の発光部における発光を制御する発光制御部と、
前記色光を透過または反射することにより表示を行う表示部と
を備え、
前記発光制御部は、
各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し、
前記1または複数の発光部の決定結果に基づいて、各フレーム期間における、各発光部の発光時間の長さを制御する
表示装置。」

「【請求項16】
互いに異なる色光を射出する所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部を決定し、その1または複数の発光部における発光を制御し、
前記色光を透過または反射することにより表示を行い、
前記1または複数の発光部における発光を制御する際、
各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し、
前記1または複数の発光部の決定結果に基づいて、各フレーム期間における、各発光部の発光時間の長さを制御する
表示制御方法。
【請求項17】
光を透過または反射することにより表示を行う表示部に対して互いに異なる色光を射出する所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部を決定し、その1または複数の発光部における発光を制御し、
前記1または複数の発光部における発光を制御する際、
各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し、
前記1または複数の発光部の決定結果に基づいて、各フレーム期間における、各発光部の発光時間の長さを制御する
表示制御装置。
【請求項18】
表示装置と
前記表示装置に対して動作制御を行う制御部と
を備え、
前記表示装置は、
互いに異なる色光を射出する所定数の発光部と、
前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部を決定し、その1または複数の発光部における発光を制御する発光制御部と、
前記色光を透過または反射することにより表示を行う表示部と
を有し、
前記発光制御部は、
各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し、
前記1または複数の発光部の決定結果に基づいて、各フレーム期間における、各発光部の発光時間の長さを制御する
電子機器。」

なお、本願発明2-15は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審による。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置および画像表示方法に関し、更に詳しくは、フィールドシーケンシャル方式を用いた画像表示装置において色割れの発生を抑制する技術に関する。」

イ 「【0035】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成および動作概要>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である。この液晶表示装置は、表示部100とバックライトユニット200とパネル駆動回路300とサブフレーム画像生成部400とによって構成されている。サブフレーム画像生成部400は、色成分比抽出部42と発光色成分比選択部44と画素変調度演算部46とを有している。なお、本実施形態においては、バックライトユニット200によって光照射部が実現されている。
【0036】
表示部100には、複数本のソースバスライン(映像信号線)SLと複数本のゲートバスライン(走査信号線)GLとが配設されている。ソースバスラインSLとゲートバスラインGLとの各交差点に対応して、画素を形成する画素形成部が設けられている。すなわち、表示部100には、複数個の画素形成部が含まれている。上記複数個の画素形成部はマトリクス状に配置されて画素アレイを構成している。各画素形成部には、対応する交差点を通過するゲートバスラインGLにゲート端子が接続されると共に当該交差点を通過するソースバスラインSLにソース端子が接続されたスイッチング素子であるTFT10と、そのTFT10のドレイン端子に接続された画素電極11と、上記複数個の画素形成部に共通的に設けられた共通電極14および補助容量電極15と、画素電極11と共通電極14とによって形成される液晶容量12と、画素電極11と補助容量電極15とによって形成される補助容量13とが含まれている。液晶容量12と補助容量13とによって画素容量が構成されている。なお、図1の表示部100内には、1つの画素形成部に対応する構成要素のみを示している。
【0037】
バックライトユニット200は、表示部100の背面側に設けられている。バックライトユニット200には、赤色の光源,緑色の光源,および青色の光源をひと組とする複数の光源組が含まれている。図2は、本実施形態におけるバックライトユニット200の構成を模式的に示した図である。本実施形態においては、光源としてLED(発光ダイオード)が採用されており、光源組としてのLEDユニット20に、赤色LED21,緑色LED22,および青色LED23が1個ずつ含まれている。また、図2に示すように、バックライトユニット200内において、LEDユニット20は行方向および列方向に複数個ずつ設けられ全体として2次元状に配置されている。なお、バックライトユニット200には、各LEDの状態(点灯状態/消灯状態)を制御するLED制御回路(不図示)も含まれている。
【0038】
ところで、本実施形態においては、表示部100内の画素領域は、1つのエリアに複数個の画素が含まれるように(図3参照)、(物理的にではなく)論理的に複数個のエリアに分割される。また、1つのエリアには、1個のLEDユニット20が対応付けられている。例えば、図2で符号20aで示すLEDユニットは、符号60で示す太枠のエリアに対応付けられ、図2で符号20bで示すLEDユニットは、符号61で示す太枠のエリアに対応付けられている。以上のことから、1つのエリアは、複数個の画素形成部に対応付けられている。各LEDユニット20から出射された光は、対応するエリアの画素領域に照射される。従って、各LEDユニット20は、複数個の画素形成部に赤色光,緑色光,および青色光を照射するための光源組として機能する。なお、以下においては、各LEDユニット20に対応するエリアのことを「割当エリア」という。
【0039】
本実施形態においては、1画面分の画像を表示するための期間である1フレーム期間は、図4に示すように4つのサブフレーム(第1?第4サブフレーム)で構成される。各サブフレームにおいて、LEDユニット20に含まれる各色のLEDは任意の状態を取り得る。従って、いずれか1色のLEDのみが点灯状態となることもあれば、複数色(2色または3色)のLEDが点灯状態となることもある。また、全ての色のLEDが消灯状態となることもある。なお、以下においては、LEDの状態に関し、点灯状態および消灯状態の双方を含めた状態のことを「発光状態」という。」

ウ 「【0042】
次に、図1に示す各構成要素の動作の概要を説明する。なお、以下においては、3つの色の成分の大きさの比(赤色成分の大きさと緑色成分の大きさと青色成分の大きさとの比)のことを「色成分比」という。また、LEDユニット20に含まれる3色のLEDによって表示され得る色成分比のことを特に「発光色成分比候補」という。さらに、LEDユニット20に含まれる3色のLEDが実際に発光する際の色成分比のことを特に「発光色成分比」という。
【0043】
サブフレーム画像生成部400内の色成分比抽出部42は、目標画像に基づいて、LEDユニット20毎に、目標画像を構成する色(目標表示色)を再現するために必要な色成分比を発光色成分比候補として抽出する。各LEDユニット20に関して、色成分比抽出部42によって抽出される発光色成分比候補の数は、1個の場合もあれば複数個の場合もある。なお、目標画像は、外部から送られる入力画像信号DINに基づく1フレーム分の画像である。色成分比抽出部42は、また、抽出した発光色成分比候補を示すデータを色成分比データDcolとして出力する。
【0044】
サブフレーム画像生成部400内の発光色成分比選択部44は、色成分比抽出部42から出力された色成分比データDcolを受け取り、LEDユニット20毎に、各サブフレームにおける発光色成分比を色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から選択する。発光色成分比選択部44は、また、選択した発光色成分比候補の色成分比に基づいて、各サブフレームにおける各色のLEDの発光量を求める。さらに、発光色成分比選択部44は、各LEDユニット20に含まれる各色のLEDの各サブフレームにおける発光量を示すデータを発光データDLとして出力する。なお、目標画像によっては、色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から発光色成分比の選択が行われずに「消灯状態にする」という決定が行われることもある。発光色成分比選択部44は、また、各LEDが所望の発光状態(点灯状態/消灯状態)となるようバックライトユニット200の動作を制御するための光源制御信号Sを出力する。なお、光源制御信号Sについては、各LEDの点灯状態/消灯状態(時間方向のオン/オフ)を指示する信号であっても良いし、各LEDの輝度を指示する信号であっても良いし、それらの組み合わせであっても良い。
【0045】
サブフレーム画像生成部400内の画素変調度演算部46は、入力画像信号DINと発光色成分比選択部44から出力された発光データDLとに基づいて、各画素の色が目標表示色となるよう、各サブフレームでの各画素形成部における液晶の時間開口率を制御するための信号であるデジタル映像信号DVを生成し、それを出力する。なお、時間開口率とは、光源点灯期間における液晶の透過率の時間的な積分値に相当するものであり、液晶の時間開口率と光源点灯期間の時間的な重ね合せによって、実際に表示される輝度が決まる。
【0046】
パネル駆動回路300は、ゲートバスラインGLを1本ずつ選択的に駆動するとともに、画素変調度演算部46から出力されたデジタル映像信号DVに基づき各ソースバスラインSLに駆動用の映像信号を印加する。共通電極14には所定電位が与えられ(一定の電位が与えられ、または、一定の高電位と一定の低電位とが所定期間毎に交互に与えられ)、画素電極11には駆動用の映像信号に基づく電位が与えられる。これにより、各画素形成部の画素容量に、所望の電荷が蓄積される。バックライトユニット200は、発光色成分比選択部44から出力された光源制御信号Sに基づいて、各LEDの発光状態を制御する。LEDの発光制御は電流の調整によって発光強度を制御しても良いし、発光期間の長さを調整することで発光強度を調整しても良いし、また両方の手法を組合せても良い。」

エ 上記段落【0046】には「バックライトユニット200」が、「光源制御信号Sに基づいて」「各LED」の「発光状態」を制御する際に、「発光期間の長さを調整することで発光強度」を調整することが記載されているが、段落【0037】に「バックライトユニット200には、各LEDの状態(点灯状態/消灯状態)を制御するLED制御回路(不図示)も含まれている。」と記載されていることから、「光源制御信号Sに基づいて」「各LED」を制御するのは、「バックライトユニット200」に含まれている「LED制御回路」であると認められる。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「表示部100とバックライトユニット200とパネル駆動回路300とサブフレーム画像生成部400とによって構成されている液晶表示装置であって(段落【0035】)、
バックライトユニット200には、赤色LED21,緑色LED22,および青色LED23をひと組とする複数のLEDユニット20と、サブフレーム画像生成部400内の発光色成分比選択部44から出力された光源制御信号Sに基づいて各LEDの状態(点灯状態/消灯状態)を制御する際に、発光期間の長さを調整することで発光強度を調整するLED制御回路が含まれており(段落【0037】、【0044】、【0046】、上記エ)、
表示部100には、ソースバスラインSLとゲートバスラインGLとの各交差点に対応して、画素を形成する画素形成部が設けられており(段落【0036】)、
1画面分の画像を表示するための期間である1フレーム期間は、4つのサブフレームで構成され(段落【0039】)、
サブフレーム画像生成部400内の色成分比抽出部42は、外部から送られる入力画像信号DINに基づく1フレーム分の画像である目標画像に基づいて、LEDユニット20毎に、目標画像を構成する色(目標表示色)を再現するために必要な色成分比を発光色成分比候補として抽出し、抽出した発光色成分比候補を示すデータを色成分比データDcolとして出力し(段落【0043】)、
サブフレーム画像生成部400内の発光色成分比選択部44は、色成分比抽出部42から出力された色成分比データDcolを受け取り、LEDユニット20毎に、各サブフレームにおける発光色成分比を色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から選択し、選択した発光色成分比候補の色成分比に基づいて、各サブフレームにおける各色のLEDの発光量を求め、さらに、各LEDユニット20に含まれる各色のLEDの各サブフレームにおける発光量を示すデータを発光データDLとして出力し、目標画像によっては、色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から発光色成分比の選択が行われずに「消灯状態にする」という決定が行われることもあり、各LEDが所望の発光状態(点灯状態/消灯状態)となるようバックライトユニット200の動作を制御するための光源制御信号Sを出力し(段落【0044】)、
サブフレーム画像生成部400内の画素変調度演算部46は、入力画像信号DINと発光色成分比選択部44から出力された発光データDLとに基づいて、各画素の色が目標表示色となるよう、各サブフレームでの各画素形成部における光源点灯期間における液晶の透過率の時間的な積分値に相当する液晶の時間開口率を制御するための信号であるデジタル映像信号DVを生成し、それを出力し(段落【0045】)、
パネル駆動回路300は、ゲートバスラインGLを1本ずつ選択的に駆動するとともに、画素変調度演算部46から出力されたデジタル映像信号DVに基づき各ソースバスラインSLに駆動用の映像信号を印加する(段落【0046】)、
液晶表示装置。」

2 引用文献3について
引用文献3には、次の記載がある。(下線は当審による。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる色順次(フィールドシーケンシャル)方式においてカラー表示の明るさ等を改善する技術に関する。」

「【0018】
ところで、従来の色順次方式では、図8に示されるように、すべての液晶容量のそれぞれにR成分に応じた電圧が保持されるRフィールドの帰線期間においてのみ、赤色LED18Rだけが発光し、同様に、全ての液晶容量のそれぞれにおいてG、B成分に応じた電圧が保持されるG、Bフィールドの帰線期間においてのみ、緑色LED18G、青色LED18Bだけがそれぞれ発光する。このため、従来の色順次方式では、画面全体が暗くなるだけでなく、R、G、B色の原色画像が視認される期間が時間的にずれているので、色割れとして知覚されやすい。
これに対して、本実施形態では、R、G、Bフィールドの各帰線期間においてそれぞれR、G、B色の光を表示パネル100に照射する点に加えて、Rフィールドの走査期間の途中であるタイミングtr1までB色を、タイミングtr1からM色をそれぞれ表示パネル100に照射させ、同様に、Gフィールドの走査期間のタイミングtg1までR色を、タイミングtg1からY色を、Bフィールドの走査期間のタイミングtb1までG色を、タイミングtb1からC色を、それぞれ表示パネル100に照射させている。
このため、本実施形態によれば、ほぼ1フレームの期間の全域にわたってなんらかの色の光を照射しているので、画面全体を明るくすることができるだけでなく、各色の画像が視認される期間の時間的なずれが小さいので、色割れを低減することが可能となる。
しかも、表示パネル100に対する駆動方法は従来と同様であり、赤色LED18R、緑色LED18G、青色LED18Bに対する制御だけが異なるので、構成の複雑化も回避される。」

3 引用文献4について
引用文献4には、次の記載がある。(下線は当審による。)

「【0018】
映像分解部10は、映像信号の1フレームを単色光源の単色の数より多数個のフィールドに分解する。本実施形態のフィールドシーケンシャル映像表示装置は、R,G,B駆動方式を遂行するので、前記単色光源の単色の数は3であり、1フレームは、少なくとも4つ以上のフィールドに分離される。分離されたフィールドは、R,G,Bの単色画像であるか、または単色画像の組み合わせからなる。映像分解部10は、映像信号の各フレームを一般的なカラー空間変換を介し、R,G,B信号に変換し、変換されたR,G,B信号それぞれは、単独でR,G,Bフィールドをなすことができ、組み合わせてCy(シアン),M(マゼンタ),Y(黄色)またはW(白色)フィールドをなすこともある。このように分解された単色フィールドまたは混色フィールドは、所定の順序により、順次に画像表示パネル70に表示される。前記フィールドの表示順序についての詳細な説明は、後述することとする。」

「【0031】
一方、図面を参照するに、最初のフレームで、G,B光源は、一回ずつ点灯されるが、R光源は、二回点灯されている。このように、1フレーム内でR,G,B光源それぞれの点灯回数が変わることにより、R,G,B画面の輝度差が発生しうる。かような輝度差を除去するために、1フレーム内で各フィールドごとにR,G,B光源の駆動電圧または照射時間を制御することにより、1フレーム内で駆動される各R,G,B光源が時間平均的に一定の明度を有するようにすることが望ましい。図3の(c)ないし(d)は、駆動電圧を調節し、R,G,B光源が時間平均的に一定の明度を有するようにした場合を図示する。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

ア 引用発明の「バックライトユニット200」に「含まれている」「LEDユニット20」が備える「赤色LED21,緑色LED22,および青色LED23」は、本願発明1の「互いに異なる色光を射出する所定数の発光部」に相当する。

イ 上記アを踏まえると、引用発明の「サブフレーム画像生成部400内の発光色成分比選択部44から出力された光源制御信号Sに基づいて各LEDの状態(点灯状態/消灯状態)を制御する際に、発光期間の長さを調整することで発光強度を調整するLED制御回路」は、本願発明1の「前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部を決定し、その1または複数の発光部における発光を制御する発光制御部」と、「発光部における発光を制御する発光制御部」である点で共通する。

ウ 上記アを踏まえると、引用発明の「LED制御回路」が「各LED」の「発光期間の長さを調整することで発光強度を調整する」ことは、本願発明1の「発光制御部」が、「各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し、前記1または複数の発光部の決定結果に基づいて、各フレーム期間における、各発光部の発光時間の長さを制御する」ことと、「発光制御部」が「各発光部の発光時間の長さを制御する」点で共通する。

エ 引用発明の「表示部100」は、「ソースバスラインSLとゲートバスラインGLとの各交差点に対応して、画素を形成する画素形成部が設けられており」、「サブフレーム画像生成部400内の画素変調度演算部46」において「生成」した「各サブフレームでの各画素形成部における光源点灯期間における液晶の透過率の時間的な積分値に相当する液晶の時間開口率を制御するための信号であるデジタル映像信号DV」に「基づき」、「パネル駆動回路300」により「各ソースバスラインSLに駆動用の映像信号を印加」されるものである。
よって、引用発明の「表示部100」は、「バックライトユニット200」に「含まれている」「赤色LED21,緑色LED22,および青色LED23をひと組とする複数のLEDユニット20」からの光を、「各サブフレームでの各画素形成部における光源点灯期間における液晶の透過率」で透過するものと認められるから、本願発明1の「前記色光を透過」「することにより表示を行う表示部」に相当する。

オ 引用発明の「液晶表示装置」は、本願発明1の「表示装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
互いに異なる色光を射出する所定数の発光部と、
発光部における発光を制御する発光制御部と、
前記色光を透過することにより表示を行う表示部とを備え、
前記発光制御部は、各発光部の発光時間の長さを制御する
表示装置。

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「発光制御部」は、「各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を」「前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部」「として決定」するものである。

これに対し、引用発明は、「サブフレーム画像生成部400内の発光色成分比選択部44」が「光源制御信号S」を出力し、「LED制御回路」が「光源制御信号S」「に基づいて各LEDの状態(点灯状態/消灯状態)を制御する際に、発光期間の長さを調整することで発光強度を調整する」ものであり、「光源制御信号S」とは、「1フレーム分の画像である目標画像に基づいて」「抽出」した、「目標画像を構成する色(目標表示色)を再現するために必要な色成分比」である「発光色成分比候補」の中から、「選択した発光色成分比候補の色成分比に基づいて、各サブフレームにおける各色のLEDの発光量を求め」「各LEDが所望の発光状態(点灯状態/消灯状態)となるようバックライトユニット200の動作を制御するための」信号であり、「目標画像によっては、色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から発光色成分比の選択が行われずに「消灯状態にする」という決定が行われることもあ」る信号である。
ここで、「目標画像によっては、色成分比データDcolの示す発光色成分比候補の中から発光色成分比の選択が行われずに「消灯状態にする」という決定」とは、あるサブフレームにおいて「発光色成分比候補」の中からどれも選択せず発光自体を行わない、すなわち、「赤色LED21,緑色LED22,および青色LED23」のLEDを全て発光させないことである。

したがって、引用発明は、本願発明1の上記決定をする構成を有していない。

(2)相違点1についての判断
引用文献1には、「各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を」「前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部」「として決定」することについて、示唆されていない。

引用文献3及び4には、いずれも「互いに異なる色光を射出する所定数の発光部」を備える表示装置について記載されているが、「各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を」「前記所定数の発光部のうち、各フレーム期間において発光させる1または複数の発光部」「として決定」する構成について記載も示唆もされていない。

よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1、3及び4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-15について
本願発明2-15は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、3及び4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明16について
本願発明16は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点1に対応する構成、具体的には「各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定し」の工程を有しているから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献1、3及び4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明17について
本願発明17は、本願発明1の表示装置の制御に関する表示制御装置の発明であり、上記相違点1に対応する構成、具体的には「前記1または複数の発光部における発光を制御する際、各色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定」する構成を有しているから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献1、3及び4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明18について
本願発明18は、本願発明1と同一の構成を備える表示装置と、該表示装置に対して動作制御を行う制御部とを備える電子機器の発明であり、本願発明1の特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、3及び4に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
1 理由1(新規性)について
審判請求時の補正により、本願発明1は、「発光制御部」が「色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定」する構成を含むものとなっており、上記第5の1(1)に記載したとおり、引用発明は当該構成を備えていないから、本願発明1は引用発明ではない。
本願発明16-18(それぞれ、本件補正前の請求項18-20に係る発明に対応する。)についても同様である。
本願発明2、7-10、12-14(それぞれ、本件補正前の請求項4、9-12、14-16に係る発明に対応する。)は、本願発明1を減縮した発明であるから、引用発明ではない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(進歩性)について
審判請求時の補正により、本願発明1-15は「発光制御部」が「色光に対応する各色成分の、画像情報における画素ごとの輝度情報に基づいて、前記輝度情報の色成分のうち、1フレーム分の輝度情報の輝度レベルが、ユーザにより設定された所定のしきい値未満である色成分以外の色成分を求め、その求めた色成分に対応する色光を発する発光部を、前記1または複数の発光部として決定」する構成を含むものとなっており、上記第5の1(2)に記載したとおり、当該構成は引用文献1に示唆されておらず、引用文献3及び4に記載も示唆もされていないから、本願発明1-15は、引用発明、引用文献1、3及び4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明16-18についても同様である。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-18は、引用発明ではないし、当業者が引用文献1、3及び4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2013-132443(P2013-132443)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
▲うし▼田 真悟
発明の名称 表示装置、表示制御方法、表示制御装置、および電子機器  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  

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