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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1340729
審判番号 不服2017-6274  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-29 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 特願2015-176342号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 51309号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年9月8日に出願したものであって,平成28年7月11日付けで拒絶の理由が通知され,同年9月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ,平成29年1月26日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成29年2月1日),それに対して,同年4月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ,同年11月22日付けで当審にて拒絶の理由が通知されたところ,平成30年1月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明
平成30年1月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める(なお,A?Fは,分説のために当審にて付した。)。

「【請求項1】
A 遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じて,始動入賞口への遊技球の入賞を検知したことを示す始動入賞コマンド,始動条件の成立を契機とした図柄の変動を開始することを示す変動開始コマンド,及び,前記図柄の変動を行わない遊技である特別遊技が開始されたことを示す特別遊技開始コマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
B 少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
C 前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
D 前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段と
を備える遊技機であって,
E 前記表示制御手段は,初期化処理を経て客待ち状態に移行する前において,前記表示手段の表示画像として,当該遊技機の起動時の特定操作を含む所定の操作を行うことによってのみ移行するモードに固有の設定画像を表示させているときに前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記特別遊技開始コマンドである場合,前記表示手段において前記設定画像を視認不能にすると共に前記特別遊技開始コマンドに対応する画像を表示させることを特徴とする
F 遊技機。」

2 当審が通知した拒絶理由の概要
平成29年11月22日付けで当審が通知した拒絶理由は,本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1-4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開2010-142301号公報
2.特開2015-29780号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2014-8418号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-130551号公報(周知技術を示す文献)

なお,以下では,平成29年11月22日付けで当審が通知した拒絶理由で引用する特開2010-142301号公報,特開2015-29780号公報,特開2014-8418号公報,特開2012-130551号公報を,それぞれ,引用文献1,2,3,4という。

3 引用文献1に記載された発明
引用文献1には,図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

(ア)「【0018】
(遊技機の基本構成)
まず,本発明の実施の形態にかかる遊技機の基本構成について説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる遊技機の一例を示す正面図である。図1に示すように,本実施の形態の遊技機100は,遊技盤101を備えている。遊技盤101の下部位置には,発射部(図3中符号392参照)が配置されている。
・・・
【0025】
遊技盤101の右下部分には,特別図柄が表示される特別図柄表示部112が配置されている。ここで,特別図柄は,第1始動口105または第2始動口106へ入賞することによりおこなう大当たり抽選の抽選結果をあらわす図柄である。大当たり抽選は,遊技状態を大当たり状態とするか否かの抽選である。」

(イ)「【0047】
さらに,主制御部301は,演出制御部302および賞球制御部303にも接続され,それぞれの制御部に対して各種コマンドを出力する。たとえば,主制御部301は,大当たり抽選をおこなうと,演出制御部302に対して変動開始コマンドを出力する。ここで,変動開始コマンドには,遊技状態を示す情報や,特別図柄を変動表示させる時間(以下「変動時間」という)や,大当たり抽選の抽選結果(停止表示させる特別図柄)を示す情報などが含まれている。そして,主制御部301は,入賞口への遊技球の入賞を検出すると,賞球制御部303に対して賞球コマンドを出力する。ここで,賞球コマンドには,払い出させる賞球の個数を示す情報などが含まれている。
【0048】
(2.演出制御部)
演出制御部302は,演出統括部302aと,画像・音声制御部302bと,ランプ制御部302cとによって構成され,遊技機100の演出内容を制御する機能を有する。ここで,演出統括部302aは,主制御部301から受信したコマンド(たとえば変動開始コマンド)に基づいて演出制御部302全体を統括する機能を有している。画像・音声制御部302bは,演出統括部302aからの指示内容に基づいて画像および音声の制御をおこなう機能を有している。また,ランプ制御部302cは,遊技盤101および枠部材115などに設けられたランプの点灯を制御する機能を有している。」

(ウ)「【0058】
RAM353に書き込まれた背景画像や演出図柄画像などの画像データは,画像・音声制御部302bに接続された画像表示部104に対して出力され,画像表示部104の表示画面上において重畳表示される。すなわち,演出図柄画像は,背景画像よりも手前に見えるように表示される。なお,同一位置に背景画像と図柄画像が重なる場合などには,Zバッファ法など周知の陰面消去法により各画像データのZバッファのZ値を参照することで,図柄画像を優先してRAM353に記憶させる。
【0059】
また,RAM353に書き込まれた音声データは,画像・音声制御部302bに接続されたスピーカ354に対して出力され,音声データに基づく音声がスピーカ354から出力される。」

(エ)「【0082】
また,演出制御部302は,遊技が一定時間中断されたときには客待ちの画面を表示出力する。また,RTC344の計時に基づき,所定の時期に時刻や,確変状態を報知する。」

(オ)「【0104】
そして,操作部120での操作がなされたときには(ステップS507:Yes),時刻設定モードとなる(ステップS520)。時刻設定モードによる時刻設定の終了後には,ステップS503に復帰する。このステップS520の実行は,少なくとも遊技機100の背面に設けられた電源スイッチ460を操作する電源投入時に,同時に,RAMクリアスイッチ314が操作されたときである。これに加えて,遊技機100の正面側に設けられた操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)が操作されたときとしてもよい。このような操作は,一般客にはおこなうことができず,ホールの開店時等に管理者が遊技機100を開くことによってはじめておこなうことができる。」

(カ)「【0108】
(時刻設定処理について)
つぎに,RTC344に対する時刻設定処理について説明する。図7は,時刻設定処理の処理内容を示すフローチャートである。図5のステップS520による時刻設定モード時,演出制御部302は,画像表示部104に時刻設定画面を表示させる(ステップS701)。そして,操作部120の操作によって時刻設定入力がおこなわれる(ステップS702)。操作部120のうち特定の終了用の操作ボタンを操作するまでの間は(ステップS703:No),ステップS702による時刻設定入力状態とされ,画像表示部104には,時刻設定画面が表示される。そして,終了用の特定の操作ボタンが操作されると時刻設定入力が終了し(ステップS703:Yes),時刻設定画面の表示を終了させる(ステップS704)。以上の処理は,電源投入時であり遊技が開始されていないときにおこなわれる。但し,演出制御部302は,主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理をおこなう。」

上記記載事項(ア)?(カ)から,以下の事項が導かれる。なお,(a)?(h)は,本願発明の構成A?Fに対応した事項を示している。

(a)上記段落【0025】には「・・・第1始動口105または第2始動口106へ入賞することによりおこなう大当たり抽選・・・」と記載され,上記段落【0047】には「主制御部301は,大当たり抽選をおこなうと,演出制御部302に対して変動開始コマンドを出力する。・・・主制御部301は,入賞口への遊技球の入賞を検出すると,賞球制御部303に対して賞球コマンドを出力する。」と記載されているから,引用文献1には,第1始動口105または第2始動口106へ入賞することによりおこなう大当たり抽選をおこなうと,演出制御部302に対して変動開始コマンドを出力し,入賞口への遊技球の入賞を検出すると,賞球制御部303に対して賞球コマンドを出力する主制御部301が記載されているといえる。

(b)上記段落【0058】には「背景画像や演出図柄画像などの画像データは,・・・画像表示部104の表示画面上に・・・表示される。」と記載され,上記段落【0059】には「音声データに基づく音声がスピーカ354から出力される。」と記載されているから,引用文献1には,背景画像や演出図柄画像などの画像データを表示画面上に表示する画像表示部104と,音声データに基づく音声を出力するスピーカ354とが記載されているといえる。

(c)上記段落【0048】には「演出統括部302aは,主制御部301から受信したコマンド(たとえば変動開始コマンド)に基づいて演出制御部302全体を統括する機能を有している。」及び「演出制御部302は,演出統括部302aと,画像・音声制御部302bと,・・・によって構成され,」と記載されているから,引用文献1には,主制御部301から受信したコマンド(たとえば変動開始コマンド)に基づいて演出制御部302全体を統括する機能を有し,演出制御部302に含まれる演出統括部302aが記載されているといえる。

(d)上記段落【0048】には「画像・音声制御部302bは,演出統括部302aからの指示内容に基づいて画像および音声の制御をおこなう機能を有している。」及び「演出制御部302は,演出統括部302aと,画像・音声制御部302bと・・・によって構成され」と記載され,上記段落【0018】には「遊技機100」と記載されているから,引用文献1には,演出統括部302aからの指示内容に基づいて画像および音声の制御をおこなう機能を有し,演出制御部302に含まれる画像・音声制御部302bを備える遊技機100が記載されているといえる。

(e)上記段落【0108】には「・・・時刻設定モード時,演出制御部302は,画像表示部104に時刻設定画面を表示させる・・・」と記載され,上記段落【0104】には「操作部120での操作がなされたときには・・・時刻設定モードとなる(ステップS520)。」及び「このステップS520の実行は,・・・電源スイッチ460を操作する電源投入時に,・・・RAMクリアスイッチ314・・・に加えて,・・・操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)が操作されたときとしてもよい。」と記載され,上記段落【0108】には「演出制御部302は,主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理をおこなう。」と記載され,上記段落【0082】には「演出制御部302は,遊技が一定時間中断されたときには客待ちの画面を表示出力する。」と記載されているので,引用文献1には,演出制御部302は,電源スイッチ460を操作する電源投入時にRAMクリアスイッチ314に加えて,操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)が操作されたときに時刻設定モードとなり,この時刻設定モード時,画像表示部104に時刻設定画面を表示させ,
主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理をおこない,
遊技が一定時間中断されたときには客待ちの画面を表示出力することが記載されているといえる。

(f)上記(d)に示したとおり,引用文献1には遊技機100が記載されている。

上記記載事項(ア)?(カ)及び認定事項(a)?(f)に基づくと,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「a 第1始動口105または第2始動口106へ入賞することによりおこなう大当たり抽選をおこなうと,演出制御部302に対して変動開始コマンドを出力し,入賞口への遊技球の入賞を検出すると,賞球制御部303に対して賞球コマンドを出力する主制御部301と,
b 背景画像や演出図柄画像などの画像データを表示画面上に表示する画像表示部104と,音声データに基づく音声を出力するスピーカ354と,
c 主制御部301から受信したコマンド(たとえば変動開始コマンド)に基づいて演出制御部302全体を統括する機能を有し,演出制御部302に含まれる演出統括部302aと,
d 演出統括部302aからの指示内容に基づいて画像および音声の制御をおこなう機能を有し,演出制御部302に含まれる画像・音声制御部302bを備える遊技機100であって,
e 演出制御部302は,電源スイッチ460を操作する電源投入時にRAMクリアスイッチ314に加えて,操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)が操作されたときに時刻設定モードとなり,この時刻設定モード時,画像表示部104に時刻設定画面を表示させ,
主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理をおこない,
遊技が一定時間中断されたときには客待ちの画面を表示出力する
f 遊技機100。」

4 対比
本願発明と,引用発明1とを対比する。なお,見出しは(a)?(f)とし,本願発明,引用発明1の分説に対応させている。

(a)引用発明1において,「大当たり抽選」は「第1始動口105または第2始動口106へ入賞することによりおこなう」ものであるので,この「第1始動口105または第2始動口106へ入賞すること」は,本願発明の「始動条件」が「成立」することに相当するといえる。してみると,引用発明1における「変動開始コマンド」は,本願発明の「始動条件の成立を契機とした図柄の変動を開始することを示す変動開始コマンド」に相当するといえる。
また,引用発明1において,「主制御部301」は,「演出制御部302に対して変動開始コマンドを出力し」たり,「賞球制御部303に対して賞球コマンドを出力」したりするのであるから,遊技の進行を制御しているといえる。
よって,引用発明1の「主制御部301」は,
本願発明の主制御手段と「遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じて」「始動条件の成立を契機とした図柄の変動を開始することを示す変動開始コマンド」「を含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段」である点で共通する。

(b)引用発明1の「背景画像や演出図柄画像などの画像データを表示画面上に表示する画像表示部104と,音声データに基づく音声を出力するスピーカ354」は,
本願発明の「少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段」に相当する。

(c)引用発明1の「演出制御部302に含まれる演出統括部302a」は,主制御部301から受信したコマンド(たとえば変動開始コマンド)に基づいて演出制御部302全体を統括する機能を有するものである。
また,引用発明1においては,上記「3(d)」に示したとおり,「演出制御部302に含まれる画像・音声制御部302b」は,「演出制御部302に含まれる演出統括部302a」からの指示内容に基づいて画像及び音声の制御を行っているのであるから,画像表示や音出力の内容を変更可能であることは自明なことである。
してみると,引用発明1の「演出制御部302」は,
本願発明の「前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段」の機能を有するといえる。

(d)引用発明1の構成bの「画像表示部104」は,本願発明の「表示手段」に相当するといえる。そして,上記(c)に示したとおり,「演出制御部302に含まれる画像・音声制御部302b」は,「演出制御部302に含まれる演出統括部302a」からの指示内容に基づいて画像の制御を行っているのであるから,表示画像を変更可能であることは自明なことである。
してみると,引用発明1の演出制御部302は,
本願発明の「前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段」に相当するといえる。

(e)引用発明1における「電源スイッチ460を操作する電源投入時」及び「RAMクリアスイッチ314に加えて,操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)」を操作することは,それぞれ本願発明の「当該遊技機の起動時」及び「特定操作を含む所定の操作を行うこと」に相当するといえる。してみると,引用発明1の「電源スイッチ460を操作する電源投入時にRAMクリアスイッチ314に加えて,操作部120(演出ボタン121あるいは十字キー122)が操作されたときに」設定される「時刻設定モード」及び「時刻設定画面」は,それぞれ本願発明の「当該遊技機の起動時の特定操作を含む所定の操作を行うことによってのみ移行するモード」及び「固有の設定画像」に相当するといえる。
そして,引用発明1においては,遊技が一定時間中断されたときには客待ちの画面を表示出力するところ,当該「客待ちの画面を表示出力する」状態は,本願発明の「客待ち状態」に相当するといえる。そして,引用発明1において「時刻設定画面」を表示しているのは,遊技開始にかかるコマンドを受信する前という遊技開始前の段階であるので,当然,客待ちの画面を表示出力する「客待ち状態」に移行する前であるといえる。さらに,引用発明1において電源投入時から当該「客待ち状態」に移行する前には,何らかの初期化処理を経ることは自明なことである。
また,引用発明1においては,上記「主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理」を行うところ,時刻設定モードを強制的に解除したときには当該時刻設定画面の表示をやめ,当該時刻設定画面を視認不能とすることは当業者にとって自明なことといえる。そして,上記「演出用の図柄」は,上記「遊技開始にかかるコマンド」に対応する画像といえる。
したがって,引用発明1の構成eと,本願発明の構成Eとは「前記表示制御手段は,初期化処理を経て客待ち状態に移行する前において,前記表示手段の表示画像として,当該遊技機の起動時の特定操作を含む所定の操作を行うことによってのみ移行するモードに固有の設定画像を表示させているときに,前記演出制御手段」があるコマンドを受信したときに「前記表示手段において前記設定画像を視認不能にすると共に」当該コマンドに対応する画像を表示する点において共通している。

(f)引用発明1の「遊技機100」は,本願発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(f)から,本願発明と引用発明1とは,
[一致点]
「A’遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行に応じて,始動条件の成立を契機とした図柄の変動を開始することを示す変動開始コマンドを含む複数種類のコマンドを生成し得る主制御手段と,
B 少なくとも画像表示と音出力とを実行する演出手段と,
C 前記主制御手段が生成したコマンドを受信し,受信した少なくとも前記主制御手段が生成したコマンドに基づいて,前記演出手段において実行される画像表示又は音出力の内容を変更可能な演出制御手段と,
D 前記演出制御手段の制御に基づいて表示手段の表示画像を変更可能な表示制御手段とを備える遊技機であって,
E’前記表示制御手段は,初期化処理を経て客待ち状態に移行する前において,前記表示手段の表示画像として,当該遊技機の起動時の特定操作を含む所定の操作を行うことによってのみ移行するモードに固有の設定画像を表示させているときに,前記演出制御手段があるコマンドを受信したときに前記表示手段において前記設定画像を視認不能にすると共に当該コマンドに対応する画像を表示する
F 遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1](構成A)
主制御手段が生成し得るコマンドについて,本願発明は「始動入賞コマンド」や「特別遊技開始コマンド」を含むのに対し,
引用発明1ではそれらのコマンドを含むか否か不明である点。

[相違点2](構成E)
設定画像を表示させているときに,前記表示手段において前記設定画像を視認不能にすると共に前記演出制御手段が受信したコマンドに対応する画像を表示させる場合に関し,本願発明は「前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記特別遊技開始コマンドである場合」であるのに対し,
引用発明1ではそのような場合でない点。

5 判断
(1)相違点1について
遊技機の技術分野において,主制御手段が始動入賞コマンドや特別遊技開始コマンドを生成しうるという事項は周知である(以下,この事項を「周知事項1」という。この周知事項1の例として,始動入賞コマンドについては,引用文献2の段落【0067】参照。また特別遊技開始コマンドについては,引用文献3の段落【0047】や引用文献4の段落【0084】段落参照。)。また,遊技機の技術分野において,特別遊技のときに図柄の変動を行わないということは技術常識に属することである(必要であれば,特開2012-130751号公報の段落【0003】や,特開2007-195619号公報の段落【0017】参照。)。
ここで,引用発明1も上記周知事項1も遊技機の技術分野に属するとともに,遊技機の制御のためのコマンドを生成する主制御部を有する点において共通しているといえる。
してみると,引用発明1の主制御部301に,上記周知事項1を適用し,始動入賞コマンドや特別遊技開始コマンドを生成可能とすることとし,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用発明1の演出制御部302は「主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったときには,時刻設定モードを強制的に解除し,画像表示部104に演出用の図柄を表示させる処理」を行うものである。
ここで,遊技機の技術分野において,演出制御手段が特別遊技開始コマンドを受信すると,画像表示を含む演出を実行する事項は周知である(以下,「周知事項2」という。この周知事項2の例として,引用文献3の段落【0043】,【0044】,【0047】-【0049】や引用文献4の段落【0084】参照。)。
引用発明1の遊技開始にかかるコマンドと,周知事項2における特別遊技開始コマンドとは,演出制御手段が受信すると画像表示を行うコマンドである点,及びある種の遊技開始に関するコマンドである点において共通するものである。
してみると,引用発明1における演出制御部302について,上記周知事項2を適用し,時刻設定画像を表示しているときに,演出制御部302が特別遊技開始コマンドを受信すると時刻設定モードを強制解除するとともに,当該特別遊技開始コマンドに基づく演出に関する画像を表示するように構成することで,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易である。

そして,本願発明の効果も,引用発明1,周知事項1,2から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本願発明は,引用発明1及び上記周知事項1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 請求人の主張について
請求人は平成30年1月25日に提出した意見書の「3.特許法29条2項違反について」において,本願発明が解決しようとする課題について「電源投入時の特殊な操作で移行するモードに固有の設定画面を表示しているときは,遊技機は遊技が出来ない状態であるため,特別遊技開始コマンドを演出制御基板が受信することはない。そこで,演出制御基板の外部コマンドインターフェースに接続したパーソナルコンピュータから特別遊技開始コマンドを送ることによって,特別遊技開始コマンドに対する遊技機の動作を確認する確認作業を並行して行うことができる。この作業の際に,特別遊技開始コマンドの受信後も設定画像が表示され続けると,遊技機の動作を確認し難くなり,限られた時間内に必要な確認作業を済ますことができなくなってしまう。」と主張(以下,「主張1」)するとともに,
本願発明と引用発明との相違点について
「(相違点1)本願発明は,設定画像の表示中に特別遊技開始コマンドを受信した場合の処理であるのに対し,引用文献1に記載の発明は,時刻設定モード中に変動開始コマンドを入力があった場合の処理である。本願発明の特別遊技開始コマンドとは,図柄の変動を行わない遊技である特別遊技が開始されたことを示すコマンドである。これに対し,引用文献1の変動開始コマンドとは,大当たり抽選をおこなうと出力されるものであり,特別図柄の変動の開始を示すコマンドである。なお,引用文献1の段落0108には,「主制御部301側から遊技開始にかかるコマンド(たとえば変動開始コマンド等)の入力があったとき」とあるが,引用文献3や引用文献4に記載の周知技術を参照したとしても,この「遊技開始」の遊技が,図柄の変動を行わない特別遊技ではなく,始動条件の成立を契機とした特別図柄の変動であることは明らかである。」という主張(以下,「主張2」)及び
「(相違点2)本願発明は,客待ち状態に移行する前に設定画像の表示中に演出制御手段が特別遊技開始コマンドを受信した場合である。これに対し,引用文献1に記載の発明は,時刻設定モードは電源投入時であり遊技が開始されていないときにおこなわれるものの,時刻設定モードを解除するのは,遊技開始にかかるコマンドを受信した場合である。すなわち,本願発明は,設定画像を表示中の遊技ができない状態において特別遊技開始コマンドを受信した場合の処理であるのに対し,引用文献1に記載の発明は,時刻設定処理の実行中に遊技が開始された場合の処理である点において相違している。
」という主張(以下,「主張3」という。)をしている。

まず,主張1について検討する。
本願の特許請求の範囲の請求項1においては「設定画像」を表示しているときに遊技が可能か否かについての特定はなく,また「演出制御基板の外部コマンドインターフェースに接続したパーソナルコンピュータ」に関する特定事項もない。よって,上記主張1における解決しようとする課題は,本願の特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえないため,当該主張1は採用できない。

次に,主張2について検討する。
上記「4 対比」の[相違点2]にて示したとおり,本願発明と引用発明1とを対比するに,設定画像を表示させているときに,前記表示手段において前記設定画像を視認不能にすると共に前記演出制御手段が受信したコマンドに対応する画像を表示させる場合に関し,本願発明は「前記演出制御手段が受信したコマンドが,前記特別遊技開始コマンドである場合」であるのに対し,引用発明1ではそのような場合でない点において相違するが,上記「5(2)」において示したとおり,引用発明1に周知事項2を適用することにより,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易であるので,上記主張2は採用できない。

次に,主張3について検討する。請求人は,主張3において「本願発明は,設定画像を表示中の遊技ができない状態において特別遊技開始コマンドを受信した場合の処理である」としているが,上記主張1についての検討にて示したとおり,本願の特許請求の範囲の請求項1には,設定画像を表示中に遊技ができるか否かについての特定はないので,当該主張は本願の特許請求の範囲に基づくものではなく,採用できない。

よって,上記主張1?3は,いずれも採用することはできない。

7 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明1及び周知事項1,2から,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-13 
結審通知日 2018-03-20 
審決日 2018-04-11 
出願番号 特願2015-176342(P2015-176342)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 蔵野 いづみ
後藤 順也
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所  

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