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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1340855
審判番号 不服2017-11689  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-04 
確定日 2018-05-31 
事件の表示 特願2015- 58882「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-174845〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月23日の出願であって、平成28年4月13日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年6月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年11月11日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成28年12月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年5月17日付け(発送日:平成29年5月23日)で、平成28年12月6日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年8月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年8月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
所定の音を出力することが可能な音出力部と、遊技の状態に応じて前記音出力部から演出音を出力させる演出音出力手段と、を備え、
開始条件の成立に基づいて所定の遊技を実行し、該所定の遊技の結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
所定の操作部の操作に基づいて、前記音出力部から出力される前記演出音の音量値を所定の音量値に設定する音量値設定手段を備え、
前記遊技の状態には、前記所定の遊技が実行されていない客待ち状態を含み、
前記客待ち状態は、遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間と、前記客待ち演出が実行される第2の期間とを含み、
前記音量値設定手段は、
前記客待ち状態における前記第1の期間中は、前記音量値の設定が可能であり、
前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が制限されることを特徴とする遊技機。」(平成28年6月9日付けの手続補正)
から、
「【請求項1】
A 所定の音を出力することが可能な音出力部と、遊技の状態に応じて前記音出力部から演出音を出力させる演出音出力手段と、を備え、
B 開始条件の成立に基づいて所定の遊技を実行し、該所定の遊技の結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
C 所定の操作部の操作に基づいて、前記音出力部から出力される前記演出音の音量値を所定の音量値に設定する音量値設定手段を備え、
D 前記音量値設定手段は、
D1 遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段と、
D2 遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段と、を有し、
E 前記遊技の状態には、前記所定の遊技が実行されていない客待ち状態を含み、
F 前記客待ち状態は、遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間と、前記客待ち演出が実行される第2の期間とを含み、
G 前記第2音量値設定手段は、
G1 前記客待ち状態における前記第1の期間中は、前記音量値の設定が可能であり、
G2 前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が不能であり、
H 前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定されると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態があり、
I 前記第1操作部が前記複数の操作状態の何れとなっている場合であっても、前記第1の期間において前記第2音量値設定手段が設定可能となる前記音量値の上限値及び下限値が同一であることを特徴とする遊技機。」(平成29年8月4日付けの手続補正)
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Iに分説した。)。

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「音量値設定手段」に関して、「前記音量値設定手段は、遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段と、遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段と、を有し、」とするとともに「前記第2音量値設定手段は、・・・前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が不能であり、」と限定し、「第1操作部」に関して、「前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定されると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態があり、前記第1操作部が前記複数の操作状態の何れとなっている場合であっても、前記第1の期間において前記第2音量値設定手段が設定可能となる前記音量値の上限値及び下限値が同一である」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2014-100290号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力手段から出力される音量を遊技者が調節可能な遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技機の一種であるパチンコ遊技機では、遊技盤に配設した始動入賞口への遊技球の入球を契機に大当りか否かの大当り抽選を行い、その大当り抽選の抽選結果を複数列の図柄を変動させて表示する図柄変動ゲームを実行させることにより導出させている。図柄変動ゲームでは、最終的に確定停止表示された図柄が大当り図柄である場合、遊技者は大当りを認識し得るようになっている。
・・・
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、遊技者によって音声出力手段から出力される音量を調節可能とする一方で、音量調節によって不正行為の発覚を妨げないようにすることができる遊技機を提供することにある。」

(1-b)「【0017】
前枠Y3の左右上部には、各種音声を出力して音声演出を行う音声出力手段としてのスピーカSPが配置されている。スピーカSPは、前枠Y3の裏面に装着されており、該前枠Y3の前面であってスピーカSPの装着部位に対応する部位には図示しない放音孔が複数形成されている。
【0018】
また、上皿Y4の上面には、スピーカSPから出力される音量を遊技者が調節する際に操作可能な音量調節手段としての操作スイッチSSが配設されている。操作スイッチSSが上皿Y4の上面に配設されていることで、操作スイッチSSは、遊技者が操作可能な位置に設けられていることになる。また、操作スイッチSSは、遊技者から見て左側に位置する左操作スイッチSS1と遊技者から見て右側に位置する右操作スイッチSS2によって構成される。左操作スイッチSS1は、音量を小さくしたいときに操作される一方で、右操作スイッチSS2は、音量を大きくしたいときに操作される。」

(1-c)「【0020】
図1に示すように、パチンコ遊技機1の遊技盤10のほぼ中央には、各種の表示装置や各種の飾りを施した表示枠体(センター役物)HWが装着されている。表示枠体HWの略中央には、正面視横長矩形に開口するセット口HWaが形成されており、当該セット口HWaに整合して表示枠体HWには液晶ディスプレイ型の画像表示部GHを有する演出実行手段としての演出表示装置11が装着されている。
【0021】
演出表示装置11には、複数列(本実施形態では3列)の図柄列を変動させて行う図柄変動ゲームを含み、該ゲームに関連して実行される各種の表示演出が画像表示される。本実施形態において演出表示装置11の図柄変動ゲームでは、複数列(本実施形態では3列)の図柄からなる図柄組み合わせを導出する。なお、演出表示装置11の図柄変動ゲームは、表示演出を多様化するための飾り図柄(演出図柄、飾図)を用いて行われる。また、演出表示装置11の左下方には、特別図柄表示装置12が配設されている。特別図柄表示装置12では、複数種類の特別図柄(特図)を変動させて表示する図柄変動ゲーム(特図変動ゲーム)が行われる。特図は、大当りか否かの内部抽選(大当り抽選)の結果を示す報知用の図柄である。また、以下の説明では、特図変動ゲームと飾図による図柄変動ゲームを纏めて、単に「図柄変動ゲーム」と示す場合がある。
【0022】
そして、演出表示装置11には、特別図柄表示装置12の表示結果に応じた表示結果が表示される。具体的に言えば、特別図柄表示装置12に大当りを認識し得る大当り図柄(大当り表示結果)が確定停止表示される場合には、演出表示装置11にも、大当り図柄(大当り表示結果)が確定停止表示される。本実施形態において、飾図による大当り図柄は、全列の図柄が同一図柄となる図柄組み合わせ([222],[777]など)とされている。
・・・
【0025】
また、演出表示装置11の下方には、遊技球の入球口15aを有する始動入賞口15が配設されている。そして、始動入賞口15の奥方には入球した遊技球を検知する始動口スイッチSW1(図3に示す)が配設されている。始動入賞口15は、入球した遊技球を始動口スイッチSW1で検知することにより、図柄変動ゲームの始動条件と予め定めた個数の賞球としての遊技球の払出条件を付与し得る。
【0026】
始動入賞口15の下方には、図示しないアクチュエータ(ソレノイド、モータなど)の作動により開閉動作を行う大入賞口扉17を備えた大入賞口(特別電動役物)18が配設されている。大入賞口18の奥方には、入球した遊技球を検知するカウントスイッチSW2(図3に示す)が配設されている。大入賞口18は、入球した遊技球をカウントスイッチSW2で入球検知することにより、予め定めた個数の賞球としての遊技球の払出条件を付与し得る。大入賞口18は、大当り遊技中に大入賞口扉17の開動作によって開放されることで遊技球の入球が許容される。このため、大当り遊技中、遊技者は、賞球を獲得できるチャンスを得ることができる。」

(1-d)「【0028】
また、本実施形態では、図柄変動ゲームの終了時に大当り遊技が開始されることがないとともに保留記憶数が存在しない(0(零)である)場合、図柄変動ゲームが行われていない状態(変動停止中)となる。すなわち、図柄変動ゲームが途切れている次回の図柄変動ゲームの開始を待機する待機状態となる。待機状態は、一旦生起させると該待機状態中に図柄変動ゲームの始動条件が成立することを終了条件として該終了条件が成立するまで継続される。
【0029】
そして、図9に示すように、本実施形態のパチンコ遊技機1では、待機状態中に該待機状態であることを示すデモンストレーション演出(以下、「デモ演出」と示す)が実行されるようになっている。デモ演出は、パチンコ遊技機1が待機状態であることを、演出表示装置11にて報知し、客寄せ効果を得るための演出である。本実施形態のデモ演出は、第1デモ演出としての待機デモ演出と該待機デモ演出の終了に伴い開始される第2デモ演出としてのタイトルデモ演出とから構成されており、1回の待機デモ演出と1回のタイトルデモ演出とから1回のデモ演出を構成している。なお、待機デモ演出及びタイトルデモ演出には、各演出を実行する演出時間(本実施形態では、待機デモ演出にT2秒、タイトルデモ演出にT3秒)が予め定められている。このため、これらの演出時間により1回のデモ演出を実行する演出時間(T2秒+T3秒)が特定されるようになっている。そして、待機状態が生起されると、該待機状態中に図柄変動ゲームの始動条件が成立するまで、待機デモ演出→タイトルデモ演出→待機デモ演出→タイトルデモ演出の順に、待機デモ演出とタイトルデモ演出とが交互に繰り返し実行される。
【0030】
待機デモ演出は、演出表示装置11でデモ画像(待機画像)を画像表示させる演出内容である。そして、本実施形態のパチンコ遊技機1では、待機状態の生起に伴って直前の図柄変動ゲームで最終的に停止表示されている飾図(図柄組み合わせ)を待機画像としてそのまま表示させた態様で待機デモ演出が実行される。また、タイトルデモ演出は、当該パチンコ遊技機1に設定される演出で登場するキャラクタなどを用いたパチンコ遊技機の宣伝(アピール)画像を画像表示(動画)させる演出内容である。
【0031】
次に、図3を参照して、パチンコ遊技機の制御構成について説明する。
パチンコ遊技機1の機裏側には、遊技場の電源(例えば、AC24V)を、パチンコ遊技機1を構成する各種構成部材に供給する電源基板28が装着されている。また、パチンコ遊技機1の機裏側には、パチンコ遊技機1全体を制御する主制御基板30が装着されている。主制御基板30は、パチンコ遊技機1全体を制御するための各種処理を実行し、該処理結果に応じて遊技を制御するための各種制御信号(制御コマンド)演算処理し、該制御信号を出力する。また、パチンコ遊技機1の機裏側には、統括制御基板31が装着されている。統括制御基板31は、主制御基板30が出力した制御信号に基づき、表示制御基板32やスピーカSPの音声出力態様を制御する。表示制御基板32は、主制御基板30と統括制御基板31が出力した制御コマンドに基づいて、演出表示装置11の表示態様(表示内容)を制御する。」

(1-e)「【0049】
また、統括制御用CPU31aには、音量設定手段としてのアナログボリュームスイッチASと、スピーカSPと、操作スイッチSSが接続されている。アナログボリュームスイッチASは、回動式である。また、アナログボリュームスイッチASは、外枠Y1に対して中枠Y2を閉成した状態(遊技を行い得る状態)では、遊技者の手が届かない前枠Y3の後ろ側に配置されており、遊技者が操作不能である。すなわち、アナログボリュームスイッチASは、遊技店の店員によって中枠Y2を外枠Y1に対して開放することで操作可能となるものであって、遊技店の店員のみが操作可能となっている。そして、アナログボリュームスイッチASを回動することで、スピーカSPから出力される音量を複数段階でデフォルト値として設定可能に構成される。」

(1-f)「【0092】
次に、音量調節を行うために統括制御用CPU31aが実行する制御内容について説明する。
統括制御用ROM31bには、統括制御用CPU31aからスピーカSPに出力されるべき音量信号が示す音量が音量値として記憶されている。
【0093】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、アナログボリュームスイッチASによって設定可能な音量値として「1」?「10」までの10段階の音量値が統括制御用ROM31bに記憶されている。音量値は、「1」が最小(消音)であって、数値が上昇する度に音量が段階的に大きくなり、「10」で最大となるように設定される。以下、アナログボリュームスイッチASによって設定される音量値を「アナログ音量値」と示す。そして、図6に示すように、アナログボリュームスイッチASは、回動して「1」?「10」のうちいずれかの位置に位置決めし得るように構成されている。」

(1-g)「【0096】
また、統括制御用CPU31aは、アナログボリュームスイッチASが回動されていずれかのアナログ音量値が選択されると、選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の細分音量値のうち予め定めた細分音量値を、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値として設定するようになっている。なお、「N-d1(N:3?10)」が、各アナログ音量値における最小値である一方、「N-d10(N:3?10)」が、各アナログ音量値における最大値である。」

(1-h)「【0106】
そして、統括制御用CPU31aは、前述した条件下でなく、かつ待機デモ演出の実行中に操作スイッチSSの操作が行われた場合に特定条件が成立したと判定し、操作スイッチSSの操作を反映した音量調節を実行可としている。詳しくは、操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節が行われる。なお、待機デモ演出中に調節された音量は、タイトルデモ演出を介して、再度、待機デモ演出に移行した場合、デフォルト値に戻るように設定されている。つまり、待機デモ演出の演出時間T2とタイトルデモ演出の演出時間T3を加算した時間(T2秒+T3秒)の経過時に、再度、デフォルト値が設定されるようになっている。」

(1-i)「【0127】
その後、スピーカSPによるRAMクリアが行われたことの報知が終了すると、時点j2に示すように、待機状態が開始され、最初に待機デモ演出が開始される。そして、待機デモ演出の開始に伴い、操作スイッチSSの操作有効期間が設定される。このとき、演出表示装置11では、図10に示すようなメータM及び操作画像SGが表示されるとともに、操作スイッチSSに内蔵された発光体が点灯する。よって、遊技者は、演出表示装置11の表示内容や操作スイッチSSの態様から、操作スイッチSSの操作が有効となっていることを認識する。
・・・
【0129】
その後、待機デモ演出中に始動入賞口15に遊技球が入球せず、時間T2が経過すると、待機デモ演出が終了するとともに操作有効期間も終了し、時点j3に示すようにタイトルデモ演出が開始される。タイトルデモ演出中は、待機デモ演出中に設定された音量で音声演出が実行される。ただし、タイトルデモ演出中は、操作スイッチSSの操作有効期間は設定されず、演出表示装置11では、操作画像SGやメータMは表示されない。また、操作スイッチSSに内蔵された発光体も点灯しない。よって、遊技者は、演出表示装置11の表示内容や操作スイッチSSの態様から、タイトルデモ演出中は、操作スイッチSSの操作が無効となっていることを認識する。」

(1-j)段落【0096】には、「アナログボリュームスイッチASが回動されていずれかのアナログ音量値が選択されると、選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の細分音量値のうち予め定めた細分音量値を、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値として設定するようになっている。なお、「N-d1(N:3?10)」が、各アナログ音量値における最小値である一方、「N-d10(N:3?10)」が、各アナログ音量値における最大値である。」と記載されている。
また、図7には、アナログ音量値10の場合における、細分音量値の最小値「10-d1」は「16」で最大値「10-d10」は「25」であり、アナログ音量値6の場合における、細分音量値の最小値「6-d1」は「12」で最大値「6-d10」は「21」であり、アナログ音量値に応じて、細分音量値の最大値と最小値が異なることが示されている。
そして、段落【0127】には、「待機デモ演出の開始に伴い、操作スイッチSSの操作有効期間が設定される。・・・遊技者は、演出表示装置11の表示内容や操作スイッチSSの態様から、操作スイッチSSの操作が有効となっていることを認識する。」と記載され、段落【0106】には、「操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節が行われる。」と記載されている
よって、刊行物1には、アナログボリュームスイッチASで選択されたアナログ音量値に応じて、待機デモ演出が実行される期間において、操作スイッチSSの操作により設定される細分音量値の最大値と最小値が異なる点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-i)の記載事項及び(1-j)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「a 各種音声を出力して音声演出を行うスピーカSPと、主制御基板30が出力した遊技を制御するための制御信号に基づきスピーカSPの音声出力態様を制御する統括制御基板31と、を備え(段落【0017】、【0031】)、
b 入球した遊技球を始動口スイッチSW1で検知することにより、図柄変動ゲームが行われ、大当り図柄が確定停止されると大当り遊技中、遊技者は賞球を獲得できるチャンスを得るパチンコ遊技機1において(段落【0020】?【0026】)、
c アナログボリュームスイッチASと、スピーカSPと、操作スイッチSSが接続され、アナログボリュームスイッチASを回動することで、スピーカSPから出力される音量を複数段階に設定可能に構成される統括制御用CPU31aを備え(段落【0049】)、
d 前記統括制御用CPU31aは、
d1 遊技店の店員によって操作可能なアナログボリュームスイッチASが回動されていずれかのアナログ音量値が選択されると、選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の細分音量値のうち予め定めた細分音量値を、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値として設定する機能と(段落【0049】、【0096】)、
d2 遊技者が操作可能な操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節が行われる機能と、を有し(段落【0017】、【0106】)、
e 遊技の状態には、図柄変動ゲームが途切れており次回の図柄変動ゲームの開始を待機する待機状態を含み(段落【0028】)、
f 前記待機状態には、待機状態の生起に伴って直前の図柄変動ゲームで最終的に停止表示されている飾図(図柄組み合わせ)を待機画像としてそのまま表示させた態様で待機デモ演出が実行される期間と、待機デモ演出の終了に伴い開始され、キャラクタなどを用いたパチンコ遊技機の宣伝(アピール)画像を画像表示(動画)させるタイトルデモ演出が実行される期間とを含み(段落【0029】、【0030】)、
g 前記統括制御用CPU31aは(段落【0106】)、
待機状態が開始され、待機デモ演出の開始に伴い、操作スイッチSSの操作有効期間を設定し、操作スイッチSSの操作を有効とし(段落【0127】)、
待機デモ演出が終了すると、タイトルデモ演出が開始され、タイトルデモ演出中は、操作スイッチSSの操作有効期間を設定せず、操作スイッチSSの操作を無効とし(段落【0129】)、
h 前記アナログボリュームスイッチASは、統括制御用CPU31aからスピーカSPに出力される音量値として「1」(消音)?「10」までの10段階のアナログ音量値が設定可能であると共に、回動して「1」(消音)?「10」のうちいずれかの位置に位置決めし得るように構成されており(段落【0092】、【0093】)、
i アナログボリュームスイッチASで選択されたアナログ音量値に応じて、待機デモ演出が実行される期間において、操作スイッチSSの操作により設定される細分音量値の最大値と最小値が異なるパチンコ遊技機1(認定事項(1-j))。」

(2)刊行物2
平成28年4月13日付けの拒絶理由通知で引用された特開2015-13040号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0129】
そして、遊技盤108には、遊技の進行中等に演出を行う演出装置として、液晶表示装置からなる演出表示装置200、可動装置からなる演出役物装置202、さまざまな点灯態様や発光色に制御されるランプからなる演出照明装置204、スピーカからなる音声出力装置206、遊技者の操作を受け付ける演出操作装置208が設けられている。」

(2-b)「【0153】
上記の各基板は、遊技盤108の背面に固定されており、通常、遊技者が接触不可能となっている。また、遊技盤108の背面には、音声出力装置206から出力される出力音声の初期音量を設定する初期音量設定スイッチ210sが設けられている。詳しくは後述するが、初期音量設定スイッチ210sは、音量スイッチSW0?7を備えており、これら音量スイッチSW0?7それぞれから出力されるオンオフ信号が副制御基板330に入力される。」

(2-c)「【0494】
(音量の設定)
図55は、初期音量レベルおよび音量レベル調整可能範囲について説明する図である。既に説明したように、初期音量設定スイッチ210sは、音量スイッチSW0?7の8つのスイッチで構成され、いずれの音量スイッチSWがオンしているかに応じて、初期音量レベルが設定される。初期音量レベルは、図示のように、0?7の8段階設けられているが、消音もしくは相対的に小音量となる初期音量レベル0?2は、主に設計開発時に設定されることを想定し、相対的に大音量となる初期音量レベル3?7は、通常の遊技時に設定されることを想定している。
【0495】
そして、遊技機100の電源を投入すると、そのときにオンしている音量スイッチSWに応じた音量レベルに設定(初期設定)され、このとき設定された音量レベルにしたがって、音声出力装置206から音声が出力される。一方で、本実施形態の遊技機100においては、遊技の行われていない待機状態、すなわち、客待ち状態であるときに、演出操作装置208の回転操作部を回転させて音量変更操作をすることで、出力音声の音量を調整、変更することができる。
【0496】
ただし、音量変更操作によって変更可能な音量レベルの範囲、すなわち、音量レベル調整可能範囲は、初期音量設定スイッチ210sによって設定されている初期音量レベルに応じて異なる。具体的には、音量スイッチSW0?2がオンしている場合、つまり、初期音量レベルが0?2の場合には、音量変更操作によって、通常の演出音声、下皿134の満タン状態をはじめとする所定の異常状態を報知するエラー音声、磁気検知や扉開放等の異常があることを報知する異常検知音声のいずれに対しても、音量レベル0?7の範囲で調整、変更が可能となっている。
【0497】
なお、本実施形態では、遊技の進行に影響を及ぼす異常や不正行為の可能性がある異常状態として、相対的に警戒レベルの高い第1異常状態と、相対的に警戒レベルの低い第2異常状態とを区別している。具体的には、異常検知センサ174から検知信号が出力された場合、より詳細には、電波、磁気、扉の開放を検知する各種の検知信号が異常検知センサ174から出力された場合や、主制御基板300におけるエラー処理において、一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122、大入賞口128等への異常入賞や不正入賞の判定がなされた場合には、警戒レベルの高い第1異常状態と判定し、異常検知音声を出力する。これに対して、皿満タン検出スイッチ318sから皿満タン検知信号が出力された場合には、警戒レベルの低い第2異常状態と判定し、エラー音声を出力する。
【0498】
そして、音量スイッチSW3?7がオンしている場合、つまり、初期音量レベルが3?7の場合には、音量変更操作によって、通常の演出音声およびエラー音声に対して、音量レベル3?7の範囲でのみ調整、変更が可能であり、音量レベル0?2に調整、変更することはできない。また、異常検知音声については、初期音量レベルおよび音量変更操作後の設定音量レベルに拘わらず、常に、調整可能範囲よりも大音量である音量レベル8に設定され、この音量レベルを変更することはできない。
【0499】
以上のように、本実施形態の遊技機100においては、演出操作装置208から音量変更操作が入力された際に、初期音量が予め定められた閾値以上に設定されている場合(初期音量レベル≧3)には、当該音量変更操作に応じて、出力音声の設定音量を第1の範囲内(音量レベル≧3)で変更し、初期音量が閾値未満に設定されている場合(初期音量レベル<3)には、当該音量変更操作に応じて、出力音声の設定音量を、第1の範囲内よりも広い第2の範囲内(音量レベル≧0)で変更する。
【0500】
これにより、遊技機100の設計、開発段階では、初期音量レベルを0?2の範囲で設定しておくことで、容易に音量レベルを変更することが可能となり、出力音声の確認、検証を、各音量レベルで適宜行うことができる。」

上記(2-a)?(2-c)の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2記載の事項」という。)。

「遊技者の操作を受け付ける演出操作装置208と、通常、遊技者が接触不可能となっている初期音量設定スイッチ210sとが設けられ(段落【0129】、【0153】)、
初期音量設定スイッチ210sは、音量スイッチSW0?7の8つのスイッチで構成され、いずれの音量スイッチSWがオンしているかに応じて、初期音量レベルが設定され(段落【0494】)、
初期音量設定スイッチ210sの音量スイッチSW0?2は、主に設計開発時に設定することを想定し、音量スイッチSW3?7は、通常の遊技時に設定されることを想定し(段落【0494】、【0496】、【0498】)、
客待ち状態であるときに、演出操作装置208の回転操作部を回転させて出力音声の音量を調整、変更することができるものであり(段落【0495】)、
初期音量設定スイッチ210sの音量スイッチSW3?7がオンしている場合は、初期音量レベルが3?7であり、演出操作装置208からの音量変更操作によって、音量レベル3?7の範囲でのみ調整、変更が可能である遊技機100(段落【0498】、【0499】)。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(i)は、刊行物1発明の構成a?iに対応している。)。

(a)刊行物1発明の「スピーカSP」、「統括制御基板31」は、それぞれ、本願補正発明の「音出力部」、「演出音出力手段」に相当する。また、刊行物1発明においては、「主制御基板30が出力した遊技を制御するための制御信号に基づきスピーカSPの音声出力態様を制御する」から、遊技状態に応じて演出音を出力するといえる。
よって、刊行物1発明の「各種音声を出力して音声演出を行うスピーカSPと、主制御基板30が出力した遊技を制御するための制御信号に基づきスピーカSPの音声出力態様を制御する統括制御基板31」は、本願補正発明の「所定の音を出力することが可能な音出力部と、遊技の状態に応じて前記音出力部から演出音を出力させる演出音出力手段」に相当する。

(b)刊行物1発明の「入球した遊技球を始動口スイッチSW1で検知すること」は、本願補正発明の「開始条件の成立」に相当する。
また、刊行物1発明の「図柄変動ゲーム」は、本願補正発明の「所定の遊技」に相当し、刊行物1発明の「遊技者は賞球を獲得できるチャンスを得る」ことは、本願補正発明の「遊技者に遊技価値を付与」することに相当する。
よって、刊行物1発明の「入球した遊技球を始動口スイッチSW1で検知することにより、図柄変動ゲームが行われ、大当り図柄が確定停止されると大当り遊技中、遊技者は賞球を獲得できるチャンスを得るパチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「開始条件の成立に基づいて所定の遊技を実行し、該所定の遊技の結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機」に相当する。

(c)刊行物1発明の「アナログボリュームスイッチAS」、「統括制御用CPU31a」は、それぞれ、本願補正発明の「所定の操作部」、「音量値設定手段」に相当する。
よって、刊行物1発明の「アナログボリュームスイッチASと、スピーカSPと、操作スイッチSSが接続され、アナログボリュームスイッチASを回動することで、スピーカSPから出力される音量を複数段階に設定可能に構成される統括制御用CPU31a」は、本願補正発明の「所定の操作部の操作に基づいて、前記音出力部から出力される前記演出音の音量値を所定の音量値に設定する音量値設定手段」に相当する。

(d)刊行物1発明の「アナログボリュームスイッチAS」、「操作スイッチSS」は、それぞれ、本願補正発明の「第1操作部」、「第2操作部」に相当する。
また、刊行物1発明の構成cより「アナログボリュームスイッチASを回動することで、スピーカSPから出力される音量を複数段階に設定可能」であるから、アナログボリュームスイッチASの操作に基づいて、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値を複数の中のいずれかに設定することは明らかである。
よって、刊行物1発明の「遊技店の店員によって操作可能なアナログボリュームスイッチASが回動されていずれかのアナログ音量値が選択されると、選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の細分音量値のうち予め定めた細分音量値を、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値として設定する機能」は、本願補正発明の「遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段」に相当する。
そして、刊行物1発明においては、上記のとおり「アナログボリュームスイッチAS」によりアナログ音量値におけるデフォルト値が設定されるから、刊行物1発明の「遊技者が操作可能な操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節」を行うことは、アナログボリュームスイッチASにより選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値を、操作スイッチSSによりd1?d10の範囲で音量調節することを意味するものと解される。
よって、刊行物1発明の「遊技者が操作可能な操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節が行われる機能」は、本願補正発明の「遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段」に相当する。
以上のことから、刊行物1発明の「前記統括制御用CPU31aは、遊技店の店員によって操作可能なアナログボリュームスイッチASが回動されていずれかのアナログ音量値が選択されると、選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の細分音量値のうち予め定めた細分音量値を、選択されたアナログ音量値におけるデフォルト値として設定する機能と、遊技者が操作可能な操作スイッチSSの操作を反映して、アナログボリュームスイッチASの操作によって選択されたアナログ音量値を構成するd1?d10の範囲で音量調節が行われる機能と、を有」する点は、本願補正発明の「前記音量値設定手段は、遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段と、遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段と、を有」する点に相当する。

(e)刊行物1発明の「待機状態」は、本願補正発明の「客待ち状態」に相当する。また、刊行物1発明の「次回の図柄変動ゲーム」は、本願補正発明の「所定の遊技」に相当する。
よって、刊行物1発明の「遊技の状態には、図柄変動ゲームが途切れており次回の図柄変動ゲームの開始を待機する待機状態を含」む点は、本願補正発明の「前記遊技の状態には、前記所定の遊技が実行されていない客待ち状態を含」む点に相当する。

(f)刊行物1発明の「キャラクタなどを用いたパチンコ遊技機の宣伝(アピール)画像を画像表示(動画)させるタイトルデモ演出」は、本願補正発明の「遊技を促すための客待ち演出」に相当する。
そして、刊行物1発明の「タイトルデモ演出」は、待機デモ演出の終了に伴い開始されるから、待機デモ演出においてはタイトルデモ演出は実行されないといえる。
よって、刊行物1発明の「待機状態の生起に伴って直前の図柄変動ゲームで最終的に停止表示されている飾図(図柄組み合わせ)を待機画像としてそのまま表示させた態様で待機デモ演出が実行される期間」は、本願補正発明の「遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間」に相当する。
また、刊行物1発明の「待機デモ演出の終了に伴い開始され、キャラクタなどを用いたパチンコ遊技機の宣伝(アピール)画像を画像表示(動画)させるタイトルデモ演出が実行される期間」は、本願補正発明の「前記客待ち演出が実行される第2の期間」に相当する。
以上のことから、刊行物1発明の「前記待機状態には、待機状態の生起に伴って直前の図柄変動ゲームで最終的に停止表示されている飾図(図柄組み合わせ)を待機画像としてそのまま表示させた態様で待機デモ演出が実行される期間と、待機デモ演出の終了に伴い開始され、キャラクタなどを用いたパチンコ遊技機の宣伝(アピール)画像を画像表示(動画)させるタイトルデモ演出が実行される期間とを含」む点は、本願補正発明の「前記客待ち状態は、遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間と、前記客待ち演出が実行される第2の期間とを含」む点に相当する。

(g)刊行物1発明の構成d、d2より、「統括制御用CPU31a」は、遊技者が操作可能な操作スイッチSSの操作を反映して、音量調節が行われる機能(第2音量設定手段)を有している。
また、刊行物1発明の「操作スイッチSSの操作を有効」とする点は、本願補正発明の「音量値の設定が可能であ」る点に相当し、刊行物1発明の「操作スイッチSSの操作を無効」とする点は、本願補正発明の「音量値の設定が不能であ」る点に相当する。
よって、刊行物1発明の「前記統括制御用CPU31aは、待機状態が開始され、待機デモ演出の開始に伴い、操作スイッチSSの操作有効期間を設定し、操作スイッチSSの操作を有効とし、待機デモ演出が終了すると、タイトルデモ演出が開始され、タイトルデモ演出中は、操作スイッチSSの操作有効期間を設定せず、操作スイッチSSの操作を無効と」する点は、本願補正発明の「前記第2音量値設定手段は、前記客待ち状態における前記第1の期間中は、前記音量値の設定が可能であり、前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が不能であ」る点に相当する。

(h)刊行物1発明の「スピーカSPに出力される音量値」である「1」(消音)は、可聴音量で出力されるものではないが、それ以外の「2」?「10」は可聴音量で出力されるものといえる。
また、刊行物1発明において、アナログボリュームスイッチASを回動して「1」?「10」のうちいずれかの位置のアナログ音量値において、操作スイッチSSにより音量値を設定する機能(第2音量設定手段)を有していることは明らかである。
そうすると、刊行物1発明の「前記アナログボリュームスイッチASは、統括制御用CPU31aからスピーカSPに出力される音量値として「1」(消音)?「10」までの10段階のアナログ音量値が設定可能であると共に、回動して「1」(消音)?「10」のうちいずれかの位置に位置決めし得るように構成され」る点と、本願補正発明の「前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定されると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態があ」る点とは、「前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかに設定可能であると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態があ」る点で共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「A 所定の音を出力することが可能な音出力部と、遊技の状態に応じて前記音出力部から演出音を出力させる演出音出力手段と、を備え、
B 開始条件の成立に基づいて所定の遊技を実行し、該所定の遊技の結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
C 所定の操作部の操作に基づいて、前記音出力部から出力される前記演出音の音量値を所定の音量値に設定する音量値設定手段を備え、
D 前記音量値設定手段は、
D1 遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段と、
D2 遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段と、を有し、
E 前記遊技の状態には、前記所定の遊技が実行されていない客待ち状態を含み、
F 前記客待ち状態は、遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間と、前記客待ち演出が実行される第2の期間とを含み、
G 前記第2音量値設定手段は、
G1 前記客待ち状態における前記第1の期間中は、前記音量値の設定が可能であり、
G2 前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が不能であり、
H’ 前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかに設定可能であると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態がある遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定される」のに対して、刊行物1発明は、「アナログボリュームスイッチAS」が設定可能な音量値として「1」(消音)を含む点。(構成H)

[相違点2]
本願補正発明は、「前記第1操作部が前記複数の操作状態の何れとなっている場合であっても、前記第1の期間において前記第2音量値設定手段が設定可能となる前記音量値の上限値及び下限値が同一である」のに対し、
刊行物1発明は、「アナログボリュームスイッチASで選択されたアナログ音量値に応じて、待機デモ演出が実行される期間において、操作スイッチSSの操作により設定される細分音量値の最大値と最小値が異なる」点。(構成I)

(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
刊行物2記載の事項においては、本願発明の「第1操作部」に対応する構成である「初期音量設定スイッチ210s」と、本願補正発明の「第1音量設定手段」に対応する構成である「初期音量設定スイッチ210sは、音量スイッチSW0?7の8つのスイッチで構成され、いずれの音量スイッチSWがオンしているかに応じて、初期音量レベルが設定され」る機能とを有している。
また、刊行物2記載の事項において「音量スイッチSW0?2は、主に設計開発時に設定することを想定し、音量スイッチSW3?7は、通常の遊技時に設定されることを想定し」ているから、客待ち状態を含む通常の遊技時に設定されるのは、音量スイッチSW3?7のみであり、「音量スイッチSW3?7がオンしている場合は、初期音量レベルが3?7」であるから、通常の遊技時においては、初期音量設定スイッチ210sによりすべて可聴音量に設定されているといえる。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、共に遊技店員が操作可能な操作部と、遊技者が操作可能な操作部と、を有する遊技機であると共に、客待ち状態であるときに音量調整可能な遊技機である点で共通するものである。
よって、刊行物1発明における構成hの音量値として「1」(消音)?「10」までの10段階のアナログ音量値が設定可能であるアナログボリュームスイッチASに代えて、刊行物2記載の事項の構成を採用し、可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定されるようにし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
刊行物2記載の事項においては、本願補正発明の「第1操作部」に対応する構成である「初期音量設定スイッチ210s」と、本願補正発明の「第2音量設定手段」に対応する構成である「演出操作装置208からの音量変更操作によって」「調整、変更が可能である」機能とを有している。
また、刊行物2記載の事項には「音量スイッチSW3?7がオンしている場合は、演出操作装置208からの音量変更操作によって、音量レベル3?7の範囲でのみ調整、変更が可能である」と記載されているから、通常の遊技時に設定される音量スイッチが、SW3?7の何れの状態となっている場合であっても、演出操作装置208からの音量変更操作によって設定可能となっている音量レベルは3?7の範囲のみであり、音量レベルの上限値及び下限値は同一であるといえる。
そして、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、共に遊技店員が操作可能な操作部と、遊技者が操作可能な操作部と、を有する遊技機であると共に、客待ち状態であるときに音量調整可能な遊技機である点で共通するものである。
よって、刊行物1発明における構成iの「操作スイッチSSの操作により設定される細分音量値の最大値と最小値が異なる」構成に代えて、刊行物2記載の事項の構成を採用し、操作スイッチSSが設定可能となる前記音量値の上限値及び下限値が同一であるように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1、2によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「本願発明では、客待ち演出が実行される第2の期間中は、第2操作部の操作による音量値の設定が不能である一方、客待ち演出が実行されない第1期間中は、第1操作部が複数の操作状態の何れとなっている場合でも同一の上限値及び下限値の範囲内で音量値の設定が可能となるのに対し、引用文献1?2では、そのようになっていない点で相違します。
本願発明では、上記相違点を備えたことで、客待ち演出が実行される第2の期間においては、音量調整によって客待ち演出が阻害されなくなる一方で、客待ち演出が実行されない第1の期間においては、遊技機毎の差がない音量調整ができるようになります。」(第5頁第18?26行)と主張する。
しかしながら、上記イで検討したとおり、第1操作部が複数の操作状態の何れとなっている場合でも同一の上限値及び下限値の範囲内で音量値の設定が可能となる点は、刊行物2記載の事項に記載されているといえるから、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、 当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年6月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
所定の音を出力することが可能な音出力部と、遊技の状態に応じて前記音出力部から演出音を出力させる演出音出力手段と、を備え、
開始条件の成立に基づいて所定の遊技を実行し、該所定の遊技の結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
所定の操作部の操作に基づいて、前記音出力部から出力される前記演出音の音量値を所定の音量値に設定する音量値設定手段を備え、
前記遊技の状態には、前記所定の遊技が実行されていない客待ち状態を含み、
前記客待ち状態は、遊技を促すための客待ち演出が実行されない第1の期間と、前記客待ち演出が実行される第2の期間とを含み、
前記音量値設定手段は、
前記客待ち状態における前記第1の期間中は、前記音量値の設定が可能であり、
前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が制限されることを特徴とする遊技機。」

2 刊行物
刊行物1及びその記載事項、並びに刊行物1発明は、上記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「音量値設定手段」に関して、「前記音量値設定手段は、遊技店員が操作可能な第1操作部の操作に基づいて、前記演出音の音量値を複数の音量値の何れかに設定する第1音量値設定手段と、遊技者が操作可能な第2操作部の操作に基づいて、前記第1音量値設定手段によって設定された前記音量値を所定の音量値に設定する第2音量値設定手段と、を有し、」との限定を省くとともに「前記第2音量値設定手段は、・・・前記客待ち状態における前記第2の期間中は、前記音量値の設定が不能であり、」における「第2」を省き「不能であり」を「制限される」の記載に戻し、「第1操作部」に関して、「前記第1操作部には、前記第1音量値設定手段によって前記演出音が可聴音量で出力される複数の音量値の何れかが設定されると共に、前記第2音量値設定手段による前記音量値の設定が可能となる複数の操作状態があり、前記第1操作部が前記複数の操作状態の何れとなっている場合であっても、前記第1の期間において前記第2音量値設定手段が設定可能となる前記音量値の上限値及び下限値が同一である」との限定を省くものである。
そして、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、全ての構成において一致し、相違点はない。また、仮に相違点があったとしても、当業者が容易になし得たものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-28 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2015-58882(P2015-58882)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 平城 俊雅
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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