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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C22C |
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管理番号 | 1340859 |
審判番号 | 不服2017-12429 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-22 |
確定日 | 2018-06-19 |
事件の表示 | 特願2013- 65257「鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 6日出願公開、特開2014-189822、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年 3月26日の出願であって、平成28年11月 8日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月26日付けで、意見書の提出及び手続補正がされ、平成29年 5月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年 8月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月12日に前置報告がされ、同年11月13日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年 5月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (サポート要件)請求項1、3、5、7に係る発明は、P、S、Al、Oの含有割合が特定されておらず、発明の詳細な説明に記載したものではないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6条第1号に規定する要件に適合しない。 第3 本願発明 本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年 8月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項2】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.05%以下、O:0.0100%以下を含有し残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項3】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、Ni:0.04?0.40%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項4】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.05%以下、O:0.0100%以下、Ni:0.04?0.40%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項5】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満を含有し、さらにTi、Nb、Ta、Zrのうちの1種又は2種以上を0.01?0.30%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり 、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項6】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.05%以下、O:0.0100%以下を含有し、さらにTi、Nb、Ta、Zrのうちの1種又は2種以上を0.01?0.30%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項7】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、Ni:0.04?0.40%を含有し、さらにTi、Nb、Ta、Zrのうちの1種又は2種以上を0.01?0.30%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。 【請求項8】 質量%で、C:0.20?0.40%、Si:0.2?1.0%、Mn:1.0%以下、Cr:12.0?15.0%、Mo+W/2:0.4%以下、V:0.1?1.0%未満、N:100ppm未満、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.05%以下、O:0.0100%以下、Ni:0.04?0.40%を含有し、さらにTi、Nb、Ta、Zrのうちの1種又は2種以上を0.01?0.30%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下であり、該鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下であり、さらに該鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下であることを特徴とする鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼。」 第4 当審の判断 明細書のサポート要件適合性について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、上記の観点に立って、本願発明1?8について検討することとする。 (1)本願発明1?8が解決しようとする課題 ア 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与した。以下同様。 「【0008】 本発明が解決しようとする課題は、プラスチック成形用金型用鋼としての新規な化学成分からなる鋼を得て、この鋼に析出して含有される炭化物や炭窒化物における、炭窒化物の粒径、鋼材の圧延方向と平行な面(以下、圧延面と呼ぶ)の100μm平方当たりの炭化物数、圧延面の300μm平方中における50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差を、一定の範囲とすることで鏡面性の高い耐食性の新規のプラスチック成形金型用鋼を提供することである。」 イ 前記アによれば、本願発明1?8の解決すべき課題(以下、単に「課題」という。)は、「鏡面性の高い耐食性の新規のプラスチック成形金型用鋼を提供すること」である。 (2)本願発明1?8の課題を解決できると認識できる範囲 ア 発明の詳細な説明には、以下の記載もある。 (ア)「【発明の効果】 【0017】 本発明は、上記の手段としたことで、光ディスクなどのように高い表面平滑度を必要とするプラスチック製品を成形する金型あるいは工具として活用できる、鏡面性が高く耐食性に優れたプラスチック成形金型用鋼であり、本発明のプラスチック成形金型用鋼は、鋼材面における炭窒化物の粒径が小さく鏡面に研磨時にこれらの炭窒化物の滑落による孔が生じることなく、圧延面の100μm平方当たりの炭化物数が少なくその部分に微差な凹凸の多量の発生なく、さらに圧延面の300μm平方中における50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が少ないので最小部が研磨され易くなることなく鏡面にうねりを生じることが無いなどの優れた効果を有する。」 (イ)「【0019】 C:0.20?0.40% Cは、固溶強化による硬さ、耐摩耗性の向上および焼入性を高めるために必要な元素であり、このためには0.20%以上が必要である。しかし、Cが0.40%を超えると粗大な炭化物を形成し、金型用鋼の鏡面性を悪化し、耐食性を低下する。そこで、Cは0.20?0.40%とする。」 「【0022】 Cr:12.0?15.0% Crは、不働態を形成し、耐食性を向上させるとともに焼入れ性を高める元素である。このためには、Crは12.0%以上が必要である。しかし、Crが15.0%を超えると粗大な炭化物を形成し、金型用鋼の鏡面性を悪化する。そこで、Crは12.0?15.0%とする。」 (ウ)「【0026】 P:0.030%以下 Pは、結晶粒界へ偏析し、靱性を低下する。そこで、Pは0.030%以下とする。 【0027】 S:0.010%以下、望ましくは0.0050%以下 Sは、硫化物を形成し、鏡面性を悪化し、さらに靱性および熱間加工性を悪化する。そこで、Sは0.010%以下、望ましくは0.0050%以下とする。 【0028】 Al:0.05%以下、望ましくは0.03%以下 Alは、酸化物や窒化物を形成し、鏡面性を悪化する。そこで、Alは0.05%以下、望ましくは0.03%以下とする。 【0029】 O:0.0100%以下、望ましくは0.0050%以下 Oは、他の金属元素と酸化物を形成し、鏡面性を悪化する。そこで、Oは0.0100%以下、望ましくは0.0050%以下とする。」 (エ)「【0033】 炭窒化物粒径:5μm以下、望ましくは4μm以下 炭窒化物粒径は、粗大であると研磨時に鋼面から欠落して孔を形成し、鏡面性を低下する。そこで、炭窒化物粒径は5μm以下、望ましくは4μm以下とする。 【0034】 鋼材の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数:160個以下 鋼材の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数は、多すぎるとその部分で微細難凹凸が多量に発生する。そこで、鋼材の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数は160個以下とする。 【0035】 鋼材の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差:30個以下 鋼材の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最小部の数の差は、大きいと、最小部が研磨されやすいので鏡面にうねりが生じることとなる。そこで、鋼材の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差は30個以下とする。」 (オ)「【0036】 さらに、本発明の実施の形態について、表を参照して以下に順次説明するものとする。先ず、本が発明に係る鋼において、高鏡面性が得られるような炭化物析出状態を実現する方法として、例えば、次の(1)および(2)のような製造方法が好適に適用できる。 【0037】 (1)本発明の鋼の化学成分からなる鋳造材を再溶融して2次溶解し、再凝固させる製造方法であり、一般的には、真空アーク再溶解法(VAR)やエレクトロスラグ再溶解法(ESR)によって2次溶解して再凝固させる。すなわち、この方法では、2次溶解により、再溶解後の凝固が短時間で行われるため、凝固偏析が起こりにくく、炭化物の一部凝集を抑えることが可能となる。 【0038】 (2)上記の(1)により溶解、再凝固させた鋼を、1000?1200℃で10時間以上のソーキング処理を実施する製造方法である。この製造方法は、鋼中に析出した粗大な炭化物を適正範囲の大きさにコントロールするために最適の製造方法である。このソーキング処理は、焼入れ温度よりも高温で、かつ、融点よりも低い温度で実施する必要がある。ソーキング処理を適正に行えば、形成された粗大な炭化物を小さくし、さらに炭化物の量を少なくして均一に分散させることが可能である。なお、ソーキング処理する温度と時間は成分によって適正値が異なる。」 (カ)「【実施例1】 【0039】 表1に示す発明鋼の化学成分からなるプラスチック成形金型用鋼の100kgを真空誘導溶解炉で溶製した。この溶製により得られた鋼材を1200℃に加熱した均熱炉で10時間ソーキング処理し、これを縦横50mmの角材に鍛伸し、次いで1030℃に加熱して空冷する焼入れ処理を施し、さらに200?500℃に加熱して空冷する焼戻し処理を2回繰り返した。 一方、表1の発明鋼の化学成分の範囲から外れる化学成分を有する鋼を比較鋼とし、その100kgを真空誘導溶解炉で溶製し、溶製により得られた鋼材を1200℃に加熱した均熱炉で10時間ソーキング処理し、これを縦横50mmの角材に鍛伸し、次いで1030℃に加熱して空冷する焼入れ処理を施した。上記の本発明の実施例である発明鋼と同様の処理をしたが、ただし、焼なましすなわち焼鈍処理を省略した。 これらにおける焼入焼戻し硬さは50HRC以上とした。 【0040】 【表1】 」 (キ)「【0042】 【表2】 」 イ 前記ア(ア)?(イ)、ア(エ)?(キ)によれば、前記(1)イの課題を解決するために、CとCrの含有割合を質量%で、C:0.20?0.40%、Cr:12.0?15.0%として、耐食性を確保した上で、高い鏡面性を確保するために、 1)鋼に析出含有される炭化物および炭窒化物として、炭窒化物の粒径が5μm以下、 2)鋼の圧延面における100μm平方当たりの炭化物数が160個以下、 3)鋼の圧延面における300μm平方中の50μm平方当たりの炭化物数の最大部の数と最少部の数の差が30個以下、 との3つの要件をいずれも満たすことが必要であると認められる。 ウ また、上記(ウ)によれば、P、S、Al、Oは、いずれも、靱性を低下するか、鏡面性を悪化する成分であり、本願発明1?8に係る鋼においては、含まれないか、可能な限り含有量を低減することが望ましい成分であると認められる。 (3)本願発明1?8が前記(1)イの課題を解決し得ると当業者が認識できるか否かについて ア 本願発明1?8は、前記(2)イに示した、耐食性を確保するために必要なC及びCrの含有割合を満たし、高い鏡面性を確保するために必要な3つの要件の全ての特定事項を備えるものである。 イ したがって、本願発明1?8は、当業者において、課題を解決し得ると認識できる範囲のものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。 ウ ここで、P、S、Al、Oの含有割合が特定されていない本願発明1、3、5、7について検討する。 本願発明1、3、5、7は、前記第3のとおりのものであり、いずれも、「・・・を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼」(「・・・」は省略を表す。)と特定しているから、その他の有効成分を積極的に含有せしめることを排除する、いわゆるクローズドクレームである。 そして、前記(2)ウのとおり、P、S、Al、Oは、いずれも、靱性を低下するか、鏡面性を悪化する成分であり、本願発明1?8に係る鋼においては、含まれないか、可能な限り含有量を低減することが望ましい成分であるから、P、S、Al、Oの含有割合について特定していない、クローズドクレームである本願発明1、3、5、7では、P、S、Al、Oの含有量は、いずれも、積極的に含有せしめることを排除した、すなわち、検出限界以下であると解するのが相当である。 以上のことは、前記(カ)の表1及び(キ)の表2において、 本願発明1の実施例として、「B」、 本願発明3の実施例として、「E」、 本願発明5の実施例として、「G」、 本願発明7の実施例として、「D」 が記載されているところ、これらはいずれも、P、S、Al、Oの含有量が「-」とされていることからも明らかである。 エ そうすると、本願発明1、3、5、7は、当業者において、課題を解決し得ると認識できるものである。 オ また、仮に、鋼の技術分野において、P、S、Al、Oは、鋼の製造過程において、不可避不純物として含まれるものであるという技術常識に照らして、本願発明1、3、5、7が、「不可避不純物」として、P、S、Al、Oを含むという解釈が可能である余地があるとしても、前記(2)ウのとおり、P、S、Al、Oは、いずれも、靱性を低下するか、鏡面性を悪化する成分であり、本願発明1?8に係る鋼においては、含まれないか、可能な限り含有量を低減することが望ましい成分であるから、本願発明1、3、5、7の鋼がこれら成分を、前記ア(ウ)に記載された上限を超える程度含む場合には、これらはもはや、本願発明1、3、5、7における「不可避不純物」とはいえないというべきであり、したがって、これらの含有割合を明示的に特定しない本願発明1、3、5、7は、「P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.05%以下、O:0.0100%以下」との含有割合を超えるものを含まないと解するのが相当である。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-04 |
出願番号 | 特願2013-65257(P2013-65257) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(C22C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 毅 |
特許庁審判長 |
板谷 一弘 |
特許庁審判官 |
長谷山 健 結城 佐織 |
発明の名称 | 鏡面性に優れた耐食性プラスチック成形金型用鋼 |
代理人 | 横井 知理 |
代理人 | 横井 宏理 |
代理人 | 横井 健至 |