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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01M
管理番号 1340876
審判番号 不服2017-12141  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-15 
確定日 2018-06-28 
事件の表示 特願2012-267164「燃料電池スタック」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-229289、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月6日(優先権主張 平成24年3月15日、平成24年3月29日)の出願であって、平成28年11月1日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月28日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、平成29年4月18日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年8月15日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、平成30年4月6日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年5月7日に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月18日付けの拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-3、6-9、11、12、18:引用文献1
・請求項4:引用文献1、2
・請求項5、13-17:引用文献1、3
・請求項10:引用文献1、4
・請求項19、20:引用文献1、5、または、引用文献3、1、5

引用文献一覧
1 特開2006-318863号公報
2 特開2002-367665号公報
3 特開2002-298902号公報
4 特開2009-9731号公報
5 特開2009-266533号公報

第3 当審における拒絶理由の概要
当審における拒絶理由の概要は、次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1?20:引用文献1、2

引用文献一覧
1 特開2006-318863号公報
2 特開2002-298902号公報

第4 本願発明
本願請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明18」という。)は、平成30年5月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
燃料電池単セルを複数枚積層した燃料電池スタックであって、
前記燃料電池単セルは、
電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体と、
膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータと、
導電性を有し且つ一方のセパレータと積層時に隣接する燃料電池単セルのセパレータとの間に介装されて積層方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えると共に、
積層時に隣接する燃料電池単セル同士の間に、前記変位吸収部材が介在する冷却流体流路を形成し、
前記一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成しており、
前記変位吸収部材が、基板の片面に多数のばね機能部を配列して成る構造を有し、
前記ばね機能部が、基板側を固定端とし且つ先端側を自由端とする片持ち梁構造であり、 前記変位吸収部材の基板を一方のセパレータに連結して前記変位吸収部材を定位置に保持し、前記ばね機能部の自由端を隣接する燃料電池単セルのセパレータに接触させたことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記一方のセパレータに、前記多数のばね機能部のうちから選択されたばね機能部の固定端側を連結したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記一方のセパレータが、断面波形状を成していると共に、その電池外側面における波形の凸部に、変位吸収部材を連結したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記変位吸収部材の基板が、膜電極接合体の反応領域と重ならない外縁部を有し、
前記一方のセパレータに、少なくとも外縁部を連結したことを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記一方のセパレータと変位吸収部材との連結が、溶接によるものであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記一方のセパレータと変位吸収部材との連結が、導電性ろう材を用いたろう付け、及び導電性接着剤を用いた接着の少なくとも一方によるものであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項7】
前記一方のセパレータが、両電極層のうちのアノード側に配置したセパレータであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記一方のセパレータが、両電極層のうちのカソード側に配置したセパレータであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
前記変位吸収部材側からセパレータに向けて溶接してあることを特徴とする請求項7又は8に記載の燃料電池スタック。
【請求項10】
前記変位吸収部材と、隣接する燃料電池単セル同士のセパレータの少なくとも一方のセパレータとの接触部分の少なくとも一部を接合したことを特徴とする請求項1?9のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項11】
前記変位吸収部材の端部の少なくとも一部を隣接する燃料電池単セル同士のセパレータで挟持して連結したことを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項12】
セパレータと変位吸収部材の端部とを接合していることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
変位吸収部材の端部を、セパレータの外側まで延出させていることを特徴とする請求項11又は12に記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
セパレータと変位吸収部材の端部とを全周にわたり液密的に接合していることを特徴とする請求項12又は13に記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
変位吸収部材と、これを挟持する二枚のセパレータの端部とを共通の溶接により接合していることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池スタック。
【請求項16】
セパレータと変位吸収部材との接合が、溶接、導電性ろう材を用いたろう付け、及び導電性接着剤を用いた接着のうちの少なくとも一つによるものであることを特徴とする請求項9?14のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項17】
電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体と、膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータと、導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造するに際し、
前記一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成しており、
前記変位吸収部材は、基板の片面に多数のばね機能部を配列して成る構造を有しており、
前記変位吸収部材の基板と、前記一方のセパレータとの接触部分の少なくとも一部を接合した後、
前記膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与して各燃料電池単セルを拘束したことを特徴とする燃料電池スタックの製造方法。
【請求項18】
隣接する燃料電池単セル同士のセパレータ間で変位吸収部材の端部の少なくとも一部を挟持して連結することを特徴とする請求項17に記載の燃料電池スタックの製造方法。」

第5 引用文献の記載事項
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用(「引用文献1」として引用。)され、当審における拒絶の理由にも引用(「引用文献1」として引用。)された、特開2006-318863号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付した。以下、同じ。
(1)発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセパレータに関し、特に冷却媒体の分配構造に関する。」
「【0011】
本発明の態様に係る燃料電池において、前記分配部の前記積層の方向の巾は、前記中間プレートの厚さよりも大きくても良い。かかる場合には、分配部とカソードプレートおよび分配部とアノードプレートが確実に接触するので、セパレータ内部の接触抵抗を低減できる。かかる場合において、分配部は、積層の方向に弾性変形しても良い。こうすれば、分配部とカソードプレートとの間および分配部とアノードプレートとの間に接触を強める力が働くため、さらにセパレータ内部の接触抵抗を低減できる。
【0012】
本発明の態様に係るセパレータにおいて、前記分配部は、前記中間プレートと平行な基板と、前記基板の両側または片側に配置されると共に、前記積層の方向に弾性変形する複数の弾性部とを有しても良い。こうすれば、複数の弾性部によって冷却媒体の分配が図られるとともに、弾性部によって分配部とカソードプレートとの間および分配部とアノードプレートとの間の接触が強められる。この結果、冷却媒体の分配とセパレータ内部の接触抵抗の低減を両立できる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るセパレータについて、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0025】
A.第1実施例:
図1?図2を参照して、本発明の第1実施例に係るセパレータを含む燃料電池スタックの概略構成について説明する。図1は、第1実施例における燃料電池スタックの構成を示す説明図である。図2は、燃料電池スタックの積層の単位200の構成を示す説明図である。
【0026】
燃料電池スタック100は、積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている。燃料電池スタック100には、酸化ガス供給マニホールド110と、酸化ガス排出マニホールド120と、燃料ガス供給マニホールド130と、燃料ガス排出マニホールド140と、冷却媒体供給マニホールド150と、冷却媒体排出マニホールド160と、が設けられている。なお、酸化ガスとしては空気が一般的に用いられ、燃料ガスとしては水素が一般的に用いられる。また、酸化ガス、燃料ガスは共に反応ガスとも呼ばれる。冷却媒体としては、水、エチレングリコール等の不凍水、空気等を用いることができる。
【0027】
図2に示すように、積層の単位200は、セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る。
【0028】
セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えている。中間プレート500は、略中央部には破線で示すように中間プレート500を厚さ方向に貫通する貫通部550が設けられている。分配部材600は、中間プレート500の貫通部550に配置される。アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されている。3枚のプレートの接合方法は、例えば、熱圧着、ろう付け、溶接などが用いられ得る。なお、図2における矢印Rで示す方向は、燃料電池スタック100において積層の単位200が積層される方向であり、また、セパレータ1000において3つのプレート300、400、500が積層される方向でもある。以下、矢印Rで示す方向を積層方向という。
【0029】
シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えている。シール部材700は、シリコーンゴムなどのガス不透性と弾力性と耐熱性とを有する材料で形成されている。シール部材700の中心部には、破線で示すように、膜電極接合体800を配置するための孔750が設けられている。膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860と、を備えている。電解質膜820は、ナフィオン(デュポン社の商標)などのフッ素系樹脂材料で形成された湿潤状態において良好な導電性を有するイオン交換膜である。アノード840とカソード860は、金属多孔体などのガス拡散性および導電性を有する多孔質の材料で形成されている。このアノード840とカソード860には、白金や白金と他の金属からなる合金などが燃料電池反応の触媒として担持されている。」
「【0033】
中間プレート500は、耐熱性樹脂で形成されている。耐熱性樹脂を用いる場合には、3つのプレートを接合する際(例えば、熱圧着)の温度を、金属材料を用いる場合よりも低く抑えることができるため、セパレータ1000の熱変形を抑制できる利点がある。中間プレート500は、上述した貫通部550に加えて、6個のマニホールド形成部522?532と、反応ガス(酸化ガスまたは燃料ガス)を供給/排出するための供給流路形成部542、546および排出流路形成部544、548と、複数の冷却媒体供給流路534と、複数の冷却媒体排出流路536とを備えている。
【0034】
貫通部550は、発電領域DAの大部分に亘って形成されている。貫通部550によって、3つのプレートを接合した際にアノードプレート300とカソードプレート400との間に冷却媒体が流動する空間が形成される。このため、以下では、貫通部550を冷却媒体流動部550という。冷却媒体流動部550には、上述のとおり分配部材600が配置される。」
「【0038】
分配部材600は、図2から明らかなように、3枚のプレート300、400、500とは別体の部材であり、図4に示すように、基板650と、複数の第1の板状部材610と、複数の第2の板状部材620とを備えている。分配部材600は、一枚の板材(以下、母材という。)を塑性加工(例えば、プレス加工)することによって、基板650と第1の板状部材610と第2の板状部材620とを成型することによって作製される。母材は、中間プレート500より薄い板材であり、本実施例では、多孔体ではない緻密なステンレス鋼が用いられている。
【0039】
第1の板状部材610および第2の板状部材620は、図4(a)の左下の第2の板状部材620について例示するように、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成される。曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、第1の板状部材610および第2の板状部材620に相当する。そして、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当する。さらに具体的に説明すると、これらの板状部材610、620は、曲げ線VL1において所定の角度αで曲げられ、基板650に対して所定の角度αを有して延びている。所定の角度αは、形成すべき分配部材600の積層方向の巾や、必要な反発力(後述)の大きさ等に応じて決定されるが、プレス加工により容易に成形できるように、負角が生じない90°以下であることが好ましい。」
「【0041】
第1の板状部材610および第2の板状部材620は、図4に示すように一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形する。すなわち、図4における上下方向に圧縮されると、図4における矢印R方向に、形状を回復しようとする反発力を生じる。
【0042】
分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)である。従って、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮される。従って、組み付け時において、上述した圧縮に対する反発力によって、分配部材600とアノードプレート300との間の接触および分配部材600とカソードプレート400との間の接触が強められる。図4(a)において、第1の板状部材610のクロスハッチングされている部分S1は、組み付け時に、アノードプレート300と接触する部分を示している。また、第2の板状部材620の破線によりハッチングされている部分S2は、組み付け時に、カソードプレート400と接触する部分を示している。
【0043】
第1の板状部材610および第2の板状部材620は、図4(a)に示すように、それぞれが複数個形成されている。複数の第1の板状部材610および第2の板状部材620は、分配部材600の全体に亘って、規則正しく配置されている。図4に示す例では、第1の板状部材610が配置されている列(図4(a)におけるC-C列)と、第2の板状部材620が配置されている列(図4(a)におけるD-D列)とが、交互に図4(a)における上下方向に配列されている。」
「【0048】
また、分配部材600の第1の板状部材610および第2の板状部材620は、上述のとおり端部においてアノードプレート300およびカソードプレート400と接触するので、セパレータ1000内の電気伝導性が確保される。分配部材600とアノードプレート300およびカソードプレート400との接触面積は、第1の板状部材610および第2の板状部材620の端部の形状によって調節できる。すなわち、従来のセパレータでは、中間プレートを打ち抜き加工して冷却媒体流路を形成していたので、接触面積を大きくすると冷却媒体流路が狭くなるという問題があったが、本実施例に係るセパレータ1000は、冷却媒体が流動する空間を確保しつつ、接触面積も比較的自由に大きくできる。従って、冷却性能と電気伝導性の両立を実現できる。」
「【0050】
さらに、分配部材600は、組み付け時の圧縮に対する反発力によって、アノードプレート300およびカソードプレート400に押しつけられるので、分配部材600とアノードプレート300との間、および、分配部材600とカソードプレート400との間の接触抵抗を低減し、セパレータ1000内の電気伝導性を高めることができる。」
「【0071】
C.第3実施例:
図10および図11を参照して、第3実施例に係るセパレータについて説明する。図10は、第3実施例におけるセパレータの構成を示す説明図である。図11は、第3実施例におけるアノードプレートの構造を示す説明図である。図11(a)は、アノードプレート300eの正面図を示す。図11(b)(c)は、図11(a)における線B-Bおよび線C-Cに対応するセパレータ1000eの断面図である。
【0072】
本実施例に係るセパレータ1000eは、第1実施例と同様に、アノードプレート300eと、カソードプレート400eと、中間プレート500eとを備えている。ただし、第1実施例と異なり、別体の分配部材を備えていない。
【0073】
カソードプレート400eおよび中間プレート500eは、第1実施例におけるカソードプレート400および中間プレート500と同一の構成であるのでその説明を省略する。
【0074】
アノードプレート300eは、図11(a)に示すように略中央部において、複数の凸状部390を備えている点が、第1実施例と異なっている。アノードプレート300eのその他の構成は、図3(b)を参照して説明した第1実施例におけるアノードプレート300と同一であるので、図11において図3(b)と同一の符号を付しその説明を省略する。
【0075】
複数の凸状部390は、組み付け時に、中間プレート500eの冷却媒体流動部550に収まる範囲の全体に分布するように規則正しく配置されている。従って、組み付け時において、各凸状部390は、中間プレート500の冷却媒体流動部550に位置すると共に、冷却媒体流動部550の全体に亘って凸状部390が規則正しく配置されることになる。図11(a)に示す例では、図11(a)における左右方向および上下方向に等間隔で配置されている。これらの凸状部390は、プレス加工を用いて、一枚の板材を、膜電極接合体800と当接する側から中間プレート500e側に向けて突き出させて窪ませることによって成形される。
【0076】
また、複数の凸状部390は、図10に示すように、アノードプレート300eの他の部分から中間プレート500e側に、中間プレート500eの厚さTより大きい(T+a)だけ突出している。したがって、組付け時において、凸状部390とカソードプレート400eは、凸状部390の頂上部Pにおいて確実に接触する。例えば、組み付け時に凸状部390の頂上部Pが少し潰され、これによって接触面積が確保されるようにしても良い。あるいは、カソードプレート400eを弾性の高い材料で作製して、凸状部390の反発力によって、凸状部390とカソードプレート400eとの接触を強めても良い。
【0077】
冷却媒体供給流路534から冷却媒体流動部550に流入した冷却媒体は、凸状部390により、セパレータ1000の面方向に拡散され、冷却媒体流動部550全体に分配される。分配された冷却媒体は、冷却媒体排出流路536から冷却媒体排出マニホールド160へ排出される。図11(b)(c)において記号301で示される空間を冷却媒体が流動する。
【0078】
以上説明したように、弟3実施例に係るセパレータ1000eによれば、第1実施例および第2実施例と同様に、冷却性能と電気伝導性の両立を実現できる。
【0079】
さらに、第3実施例に係るセパレータ1000eでは、別体の分配部材が必要ないので、部品点数が増加することもない。
【0080】
さらに、凸状部390はアノードプレート300に設けられており、カソードプレート400の発電領域DAは、フラットである。従って、図11(b)(c)に記号301で示すように、冷却媒体が流れる空間はカソード860側に近い部分の体積がより大きくなる。この結果、第1実施例の変形例2と同様に、発熱量の多いカソード860を効率的に冷却することができる。
【0081】
さらに、カソードプレート400がフラットであることにより、カソード860に対す
る接触圧力が均一になるため、カソード860側の電気反応のムラが生じにくい。燃料電池の電気化学反応は、酸素分子の拡散速度が遅いため、一般的に、カソード側の3相界面における反応(2H^(+)+2e^(-)+(1/2)O_(2)→H_(2)O)に律速される。このため、カソード860側の電気反応を重視して、凸状部390は、アノードプレート300に設けられている。
【0082】
D.その他の変形例:
上述の実施例では、カソードプレート400、アノードプレート300および分配部材600にステンレス鋼を用いているが、他の材料を用いても良い。カソードプレート400およびアノードプレート300には、ガス不透性と導電性とを有する種々の材料、例えば、チタン、チタン合金が用いられ得る。分配部材600には、伝導性とある程度の弾性を有する種々の材料、例えば、チタン、チタン合金などの金属材料が用いられ得る。また、カソードプレート400およびアノードプレート300および分配部材600は、接触抵抗の低減や、耐食性の向上のために表面処理(例えば、耐食性のメッキ)を施しても良い。
【0083】
また、上記実施例においては、熱変形を抑制するため接合温度を低く抑制できる耐熱性樹脂を中間プレート500に用いているが、これに代えて金属材料、例えば、ステンレス、チタンを用いることもできる。
【0084】
また、上記実施例において、分配部材とアノードプレートおよびカソードプレートとの接触部分を必要に応じて溶接等の接合処理を施しても良い。こうすことで、セパレータ1000の強度や伝導性を高めることができる。
【0085】
また、第1実施例における分配部材600における第1の板状部材610および第2の板状部材620をはじめとする各実施例、変形例における冷却媒体を分配するための構造の配置は、実施例に限られず種々の配置を採用することができる。例えば、第3実施例における凸状部390は、カソードプレート400上において千鳥状に配置しても良い。
【0086】
また、上記実施例、変形例として示した分配部材600?600d以外にも種々の構造を有する分配部材が用いられ得る。具体的には、第1実施例における分配部材600のように、積層方向の巾が中間プレート500の厚さより厚く、積層の方向に弾性を有していれば、第1実施例と同様の作用・効果が得られる。また、分配部材は、積層方向に負角を有しておらず、一枚板をプレス加工することにより容易に作製できる形状であることが好ましい。例えば、上述の分配部材600は、基板650の両側にそれぞれ板状部材610、620を配置しているが、片側だけに板状部材を配置する構造であっても良い。係る場合は、片側の板状部材と基板のみで、積層方向の巾が中間プレート500より大きくなるようにする。」
(2)図面の記載
「【図1】


「【図2】


「【図4】


「【図5】


「【図10】


「【図11】



(3)引用文献1の記載事項の検討
(3-1)引用発明
ア 上記(1)及び(2)には、「燃料電池スタック100」及びその製造方法についての記載がある。
イ 上記(1)の【0026】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、積層の単位200を、複数個積層することにより構成されており、上記(1)の【0027】より、積層の単位200は、セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成るから、「燃料電池スタック100」は、セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されているといえる。
ウ 上記(1)の【0029】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えている。
エ 上記(1)の【0029】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えている。
オ 上記(1)の【0028】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えている。
カ 上記(1)の【0028】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されている。
キ 上記(1)の【0028】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する貫通部550が設けられており、上記(1)の【0034】より、「燃料電池スタック100」において、貫通部550は冷却媒体流動部550であるから、「燃料電池スタック100」において、中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する冷却媒体流動部550が設けられているといえる。
ク 上記(1)の【0034】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、冷却媒体流動部550には、分配部材600が配置される。
ケ 上記(1)の【0050】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、600は、組み付け時の圧縮に対する反発力によって、アノードプレート300およびカソードプレート400に押しつけられるので、分配部材600とアノードプレート300との間、および、分配部材600とカソードプレート400との間の接触抵抗を低減するとされており、また、上記(1)の【0048】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600の第1の板状部材610および第2の板状部材620は、端部においてアノードプレート300およびカソードプレート400と接触するので、セパレータ1000内の電気伝導性が確保されるとされていることから、引用文献1の「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600は電気伝導性を有するものであるといえる。
コ 上記(1)の【0039】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、第1の板状部材610および第2の板状部材620は、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成され、曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、第1の板状部材610および第2の板状部材620に相当し、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当する。
サ 上記(1)の【0041】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、第1の板状部材610および第2の板状部材620は、一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形する。
シ 上記(1)の【0086】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600は、基板650の両側にそれぞれ板状部材610、620を配置しているが、片側だけに板状部材を配置する構造であっても良いから、分配部材600は、基板650の片側だけに板状部材を配置するものを含むといえる。
そして、上記(1)の【0043】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、第1の板状部材610および第2の板状部材620は、それぞれが複数個形成されている。
そうすると、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600は、基板650の片側だけに複数個の板状部材を配置するものであるといえる。
ス 上記コ及びサの第1の板状部材610および第2の板状部材620についての記載は、第1の板状部材610および第2の板状部材620をそれぞれ基板650の両側に配置する形態についての記載であるが、上記シの基板650の片側だけに板状部材を配置する構造でも同様のことがいえる。
そうすると、上記コ?シから、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600は基板650の片側だけに板状部材610、620を配置する構造であって、該板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形するものであり、板状部材610、620は、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成され、曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、板状部材610、620に相当し、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当する。
セ 上記(1)の【0042】より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮される。
ソ 上記(2)の図2より、「燃料電池スタック100」及びその製造方法において、アノードプレート300とカソードプレート400は、いずれも板状であることが見て取れる。
タ 上記ア?ケ、ス?ソの検討から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100であって、
シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えており、
膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えており、
セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えており、
アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されており、
中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する冷却媒体流動部550が設けられており、
冷却媒体流動部550には、分配部材600が配置され、
分配部材600は電気伝導性を有するものであり、
分配部材600は基板650の片側だけに複数個の板状部材610、620を配置する構造であって、該板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形するものであり、
板状部材610、620は、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成され、曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、板状部材610、620に相当し、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当し、
分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮され、
アノードプレート300とカソードプレート400はいずれも板状である、
燃料電池スタック100。」
チ また、上記ア?ケ、ス?ソの検討から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100の製造方法であって、
シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えており、
膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えており、
セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えており、
アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されており、
中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する冷却媒体流動部550が設けられており、
冷却媒体流動部550には、分配部材600が配置され、
分配部材600は電気伝導性を有するものであり、
分配部材600は基板650の片側だけに複数個の板状部材610、620を配置する構造であって、該板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形するものであり、
板状部材610、620は、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成され、曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、板状部材610、620に相当し、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当し、
分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮され、
アノードプレート300とカソードプレート400はいずれも板状である、
燃料電池スタック100の製造方法。」

2 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用(「引用文献3」として引用。)され、当審における拒絶の理由にも引用(「引用文献2」として引用。)された、特開2002-298902号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複数の単位セルが積層された燃料電池に関するものである。」
「【0004】図7は積層体3の単位セル2の構成を示す概略断面図である。図7において、単位セル2は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ11と、燃料電極10に接触する第2セパレータ12とを備えている。酸化剤電極9及び燃料電極10は例えば炭素繊維を編み込んで作製されたカーボンペーパであり、電解質膜8に熱圧接等により接合されている。・・・(略)・・・また、第1セパレータ11の酸化剤電極9に接触する面及び第2セパレータ12の燃料電極10に接触する面にはそれぞれ複数の酸化剤流路11a及び複数の燃料流路12aが設けられ、酸化剤流路11a及び燃料流路12aにそれぞれ酸化剤ガス(例えば空気)及び燃料ガス(例えば水素)が流れるようになっている。
【0005】図8は図7の単位セル2を複数積層した積層体3の構成を示す概略図である。図8に示すように、積層体2は複数の単位セル2が第1セパレータ11及び第2セパレータ12が接触するように積層されて構成されている。
【0006】この構成により、燃料電池1は酸化剤流路11aに酸化剤ガスを流し、燃料流路12aに燃料ガスを流すことにより、酸化剤ガス及び燃料ガスはそれぞれ多孔質のカーボンペーパである酸化剤電極9及び燃料電極10の孔を通って拡散されて電解質膜8において電気化学反応を起こし、電力を発生する。」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の燃料電池1は、積層体2の積層方向両側における一対の締め付け板4及び5で積層体2を挟み、締め付け機構6が積層体2の四隅に押圧力を加えて締め付けているため、第1セパレータ11及び第2セパレータ12が酸化剤電極9及び燃料電極10に接触する面の中で押圧力に偏りが発生する、即ち四隅の押圧力が中央部の押圧力より大きくなるという問題点があった。
【0008】即ち、押圧力が低い部分では、それぞれの第1セパレータ11及び第2セパレータ12が酸化剤電極9及び燃料電極10を押圧する力が十分に確保できないために電流の流れを妨げる接触抵抗が大きくなって電力損失が大きくなる。逆に、押圧力が高い部分では、第1セパレータ11及び第2セパレータ12がそれぞれ酸化剤電極9及び燃料電極10の多孔質部分を押圧力により潰してしまい、酸化剤ガス及び燃料ガスが有効に電解質膜8に供給されず、電気化学反応が適切に行われなくなるという問題点があった。
【0009】また、第1セパレータ11及び第2セパレータ12は積層方向の厚みがセパレータ内の部位で異なること、即ち厚みがバラつくことによって厚みが大きい部位に影響されてその他の部位に押圧力が働かなくなり、酸化剤電極11及び燃料電極12との接触面の押圧力が均一でなくなるという問題点もあった。
【0010】そこでこの発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするもので、燃料電池の単位セルにおける第1セパレータ及び第2セパレータがそれぞれ酸化剤電極及び燃料電極に接触する面での押圧力がこの接触面全体にわたって適正で均一となって、電気化学反応が充分に行われ、発電効率の良い燃料電池を得ることを目的とする。」
「【0023】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1に係る燃料電池の要部を示す概略構成図であり、図1(a)は締め付け板4及び5を取り外したときの正面図、図1(b)は図1(a)のI-I線に沿った矢視断面図である。図1において、積層体25は複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている。
【0024】単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する例えばカーボンの第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する同じくカーボンの第2セパレータ22とを備えている。酸化剤電極9及び燃料電極10は例えば炭素繊維を編み込んで作製されたカーボンペーパであり、電解質膜8に熱圧接等により接合されている。第1セパレータ21及び第2セパレータ22はそれぞれ電極膜接合体13をこの電極膜接合体13に向かって押圧している。また、第1セパレータ21の酸化剤電極9に接触する面及び第2セパレータ22の燃料電極10に接触する面にはそれぞれ複数の酸化剤流路21a及び複数の燃料流路22aが設けられ、酸化剤流路21a及び燃料流路22aにそれぞれ酸化剤ガス(例えば空気)及び燃料ガス(例えば水素)が流れるようになっている。さらに、第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されている。つまり、第1セパレータ21及び第2セパレータ22が互いに直接接触した状態で凹部21cにより形成された空間に弾性体23が挿入された状態となっている。
【0025】弾性体23は断面波形に形成された金属、例えばベリリウム銅板であり、この波形の凸部が第2セパレータ22の積層方向に垂直な面及び第1セパレータ21の凹部21cの底面に接触するように配置されている。この弾性体23は外力を加えない状態では波形の高さが凹部21cの深さより少し高くなっており、またこの弾性体23が余裕を持って凹部21cに配置されるようになっている。このため、第1セパレータ21の接触面21bが第2セパレータ22に接触した状態では、弾性体23は凹部21cの深さまで圧縮され、圧縮された分横に広がった状態となっている。
【0026】その他の構成は従来例と同様になっている。
【0027】このような構成であるので、凹部21c内に配置されている弾性体23は弾性圧縮をしており、この弾性体23は第1セパレータ21及び第2セパレータ22に複数箇所で接触し押圧する。このことから、第1セパレータ21及び第2セパレータ22の全体にわたって積層方向に均一に押圧力が発生し、第1セパレータ21及び第2セパレータ22と電極膜接合体13との接触圧力を均一にすることができる。このとき、凹部21cの周囲の接触面21bは締め付け機構6による押圧力により第2セパレータ22を押圧しており、電気的接触を確保し接触抵抗による損失増加を防止している。
【0028】なお、弾性体23は導電性の材料が望ましいが、第1セパレータ21及び第2セパレータ22に均一に適正な押圧力を与えるもので接触面21bで電気的接触を確保できるものであれば、絶縁材料でも構わない。
【0029】また、弾性体23は各単位セル24間に配置されているが、複数の単位セル24で構成されたブロック間に設けても、弾性体23の数量が少なくてすみ、しかも弾性体23によって第1セパレータ21及び第2セパレータ22に均一な押圧力を与えるので構わない。」
「【0031】単位セル34は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する酸化剤流路31aを有し、例えばカーボンの第1セパレータ31と、燃料電極10に接触する燃料流路32aを有し、同じくカーボンの第2セパレータ32とを備えている。第1セパレータ31は第2セパレータ32側に弾性体23が配置された凹部31cと、この凹部31cの周囲で第2セパレータ32と接触する面31bとを有している。またこの凹部31cに冷却媒体入口31d及び冷却媒体出口31eが設けられており、凹部31c内を冷却媒体が流れるようになっている。冷却媒体入口31d及び冷却媒体出口31eはほぼ凹部31cの対角に位置しており、冷却媒体が矢印36のように弾性体23の波形に沿って凹部31c内全体に冷却媒体が流れるようになっている。また、接触面31b及び第2セパレータ32の間には例えばブチルゴムのようなシール材が設けられており、凹部31c内の冷却媒体が外部に漏れ出ないようになっている。」
(2)図面の記載
「【図1】


「【図7】


「【図8】



(3)引用文献2の記載事項の検討
ア 上記(1)及び(2)には、燃料電池の積層体の製造方法について記載されている。
イ 上記(1)の【0023】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、その積層体25は複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている。
ウ 上記(1)の【0024】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えている。
エ 上記(1)の【0024】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、第1セパレータ21の酸化剤電極9に接触する面及び第2セパレータ22の燃料電極10に接触する面にはそれぞれ複数の酸化剤流路21a及び複数の燃料流路22aが設けられ、酸化剤流路21a及び燃料流路22aにそれぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスが流れるようになっている。
オ 上記(1)の【0024】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されている。
カ 上記(1)の【0028】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、弾性体23は導電性の材料が望ましい。
キ 上記(1)の【0027】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、凹部21c内に配置されている弾性体23は弾性圧縮をしており、この弾性体23は第1セパレータ21及び第2セパレータ22に複数箇所で接触し押圧する。
ク 上記(1)の【0027】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、弾性体23は断面波形に形成されている。
ケ 上記(1)の【0031】より、「燃料電池の積層体の製造方法」について、単位セル34は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する酸化剤流路31aを有する第1セパレータ31と、燃料電極10に接触する燃料流路32aを有する第2セパレータ32とを備えている。
コ 上記ケより、単位セル34は、酸化剤電極9に接触する酸化剤流路31aを有する第1セパレータ31と、燃料電極10に接触する燃料流路32aを有する第2セパレータ32とを備えており、上記エより、酸化剤流路21a及び燃料流路22aにそれぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスが流れるようになっているから、技術常識に照らせば、酸化剤流路21a及び燃料流路22aの周辺は発電領域であると解されるところ、上記(2)の図7及び図8より、第1セパレータ11及び第2セパレータ12の酸化剤流路21a及び燃料流路22aは、矩形状の凹部であることが読み取れる。
そうすると、「燃料電池の積層体の製造方法」について、第1セパレータ11及び第2セパレータ12の発電領域には、酸化剤流路21a及び燃料流路22aである矩形状の凹部が形成されている。
サ 上記ア?ク、コの検討から、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用方法発明2」という。)が記載されていると認められる。
「複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている積層体25のであって、
単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えており、
第1セパレータ21の酸化剤電極9に接触する面及び第2セパレータ22の燃料電極10に接触する面にはそれぞれ複数の酸化剤流路21a及び複数の燃料流路22aが設けられ、酸化剤流路21a及び燃料流路22aにそれぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスが流れるようになっており、
第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されており、
弾性体23は導電性の材料が望ましく、
凹部21c内に配置されている弾性体23は弾性圧縮をしており、この弾性体23は第1セパレータ21及び第2セパレータ22に複数箇所で接触し押圧し、
弾性体23は断面波形に形成されており、
第1セパレータ11及び第2セパレータ12の発電領域には、酸化剤流路21a及び燃料流路22aである矩形状の凹部が形成されている、
燃料電池の積層体の製造方法。」

3 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用(「引用文献2」として引用。)された、特開2002-367665号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)発明の詳細な説明の記載
「0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池スタックおよびその加圧保持方法に関し、一層詳細には、温度変化に伴って単位セルが熱膨張または収縮による寸法変化を起こした場合であっても単位セル同士の電気的な接触が確実に維持される燃料電池スタックおよびその加圧保持方法に関する。」
「【0036】図3から諒解されるように、この第2接合体20bは、第2セパレータ142と第1セパレータ140とで挟持されている。すなわち、第2セパレータ142は、第1単位セル102の図2および図3における下方に積層された下流側の第2単位セル104の構成部材を兼ね、第1セパレータ140は、第2単位セル104の図2および図3におけるさらに下方に積層された下流側の第1単位セル102の構成部材を兼ねる。
【0037】1枚の金属薄板からなる第1セパレータ140において、第1接合体20aのアノード側電極14aに対向する一端面には、図2および図3に示すように、図2における矢印C方向に沿って延在する凹部144が形成されており、一方、他端面には、凸部146が形成されている。このうち、凹部144とその直上に積層される第2接合体20bのカソード側電極16bとの間には、酸素含有ガスが流通される(図3参照)。すなわち、第1セパレータ140において、第1接合体20aのアノード側電極14aに頂部が当接する凹部144は、酸素含有ガス流路として機能する。勿論、この凹部144は、酸素含有ガス供給連通孔110と酸素含有ガス中間連通孔116(図1参照)とに連通している。
【0038】また、凸部146と第1接合体20aのアノード側電極14aとの間には、燃料ガスが流通される(図3参照)。すなわち、第1セパレータ140において、第2接合体20bのカソード側電極16bに頂部が当接する凸部146は、燃料ガス流路として機能する。勿論、この凸部146は、燃料ガス供給連通孔118と燃料ガス中間連通孔114(図1参照)とに連通している。
【0039】一方、第2セパレータ142は、第1セパレータ140と略同様に構成された第1金属板148と第2金属板150とからなる(図2および図3参照)。すなわち、第1金属板148には凹部152、凸部154が設けられており、かつ第2金属板150には、凹部156、凸部158が設けられている。そして、両金属板148、150の間には板ばね160が介装されており、図3から諒解されるように、両凸部154、158の各頂部はこの板ばね160に当接している。また、該板ばね160を介して、第1金属板148の凹部152は第2金属板150の凸部158に対向するように配置され、かつ第1金属板148の凸部154は第2金属板150の凹部156に対向するように配置されている。
【0040】図3に示すように、第1金属板148の凹部152と板ばね160との間、および板ばね160と第2金属板150の凹部156との間には、冷却水等の冷却媒体がそれぞれ流通される。その一方で、第1金属板148の凸部154と第1接合体20aのカソード側電極16aとの間には酸素含有ガスが流通され、かつ第2金属板150の凸部158と第2接合体20bのアノード側電極14bとの間には燃料ガスが流通される。」
「【0065】なお、この実施の形態においては、第2セパレータ142のみを2枚の金属板148、150で構成し、かつ両金属板148、150の間に板ばね160を介装したが、図6に示すように、第2セパレータ142同様、第1セパレータ200も2枚の金属板202、204で構成し、これら金属板202、204の間に板ばね160を介装するようにしてもよい。この場合、金属板202の凸部206と第2接合体20bのカソード側電極16bとの間に酸素含有ガスを流通させるとともに凹部208と板ばね160との間に冷却媒体を流通させる一方で、金属板204の凹部210と板ばね160との間に冷却媒体を流通させるとともに凸部212と第1接合体20aのアノード側電極14aとの間に燃料ガスを流通させるようにすればよい。また、板ばね160を介して、金属板202の凸部206と金属板204の凹部210を対向させ、かつ金属板202の凹部208と金属板204の凸部212を対向させればよい。」
(2)図面の記載
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図6】




第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「積層の単位200」、「膜電極接合体800」、「アノード840」及び「カソード860」、「アノードプレート300」及び「カソードプレート400」、「分配部材600」、「冷却媒体流動部550」、「板状部材610、620」は、本願発明1の「燃料電池単セル」、「膜電極接合体」、「一対の電極層」、「一対のセパレータ」、「変位吸収部材」、「冷却流体流路」、「ばね機能部」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100」は、本願発明1の「燃料電池単セルを複数枚積層した燃料電池スタック」に相当する。

ウ 引用発明の「膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えて」いるから、技術常識に照らせば、電解質膜820をアノード840とカソード860とで狭持した構造を有することは明らかである。
また、引用発明の「積層の単位200」は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る」ものであるから、引用発明の「シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備え」、「膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えて」いるとの発明特定事項は、本願発明1の「燃料電池単セルは、電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体」「を備える」との発明特定事項に相当する。

エ 引用発明の「積層の単位200」は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る」ものであるから、引用発明の「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400」「を備えて」いるとの発明特定事項と、本願発明1の「燃料電池単セルは、」「膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータ」「を備える」との発明特定事項とは、「燃料電池単セルは、」「一対のセパレータ」「を備える」との発明特定事項で共通する。

オ 引用発明の「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えており、」引用発明の「分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触」することから、引用発明の「分配部材600」は、本願発明1の「一方のセパレータと積層時に隣接する燃料電池単セルのセパレータとの間に介装され」るとの発明特定事項に相当する構成を有するものといえる。
そうすると、引用発明の「積層の単位200」は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る」ものであるから、引用発明の「セパレータ1000は、」「分配部材600」「を備えており、」「分配部材600は電気伝導性を有するものであ」るとの発明特定事項と、本願発明1の「燃料電池単セルは、」「導電性を有し且つ一方のセパレータと積層時に隣接する燃料電池単セルのセパレータとの間に介装されて積層方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備える」との発明特定事項とは、「燃料電池単セルは、」「導電性を有し且つ一方のセパレータと積層時に隣接する燃料電池単セルのセパレータとの間に介装され」た「変位吸収部材を備える」との発明特定事項で共通する。

カ 引用発明の「燃料電池スタック100」は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている」ものであって、また、「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えて」いるから、引用発明の「分配部材600」は、本願発明1の「積層時に隣接する燃料電池単セル同士の間」に相当する箇所に設けられるものである。
そうすると、引用発明の「アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されており、中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する冷却媒体流動部550が設けられており、冷却媒体流動部550には、分配部材600が配置され」るとの発明特定事項は、本願発明1の「積層時に隣接する燃料電池単セル同士の間に、前記変位吸収部材が介在する冷却流体流路を形成」するとの発明特定事項に相当する。

キ 引用発明の「分配部材600は基板650の片側だけに複数個の板状部材610、620を配置する構造であって、」「板状部材610、620は、プレス成形において、母材を略コの字状の切断線NLで切断した後、略コの字状の部分を2本の曲げ線VL1およびVL2で曲げることによって形成され、曲げ線VL1で曲げられた略コの字状の部分が、板状部材610、620に相当し、略コの字状部分以外の未加工の部分が基板650に相当」するとの発明特定事項と、本願発明1の「変位吸収部材が、基板の片面に多数のばね機能部を配列して成る構造を有し、前記ばね機能部が、基板側を固定端とし且つ先端側を自由端とする片持ち梁構造であ」るとの発明特定事項とは、「変位吸収部材が、基板の片面に複数個のばね機能部を配列して成る構造を有し、前記ばね機能部が、基板側を固定端とし且つ先端側を自由端とする片持ち梁構造であ」るとの発明特定事項で共通する。

ク 引用発明の「分配部材600は基板650の片側だけに板状部材610、620を配置する構造であ」るから、「分配部材600」を、「組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触」させると、基板650がアノードプレート300およびカソードプレート400の一方に連結し、板状部材610、620がアノードプレート300およびカソードプレート400の他方に隣接することは自明である。
また、引用発明の「分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮される」ものであって、このとき、引用発明の「分配部材600」は、圧縮されることにより、定位置に保持されると考えられる。
そうすると、引用発明の「分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮される」との発明特定事項は、本願発明1の「変位吸収部材の基板を一方のセパレータに連結して前記変位吸収部材を定位置に保持し、前記ばね機能部の自由端を隣接する燃料電池単セルのセパレータに接触させた」との発明特定事項に相当する。
ケ 上記ア?クを踏まえると、本願発明1と引用発明とは、
「燃料電池単セルを複数枚積層した燃料電池スタックであって、
前記燃料電池単セルは、
電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体と、
一対のセパレータと、
導電性を有し且つ一方のセパレータと積層時に隣接する燃料電池単セルのセパレータとの間に介装された変位吸収部材を備えると共に、
積層時に隣接する燃料電池単セル同士の間に、前記変位吸収部材が介在する冷却流体流路を形成し、
前記変位吸収部材が、基板の片面に複数個のばね機能部を配列して成る構造を有し、
前記ばね機能部が、基板側を固定端とし且つ先端側を自由端とする片持ち梁構造であり、 前記変位吸収部材の基板を一方のセパレータに連結して前記変位吸収部材を定位置に保持し、前記ばね機能部の自由端を隣接する燃料電池単セルのセパレータに接触させたことを特徴とする燃料電池スタック。」で共通し、次の1-ア?1-エの点で相違する。

(相違点)
1-ア 「一対のセパレータ」が、本願発明1では、「膜電極接合体との間にガス流路を形成する」ものであるのに対し、引用発明では、そのような構成を有さない点。
1-イ 「変位吸収部材」が、本願発明1では、「積層方向の変位を吸収可能な」ものであるのに対し、引用発明は、「分配部材600」の「板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有しているため、組み付け時に積層方向Rに弾性変形するものであ」るものの、「アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されて」いるから、「分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さt」に固定される点。
1-ウ 「一方のセパレータ」が、本願発明1では、「膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成して」いるのに対し、引用発明では、「板状であ」って、シール一体型膜電極接合体2000の発電領域と重なる領域が断面波形状を成していない点。
1-エ 「変位吸収部材」の「基板の片面に」「配列して成る」「ばね機能部」が、本願発明1では、「多数」「配列」されているのに対し、引用発明では、「複数個」「配置」されている点。

(2)判断
まず、上記1-ウの相違点について検討する。
引用文献1(上記第5 1(1)【0074】参照。)には、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eが記載されているものの、該複数の凸部390を有する形状は、断面波形状とはいえない。
そして、該複数の凸部390を有する形状を、断面波形状とする動機付けも存在しない。
また、仮に、該複数の凸部390を有する形状が「断面波形状」であるといえたとしても、引用文献1には、「冷却媒体供給流路534から冷却媒体流動部550に流入した冷却媒体は、凸状部390により、セパレータ1000の面方向に拡散され、冷却媒体流動部550全体に分配される」(上記第5 1(1)の【0077】)、「第3実施例に係るセパレータ1000eでは、別体の分配部材が必要ないので、部品点数が増加することもない」(上記第5 1(1)の【0079】)と記載されているように、アノードプレート300eの複数の凸部390は、冷却媒体流動部550の空間を確保して、冷却媒体をセパレータ1000の面方向に拡散し、冷却媒体流動部550全体に分配するものであって、分配部材の代わりに設けられるものであるから、「分配部材600が配置され」た引用発明において、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eを設ける動機付けが存在しない。

さらに、引用文献3(上記第5 3(1)【0039】、【0065】、上記第5 3(2)【図6】参照。)には、凹部152及び凸部154が設けられた第1金属板148(引用発明の「カソードプレート400」に相当。)、及び、凹部156及び凸部158が設けられた第2金属板150(引用発明の「アノードプレート300」に相当。)とからなる、第2セパレータ142が記載されているものの、該凹部152、156及び凸部154、158の形状は、引用文献3の図3及び図6(上記第5 3(2)参照。)から見て取れる限り、「断面波形状」とはいえない。
そして、該凹部152、156及び凸部154、158の形状を、断面波形状とする動機付けも存在しない。
また、仮に、該凹部152、156及び凸部154、158の形状が、断面波形状であるといえた場合について、以下、検討する。
引用文献1(上記第5 1(1)【0012】)には、「複数の弾性部によって冷却媒体の分配が図られるとともに、弾性部によって分配部とカソードプレートとの間および分配部とアノードプレートとの間の接触が強められる。この結果、冷却媒体の分配とセパレータ内部の接触抵抗の低減を両立できる」と記載されているように、引用発明は、接触抵抗の低減を課題の1つとしている。
一方、引用発明の「アノードプレート300とカソードプレート400はいずれも板状である」のに対し、引用文献3に記載された第1金属板148及び第2の金属板150は、それぞれ凹部152、156及び凸部154、158が設けられたものである。
そうすると、引用発明において、そのアノードプレート300またはカソードプレート400に代えて、引用文献3に記載された第1金属板148または第2の金属板150を適用すると、引用発明におけるアノードプレート300またはカソードプレート400と分配部材との接触面積よりも、引用文献3に記載された第1金属板148または第2の金属板150とと分配部材との接触面積が狭くなることが明らかであるから、前者と比較して後者の方が接触面積が高くなり、そのために接触抵抗も高くなると考えられる。
したがって、引用発明において、そのアノードプレート300またはカソードプレート400に代えて、引用文献3に記載された第1金属板148または第2の金属板150を適用することに、阻害要因があることとなるから、引用発明において、引用文献3に記載された第1金属板148または第2の金属板150を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、上記1-ウの相違点は、実質的な相違点であるし、また、上記1-ウの相違点に係る本願発明1の発明特定事項を構成することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。

以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?16について
本願発明2?16は、本願発明1の「一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成して」いるとの発明特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明17について
3-1 引用方法発明からの容易想到性について
(1)対比
本願発明17と引用方法発明とを対比する。
ア 引用方法発明の「積層の単位200」、「膜電極接合体800」、「アノード840」及び「カソード860」、「アノードプレート300」及び「カソードプレート400」、「分配部材600」、「板状部材610、620」は、本願発明17の「燃料電池単セル」、「膜電極接合体」、「一対の電極層」、「一対のセパレータ」、「変位吸収部材」、「ばね機能部」に相当する。

イ 引用方法発明の「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100」は、本願発明17の「燃料電池単セルを複数枚積層した燃料電池スタック」に相当する。
また、引用方法発明の「膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えて」おり、技術常識に照らせば、電解質膜820をアノード840とカソード860とで狭持した構造を有することは明らかであるから、引用方法発明の「電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備え」た「膜電極接合体800」は、本願発明17の「電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体」に相当する。
さらに、引用方法発明の「積層の単位200」は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る」ものであって、引用方法発明の「シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えて」いるから、引用方法発明の「積層の単位200」は、「膜電極接合体800」を含むものである。
そうすると、引用方法発明は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100の製造方法において、シール一体型膜電極接合体2000は、シール部材700と、膜電極接合体800とを備えており、膜電極接合体800は、電解質膜820と、アノード840と、カソード860とを備えて」いるとの発明特定事項は、本願発明17の「電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体」「を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造する」との発明特定事項に相当する。

ウ 引用方法発明の「アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えて」いる「セパレータ1000」と、本願発明17の「膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータ」とは、「一対のセパレータ」で共通する。
そうすると、引用方法発明の「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100の製造方法において、」「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と」「を備えて」いるとの発明特定事項と、本願発明17の「膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータ」「を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造する」との発明特定事項と、「一対のセパレータ」「を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造する」との発明特定事項で共通する。

エ 引用方法発明の「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えており、」引用方法発明の「分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触」することから、引用発明の「分配部材600」は、本願発明17の「一方のセパレータの電池外側面に配置され」るとの発明特定事項に相当する構成を有するものといえる。
そうすると、引用方法発明の「セパレータ1000は、」「分配部材600」「を備えており、」「分配部材600は電気伝導性を有するものであ」るとの発明特定事項と、本願発明17の「導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備える」との発明特定事項とは、「燃料電池単セルは、」「導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置され」た「変位吸収部材を備える」との発明特定事項で共通する。
したがって、引用方法発明の「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層することにより構成されている燃料電池スタック100の製造方法において、」「セパレータ1000は、」「分配部材600とを備えており、」「分配部材600は電気伝導性を有するものであ」るとの発明特定事項と、本願発明17の「導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造する」との発明特定事項は、「導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置され」た「変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造する」との発明特定事項で共通する。

オ 引用方法発明の「分配部材600は基板650の片側だけに複数個の板状部材610、620を配置する構造であって、該板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有している」との発明特定事項と、本願発明17の「変位吸収部材は、基板の片面に多数のばね機能部を配列して成る構造を有して」いるとの発明特定事項とは、「変位吸収部材は、基板の片面に複数個のばね機能部を配列して成る構造を有して」いるとの発明特定事項で共通する。

カ 引用方法発明は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層する」ものであって、「セパレータ1000は、アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備えて」いるものであるから、引用方法発明は、「アノードプレート300と、カソードプレート400と、中間プレート500と、分配部材600とを備え」た「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層する」ものである。
また、引用方法発明は、「セパレータ1000とシール一体型膜電極接合体2000から成る積層の単位200を、複数個積層する」ものであって、「分配部材600は、組み付け時に、」「積層方向に圧縮され」るものであるから、引用方法発明は、本願発明17の「膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与」するとの発明特定事項を有するものといえる。
さらに、引用方法発明の「分配部材600は基板650の片側だけに板状部材610、620を配置する構造であって、該板状部材610、620は一般的な板バネの形状を有して」おり、また、引用方法発明の「分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮され」るものであるから、技術常識に照らせば、その後、この積層方向の圧縮を何らかの方法で固定しなければ、「燃料電池スタック100」の形状を保てないと考えられる。
そうすると、引用方法発明は、本願発明17の「各燃料電池単セルを拘束」するとの発明特定事項を有するものといえる。
したがって、引用方法発明の「アノードプレート300およびカソードプレート400は、中間プレート500を挟持するように、中間プレート500の両側にそれぞれ接合されており、中間プレート500は、略中央部には中間プレート500を厚さ方向に貫通する冷却媒体流動部550が設けられており、冷却媒体流動部550には、分配部材600が配置され」、「分配部材600の積層方向の巾は、中間プレート500の厚さtより大きい(t+a)であるから、分配部材600は、組み付け時に、アノードプレート300およびカソードプレート400と接触し、積層方向に圧縮され」るとの発明特定事項は、本願発明17の「膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与して各燃料電池単セルを拘束」するとの発明特定事項に相当する。

キ 上記ア?カを踏まえると、本願発明17と引用方法発明とは、
「電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体と、一対のセパレータと、導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造するに際し、
前記膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与して各燃料電池単セルを拘束したことを特徴とする燃料電池スタックの製造方法。」で共通し、次の2-ア?2-エの点で相違する。

(相違点)
2-ア 「一対のセパレータ」が、本願発明17では、「膜電極接合体との間にガス流路を形成する」ものであるのに対し、引用方法発明では、「いずれも板状であ」って、シール一体型膜電極接合体2000との間にガス流路が形成されていない点。
2-イ 「一方のセパレータ」が、本願発明17では、「膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成して」いるのに対し、引用方法発明では、「板状であ」って、シール一体型膜電極接合体2000の発電領域と重なる領域が断面波形状を成していない点。
2-ウ 「変位吸収部材が、基板の片面に」「配列して成る」「ばね機能部」が、本願発明1では、「多数」「配列」されているのに対し、引用発明では、「複数個」「配置」されている点。
2-エ 「膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層」することが、本願発明17では、「前記変位吸収部材の基板と、前記一方のセパレータとの接触部分の少なくとも一部を接合した後」であるのに対し、引用方法発明では、そのような特定がされていない点。

(2)判断
まず、上記2-イの相違点について検討するに、上記2-イの相違点は、上記1(1)で検討した1-ウの相違点と同様の相違点であり、上記1(2)で検討した理由と同様の理由により、上記2-イの相違点は、実質的な相違点であるし、また、上記2-イの相違点に係る本願発明17の発明特定事項を構成することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。

以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明17は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2 引用方法発明2からの容易想到性について
(1)対比
本願発明17と引用方法発明2とを対比する。
ア 引用方法発明2の「酸化剤電極9」及び「燃料電極10」、「電極膜接合体13」、「第1セパレータ21」及び「第2セパレータ22」、「弾性体23」、「燃料電池の積層体」は、本願発明17の「一対の電極層」、「膜電極接合体」、「一対のセパレータ」、「変位吸収部材」、「燃料電池スタック」にそれぞれ相当する。

イ 引用方法発明2の「単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13」「を備えて」いるとの発明特定事項は、本願発明17の「電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体」「を備えた燃料電池単セルを」「積層してなる」との発明特定事項に相当する。

ウ 引用方法発明2の「単セル24は」「酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えており、第1セパレータ21の酸化剤電極9に接触する面及び第2セパレータ22の燃料電極10に接触する面にはそれぞれ複数の酸化剤流路21a及び複数の燃料流路22aが設けられ、酸化剤流路21a及び燃料流路22aにそれぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスが流れるようになって」いるとの発明特定事項は、本願発明17の「膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータ」「を備えた燃料電池単セルを」「積層してなる」との発明特定事項に相当する。

エ 引用方法発明2の「弾性体23は導電性の材料が望まし」いとの発明特定事項は、本願発明17の「変位吸収部材」が「導電性を有」するとの発明特定事項に相当する。
また、引用発明の「単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えて」いるから、引用発明の「第1セパレータ21」及び「第2セパレータ22」は、「単位セル24」の両端面に形成されているものである。
そうすると、引用方法発明2の「複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている燃料電池の積層体25であって、」「第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されて」いるとの発明特定事項は、本願発明17の「一方のセパレータの電池外側面に配置され」た「変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを」「積層してなる」との発明特定事項に相当する。
さらに、引用方法発明2の「凹部21c内に配置されている弾性体23は弾性圧縮をしており、この弾性体23は第1セパレータ21及び第2セパレータ22に複数箇所で接触し押圧」するとの発明特定事項は、本願発明17の「変位吸収部材」が「厚さ方向の変位を吸収可能」であるとの発明特定事項に相当する。
したがって、引用方法発明2の「複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている燃料電池の積層体25であって、」「第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されており、弾性体23は導電性の材料が望ましく、凹部21c内に配置されている弾性体23は弾性圧縮をしており、この弾性体23は第1セパレータ21及び第2セパレータ22に複数箇所で接触し押圧」するとの発明特定事項は、本願発明17の「導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる」との発明特定事項に相当する。

オ 引用方法発明2の「第1セパレータ11及び第2セパレータ12の発電領域には、酸化剤流路21a及び燃料流路22aである矩形状の凹部が形成されている」との発明特定事項と、本願発明17の「一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成して」いるとの発明特定事項とは、「一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が凹凸形状を成して」いるとの発明特定事項で共通する。

カ 引用方法発明2の「単位セル24は電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えて」いるものであり、引用方法発明2の「燃料電池の積層体25」は、「複数積層された単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを備えている」ものであるから、引用方法発明2は、「電解質膜8を多孔質で導電性の酸化剤電極9及び燃料電極10で挟んで成る電極膜接合体13と、酸化剤電極9に接触する第1セパレータ21と、燃料電極10に接触する第2セパレータ22とを備えて」いる「単位セル24」と、「この単位セル24の間に設けられた弾性体23」とを積層するものであるといえる。
そうすると、引用方法発明2と本願発明の17とは、本願発明17の「変位吸収部材の基板と、前記一方のセパレータとの接触部分の少なくとも一部を接合した後、前記膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与して各燃料電池単セルを拘束した」との発明特定事項のうち、「膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層」するとの発明特定事項で共通する。

上記ア?カから、本願発明17と引用方法発明2とは、
「電解質膜を一対の電極層で挟持した構造を有する膜電極接合体と、膜電極接合体との間にガス流路を形成する一対のセパレータと、導電性を有し且つ一方のセパレータの電池外側面に配置されて厚さ方向の変位を吸収可能な変位吸収部材を備えた燃料電池単セルを複数枚積層してなる燃料電池スタックを製造するに際し、
前記一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が凹凸形状を成しており、
膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層する、
燃料電池スタックの製造方法。」で共通し、次の点で相違する。

(相違点)
3-ア 「一方のセパレータ」の「膜電極接合体の発電領域と重なる領域」が、本願発明17では、「断面波形状」であるのに対し、引用方法発明2では、「矩形状の凹部が形成されている」ものである点。
3-イ 「一方のセパレータ」の「膜電極接合体の発電領域と重なる領域」の「凹凸形状」が、本願発明では、「断面波形状」であるのに対し、引用方法発明2では、「矩形状の凹部」である点。
3-ウ 本願発明17では、「変位吸収部材は、基板の片面に多数のばね機能部を配列して成る構造を有して」いるのに対し、引用方法発明2では、「弾性体23は断面波形に形成されて」いる点。
3-エ 本願発明17では、「変位吸収部材の基板と、前記一方のセパレータとの接触部分の少なくとも一部を接合した後、前記膜電極接合体及び一対のセパレータと、変位吸収部材とが交互に配置されるようにこれらを積層し、その積層方向に所定荷重を付与して各燃料電池単セルを拘束した」のに対し、引用方法発明2では、単位セル24と、この単位セル24の間に設けられた弾性体23とを積層するものの、弾性体23と第1セパレータ21または第2セパレータ22とを接合することが特定されておらず、また、各単位セル24を積層後、所定荷重を付与して拘束することも特定されていない点。

(2)判断
まず、上記3-イの相違点について検討する。
引用文献1(上記第5 1(1)【0074】参照。)には、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eが記載されているものの、該複数の凸部390を有する形状は、断面波形状とはいえない。
そして、該複数の凸部390を有する形状を、断面波形状とする動機付けも存在しない。
仮に、該複数の凸部390を有する形状が「断面波形状」であるといえた場合に、引用方法発明2において、その第1セパレータ21または第2セパレータ22に代えて、引用文献1に記載された、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eが適用可能か否かを検討する。
引用文献2(上記第5 2(1)【0010】)には、「燃料電池の単位セルにおける第1セパレータ及び第2セパレータがそれぞれ酸化剤電極及び燃料電極に接触する面での押圧力がこの接触面全体にわたって適正で均一となって、電気化学反応が充分に行われ、発電効率の良い燃料電池を得ることを目的とする」と記載されており、この課題は、引用方法発明2の課題であるといえる。
そして、引用方法発明2は、その「第1セパレータ21が第2セパレータ22に直接接触する面21bには凹部21cが設けられており、この凹部21cに弾性体23が配置されており、」「弾性体23は断面波形に形成されて」いるところ、引用方法発明2において、その第2セパレータ22に代えて、引用文献1に記載された、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eを適用すると、弾性体23を配置する凹部21cは第2セパレータではなく、第1セパレータ21に設けられているから、弾性体23を配置する凹部21cは確保できる。
しかしながら、その場合、引用方法発明2の弾性体23と引用文献1に記載された複数の凸部390とが接触することとなり、引用方法発明2の弾性体23の断面波形と、引用文献1に記載された複数の凹部390との、凹凸の周期が一致する蓋然性は極めて低いから、弾性体23の断面波形が周期的な形状を保つことは困難であると考えられる。
そうすると、燃料電池の単位セルにおける第1セパレータ及び第2セパレータがそれぞれ酸化剤電極及び燃料電極に接触する面での押圧力がこの接触面全体にわたって均一とするという、上記課題を解決することが困難となるから、引用方法発明2において、その第2セパレータ22に代えて、引用文献1に記載された、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eを適用することには、阻害要因があるといえる。
したがって、引用文献1に記載された、複数の凸部390を備えたアノードプレート300eを適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

4 本願発明18について
本願発明18は、本願発明17の「一方のセパレータは、膜電極接合体の発電領域と重なる領域が断面波形状を成して」いるとの発明特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明17と同じ理由により、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審における拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2012-267164(P2012-267164)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山内 達人  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 長谷山 健
土屋 知久
発明の名称 燃料電池スタック  
代理人 的場 基憲  
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