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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1340951 |
審判番号 | 不服2017-7298 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-22 |
確定日 | 2018-06-07 |
事件の表示 | 特願2014-217231「D-グルコピラノシルグリセロール組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月19日出願公開、特開2016-84299〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成26年10月24日を出願日とする特許出願であって、平成28年9月20日に手続補正書が提出され、同年10月18日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月4日に意見書が提出され、同年2月13日付けで拒絶査定がされたのに対して、同年5月22日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同年7月5日に請求の理由に係る手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年9月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 下記式(1A)で表される化合物、下記式(1B)で表される化合物、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物を含有するD-グルコピラノシルグリセロール組成物であって、 下記式(1A)で表される化合物および下記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20?90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ 下記式(1A)で表される化合物および下記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、下記式(1B)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45?70:30(SAとSBの合計を100とする。)であることを特徴とする、D-グルコピラノシルグリセロール組成物。 【化1】 」 3 原査定の理由 原査定の理由は、要するに、本願発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない、という理由を含むものである。 刊行物2:東洋精糖株式会社,コスアルテ-ツージー COSARTE-2G,フレグランスジャーナル,2011年,Vol.39,No.1,pp.108-109 4 刊行物2の記載事項 刊行物2には、次の記載がある。 (1) 「水溶性多機能保湿剤 『COSARTE-2G』 (コスアルテ-ツージー) 東洋精糖株式会社」(108頁左欄表題及び著者部分) (2) 「このユリの根には保湿効果が期待できるGlyceryl glucoside(以下GG)が含まれていることが見いだされている。」(108頁左欄10?12行) (3) 「今回紹介する『COSARTE-2G』は,自然界にはごくわずかにしか含まれていないGGを,糖とグリセリンから生み出した製品である。」(108頁左欄15?17行) (4) 「2. COSARTE-2Gの特徴 2-1. 熱・pH安定性 10%COSARTE-2G溶液を用いて熱安定性およびpH 安定性を測定し,表1,2にまとめた。オートクレーブ処理の前後でCOSARTE-2Gの含量は変化せず,またpH3?13の広範囲のpHにおいても含量変化は認められなかった。以上のことからCOSARTE-2Gは安定性の高い製品であると言える。」(108頁左欄下から3行?右欄5行) (5) 「3. 製品概要 ・製品名:COSARTE-2G(コスアルテ-ツージー) ・INCI名:Glyceryl Glucoside ・表示名称:グリセリルグルコシド,水,グリセリン ・機能:保湿,アンチエイジング」(109頁右欄5?9行) 5 刊行物2に記載された発明 上記4(1)?(5)の摘示事項より、刊行物2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「グリセリルグルコシド、水及びグリセリンを含有する、水溶性多機能保湿剤 東洋精糖株式会社製COSARTE-2G(コスアルテ-ツージー)」 6 対比 本願発明において、【化1】の式(1A)、(1B)、(2A)及び(2B)の式で表される4種の化合物は、いずれもグリセリンとグルコースが脱水縮合した化合物、すなわち「グリセリルグルコシド」であるといえる。 また、引用発明の「COSARTE-2G(コスアルテ-ツージー)」はグリセリルグルコシド、水及びグリセリンの複数成分を含むものであるから、「組成物」であるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「グリセリルグルコシドを含む組成物」 の点で一致し、次の点で一応相違する。 一応の相違点:本願発明はグリセリルグルコシドとして式(1A)、(1B)、(2A)及び(2B)で各々表される4種のD-グルコピラノシルグリセロールを特定の質量比率の条件で含むD-グルコピラノシルグリセロール組成物であるのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点 7 判断 上記一応の相違点について検討する。 本願明細書【0060】及び【0061】には、以下の記載がある。 「東洋精糖(株)製の商品「コスアルテ-2G」は、本発明に用いる4種の特定D-グルコピラノシルグリセロール(化合物1A:1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、化合物1B:1-O-β-D-グルコピラノシルグリセロール、化合物2A:2-O-α-D-グルコピラノシルグリセロールおよび化合物2B:2-O-β-D-グルコピラノシルグリセロールの混合物)、水およびグリセリンを含有する組成物である。この商品中の、4種の特定D-グルコピラノシルグリセロールの純度(水およびグリセリンも含めた組成物中の成分全体の質量に対する、4種の特定D-グルコピラノシルグリセロールの合計質量の比率)は、約70?78%、平均73.5%であり、また前述したような合計質量比S1:S2はおよそ86:14、合計質量比SA:SBはおよそ62:38である。この商品から試料3として6サンプル(試料3a?3f)を選び、実施例に用いた。これらのサンプルの、前記HPLC測定条件1および2によりそれぞれ測定した合計質量比S1:S2および合計質量比SA:SBは下記表の通りである。・・・ 【表1】 」 そうすると、本願の出願当時、東洋精糖(株)製の「コスアルテ-2G」なる商品は、式(1A)?(2B)で表される4種のD-グルコピラノシルグリセロールの含有量について、本願発明で特定された質量比率の条件を満たす「D-グルコピラノシルグリセロール組成物」であると解される。 そして、引用発明の「COSARTE-2G(コスアルテ-ツージー)」と上記「コスアルテ-2G」とは、前者がアルファベットと数字の組合せ、及び、片仮名によって二通りに表記されているのに対し、後者はそれらが混在した表記となってはいるものの、同じ会社の製品であることもふまえれば、両者は同一の商品であると解されるから、引用発明の「COSARTE-2G(コスアルテ-ツージー)」も、本願発明において特定された質量比率の条件を満たすD-グルコピラノシルグリセロール組成物である蓋然性が高い。そうすると、両発明の間に実質的な差異はないこととなる。 したがって、上記一応の相違点は、実質的な相違点とはならない。 このため、本願発明は、引用発明と相違する点が存在せず、刊行物2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。 8 請求人の主張について (1) 請求人は、審判請求の理由において、刊行物2には「COSARTE-2G」が本願発明の「S1:S2」及び「SA:SB」の比率を満たすことが記載されていないところ、本願出願時にはこれら4種の異性体を分離して定量する技術が存在せず、本願明細書【0060】に記載の事項を知る由もなかったのだから、【0060】の記載が本願発明の新規性を否定する根拠にはなり得ず、したがって本願発明は引用文献2に記載された発明ではない旨主張する。 しかしながら、引用発明の「COSARTE-2G」なる商品が出願時に入手できないなどの実施をできない事情があれば格別、本願出願時に請求人が主張するような定量が可能であったか否か、また、【0060】の記載事項を当業者が知得していたか否かは、上記7の判断を左右しない。そして、当該商品と本願発明との間に実質的に差異がないことは、上記7で述べたとおりである。 (2) ところで、上記の定量技術について、例えば、『G. G. S. DUTTON et. al., SEPARATION BY GAS-LIQUID CHROMATOGRAPHY OF THE GLYCEROL AND ERYTHRITOL GLYCOSIDES OF D-GLUCOPYRANOSE AND MALTOSE, J. Chromatog., 1968, Vol.36, pp.283-289』(以下、「刊行物A」という。)には、次の記載がある。(なお、以下には、刊行物Aの当合議体による抄訳のみを掲記する。) 「スミス過ヨウ素酸分解 ・・・ 第5画分(132mg)はp-アニシジン噴霧による反応が弱かったので、水(25ml)に溶解し、炭酸鉛(2g)の存在下で過剰量の臭素とともに酸化した。脱イオン化により中性シロップ(95mg)を得、その一部(55mg)を過ヨウ素酸ナトリウム(0.1M、50ml)で酸化した。・・・第5画分の残部をトリメチルシリル化し、図1に示されるように成分に分解した。主な生成物を回収し、脱シリル化し、過ヨウ素酸により酸化し、還元し、加水分解した。このようにして、5a(10mg)を2-O-(α-D-グルコピラノシル)-グリセロールとして、5b(11mg)をそのβ-アノマーとして同定した。成分5a及び5bはホルムアルデヒドを生成せず、分解によりグリセロールのみを与えた。反対に、5c(9mg)はホルムアルデヒドを1.2:1のグリセロール及びエチレングリコールとともに与え(いくらか5bの混入あり)、1-O-(α-D-グルコピラノシル)-グリセロールであった。類似の挙動をした成分5d(10mg)は、したがってそのβ-アノマーであった。これらの及びそれに続く化合物のアノマー配置は、過去の経験に基づく。」(286頁3?4段落) 「 図1?3.トリメチルシリル誘導体のガス-液体クロマトグラフィー.エアログラフ A_(90)-P_(2),熱伝導度検出器,4ft.×0.25in.ステンレス鋼カラム,60/80メッシュ耐火れんが上に20%のGESF 96.第5及び第6画分,カラム温度は毎分6°で190°から250°へ,ヘリウム流量は120ml/分(図1及び2).・・・」(287頁) このように、本願出願前である1968年において、すでにこれらを分離して定量可能とする技術は当業者に知られており、したがって、出願時において技術は存在しなかったとする請求人の主張は、その前提において失当である。 9 むすび 上記のとおりであって、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 そうすると、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-03-27 |
結審通知日 | 2018-04-03 |
審決日 | 2018-04-17 |
出願番号 | 特願2014-217231(P2014-217231) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼ 美葉子 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
長谷川 茜 渡戸 正義 |
発明の名称 | D-グルコピラノシルグリセロール組成物 |
代理人 | 特許業務法人SSINPAT |