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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02P
管理番号 1340975
審判番号 不服2017-13349  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-07-02 
事件の表示 特願2013-98342「燃焼機関」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-238220、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月8日の出願(パリ条約による優先権主張2012年5月15日、ドイツ連邦共和国)であって、平成28年11月21日付け(発送日:同年11月28日)で拒絶理由通知がされ、平成29年2月28日に手続補正がされ、同年4月26日付け(発送日:同年5月8日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用例1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
1.特開2005-291065号公報
2.特開平5-180137号公報


第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定された以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)。

「【請求項1】
ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気を燃焼するための燃焼機関、すなわち火花点火ガス機関であって、少なくとも1つのシリンダ(10)を有し、前記シリンダ(10)または各シリンダ(10)によって燃焼室(11)が規定され、前記燃焼室は一方の側ではストローク運動するように支承されたシリンダのピストン(12)によって、および対向する側では火炎デッキ(13)によって制限され、前記火炎デッキ(13)内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の少なくとも1つのインレット弁(15、16)と、排気ガス用の少なくとも1つのアウトレット弁(17、18)とが取り付けられている燃焼機関において、
前記火炎デッキ(13)上に分散して複数の点火装置(21)が配置されており、前記点火装置は、それぞれのシリンダ(10)の燃焼室(11)内で燃料混合気を直接点火するために用いられ、前記火炎デッキ(13)内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の2つのインレット弁(15、16)と、排気ガス用の2つのアウトレット弁(17、18)が取り付けられており、各前記インレット弁(15、16)と各前記アウトレット弁(17、18)は、分離線(19)によって制限された前記火炎デッキ(13)のそれぞれ1つの四分円内に配置されており、複数の前記点火装置(21)が、前記火炎デッキ(13)の前記四分円の前記分離線(19)に沿って配置され、
前記複数の点火装置(21)は、前記ピストン(12)のストローク軸を基準にして回転対称に前記火炎デッキ(13)上に分散されていることを特徴とする燃焼機関。
【請求項2】
前記火炎デッキ(13)内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の2つのインレット弁(15、16)と、排気ガス用の2つのアウトレット弁(17、18)が取り付けられており、それぞれのインレット弁とそれぞれのアウトレット弁は、それぞれの弁の中点を通って延在する軸(20)に沿って配置されており、前記複数の点火装置(21)が前記軸(20)に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼機関。
【請求項3】
前記複数の前記点火装置(21)は、同時におよび/または時間的にずらして制御可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼機関。」


第4 引用例、引用発明等
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1(特開2005-291065号公報)には、「エンジン」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)

(1)引用例1の記載事項
1a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、主燃料と酸素含有ガスとの混合気を圧縮した燃焼室において、燃料噴射弁から副燃料を噴射して自己着火燃焼させることで前記混合気を着火させる噴射着火運転を行うエンジンに関する。」

1b)「【0010】
従って、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所謂パイロット着火エンジンにおいて、火花点火運転と噴射着火運転との間の移行をスムーズに行い、更には、火花点火運転において混合気を適切に燃焼させて失火及び排ガス温度の高温化を回避することができる技術を提供する点にある。」

1c)「【0021】
本発明の実施の形態について、図1?図3に基づいて説明する。
エンジン100は、ピストン2と、ピストン2を収容するシリンダ3とを備え、ピストン2をシリンダ3内で往復運動させると共に、吸気弁4及び排気弁5を開閉動作させて、シリンダ3内に形成された燃焼室1において吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行い、ピストン2の往復動をクランク軸17の回転運動として出力されるものであり、このような構成は、通常の4ストローク内燃機関と変わるところはない。
【0022】
このエンジン100は、メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MGを吸気路6に形成し、吸気行程において吸気弁4を開状態として吸気路6からその混合気MGを燃焼室1に吸気して、圧縮行程において排気弁5を閉状態としてその吸気した混合気MGを圧縮し、燃焼・膨張行程においてその圧縮した混合気を着火して燃焼させ、排気行程において排気弁5を開状態として燃焼後の排ガスを排気路7に排出する。
尚、混合気MGの当量比は、1未満、好ましくは0.5以上0.7以下の範囲内程度に設定される。
【0023】
燃焼室1には、上記吸気路6から吸気される主燃料MFとは異なり、主燃料MFよりも着火性に優れた液体燃料である軽油や灯油などの副燃料SFを、圧縮行程終了時に燃焼室1に高圧噴射して自己着火させる燃料噴射弁25が設けられている。」

1d)「【0030】
また、本実施形態のエンジン100は、燃焼室1として、シリンダ3の内面とピストン2の頂面とシリンダヘッド9の下面とで規定される主室11と、シリンダヘッド9の中央部(シリンダ3の軸心に沿った部分)に設けられた副室口金20内に形成された副室21とが設けられ、この主室11と副室21とは、上記副室口金20の主室11への突出部に形成された連通孔22を介して連通する。尚、上記副室21の容積比は、燃焼室1全体の2%以上20%以下程度が好ましい。」

1e)「【0035】
エンジン100は、図2に示すように、燃料噴射弁25が燃焼室1の中央部に配置され、複数具体的には2個の点火プラグ30が燃焼室1の中央部を中心に対称配置されており、更に、燃料噴射弁25は副室21に配置され、複数の点火プラグ30は主室11に配置されている。また、これら点火プラグ30は、例えば起動運転時や無負荷運転時等の燃焼室1において副燃料SFの自己着火や混合気MGの着火が安定していないときに、ECU40により作動されて、主室11に吸気された混合気MGを安定して火花点火して燃焼させるものである。
【0036】
特に、エンジン100の起動運転時には、燃焼室1が充分に昇温しておらず、更には、燃料噴射弁25に供給される副燃料SFの圧力が充分に上昇していないので、噴射着火運転を行って燃料噴射弁25により副燃料SFを噴射しても、その副燃料SFが自己着火しない場合がある。
また、エンジン100のクランク軸17にかかるエンジン負荷が遮断された無負荷状態においても、燃焼室1の圧力が比較的低いことから、噴射着火運転を行って燃料噴射弁25により副燃料SFを噴射しても、その副燃料SFが自己着火しない場合がある。
【0037】
そこで、ECU40は、起動運転時や無負荷運転時において、燃焼室1において圧縮された混合気MGを、上記点火プラグ30を作動させて点火する火花点火運転を行う運転制御手段42として機能するように構成されている。
【0038】
即ち、この運転制御手段42は、エンジン始動指令が入力されエンジン100を起動させる起動運転を行ったときに、先ず、モータ8によりクランク軸17を回転駆動させながら、上記点火プラグ30を作動させることにより、上記火花点火運転を行うことで、点火プラグ30の火花点火により混合気MGが火花点火されて燃焼し、その混合気MGの燃焼により、エンジン100が充分に暖機されることになり、上記火花点火運転の初期若しくは中期から燃料噴射弁25からの副燃料SFの噴射を開始することにより、エンジン100の暖機が進行して、その副燃料SFの自己着火燃焼が開始される。
【0039】
そして、燃料噴射弁25により噴射された副燃料SFの自己着火燃焼が安定して発生する状態となったときに、運転制御手段42は、上記点火プラグ30の作動が停止されて、副燃料SFの自己着火燃焼により主燃料MFからなる混合気MGを着火させる噴射着火運転に移行させる。
【0040】
また、この運転制御手段42は、エンジン負荷36が遮断されて無負荷状態となったときにも、上記点火プラグ30を作動させることにより、上記火花点火運転を行う。そして、エンジン負荷36が加えられる加負荷状態となったときには、上記点火プラグ30の作動を停止して、副燃料SFの自己着火燃焼により主燃料MFからなる混合気MGを着火させる噴射着火運転に移行させる。」

1f)段落【0038】の記載から、点火プラグ30は、燃焼室1内で混合気MGを直接点火するために用いられていることが理解できる。

1g)「2個の点火プラグ30が燃焼室1の中央部を中心に対称配置されており」(段落【0035】)との記載及び図3から、吸気弁4と排気弁5は、燃焼室1の中央部を通る線によって分けられたシリンダヘッド9のそれぞれの区画内に配置されているということができる。

1h)「2個の点火プラグ30が燃焼室1の中央部を中心に対称配置されており」(段落【0035】)との記載及び図3並びに一般にシリンダとピストンとシリンダヘッドとで規定される燃焼室の中央部はピストンのストローク軸に一致してることが技術常識であることを踏まえると、2個の点火プラグ30はピストン2のストローク軸を基準にして回転対称に分散されているということができる。

(2)引用発明
上記記載事項及び認定事項並びに図1ないし3の図示内容からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MGを燃焼するためのエンジン100、すなわち起動運転時や無負荷運転時に火花点火を行うエンジン100であって、少なくとも1つのシリンダ3を有し、前記シリンダ3または各シリンダ3によって燃焼室1が規定され、前記燃焼室1は一方の側ではストローク運動するように支承されたシリンダ3のピストン2によって、および対向する側ではシリンダヘッド9によって制限され、前記シリンダヘッド9内には、メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MG用の少なくとも1つの吸気弁4と、排気ガス用の少なくとも1つの排気弁5とが取り付けられているエンジン100において、
前記シリンダヘッド9上に分散して2個の点火プラグ30が配置されており、前記点火プラグ30は、それぞれのシリンダ3の燃焼室1内で混合気MGを直接点火するために用いられ、前記シリンダヘッド9内には、メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MG用の1つの吸気弁4と、排気ガス用の1つの排気弁5が取り付けられており、前記吸気弁4と前記排気弁5は、燃焼室1の中央部を通る線によって分けられた前記シリンダヘッド9のそれぞれの区画内に配置されており、2個の前記点火プラグ30が、前記シリンダヘッド9の前記燃焼室1の中央部を通る線に沿って配置され、
前記2個の点火プラグ30は、前記ピストン2のストローク軸を基準にして回転対称に前記シリンダヘッド9上に分散されているエンジン100。」

2.引用例2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(特開平5-180137号公報)には、「2点着火エンジン」に関し、図面(特に、図1ないし3及び5参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)引用例2の記載事項
2a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スワール生成用のプライマリ吸気ポートと、高吸入空気量領域で開かれる開閉弁を備えたセカンダリ吸気ポートとが隣り合って配置されるとともに、燃焼室に2つの点火プラグが配置されている2点着火エンジンに関するものである。」

2b)「【0013】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明の一実施例によるエンジンを示している。これらの図において、エンジンはシリンダブロック1およびシリンダヘッド2等で構成され、適宜数のシリンダを有し、各シリンダ内のピストン3の上方には燃焼室4が形成されている。シリンダヘッド2における燃焼室4の天井面は概略ペントルーフ形状となっている。上記燃焼室4には、プライマリおよびセカンダリの2つの吸気ポート6,7と、第1,第2の2つの排気ポート8,9とが開口し、さらに当実施例では、混合気供給専用ポート15も開口している。上記両吸気ポート6,7はシリンダヘッド2の一側面から燃焼室4にわたって形成され、また上記両排気ポート8,9はシリンダヘッド2の他側面から燃焼室4にわたって形成されており、これらに図外の吸気マニホールドおよび排気マニホールドが接続されるようになっている。」

2c)「【0018】また、上記燃焼室4には、第1,第2の2つの点火プラグ21,22が配設されている。上記第1点火プラグ21は、燃焼室4内のシリンダ中心付近に配置される。略シリンダ中心位置に混合気供給専用ポート15が設けられている当実施例では、第1点火プラグ21が、混合気供給専用ポート15を避けるためにシリンダ中心からある程度ずらされ、とくに両吸気ポート開口部6a,7a間側にオフセットした位置に設けられている。一方、第2点火プラグ22は、Sポート7の開口部7aとこれに隣り合う第2排気通路9の開口部9aとの間の位置に設けられている。そして、上記第1点火プラグ21が混合気供給専用ポート15と干渉しない範囲でシリンダ中心寄りに配置される一方、第2点火プラグ22がシリンダ外周寄りに配置されることにより、シリンダ中心からの距離は第1点火プラグ21の方が第2点火プラグ22よりも小さくされている。」

2d)「【0021】このような当実施例の装置によると、低吸入空気量領域では、Sポート7の開閉弁11が閉じられた状態で、Pポート6から流入する混合気により燃焼室4内に矢印a方向のスワールが生成される。そして、混合気はシリンダ中心付近に開口する混合気供給専用ポート15から燃焼室4に供給される。この混合気中の燃料は燃焼室4の中央側に比較的多く分布するが、上記スワールによってある程度はシリンダ外周側にも分散し、とくに霧化が悪くて粒径の大きい燃料は遠心力でシリンダ外周側に偏りつつスワール下流側へ移動するので、Sポート開口部7aの近傍のシリンダ外周側に、霧化の悪い燃料が多く溜る所謂エンドガスゾーンが生じる。このような状況下で、上記第1,第2の両点火プラグ21,22で着火が行われることにより、後に詳述するように、効果的に急速燃焼が行われて、低吸入空気量領域での燃焼安定性が高められ、リーンリミットが高められる。」

2e)図1及び2の記載並びに技術常識から、プライマリ吸気ポート6の開口部6a、セカンダリ吸気ポート7の開口部7a、排気ポート8の開口部8a及び排気ポート9の開口部9aのそれぞれに弁があることは自明である(以下、プライマリ吸気ポート6の開口部6a及びセカンダリ吸気ポートの開口部7aに設けられた弁を「吸気弁」といい、排気ポート8の開口部8a及び排気ポート8の開口部9aに設けられた弁を「排気弁」という。)

2f)上記2d)の摘記事項から、第1点火プラグ21及び第2の点火プラグ22は、シリンダの燃焼室4内で燃料混合気を直接点火するために用いられていることが理解できる。

2g)図5からプライマリ吸気ポート6の開口部6a、セカンダリ吸気ポート7の開口部7a、排気ポート8の開口部8a及び排気ポート9の開口部9aは、分離線によって制限されたシリンダヘッド2のそれぞれ1つの四分円内に配置されていることが看取できる。
そうすると、上記2e)から、吸気弁及び排気弁も、分離線によって制限されたシリンダヘッド2のそれぞれ1つの四分円内に配置されているということができる。

(2)引用例2技術
上記記載事項及び認定事項並びに図1ないし3及び5の図示内容からみて、引用例2には次の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されていると認められる。

「少なくとも1つのシリンダを有し、前記シリンダまたは各シリンダによって燃焼室4が規定され、前記燃焼室4は一方の側ではストローク運動するように支承されたシリンダのピストン3によって、および対向する側ではシリンダヘッド2によって制限され、前記シリンダヘッド2内には、少なくとも1つの吸気弁と、少なくとも1つの排気弁とが取り付けられている2点着火エンジンにおいて、シリンダヘッド2上に分散して第1点火プラグ21及び第2点火プラグ22が配置されており、前記第1点火プラグ21及び第2点火プラグ22は、それぞれのシリンダの燃焼室4内で混合気を直接点火するために用いられ、前記シリンダヘッド2内には、2つの吸気弁と、2つの排気弁が取り付けられており、各前記吸気弁と各前記排気弁は、分離線によって制限された前記シリンダヘッド2のそれぞれ1つの四分円内に配置されており、第1点火プラグ21は燃焼室内4のシリンダ中心付近に配置され、第2点火プラグ22はシリンダ外周寄りに配置されている技術。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MG」は、その機能、構成及び技術的意義から本願発明1の「ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気」に相当し、以下同様に、「エンジン100」は「燃焼機関」に、「シリンダ3」は「シリンダ」に、「燃焼室1」は「燃焼室」に、「ピストン2」は「ピストン」に、「シリンダヘッド9」は「火炎デッキ」に、「吸気弁4」は「インレット弁」に、「排気弁5」は「アウトレット弁」に、「2個の点火プラグ30」は「複数の点火装置」に、「混合気MG」は「燃料混合気」に、「燃焼室1の中央部を通る線」は「分離線」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「起動運転時や無負荷運転時に火花点火を行うエンジン100」と本願発明1の「火花点火ガス機関」とは、「火花点火を行うガス機関」という限りにおいて一致し、以下同様に、「燃焼室1の中央部を通る線によって分けられた前記シリンダヘッド9のそれぞれの区画内に」と「分離線(19)によって制限された前記火炎デッキ(13)のそれぞれ1つの四分円内に」とは、「分離線によって制限された前記火炎デッキのそれぞれの区画内に」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気を燃焼するための燃焼機関、すなわち火花点火を行うガス機関であって、
少なくとも1つのシリンダを有し、前記シリンダまたは各シリンダによって燃焼室が規定され、前記燃焼室は一方の側ではストローク運動するように支承されたシリンダのピストンによって、および対向する側では火炎デッキによって制限され、前記火炎デッキ内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の少なくとも1つのインレット弁と、排気ガス用の少なくとも1つのアウトレット弁とが取り付けられている燃焼機関において、
前記火炎デッキ上に分散して複数の点火装置が配置されており、前記点火装置は、それぞれのシリンダの燃焼室内で燃料混合気を直接点火するために用いられ、前記火炎デッキ内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用のインレット弁と、排気ガス用のアウトレット弁が取り付けられており、前記インレット弁と前記アウトレット弁は、分離線によって制限された前記火炎デッキのそれぞれの区画内に配置されており、複数の前記点火装置が、前記火炎デッキの前記分離線に沿って配置され、
前記複数の点火装置は、前記ピストンのストローク軸を基準にして回転対称に前記火炎デッキ上に分散されている燃焼機関。」


[相違点1]
「火花点火を行うガス機関」に関して、本願発明1においては「火花点火ガス機関」であるのに対して、
引用発明においては「起動運転時や無負荷運転時に火花点火を行うエンジン」である点。

[相違点2]
「前記火炎デッキ内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用のインレット弁と、排気ガス用のアウトレット弁が取り付けられており、前記インレット弁と前記アウトレット弁は、分離線によって制限された前記火炎デッキのそれぞれの区画内に配置されており、複数の前記点火装置が、前記火炎デッキの前記分離線に沿って配置され、」に関して、本願発明1においては火炎デッキ内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の「2つの」インレット弁と、排気ガス用の「2つの」アウトレット弁が取り付けられており、「各」前記インレット弁と「各」前記アウトレット弁は、分離線によって制限された前記火炎デッキのそれぞれ「1つの四分円内」に配置されており、複数の前記点火装置が、前記火炎デッキの前記「四分円」の前記分離線に沿って配置されているのに対して、
引用発明においてはシリンダヘッド9内には、メタンを主成分とする天然ガスである主燃料MFと空気との混合気MG用の「1つの」吸気弁4と、排気ガス用の「1つの」排気弁5が取り付けられており、前記吸気弁4と 前記排気弁5は、燃焼室1の中央部を通る線によって分けられた前記シリンダヘッド9のそれぞれの区画内に配置されており、2個の点火プラグが、シリンダヘッド9の燃焼室1の中央部を通る線に沿って配置されているものであり、吸気弁4及び排気弁5はそれぞれ「1つ」であり、吸気弁4と排気弁5は、分離線によって制限された前記シリンダヘッド9のそれぞれ「1つの四分円」内に配置されておらず、複数の点火プラグが、前記シリンダヘッド9の前記「四分円」の前記分離線に沿って配置されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用例2技術は前示のとおり「少なくとも1つのシリンダを有し、前記シリンダまたは各シリンダによって燃焼室4が規定され、前記燃焼室4は一方の側ではストローク運動するように支承されたシリンダのピストン3によって、および対向する側ではシリンダヘッド2によって制限され、前記シリンダヘッド2内には、少なくとも1つの吸気弁と、少なくとも1つの排気弁とが取り付けられている2点着火エンジンにおいて、シリンダヘッド2上に分散して第1点火プラグ21及び第2点火プラグ22が配置されており、前記第1及び第2点火プラグ21,22は、それぞれのシリンダの燃焼室4内で混合気を直接点火するために用いられ、前記シリンダヘッド2内には、2つの吸気弁と、2つの排気弁が取り付けられており、各前記吸気弁と各前記排気弁は、分離線によって制限された前記シリンダヘッド2のそれぞれ1つの四分円内に配置されており、第1点火プラグ21は燃焼室内4のシリンダ中心付近に配置され、第2点火プラグ22はシリンダ外周寄りに配置されている技術」であって、2個の点火プラグ21、22は、シリンダヘッド9の「四分円」の分離線に沿って配置されたものではないから、引用発明に引用例2技術を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることはできないものである。
ところで、引用例2には、比較例として、2個の点火プラグを、図5におけるB位置とC位置に配置することが記載されている(段落【0027】ないし【0028】。なお、図5の符号「13」は、「B」の誤記であるものと認められる。)。
この比較例は「2個の点火プラグが、シリンダヘッドの四分円の分離線に沿って配置され、前記2個の点火プラグは、ピストンのストローク軸を基準にして回転対称に前記シリンダヘッド上に分散されている」と一応いうことができる。
しかしながら、これはあくまでも比較例であって、引用例2には「・・・上記のようにシリンダ中心に対して点対称位置に2つの点火プラグを配置するといった構造では、両点火プラグが燃焼室内の混合気の燃焼に均等に寄与することにならず、急速燃焼によってリーンリミットを高める上で改善の余地がある。」(段落【0005】)と記載されており、2つの点火プラグをシリンダ中心に対して点対称位置に配置することを否定しているのであるから、引用例2からは、2個の点火プラグが、シリンダヘッドの四分円の分離線に沿って配置され、前記2個の点火プラグは、ピストンのストローク軸を基準にして回転対称に前記シリンダヘッド上に分散されているという技術を抽出することはできない。

したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2及び3について
本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2及び3は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 原査定について
本願発明1ないし3は、「前記火炎デッキ(13)内には、ガス状の燃料と空気からなる燃料混合気用の2つのインレット弁(15、16)と、排気ガス用の2つのアウトレット弁(17、18)が取り付けられており、各前記インレット弁(15、16)と各前記アウトレット弁(17、18)は、分離線(19)によって制限された前記火炎デッキ(13)のそれぞれ1つの四分円内に配置されており、複数の前記点火装置(21)が、前記火炎デッキ(13)の前記四分円の前記分離線(19)に沿って配置され」るという発明特定事項を有するものであるから、上記「第5」で検討したとおり、当業者であっても原査定で引用された引用例1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-15 
出願番号 特願2013-98342(P2013-98342)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 鈴木 充
粟倉 裕二
発明の名称 燃焼機関  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
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