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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23K
管理番号 1341036
異議申立番号 異議2017-700552  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-01 
確定日 2018-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6038378号発明「採食性が優れた乳牛飼育用飼料及び当該飼料を用いた乳牛の飼育方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6038378号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。 特許第6038378号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 特許第6038378号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6038378号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年7月20日に特許出願され、平成28年11月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月1日付けで特許異議申立人矢部陽子(以下「申立人1」という。)より、平成29年6月5日付けで高橋 淳(「高」は原文ははしご高。以下「申立人2」という。)より、平成29年6月6日付けで須藤政彦(以下「申立人3」という。)より、平成29年6月7日付けで高野利恵(以下「申立人4」という。)より、請求項1ないし4に対してそれぞれ特許異議の申立て(特許異議申立書について、以下「申立人1申立書」などという。)がされ、平成29年9月21日付け(同年9月27日発送)で取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年11月27日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人1から平成30年1月5日付けで、申立人2から平成29年12月27日付けで、申立人3から平成30年1月5日付けで、申立人4から平成30年1月10日付けで、それぞれ意見書(以下「申立人1意見書」などという。)が提出されたものである。


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者が平成29年11月27日付けでした訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし4に訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容とするものである。(下線は訂正箇所を示す。)

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「全乾物中、繊維(NDF)が20?26質量%であって、大豆皮またはビートパルプが3質量%以上配合されている泌乳牛用飼料。」との記載を、
「全乾物中、繊維(NDF)が20?26質量%であって、大豆皮またはビートパルプが3質量%以上配合され、全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である、搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料。」に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4の
「請求項3に記載のペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法。」との記載を、
「請求項1に記載のペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、「泌乳牛用飼料」の配合や形状等を、「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である、搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。

イ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1において、まず、「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である、」「泌乳牛用飼料」と限定する点については、明細書の発明の詳細な説明の「本発明の実施態様は、以下のとおりである。・・・
〔2〕全飼料に対し脂肪分が2.5?3.4質量%に設計されている〔1〕の乳牛用飼料。
〔3〕耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である〔1〕又は〔2〕の乳牛用飼料。」(段落【0010】)との記載から、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、「搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料」と限定する点については、明細書の発明の詳細な説明の「本発明の乳牛飼育用飼料を使用すれば、搾乳ロボット・・・の使用時の乳牛の飼育・・・効率を向上させることができ」(段落【0030】)との記載から、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件特許の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1ないし3に伴い請求項4における引用関係を整理する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 一群の請求項
訂正前の請求項2ないし請求項4は、いずれも直接ないし間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正後の請求項1ないし4は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

4 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-4]について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件訂正発明
本件訂正により訂正された請求項1及び4に係る発明(以下「本件訂正発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(請求項1をAないしDに分説した。以下、「構成A」などという。)。
なお、請求項2及び3は、本件訂正により削除された。

「【請求項1】
A 全乾物中、繊維(NDF)が20?26質量%であって、大豆皮またはビートパルプが3質量%以上配合され、
B 全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である、
C 搾乳ロボット機で飼育されている
D 泌乳牛用飼料。」

「【請求項4】
請求項1に記載のペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法。」

2 取消理由の概要
(1) 特許法第29条第1項第3号 新規性欠如(以下「取消理由1」という。)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

ア 請求項1
請求項1に係る発明は、引用例1、2、21、22又は29に記載された発明である。

イ 請求項2
請求項2に係る発明は、引用例2に記載された発明である。

(2) 特許法第29条第2項 進歩性欠如(以下「取消理由2」という。)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

ア 請求項1
(ア) 請求項1に係る発明は、引用例1、2、5及び6に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 請求項1に係る発明は、引用例10に記載された発明及び引用例11ないし17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求項1に係る発明は、引用例21に記載された発明及び引用例23ないし27に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 請求項1に係る発明は、引用例22に記載された発明及び引用例28に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ) 請求項1に係る発明は、引用例2、30、31及び33に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(カ) 請求項1に係る発明は、引用例29、30及び32に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 請求項2
(ア) 請求項2に係る発明は、引用例1ないし6に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 請求項2に係る発明は、引用例10に記載された発明及び引用例11ないし17、及び20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求項2に係る発明は、引用例21ないし28に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 請求項2に係る発明は、引用例2、30に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、30に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、請求項2に係る発明は、引用例2、30、31及び33に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、30及び32に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求項3
(ア) 請求項3に係る発明は、引用例1ないし8に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 請求項3に係る発明は、引用例10に記載された発明及び引用例11ないし18、及び20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項3に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求項3に係る発明は、引用例21ないし28に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項3に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 請求項3に係る発明は、引用例2、34に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、34に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、請求項3に係る発明は、引用例2、30、31、33及び34に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、30、32及び34に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項3に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 請求項4
(ア) 請求項4に係る発明は、引用例1ないし9に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項4に係る発明は、上記引用例に加えて引用例18、21、23、24、25、27及び34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 請求項4に係る発明は、引用例10に記載された発明及び引用例11ないし20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項4に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、請求項4に係る発明は、上記引用例に加えて引用例21、23、24、25、27及び34に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求項4に係る発明は、引用例21ないし28に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項4に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 請求項4に係る発明は、引用例2、34に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、34に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、請求項4に係る発明は、引用例2、30、31、33及び34に記載された発明及び事項、あるいは引用例29、30、32及び34に記載された発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項4に係る発明は、上記引用例に加えて引用例7及び8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 特許法第36条第6項第1号 サポート要件違反(以下「取消理由3」という。)
本件の請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(4) 特許法第36条第4項第1号 実施可能要件違反(以下「取消理由4」という。)
本件の請求項1ないし4に係る特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし4に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

引用例1:特表2008-500835号公報(申立人1甲第1号証)
引用例2:Asian-Aus.J.Anim.Sci.2000.Vol.13,No.12,1691-1698(申立人1甲第2号証かつ申立人4甲第1号証)
引用例3:「日本標準飼料成分表(2001年版)」、社団法人中央畜産会、平成15年5月30日(申立人1甲第3号証)
引用例4:「飼料の実際知識」、東洋経済新報社、昭和45年8月1日、88?91頁(申立人1甲第4号証)
引用例5:米国特許出願公開第2010/0330187号明細書(申立人1甲第5号証)
引用例6:「NRC乳牛飼養標準 -2001年・第7版-」、株式会社デーリィ・ジャパン社、2002年2月1日、30?40頁(申立人1甲第6号証)
引用例7:米国特許出願公開第2007/0172540号明細書(申立人1甲第7号証)
引用例8:「新版配合飼料」、産業図書株式会社、昭和44年4月15日、200?207頁(申立人1甲第8号証)
引用例9:「牛、人にやさしい搾乳ロボットの活用 導入酪農家の体験に学ぶ」、酪農総合研究所、2001年1月30日、5?11頁(申立人1甲第9号証)

引用例10:特開2013-255433号公報(申立人2甲第1号証)
引用例11:Jud Heinrichs、Geoff Zanton、and Gustavo Lascano、”Feed Efficiency in Dairy Heifers”、2008年(申立人2甲第2号証)
引用例12:扇元敬司 他、「畜産ハンドブック」、株式会社講談社、2014年7月10日(申立人2甲第3号証)
引用例13:「知識ゼロからの畜産入門」、一般社団法人家の光協会、2016年4月21日(申立人2甲第4号証)
引用例14:三好志朗、ルーメン8、株式会社デーリィ・ジャパン社、2010年2月(申立人2甲第5号証)
引用例15:酪農・豆知識第31号、日産合成工業株式会社 学術・開発部、平成21年12月(申立人2甲第6号証)
引用例16:家保通信第303号、大分家畜保健衛生所、平成23年8月(申立人2甲第7号証)
引用例17:「豊年ファイバーフィードII」、武陽食品、平成29年4月5日検索、インターネット <URL:http://www.buyou.co.jp/2007/shohin/honen.html> (申立人2甲第8号証)
引用例18:望月伸二、「搾乳ロボットのパフォーマンスを引き出す飼料とは」、株式会社デーリィ・ジャパン社、平成29年3月1日(申立人2甲第9号証)
引用例19:特表平9-502361号公報(申立人2甲第10号証)
引用例20:「配合飼料講座 下巻 製造篇」、配合飼料講座編集委員会、チクサン出版社、昭和56年3月20日(申立人2甲第11号証)

引用例21:Livestock Science,127,(2010),45-50(申立人3甲第1号証)
引用例22:Journal of Dairy Science,Vol.89,No.11,4312-4320,2006(申立人3甲第2号証)
引用例23:Journal of Dairy Science,Vol.87,No.11,3808-3815,2004(申立人3甲第3号証)
引用例24:Journal of Dairy Science,Vol.92,No.5,2317-2325,2009(申立人3甲第4号証)
引用例25:Journal of Dairy Science,Vol.89,No.8,3241-3249,2006(申立人3甲第5号証)
引用例26:Journal of Dairy Science,Vol.86,No.4,1052-1073,2003(申立人3甲第6号証)
引用例27:Journal of Dairy Science,Vol.87,No,5,1372-1379,2004(申立人3甲第7号証)
引用例28:特開2006-174796号公報(申立人3甲第8号証)

引用例29:Journal of Dairy Science,Vol.86,No,11,3553-3561,2003(申立人4甲第2号証)
引用例30:群馬県畜産試験場研究報告、第21号、2014年12月(申立人4甲第3号証)
引用例31:畜産の研究第44巻第12号、株式会社養賢堂、1990(申立人4甲第4号証)
引用例32:Animal Feed Science and Technology 2010,155,9-17(申立人4甲第5号証)
引用例33:北海道立新得畜産試験場研究報告、第22号、1998年8月(申立人4甲第6号証)
引用例34:DAIRYMAN 2015,65(11),48-49(申立人4甲第7号証)

3 引用例の記載
(1) 引用例1
取消理由通知において引用した刊行物である引用例1(とくに段落【0005】、【0125】、【0127】(表7)、【0128】(表8)、【0132】、【0135】(表13)、及び【0136】(表14))には、申立人1が主張するとおり、以下の発明が記載されている。

「A1 NDFが22.9%であって、ダイズ外皮が19.95重量%配合される、
あるいは、NDFが21.24%であって、ダイズ外皮が28.65重量%及びビートパルプが11.5重量%配合される、
D1 泌乳牛用飼料。」

(2) 引用例2
取消理由通知において引用した刊行物である引用例2には、次の事項が記載されている(下線は決定で付した。以下同じ。)。
(仮訳を付した。以下同様。)

ア 「An in situ digestion trial (Experiment 1) and a lactation trial (Experiment 2) were conducted to determine the effects of replacing corn and wheat bran with soyhulls (SH) in lactating dairy cow diets on the extent and kinetics of digestion of DM, and NDR and lactation performance. In experiment 1, five mixed feeds consisting of mixed concentrate and roughages (50:50 on a DM basis) were formulated ・・・ to produce five levels (0, 25, 50, 75 and 100%)of SH replacement for corn and wheat bran. ・・・ In experiment 2, ・・・SH replaced corn and wheat bran in mixed concentrates at 0, 25, and 50%, respectively. These mixed concentrates were mixed with roughages and fed ad libitum as complete diets. 」(1691頁 要約 1から17行)
(仮訳)「乳牛の大豆飼料中のトウモロコシと小麦ふすまを大豆外皮(SH)で代替することで、DMとNDFの消化の程度と動態に及ぼす効果と、泌乳性を確認するため、in situ消化試験(実験1)と搾乳試験(実験2)を行った。実験1では、トウモロコシと小麦ふすまの、5つのレベル(0、25、50、75、100%)のSH代替物を生成するために、混合された濃縮物および粗飼料(DM基準で50:50)からなる5つの混合飼料を・・・処方した。・・・実験2では、・・・混合濃縮物中のトウモロコシおよび小麦ふすまをそれぞれ0、25、50%で代替した。これらの混合濃縮物を粗飼料と混合し、完全飼料として自由摂取させた。」

イ 「Experiment 2. Lactation performance trial
・・・The treatments were three mixed concentrates with 0, 25 or 50% SH replacements for corn and wheat bran as used in Experiment 1. The ingredient composition of the mixed concentrates are shown in table 2.」(1693頁左欄8から19行)
(仮訳)「実験2.泌乳成績試験 ・・・その給餌とは、実験1で使用したような、トウモロコシと小麦ふすまの0,25,50%を大豆外皮で置換した3種類の混合濃厚飼料である。混合濃厚飼料の成分組成を表2に示す。」

ウ 「Table1.Formulations and chemical composition of mixed feeds for in situ digestion study(Experiment 1)」
SH replacement level (%)
0 25 50 75 100
Ingredient (% of DM)
・・・
SH 0 6.25 12.5 18.75 25.0
・・・
Chemical composition
DM(%) 92.3 92.4 92.1 92.4 92.1
・・・
NDF (% of DM) 39.2 41.8 45.1 48.3 51.4」(1692頁 表1)
(仮訳)「in situ 消化研究のための混合飼料の処方および化学組成(実験1)」

エ 「Table 2. Ingredient composition of mixed concentrates used in lactating trial (Experiment 2)
SH replacement level (%)
0 25 50
Ingredient (% of DM)
・・・
SH 0 12.5 25.0
・・・
Chemical composition
・・・
NDF (% of DM) 18.3 23.5 30.0」(1693頁 表2)
(仮訳)「表2 乳試験に用いられる混合濃縮物の成分組成(実験2)」

オ 上記アないしエを踏まえると、引用例2には以下の発明が記載されている。

「A2 NDFが23.5%(乾物中)であって、大豆外皮が12.5%(乾物中)配合される、
D2 泌乳牛用の混合濃厚飼料。」

(3) 引用例3
取消理由通知において引用した刊行物である引用例3には、標準飼料成分表として、トウモロコシ、フスマ、大豆皮、トウモロコシ・ジスチラース・グレイン、綿実粕、アマニ粕等の各種飼料原料の組成が記載されている。

(4) 引用例4
取消理由通知において引用した刊行物である引用例4(とくに89頁)には、次の事項が記載されている。

「骨粉類には、蒸製骨粉(steamed bone meal あるいはcooked bone meal)と、特製蒸製骨粉(special steamed bone meal)とがあり、蒸製骨粉の粗脂肪は1.2%、特製蒸製骨粉の粗脂肪は4%であること。」

(5) 引用例5
取消理由通知において引用した刊行物である引用例5(とくに段落[0001]、[0031]、[0032]、及び表1)には、申立人1が主張するとおり、以下の発明が記載されている。

「A5 NDFが22.0%であって、大豆皮が8.1重量%配合される、
D5 ホルスタイン種の雌牛(Holstein heifer)用飼料。」

(6) 引用例6
取消理由通知において引用した刊行物である引用例6には、次の事項が記載されている。

ア 「泌乳牛用飼料の脂肪」(30頁右欄29行)
「通常、飼料の脂肪含量は乾物中6から7%を超えるべきではない。・・・脂肪の添加により飼料摂取量が減少する場合には、泌乳初期には脂肪含量は6%以下にすることが望ましい・・・通常、穀物と粗飼料を混合した場合には、脂肪含量は約3%となる。それゆえ、DMで飼料の3?4%までは脂肪を添加できる。」(32頁左欄20?33行)

イ 「・・・乳牛用飼料のNDF含量を飼料DM中25%に設定した場合、飼料DM中のNDFの19%が粗飼料由来でなくてはならない・・・乳牛はNDF含量が25%で、粗飼料由来のNDFが19%の飼料に耐えられるようであるが、この推奨値は特定の場合のみ適用できる値である(すなわち、飼料中の粗飼料が適切な切断長であり、主なデンプン源が乾燥トウモロコシ、さらに混合飼料で給与する場合である)。」(37頁左欄31行から右欄2行)

ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用例6には以下の発明が記載されている。

「A6 NDFが25%(乾物中)であって、
B6 脂肪分が6から7%(乾物中)を超えず、脂肪の添加により飼料摂取量が減少する場合には泌乳初期には脂肪含量は6%以下(乾物中)である、
D6 泌乳牛用飼料。」

(7) 引用例7
取消理由通知において引用した刊行物である引用例7(とくに段落[0038]、[0060]、[0061]、[0082]、及び特許請求の範囲の請求項1)には、申立人1が主張するとおり、以下の発明が記載されている。

「A7 原料副産物が大豆皮であり、
B7 約35.8lbs/ft^(3)以上のペレット密度および約98.5%以上のペレット耐久性を有するペレット形態である、
D7 ウシなどの反芻動物用飼料。」

(8) 引用例8
取消理由通知において引用した刊行物である引用例8には、次の事項が記載されている。

ア 「7・4 ペレットの製造管理」
・・・
7・4・1 原料
・・・
特に脂肪は3%添加すれば柔らかいペレットやくずれの増加を防止するとされている。最近ブロイラー飼料では6%の脂肪が添加されるようになったが、この場合脂肪をミキサーで全量を添加混合すると品質の悪い製品ができるので、あらかじめ混合機で添加する量を0.5?1%程度にとどめ、残部は冷却後添加すると良質のものが得られ、かつ脂肪量の少ない飼料のペレットの製造も容易に行うことができる。」(201頁8から最下行)

イ 「7・4・9 脂肪の添加
ペレッティング後に脂肪を添加した高脂肪含量のペレットは、ペレット前に添加したものよりも品質的に、かつ耐久性にすぐれ、また普通ペレットのままでも、3?4%の脂肪を効果的に添加することができる。回転ドラムや低速度の攪拌機を有する通過式の混合機は、多量の脂肪添加に優れている。合理的な設計や正確な脂肪の添加は最高の高脂肪含量のペレットを作る場合に非常に有効な方法である。」(204頁11から16行)

ウ 「7・4・10 ペレットの耐久性
ペレットはさらに耐久性、または硬度が要求される。すなわち成型されたペレットが需要家に渡る輸送間で衝撃、圧縮、振動、摩擦などのいろいろな物理的作用をうけ、摩耗、崩壊し多くの粉末や不定型品があれば問題を生じる。」(204頁21から24行)

(9) 引用例9
取消理由通知において引用した刊行物である引用例9には、次の事項が記載されている。

ア 「1980年代後半の初期のシステム研究において、Ipemaらは20頭の乳牛をフリーストール牛舎で飼養し、これまで用いられている濃厚飼料の自動給餌機に搾乳ロボットを装備して自動搾乳を行い、牛の進入回数を11週間にわたり検討した。」(6頁20から23行)

イ 「また、1990年代後半より行われている、放牧を加味した搾乳ロボット利用のシステムは、一定の成果を収めている。さらに搾乳ロボットを開発・販売する企業でも、システムに関する研究が急速に進展している。これにより、より実用性の高い飼養管理システムが導入されている。」(11頁13から17行)

(10) 引用例10
取消理由通知において引用した刊行物である引用例10には、次の事項が記載されている。

ア 「【0026】 本発明の飼料では、3ヶ月齢以下の子牛を対象とする・・・」

イ 「【0027】本発明の飼料に配合されるNDF供給原料としては、例えば、・・・大豆種実の外皮である大豆皮・・・ここで例に挙げた原料の他、ビートパルプ、・・・なども、NDF供給原料として用いることが出来る。」

ウ 「【0051】・・・飼料の形態はペレットとし、配合割合及び成分値(設計値)は表1の通りとした。
【表1】
・・・ 実施例1
粗脂肪(%) ・・・ 4.8
・・・
NDF(%) ・・・ 19.7 」

エ 「【0053】・・・また、哺乳期間及び離乳後の比較例1及び実施例1の飼料由来のNDF、粗飼料由来NDF及び総摂取飼料中NDFを表5に示した。・・・。
【表5】
・・・ 実施例1
哺乳期間 試験飼料由来NDF(%) ・・・ 18.6
粗飼料由来NDF(%) ・・・ 3.9
総飼料中NDF(%) ・・・ 22.5

離乳後 試験飼料由来NDF(%) ・・・ 18.1
粗飼料由来NDF(%) ・・・ 5.7
総飼料中NDF(%) ・・・ 23.8

試験期間通期 試験飼料由来NDF(%) ・・・ 18.2
粗飼料由来NDF(%) ・・・ 5.3
総飼料中NDF(%) ・・・ 23.5」

オ 上記アないしエを踏まえると、引用例10には以下の発明が記載されている。

「A10 NDFが設計値19.7%(乾物中)であって、大豆皮またはビートパルプをNDF供給原料として用い得て、
B10 脂肪分が設計値4.8重量%(乾物中)で、ペレットである、
D10 3ヶ月齢以下の子牛用飼料。」

(11) 引用例11
取消理由通知において引用した刊行物である引用例11(とくに49頁)には、次の事項が記載されている。

「乳牛にとっては栄養効率という概念が重要であり、栄養効率は、飼料1ポンド当たりの搾乳量により測定される。」

(12) 引用例12
取消理由通知において引用した刊行物である引用例12(とくに174から176頁、及び178頁)には、次の事項が記載されている。

「一般的に、家畜用の飼料は、粗飼料及び濃厚飼料とその他の飼料に分かれる。粗飼料としては、乾草、わら類、農場副産物などがある。これに対し、濃厚飼料は粗飼料と比較して嵩が大きく、栄養価も高い。すなわち、粗飼料に比べ繊維質が少なく、タンパク質や炭水化物などの栄養素を多く含むものであり、牛の嗜好性も高い。濃厚飼料の代表的なものとして穀類、油かす類がある。牛に対するものとしては、トウモロコシの使用量が圧倒的に多い。また、農業副産物として、ビートパルプ(サトウキビから糖蜜を分離したもの)があり、これは、消化性のよい良質の繊維であり、牛の飼料として重要である。
反芻動物では植物由来のセルロースを利用する独自の消化システムが発達し、容積の大きい複数の胃をもっており、ウシ、ヒツジ、ヤギの場合には、第一胃、第二胃、第三胃までを前胃とよび、第四胃が単胃動物の胃に相当するところ、第一胃、第二胃には多様な微生物が生息しており、摂取された植物性飼料はこれらの微生物により利用され短鎖脂肪酸が生成する(ルーメン発酵)。」

(13) 引用例13
取消理由通知において引用した刊行物である引用例13(とくに76頁)には、次の事項が記載されている。

「家畜に与える飼料は「粗飼料」と「濃厚飼料」に分類されるところ、濃厚飼料は、粗飼料に比べ繊維質が少なく、タンパク質や炭水化物などの栄養素を多く含むこと。」

(14) 引用例14
取消理由通知において引用した刊行物である引用例14(とくに137頁)には、次の事項が記載されている。

「粗飼料の摂取量を増加させることが、ルーメンアシドーシスの予防に役立つこと。」

(15) 引用例15
取消理由通知において引用した刊行物である引用例15(とくに1から2頁)には、次の事項が記載されている

「牛の成長を促す観点からは、栄養価が高い濃厚飼料の比率を高めることが望ましいが、他方、濃厚飼料の比率を高めることは、乳酸の蓄積及びPHの低下をもたらし、ルーメンアシドーシスの危険を高めることになる。これに対し、粗飼料には、ルーメンアシドーシスの危険を高める要素はない。むしろ、酸性化を中和するための唾液などのバッファー及びルーメンマットの形成により、ルーメンアシドーシスの危険を低下させる効果がある。
ルーメンアシドーシスを予防しつつ生産性を高めるためには、NDF含量は30?40%の間に設定するのが良い。」

(16) 引用例16
取消理由通知において引用した刊行物である引用例16(とくに1頁)には、次の事項が記載されている。

「濃厚飼料の給与過多によるルーメンアシドーシスのリスクの増加は、子牛以外の牛と子牛の双方についてあり得ること。」

(17) 引用例17
取消理由通知において引用したウェブページである引用例17には、次の事項が記載されている。

「大豆皮と咀嚼を促す牧草とを併用して給与することにより、第一胃内の酢酸濃度を下げることなく、濃厚飼料を単純に増加させた場合よりも乳量を増加させることが可能であること。」

(18) 引用例18
取消理由通知において引用した刊行物である引用例18(とくに70から71頁)には、次の事項が記載されている。

「搾乳ロボットの普及が進んでいるが、このような搾乳ロボットを利用する場合には、牛が自ら餌場に移動することを促す必要があり、そのためには、濃厚飼料の比率を高めることが望ましいが、他方、前記のとおり、濃厚飼料の比率を高めることは、ルーメンアシドーシスの危険を高めることになる。
また、搾乳ロボットへの飼料の供給は、タンクから長いラインを通じて供給されることが多く、粉化か懸念される。この点については、耐久度が高いペレット(96%)をロボット内で給与すると、低いペレット(91.2%)に比べ、搾乳回数が高まる。」

(19) 引用例19
取消理由通知において引用した刊行物である引用例19(とくに4頁)には、次の事項が記載されている

「乳牛について自動給餌装置が慣用されていること。」

(20) 引用例20
取消理由通知において引用した刊行物である引用例20には、次の事項が記載されている

ア 「ペレットの硬度が粉化率に大きく影響することは容易に想像できるところであるが、・・・硬度が低いペレットほど粉化率が高いことわかる。」(164頁13から19行)

イ 「ペレットの粉化を少なくするためには硬度を上げればよいことは、・・・明らかであるが、余り固過ぎると、動物の嗜好性が悪くなったり、消化率が低下するなどの難点がある。従って、動物の種別に応じた適度の固さのペレットをいかに効率良く作るかが問題になる。」(164頁22から24行)

ウ 「脂肪の含有量が数パーセントを超えるとペレットは急激に軟質化する。ただし、ダイを通過しにくい配合組成に対しては生産を容易にし、かつ、ダイの摩耗を低減する効果がある。」(165頁20から21行)

(21) 引用例21
取消理由通知において引用した刊行物である引用例21には、次の事項が記載されている。

ア 「Concentrate composition for Automatic Milking Systems - Effect on milking frequency」(45頁 表題)
(仮訳)「自動搾乳機における配合飼料の組成と搾乳回数への影響」

イ 「The purpose of this study was to investigate the potential of affecting milking frequency in an Automatic Milking System(AMS)by changing ingredient composition of the concentrate fed in the AMS. In six experiments,six experimental concentrates were tested against a Standard concentrate all supplied in the amounts of 5 kg/cow/day.」(45頁 要約 1から4行)
(仮訳)「要約
本研究の目的は、自動搾乳機(AMS)中で給餌される配合飼料の組成の変化が、AMSにおける搾乳回数に及ぼす影響を調査することである。1日当たり1頭5kgの給餌という条件の下、標準的な配合飼料に対して、6種類の試験配合飼料を用いて6回の試験を実施した・・・」

イ 「Six different concentrates,shown in Table l were tested against a Standard fibre rich concentrate composed by many ingredients.Four of the experimental concentrates contained 53% of different grains(Barley,Wheat,Barley-Oats and Maize,respectively),one contained 100% Artificially dried grass and one was high in fat content(Fat rich).The concentrates were made into pellets of good quality,and offered in the AMS in a daily amount of 5 kg per cow.」(46頁右欄7から14行)
(仮訳)「様々な種類の原料からなる、繊維が豊富な標準配合飼料に対して、表1に示した6つの試験配合飼料を調査した。試験用配合飼料は異なる穀類(大麦、小麦、大麦-エン麦、トウモロコシ)をそれぞれ53%含有するもの4種、人工的に乾燥させた牧草100%からなるもの1種、脂質を多く含有するもの1種である。配合飼料は高品質のペレットであり、自動搾乳機(AMS)において1日1頭あたり5kgが給与された。」

ウ 「Table 1
・・・
Concentrate kg/100kg Standard ・・・ Fat rich ・・・
Dried beet pulp 16
Soybean hulls 10 ・・・ 12 」(46頁 表1)

エ 「Table 2
・・・
Contents in dry matter Standard Barely Wheat
Fat, % 5.2 7.6 7.6
NDF, % 28.8 18.4 16.9

Contents in dry matter Barley-Oats Maize Fat rich
Fat, % 8.2 9.2 13.2
NDF, % 21.0 15.1 24.8

Contents in dry matter Artificially dried grass
Fat, % 3.7
NDF, % 46.9」(47頁 表2)

オ 上記アないしエを踏まえると、引用例21には以下の発明が記載されている。

「A21 配合飼料の組成の変化が自動搾乳機における搾乳回数に及ぼす影響を調査するための標準的な配合飼料及びそれに対する6種類の試験配合飼料の中で、大豆皮を含む配合である標準的な配合飼料及び脂肪リッチ配合飼料であって、
標準的な配合でNDFが28.8%(乾物中)であって、大豆皮が10重量%及び乾燥ビートパルプが16重量%配合され、
あるいは、脂肪リッチ配合でNDFが24.8%(乾物中)であって、大豆皮が12重量%配合され、
B21 標準的な配合で脂肪分が5.2%(乾物中)、
あるいは、脂肪リッチ配合で脂肪分が13.2%(乾物中)で、
ペレットである、
C21 自動搾乳機で給餌される、
D21 泌乳牛用飼料。」

(22) 引用例22
取消理由通知において引用した刊行物である引用例22(とくに4312頁左欄1から31行、4313頁左欄11から25行及び表1)には、以下の発明が記載されている。

「A22 NDFが22.7±1.6%(乾物中)であって、ビートパルプが10%(乾物中)配合される、
D22 泌乳牛用飼料。」

(23) 引用例23
取消理由通知において引用した刊行物である引用例23(とくに3808頁左欄1から30行及び3811頁左欄21行から最下行並びに表1及び表2)には、以下の発明が記載されている。

「A23 NDFが44.1±1.1%(乾物中)であって、大豆皮が18.0%(乾物中)配合される、
B23 ペレットである、
C23 自動給餌機で給餌される、
D23 泌乳牛用飼料。」

(24) 引用例24
取消理由通知において引用した刊行物である引用例24(とくに2317頁左欄1行から右欄13行及び2318頁右欄下から13行から2319頁右欄11行並びに表2及び表3)には、以下の発明が記載されている。

「A24 NDFが28.5±1.1%(乾物中)であって、大豆皮が30.0%(乾物中)配合される、
B24 ペレットである、
C24 自動搾乳機や自動給餌機で給餌する、
D24 泌乳牛用飼料。」

(25) 引用例25
取消理由通知において引用した刊行物である引用例25(とくに3241頁左欄1から最下行及び3243頁左欄7から42行並びに表1及び表2)には、以下の発明が記載されている。

「A25 NDFが38.5±1.1%(乾物中)であって、大豆皮が30.8%(乾物中)配合される、
B25 ペレットである、
C25 自動搾乳機や自動給餌機で給与する、
D25 泌乳牛用飼料。」

(26) 引用例26
取消理由通知において引用した刊行物である引用例26(とくに1052頁及び1063から1065頁並びに表2及び表4)には、次の事項が記載されている。

「大豆皮が泌乳牛の消化率等が高い飼料原料であること。」

(27) 引用例27
取消理由通知において引用した刊行物である引用例27(とくに1372頁)には、次の事項が記載されている。

「大豆皮を含む自動搾乳機用混合飼料ペレットは、乳牛の飼料として、消化率が高く、採食性も良いこと。」

(28) 引用例28
取消理由通知において引用した刊行物である引用例28(とくに段落【0006】)には、次の事項が記載されている。

「ビートパルプが泌乳牛の消化率及び採食性が高く、アシドーシスのリスクが低い飼料原料であること。」

(29) 引用例29
取消理由通知において引用した刊行物である引用例29(とくに3554頁左欄26から35行及び表2)には、申立人4が主張するとおり、以下の発明が記載されている。

「A29 NDFが26.2%(乾物中)であって、乾燥・ペレット化したビートパルプが6.1%(乾物中)配合される、
D29 泌乳牛用飼料。」

(30) 引用例30
取消理由通知において引用した刊行物である引用例30には、次の事項が記載されている。

ア 「牛における消化率が高い繊維を多く含みエネルギー価が比較的高い副産物(高消化性副産物)である・・・マメ皮をトウモロコシの1/2の代用に、また、粗飼料性も兼備したビートパルプ・・・を粗飼料のうちのアルファルファ乾草の1/2の代用に給与し、これら高消化性繊維に富んだ副産物多給の可能性について検討した。」(108頁左欄23から31行)

イ 「副産物によっては脂肪含量が高いものがあるが、前年度試験で生米ぬかを多給した場合に飼料中粗脂肪含量が高くなり乳生産が低下した。脂肪の多給は第一胃内微生物およびその活性に影響を及ぼし繊維の消化率を低下させることから、飼料乾物中脂肪含量は5?6%以下にすることが推奨されている。」(108頁右欄30行から109頁左欄2行)

(31) 引用例31
取消理由通知において引用した刊行物である引用例31(とくに40頁及び42頁)には、次の事項が記載されている。

「大豆皮及びビートパルプは高繊維質で嗜好性の良い泌乳牛の飼料原料であること。」

(32) 引用例32
取消理由通知において引用した刊行物である引用例32(とくに13頁及び15頁)には、次の事項が記載されている。

「大豆皮は泌乳牛にとって消化性が高い飼料原料で、泌乳牛は容易に大豆皮NDFを多く摂取すること。」及び「泌乳牛への大豆皮給与により乾物摂取量と乳生産量が増加すること。」

(33) 引用例33
取消理由通知において引用した刊行物である引用例33(とくに9頁及び11頁並びに表8)には、次の事項が記載されている。

「ビートパルプは高繊維質でエネルギーおよび繊維源を供給する泌乳牛の飼料原料であること。」及び「ビートパルプはデンプン質飼料と比較すると第一胃内で急速にpHが低下せず粗飼料の摂取量を低下させないこと。」

(34) 引用例34
取消理由通知において引用した刊行物である引用例34(とくに49頁)には、次の事項が記載されている。

「泌乳牛の飼育において労働軽減等の目的で搾乳ロボットが利用されること。」及び「搾乳ロボットでは嗜好性が高い飼料を使い、粉末が出ないように固めたペレットを給与して、泌乳牛を飼育すること。」

4 判断
(1) 取消理由通知に記載した取消理由について
ア 取消理由1(特許法第29条第1項 新規性欠如)について
(ア) 本件訂正発明1について
本件訂正発明1と引用例1、2、21、22または29に記載された発明とを対比すると、少なくとも、本件訂正発明1は「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である」(構成B)泌乳牛用飼料であるのに対し、引用例1、2、21、22または29に記載された発明はそのような構成を備えていない点で相違する。
よって、本件訂正発明1は、引用例1、2、21、22または29に記載された発明ではない。

(イ) 本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(ア)の判断と同様の理由により、引用例1、2、21、22または29に記載された発明ではない。

(ウ) 小括
以上のとおり、取消理由1によっては、本件訂正後の請求項1及び4にかかる特許を取り消すことはできない。

イ 取消理由2(特許法第29条第2項 進歩性欠如)について
(ア) 本件訂正発明1について
a 引用例1を主引用例として
(a) 対比
本件訂正発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、少なくとも、本件訂正発明1は「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である」(構成B)泌乳牛用飼料であるのに対し、引用例1に記載された発明の泌乳牛用飼料は、ペレット形状と特定されておらず、また脂肪分の配合量が特定されていない点で相違する(以下「相違点1」という。)。

(b) 判断
相違点1について検討する。
引用例21には、脂肪分を5.2%(乾物中)とした、ペレットである、自動搾乳機で給餌される泌乳牛用飼料が記載されている。
引用例10には、脂肪分を4.8重量%(乾物中)とした、ペレットである、3ヶ月齢以下の子牛用飼料が記載されている。
引用例8には、ペレットである飼料の脂肪分について、「ブロイラー飼料では6%の脂肪が添加されるようになったが、・・・あらかじめ混合機で添加する量を0.5?1%程度にとどめ、残部は冷却後添加する・・・3?4%の脂肪を効果的に添加することができる。」という記載がある。また、引用例8には、「ペレットはさらに耐久性、または硬度が要求される。すなわち成型されたペレットが需要家に渡る輸送間で衝撃、圧縮、振動、摩擦などのいろいろな物理的作用をうけ、摩耗、崩壊し多くの粉末や不定型品があれば問題を生じる。」と、ペレットに耐久性が必要である旨の記載もある。
引用例20には、硬度が低いペレットほど粉化率が高く、また、脂肪の含有量が数パーセントを超えるとペレットは急激に軟質化することが記載されている。
引用例18には、泌乳牛用飼料に関し、耐久度が高いペレット(96%)をロボット内で給与すると、低いペレット(91.2%)に比べ、搾乳回数が高まるとの記載がある。
引用例34には、搾乳ロボットでは嗜好性が高い飼料を使い、粉末が出ないように固めたペレットを給与して、泌乳牛を飼育するとの記載がある。
引用例7には、ウシなどの反芻動物用飼料に関し、約35.8lbs/ft^(3)以上のペレット密度および約98.5%以上のペレット耐久性を有するペレット形態の飼料が例示されている。
以上のことから、脂肪分を有し、ペレット形状である、泌乳牛用飼料は、本件発明の出願日前から公知又は周知であるといえる。
しかしながら、全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計された、ペレット形状である泌乳牛用飼料は、本件発明の出願日前から公知又は周知であるとはいえない。
補足すると、引用例20に記載されている、脂肪の含有量が数パーセントを超えるとペレットは急激に軟質化するとの「数パーセント」が、2.5?3.4%と解する根拠は無く、引用例21や引用例8を参酌すると、5%程度であると解され、さらに上記3(20)ウに摘記したとおり、軟質化すると生産を容易にしダイの摩耗を低減できるという効果が生じることも述べているので、引用例20の記載は単純に脂肪の含有量を減らすことを示唆するものでもない。また、他の引用例には、ペレット形状の飼料の脂肪の量について開示されていない。
そうすると、引用例2ないし34には、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は記載も示唆もされていないといえる。

また、引用例18に記載されているように、泌乳牛用飼料において、耐久度が高いペレットを用いると搾乳回数が高まることが知られており、また、引用例20に記載されているように、硬度が低いペレットほど粉化率が高く、脂肪の含有量が数パーセントを超えるとペレットは急激に軟質化することが知られており、さらに、引用例7に記載されているように、約35.8lbs/ft^(3)以上のペレット密度および約98.5%以上のペレット耐久性を有するペレット形態の飼料が知られているとしても、ペレットの全飼料に対する脂肪分を具体的に2.5?3.4質量%と規定することを示唆することにはならず、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

さらに、引用例6には、脂肪分の配合量について、脂肪分が6から7%(乾物中)を超えず、脂肪の添加により飼料摂取量が減少する場合には泌乳初期には脂肪含量は6%以下(乾物中)の泌乳牛用飼料が記載されており、また、引用例30には、泌乳牛用飼料の脂肪について、飼料乾物中脂肪含量は5?6%以下にすることが推奨されるという記載があるとしても、脂肪分を具体的に2.5?3.4%とすることが開示されているとはいえず、そのような配合とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、引用例1に記載された発明において、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件訂正発明1は、相違点1に係る構成を備えることにより、ペレット形状の泌乳牛用飼料において、エネルギー要求量を満たしつつ、搬送ラインでも崩れない安定した形状であるという効果を奏するものである(本件特許明細書段落【0006】、【0016】参照)。

よって、本件訂正発明1は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2ないし34に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

b 引用例2ないし6、11から17、22、26、28ないし33のいずれかを主引用例として
引用例2ないし6、11から17、26、28ないし33は、ペレット形状の飼料について記載されているものではないから、上記aで検討したとおり、引用例2ないし6、11から17、26、28ないし33のいずれかの発明を主引用例として相違点1に係る本件訂正発明1のごとく構成することは、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。

c 引用例21を主引用例として
(a) 対比
本件訂正発明1と引用例21に記載された発明とを対比すると、少なくとも、ペレット形状泌乳牛用飼料について、本件訂正発明1は「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上」(構成B)としているのに対し、引用例21に記載された発明はそのような構成を備えていない点で相違する(以下「相違点2」という。)

(b) 判断
相違点2について検討する。
引用例21には、ペレットである泌乳牛用飼料について、脂肪分を5.2%(乾物中)とした「標準的な配合飼料」が記載されているところ、該「標準的な配合飼料」は、配合飼料の組成の変化が自動搾乳機における搾乳回数に及ぼす影響の調査における各種(6種類)試験配合飼料の標準として用いられたものであり、引用例21には、その標準の脂肪分の配合量を調整することは記載されていない。しかも、標準的な配合飼料の脂肪分配合量は、標準的な配合飼料及びそれに対する6種類の試験配合飼料それぞれの脂肪分配合量の中で、人工的に乾燥させた牧草100%からなる試験配合飼料の脂肪分配合を除き最も少ない配合量であり、それをさらに減らすことが示唆されるものではない。なお、人工的に乾燥させた牧草100%からなる試験配合飼料でも、3.7%の脂肪分を有している。
そして、上記aで検討したとおり、引用例1ないし20、22ないし34には、全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状の泌乳牛用飼料は記載も示唆もされていない。
したがって、引用例21において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
よって、本件訂正発明1は、当業者が引用例21に記載された発明及び引用例1ないし20、22ないし34に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

d 引用例10を主引用例として
(a) 対比
本件訂正発明1と引用例10に記載された発明とを対比すると、少なくとも、ペレット形状の牛用飼料について、本件訂正発明1の飼料は泌乳牛用であって「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上」(構成B)としているのに対し、引用例10に記載された発明は3ヶ月齢以下の子牛用飼料であって上記構成Bを備えていない点で相違する(以下「相違点3」という。)

(b) 判断
相違点3について検討する。
引用例10は、脂肪分を4.8重量%(乾物中)とした3ヶ月齢以下の子牛用飼料が記載されているものであり、泌乳牛に対しこの脂肪分の配合量をより低くすることは記載も示唆もされていない。
そして、上記aで検討したとおり、引用例1ないし9、11ないし34には、全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状の泌乳牛用飼料は記載も示唆もされていない。
したがって、引用例10において、相違点3に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
よって、本件訂正発明1は、当業者が引用例10に記載された発明及び引用例1ないし9、11ないし34に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない

e 引用例7ないし9、18ないし20、23ないし25、27、34を主引用例として
引用例7ないし9、18ないし20、23ないし25、27、34は、ペレット形状の飼料について、あるいは飼料を搾乳ロボット機や自動給餌機で給与することについて記載されているものであるが、泌乳牛用ペレット形状飼料における脂肪分の配合量について記載されているものではないから、上記a並びにc及びdで検討したとおり、引用例7ないし9、18ないし20、23ないし25、27、34のいずれかの発明を主引用例として相違点2あるいは3に係る本件訂正発明1の構成のごとく構成することは、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。

f 申立人の主張について
(a) 申立人1は、引用例2の実験2の、トウモロコシと小麦ふすまの0,25,50%を大豆外皮で置換した混合濃厚飼料3種類中の25%代替のものが、3.277?3.373%程度の脂肪分であると推定される旨の主張をしている。
しかしながら、引用例2の混合濃厚飼料は、乳牛の大豆飼料中のトウモロコシと小麦ふすまを大豆外皮で代替した場合の泌乳成績を試験する実験のために用意した、トウモロコシと小麦ふすまの0,25,50%を大豆外皮で置換した3種類の混合濃厚飼料であり、これら各混合濃厚飼料を粗飼料と混合し完全飼料として自由摂取させて、実験を行ったものである。このような実験が前提の飼料のその1種類が、そのまま搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用のペレット形状とされることが引用例2から示唆されるものではない。また引用例2には脂肪分の量の数値や、脂肪分の量と実験結果との関係などの記載もなく、ペレット形状飼料において望ましい脂肪分の量について示唆されるものでもない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(b) 申立人2は、意見書において、本件訂正発明1の数値範囲は当業者の通常の創作能力の範囲内の最適化あるいは好適化である旨の主張をしている。
しかしながら、単なる飼料の脂肪分の最適化あるいは好適化ではなく、ペレット形状の泌乳牛用飼料を、エネルギー要求量と搬送ラインでも崩れない安定した形状の2つを両立するという観点で最適化あるいは好適化することは、引用例1ないし34のいずれにも記載されておらず、本件訂正発明1の、ペレット形状泌乳牛用飼料において、「全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計」するという構成を採用することは、当業者の通常の創作能力の範囲内とはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

g まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、当業者が引用例1ないし34に記載の発明及び事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(ア)の判断と同様の理由により、当業者が引用例1ないし34に記載の発明及び事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ) 小括
以上のとおり、取消理由2によっては、本件訂正後の請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 取消理由3(特許法第36条第6項第1号 サポート要件違反)について
(ア) 検討
a 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおり、本件訂正発明1、4の全構成が記載されている。
本件訂正発明1の構成Aについて、段落【0010】の、
「本発明の実施態様は、以下のとおりである。
〔1〕全乾物中、繊維(NDF)が20?26質量%であって、大豆皮またはビートパルプが3?20質量%配合されている乳牛用飼料。」という記載。
同構成Bについて、同段落の、
「〔2〕全飼料に対し脂肪分が2.5?3.4質量%に設計されている〔1〕の乳牛用飼料。
〔3〕耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である〔1〕又は〔2〕の乳牛用飼料。」という記載。
同構成Cについて、段落【0030】の、
「本発明の乳牛飼育用飼料を使用すれば、搾乳ロボット・・・の使用時の乳牛の飼育・・・効率を向上させることができ」という記載
同構成Dについて、段落【0010】、【0030】の「乳牛用飼料」、「乳牛飼育用飼料」という記載(構成Dの「泌」乳牛という点について補足すると、段落【0030】には「本発明の乳牛飼育用飼料を使用すれば」「乳牛の・・・搾乳効率を向上させることができる」と記載されていることから、該「乳牛」が泌乳牛を指すことは明らかである。)。
本件訂正発明4の構成について、段落【0010】の、
「〔4〕〔3〕のペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する乳牛の飼育方法。」という記載。

さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明1、4の構成により課題を解決できると当業者が認識できる程度の説明が記載されており(段落【0004】ないし【0016】)、その中で構成A、Bの配合比についても下記のとおり説明されている(決定で下線を付与。)。
「【発明を実施するための形態】
【0014】本発明の乳牛飼育用飼料に用いられる繊維としては、大豆皮、ビートパルプ等が例示され、アシドーシスのリスクを有効に低減するためには、乾量基準で全飼料に対し20?26質量%とする必要があり・・・繊維が20質量%未満ではアシドーシスのリスクが高まり、26質量%を超えるとエネルギー不足から摂取欲求が低下するという問題が生じる。
【0015】本発明の乳牛飼育用飼料に用いられる大豆皮は、大豆の外表面の薄皮で、大豆の製粉時の副産物であり、ビートパルプは、ビートを窄汁した後の残渣であり、こられのいずれか又はこれらの混合物を、乾量基準で全飼料に対し・・・3質量%以上とすると、エネルギー摂取量が増加してさらに好ましい。さらに、これらの原料をペレット形状で配合率を高めることにより、採食性を高めた。
【0016】乳牛飼育用飼料に用いられる原料で脂肪分が含まれるものとしては、穀類や添加油脂等が知られており、本発明の飼料の調製に当たっては、これらの配合量を調整することにより、全飼料に対し2.5?3.4質量%とする必要がある。脂肪分が2.5質量%未満ではエネルギーを充足することが難しく、3.4質量%を超えるとペレット硬度、耐久性が低下するという問題が生じる。」

また、構成Bのペレットの耐久度及び硬度についても、段落【0016】に「・・・全飼料に対し・・・脂肪分が・・・3.4質量%を超えるとペレット硬度、耐久性が低下するという問題が生じる。」との記載から、脂肪分が3.4質量%を超えて低下したものではない程度の(言い換えれば「搬送ラインでも崩れない安定した形状」(段落【0006】)が損なわれない程度の)耐久度及び硬度を意味するものと理解することができる。

よって、本件訂正発明1及び4は、発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。

b 申立人2、3、4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例は、本件訂正発明1、4の構成の効果を示すものではないので、サポート要件違反である旨を主張している。
しかしながら、上記aで述べたように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明1、4の構成により課題を解決できると当業者が認識できる程度の説明が記載されており、本件訂正発明1及び4は、発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例は、大豆皮の配合に関する効果は確認しているということはできるから、本件訂正発明1、4の構成すべてについて実験したものとはいえないとしても、そのことによりサポート要件違反とまではいえない。

(イ) 小括
以上のとおり、取消理由3によっては、請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。

エ 取消理由4(特許法第36条第4項第1号 実施可能要件違反)について
(ア) 検討
上記ウで検討したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明1、4の全構成が記載されており、それぞれの成分の比率についても、明確に記載されているから、当業者であれば、その各成分を当該量配合してペレット形状の飼料を作成することは、容易に実施できることである。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1、4を容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(イ) 小括
以上のとおり、取消理由4によっては、請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。

(2) 訂正の請求の内容に付随して生じた特許異議申立理由(明確性要件違反)について
ア 申立人の主張の内容
申立人1、3は、意見書において、本件訂正に付随して生じた新たな取消理由として、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていないとして、以下のとおり主張している。

(ア) 本件訂正発明1について(申立人1)
本件訂正発明1の「搾乳ロボット機で飼育されている」という記載の意味が不明である。

(イ) 本件訂正発明4について(申立人1、3)
本件訂正発明1では「搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料」とされているのにも関わらず、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明4は「自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法」となっており、自動給餌機と搾乳ロボット機の関係が明確でない。

イ 検討
(ア) 本件訂正発明1について
本件訂正発明1の「搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛」とはその文言のとおり「搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛」を意味することは明確である。
よって、申立人1の主張は採用できない。

(イ) 本件訂正発明4について
本件訂正発明1の「搾乳ロボット機」にかかる記載は「搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料」というものであり、すなわち、該飼料が対象とする泌乳牛を「搾乳ロボット機で飼育されている」と特定するものである。
これに対し、本件訂正発明4の「自動給餌機又は搾乳ロボット機」にかかる記載は「ペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法」というものであり、すなわち、該飼料の「給与」を「自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する」と特定するものである。
よって、本件訂正発明1が「搾乳ロボット機」、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明4が「自動給餌機又は搾乳ロボット機」となっていても、そのことは両立可能であり明確性要件違反であるとはいえない。

ウ まとめ
以上のように、本件訂正発明1、4の記載が明確性要件違反となるとの主張は理由がない。また他に明確性要件違反となる点も発見しない。
以上のとおり、訂正の請求の内容に付随して生じた特許異議申立理由によっては、請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。

5 請求項2、3に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項2、3を削除する本件訂正が認められたので、請求項2、3に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。

したがって、請求項2、3に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。

第4 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立て理由、証拠によっては、本件請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2及び3に係る本件特許異議申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全乾物中、繊維(NDF)が20?26質量%であって、大豆皮またはビートパルプが3質量%以上配合され、全飼料に対し、脂肪分が2.5?3.4質量%に設計され、耐久度が95%以上、且つ硬度が8.5kgf以上のペレット形状である、搾乳ロボット機で飼育されている泌乳牛用飼料。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1に記載のペレット状乳牛用飼料を自動給餌機又は搾乳ロボット機で給与する泌乳牛の飼育方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-20 
出願番号 特願2016-142068(P2016-142068)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23K)
P 1 651・ 536- YAA (A23K)
P 1 651・ 537- YAA (A23K)
P 1 651・ 121- YAA (A23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 門 良成  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 小野 忠悦
前川 慎喜
登録日 2016-11-11 
登録番号 特許第6038378号(P6038378)
権利者 フィード・ワン株式会社
発明の名称 採食性が優れた乳牛飼育用飼料及び当該飼料を用いた乳牛の飼育方法  
代理人 特許業務法人もえぎ特許事務所  
代理人 特許業務法人 もえぎ特許事務所  
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