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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 全部申し立て 特123条1項5号  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1341042
異議申立番号 異議2017-700222  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-06 
確定日 2018-04-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5986068号発明「光学的に活性な領域及び光学的に不活性な領域を含む再帰反射性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5986068号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第5986068号の請求項1、2、3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5986068号の請求項1?3に係る特許についての出願は、2010年(平成22年)4月15日を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成28年8月12日にその特許権の設定登録がされ、同年9月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、特許掲載公報の発行から6月以内である平成29年3月6日に特許異議申立人オラフォル ヨーロッパ ゲーエムベーハー(以下、単に「特許異議申立人」という。)により請求項1?3に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成29年6月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年9月19日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)があったものである。
なお、特許異議申立人に対し、本件訂正請求があった旨の通知を行い、意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は意見書を提出しなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、2、3は、いずれも他の請求項の記載を引用して記載されたものではない。
そうすると、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項において規定する請求項である、請求項1、請求項2、請求項3ごとにされたものである。

2 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る訂正について
(1) 訂正の内容
本件特許の請求の範囲の請求項1に係る訂正の内容は以下のとおりである。(下線は、当合議体において、訂正箇所を表すものとして付与した。以下、同様。)
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「再帰反射性物品であって」と記載されているのを、「再帰反射性白色物品であって」に訂正する。

イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「第1領域及び第2領域を有する不透明感圧接着剤層であって、前記第2領域は前記構造化表面と接触する、不透明感圧接着剤層」と記載されているのを、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、及び前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域を有する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に訂正する。

ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1領域におけるバリア層」と記載されているのを、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層」に訂正する。

エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に「前記バリア層を有する前記第1の領域と前記第2の領域」と記載されているのを、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域」に訂正する。

オ 訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項1に「前記不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」と記載されているのを、「前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」に訂正する。

カ 訂正事項1-6
特許請求の範囲の請求項1に「再帰反射性物品。」と記載されているのを、「再帰反射性白色物品。」に訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無及び一群の請求項
ア 訂正事項1-1?1-6の目的
(ア) 訂正事項1-1及び1-6は、「再帰反射性物品」を、白色である「再帰反射性白色物品」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(イ) 訂正事項1-2は、以下の訂正に分けて考えることができる。
[A]「不透明感圧接着剤層」を「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」とする訂正。
[B]「第1領域」を、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、」とする訂正。
[C]「第2領域」及び「前記第2領域は前記構造化表面と接触する」を、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域」とする訂正。
ここで、上記[A]の訂正は、「不透明感圧接着剤層」を、TiO_(2)を含有し、白色である「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に限定する訂正である。
上記[B]の訂正は、「不透明感圧接着剤層」の「第1領域」を、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む」「第1領域」に限定する訂正である。
上記[C]の訂正は、「前記構造化表面と接触する」「第2領域」を、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する」「第2領域」に限定する訂正である。
したがって、上記[A]?[C]の訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(ウ) 訂正事項1-3は、「前記第1領域におけるバリア層」を、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、」「前記第1領域におけるバリア層」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(エ) 訂正事項1-4は、「第1の領域」及び「第2の領域」が、既出の「第1領域」及び「第2領域」と対応するものであることを明瞭にしようとする訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(オ) 訂正事項1-5は、「前記不透明感圧接着剤層」 を、TiO_(2)を含有し、白色である「前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項1-1?1-6の特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アによれば、訂正事項1-1?1-3、1-5及び訂正事項1-6は、「再帰反射性物品」、「不透明感圧接着剤層」、「バリア層」に限定を付加しようとするものであり、訂正事項1-4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、訂正事項1-1?1-6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項1-1?1-6の新規事項の有無
(ア) 訂正事項1-1及び訂正事項1-6に関連する記載として、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(特許された時点での明細書、特許請求の範囲及び図面である。以下、「特許明細書等」という。)の段落【0004】には、【背景技術】として以下の記載がある。
「典型的に、キューブコーナー要素は単一の頂点で交差する3つの互いに垂直な光学面を含む。概して、光源からコーナーキューブ要素に入射する光は、3つの垂直なコーナーキューブ光学面のそれぞれから内部全反射し、光源に戻される。例えば光学面上の汚れ、水、及び接着剤は、内部全反射(TIR)を妨げ、再帰反射性の光の強度における低減につながる場合がある。このため、空気の境界面は封止フィルムによって典型的に保護される。しかしながら、封止フィルムは、その上で再帰反射が生じる得る活性な領域全体を減少させる場合がある。更に、封止フィルムは製造コストも増加させる。更に、封止プロセスは再帰反射性シート材に可視パターンを作る場合があり、これはナンバープレート及び/又は商業的なグラフィック用途における使用など、より均一な外観が一般的に好ましい多くの用途で望ましくない。金属化したキューブコーナーは、再帰反射光に関してTIRに依存しないが、それらは一般的に日中の表示(例えば標識)には十分白くはない。」
上記の【背景技術】の記載から、本件特許の請求項1に係る発明は、当該背景技術の問題(十分に白くない)を解決課題の一つとしていると解される。また、本件特許の請求項1に係る発明が含有する「TiO_(2)」は、白色顔料として周知の物質でもある。
そうすると、「再帰反射性物品」が、「再帰反射性白色物品」であることは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(イ) 訂正事項1-2及び訂正事項1-5の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤(層)」に関連する記載として、特許明細書等には、段落【0004】の上記記載のほか、段落【0070】に、以下の記載がある。
「実施例1?5:放射線重合可能な感圧接着剤(PSA)は、本明細書において参照により組み込まれる米国特許第5,804,610号(Hamer)に記載のように調製された。PSA組成物は、・・・中略・・・を混合することによって作製された。PSA組成物は、・・・中略・・・約10cm×5cmのパッケージ内に配置され、熱封止された。PSA組成物は次いで重合された。重合の後、PSA組成物は概して米国特許第5,804,610号に記載のように、10%のTiO_(2)顔料と混合され、4インチ×6インチ(10.2cm×15.2cm)当たり約27グレインの厚さ(11.3mg/cm^(2))でシリコーン剥離ライナーの上にキャスティングされた。PSAフィルムは次いで、放射架橋工程に供された。」
そうすると、「再帰反射性物品」を構成する「不透明感圧接着剤」及び「不透明感圧接着剤層」として、「TiO_(2)含有不透明感圧接着剤」及び「TiO_(2)含有不透明感圧接着剤層」は特許明細書等に記載されているものと認められる。また、「TiO_(2)」は白色顔料として周知の物質でもある。
してみると、「不透明感圧接着剤層」及び「不透明感圧接着剤」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」及び「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」であることは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

また、訂正事項1-2の「第1領域」及び「第2領域」に関連する記載として、特許明細書等には、図1A,図1Bに加え、段落【0138】、【0006】及び【0014】には、それぞれ以下の記載がある。
「16. 前記光学的に不活性な領域が第2領域を画定し、前記光学的に活性な領域が第1領域を画定し、前記感圧接着剤層が、前記構造化表面と密接に接触している、態様14に記載の再帰反射性物品。」
「本開示の再帰反射性物品のいくつかの実施形態は、入射光が、構造化表面、例えばキューブコーナー要素を含む、1つ以上の光学的に活性な領域と、入射光が構造化表面によって実質的に再帰反射されない、1つ以上の光学的に不活性な領域と、を含む。1つ以上の光学的に活性な領域は、構造化表面の一部分に隣接する低屈折率層又は材料を含む。1つ以上の光学的に不活性な領域は、構造化表面の一部分に隣接する感圧接着剤を含む。感圧接着剤は、それに直接隣接する構造化表面の部分の再帰反射性を実質的に破壊する。低屈折率層は、構造化表面と感圧接着剤との間に「バリア」を形成することによって隣接する構造化表面の再帰反射性の維持を助ける。」
「図1Bに示されるように、低屈折率層138に隣接するキューブコーナー要素112に入射する光線150は、観察者102に再帰反射する。この理由のため、低屈折率層138を含む再帰反射性物品100の領域は、光学的に活性な領域と呼ばれる。対照的に、低屈折率層138を含まない再帰反射性物品100の領域は、それが実質的に入射光を再帰反射しないため光学的に不活性な領域と呼ばれる。」
そうしてみると、「不透明感圧接着剤層」の「第1領域」が、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む」こと、「不透明感圧接着剤層」の「前記構造化表面と接触する」「第2領域」が、「前記構造化表面」「の前記キューブコーナー要素と接触し」て「入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する」ことは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ) 訂正事項1-3の「バリア層」に関連する記載として、特許明細書等には、図1A,図1Bに加え、段落【0012】に以下の記載がある。
「図1A及び1Bは、観察者102を向く再帰反射性物品100の1つの代表的な実施形態を示す。再帰反射性物品100は、主表面116と反対側の構造化表面114を集合的に形成する複数のキューブコーナー要素112を含む再帰反射性層110を含む。・・・中略・・・感圧接着剤層130は再帰反射性層110に隣接している。感圧接着剤層130は、感圧接着剤132、1つ以上のバリア層134、及びライナー136を含む。バリア層134は、感圧接着剤132が、構造化表面114とバリア層134との間の低屈折率層138内に流れ込むのを防ぐのに十分な構造的一体性を有する。」
そうしてみると、「前記第1領域におけるバリア層」が、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された」ものであることは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(エ) 訂正事項1-4は、「第1の領域」及び「第2の領域」が、既出の「第1領域」及び「第2領域」と対応をするものであることを明瞭にしようとする訂正であるから、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。

(オ) したがって、訂正事項1-1?1-6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3 本件特許の特許請求の範囲の請求項2に係る訂正について
(1) 訂正の内容
本件特許の請求項の範囲の請求項2に係る訂正の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に「再帰反射性物品であって」と記載されているのを、「再帰反射性白色物品であって」に訂正する。

イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に「主表面と反対側の構造化表面を含む再帰反射性層」と記載されているのを、「主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層」に訂正する。

ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2に「前記構造化表面の少なくとも一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、不透明感圧接着剤」と記載されているのを、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に訂正する。

エ 訂正事項2-4
特許請求の範囲の請求項2に「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記不透明感圧接着剤の一部分上のバリア層と、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気と、を含む」と記載されているのを、「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された、バリア層と、前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気と、を含む」に訂正する。

カ 訂正事項2-5
特許請求の範囲の請求項2に「再帰反射性物品。」と記載されているのを、「再帰反射性白色物品」に訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無及び一群の請求項
ア 訂正事項2-1?2-5の目的
(ア) 訂正事項2-1及び2-5は、「再帰反射性物品」を、白色である「再帰反射性白色物品」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(イ) 訂正事項2-2は、「主表面と反対側の構造化表面を含む再帰反射性層」の「主表面と反対側の構造化表面」を、「複数のキューブコーナー要素を含む」「主表面と反対側の構造化表面」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(ウ) 訂正事項2-3は、「不透明感圧接着剤」を、TiO_(2)を含有し、白色であり、かつ層である「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に限定するとともに、「前記構造化表面の少なくとも一部分と接触」する「不透明感圧接着剤」を、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触」する「不透明感圧接着剤」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(エ) 訂正事項2-4は、「不透明感圧接着剤」を、TiO_(2)を含有し、白色であり、かつ層である「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に限定する訂正である。
また、訂正事項2-4は、「バリア層」を、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された」「バリア層」に限定するとともに、「バリア層」を限定する事項として「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域」が記載されたことを受けて、「空気」に係る「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を形成する」との記載を、「前記光学的に活性な領域を形成する」として簡潔な記載とする訂正である。
したがって、訂正事項2-4は、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2-1?2-5の特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アによれば、訂正事項2-1?2-5は、「再帰反射性物品」、「再帰反射性層」、「不透明感圧接着剤層」、「バリア層」に限定を付加しようとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、訂正事項2-1?2-5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項2-1?2-5の新規事項の有無
(ア) 訂正事項2-1及び訂正事項2-5の「再帰反射性白色物品」については、上記2(2)ウ(ア)の判断と同様の理由により、「再帰反射性物品」が、「再帰反射性白色物品」であることは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(イ) 訂正事項2-2に関連する記載としては、特許明細書等の請求項1、段落【0008】及び【0012】の記載、並びに、図1A、図1Bがある。
これらの記載事項からみて、「再帰反射性層」の「主表面と反対側の構造化表面」が「複数のキューブコーナー要素を含む」ことは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ) 訂正事項2-3及び訂正事項2-4の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤(層)」については、上記2(2)ウ(イ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、訂正事項2-3の「不透明感圧接着剤」が、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触」することについては、訂正事項1-2についての上記2(2)ウ(イ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、訂正事項2-4の「バリア層」が、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された」ということについては、上記2(2)ウ(ウ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、訂正事項2-4の「前記光学的に活性な領域を形成する」と簡潔な記載とすることは、新規事項の追加に該当しないことは明らかである。

(エ) したがって、訂正事項2-1?2-5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

4 本件特許の特許請求の範囲の請求項3に係る訂正について
(1) 訂正の内容
本件特許の請求項の範囲の請求項3に係る訂正の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に「再帰反射性物品を形成する方法であって」と記載されているのを、「再帰反射性白色物品を形成する方法であって」に訂正する。

イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3に「主表面と反対側の構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程」と記載されているのを、「主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程」に訂正する。

ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項3に「バリア層を含む不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域及び第2領域を形成する工程」と記載されているのを、「バリア層を含むTiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程」に訂正する。

エ 訂正事項3-4
特許請求の範囲の請求項3に「前記第2領域が前記構造化表面と接触し」と記載されているのを、「前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し」に訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無及び一群の請求項
ア 訂正事項3-1?3-4の目的
(ア) 訂正事項3-1は、「再帰反射性物品」を、白色である「再帰反射性白色物品」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(イ) 訂正事項3-2は、「主表面と反対側の構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程」において、「再帰反射性層」の「主表面と反対側の構造化表面」を、「複数のキューブコーナー要素を含む」「構造化表面」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(ウ) 訂正事項3-3は、「バリア層を含む不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域及び第2領域を形成する工程」において、「不透明感圧接着剤層」を、TiO_(2)を含有し、白色である「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」に限定するとともに、「バリア層」を、「前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ」「バリア層」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3-3の「前記バリア層を有する第1領域及び第2領域」を、「前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域」とする訂正は、「前記バリア層を有する」という事項が「第1領域」に係ることを明瞭にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(エ) 訂正事項3-4は、「前記構造化表面」と「接触」する「前記第2領域」を、「前記構造化表面」「の前記キューブコーナー要素」と「接触」する「前記第2領域」に限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項3-1?3-4の特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アによれば、訂正事項3-1?3-4は、「再帰反射性物品」、各「工程」の「再帰反射性層」、「不透明感圧接着剤層」、「バリア層」、あるいは「第2領域」に限定を付加しようとするものであり、訂正事項3-4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、訂正事項3-1?3-4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3-1?3-4の新規事項の有無
(ア) 訂正事項3-1の「再帰反射性白色物品」については、上記2(2)ウ(ア)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(イ) 訂正事項3-2に関連する記載としては、特許明細書等の請求項1、段落【0008】及び【0012】の記載、並びに、図1A、図1Bがある。
これらの記載事項からみて、「再帰反射性層」の「主表面と反対側の構造化表面」が「複数のキューブコーナー要素を含む」ことは、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(ウ) 訂正事項3-3の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤(層)」については、上記2(2)ウ(イ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、訂正事項3-3の「バリア層」が、「前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO2含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ」こと、及び、「第1領域」が「前記バリア層を有する」ものであることについては、上記2(2)ウ(イ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(エ) 訂正事項3-4の「前記第2領域」が、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素」と「接触」することについては、訂正事項1-2の「第1領域」及び「第2領域」に関連して上記2(2)ウ(イ)の判断と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

(オ) したがって、訂正事項3-1?3-4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

5 小括
以上1ないし4のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
よって、訂正後の請求項1、2、3について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
再帰反射性白色物品であって、
主表面と反対側の構造化表面を集合的に形成する複数のキューブコーナー要素を含む再帰反射性層と、
入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、及び前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域を有する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と、
前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層と、
を含み、
前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する、再帰反射性白色物品。
【請求項2】
再帰反射性白色物品であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層と、
前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と、
前記光学的に不活性な領域に隣接する前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された、バリア層と、
前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気と、
を含む、再帰反射性白色物品。
【請求項3】
再帰反射性白色物品を形成する方法であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程と、
バリア層を含むTiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程と、
を含み、
前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し、前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する、方法。」

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成29年6月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1
特許請求の範囲の請求項1に記載した「再帰反射性物品」が、「第1領域及び第2領域を有する不透明感圧接着剤層であって、前記第2領域は前記構造化表面と接触する」「不透明感圧接着剤層」を含むこと、請求項2に記載した「再帰反射性物品」が、「前記構造化表面の少なくとも一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する」「不透明感圧接着剤」を含むこと、及び請求項3に記載した、「再帰反射性物品を形成する方法」が、「バリア層を含む不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域及び第2領域を形成する工程」を含むことについては、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、同法第184条の18による読み替え後の同法第113条第5号に該当する。

(2)取消理由2
特許請求の範囲の請求項1ないし3には「不透明感圧接着剤」が記載されているが、発明の詳細な説明には、「不透明感圧接着剤」は記載されておらず、また、「感圧接着剤層」を「不透明」とすることが示唆もされておらず、本件特許1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。

(3)取消理由3
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。

引用例1:特表平10-508549号公報(甲第6号証)
引用例2:特表2000-508087号公報(甲第10号証)
引用例3:特開2003-302510号公報(甲第8号証)
引用例4:特開2003-29011号公報

3 引用例の記載事項及び引用発明
(1) 引用例1の記載事項
引用例1(特表平10-508549号公報(甲第6号証))には、以下の事項が記載されている。(下線は、当合議体が付したものである。以下同じ。文章上、明らかに不要な改行及び空行は削除して記載する。)
ア 2頁1行?3頁10行
「【特許請求の範囲】
1.a)可視光線に対して実質的に透明でありかつ第1の屈折率を有する第1の層、この第1の層は構造化された第1の表面および実質的に平滑な第2の表面を有し、前記構造化された第1の表面は複数の幾何学的凹形部および対応するピークを含む、および
b)前記第1の層と共辺の接着剤層、この接着剤層は前記複数の幾何学的凹形部の第1の部分を実質的に完全に充填しかつそれと接着接触し、前記接着剤層は前記第1の層の第1の屈折率に実質的に同様の第2の屈折率を有し、こうして少なくとも1つの透明区域を形成する、
を含み、前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分は、前記第2の部分と前記接着剤層との間に配置された分離層により、前記接着剤層との接触から排除される、光学的セキュリティ物品。
2.前記複数の不連続の分離層のすべては実質的に同一の屈折率を有する、請求項1に記載の物品。
・・・中略・・・
7.前記接着剤層が感圧接着剤を含む、請求項1に記載の物品。
8.前記複数の幾何学的凹形部に対して反対側の前記接着剤層の表面がそれに除去可能に接着された第2層を有する、請求項7に記載の物品。
・・・中略・・・
11.前記第1の層がフィルムを含み、前記フィルムが前記第1の層と前記接着剤層との間で接触しないで実質的に完全に内部反射性である、請求項1に記載の物品。
・・・中略・・・
13.前記分離層および前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分が複数の空気ポケットを定める、請求項1に記載の物品。
14.前記分離層が前記構造化された第1の表面のピークとのみ接触する、請求項1に記載の物品。
15.前記接着剤層により支持体に接着された請求項1に記載の光学的セキュリティ物品を含む不正手段防止物品。」

イ 4頁3行?5頁4行
「発明の背景
1.発明の分野
本発明は、書類を不正手段から保護するための透明なオーバーレイとして使用できる、新規な光学的セキュリティ物品に関する。本発明は、また、このような物品を製造する方法に関する。
2.関係する技術
書類は、しばしば、ほこり、湿気、および一般的摩耗および引裂きに対して保護するために、接着性の透明なオーバーレイを有する。典型的な保護用の透明なオーバーレイは、書類の面に恒久的に接着できる、積極的接着剤層を有するプラスチックフィルムを有している。下に存在する情報を不明瞭にしない透明なオーバーレイ、例えば、通常の拡散光で見る条件下では実質的に区別できないが、再帰反射で見る条件下では明瞭に区別できる、再帰反射性説明文および再帰反射性背景の区域を有する、説明文を含有するシート材料を有する透明なオーバーレイは既知である。オーバーレイが適用された部位の情報を改ざんしようとすると、容易に検出できるオーバーレイの崩壊となる。
他の透明なオーバーレイはパターンまたは説明文で画像形成することができ、このようなパターンまたは説明文は、例えば、再帰反射的に見るときにのみ容易に認めることができ、そして書類の面を不明瞭としないで書類に接着結合できるホログラフィーのパターンまたは画像である。反射性および透明な双方のホログラムのオーバーレイは既知である。しかしながら、ホログラフィーのオーバーレイは、典型的には、2つの干渉性光線、典型的にはレーザー光の交差により形成された光の干渉じまのパターンを使用して、ホログラムの表面のレリーフパターンが形成され、これは高価なレーザーおよび他の装置を必要とするという問題に悩まされる。ホログラムの使用を回避する透明なオーバーレイを開発できるならば、有利であろう。
成形されたプラスチック物品、例えば、実質的に完全に内部反射性のフィルムは、紫外線硬化性有機オリゴマー組成物で微小構造を有する表面を複製することによって、製造された。しかしながら、重要な書類および他の物品のための保護および/またはセキュリティオーバーレイとして、それらを使用することは知られていないか、または示唆されていない。」

ウ 5頁5?13行
「発明の要約
本発明によれば、例えば、認証された基材、例えば、書類、身分証明書、およびその他のための保護の透明なオーバーレイとして使用できる、光学的セキュリティ物品が提供される。本発明の物品は、支持体の信頼性を高めかつまた高い不正手段防止性を提供するために、画像、例えば、デザインまたは略符を含むことができる。典型的にはかつ好ましくは、画像は狭い範囲の見る角度においてのみ見ることができ、そして周囲(拡散)光で見ることができ、こうして支持体の信頼性を明らかに証明する。また、本発明は、このような光学的セキュリティ物品を製造する方法を提供する。」

エ 5頁14行?6頁下から9行
「本発明の1つの態様は、光学的セキュリティ物品であり、これは、
a)可視光線に対して実質的に透明でありかつ第1の屈折率を有する第1層、
この第1層は構造化された第1の表面および実質的に平滑な第2の表面を有し、この構造化された第1の表面は複数の幾何学的凹形部および対応するピークを含む、および
b)第1の層と共辺の接着剤層、この接着剤層は複数の幾何学的凹形部の第1の部分を実質的に完全に充填しかつそれと接着接触し、接着剤層は第1の層の第1の屈折率に実質的に類似する第2の屈折率を有し、こうして少なくとも1つの透明区域を形成する、
を含み、複数の幾何学的凹形部の第2の部分は、この第2の部分と接着剤層との間に配置された分離層により、接着剤層との接触から排除される。好ましくは、分離層は構造化された第1の表面のピークとのみ接触し、そして第1の屈折率と異なる分離層の屈折率を有するが、これらの条件は第1の層を通して戻る所望の光学的反射を生成するためには不必要である。好ましくは、オーバーラップしない分離層を有する複数の区域が存在し(すなわち、すべては保護すべき支持体に対してほぼ平行な同一平面の中に実質的に存在する)、分離層の各々は同一であるか、または非常に類似する屈折率を有し、こうして複数の透明区域を有する。こうして、複数の幾何学的凹形部の第2の部分および分離層は少なくとも1つの反射区域を定める。
本明細書おいて使用するとき、「幾何学的凹形部」とは、少なくとも2つの平らの小面を有する成形された突起、例えば、プリズム、ピラミッド状突起、立方形の角の突起、およびその他により定められた凹形部を意味する。この句は、平らの小面を含まない突起、例えば、ホログラフィーのフィルムの中に存在する突起により定められた凹形部を包含しない。用語「透明」とは、標準的分光光度計により測定して、可視スペクトル(約400?700nmの波長)の入射光の少なくとも90%を透過することを意味する。好ましい態様において、複数の幾何学的凹形部は平らの小面(線状プリズムの小面は対称または非対称である)、例えば、実質的に完全に内部反射性のフィルムにおけるような小面、を有する1系列の平行線状プリズムにより定められる。「実質的に完全に内部反射性」とは、フィルムが5%またはそれより小さいt-検定値を有することを意味する(ここでt-検定は本明細書においてさらに説明される)。他の好ましい態様は、物品の第1の層の複数の幾何学的凹形部が回折格子を含む態様である。他の好ましい態様は、第1の層の複数の幾何学的凹形部が立方形の角の構造物により定められ、こうして再帰反射の見る条件下に見るとき、物品を再帰反射性とする態様である。」

オ 6頁下から5行?7頁2行
「本発明による好ましい物品において、接着剤層はホットメルト(熱可塑性)接着剤または感圧接着剤を含む。第1の層の複数の幾何学的凹形部に対して反対側の接着剤層の表面は、それに除去可能に接着された第2の層、例えば、剥離ライナーを有することができる。
複数の分離層は、好ましくは、着色されているか、または無色であることができる画像形成材料を含む。1つの好ましい画像形成材料はアクリルインクである。」

カ 7頁3?14行
「本発明の他の態様は、支持体を不正手段から保護し、および/または支持体の信頼性を高めるために、接着剤層により支持体に接着することによって固定された、本発明の光学的セキュリティ物品を含む不正手段防止物品を包含する。支持体は本質的に任意の支持体、例えば、金属、木材、紙、プラスチック、セラミックであることができるが、典型的には身分証明書または自動車免許証の写真、銀行券、原料証明書またはその他である。
分離層が画像形成材料、例えば、略符のインクの捺印である場合、下に存在する支持体の上の最前面に来る、正しい向きで不正手段防止物品を見るとき、略符は顕著である。不正手段防止物品を再配向するとき、略符は消失し、そして下に存在する支持体を明瞭に見ることができる。光学的セキュリティ物品を除去しようとすると、認証略符を含有する連続的分離層は少なくとも部分的に破壊される。」

キ 8頁下から4行?9頁下から2行
「本発明の光学的セキュリティ物品を製造する第3の方法は、下記の工程を含む。:
a)硬化性有機樹脂を含むコーティング可能な組成物を調製すること、
b)第1の複数の幾何学的凹形部および対応するピークを含む製造装置を準備すること、
c)コーティング可能な組成物を製造装置上にコーティングし、こうして第1の複数の幾何学的凹形部を実質的に充填すること、
d)第1のプラスチックフィルムを製造装置上のコーティング可能な組成物と接触させること、ここで製造装置およびプラスチックフィルムの少なくとも一方は柔軟性である、
e)組成物の樹脂を硬化するために十分な条件に組成物を暴露して、第1のプラスチックフィルムおよび硬化した組成物の第1の中間物を生成すること、ここで硬化した組成物は第1の屈折率を有する、
f)第1の中間物を製造装置から除去取り出すこと、ここで、第1の中間物は構造化された第1の表面および実質的に平滑な第2の表面を有し、そして構造化された第1の表面は第2の複数の幾何学的凹形部および対応するピークを含み、前記第2の複数の幾何学的凹形部および対応するピークは第1の複数の幾何学的凹形部および対応するピークの逆転画像であり、
g)接着剤層を準備すること、この接着剤層は硬化した組成物の第1の屈折率に実質的に類似する第2の屈折率を有し、接着剤層は第1および第2の表面を有する、
h)接着剤層の第1の表面の選定区域上に分離材料を適用して、第2中間物を形成すること、そして
i)分離材料が第2の複数の幾何学的凹形部の第1の部分と接着剤層の第1の部分との間に位置するように、第2の中間物を第1の中間物に接着して反射区域を形成し、そして接着剤層の第2の部分は複数の幾何学的凹形部の2の部分と接着的に接触しかつそれを充填して透明区域を形成する。
第3の本発明の方法は第1の本発明の方法と同一の方法で変更することができ、こうして第4の方法が構成される。」

ク 9頁最下行?10頁10行
「本発明において提供される本発明の光学的セキュリティ物品は、第1の透明なオーバーレイ層を含み、このオーバーレイ層は第1の屈折率RI1を有しかつ平滑表面と、複数の光学的効用を目的とする幾何学的凹形部を有する微小構造を支持する構造化された表面とを有し、平滑表面は入射光を受け取ることができ、そして光透過性区域と、光反射区域とを有する。第2の透明層は、第2の屈折率RI2を有し、第1の層の構造化された表面に固定されており、そして光透過性区域における不連続物と接触しかつ結合する。第2の屈折率RI2は第1の屈折率RI1に実質的に類似する(好ましくは同一である)。分離層は第1の透明な光学的層と第2の透明層との間に光反射区域において位置し、こうして第2の透明層は幾何学的凹形部と接触せず、これにより分離層と第2の透明層との間の空気ギャップのために光反射区域を定める。」

ケ 10頁13?19行
「図面の簡単な説明
第1図?第3図は、支持体に固定された光学的セキュリティ物品の3つの態様の断面図である。
第4図および第5図は、本発明の物品の製造の概略的プロセスフローダイヤグラムである。
第6図?第7図は、本発明の物品を製造する2つの有用な方法の略線図である。」

コ 10頁下から7行-14頁下から2行
「好ましい態様の説明
1.光学的セキュリティ物品
A.反射層
第1図を参照すると、認証された物品の態様1が例示されており、これは支持体12、例えば、銀行券、クレジットカード、運転免許証、IDカード、株券等に固定された光学的セキュリティ物品10を有し、この物品10は支持体12を不正手段から保護し、より信頼性の高い外観を提供する。
物品10は第1の透明な、好ましくは連続層14を含み、この層14は典型的には、好ましくは薄い、柔軟性ポリマーフィルムであり、そして実質的に平滑な表面16および構造化された表面18を含み、構造化された表面18は複数の光学的効用を目的とする幾何学的凹形部およびピークを有し、幾何学的凹形部およびピークは好ましくは平らの面または小面を有する平行プリズムにより定められる。平滑な表面16に衝突する入射光が、ある角度範囲内において、物品10の少なくともある区域において構造化された表面18で実質的に完全に内部反射するであろうという意味において、物品10は典型的にはかつ好ましくは再帰反射する。構造化された表面18が複数の平行な線状のプリズムであり、そして小面の間の角度が90°であるとき、平滑な表面16上への光の入射は、入射光が平滑な表面16により反射されるとき、完全に内部に反射され、次いで小面の直角に関して臨界角より大きい角度で構造化された表面18の小面に衝突する。臨界角は、空気中において、物質の反射係数の逆数のサインとして定義される。さらに、臨界角より小さい角度で構造化された表面18に衝突する反射光を生成する、平滑な表面16に衝突する入射光の有意な部分は、第1の層14を通して透過され、そして入射光の残部は平滑な表面16により反射される。平滑な表面16に関する入射光の入る角度に無関係に、第1層14による光の無視できる吸収が存在する。
第1図に図解する好ましい第1の態様において、第1の層14は米国特許第4,906,070号明細書(Cobb、Jr.)(その開示は引用することによって本明細書の一部とされる)に開示されている型の実質的に完全に内部反射性のフィルム(時には光学的ライティングフィルムと呼ぶ)を含む。「実質的に完全に内部反射性」とは、フィルムの光学的品質に関係する。完全に内部反射性のフィルム(「TIRF」)の光学的品質は、下記のようにして評価することができる。TIRFの光学的品質は、空間的フィルタ、ビーム拡大器、およびコリメータを有するレーザーを含む装置(Spectra-Physics Inc.117A型)を使用して評価することができる。2つの絞りまたはアイリスをレーザーから18?38cmに配置し、レーザーと整合させ、そして直径6.35cmの開口を有する環状試料ホルダーをレーザーから84cmに配置する。試料ホルダーの直ぐ背後に積分球(直径3cmの開口を有する)およびLABSPHERE ML-400放射計が存在する。絞りまたはアイリスを使用して、開口を通してレーザーを収束して、試料ホルダー上に取り付けられた黒色表面上に直径約3mmの光のきれいな円を得る。試料が配置されていないとき、レーザー源の強度の測定は100%である。次いで、試験すべきTIRFを、その平らな表面がレーザーに面しそしてそのみぞが垂直に延びるように、試料ホルダー上に取り付ける。特記しない限り、t-検定値を周囲温度において測定する。次いで、試料ホルダーのフレームに光が衝突しないことを確かめながら、直径5cmの区域内でTIRF上の12?15の異なる点において読みを取る。読みを平均し、100を掛けて、TIRF試料のt-検定値である透過率を得る。t-検定値はTIRFの複製の忠実度の基準である。より小さいt-検定値の百分率はより大きい百分率よりすぐれた複製の忠実度を示し、そして5%またはそれより小さいt-検定値はフィルムが実質的に完全に内部反射性であることを示す。
・・・中略・・・
本発明の他の目的のために、微細および大きい双方の微小構造化された立方形の角およびプリズムのフィルムの光学的品質は有用である。
・・・中略・・・
第1の層14は第2の透明な接着剤層24を介して支持体12に固定されており、第2の透明な接着剤層24は第1の層14の構造化された表面18に固定されており、そして複数の透明な区域30における幾何学的凹形部の第1の部分を接着的に接触しかつ充填し、第2の層24は第1の層14の屈折率RI1に実質的に類似する(好ましくは同一である)屈折率RI2を有する。好ましくは、RI1:RI2の比は好ましくは約0.9:1.0?約1.1:1.0、より好ましくは約0.97:1.0?約1.03:1.0であり、特に好ましくは1.0:1.0である。・・・中略・・・なぜなら、これらの区域における前の表面16に衝突する入射光は本発明の安全物品を完全に通して下に存在する支持体12に透過されるからである。本発明の物品の1または2以上の区域は反射区域32として表示され、反射区域32は下記においてさらに詳述される。
物品10の1または2以上の反射区域32において、複数の分離層34が構造化された表面18の幾何学的凹形部の第2の部分(態様1におけるみぞ)と、第2の透明な接着剤層24との間に配置されている。分離層34のために第2の透明な接着剤層24は反射区域32において幾何学的凹形部を含有しないので、空気ポケット36が凹形部の第2の部分と分離層34との間に形成され、反射区域32を形成している。こうして、反射区域32における幾何学的凹形部の表面に沿って空気界面が形成される。用語「空気」、「空気ポケット」および「空気界面」は、本明細書において、一般的用語であり、好ましい態様のみを反映する。本発明の光学的保全物品が製造される環境は、一般に、空気、窒素、またはいくつかの他の流体(気体または液体)のポケットが形成されるかどうかを決定するであろう。
前述したように、少なくとも1つ、典型的には複数の反射区域32が本発明の物品中に存在する。これらの区域は反射性であるとして表示される。なぜなら、適当な入射角度において反射区域32において物品10の前表面16に衝突する入射光は、前述したように、実質的に再帰反射されるからである。幾何学的凹形部に沿った空気ポケット36は、反射区域32において再帰反射が起こるために要求される。空気ポケット36中の空気は、反射区域32における幾何学的凹形部の第2部分の表面に沿った屈折率の有意な変化を提供する。屈折率の変化は少なくとも0.1RI単位、より好ましくは少なくとも0.7RI単位である。逆に、前述したように、透明区域30において、幾何学的凹形部の第1部分の表面に沿って屈折率は実質的に変化しない。したがって、透明区域30において、光は第1層14および第2層24を通して下に存在する支持体12に透過される。」

サ 14頁最下行-15頁19行
「第2図を参照すると、不正手段防止物品の態様2が断面で図解されている。第2図の態様2は第1図の態様1に類似するが、ただし光学的セキュリティ物品10aは異なる方法により形成され、したがってわずかに異なる構成を有する(製造方法は下に記載されている)。分離層34は構造化された表面18と支持体12との間の距離の一部分をのみ延びている。しかしながら、これは分離層34の機能を変化せず、分離層34は接着剤26が幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れて空気ポケット36を形成することを(当合議体注:「するを」は「することを」の誤記である。)防止し、こうして複数の反射区域32および複数の透明区域30を生成する。
第1の層14は、好ましくは、付加重合樹脂(活性線または粒子の放射線で硬化された)、および型押熱可塑性材料から成る群より選択されるポリマー材料を含んでなる。第1の層14の構造化された表面は、最も好ましくは付加重合性樹脂、より好ましくは紫外線または可視光線で硬化性の樹脂を使用して形成される。なぜなら、これらの樹脂は、第1の層14の製造において使用される樹脂の硬化条件および光開始剤を最適化する能力を有するからである。第1の層14は、好ましくは、柔軟性または剛性プラスチック支持層、好ましくはプラスチックフィルムにより特徴づけられる複合プラスチック物品を含み、前記フィルムの1つの表面は構造化表面18を定める微小構造、例えば、平行プリズムまたは立方形の角を有する。微小構造は、本明細書において後述するように、付加重合性樹脂および架橋性樹脂を含むコーティング可能な組成物、および製造装置およびマスターを使用して形成される。」

シ 24頁6行?30頁11行
「B.接着剤層
本発明のすべての光学的セキュリティ物品の態様において、第2の層24は好ましくはホットメルト熱可塑性接着剤および感圧接着剤から選択される接着剤層を含むが、・・・中略・・・接着剤層または第2の層24の双方は第1の層14を支持体12に接着する機能をし、そして1または2以上の分離層34と組み合わせて略符または他の表示を形成する。
第1図の好ましい態様1において、層24は下記のようにして製造される。熱可塑性フィルム、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムおよびその他を所望の略符または表示の分離層に適用する。次いで、表示を有するフィルムを構造化された表面18に加熱積層する。二軸延伸ポリプロピレンフィルムはこの方法において有用な1つの好ましいフィルムであり、ここでフィルムはアクリルインク、例えば、商品名RAGE-800(アドバンスド・プロセス・サプライ・オブ・シカゴIIから入手可能である)で知られているアクリルインクで印刷される。有用な印刷法はスクリーン印刷法、例えば、米国特許第5,011,707号明細書(引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている方法である。加熱積層法において、例えば、約140℃に加熱されたラミネーターにより、インクより低い溶融温度を有する接着剤を使用して、略符印刷フィルムを構造化表面に積層する。次いで、この複合体を冷却してフィルムを除去できるようにし、次いで複合体を再加熱して接着剤を溶融し、セキュリティ物品を支持体に積層する。
それぞれ、第2図および第3図の態様2および態様3において、接着剤層24は、プラスチックフィルム、例えば、前述のプラスチックフィルムに連続層として適用された、感圧接着剤またはホットメルト熱可塑性接着剤である。これらの態様において、分離層は接着剤層上に直接印刷される。ホットメルト接着剤を使用する場合、それは、例えば、米国特許第4,977,003号明細書(引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている方法により、フィルム上に単に押出コーティングされる。・・・中略・・・感圧接着剤(PSA)を使用する場合、それはアクリルPSAであり、典型的には溶液からプラスチックフィルム上にコーティングされる。いずれの場合においても、フィルムを構造化された表面へ接着した後フィルムを除去し、接着剤層を露出し、次いでこれをオーバーレイすべき支持体上に積層またはプレスする。
恒久的結合を必要とする場合、ホットメルト接着剤が好ましい。また、ホットメルト接着剤を使用するとき、この方法は多分いっそう容易に連続的製造方法とされる。ホットメルト接着剤の使用の欠点は、加熱積層装置を必要とするということである。PSAを使用すると、加工業者は、一時的接着剤、例えば、商品名「POST-IT」で知られている接着剤、または恒久的接着剤である剥離接着剤を必要に応じて選択する機会が与えられる。また、PSAを使用するとき、加熱積層装置は不必要である。しかしながら、PSAのコーティングは溶媒の蒸気を発生することがある。
・・・中略・・・
本発明の構造物において有用なPSAはこの分野において知られており、そして・・・中略・・・アクリルに基づくコポリマー・・・中略・・・ポリブチルアクリレート、ポリビニルn-ブチルエーテル、およびポリアクリレートエステルおよびそれらの混合物の1または2以上を含むことができる組成物である。延長された貯蔵寿命および大気条件下の脱粘着に対する抵抗を有するために、現在好ましいPSAは、米国特許第Re24,906号に開示されているようなアクリルに基づくコポリマーの接着剤である。このようなアクリルに基づくコポリマーの1つの例は、95.5:4.5(各々の重量部で測定した)イソオクチルアクリレート/アクリル酸コポリマーである。他の好ましい接着剤は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびアクリル酸の68:26:6ターポリマー、およびイソオクチルアクリレート、酢酸ビニル、およびアクリル酸の56:40:4ターポリマーである。このようなアクリルPSAはヘプタン:イソプロパノール溶媒の溶液からコーティングされた接着剤のシート様セグメントの裏側上にコーティングし、次いでヘプタン:イソプロパノール溶媒を蒸発させて、感圧接着剤のコーティングを残すことができる。」

ス 30頁12行?31頁17行
「C.分離層
1または2以上の分離層は、本発明の光学的複合物が製造されている間にその保全性を保持できる材料から構成されなくてはならずそして、また、本発明の光学的セキュリティ物品の1または2以上の反射区域24において第2層34から構造化された表面18の凹形部の第2部分を分離するという、仕上げられた複合物において、その機能を実行しなくてはならない。好ましい態様において、分離層は画像形成材料を含む。さらに、画像形成材料を好ましくは選択的に適用し、こうして情報の一部分またはすべてがいわゆる「フリップフロップ」画像の形態であることができ、前記画像を狭い範囲の角度で見ることができ、そして前記画像がその角度の範囲を横切って色を変化するようにする。このような画像は周囲光において見ることができ、こうして書類の信頼性の高い証明を提供する。「フリップフロップ」画像は、再帰反射的に見るとき、輝き、こうして書類を改竄するか、または新しいオーバーレイを偽造することを特に困難とすることによって、第2レベルの信頼性を提供することができる。本発明の光学的セキュリティ物品は認証された支持体、例えば、身分証明書のための透明な保護的オーバーレイとして使用するとき、画像形成材料を好ましくは無色とし、こうして画像形成材料が物品の反射区域32において下に存在する支持体を完全にマスクしないようにする。
・・・中略・・・
分離層として本発明において使用するために好ましい画像形成材料はアクリルインク・・・中略・・・である。
第1図および第2図に図解されている第1および第2の態様の光学的セキュリティ物品は透明な保護的オーバーレイとして効果的に使用できるが、分離層34は典型的には分離層の下に存在する支持体12の区域を実質的にマスクする。これは、第1層14の平滑な表面16に対して実質的に垂直である角度から支持体を見ることを妨害する。支持体12の特質に依存して、このマスキングは望ましくないことがある。」

セ 「【図1】



ソ 「【図2】




(2) 引用発明1
ア 上記(1)ケによれば、「第1図」及び「第2図」は、「支持体に固定された光学的セキュリティ物品」の2つの態様の断面図である。
また、上記(1)サによれば、「第2図の態様2」は、「異なる方法により形成され」、「分離層34は構造化された表面18と支持体12との間の距離の一部分のみ延びている」点において、「わずかに異なる構成を有する」ことを除けば、「第1図の態様1に類似する」ものである。

イ 上記(1)コによれば、「第1図」に図示される「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10」においては、「物品10は第1の」「層14を含」むものである。また、「この層14は」、「実質的に平滑な表面16および構造化された表面18を含」むものである。そして、「構造化された表面18は複数の」「幾何学的凹形部およびピークを有」するものである。
さらに、「第1図」に図示される「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10」においては、「分離層34のために」「透明な接着剤層24は反射区域32において幾何学的凹形部を含有しない」。そのため、「空気ポケット36が凹形部の第2の部分と分離層34との間に形成され、反射区域32を形成」する。こうして、「反射区域32における幾何学的凹形部の表面に沿って空気界面が形成され」る。
加えて、「第1図」に図示される「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10」においては、「適当な入射角度において反射区域32において物品10の前表面16に衝突する入射光は」、「実質的に再帰反射され」る。

ウ 上記(1)サには、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」に関し、「しかしながら、これは分離層34の機能を変化せず、分離層34は接着剤26が幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れて空気ポケット36を形成することを防止し、こうして複数の反射区域32および複数の透明区域30を生成する」と記載されている。ここで、「分離層34の機能」が「変化」せず、そして上記イによれば、「態様2」と同様とされる「態様1」において、「空気ポケット36」により「反射区域32」が形成されることから、「・・・空気ポケット36を形成することを防止し」という記載は、正確なものでないと解される。すなわち、上記記載は、「しかしながら、これは分離層34の機能を変化せず、分離層34は、接着剤26が幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れることを防止し、空気ポケット36を形成し、こうして複数の反射区域32および複数の透明区域30を生成する」ことを意味すると解するのが相当である。
そうすると、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」において、「分離層34は、接着剤26が幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れることを防止し、空気ポケット36を形成」するものである。

エ 上記イとウより、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」の「分離層34」が、「前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と前記接着剤層24との間に配置された分離層34」であって、「接着剤26が前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れることを防止して、前記幾何学的凹形部の第2の部分との間に空気ポケット36を形成することで、前記幾何学的凹形部の表面に沿って空気界面が形成されている反射区域32を形成する」ものと認められる。

オ 上記(1)サによれば、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」は、「構造化表面18を定める微小構造」として、例えば、「立方形の角を有する」ものである。

カ 上記(1)サ及び(1)シによれば、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」の「接着剤層24」は、「透明」「感圧接着剤」である。

キ 上記(1)シによれば、「第2図」の「支持体に固定された光学的セキュリティ物品10a」の「態様2」において、「分離層は接着剤層上に直接印刷される」。

ク 上記(1)ケ?サ及び上記ア?キより、引用文献1には、特許請求の範囲の請求項1に記載された「光学的セキュリティ物品」に係る本発明の好ましい態様であって、図2に示されるような「態様2」の構成を備えた「光学的セキュリティ物品10a」として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明1」という。当合議体注:請求項1に記載された各構成の表記を、図2に示された態様2についての各構成の表記に統一するととともに、請求項1の記載の言い回しを一部修正した。)。
「a)可視光線に対して実質的に透明でありかつ第1の屈折率を有する第1の層14であって、複数の幾何学的凹形部および対応するピークを含む構造化された第1の表面18および実質的に平滑な第2の表面16を有する第1の層14と、
b)前記第1の層14と共辺でありかつ前記第1の層の第1の屈折率に実質的に同様の第2の屈折率を有する接着剤層24であって、前記複数の幾何学的凹形部の第1の部分を実質的に完全に充填しかつそれと接着接触して、少なくとも1つの透明区域30を形成する接着剤層24と、
c)前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と前記接着剤層24との間に配置された分離層34であって、接着剤26が前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れることを防止して、前記幾何学的凹形部の第2の部分との間に空気ポケット36を形成することで、前記幾何学的凹形部の表面に沿って空気界面が形成されている反射区域32を形成する分離層34と、
を含み、
適当な入射角度において反射区域32において光学的セキュリティ物品10aの前表面16に衝突する入射光は、実質的に再帰反射され、
構造化された第1の表面18を定める微小構造として、立方形の角を有し、
接着剤層24は、透明感圧接着剤であり、
分離層34は接着剤層24上に直接印刷される、
光学的セキュリティ物品10a。」

(3) 引用形成方法発明1
ア 上記(1)サより、「第2図」「の態様2」について、「第1の層14の構造化された表面」である「構造化表面18を定める微小構造」を、「付加重合性樹脂および架橋性樹脂を含むコーティング可能な組成物、および製造装置およびマスターを使用して形成」することが把握される。

イ 上記(1)シより、「第2図」「の態様2」については、「分離層は接着剤層上に直接印刷され」、「感圧接着剤(PSA)を使用する場合」、「プラスチックフィルム上にコーティングされ」、「フィルムを構造化された表面へ接着した後フィルムを除去し、接着剤層を露出し、次いでこれをオーバーレイすべき支持体上に積層またはプレスする」ことが把握される。

ウ 上記(2)及び上記アとイより、請求項1に記載された「光学的セキュリティ物品」であって、「支持体に固定された光学的セキュリティ物品」の態様2の構成を備えたものを形成する「光学的セキュリティ物品10a」の形成方法として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用形成方法発明1」という。)。
「引用発明1の光学的セキュリティ物品10aを形成する方法であって、以下の工程I?工程IIIを含む光学的セキュリティ物品10aを形成する方法。
工程I:第1の層14の構造化された第1の表面18を定める微小構造を、付加重合性樹脂および架橋性樹脂を含むコーティング可能な組成物、および製造装置およびマスターを使用して形成する工程、
工程II:感圧接着剤をフィルム上にコーティングし、分離層34を接着剤層24上に直接印刷する工程、
工程III:フィルムを構造化された第1の表面18へ接着した後フィルムを除去し、接着剤層24を露出し、次いでこれをオーバーレイすべき支持体上に積層またはプレスする工程。」

4 判断
(1) 取消理由通知に記載した取消理由1について
ア 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?3には、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」及び「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」を含むことが記載されている。

イ ここで、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「国際出願明細書等)」という。)には、以下の記載がある。

(ア) 「[0004] Typically, a cube corner element includes three mutually perpendicular optical faces that intersect at a single apex. Generally, light that is incident on a corner cube element from a light source is totally internally reflected from each of the three perpendicular cube corner optical faces and is redirected back toward the light source. Presence of, for example, dirt, water, and adhesive on the optical faces can prevent total internal reflection (TIR) and lead to a reduction in the retroreflected light intensity. As such, the air interface is typically protected by a sealing film. However, sealing films may reduce the total active area, which is the area over which retroreflection can occur.
Further, sealing films increase the manufacturing cost. Additionally, the sealing process can create a visible pattern in the retroreflective sheeting that is undesirable for many applications, such as, for example, use in a license plate and/or in commercial graphics applications where a more uniform appearance is generally preferred. Metalized cube corners do not rely on TIR for retroreflective light, but they are typically not white enough for daytime viewing of, for example, signing applications. Furthermore, the durability of the metal coatings may be inadequate.」
(参考訳)
「[0004] 典型的に、キューブコーナー要素は、単一の頂点で交差する3つの互いに垂直な光学面を含む。概して、光源からコーナーキューブ要素に入射する光は、3つの垂直なコーナーキューブ光学面のそれぞれから内部全反射され、光源に戻る方向に転換される。例えば、光学面上の汚れ、水、及び接着剤の存在が、内部全反射(TIR)を妨げ、再帰反射光の強度における低減を導くことがある。このため、空気境界面は封止フィルムによって典型的に保護される。しかしながら、封止フィルムは、その上で再帰反射が生じ得る、トータルの活性領域を減少させるかもしれない。
更に、封止フィルムは、製造コストも増加させる。更に、封止プロセスは、例えば、より均一な外観が一般的に好ましいナンバープレート及び/又は商業的なグラフィック用途における使用など、多くの応用に対して望ましくない可視パターンを作るかもしれない。金属化したキューブコーナーは、再帰反射光に関してTIRに依存しないが、それらは典型的には、例えば、標識の応用のための、日中の表示のためには十分白くはない。更に、金属コーティングの耐久性は不十分であるかもしれない。」

(イ) [ [0066] Microsealed prismatic sheeting is especially suitable in applications such as license plates and graphics. The prismatic sheeting provides benefits such as significantly lower manufacturing cost, reduced cycle time, and elimination of wastes including especially solvents and CO_(2) when replacing glass bead sheeting. Furthermore, prismatic constructions return significantly increased light when compared to glass bead retroreflectors. Proper design also allows this light to be preferentially placed at the observation angles of particular importance to license plates, e.g. the range 1.0 to 4.0 degrees. Finally, micro sealed sheeting provides the brilliant whiteness and uniform appearance at close viewing distances needed in these product applications. 」
(参考訳)
「[0066] ミクロ封止されたプリズム状のシート材は、特にライセンスプレート及びグラフィックなどの用途で適している。プリズム状のシート材は、ガラスビーズシート材と置き換えたとき、はるかに低い製造コスト、低減されたサイクル時間、特に溶剤及びCO_(2)を含む廃棄物の削除などの利益を提供する。更に、プリズム状の構造体は、ガラスビーズの再帰反射器と比較したとき、有意に増加した光を戻す。適切なデザインはまた、ライセンスプレートに特に重要な観測角(例えば1.0?4.0度)においてこの光が好ましく配置されるのを可能にする。最後に、マイクロ封止されたシート材は、これらの製品の用途に必要とされる近接した観察距離において、輝く白さ及び均一な外見を提供する。」

(ウ) 「[0081] Examples 1 - 5:
[0082] A radiation-polymerizable pressure sensitive adhesive (PSA) was prepared as described in U.S. Patent No. 5,804,610 (Hamer), incorporated herein by reference. The PSA composition was made by mixing 95 parts by weight isooctyl acrylate (IOA), 5 parts by weight acrylic acid (AA), 0.15 parts by weight Irgacure 651 (commercially available from Ciba Corporation, now a BASF Company, NJ), 0.10 parts by weight 4-acryloyl-oxy- benzophenone (ABP), 0.05 parts by weight isooctylthioglycolate (IOTG), and 0.4 parts by weight Irganox 1076 (commercially available from Ciba Corporation). The PSA composition was placed into packages made of a ethylene vinyl acetate copolymer film of 0.0635 mm thickness (commercially available under the trade designation "VA-24" from Pliant Corporation, Dallas, TX) measuring approximately 10 centimeters by 5 centimeters and heat sealed. The PSA composition was then polymerized. After polymerization, the PSA composition was compounded with 10% Ti0_(2) pigment and cast as a film onto a silicone release liner at a thickness of about 27 grains per 4 in by 6 in sample (11.3 mg/ cm^(2) ), as generally described in U.S. Patent No. 5,804,610. The PSA film was then subjected to a radiation crosslinking step. 」
(参考訳)
「[0081] 実施例1?5:
[0082] 放射線重合可能な感圧接着剤(PSA)は、本明細書において参照により組み込まれる、米国特許第5,804,610号(Hamer)に記載のように調製された。PSA組成物は、95重量部のイソオクチルアクリレート(IOA)、5重量部のアクリル酸(AA)、0.15重量部のIrgacure 651(Ciba Corporation、現在はBASF Company、NJ)から市販されている)、0.10重量部の4-アクリロイル-オキシ-ベンゾフェノン(ABP)、0.05重量部のイソオクチルチオグリコレート(IOTG)、及び0.4重量部のIrganox 1076(Ciba Corporationから市販されている)を混合することによって作製された。PSA組成物は、0.0635mm厚の(Pliant Corporation(Dallas,TX)から商標”VA-24”で市販されている)エチレンビニルアセテートコポリマーフィルムから作製された、約10cm×5cmのパッケージ内に配置され、熱封止された。PSA組成物は次いで重合された。重合の後、PSA組成物は概して米国特許第5,804,610号に記載のように、10%のTiO_(2)顔料と混合され、4インチ×6インチ当たり約27グレインの厚さ(11.3mg/cm^(2))でシリコーン剥離ライナーの上にフィルムとしてキャストされた。PSAフィルムは次いで、放射架橋工程に供された。」

ウ 上記イ(ア)?(ウ)の記載(特に、下線部を参照。)、及びTiO_(2) が白色顔料であることを考慮すると、TiO_(2)を含むPSAフィルムは、十分に白い、すなわち不透明な外見を提供するものと理解される。

エ してみると、特許請求の範囲の請求項1?3に記載した「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」及び「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」は、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求項の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(2) 取消理由通知に記載した取消理由2について
本件特許の発明の詳細な説明の【背景技術】の段落【0004】、【発明を実施するための形態】の【0058】及び【0070】(実施例1?5)には、「感圧接着剤」及び「感圧接着剤層」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」及び「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」であることが記載されている。
したがって、請求項1?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(3) 取消理由通知に記載した取消理由3について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。
a 引用発明1の「第1の表面18」、「第2の表面16」、「幾何学的凹形部」及び「第1の層」は、その構造からみて、本件発明1の「構造化表面」、「主表面」、「キューブコーナー要素」及び「再帰反射性層」に相当する。
また、引用発明1の「第1の層」は、その構造及び機能からみて、本件発明1の「再帰反射性層」の「主表面と反対側の構造化表面を集合的に形成する複数のキューブコーナー要素を含む」という要件を満たす。

b 引用発明1の「反射区域32」は、その構造及び機能からみて、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域」ということができる。
一方、引用発明1の「透明区域30」は、その構造及び機能からみて、「反射区域32」とは異なり、「入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域」であるということができる。

c 引用発明1の「接着剤層24」のうち、「前記複数の幾何学的凹形部の第1の部分を実質的に完全に充填しかつそれと接着接触」し、「透明区域30」を形成する領域は、その構造及び機能からみて、上記aとbより、引用発明1の「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域」に相当する。

d 引用発明1の「接着剤層24」のうち、「前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と」「の間に配置された分離層34」により、「接着剤26が前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れること」が「防止」され、「前記幾何学的凹形部の第2の部分との間に空気ポケット36を形成することで」、「反射区域32を形成する」領域は、その構造及び機構からみて、上記bより、引用発明1の「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域」に相当する。

e 引用発明1の「接着剤層24」と、本件発明1の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」は、「感圧接着剤層」である点で共通している。
そうすると、上記cとdより、引用発明1の「接着剤層24」と、本件発明1の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」は、「入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、及び前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域を有する感圧接着剤層」である点で共通しているということができる。

f 引用発明1の「分離層34」は、「前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に」「接着剤26が」「流れることを防止」するために、「前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と前記接着剤層24との間に配置された」「分離層34」と言い換えることができる。
引用発明1の「分離層34」は、その構造及び機能からみて、本件発明1の「バリア層」に相当する。
そうすると、上記a、b、d及びeより、引用発明1の「分離層34」と、本件発明1の「バリア層」は、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層」である点で共通しているということができる。

g 上記cとdより、引用発明1の「接着剤層24」は、「前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と」「の間に配置された分離層34」により、「接着剤26が前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れること」が「防止」され、「反射区域32を形成する」領域と、「前記複数の幾何学的凹形部の第1の部分を実質的に完全に充填しかつそれと接着接触」し、「透明区域30を形成する」領域とを有している。
また、「前記幾何学的凹形部の第2の部分との間に」「形成」された「空気ポケット36」を満たす「空気」の屈折率は略1である。
そうすると、上記a?fより、引用発明1と、本件発明1は、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」という事項を備えている点で共通しているということができる。

h 引用発明1は、「反射区域32において光学的セキュリティ物品10aの前表面16に衝突する入射光は、実質的に再帰反射」するから、「再帰反射」性の「物品」である。
そうすると、引用発明1と本件発明1とは、「再帰反射性」「物品」である点で共通する。

i 上記a?hより、本件発明1と引用発明1とは、以下の構成において一致する。
「再帰反射性物品であって、
主表面と反対側の構造化表面を集合的に形成する複数のキューブコーナー要素を含む再帰反射性層と、
入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、及び前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域を有する、感圧接着剤層と、
前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層と、
を含み、
前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する、再帰反射性物品。」

j 本件発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点1-1)
本件発明1においては、「感圧接着剤層」が「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」であるのに対して、
引用発明1においては、「感圧接着剤層」が「透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が「透明感圧接着剤」である点。
(相違点1-2)
本件発明1は、再帰反射性白色物品であるの対して、
引用発明1は、再帰反射性物品であるものの、該物品の色が白色とは特定されていない点。

(イ) 判断
a 上記相違点1-1について検討する。
引用例1の「発明の背景」における「1.発明の分野」、「2.関連する技術」(上記(3)ア(イ)参照)や「発明の要約」(上記(3)ア(ウ)参照)の記載からみて、引用発明1の「光学的セキュリティ物品10a」は、「書類を不正手段から保護するための透明なオーバーレイとして使用できる」「光学的セキュリティ物品」に関するものである。そして、引用発明1は、「認証された基材、例えば、書類、身分証明書、およびその他のための保護の透明なオーバーレイとして使用できる、光学的セキュリティ物品が提供される」という効果を奏するものである。
そうすると、引用発明1は、「透明」なオーバーレイとして、その下の書類、身分証明書等の認証された基材(支持体)の内容が確認できるよう、「接着剤層」が「透明」であることが必須の構成とされている。
以上の点は、引用例1の特許請求の範囲(上記(3)ア(ア))の「前記接着剤層は・・・透明区域を形成する」という記載や、発明の詳細な説明の「第2の透明な接着剤層24」(13頁下から10行、14頁6?7行、上記3(3)ア(コ)参照)、「透明区域30において、光は第1層14および第2層24を通して下に存在する支持体12に透過される」(14頁下から3?4行、上記3(3)ア(コ)参照)という記載からも確認できる。

そうしてみると、引用発明1において、「透明接着剤」及び「透明接着剤層」を「不透明」とすると、その下にある書類、身分証明書等の認証された基材(支持体)の内容の確認ができなくなってしまう。また、「透明」なオーバーレイとして使用できる「光学的セキュリティ物品」を提供することもできなくなってしまう。
したがって、引用発明1において、「透明接着剤」及び「透明接着剤層」を「不透明」とすることは、阻害要因があるというべきである。
してみると、道路、交通等の標識に用いられる再帰反射性物品において、再帰反射性層のキューブコーナ要素側の接着剤層を不透明のものとすることが本件特許の出願前に周知の態様(例えば、引用例2の11頁11?20行、引用例3の段落【0046】?【0048】、【0019】、引用例4の段落【0046】を参照。)であるとしても、引用発明1において、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、引用例2、あるいは引用例3に、道路、交通等の標識に用いられる再帰反射性物品において、再帰反射性層のキューブコーナ要素側を封止する接着剤層を不透明のものとする技術が記載されていたとしても、引用発明1において、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

b してみると、上記相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、当業者の技術常識及び周知の態様に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1は、引用発明1、当業者の技術常識及び引用例2、あるいは引用例3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。
a 引用発明1の「第1の層」は、その構造及び機能からみて、上記ア(ア)aより、本件発明2の「再帰反射性層」の「主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む」という要件を満たす。

b 上記ア(ア)a、ア(ア)c及び上記ア(ア)eより、引用発明1の「接着剤層24」と、本件発明2の「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」は、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、感圧接着剤層」である点で共通しているということができる。

c 引用発明1の「分離層34は接着剤層24上に直接印刷される」。
そうすると、上記ア(ア)c?fと上記ア(ア)aより、引用発明2の「分離層34」と、本件発明1の「バリア層」は、「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された、バリア層」である点で共通しているということができる。

d 引用発明1においては、「分離層34」と「前記幾何学的凹形部の第2の部分との間」の「空気ポケット36」により、「反射区域32」が「形成」される。
そうすると、上記ア(ア)aと上記ア(ア)fより、引用発明1と、本件発明2は、「前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気」「を含む」という事項を備えている。

e 引用発明1と本件発明2とは、「再帰反射性物品」である点で共通する。

f 上記a?eより、本件発明2と引用発明1とは、以下の構成において一致する。
「再帰反射性物品であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層と、
前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、接着剤層と、
前記光学的に不活性な領域に隣接する前記接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記感圧接着剤層の間に配置されたバリア層と、
前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気と、
を含む、再帰反射性物品。」

g 本件発明2と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点2-1)
本件発明2においては、「感圧接着剤層」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」であるのに対して、
引用発明1においては、「感圧接着剤層」が、「透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が、「透明感圧接着剤」である点。
(相違点2-2)
本件発明2は、再帰反射性白色物品であるの対して、
引用発明1は、再帰反射性物品であるものの、該物品の色が白色とは特定されていない点。

(イ) 判断
まず、上記相違点2-1について検討する。
a 上記相違点2-1は、上記相違点1-1と同じである。上記ア(イ)aにおいて検討した理由と同じ理由により、引用発明1において、「透明接着剤」及び「透明接着剤層」を「不透明」とすることは、「透明」なオーバーレイとして使用できる光学的セキュリティ物品としての機能を損なうことになるから、阻害要因があるというべきである。
そうすると、引用発明1において、上記相違点2-1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

b してみると、上記相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明1、当業者の技術常識及び上記の周知の態様に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2は、引用発明1、当業者の技術常識及び引用例2、あるいは引用例3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明3について
(ア) 本件発明3と引用形成方法発明1とを対比すると、以下のとおりである。
a 引用形成方法発明1の「工程I」は、形成される引用発明1の構造からみて、「第1の層14」を形成する工程ということができる。
そうすると、上記ア(ア)aと上記イ(ア)aより、引用形成方法発明1の「工程I」は、本件発明3の「主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程」に相当する。

b 引用形成方法発明1の「工程3」は、(「工程II」により)「分離層34」がその上に「直接印刷」された「接着剤層24」を「構造化された第1の表面18」に「接着」する工程である。
また、引用形成方法発明1の「工程3」は、形成される引用発明1の構造からみて、「分離層34」を「前記複数の幾何学的凹形部の第2の部分と前記接着剤層24との間に配置」して、「接着剤26」が、「前記幾何学的凹形部の第2の部分の中に流れること」を「防止して」、「反射区域32を形成する」とともに、「接着剤26」が、「前記複数の幾何学的凹形部の第1の部分」と「接触して」、「透明区域30を形成する」工程ということができる。
そうすると、上記ア(ア)より、引用形成方法発明1と、本件発明3は、「バリア層を含む感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して」、「前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程」を含んでいる点で共通しているということができる。
また、引用形成方法発明1と、本件発明3は、「前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し」、「前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する」点において共通しているということができる。

c 引用形成方法発明1における「引用発明1」と、引用発明3における「再帰反射性白色物品」は、「再帰反射性」「物品」である点で共通する。
そうすると、上記aとbより、引用形成方法発明1の「光学的セキュリティ物品10aを形成する方法」と、本件発明3の「再帰反射性白色物品を形成する方法」とは、「再帰反射性物品を形成する方法」である点で共通する。

d 上記a?cより、本件発明3と引用形成方法発明1とは、以下の構成において一致する。
「再帰反射性物品を形成する方法であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程と、
バリア層を含む感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程と、
を含み、
前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し、前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する、方法。」

e 本件発明3と引用形成方法発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点3-1)
本件発明3においては、「感圧接着剤層」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤」であるのに対して、
引用形成方法発明1においては、「感圧接着剤層」が、「透明感圧接着剤層」であり、「感圧接着剤」が、「透明感圧接着剤」である点。
(相違点3-2)
再帰反射性物品を形成する方法により形成される再帰反射性物品が、
本件発明3では、再帰反射性白色物品であるのに対して、
引用製造方法発明1では、再帰反射性物品であるものの、該物品の色が白色とは特定されていない点。

(イ) 判断
まず、上記相違点3-1について検討する。
a 上記相違点3-1は、上記相違点1-1と同じである。
上記ア(イ)aにおいて検討した理由と同じ理由により、引用形成方法発明1において、「透明接着剤」あるいは「透明接着剤層」を「不透明」とすることは、「透明」なオーバーレイとして使用できる光学的セキュリティ物品としての機能を損なうことになるから、阻害要因があるというべきである。
そうすると、引用形成方法発明1において、上記相違点3-1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

b してみると、上記相違点3-2について検討するまでもなく、本件発明3は、引用形成方法発明1、当業者の技術常識及び上記の周知の態様に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明3は、引用形成方法発明1、当業者の技術常識及び引用例2、あるいは引用例3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4) 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 引用例1(甲第6号証)に基づく特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項
(ア) 異議申立人は、引用例1に記載の光学的セキュリティ物品は、必ずしも透明である必要はなく、特に、米国再発行特許第24906号が参照されていることを考慮して、引用例1を読めば、むしろ、原則として透明PSAと共に不透明PSAも引用例1の開示の範囲内である旨主張している。また、引用例1に感圧接着剤層が不透明感圧接着剤である点が記載されていないとしても、引用例1において参照されている米国再発行特許第24906号明細書の記載に基づいて、不透明感圧接着剤を使用することは、当業者であれば容易に想到できたものである旨主張している。

(イ) しかしながら、引用例1に記載された光学的セキュリティ物品は、「透明感圧接着剤」を前提としたものであることは既に述べたとおりである(上記ア(イ)a参照)。そうすると、引用例1には、光学セキュリティ物品において感圧接着剤を不透明感圧接着剤としたものまで開示されているとはいえない。

(ロ) また、引用例1に記載された光学的セキュリティ物品において、透明感圧接着剤を不透明感圧接着剤とすることには阻害要因があるというべきである(上記ア(イ)a参照)。

イ 引用例2(甲第10号証)を主引用例とする特許法第29条第2項
(ア) 本件発明1について
a 引用例2(特許請求の範囲の請求項1、30、10頁8?15行、10頁下から4行?11頁7行、11頁11?23行及び図1)には、図1に示されるような再帰反射製品が記載されている(以下、「引用発明2」という。)。

b 本件発明1と引用発明2を対比すると、両者は少なくとも以下の(相違点A)において相違する。
(相違点A)
本件発明1は、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記不透明接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層」を含み、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記不透明接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」のに対して、
引用発明2は、バリア層を含んでいない点。

c 上記相違点Aについて検討する。
(a) 引用例2の発明の背景(6頁6行?8頁6行)、20頁8?20行等の記載からみて、引用発明2は、加熱されたエンボス加工具あるいは超音波エネルギーを用いてシーリングフィルムをオーバーレイフィルムにエンボス加工により接合してセルを形成した際に、再帰反射シートの背面が凹凸(窪み)のあるものとなり、背面中の窪みから湿分が進入して剥離する可能性があること、エンボス加工再帰反射シート中に形成された窪みがシートコンポーネントの弱体化につながる可能性や応力集中部を形成する可能性があることを発明が解決しようとする課題とするものである。そして、引用発明2は、該課題を解決するために、オーバーレイフィルムに結合されたシーリングフィルムの中の複数の窪みをシールコートで満たすようにした点に特徴があるものである。

(b) 上記(a)のとおり、引用発明2は加熱されたエンボス加工具あるいは超音波エネルギーを用いてシーリングフィルムの背面に窪み(前面に隆起部)を形成して、オーバーレイフィルムに接合して再帰反射シートを形成することを前提としている。そして、このような前提の再帰反射製品においては、エンボス加工時のキューブコーナー要素とシーリングフィルムとの間隔、あるいはシーリングフィルムの窪み(隆起部)の高さの調整によって、必要な再帰反射性が得られる程度にキューブコーナー要素を露出させることができる。そうすると、引用発明2のようなシーリングフィルムのエンボス加工により製造される再帰反射シートにおいて、キューブコーナー要素への接着剤の流れ込みを防止するバリア層を採用する動機付けはない。

(b) そうしてみると、引用発明2において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明1は、引用発明2及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(イ) 本件発明2について
a 本件発明2と引用発明2とを対比すると、両者は、以下の(相違点A’)において少なくとも相違している。
(相違点A’)
本件発明2は、「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記不透明接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記不透明接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記不透明接着剤層の間に配置されたバリア層」と、「前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気」とを含んでいるのに対して、
引用発明2は、バリア層を含んでいない点。

b 上記相違点A’について検討する。
上記(ア)cにおいて検討した理由と同様な理由により、引用発明2に、引用例1に記載されたバリア層の構成を採用する動機付けがないのであるから、引用発明2において、上記相違点A’に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

c よって、本件発明2は、引用発明2及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(ウ) 本件発明3について
a 引用例2(特許請求の範囲の請求項1、30、10頁8?15行、10頁下から4行?11頁7行、11頁11?23行及び)には、図1に示されるような再帰反射製品を形成する方法が記載されている(以下、「引用形成方法発明2」という。)。

b 本件発明3と引用形成方法発明2とを対比すると、両者は、以下の(相違点A’’)において少なくとも相違している。
(相違点A’’)
本件発明3は、「バリア層を含む不透明接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記不透明接着剤の流れ込みを防ぐ、工程」を含み、「前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し、前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する」のに対して、
引用形成方法発明2は、バリア層を含んでおらず、そのような工程となっていない点。

c 上記相違点A’’について検討する。
上記(ア)cにおいて検討した理由と同様な理由により、引用形成方法発明2に、引用例1に記載されたバリア層の構成を採用する動機付けがないのであるから、引用形成方法発明2において、上記相違点A’’に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明3は、引用形成方法発明2及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

ウ 引用例3(甲第8号証)を主引用例とする特許法第29条第2項
(ア) 本件発明1について
a 引用例3(特許請求の範囲の請求項1、【0019】、【0020】、【0024】、【0030】、【0046】?【0048】、【0052】及び図1)には、図1に記載されたような反射シートが記載されている(以下、「引用発明3」という。)。

b 本件発明1と引用発明3を対比すると、両者は、以下の(相違点B)において少なくとも相違している。
(相違点B)
本件発明1においては、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」が、「第2領域」において、「前記キューブコーナー要素と接触して」いるのに対して、
引用発明3においては、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」が、「前記キューブコーナー要素」を囲む様に配置された「励起素子」と接触しており、「キューブコーナー要素」と接触していない点。

c 上記相違点Bについて検討する。
(a) 引用例3の【従来技術】【0002】?【0008】、【発明が解決しようとする課題】【0009】?【0011】、【課題を解決するための手段】【0012】、【発明の実施の形態】【0013】等の記載からみて、引用発明3は、プリズム型反射シートに所定間隔をおいてプリズムシートを重ねた後に、シール層裏面から熱エンボス加工を施して反射シートを形成した後、反射シートを基板に接着する場合、シール層裏面と基板との間にシール層とは別に接着剤を用意する必要があることに鑑みて、励起素子が複数のプリズム突起(キューブコーナー)を囲むように配置された励起素子付きプリズムシートを用いて、励起素子の他端においてプリズムシートをシール層と接着するようにして反射シートを作製するものを前提の構成とするものである。そして、引用発明3は、シール層が、基板へ反射シートを接着するための接着層として機能し、基板に接着する時の位置合わせが容易でありながら、隆起素子との間の剥離強度を高めることができるようなシール層材料とするとともに、励起素子により、プリズム突起(キューブコーナ要素)がシール層とプリズムシートとの間の空間に露出する様に、プリズムシートとシール層とを相互に離している点に特徴があるものである。

(b) そうすると、引用発明3においては、励起素子が複数のプリズム突起(キューブコーナー要素)を囲むように配置されるとともに、一体的に結合されている励起素子付きプリズムシートの使用と、シール層が励起素子と接着して反射シートが作製されることが、引用発明3においては必須の構成である(例えば、引用例3の請求項1の記載を参照)。
してみると、引用発明3において、前提となっているプリズムシートの励起素子とシール層である不透明感圧接着剤とが接着される構成に替えて、プリズムシートのプリズム突起(キューブコーナー)とシール層である不透明感圧接着剤とが接着された構成とすることは、阻害要因があるというべきである。
そうすると、引用発明3において、上記相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明1は、引用発明3及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(イ) 本件発明2について
a 本件発明2と引用発明3を対比すると、両者は、以下の(相違点B’)において少なくとも相違する。
(相違点B’)
本件発明2においては、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」が「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部部分と接触して」、「入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する」のに対して、
引用発明3においては、「TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層」が「キューブコーナー要素」を囲む様に配置された「励起素子」と接触して、「入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する」点。

b 上記相違点B’について検討する。
上記(ア)cにおいて検討した理由と同じ理由により、引用発明3において、上記相違点B’に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

c よって、本件発明2は、引用発明3及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(ウ) 本件発明3について
a 引用例3(引用例3の特許請求の範囲の請求項1、【0019】、【0020】、【0024】、【0030】、【0046】?【0048】、【0052】及び、図1)には、図1に示されたような反射シートを形成する方法が記載されている(以下、「引用形成方法発明3」という。)。

b 本件発明3と引用形成方法発明3を対比すると、両者は、以下の(相違点B’’)において少なくとも相違する。
(相違点B’’)
本件発明3においては、「第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し」ているのに対して、
引用形成方法発明3においては、「第2領域」が「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素」を囲む様に配置された「励起素子」と接触しており、「前記構造化表面の前記キューブコーナー要素」と接触していない点。

c 上記相違点B’’について検討する。
上記(ア)cにおいて検討した理由と同じ理由により、引用形成方法発明3において、上記相違点B’’に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明3は、引用形成方法発明3及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

エ 特開2003-315516号公報(甲第9号証)(以下、「引用例5」という。)を主引用例とする特許法第29条第2項
(ア) 本件発明1について
a 引用例5(特許請求の範囲の請求項1、【0003】、【0016】、【0018】、【0019】、【0040】、【0049】、【0050】、【0055】?【0057】、図1)には、図1に示されたような反射積層体が記載されている(以下、「引用発明5」という。)。

b 本件発明1と引用発明5を対比すると、両者は、以下の(相違点C)において少なくとも相違している。
(相違点C)
本件発明1は、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層」を含み、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記TiO_(2)含有白色感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」のに対して、
引用発明5は、バリア層を含んでいない点。

c 上記相違点Cについて検討する。
(a) 引用例5の【従来技術】【0002】?【0007】、【発明は解決しようとする課題】【0008】?【0011】、【課題を解決するための手段】【0012】等の記載からみて、引用発明5は、隆起壁付きのプリズムシートではなく、加工・成型が容易な通常のプリズムシートを用いて作製できる反射積層体である。また、プリズム突起が変形しやすいエンボス接合法を用いることなく、隆起壁とプリズムシートとの接着強度を高めることができる反射積層体を提供することを目的としている。そして、請求項1にも記載されているように、支持体の表面に固定された複数の隆起壁の先端及び壁面に接着層を密着させプリズムシートと隆起壁とが接着層を介して接着されて、接着層に接触しないようにプリズム突起が露出する空間を形成するようにした点に特徴があるものである。また、引用例5の段落【0021】には、隆起壁の形状や配列を、その幅方向に沿って互いに隣接する隆起壁の間にプリズム突起が露出する空間が形成されるようにすることが記載されている。

(b) 上記(a)より、引用発明5においては、隆起壁の形状や配列の調整により、プリズム突起が露出する空間が形成されるようにすることができるものである。そうすると、引用発明5において、キューブコーナー要素への接着剤の流れ込みを防止するバリア層を採用する動機付けはない。
したがって、引用発明5において、上記相違点Cに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明5及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(イ) 本件発明2について
a 本件発明2と引用発明5を対比すると、両者は、以下の(相違点C’)において少なくとも相違している。
(相違点C’)
本件発明2は、「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記TiO_(2)含有白色感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色感圧接着剤層の間に配置されたバリア層」と、「前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気」と、を含むものであるのに対して、
引用発明5は、バリア層を含んでいない点。

b 上記相違点C’について検討する。
上記(ア)cで示した理由と同様な理由により、引用発明5に、引用例1に記載されたバリア層の構成を採用する動機付けがない。そうすると、引用発明5において、上記相違点C’に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

c よって、本件発明2は、引用発明5及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(ウ) 本件発明3について
a 引用例5(特許請求の範囲の請求項1、【0003】、【0016】、【0018】、【0019】、【0040】、【0049】、【0050】、【0055】?【0057】、図1)には、図1に示されたような反射積層体を形成する方法が記載されている(以下、「引用形成方法発明5」という。)。

b 本件発明3と引用形成方法発明5を対比すると、両者は、以下の(相違点C’’)において少なくとも相違している。
(相違点C’’)
本件発明3は、「バリア層を含むTiO_(2)含有白色感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO2含有白色感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程」を含み、「前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し、前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する」のに対して、
引用形成方法発明5は、バリア層を含まず、そのような工程となっていない点。

c 上記相違点C’’について検討する。
上記(ア)cで示した理由と同様な理由により、引用形成方法発明5に、引用例1に記載されたバリア層の構成を採用する動機付けがない。そうすると、引用形成方法発明5において、上記相違点C’’に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明3は、引用形成方法発明5及び引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

オ 特開平6-342102号公報(甲第11号証)(以下、「引用例6」とう。)を主引用例とする特許法第29条第2項
(ア) 本件発明1について
a 引用例6(特許請求の範囲の請求項1、11、【0015】、【0021】、【0023】?【0025】、【0028】、【0036】、【0040】、【0047】、【0049】、【0053】、【0054】、図8)には、図8に示されたような逆反射材が記載されている(以下、「引用発明6」という。)。

b 本件発明1と引用発明6を対比すると、以下の(相違点D)において少なくとも相違している。
(相違点D)
本件発明1は、「前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記着色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層」を含み、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記着色不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」のに対して、
引用発明6は、反射性金属付着層及び保護コーティング層を含んでいるものの、該「バリア層」を含んでいるのかどうか不明であり、「前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する」のかどうかも不明である点。

c 上記相違点Dについて検討する。
(a) 引用発明6は、プリズムの反射中間面を与える手段として、反射性コーティング層や空気層が知られているところ(【0036】)、色付きの逆反射材の反射中間面を与える手段として、反射性金属付着層(30)を採用し、該反射性金属付着層(30)を選択的に除去し、また、残すためにパターンを有する保護コーティング材(32)をマイクロプリズム上の該反射性金属付着層に積層した構成とするとともに、反射性金属付着層(30)及び保護コーティング材(32)により被覆されないマイクロプリズムとマイクロプリズム上の反射性金属付着層(30)及び保護コーティング材(32)を被覆するように無反射の色付コーティング材(38)を設ける構成とした点を特徴とするものである(特許請求能の範囲、【0009】、【0012】、【0013】、【0015】?【0017】、【0021】?【0024】、図8等参照)。
そうすると、引用発明6は、反射性金属付着層(30)により反射中間面を与えることをその前提として、保護コーティング材(32)はパターン化された反射性金属付着層(30)を形成するために必要な構成であって、マイクロプリズム上の反射性金属付着層(30)及び保護コーティング材(32)は、引用発明6においては必須の構成であると把握できる。そうすると、マイクロプリズムの反射中間面を与える手段として、反射性金属付着層(30)に変えて、屈折率が略1の空気層を採用し、着色不透明感圧接着剤層(色付コーティング材(38))と再帰反射性層(マイクロプリズム)との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成する構成とすることは、引用発明6の前提となっている反射性金属付着層を利用した前提構成及び保護コーティング材を反射性金属付着層のパターニングに用いるという形成方法を大きく変えてしまうことになる。してみると、引用発明6において、マイクロプリズムの反射中間面を与える手段として、反射性金属付着層(30)に変えて、屈折率が略1の空気層を採用し、着色不透明感圧接着剤層(色付コーティング材(38))と再帰反射性層(マイクロプリズム)との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成する構成とすることには、阻害要因があるというべきである。
したがって、引用発明6において、相違点Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
仮に、引用発明6において、反射性金属付着層(30)に変えて、屈折率が略1の空気層を採用し、着色不透明感圧接着剤層(色付コーティング材(38))と再帰反射性層(マイクロプリズム)との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成する構成とした場合であっても、反射性金属付着層(30)のパターニングのための保護コーティング材(32)は不要となるのであるから、保護コーティング材(32)を「バリア層」として含む構成となるわけではなく、引用発明1において、相違点Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明1は、引用発明6に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(イ) 本件発明2について
a 本件発明2と引用発明6を対比すると、両者は、以下の(相違点D’)において少なくとも相違している。
(相違点D’)
本件発明2は、「前記光学的に不活性な領域に隣接する前記着色不透明感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記着色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記着色不透明感圧接着剤層の間に配置されたバリア層」と、「前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気」とを含んでいるのに対して、
引用発明6は、反射性金属付着層及び保護コーティング層を含んでいるものの、該「バリア層」を含んでいるのかどうか不明である点。また、空気を含んでいない点。

b 上記相違点D’について検討する。
上記(ア)cにおいて検討した理由と同様な理由により、引用発明6においては、マイクロプリズムの反射中間面を与える手段として、反射性金属付着層に変えて空気(層)を採用することは、引用発明6の前提となっている反射性金属付着層を利用した構成及び保護コーティング層を反射性金属付着層のパターニングに用いた形成方法を大きく変えてしまうことになることから、阻害要因があるというべきである。そうすると、引用発明6において、相違点D’に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
また、仮に、引用発明6において、反射性金属付着層に変えて空気(層)を採用したとしても、保護コーティング材(32)を「バリア層」として含む構成となるわけではなく、引用発明1において、相違点D’に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

c よって、本件発明2は、引用発明6に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

(ウ) 本件発明3について
a 引用例6(特許請求の範囲の請求項1、11、【0015】、【0021】、【0023】、【0024】、【0028】、【0036】、【0040】、【0047】、【0049】、【0053】、【0054】、図8)には、図8に示されたような逆反射材を形成擦る方法が記載されている(以下、「引用形成方法発明6」という。)。

b 本件発明3と引用形成方法発明6を対比すると、両者は、以下の(相違点D’’)において少なくとも相違している。
(相違点D’’)
本件発明3は、「バリア層を含む着色不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記着色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程」を含んでいるのに対して、
引用形成方法発明6は、反射性金属付着層及び保護コーティング層を含んでいるものの、該「バリア層」を含んでいるのかどうか不明であって、上記工程を含んでいるのかどうか不明である点。

c 上記相違点D’’について検討する。
(a) 上記(ア)cにおいて検討したとおり、引用形成方法発明6は、色付コーティング材(38)(着色不透明感圧接着層)を、マイクロプリズム上の反射性金属付着層(30)及び保護コーティング材(32)及び被覆されていないマイクロプリズムに接着させる(適用する)のであって、反射性金属付着層(30)及び保護コーティング材(32)を含んだ色付コーティング層(38)(着色不透明感圧接着剤)をマイクロプリズム(構造化表面)に接着させる(適用する)ものではない。
そうすると、引用形成方法発明6は、「バリア層を含む着色不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用」する工程を少なくとも備えていないのであるから、上記相違点D’’は実質的な相違点を構成するものである。

(b) 上記(ア)cにおいて検討したとおり、引用形成方法発明6は、マイクロプリズム上の反射性金属付着層(30)に保護コーティング材(32)を設けて、該反射性金属付着層(30)をパターニングした後、無反射の色付コーティング材(38)のみをマイクロプリズムに適用する形成方法をその前提とするものであるから、反射性金属付着膜(30)のパターニングのためのパターンを有する保護コーティング材(32)及びパターニングされた反射性金属付着膜(30)がこの順に積層された積層体をその上に含む色付コーティング材(38)(着色不透明感圧接着層)を先に準備し、この色付コーティング材(38)(着色不透明感圧接着層)をマイクロプリズム(構造化表面)に対して適用する構成することは、その前提とする形成方法を大きく変えることになるため、阻害要因があるというべきである。
そうすると、引用形成方法発明6において、上記相違点D’’に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。

d よって、本件発明3は、引用形成方法発明6ではない。
また、本件発明3は、引用形成方法発明6に基づいて、当業者が発明をすることができたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射性白色物品であって、
主表面と反対側の構造化表面を集合的に形成する複数のキューブコーナー要素を含む再帰反射性層と、
入射光を再帰反射する光学的に活性な領域を含む第1領域、及び前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触して入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する第2領域を有する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と、
前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記第1領域の間に配置された、前記第1領域におけるバリア層と、
を含み、
前記バリア層を有する前記第1領域と前記第2領域が、前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と前記再帰反射性層の前記構造化表面との間に1.3未満の屈折率を有する低屈折率層を形成するのに十分な異なる特性を有する、
再帰反射性白色物品。
【請求項2】
再帰反射性白色物品であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層と、
前記構造化表面の前記キューブコーナー要素の一部分と接触して、入射光を実質的に再帰反射しない光学的に不活性な領域を形成する、TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層と、
前記光学的に不活性な領域に隣接する前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の一部分上のバリア層であって、入射光を再帰反射する光学的に活性な領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐために前記構造化表面と前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層の間に配置された、バリア層と、
前記光学的に活性な領域を形成する、前記バリア層と前記構造化表面の一部分との間の空気と、
を含む、再帰反射性白色物品。
【請求項3】
再帰反射性白色物品を形成する方法であって、
主表面と反対側の、複数のキューブコーナー要素を含む構造化表面を含む再帰反射性層を提供する工程と、
バリア層を含むTiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤層を前記構造化表面に適用して、前記バリア層を有する第1領域、及び第2領域を形成する工程であって、前記バリア層が、前記構造化表面と前記第1領域の間に配置されて、前記第1領域に対応する前記構造化表面への前記TiO_(2)含有白色不透明感圧接着剤の流れ込みを防ぐ、工程と、
を含み、
前記第2領域が前記構造化表面の前記キューブコーナー要素と接触し、前記第1領域が前記構造化表面と接触しないように前記バリア層が前記構造化表面に隣接する、
方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-12 
出願番号 特願2013-504874(P2013-504874)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 54- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 居島 一仁大森 伸一  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
河原 正
登録日 2016-08-12 
登録番号 特許第5986068号(P5986068)
権利者 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
発明の名称 光学的に活性な領域及び光学的に不活性な領域を含む再帰反射性物品  
代理人 胡田 尚則  
代理人 石田 敬  
代理人 高橋 正俊  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 松本 孝  
代理人 古賀 哲次  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 河原 肇  
代理人 加藤 憲一  
代理人 加藤 憲一  
代理人 河原 肇  
代理人 黒田 健二  
代理人 三橋 真二  
代理人 胡田 尚則  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 三橋 真二  
代理人 出野 知  
代理人 高橋 正俊  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 出野 知  

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