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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B66B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B66B |
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管理番号 | 1341047 |
異議申立番号 | 異議2017-700894 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-22 |
確定日 | 2018-04-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6100319号発明「エレベータの遠隔監視システム、遠隔監視装置及び通信装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6100319号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕及び請求項9について訂正することを認める。 特許第6100319号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6100319号の請求項1ないし9に係る特許は、平成27年6月30日に出願されたものであって、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年9月22日にその特許について特許異議申立人 小山輝晃(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年12月4日付けの取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、平成30年1月23日に意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたものである。 その後、平成30年2月14日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成30年3月19日に異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成30年1月23日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項よりなる。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備したことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。」とあるのを、 「監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備したことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。」と訂正する。(請求項1を引用する請求項6及び7についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0006】に、 「一実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムは、監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、上記エレベータの運転を制御する制御装置と、予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置とを備える。」とあるのを、 「一実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムは、監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、上記エレベータの運転を制御する制御装置と、上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置と、この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置とを備える。」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に、 「上記遠隔監視装置は、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータの遠隔監視システム。」とあるのを、 「監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備し、 上記遠隔監視装置は、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を備えたことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。」と訂正する。(請求項2を引用する請求項3ないし7についても同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に、 「各国に設置されたエレベータに、上記エレベータの運転を制御する制御装置から予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出す遠隔監視装置とは独立して設けられる通信装置であって、 上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って監視センタへ送信する通信手段と を具備したことを特徴とする通信装置。」とあるのを、 「各国に設置されたエレベータに、上記エレベータの運転を制御する制御装置から予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置とは独立して設けられる通信装置であって、 上記エレベータの設置国に対応する上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って監視センタへ送信する通信手段と を具備したことを特徴とする通信装置。」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1の記載に関して、「予め設定された複数の監視項目」について「エレベータの設置国に対応する」こと、及び「遠隔監視装置」について「予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる」ことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項(特に明細書の段落【0016】及び【0021】の記載等を参照)の範囲内のものであって、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、訂正事項1の訂正は一群の請求項[1ないし7]に対して請求されたものである。 (2)訂正事項2 訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書の記載を訂正事項1による訂正に対応するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、訂正事項2の訂正は、願書に添付した明細書の訂正をするものであるが、当該明細書の訂正に係る一群の請求項[1ないし7]の全てに対して訂正するものである。 (3)訂正事項3 訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の請求項2の記載を独立形式に改めたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、訂正事項3の訂正は一群の請求項[1ないし7]に対して請求されたものである。 (4)訂正事項4 訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の請求項9の記載に関して、「遠隔監視装置」について「予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出すことにより、各国共通で使用できる」こと、及び「各監視項目」について「エレベータの設置国に対応する」ことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項(特に明細書の段落【0016】及び【0021】の記載等を参照)の範囲内のものであって、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 上記2(1)、(3)及び(4)の独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1ないし9に対して特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし7及び9に係る訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし7]及び請求項9について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記第2 4のとおり、本件訂正請求による訂正は認容されるので、特許第6100319号の請求項1ないし9に係る発明(以下、請求項1ないし7及び9に係る発明については、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明7」及び「本件訂正発明9」という。また、訂正請求がされていない請求項8に係る発明については、「本件特許発明8」という。)は、平成30年1月23日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。) 「【請求項1】 監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備したことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。 【請求項2】 監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備し、 上記遠隔監視装置は、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を備えたことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。 【請求項3】 上記遠隔監視装置は、 現地の時刻を取得する時刻取得手段を備え、 上記監視手段は、 上記時刻取得手段によって得られた現地の時刻を上記各監視項目に関する情報に付して上記通信装置に与えることを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項4】 上記遠隔監視装置は、 任意の国を選択するためのスイッチを備え、 上記監視手段は、 電源投入時に上記スイッチの状態から上記エレベータの設置国を判断し、上記監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項5】 上記遠隔監視装置は、 電源投入時に上記制御装置に記憶された国データに基づいて上記エレベータの設置国を判断し、上記監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項6】 上記通信装置は、 上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記監視センタへ送信する通信手段と を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項7】 上記優先度順位テーブルの内容は、上記監視センタからの遠隔操作によって変更されることを特徴とする請求項6記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項8】 監視対象であるエレベータに設けられ、上記エレベータの運転を制御する制御装置に接続される遠隔監視装置であって、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を具備したことを特徴とする遠隔監視装置。 【請求項9】 各国に設置されたエレベータに、上記エレベータの運転を制御する制御装置から予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置とは独立して設けられる通信装置であって、 上記エレベータの設置国に対応する上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って監視センタへ送信する通信手段と を具備したことを特徴とする通信装置。」 第4 異議申立理由の概要 異議申立人は、証拠として甲第1号証ないし甲第16号証を提出するとともに、申立ての理由を概略次のとおり主張している。 1 請求項1について 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 2 請求項1ないし9について 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、甲第1号証ないし甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし9に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 3 証拠 甲第1号証:特開2006-56677号公報 甲第2号証:特開2010-14291号公報 甲第3号証:特開2005-119843号公報 甲第4号証:特開2002-20052号公報 甲第5号証:特開2014-229994号公報 甲第6号証:特開平5-347647号公報 甲第7号証:特開平6-321449号公報 甲第8号証:特開2011-170626号公報 甲第9号証:特開2006-143473号公報 甲第10号証:特開2010-23726号公報 甲第11号証:特開2005-57943号公報 甲第12号証:特開2007-235668号公報 甲第13号証:特開2000-197118号公報 甲第14号証:特許第3176764号公報 甲第15号証:特開2002-53276号公報 甲第16号証:特開2011-195284号公報 第5 取消理由の概要 取消理由の概要は以下のとおりである。 1 理由 本件特許の下記の請求項1、6、7及び9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 2 本件特許発明 特許第6100319号の請求項1ないし9に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 3 引用刊行物 甲第1号証:特開2006-56677号公報 甲第2号証:特開2010-14291号公報 甲第3号証:特開2005-119843号公報 甲第6号証:特開平5-347647号公報 甲第16号証:特開2011-195284号公報 (なお、甲第1ないし3号証、甲第6号証及び甲第16号証と同じものである。以下、異議申立人の示した甲号証を「甲1」、「甲2」・・などという。) 4 判断 (1)請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3にみられるような周知技術1及び甲6にみられるような周知技術2に基いて当業者が容易に想到し得たことであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2及び甲16に記載された技術に基いて当業者であれば容易に想到し得たことであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16に記載された技術に基いて当業者であれば容易に想到し得たことであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2及び甲16に記載された技術に基いて当業者であれば容易に想到し得たことであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 甲1、2、3、6及び16に記載の発明及び技術 1 甲1 (1)甲1の記載 本件特許の出願前に頒布された甲1(特開2006-56677号公報)には、「エレベータ運行状況監視システム」に関して、次のような記載がある。(なお、下線は、理解の一助とするために当審が付与したものである。以下同様。) 1a)「【請求項1】 それぞれ公衆回線に接続されたコンピュータからなる運行監視部と運行監視サーバーとを含んでなり、前記運行監視部は、1基以上のエレベータ設備の運行を制御するエレベータ制御装置に接続されて前記エレベータ設備の運行情報を収集して時刻情報とともに運行情報データとして一時記憶し、前記一時記憶した運行情報データを定期的或いは不定期に前記運行監視サーバーに前記公衆回線を介して送信するように構成され、前記運行監視サーバーは、前記運行監視部から受信した運行情報データを、前記公衆回線を介して運行監視サーバーにアクセスするコンピュータ端末もしくは携帯端末による読み出しが可能な形式で、格納・記憶し、前記アクセスしたコンピュータ端末もしくは携帯端末により選択された運行情報を当該コンピュータ端末もしくは携帯端末に前記公衆回線を介して送信するよう構成されている、エレベータ運行状況監視システム。」 1b)「【0022】 すなわち、本発明は、それぞれ公衆回線に接続されたコンピュータからなる運行監視部と運行監視サーバーとを含んでなり、前記運行監視部は、1基以上のエレベータ設備の運行を制御するエレベータ制御装置に接続されて前記エレベータ設備の運行情報を収集して時刻情報とともに運行情報データとして一時記憶し、前記一時記憶した運行情報データを定期的或いは不定期に前記運行監視サーバーに前記公衆回線を介して送信するように構成され、前記運行監視サーバーを、前記運行監視部から受信した運行情報データを、前記公衆回線を介して運行監視サーバーにアクセスするコンピュータ端末もしくは携帯端末による読み出しが可能な形式で、格納・記憶し、前記アクセスしたコンピュータ端末もしくは携帯端末により選択された運行情報を当該コンピュータ端末もしくは携帯端末に前記公衆回線を介して送信するよう構成されている、エレベータ運行状況監視システムにより、上記目的を達成する。」 1c)「【0031】 本実施例1は、保守会社の監視センターにエレベータ運行監視サーバー(以下、運行監視サーバー)を設置し、顧客が扱うモニタ&監視対応ソフトをWEB対応での提供とすることにより、ノウハウの蓄積に応じて顧客対応項目や内容を更新できるようにしたものである。 【0032】 図1は、本発明の実施例1に係るエレベータ運行状況監視システムの要部構成を示すブロック図である。図示のエレベータ装置は、1階から9階の間を運行するもので、それぞれ対応するエレベータ(1?3号機、9?10号機)を制御する号機制御装置506A?506C,706A,706Bと、前記各号機制御装置に制御されて動作する乗りかご20と、号機制御装置506A?506Cに運転系ネットワークL5を介して接続された群管理制御装置501と、号機制御装置706A,706Bに運転系ネットワークL7を介して接続された群管理制御装置701と、群管理制御装置501、701にエレベータ監視系上位ネットワークL3を介して接続された昇降機監視盤・監視制御装置505及び伝送端末装置(モデム)504Aと、昇降機監視盤・監視制御装置505にエレベータ監視系下位ネットワークL2を介して接続された監視盤パーソナルコンピュータ41Aと、群管理制御装置501、701にホール呼び系ネットワークL6で接続されたホール呼び釦601,602,‥‥‥609と、各乗りかご20に設けられ伝送制御伝送ラインL4で各号機制御装置に接続されたかご呼び運転盤(かご呼び釦)30と、各号機制御装置に接続されたホールランタン12と、公衆電話回線網(以下、公衆回線網)504Bを介して前記伝送端末装置(モデム)504Aに接続された運行監視サーバー504Dと、を含んで構成されている。」 1d)「【0034】 なお、本実施例では、前記顧客側サーバ(ゲートウェイ)504、一般事務系ネットワークL1、事務用パーソナルコンピュータPC101,PC102はエレベータが設置されているビルに設けられているが、運行監視サーバー504Dは、エレベータが設置されているビルとは別の場所にあるエレベータ保守会社に設置されている。 【0035】 群管理制御装置501、701は、接続された号機制御装置の数は異なるが、同一の構成と考えてよいので、ここでは、群管理制御装置501について説明する。群管理制御装置501は、エレベータ運行監視ソフトを組み込んだ運行監視部である運行監視系ボード502およびエレベータ運転制御ソフトを組み込んだ運転系ボード503を含んで構成されている。この二つのモジュール(ソフト)を1組のマイコンボード(運転系ボード)の中へ組み込む構成とすることもできるが、ここではそれぞれ別マイコンボードで構成する例で説明する。 【0036】 昇降機監視盤・監視制御装置505は、各群管理制御装置501,701よりエレベータの監視信号や管制運転に関する信号や指令を伝送するものであり、一般には、故障発生や停電などの管制運転時の自動制御や手動操作指令や夜間時のパーキングや階別不停止指定などの監視を行ない、乗りかご内との連絡手段であるインターホンとセットで構成されている。各号機制御装置506A?506C,706A、706Bよりエレベータ運行状況を把握するのに必要な情報を運転系ネットワークL5,L7を介して入手し、ホール呼び応答号機の選択とサービス結果を求めることに関する運行管理情報(運行情報)をエレベータ監視系上位ネットワークL3または運転系ネットワークL5,L7から入手し、高度で多彩なメニューを有する監視を行なう様に構築することも可能である。 【0037】 例えば、エレベータ監視系上位ネットワークL3を使って取り込んだエレベータの各種信号や運行に関する情報を整理して、監視や警報レベルオーバー時の運行状況データや利用状況内容を監視制御装置505で一定期間(1日から1週間程度)保管し、必要に応じて後で再生する様に構成することも可能である。」 1e)「【0061】 また、号機制御装置506A?506Cから送られてくる、ホール呼び,かご呼び,かご内荷重、かご位置,運転モード、エレベータの異常などの情報は、運転系ネットワークL5により運行監視系ボード502へ集められ、時刻情報とともに整理またはデータ圧縮して一時保管されたあと、エレベータ監視系上位ネットワークL3と伝送端末装置504A、公衆回線網504Bを経て,運行監視サーバー504Dに蓄積される。エレベータの運行状況に、契約の監視条件(通報)に合致した異常が認められた時は、その情報は、顧客側サーバー504経由で一般事務系ネットワークL1を経て、指定の送信先へ伝送される。また、事務用パーソナルコンピュータPC101?PC102から運行監視サーバー504Dにアクセスして、例えば運行モニター表示や、待ち時間表示を行うことにより、現状の混雑状況を確認したり、事務用パーソナルコンピュータの設置階床のホール呼びや、専用運転呼び指令やスケジュール設定などを行うことも可能である。 【0062】 以下、本実施例において使用されるデータテーブルの例について説明する。図6は運行監視や情報表示に必要なデータが運行監視系ボード502に取り込まれて整理され、一時的に格納されるエレベータ運転信号取り込みデータテーブル803を示し、図4と図5と図7は、同じく、運行監視系ボード502で生成される、エレベータの運行状況を記録するエレベータ運転サービス状態データ801、日時情報データ802、運行情報データ804が格納される運行情報データテーブルを、それぞれ示す。図4と図5において、b7?b0は、格納するメモリーのBITを示しており、格納データの相対アドレス0の先頭7BITと6BITを使って、日時情報データ802か、運転サービス状態データ801かなど、大別の識別に使用する。」 1f)「【0063】 運行監視系ボード502または後述する図18のエレベータ運行監視制御サーバー504E(以下、運行監視系ボード502で代表して記載)は、エレベータの運行状況の様々な事象を捉えるために必要な運転信号を幅広く取り込み、取り込んだデータを整理して図6に示されるエレベータ運転信号取り込みデータテーブル803へ一時保管する。エレベータ運転信号取り込みデータテーブル803へ一時保管された各項目のデータは、運行監視系ボード502により常に監視され、変化するごとに更新される。図6に示す各項目のデータのいずれかが変化すると、変化した時点で、変化した項目(データ種別)に対応した内容の運転サービス状態データ801が、運行監視系ボード502により生成される。 【0064】 運転サービス状態データ801の内容(図4に示すフォーマットの相対アドレス1?8の内容)はデータ種別により異なり、図4に示す運転サービス状態データ801の相対アドレス1から8の項目は、データ種別No.4?16に対応した内容のものである。データ種別No.1?3、17,18に対応する運転サービス状態データの相対アドレス1?8には、図4に例示した項目とは異なる、そのデータ種別に対応した項目の情報が記録される。つまり、運行監視系ボード502は、運転信号取り込みデータテーブル803に記録されているデータの個々の信号の変化の有無を監視し、変化が検知されたら、図4に例示するエレベータ運転サービス状態データ801の形式で、変化したデータに係る情報を、そのときの時刻(年月日時分を省き秒時のみを0.1秒単位で示した時刻)を含めて記録する。各運転サービス状態データには時刻データとして、0.1秒きざみの「秒」のデータが含まれている。 【0065】 運行監視系ボード502はまた、時刻を示すタイム情報を、図5に示す日時情報データ802の形式で、予め定めた時間間隔(数分また数秒ごと)に時系列に記録する。そして、周期的に生成された日時情報データ802と、その間に生成されたエレベータ運転サービス状態データ801を、時系列的に関連付けて、図7に示す運行情報データ804として運行情報データテーブルに、1日単位で、格納する。 【0066】 すなわち、図7に示す日時情報データ1、日時情報データ2、‥‥‥‥‥‥日時情報データ1438、日時情報データ1439、日時情報データ1440は、例えば10時0分、10時1分、のように、1分間隔で記録された図5に示す日時情報データ802であり、図7に示すデータ1(時刻情報付)、データ2(時刻情報付)、‥‥‥‥‥‥データ8(時刻情報付)は、日時情報データ1で表される時刻と日時情報データ2で表される時刻の間で生成された運転サービス状態データ801である。 【0067】 図7では、日時情報データ1と日時情報データ2の間に、8個の運転サービス状態データが記録されているが、ある時点の日時情報データと次の日時情報データの間に記録される運転サービス状態データの数は一定ではなく、エレベータの運転状況、すなわち、図6に示すデータの変動の多少により、変動する。 【0068】 図7に示す形式で運行情報データテーブルに記録された情報は、5秒や3分など周期的に集積され、ファイル化して伝送モデムや光ファイバー通信を行なう伝送端末装置(モデム)504Aを経由して、エレベータ保守会社に設置されている運行監視サーバー504Dに公衆回線網504Bを経て送信される。」 (2)上記(1)及び図面から分かること 1g)図1からみて、伝送端末装置504Aは、運行監視ボード502からは別途、独立して設けられることが分かる。 (3)甲1に記載された発明 上記(1)及び(2)並びに図面を総合すると、甲1には次の発明が記載されている。 「保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504Dとエレベータとが公衆回線を介して接続されたエレベータ運行状況監視システムにおいて、 エレベータの運転を制御する号機制御装置506A?506Cと、 ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、号機制御装置506A?506Cから集める運行監視系ボード502と、 この運行監視系ボード502とは独立してエレベータに設けられ、運行監視系ボード502によって集められたホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、運行監視サーバ504Dに送信する伝送端末装置504Aとを備えた、エレベータ運行状況監視システム。」(以下、「甲1発明1」という。) 「エレベータに、エレベータの運転を制御する号機制御装置506A?506Cから、ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を集める運行監視系ボード502とは独立して設けられる伝送端末装置504Aであって、 ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504Dに送信する手段を備える伝送端末装置504A。」(以下、「甲1発明2」という。) 「エレベータに設けられ、エレベータの運転を制御する号機制御装置506A?506Cに接続される運行監視系ボード502であって、 ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を号機制御装置506A?506Cから集める手段を有する運行監視系ボード502。」(以下、「甲1発明3」という。) 2 甲2 (1)甲2の記載 本件特許の出願前に頒布された甲2(特開2010-14291号公報)には、「群管理装置および群管理システム」に関して、次のような記載がある。 2a)「【請求項1】 複数の建物(50a,50b,50c)に設置された多数の設備機器を複数の群(15a,15b,15c)として管理する群管理装置(30)であって、 建物ごとに配置され前記建物内の前記多数の設備機器を制御する制御装置(20a,20b,20c)を介して、前記多数の設備機器の運転データを取得する取得部(35a)と、 前記運転データが示す値である運転データ値を群ごとに総括する総括部(35c)と、 前記総括部により総括された、前記複数の群に対する結果を並列させる画面を生成する画面生成部(35e)と を備える、 群管理装置。」 2b)「【0005】 第1発明に係る群管理装置は、複数の建物に設置された多数の設備機器を複数の群として管理する群管理装置であって、取得部と、総括部と、画面生成部とを備える。取得部は、制御装置を介して多数の設備機器の運転データを取得する。制御装置は、建物ごとに配置され建物内の多数の設備機器を制御する。総括部は、運転データ値を群ごとに総括する。運転データ値は、運転データが示す値である。画面生成部は、総括部により総括された、複数の群に対する結果を並列させる画面を生成する。 【0006】 本発明に係る群管理装置では、複数の建物に設置された多数の設備機器の運転データが、建物ごとに配置された制御装置を介して取得される。さらに、運転データ値が群ごとに総括され、総括された結果を並列する画面が生成される。運転データ値とは、例えば、消費電力量値、温度乖離値、および快適性を示す指数を示す値等である。 【0007】 これにより、複数の建物に設置された多数の設備機器を効率よく一望で判定できる。また、設備機器の運転状態を公平に評価することができる。」 2c)「【0118】 (7)上記実施形態において、群管理装置30は、室内機12aa-12ac,12ba-12bc,12ca-12cc,・・・のみならず、その他の設備機器、例えば、照明装置、給排水装置、加湿器、昇降機、防犯装置等を管理してもよい。」 2d)「【0121】 (10)上記実施形態では、一の管理領域に複数の建物が立地するような大学や病院等の物件で管理領域内に群管理装置30を設置した態様を例示したが、一の管理領域が日本全国または全世界の各国など広域にわたっているような場合にも、インターネット等の回線で接続することにより、群管理装置30を適用させることができる。例えば、大学の複数の施設が、日本全国の複数の都道府県に点在するような場合や、企業の支点が全国各地に点在するような場合など、全施設における設備機器の運転状態を一望で判定することができる。」 (2)甲2に記載された技術 上記(1)及び図面を総合すると、甲2には次の技術が記載されている。 「複数の建物に設置された多数の昇降機等の設備機器を複数の群として管理し、建物ごとに配置され建物内の多数の設備機器を制御する制御装置を介して多数の設備機器の運転データを取得する取得部35aを備える群管理装置30において、一の管理領域が日本全国または全世界の各国など広域にわたっているような場合にも、インターネット等の回線で接続することにより、群管理装置30を適用する技術。」(以下、「甲2技術」という。) 3 甲3 (1)甲3の記載 本件特許の出願前に頒布された甲3(特開2005-119843号公報)には、「エレベータのカメラ映像配信装置」に関して、次のような記載がある。(なお、下線は、理解の一助とするために当審が付与したものである。) 3a)「【請求項1】 エレベータかごに取り付けられたカメラで撮像した画像データを圧縮し、回線を介してエレベータの監視センターへ配信するエレベータのカメラ映像配信装置において、 前記カメラで撮像した画像に時刻データを重ね合わせる画像重ね合わせ手段と、 前記画像重ね合わせ手段により時刻データが重ね合わせられた画像データを圧縮するデータ圧縮手段と、 前記データ圧縮手段により圧縮された画像データと、データ圧縮を施さない時刻データとを回線を介して前記エレベータの監視センターに連続で配信する配信手段と、 前記エレベータの監視センターに設けられ、前記配信手段によって配信されたデータを受信し、前記画像データを伸長した画像と前記データ圧縮を施さない時刻データとを同時に表示する受信表示手段とを備えたことを特徴とするエレベータのカメラ映像配信装置。」 3b)「【0017】 本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、カメラ画像の遅延時間を容易に且つ正確に得ることができ、その結果遅延時間を考慮に入れてエレベータをリモートコントロールすることができるエレベータのカメラ映像配信装置を提供することを目的とする。」 3c)「【0024】 以下図面を参照しながら本発明の一実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す全体構成図であり、Nは複数の回線網をつなぐ、例えば電話回線、ISDN、PHS、ADSLなどの回線である。 【0025】 回線Nの各回線網には、エレベータ装置ELa?ELnおよび監視センターSが接続されている。エレベータ装置ELa?ELnは、エレベータ昇降路内を上下動するかご1a?1n、該かご1a?1n内に設置されたインターフォン2a?2nおよびカメラ3a?3n、カメラサーバ4a?4n、回線接続装置(モデム/TA・DSU;ターミナルアダプタ・デジタルサービスユニット)5a?5nを各々備えている。 【0026】 前記監視センターSは、受信データの伸長を行う機能を有し、回線接続装置(モデム/TA・DSU;デジタルサービスユニット)5sおよび受信表示装置6(本発明の受信表示手段)を備えている。 【0027】 前記カメラサーバ4a?4nは、カメラ3a?3nで撮像した画像に時刻表示をオーバレイ(スーパーインポーズ等)し、画像圧縮してバッファメモリに溜めながら随時伝送するとともに、時間データ(時刻データ)も随時伝送する装置であり、その詳細は例えば図2のように構成されている。 【0028】 図2において11は、カメラ3a?3nからの映像信号が入力される画像入力回路である。12は時計13の時間データ(時刻データ)を、画像入力回路11において前記カメラの画像に重ね合わせる(データを貼り付ける)スーパーインポーズ部(本発明の画像重ね合わせ手段)である。 【0029】 14は、画像入力回路11で重ね合わせられた画像のデータファイルを行い、デジタル変換し、データの圧縮を行うデータ圧縮部(本発明のデータ圧縮手段)である。 【0030】 前記データ圧縮部14のデータ圧縮が施された重ね合わせ画像のデータと、時計13の、データ圧縮が施されない時間データは、CPU・メモリー回路15に一時記憶された後、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)回路16を介してネットワークに配信され、図1の監視センターSに送信される。」 3d)「【0033】 図4によれば、データ圧縮、伸長が施された重ね合わせ画像の表示「12:00.45」と、データ圧縮が施されず直接送信された時刻データの表示「12:00.55」とから、画像データの圧縮、伸長によってコンマ10秒の遅延時間があることが容易に且つ正確に認識できる。 【0034】 これによって、前記遅延時間を見越した操作で、遠隔地にあるエレベータをリモートコントロールすることができる。 【0035】 また前記遅延時間を正確に知ることによって、回線、例えばインターネット、ADSL、ISDN、PHS、電話線等に設置された各種機器の遅延特性(遅延時間)を、複雑で時間のかかる計算をすることなく把握することができる。 【0036】 また本発明では、データ圧縮が施された時刻データと、データ圧縮が施されていない時刻データとの遅延時間を知ることができれば良いので、正確な絶対時刻を用いなくてもよい。このため本発明で用いる時刻データは、必ずしも正確な絶対時刻に修正する必要はない。」 3e)「【0038】 さらに、カメラ3a?3nが設けられたかご1a?1nと監視センターSとの間で時差がある場合でも、例えば日本と上海、日本とオーストラリア、またはアメリカ国内などで時差の計算をする必要はない。」 (2)甲3に記載された技術 上記(1)及び図面を総合すると、甲3には次の技術が記載されている。 「エレベータかごに取り付けられたカメラ3a?3nで撮像した画像データを圧縮し、回線を介してエレベータの監視センターへ配信するエレベータのカメラ映像配信装置であって、カメラ画像に時刻表示をオーバーレイするものにおいて、データ圧縮が施された時刻データと、データ圧縮が施されていない時刻データとの遅延時間を知ることにより、正確な絶対時刻を用いなくてもよくなることにより、カメラ3a?3nが設けられたかご1a?1nと監視センターSとの間で時差がある場合でも、例えば日本と上海、日本とオーストラリア、またはアメリカ国内などで時差の計算をする必要がない技術。」(以下、「甲3技術」という。) 4 甲6 本件特許の出願前に頒布された甲6(特開平5-347647号公報)には、「通信装置」に関して、次のような記載がある。 (1)甲6の記載 4a)「【請求項1】 モデム機能やDSP,ROM,RAM等が搭載されたICカード部と、回線接続部を搭載したDAA機能回路を有する箱部と、前記ICカード部の一方の端部に設けられるデータ端末装置と接続される第1コネクタ部と、前記ICカード部の他方の端部に形成される第2コネクタ部と、この第2コネクタ部と接続される第3コネクタ部を有し、前記箱部のDAA機能回路と接続される結合体とを備えてなる通信装置において、 前記ICカード部に搭載されるROMに各国別で異なる回線交換機の規格をファームウェア化して包括的に書き込んだことを特徴とする通信装置。 【請求項2】 各国を認識する国別情報を第3コネクタあるいは結合体の電気的短絡情報で形成したことを特徴とする請求項1記載の通信装置。 【請求項3】 ICカード部に設けられたDSPにより各国別情報をROMのファームウェアから選択的に抽出して各国毎の通信規格に適合した通信を指令するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】) 4b)「【0008】上記のように構成されたICカード部71を、外国の機器に接続して使用する際に、次のような問題点がある。まず、回線接続部77(モジュラージャックコネクタ)の形状が日本,アメリカ,カナダでは同一であるが、ドイツは寸法構造が違い、イギリスなどの他の国々も形状が違う。また、絶縁抵抗規格、絶縁距離規格、耐圧規格、CI(コーリングインジケーション呼出し)検出方式、極性検出方式、過負荷耐圧、ビジィートーン検出、リンギングトーン検出などの通信規格は各国毎に相違しており、これらはいずれも前記DAA機能回路に属するので、箱部74を各国別に作成して、ICカード部71と結合させた通信装置が考えられる。 【0009】しかし、ICカード部71に図6に示すDTE本体部61の機能を同一化するのは各国別に回線交換機の規格が以下のように違うため、容易にはできない問題がある。これら規格は、(a)パルスダイアルのメーク/ブレーク比、(b)ポーズ時間、(c)ダイヤル送出タイミング、(d)回線状態の自動チェックの有り無し、(e)送出レベル、(f)受信感度、(g)CI信号処理、(h)再発呼条件、回数、(i)ビジィートーン検出などである。 【0010】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、各国別の回線交換機の規格をファームウェア化してROMへ書き込んで、ICカード部を標準化し、各国別に対応できるようにした通信装置を提供することを目的とする。」 4c)「【0011】 【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するために、第1発明はモデム機能やDSP,ROM,RAM等が搭載されたICカード部と、回線接続部を搭載したDAA機能回路を有する箱部と、前記ICカード部の一方の端部に設けられるデータ端末装置と接続される第1コネクタ部と、前記ICカード部の他方の端部に形成される第2コネクタ部と、この第2コネクタ部と接続される第3コネクタ部を有し、前記箱部のDAA機能回路と接続される結合体とを備えてなる通信装置において、前記ICカード部に搭載されるROMに各国別で異なる回線交換機の規格をファームウェア化して包括的に書き込んだことを特徴とするものである。 【0012】第2発明は各国を認識する国別情報を第3コネクタあるいは結合体の電気的短絡情報で形成するようにしたことを特徴とするものである。 【0013】第3発明はICカード部に設けられたDSPにより各国別情報をROMのファームウェアから選択的に抽出して各国毎の通信規格に適合した通信を指令するようにしたことを特徴とするものである。」 4d)「【0017】DAAIFバス18はライントランスフォーマを介した回線の2次側信号線を2本、CI(コーリングインジケーション)検出信号を2本、その他で10本程度である。従って、国別情報信号バス19として例えば6本を用意し、そのうちの1本を共通線とし、他の5本の短絡の組み合わせでバイナリ表示すれば32ケ国の識別ができる。これにより、DSP12は国別情報信号バス19によってROM13に書き込まれた各国毎のF/Wを適確に選択し、それぞれの国の規格に合致した通信を行うことができる。」 (2)甲6に記載された技術 上記(1)及び図面を総合すると、甲6には次の技術が記載されている。 「モデム機能やDSP,ROM,RAM等が搭載されたICカード部と、回線接続部を搭載したDAA機能回路を有する箱部と、ICカード部の一方の端部に設けられるデータ端末装置と接続される第1コネクタ部と、ICカード部の他方の端部に形成される第2コネクタ部と、この第2コネクタ部と接続される第3コネクタ部を有し、箱部のDAA機能回路と接続される結合体とを備えてなる通信装置において、ICカード部に設けられたDSPにより各国別情報をROMのファームウェアから選択的に抽出して各国毎の通信規格に適合した通信を指令するようにした技術。」(以下、「甲6技術」という。) 5 甲16 本件特許の出願前に頒布された甲16(特開2011-195284号公報)には、「エレベータの自動診断装置」に関して、次のような記載がある。 (1)甲16の記載 5a)「【請求項1】 エレベータの運転制御を行う運転制御手段と、 この運転制御手段から出力される通常運転時の各機器の動作データを記録する記録手段と、 複数の診断運転メニューを記憶したメニューリスト手段と、 このメニューリスト手段に記憶された複数の診断運転メニューの優先順位を記憶する優先順位テーブル手段と、 上記記録手段に記録された各機器の動作データに基づいて異常の可能性を判断すると共に、その異常原因を検証するための少なくとも2つ以上の診断運転メニューを上記メニューリスト手段から選択し、これらの診断運転メニューに対応した診断運転を上記運転制御手段に実施させる異常検出手段とを備え、 上記運転制御手段は、 現在のエレベータの状況に基づいて上記優先順位テーブル手段に記憶された優先順位を変更し、その変更後の優先順位に従って、上記異常検出手段によって選択された各診断運転メニューに対応した診断運転を実施することを特徴とするエレベータの自動診断装置。」 5b)「【0014】 また、機械室10aには、一般に「制御盤」などと呼ばれているエレベータ制御装置16が設置されている。このエレベータ制御装置16は、CPU、ROM、RAM等を搭載したコンピュータからなり、エレベータ11の運転制御を行うと共に、ここでは自動診断装置としての機能を備える。また、このエレベータ制御装置16は、電話回線網等の通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されている。 【0015】 監視センタ18は、エレベータ11の動作状態を通信ネットワーク17を介して遠隔監視しており、何らかの異常を検知すると、その現場に保守員を派遣するなどの対処を行う。なお、図1の例では、1台のエレベータ11しか図示されていないが、実際には各地に点在する多数のエレベータが通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されており、監視センタ18では、これらのエレベータの動作状態を常時監視している。」 5c)「【0018】 図2は本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置16の自動診断機能の構成を示すブロック図である。 【0019】 エレベータ制御装置16は、自動診断を実現するための機能として、運転制御部21、記録部22、異常検出部23、メニューリスト24、優先順位テーブル25を備える。 【0020】 運転制御部21は、エレベータ11の運転制御を行うと共にエレベータの診断運転を実施する。また、後述するように診断運転のメニューには予めデフォルトで優先順位が付けられており、運転制御部21は、感知器19から出力される検知信号に基づいて、その優先順位を変更する処理を行う。 【0021】 記録部22は、運転制御部21から出力される通常運転時の各機器の動作データを定期的に更新しながら最新の運転記録として保持する。また、この記録部22は、運転制御部21による自動診断の結果を保持する。さらに、この記録部22には、自動診断のためのメニューリスト24と優先順位テーブル25が設けられている。 【0022】 メニューリスト24には、図3に示すように、「モータ」、「ブレーキ」、「ロープ」…といった各機器あるいは部位の状態を自動診断するための複数の診断運転メニューが予め登録されている。 【0023】 図中の「メニューA-1」,「メニューA-2」,「メニューA-3」…は、巻上機12のモータの状態を自動診断するための診断運転メニューを示す。また、「メニューB-1」,「メニューB-2」,「メニューB-3」…は、巻上機12に設置された図示せぬ電磁ブレーキの状態を自動診断するための診断運転メニューであり、「メニューC-1」,「メニューC-2」,「メニューC-3」…は、ロープ13の状態を自動診断するための診断運転メニューである。 【0024】 優先順位テーブル25は、このメニューリスト24に登録された各診断運転メニューに設定された優先順位を記憶している。 【0025】 異常検出部23は、記録部22に記録された各機器の動作データ(運転記録)に基づいて異常の可能性を判断し、異常の可能性がある場合にメニューリスト24の中から異常原因を検証するための少なくとも2つ以上の診断運転メニューを選択して、これらの診断運転メニューに対応した診断運転を運転制御部21に実施させる。 【0026】 運転制御部21は、この異常検出部23によって選択された診断運転メニューに対応した診断運転を行い、そのときの各機器の動作データを診断結果として記録部22に記録する。」 5d)「【0036】 ここで、図3に示した各機器の診断運転メニューには、例えばロープ診断運転メニュー>ブレーキ診断運転メニュー>モータ診断運転メニューといったように、デフォルトで優先順位が予め決められており、その優先順位の高い診断運転メニューから診断運転が実施される。なお、この優先順位は、記録部22に設けられた優先順位テーブル25に記憶されている。 【0037】 診断運転が実施されると、運転制御部21は、その診断結果を記録部22に記録する(ステップS108)。例えば上記メニューA-1の診断運転であれば、低速で乗りかご14を動かしながら、そのときのモータトルクの変化を診断結果として記録部22に記録することになる。」 5e)「【0067】 第3の実施形態では、上記構成に加え、さらに保守管理部26が設けられている。保守管理部26は、エレベータ11の各機器の保守管理データを記憶している。上記保守管理データは、エレベータ11の各機器の設置日(交換日)と、寿命年数を含む。 【0068】 このような構成において、診断運転メニューには優先順位が設定されており、優先順位の高い診断運転メニューから順に診断運転が実施される。また、現在のエレベータの状況に応じて優先順位が変更されることは既に述べた通りである。」 5f)「【0085】 運転制御部21は、メンテナンス専用装置19から優先順位変更指令を受信すると、優先順位テーブル25に設定されている診断運転メニューの優先順位を変更するモードに切り替える。このモード中は、メンテナンス専用装置19の操作によって、任意の診断運転メニューの優先順位を変更したり、全ての診断運転メニューに対して優先順位を付け直すことができる。」 5g)「【0095】 診断運転の結果、異常と判断された場合は、運転制御部21aは異常原因と診断運転中のデータを記録部22aに記録する。この後、異常検出部23aは異常があったことを外部に知らせるために、記録部22aに記録した異常原因と診断運転中のデータを遠隔通信によって監視センタ18へ送信する。これにより、監視センタ18側で直ぐに状況を把握して、迅速かつ適切な対応を採ることができる。 【0096】 なお、診断運転の結果、異常が認められなくても、診断運転を実施したことを異常検出部23aから監視センタ18に伝える。さらに、現在設定されている診断運転の優先順位を監視センタ18へ伝える。 【0097】 また、診断運転を実施したが、故障やエラーが発生して途中で終了した場合も、その旨の報告と失敗した診断運転メニュー、異常時の記録などを異常検出部23aから監視センタ18へ伝える。 【0098】 ここで、監視センタ18からの指示により、診断運転メニューの優先順位を変更することも可能である。 【0099】 すなわち、運転制御部21aは、異常検出部23を介して監視センタ18から優先順位変更指令を受信すると、診断運転メニューの優先順位を変更するモードに切り替える。このモード中は、監視センタ18からの指示によって、任意の診断運転メニューの優先順位を変更したり、全ての診断運転メニューに対して優先順位を付け直すことができる。」 (2)甲16に記載された技術 上記(1)及び図面を総合すると、甲16には次の技術が記載されている。 「電話回線網等の通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されているエレベータ制御装置16は、自動診断のためのメニューリスト24に登録された各診断運転メニューに設定された優先順位を記憶する優先順位テーブル25を備えており、優先順位の高い診断運転メニューから順に診断運転を実施する技術。」(以下、「甲16技術1」という。) 「電話回線網等の通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されているエレベータ制御装置16は、自動診断のためのメニューリスト24に登録された各診断運転メニューに設定された優先順位を記憶する優先順位テーブル25を備えており、監視センタ18からの指示により、診断運転メニューの優先順位を変更する技術。」(以下、「甲16技術2」という。) 第7 取消理由についての判断 1 本件訂正発明1について 本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。 甲1発明1における「保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504D」あるいは「運行監視サーバー504D」は、その構成、機能、又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「監視センタ」に相当し、以下同様に、「公衆回線」は「通信ネットワーク」に、「エレベータ運行状況監視システム」は「エレベータの遠隔監視システム」に、「号機制御装置506A?506C」は「制御装置」に、「ホール呼び,かご呼び,かご内荷重、かご位置,運転モード、エレベータの異常などの情報」は「予め設定された複数の監視項目に関する情報」あるいは「各監視項目に関する情報」に、「集める」は「読み出す」に、「運行監視系ボード502」は「遠隔監視装置」に、「集められた」は「読み出された」に、「送信する」は「送る」に、「伝送端末装置504A」は「通信装置」に、「備えた」は「具備した」に、それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「監視センタとエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記監視センタに送る通信装置と を具備したエレベータの遠隔監視システム。」 [相違点1] 本件訂正発明1においては、エレベータが「各国に設置された」ものであって、遠隔監視装置が、「エレベータの設置国に対応する」予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す「ことにより、各国共通で使用できる」ものであり、通信装置は各監視項目に関する情報を監視センタに、「エレベータの設置国の通信規格に従って」送るのに対して、甲1発明1においては、エレベータが設けられる場所が各国であるかについては不明であって、運行監視系ボード502が、ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、号機制御装置506A?506Cから集めるものであるが、エレベータの設置国に対応するホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、号機制御装置506A?506Cから集めることにより、各国共通で使用できるものかは不明であり、さらに、伝送端末装置504Aはホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、運行監視サーバー504Dに送信するにあたって、エレベータの設置国の通信規格に従って送信するかも不明である点。 上記相違点1について以下検討する。 [相違点1について] 上記甲2技術は「複数の建物に設置された多数の昇降機等の設備機器を複数の群として管理し、建物ごとに配置され建物内の多数の設備機器を制御する制御装置を介して多数の設備機器の運転データを取得する取得部35aを備える群管理装置30において、一の管理領域が日本全国または全世界の各国など広域にわたっているような場合にも、インターネット等の回線で接続することにより、群管理装置30を適用する技術」であり、 上記甲3技術は「エレベータかごに取り付けられたカメラ3a?3nで撮像した画像データを圧縮し、回線を介してエレベータの監視センターへ配信するエレベータのカメラ映像配信装置であって、カメラ画像に時刻表示をオーバーレイするものにおいて、データ圧縮が施された時刻データと、データ圧縮が施されていない時刻データとの遅延時間を知ることにより、正確な絶対時刻を用いなくてもよくなることにより、カメラ3a?3nが設けられたかご1a?1nと監視センターSとの間で時差がある場合でも、例えば日本と上海、日本とオーストラリア、またはアメリカ国内などで時差の計算をする必要がない技術」であることからみて、「監視または制御を行う対象となるエレベータを海外を含む複数の国に設置する技術」は、周知技術(以下、「甲2及び甲3にみられるような周知技術1」という。)である。 さらに、上記甲6技術は「モデム機能やDSP,ROM,RAM等が搭載されたICカード部と、回線接続部を搭載したDAA機能回路を有する箱部と、ICカード部の一方の端部に設けられるデータ端末装置と接続される第1コネクタ部と、ICカード部の他方の端部に形成される第2コネクタ部と、この第2コネクタ部と接続される第3コネクタ部を有し、箱部のDAA機能回路と接続される結合体とを備えてなる通信装置において、ICカード部に設けられたDSPにより各国別情報をROMのファームウェアから選択的に抽出して各国毎の通信規格に適合した通信を指令するようにした技術」であることから、「モデム等の回線接続部を、各国毎の通信規格に適合した通信を行うものとする技術」についても周知技術(以下、「甲6にみられるような周知技術2」という。)であって、 甲16技術1は「電話回線網等の通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されているエレベータ制御装置16は、自動診断のためのメニューリスト24に登録された各診断運転メニューに設定された優先順位を記憶する優先順位テーブル25を備えており、優先順位の高い診断運転メニューから順に診断運転を実施する技術」、甲16技術2は「電話回線網等の通信ネットワーク17を介して監視センタ18に接続されているエレベータ制御装置16は、自動診断のためのメニューリスト24に登録された各診断運転メニューに設定された優先順位を記憶する優先順位テーブル25を備えており、監視センタ18からの指示により、診断運転メニューの優先順位を変更する技術」である。 しかしながら、上記甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1あるいは甲16技術2において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項のうち、エレベータが「各国に設置されたもの」において「エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置」を具備することについて、開示や示唆がされていない。 また、甲4、甲5、甲7ないし甲15においても上記相違点1に係る本件訂正発明1の上記発明特定事項について、開示や示唆をするものではない。 そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件訂正発明6及び7について 本件訂正発明6及び7は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用するものであって、本件訂正発明1の発明特定事項を置き換えることなく限定するものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明6及び7は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件訂正発明9について 本件訂正発明9と甲1発明2とを対比する。 甲1発明2における「号機制御装置506A?506C」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明9における「制御装置」に相当し、以下同様に、「ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報」は「予め設定された複数の監視項目に関する情報」あるいは「各監視項目に関する情報」に、「集める」は「読み出す」に、「運行監視系ボード502」は「遠隔監視装置」に、「伝送端末装置504A」は「通信装置」に、「保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504D」は「監視センタ」に、「送信する手段」は「通信手段」に、それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「エレベータに、上記エレベータの運転を制御する制御装置から予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出す遠隔監視装置とは独立して設けられる通信装置であって、各監視項目に関する情報を監視センタへ送信する通信手段とを具備した通信装置。」 [相違点2] 本件訂正発明9においては、エレベータが「各国に設置された」ものであって、遠隔監視装置が、複数の監視項目に関する情報を読み出す「ことにより、各国共通で使用できる」ものであって、各監視項目は「エレベータの設置国に対応する」ものであり、「上記エレベータの設置国に対応する上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、この優先度順位テーブルを参照して各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段」を備え、「この優先度決定手段によって決定された優先度に従って」上記各監視項目に関する情報を「上記エレベータの設置国の通信規格に従って」監視センタへ送信する通信手段を備えるものであるのに対して、 甲1発明2においては、エレベータが各国に設置されたものであるか不明であり、運行監視系ボード502が、ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を集めることにより、各国共通で使用できるものであって、上記ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの項目がエレベータの設置国に対応するものか不明であり、ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの項目に優先度を決定する手段を備えるか不明であり、さらに、決定された優先度に従って、ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報をエレベータの設置国の通信規格に従って保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504Dに送信するかも不明である点。 る点。 上記相違点2について、以下検討する。 [相違点2について] 上記相違点2に係る本件訂正発明9の発明特定事項のうち、エレベータが「各国に設置された」ものであって、各監視項目は「エレベータの設置国に対応する」ものであり、遠隔監視装置が「各国共通で使用できる」ものであることは、甲1発明2のみならず、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15において、開示や示唆がされていない。 そうすると、本件訂正発明9は、甲1発明2、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明9は、甲1発明2、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 まとめ よって、取消理由によっては、本件訂正発明1、6、7及び9に係る特許を取り消すことができない。 第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について [理由1]特許法第29条第1項第3号 異議申立人は、特許異議申立書において特許第6100319号の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であるから、該請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであると主張しているので、この点について判断すると、上記第7 1において検討したとおり、本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、相違点1において両者は相違するのであるから、本件訂正発明1と甲1発明1とは同一であるとはいえない。 したがって、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるということはできない。 [理由2]特許法第29条第2項 異議申立人は、特許異議申立書において特許第6100319号の請求項1ないし9に係る発明は、甲第1号証ないし甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであるから、該請求項1ないし9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張している。そこで、取消理由通知を通知しなかった本件訂正発明2ないし5及び本件特許発明8について以下検討する。 1 本件訂正発明2について 本件訂正発明2と甲1発明1とを対比する。 甲1発明1における「保守会社の監視センターに設置された運行監視サーバー504D」あるいは「運行監視サーバー504D」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「監視センタ」に相当し、以下同様に、「公衆回線」は「通信ネットワーク」に、「エレベータ運行状況監視システム」は「エレベータの遠隔監視システム」に、「号機制御装置506A?506C」は「制御装置」に、「ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報」は「予め設定された複数の監視項目に関する情報」あるいは「各監視項目に関する情報」に、「集める」は「読み出す」に、「運行監視系ボード502」は「遠隔監視装置」に、「集められた」は「読み出された」に、「送信する」は「送る」に、「伝送端末装置504A」は「通信装置」に、「備え」は「具備し」に、それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「監視センタとエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記監視センタに送る通信装置と を具備したエレベータの遠隔監視システム。」 [相違点3] 本件訂正発明2においては、エレベータが「各国に設置された」ものであって、通信装置は各監視項目に関する情報を監視センタに、「エレベータの設置国の通信規格に従って」送るものであり、「上記遠隔監視装置は、各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段とを備えた」のに対して、 甲1発明1においては、エレベータが設けられる場所が各国であるかについては不明であって、伝送端末装置504Aはホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報を、運行監視サーバー504Dに送信するにあたって、エレベータの設置国の通信規格に従って送信するか不明であって、さらに、運行監視系ボード502が、各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、この監視項目テーブルを参照してエレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を号機制御装置506A?506Cから読み出す監視手段とを備えるものであるか不明な点。 上記相違点3について、以下検討する。 [相違点3について] 上記相違点3に係る本件訂正発明2の発明特定事項のうち、「上記遠隔監視装置は、各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段とを備えた」ことについては、甲1発明2のみならず、上記甲2及び甲3にみられるような周知技術1、及び甲6にみられるような周知技術2、上記甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15において、開示や示唆がされていない。 そうすると、本件訂正発明2は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明2は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件訂正発明3ないし7について 本件訂正発明3ないし7は、本件訂正発明2を直接または間接的に引用するものであって、本件訂正発明1の発明特定事項を置き換えることなく限定するものであるから、本件訂正発明2と同様に、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明3ないし7は、甲1発明1、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件特許発明8について 本件特許発明8と甲1発明3とを対比する。 甲1発明3における「エレベータ」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件特許発明8における「監視対象であるエレベータ」あるいは「エレベータ」に相当し、「号機制御装置506A?506C」は「制御装置」に、「運行監視系ボード502」は「遠隔監視装置」に、「ホール呼び、かご呼び、かご内荷重、かご位置、運転モード、エレベータの異常などの情報」は「監視項目に関する情報」に、「集める手段」は「読み出す監視手段」に、それぞれ相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「監視対象であるエレベータに設けられ、上記エレベータの運転を制御する制御装置に接続される遠隔監視装置であって、監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段を具備した遠隔監視装置。」 [相違点4] 本件特許発明8においては、遠隔監視装置が「各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブル」を具備し、「この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断」するのに対して、 甲1発明3においては、運行監視系ボード502が、そのような各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルを備えるとともに、監視項目テーブルを参照してエレベータの設置国に対応した各監視項目を判断するものか不明である点。 上記相違点4について、以下検討する。 [相違点4について] 上記相違点4に係る本件特許発明8の発明特定事項である、遠隔監視装置が、「各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブル」を具備し、「この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断」することについては、甲1発明3のみならず、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15において、開示や示唆がされていない。 よって、本件特許発明8は、甲1発明3、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 したがって、本件特許発明8は、甲1発明3、甲2及び甲3にみられるような周知技術1、及び甲6にみられるような周知技術2、甲16技術1、甲16技術2、甲4、甲5及び甲7ないし甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 まとめ 上記のとおり、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件訂正発明2ないし5及び本件特許発明8に係る特許を取り消すことができない。 第9 平成30年3月19日に異議申立人が提出した意見書について 異議申立人は、平成30年3月19日に意見書(以下、「意見書」という。)を提出して、訂正後の請求項1に係る発明について「(1)訂正要件違反(特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない)」及び「(2)記載要件違反(特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない)」旨主張している。 しかしながら、訂正後の請求項1に係る発明の発明特定事項のうちの、「上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置」は、明細書段落【0016】、【0021】及び図1の記載などからみると、明細書及び図面に記載された事項であるから、訂正要件違反とはいえず、また、記載要件違反であるともいえない。 第10 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 エレベータの遠隔監視システム、遠隔監視装置及び通信装置 【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、エレベータの運転状態を遠隔的に監視するエレベータの遠隔監視システムと、この遠隔監視システムに用いられる遠隔監視装置及び通信装置に関する。 【背景技術】 【0002】 エレベータの遠隔監視システムは、各地域に存在する多数のエレベータと監視センタとを通信ネットワークで接続し、各エレベータの動作状態に関する各種情報を監視センタに送ることで、各エレベータの動作状態を遠隔的に監視している。監視センタでは、各エレベータから送られて来た各種情報を監視画面に表示するなどして、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどして対応する。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開平9-274694号公報 【特許文献2】特開2010-283591号公報 【特許文献3】特開2006-290523号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 監視対象であるエレベータが監視センタと同じ国内に設置されている場合には、そのエレベータの動作状態に関する各種情報を監視センタに送る場合に通信的な問題はない。しかし、監視センタとは異なる国(他国)に設置されたエレベータについては、その国の通信規格に適合した通信装置が必要となる。また、国によって監視項目も異なるため、その国に合わせた監視項目を設定するなど、面倒な作業が必要となる。 【0005】 本発明が解決しようとする課題は、面倒な作業を必要とせずに、各国に設置されたエレベータの動作状態を遠隔監視することのできるエレベータの遠隔監視システム、遠隔監視装置及び通信装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 一実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムは、監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、上記エレベータの運転を制御する制御装置と、上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置と、この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置とを備える。 【図面の簡単な説明】 【0007】 【図1】図1は第1の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。 【図2】図2は同実施形態における遠隔監視装置に設けられた監視項目テーブルの一例を示す図である。 【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの乗りかごの一例を示す図である。 【図4】図4は同実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を示すフローチャートである。 【図5】図5は第2の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。 【図6】図6は第3の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。 【図7】図7は同実施形態における通信装置に設けられた優先度順位テーブルの一例を示す図である。 【図8】図8は同実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を示すフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0008】 以下、図面を参照して実施形態を説明する。 【0009】 (第1の実施形態) 図1は第1の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。 【0010】 監視対象であるエレベータ11が通信ネットワーク12を介して監視センタ13に接続されている。なお、エレベータ11は監視センタ13とは別の国に設置されているものとする。例えば、監視センタ13は日本国内にあり、エレベータ11は日本以外の国に設置されている場合を想定している。つまり、監視センタ13は、通信ネットワーク12を通じて他国に存在するエレベータ11の動作状態を遠隔的に監視している。 【0011】 図1の例では、1台のエレベータ11しか図示されていないが、実際には各国毎に様々な場所(世界各地)に設置された多数のエレベータ11が監視対象として通信ネットワーク12を介して監視センタ13に接続されている。監視センタ13は、これらのエレベータ11から送られて来る各種情報を監視画面に表示するなどして、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどして対応する。 【0012】 通信ネットワーク12は、公衆回線網などからなる。通信ネットワーク12には、監視センタ13の他にNTP(Network Time Protocol)サーバ14が接続されている。NTPサーバ14は、現地の時刻(エレベータ11が設置された地域における現在の時刻)を管理している。 【0013】 エレベータ11には、エレベータ制御装置21、遠隔監視装置22、通信装置23が設けられている。なお、通常は、遠隔監視装置22に通信機能(通信装置23)が備えられているが、本システムでは、遠隔監視装置22と通信装置23が分離されている構成が特徴である。遠隔監視装置22と通信装置23が分離されているため、遠隔監視装置22は通信機能を持たない。 【0014】 エレベータ制御装置21は、例えば乗りかごの速度制御やドアの開閉制御、各種操作ボタンに対応した制御などを含むエレベータ全体の運転制御を行う。 【0015】 遠隔監視装置22は、動作監視用の監視端末である。遠隔監視装置22は、エレベータ制御装置21に接続され、エレベータ11の動作状態を監視する。本実施形態において、この遠隔監視装置22には、国選択スイッチ24、監視項目テーブル25、監視部26、時刻取得部27が備えられている。 【0016】 国選択スイッチ24は、予め用意された複数の国の中から任意の国を選択するためのスイッチである。監視項目テーブル25には、予め各国で定められた複数の監視項目を記憶している(図2参照)。監視部26は、国選択スイッチ24の状態からエレベータ11が設置された国(以下、設置国と称す)を判断し、監視項目テーブル25を参照して、その設置国に対応した各監視項目に関する情報をエレベータ制御装置21から読み出す。 【0017】 時刻取得部27は、通信装置23から現地の時刻を取得する。監視部26は、この時刻取得部27によって得られた現地の時刻を各監視項目に関する情報に付して通信装置23に与える。 【0018】 通信装置23は、遠隔監視装置22に接続されている。通信装置23は、遠隔監視装置22によって読み出された各監視項目に関する情報をエレベータ11の設置国の通信規格に従って通信ネットワーク12を介して監視センタ13に送る。また、通信装置23は、時刻取得部28を備えており、通信ネットワーク12上のNTPサーバ14に定期的にアクセスして正確な現地時刻を取得している。 【0019】 なお、図1の構成において、エレベータ制御装置21と遠隔監視装置22が一体化されていると、例えばエレベータ制御装置21が何らかの異常で故障した場合に遠隔監視装置22の監視機能が働かずにエラー情報を発報できなくなる。このため、本システムでは、エレベータ制御装置21と遠隔監視装置22が独立して設けられている。 【0020】 エレベータ11の設置国によって通信規格が違うため、遠隔監視装置22と通信装置23が一体化されていると、遠隔監視装置22を他の国で使うことができない。このため、本システムでは、遠隔監視装置22と通信装置23が独立して設けられている。 【0021】 ここで、通信装置23はエレベータ11の設置国に適合したものを使用するが、遠隔監視装置22は各国共通に使用される。この場合、各国によって監視項目が違うので、遠隔監視装置22は国選択スイッチ24の操作によって国別に監視項目を任意に変更可能な構成を有している。 【0022】 図2は監視項目テーブル25の一例を示す図である。 【0023】 エレベータの監視項目は、必ずしも各国で共通というわけではなく、国によって異なる場合もある。図2の例では、A国の監視項目として、「非常呼びボタン押下状態」,「運行情報:エラーログ」,「運行情報:運行ログ」などが設定されている。また、B国の監視項目として、「運行情報:エラーログ」,「運行情報:運行ログ」などが設定されている。 【0024】 「非常呼びボタン押下状態」は、後述する乗りかご31内に設置された非常呼びボタン34の押下状態を監視する項目である。日本では、この監視項目は必須であるが、他国では必ずしも必要としない場合がある。 【0025】 「運行情報:エラーログ」は、エレベータ11の運行中に発生したエラーを監視する項目である。実際には、国別にエラーに関する様々監視項目があるが、その詳細については機密事項に当たるため、ここでは省略するものとする。 【0026】 「運行情報:運行ログ」は、エレベータ11の運行状態を監視する項目である。実際には、国別に運行に関する様々な項目があるが、その詳細については機密事項に当たるため、ここでは省略するものとする。 【0027】 なお、例えばエレベータ11の起動回数、ドアの開閉時間、走行距離などを含む保守情報を監視項目の1つとして加えて監視センタ13に送るようにしても良い。 【0028】 図3はエレベータの乗りかごの一例を示す図である。 【0029】 エレベータ11は、図3に示すような乗りかご31を備えている。乗りかご31の正面にはかごドア32が開閉自在に取り付けられている。このかごドア32の横には操作パネル33、非常呼びボタン34、マイク35、スピーカ36、表示器37などが設置されている。 【0030】 操作パネル33には、複数の階床ボタン33a、戸開ボタン33b、戸閉ボタン33cなどを含む各種操作ボタンが配設されている。非常呼びボタン34は、非常時に外部に連絡するための操作ボタンである。外部とは、図1に示した監視センタ13である。すなわち、非常呼びボタン34の押下状態が監視項目に含まれている場合には、この非常呼びボタン34を押下すると、乗りかご31と監視センタ13との間の電話回線が接続され、乗客は非常呼びボタン34の近くに設置されたマイク35とスピーカ36を通じて監視センタ15のオペレータと電話で通話することができる。表示器37は、例えば小型のLCD(Liquid Crystal Display)からなり、乗りかご31の現在位置や運転方向などの運転状態などを表示する。 【0031】 次に、第1の実施形態の動作について説明する。 【0032】 図4は第1の実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を示すフローチャートである。 【0033】 いま、監視センタ13とは別の国に設置されたエレベータ11を起動する場合を想定する。現地において、保守員は遠隔監視装置22に設けられた国選択スイッチ24の操作により、現地の国を選択してから遠隔監視装置22の電源をONする。このとき、エレベータ11には、その国の通信規格に適合した通信装置23が設置されているものとする。 【0034】 遠隔監視装置22の電源をONすると(ステップS11のYes)、監視部26は、国選択スイッチ24の状態を確認し(ステップS12)、エレベータ11の設置国を判断する(ステップS13)。そして、監視部26は、監視項目テーブル25を参照して、その設置国に対応した各監視項目を設定する(ステップS14)。 【0035】 例えば、国選択スイッチ24によってA国が選択されていれば、監視部26は、図2に示した監視項目テーブル25を参照してA国に対応した各監視項目を設定する。具体的には、例えばA国の各監視項目にフラグをセットして、エレベータ11の運転中に当該フラグがセットされた各監視項目について監視できる状態にする。 【0036】 また、監視部26は、遠隔監視装置22の時刻取得部27と通信装置23の時刻取得部28の同期を取り(NTP同期)、通信装置23から現地時刻を取得して時刻取得部27にセットする(ステップS15)。 【0037】 このようにして、エレベータ11の設置国に対応した各監視項目と現地時刻が設定されると、以後、エレベータ11の運転中に上記各監視項目に対する監視が継続的に行われ、これらの監視項目に関する情報が所定のタイミングで監視センタ13に送られる。 【0038】 詳しくは、まず、監視部26がエレベータ11の設置国に対応した各監視項目を確認し、これらの監視項目に関する情報をエレベータ制御装置21から読み出す(ステップS16)。監視部26は、これらの情報に時刻取得部27にて取得された現地時刻を付して通信装置23に与える(ステップS17)。通信装置23は、通信ネットワーク12の状態を確認し、通信可能な状態のときに遠隔監視装置22から受け取った各情報を通信ネットワーク12を介して監視センタ13に送信する(ステップS18)。各監視項目のすべてについて同様の処理が継続的に行われ、これらの監視項目に関する情報が通信装置23を通じて監視センタ13に送られる(ステップS19)。 【0039】 ここで、各監視項目に関する情報(監視情報)には、それぞれに現地時刻が付されているので、エレベータ11の設置国と監視センタ13の設置国との間に時差があっても、監視センタ13側では、現地時刻を基準にして各監視情報を認識することができる。例えば現地との間に+12時間の時差があり、何らかの監視情報が21:00に監視センタ13に入ってきたとしても、当該監視情報に付加された時刻情報から現地で9:00に発生したものと認識できる。 【0040】 なお、通信装置23で監視情報を送るときに現地時刻を付加することも考えられるが、通信ネットワーク12の通信状態によっては監視情報を直ぐに送信できないこともある。そのため、本実施形態では、遠隔監視装置22側でエレベータ制御装置21から監視情報を読み出したときに、現地時刻を付加する構成としている。この場合、遠隔監視装置22はNTPサーバ14にアクセスできないので(遠隔監視装置22は通信機能を持たないため)、通信装置23のNTPと同期を取って正確な現地時刻を取得している。 【0041】 このように第1の実施形態によれば、遠隔監視装置22と通信装置23を分離させ、遠隔監視装置22に各国の監視項目を任意に設定可能な機能を備えることで、現地で面倒な作業を必要とせずに、エレベータ11の設置国に対応した各監視項目を監視することができる。この場合、通信装置23はエレベータ11の設置国の通信規格に適合したものを使用するが、遠隔監視装置22についてはソフトウェアの改良を必要とせずに各国で共通に使用することができる。 【0042】 (第2の実施形態) 次に、第2の実施形態について説明する。 【0043】 上記第1の実施形態では、電源ON時に国選択スイッチ24の状態からエレベータ11の設置国を判断したが、第2の実施形態では、国選択スイッチ24を用いずにエレベータ11の設置国を判断する構成としている。 【0044】 図5は第2の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。なお、上記第1の実施形態における図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略するものとする。 【0045】 第2の実施形態において、エレベータ制御装置21には、予めエレベータ11の設置国に関するデータ(国データと称す)が記憶された記憶部29が設けられている。遠隔監視装置22には図1に示した国選択スイッチ24はなく、電源ON時にエレベータ制御装置21の記憶部29から国データを読み出す機能が備えられている。 【0046】 このような構成にあっては、遠隔監視装置22の電源がONしたときに、監視部26がエレベータ制御装置21の記憶部29から国データを読み出し、その国データに基づいてエレベータ11の設置国を判断する。 【0047】 以後は上記第1の実施形態と同様である。すなわち、監視部26は、監視項目テーブル25を参照してエレベータ11の設置国に対応した各監視項目を設定すると共に、通信装置23と遠隔監視装置22との間でNTPの同期を取り、現地時刻を取得可能な状態にする。そして、エレベータ11の運転中に監視部26はエレベータ制御装置21から各監視項目に関する情報を読み出し、現地時刻を付して通信装置23に与える。通信装置23では、通信ネットワーク12が通信可能な状態のときに、これらの情報を監視センタ13に送る。 【0048】 このように第2の実施形態によれば、国選択スイッチ24を必要とせずに、エレベータ制御装置21の記憶部29に記憶された国データに基づいてエレベータ11の設置国に対応した各監視項目を自動的に設定することができる。 【0049】 (第3の実施形態) 次に、第3の実施形態について説明する。 【0050】 第3の実施形態では、遠隔監視装置と通信装置を分離させた構成において、通信装置にエレベータの設置国に合わせて各監視項目の優先度順位を任意に設定可能な機能を設けたことを特徴とする。 【0051】 図6は第3の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示す図である。この例では、2台(A号機とB号機)のエレベータ50a,50bの動作状態を遠隔監視する場合の構成が示されている。 【0052】 エレベータ50a,50bは、1つの建物内に設置されているものとする。また、エレベータ50a,50bは監視センタ71とは別の国に設置されているものとする。例えば、監視センタ71は日本国内にあり、エレベータ50a,50bは日本以外の国に設置されている場合を想定している。 【0053】 A号機のエレベータ50aには、エレベータ制御装置51a、遠隔監視装置52aが設けられている。エレベータ制御装置51aは、制御部53aを有する。制御部53aは、例えばA号機の乗りかご31の速度制御やドアの開閉制御、各種操作ボタンに対応した制御などを含むエレベータ50aの運転制御を行う。遠隔監視装置52aは、エレベータ制御装置51aに接続され、エレベータ50aの動作状態を監視する監視部54aを有する。監視部54aは、エレベータ50aに設定された各監視項目に関する情報を制御部53aから読み出す。 【0054】 B号機のエレベータ50bについても同様であり、エレベータ制御装置51b、遠隔監視装置52bが設けられている。エレベータ制御装置51bは、制御部53bを有する。制御部53bは、例えばB号機の乗りかご31の速度制御やドアの開閉制御、各種操作ボタンに対応した制御などを含むエレベータ50bの運転制御を行う。遠隔監視装置52aは、エレベータ制御装置51bに接続され、エレベータ50bの動作状態を監視する監視部54bを有する。監視部54bは、エレベータ50bに設定された各監視項目に関する情報を制御部53aから読み出す。 【0055】 なお、遠隔監視装置52a,52bについては、上記第1または第2の実施形態と同様に各国の監視項目を任意に設定可能な機能を備えているものとする。すなわち、遠隔監視装置52a,52bには図2に示した監視項目テーブル25が設けられており、スイッチ操作あるいは国データに基づいてエレベータ50a,50bの設置国に対応した各監視項目が設定される。さらに、遠隔監視装置52a,52bには、通信装置60から現地時刻を取得して各監視項目に関する情報に現地時刻を付加する機能も備えているものとする。 【0056】 通信装置60は、A号機とB号機に共通で使用され、遠隔監視装置52a,52bで個別に読み出された各監視項目に関する情報をエレベータ50a,50bの設置国の通信規格に従って監視センタ71に送る機能を有する。また、通信装置60は、上記第1および第2の実施形態と同様に、図1に示した通信ネットワーク12上のNTPサーバ14に定期的にアクセスして正確な現地時刻を取得する機能を備えているものとする。 【0057】 ここで、本実施形態において、通信装置60には、優先度順位テーブル61、優先度決定部62、記憶部63、通信部64が備えられている。 【0058】 優先度順位テーブル61は、各監視項目に対する優先度順位を記憶している(図7参照)。優先度決定部62は、優先度順位テーブル61を参照して監視部54a,54bによって読み出された各監視項目に関する情報の優先度を決定する。記憶部63は、各監視項目に関する情報を一時的に保持しておくために用いられる。通信部64は、エレベータ50a,50bの設置国の通信規格を有し、優先度決定部62によって決定された優先度に従って各監視項目に関する情報に現地時刻を付して通信ネットワーク70を介して監視センタ71に送る。 【0059】 監視センタ71には通信部72が設けられている。監視センタ71は、他国に存在するエレベータ50a,50bから送られて来る各監視項目に関する情報を通信部72にて受信し、これらの情報を監視画面に表示するなどして、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどして対応する。 【0060】 また、各監視項目に関する情報(監視情報)に現地時刻を付して監視センタ71に送ることで、エレベータ50a,50bの設置国と監視センタ71の設置国との間に時差があっても、監視センタ71側では、現地時刻を基準にして各監視情報を認識することができる。 【0061】 図7は優先度順位テーブル61の一例を示す図である。 【0062】 優先度順位テーブル61には、エレベータ50a,50bに設定された各監視項目に対する優先度順位が記憶されている。A号機とB号機で同じ監視項目がある場合にはどちらの号機の監視項目を優先するのかを含めて優先度順位が記憶されている。図7の例では、A号機の「非常呼びボタン押下状態」、B号機の「非常呼びボタン押下状態」、A号機の「運行情報:エラーログ」、B号機の「運行情報:運行ログ」…といった順で各監視項目に対する優先度順位が記憶されている。 【0063】 「非常呼びボタン押下状態」,「運行情報:エラーログ」,「運行情報:運行ログ」については上記第1の実施形態で説明した通りである。実際にはさらに細かい監視項目があるが、その詳細については機密事項に当たるため、ここでは省略するものとする。 【0064】 次に、第3の実施形態の動作を説明する。 【0065】 図8は第3の実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を示すフローチャートである。 【0066】 A号機のエレベータ50aの運転中に、遠隔監視装置52aに設けられた監視部54aによってA号機の各監視項目に関する情報がエレベータ制御装置51aの制御部53aから読み出される。同様に、B号機のエレベータ50bの運転中に、遠隔監視装置52bに設けられた監視部54bによってB号機の各監視項目に関する情報がエレベータ制御装置51bの制御部53bから読み出される。 【0067】 各監視項目には、「非常呼びボタン押下状態」,「運行情報:エラーログ」,「運行情報:運行ログ」などが含まれる。これらの監視項目に関する情報(監視情報)は、監視部54a,54bによって読み出された順に通信装置60に与えられる。 【0068】 図8に示すように、通信装置60に設けられた優先度決定部62は、監視部54a,54bから各監視情報を取得すると(ステップS21のYes)、優先度順位テーブル61を参照して各監視情報の優先度を決定する(ステップS22)。 【0069】 一方、通信部64は、通信ネットワーク70の通信状態を確認する(ステップS23)。そして、通信可能な状態であれば(ステップS24のYes)、通信部64は、優先度決定部62によって決定された優先度に従って各監視情報を監視センタ71に送信する(ステップS25)。 【0070】 一方、通信不可の状態であれば、通信部64は、各監視情報を記憶部63に保留しておき(ステップS26)、通信可能な状態になったときに、記憶部63から各監視情報を読み出して監視センタ71に送信する(ステップS22?S25)。 【0071】 例えば、A号機の非常呼びボタンが押下されたことを示す監視情報と、A号機の乗りかご31を運行中に何らかのエラー発生したことを示す監視情報が通信装置60に与えられたとする。 【0072】 このような場合、図7に示すように、「非常呼びボタン押下状態」が「運行情報:エラーログ」よりも優先度順位が高く設定されているので、通信装置60では、非常呼びボタンが押下されたことを優先して、通信ネットワーク70を介して監視センタ71との電話回線を接続する。このとき、通信装置60は、運行情報を記憶部63に保留しておき、非常呼びの通話が終わり次第、その運行情報を監視センタ71に送信する。 【0073】 なお、日本では、「非常呼びボタン押下状態」の監視項目は必須であるが、他国では必ずしも必要としない場合がある。優先度順位テーブル61の監視項目の削除や順位変更は、監視センタ71から遠隔操作によって簡単に行うことができる。また、号機の増減された場合でも同様であり、監視センタ71から遠隔操作によって、現在の号機台数に合わせて優先度順位テーブル61を変更することができる。 【0074】 このように第3の実施形態によれば、遠隔監視装置52a,52bと通信装置60を分離させ、通信装置60に各監視項目の優先度順位を任意に設定可能な機能を備えることで、各監視項目に関する情報に優先度を持たせて監視センタ71に送ることができる。 【0075】 通常、監視対象であるエレベータが監視センタと同じ日本国内にある場合、そのエレベータに使用される遠隔監視装置には通信機能が備えられ、1つのソフトウェアで監視項目の制御と通信制御を実施している。このため、日本国内以外の国に設置されたエレベータに遠隔監視装置を使用する場合には、その国に合わせて監視項目の制御と通信制御のソフトウェアをそれぞれ設計し直す必要があり、容易に海外展開ができない。これに対し、本システムでは、遠隔監視装置と通信装置を分離させているので、通信装置はその国の通信規格に合わせたものを使用するが、遠隔監視装置については、各監視項目の優先度順位を変更するだけで各国共通で使用することができる。 【0076】 以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、面倒な作業を必要とせずに、各国に設置されたエレベータの動作状態を遠隔監視することのできるエレベータの遠隔監視システム、遠隔監視装置及び通信装置を提供することができる。 【0077】 なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。 【符号の説明】 【0078】 11…エレベータ、12…通信ネットワーク、13…監視センタ、14…NTPサーバ、21…エレベータ制御装置、22…遠隔監視装置、23…通信装置、24…国選択スイッチ、25…監視項目テーブル、26…監視部、27…時刻取得部、28…時刻取得部、29…記憶部、31…乗りかご、32…かごドア、33…操作パネル、33a…階床ボタン、33b…戸開ボタン、33c…戸閉ボタン、34…非常呼びボタン、35…マイク、36…スピーカ、50a,50b…エレベータ、51a,51b…エレベータ制御装置、52a,52b…遠隔監視装置、53a,53b…制御部、54a,54b…監視部、60…通信装置、61…優先度順位テーブル、62…優先度決定部、63…記憶部、64…通信部、70…通信ネットワーク、71…監視センタ、72…通信部。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 上記エレベータの設置国に対応する予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備したことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。 【請求項2】 監視センタと各国に設置されたエレベータとが通信ネットワークを介して接続されたエレベータの遠隔監視システムにおいて、 上記エレベータの運転を制御する制御装置と、 予め設定された複数の監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す遠隔監視装置と、 この遠隔監視装置とは独立して上記エレベータに設けられ、上記遠隔監視装置によって読み出された上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って上記監視センタに送る通信装置と を具備し、 上記遠隔監視装置は、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を備えたことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。 【請求項3】 上記遠隔監視装置は、 現地の時刻を取得する時刻取得手段を備え、 上記監視手段は、 上記時刻取得手段によって得られた現地の時刻を上記各監視項目に関する情報に付して上記通信装置に与えることを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項4】 上記遠隔監視装置は、 任意の国を選択するためのスイッチを備え、 上記監視手段は、 電源投入時に上記スイッチの状態から上記エレベータの設置国を判断し、上記監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項5】 上記遠隔監視装置は、 電源投入時に上記制御装置に記憶された国データに基づいて上記エレベータの設置国を判断し、上記監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出すことを特徴とする請求項2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項6】 上記通信装置は、 上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記監視センタへ送信する通信手段と を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項7】 上記優先度順位テーブルの内容は、上記監視センタからの遠隔操作によって変更されることを特徴とする請求項6記載のエレベータの遠隔監視システム。 【請求項8】 監視対象であるエレベータに設けられ、上記エレベータの運転を制御する制御装置に接続される遠隔監視装置であって、 各国毎に定められた複数の監視項目を記憶した監視項目テーブルと、 この監視項目テーブルを参照して上記エレベータの設置国に対応した各監視項目を判断し、これらの監視項目に関する情報を上記制御装置から読み出す監視手段と を具備したことを特徴とする遠隔監視装置。 【請求項9】 各国に設置されたエレベータに、上記エレベータの運転を制御する制御装置から予め設定された複数の監視項目に関する情報を読み出すことにより、各国共通で使用できる遠隔監視装置とは独立して設けられる通信装置であって、 上記エレベータの設置国に対応する上記各監視項目に対する優先度順位を記憶した優先度順位テーブルと、 この優先度順位テーブルを参照して上記各監視項目に関する情報の優先度を決定する優先度決定手段と、 この優先度決定手段によって決定された優先度に従って上記各監視項目に関する情報を上記エレベータの設置国の通信規格に従って監視センタへ送信する通信手段と を具備したことを特徴とする通信装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-04-11 |
出願番号 | 特願2015-130809(P2015-130809) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B66B)
P 1 651・ 113- YAA (B66B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 今野 聖一、葛原 怜士郎 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
松下 聡 金澤 俊郎 |
登録日 | 2017-03-03 |
登録番号 | 特許第6100319号(P6100319) |
権利者 | 東芝エレベータ株式会社 |
発明の名称 | エレベータの遠隔監視システム、遠隔監視装置及び通信装置 |
代理人 | 富田 祥弘 |
代理人 | 富田 祥弘 |