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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1341051
異議申立番号 異議2017-700168  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-23 
確定日 2018-04-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5983241号発明「蓋材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5983241号の明細書及び特許請求の範囲を平成29年12月 5日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし8]について訂正することを認める。 特許第5983241号の請求項1及び5ないし8に係る特許を維持する。 特許第5983241号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5983241号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年9月25日に特許出願され、平成28年8月12日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年2月23日に、請求項1ないし8に係る特許について、特許異議申立人ユニサプライ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年4月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月23日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、平成29年6月28日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされ、その指定期間内である平成29年7月28日付けで申立人より意見書が提出された。
その後、平成29年10月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年12月5日付けで特許権者より意見書及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。なお、平成29年6月23日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)があり、平成29年12月21日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされたが、その指定期間内に申立人からの意見書の提出はなかった。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容(訂正箇所に下線を付す。)は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」とあるのを、
「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」に訂正する。

イ.訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2ないし4を削除する。

ウ.訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5、6、8に、それぞれ、「請求項1?4のいずれか」、「請求項1?5のいずれか」、「請求項1?7のいずれか」とあるのを、それぞれ、「請求項1」、「請求項1または5」、「請求項1、5?7」に訂正する。

エ.訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「前記第1の熱可塑性樹脂層の」とあるのを、「前記第1の熱可塑性樹脂の」に訂正する。

オ.訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、「1/40?3/4」とあるのを、「40:1?4:3」に訂正する。

カ.訂正事項6
本件訂正前の明細書の段落【0008】に、
「第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」とあるのを、
「第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」に訂正する。

キ.訂正事項7
本件訂正前の明細書の段落【0010】、【0023】、【0025】、【0026】、【0028】、【0032】、【0034】、【0041】に、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」または「実施例4」とあるのを、それぞれ、「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」または「参考例4」に訂正する。

ク.訂正事項8
本件訂正前の明細書の段落【0036】、【0042】に、「実施例1?5」とあるのを、「参考例1、2、3、4、実施例5」に訂正する。

ケ.訂正事項9
本件訂正前の明細書の段落【0018】に、「1/40?3/4」とあるのを、「40:1?4:3」に訂正する。

コ.訂正事項10
本件訂正前の明細書の段落【0018】に、「9/175?9/100」とあるのを、「175:9?100:9」に訂正する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるから、訂正事項1ないし10による訂正は当該一群の請求項1ないし8に対して請求されたものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「基材」が「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書の段落【0012】の「基材2は・・・尚、基材2の層構成は、上記構成に限らず、例えば、紙層と遮光印刷を付与したPET層との2層を積層した構成でもよい。」との記載、段落【0030】の「<実施例5>・・・PET層/印刷インキ層/紙層/遮光印刷を付与したPET層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層と、また紙層と遮光印刷を付与したPET層とをポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を介して積層されている基材を用いた。」との記載及び段落【0041】、【0042】の「実施例5」に関する記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ.訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2ないし4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項5、6、8が、それぞれ、請求項1?4のいずれか、請求項1?5のいずれか、請求項1?7のいずれかを引用するものであったところ、それぞれについて、上記訂正事項2による訂正により削除する訂正前の請求項2ないし4を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項6の「前記第1の熱可塑性樹脂層のJIS.K7113における引張破断強度が5?20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下である」との記載における「第1の熱可塑性樹脂層」が、明細書の段落【0017】の「第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、JIS.K7113における引張破断強度で5?20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下にする。」や【0019】の「上述したように、第1の熱可塑性樹脂9は、JIS.K7113における引張破断強度で5?20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。」、段落【0020】の「第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が5MPaより小さいと、樹脂としての強度が低くなりすぎ、シール強度が得られない可能性がある。また、第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が20MPaより大きく、かつ、引張破断伸びが600%を超えると、開封時に糸引きを発生する虞がある。」との記載からみて、誤記であって、正しくは「第1の熱可塑性樹脂」と記載すべきであったことが明らかであることに鑑み、当該誤記を訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定された誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ.訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、「前記低密度ポリエチレンと前記ポリブテン-1とのMFR比」について、訂正前の請求項7の「1/40?3/4」との分数による表記を、明細書の段落【0018】の「一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。」との記載との整合を考慮し、比についての通常の表記である「40:1?4:3」と訂正することで、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ.訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、明細書の段落【0008】の「第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚み」との記載について、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ.訂正事項7及び8について
訂正事項7及び8による訂正は、明細書における実施例の記載について、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ク.訂正事項9
訂正事項9による訂正は、明細書の段落【0018】の「第1の熱可塑性樹脂9と、第2の熱可塑性樹脂10とのMFR比」について、上記訂正事項3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ケ.訂正事項10
訂正事項10による訂正は、明細書の段落【0018】の「第1の熱可塑性樹脂9と、第2の熱可塑性樹脂10とのMFR比」について、訂正前の「9/175?9/100」との分数による表記を、同段落【0018】の「一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。」との記載との整合を考慮し、比についての通常の表現である「175:9?100:9」と訂正することで、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし8]について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1ないし8」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材は、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする、蓋材。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記第1の熱可塑性樹脂層は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は第1の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを60?80wt%と、第2の熱可塑性樹脂としてポリブテン-1を20?40w%含むブレンド樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性樹脂のJIS.K7113における引張破断強度が5?20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることを特徴とする、請求項1または5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記低密度ポリエチレンと前記ポリブテン-1とのMFR比が40:1?4:3であることを特徴とした請求項5または6に記載の蓋材。
【請求項8】
前記シーラント層が共押出ラミネートにより、前記基材に積層されていることを特徴とする請求項1、5?7のいずれかに記載の蓋材。

(2)取消理由の概要
平成29年4月26日付け取消理由通知書に記載した本件発明1及び5ないし8に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.本件発明1及び5ないし8は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本件発明1及び5ないし8は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、甲1ないし3に記載された発明及び周知技術、技術常識(甲5、甲6を参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


甲1.特開2000-229664号公報
甲2.特開2001-158064号公報
甲3.特開2000-302990号公報
甲5.特開2002-193329号公報
甲6.化学大辞典編集委員会、「化学大辞典8」、昭和37年2月28日、共立出版株式会社、初版第1刷発行、第734頁及び第771頁

甲1ないし甲3、甲5及び甲6は、それぞれ特許異議の申立ての甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証である。

ア.理由1.について
本件発明1及び5ないし8は、甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)である。
イ.理由2.について
(ア)本件発明1及び5ないし8は、甲1発明及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明1及び5ないし8は、甲2に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)、甲1の記載事項及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明1及び5ないし8は、甲3に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)、甲1の記載事項及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ.理由3.について
本件発明6、7の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と整合していないから、本件発明6、7は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

(3)判断
ア.理由1.について
(ア)甲1発明
甲1の【請求項1】、段落【0001】、【0005】、【0006】、【0011】、【0017】、【0018】、【0022】、【0025】ないし【0033】及び【0035】の記載からみて、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。

《甲1発明》
紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップに用いられる蓋材において、
前記蓋材は、紙にアルミ箔を積層させた基材と、前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、
前記シーラント層は、JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)70wt%中に、前記低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)に非相溶系もしくは部分相溶系のポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)30wt%を、前記ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた分散構造を有する、蓋材。

(イ)対比、一致点、相違点
甲1発明の「紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップ」、「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層」、「シーラント層」、「JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)」、「ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器」、「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層」、「前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」に相当する。
そして、甲1発明の「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造」は、本件発明1の「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造」に相当する。
また、甲1発明の「前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、」は、本件発明1の「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、」との要件を満足する。
さらに、「分散構造」について、甲1発明の「2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた」ことは、本件発明1の「1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた」ことを満足するから、甲1発明の「2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた分散構造」は、本件発明1の「1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

《一致点》
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材は、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、 前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する、蓋材。

《相違点1-1》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲1発明は「紙にアルミ箔を積層させた」ものである点。

(ウ)相違点の判断
上記《相違点1-1》は、基材を構成する層の素材についてのものであり、単に表現が異なるだけの一応の相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲1発明ではない。

(エ)小括
以上を踏まえると、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当しないから、理由1には理由がない。

イ.理由2.について
(ア)甲1発明を主たる引用発明とした場合
a.甲1発明、対比、一致点、相違点
甲1発明、本件発明1と甲1発明の対比、一致点、相違点については、上記3.(3)ア.(ア)及び(イ)に示したとおりである。

b.相違点の判断
甲1には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0011】を参照。)ものの、「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」(以下、「特定層構成」という。)にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲2、3、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲1発明の基材を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲1発明において、「紙にアルミ箔を積層させた基材」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲2、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲1発明、甲2、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)甲2発明を主たる引用例とした場合
a.甲2発明
甲2の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0015】、【0028】及び【0054】の記載からみて、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。

《甲2発明》
アルミニウム箔に低密度ポリエチレン樹脂を共押出ラミネートした包装材料において、
前記包装材料は、前記アルミニウム箔に、エチレンーメタアクリル酸共重合体の層と、ピール層とを積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーメタアクリル酸共重合体の層厚が20μmであり、前記ピール層の層厚が10μmであり、
前記ピール層は、低密度ポリエチレンを65重量部とし、前記低密度ポリエチレンに実質的に非相溶であるポリブテン-1を35重量部とした混合物であって、これらの混合物はいわゆる「海島構造」を形成し、ピール層の凝集力を低下させ、凝集破壊タイプのイージーピール性を発現させることができる、包装材料。

b.対比、相違点
甲2発明の「エチレンーメタアクリル酸共重合体の層」、「ピール層」、、「低密度ポリエチレン」、「ポリブテン-1」、「海島構造」は、各々、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」、「第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」、「分散構造」に相当する。
そして、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-2》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲2発明は「アルミニウム箔」である点。

c.相違点の判断
甲2には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0013】を参照。)ものの、特定層構成にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲1、3、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲2発明の「アルミニウム箔」を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲2発明の「アルミニウム箔」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明、甲1、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲2発明、甲1、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)甲3発明を主たる引用例とした場合
a.甲3発明
甲3の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0024】、【0028】及び【0036】ないし【0038】の記載からみて、甲3には、以下の甲3発明が記載されている。

《甲3発明》
紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップに用いられる蓋材において、
前記蓋材は、紙にアルミ箔を積層させた基材と、前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、
前記シーラント層は、JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)70wt%中に、前記低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)に非相溶系もしくは部分相溶系のポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)30wt%を分散させた分散構造を有する、蓋材。

b.対比、相違点
甲3発明の「紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップ」、「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層」、「シーラント層」、「JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)」、「ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器」、「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層」、「前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」に相当する。
そして、甲3発明の「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造」は、本件発明1の「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造」に相当する。
また、甲3発明の「前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、」は、本件発明1の「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、」との要件を満足する。
そして、本件発明1と甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。

《相違点1-3》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲3発明は「紙にアルミ箔を積層させた」ものである点。

c.相違点の判断
甲3には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0030】を参照。)ものの、特定層構成にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲1、2、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲3発明の基材を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲3発明の「紙にアルミ箔を積層させた基材」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲3発明、甲1、甲2に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲3発明、甲1、甲2に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)小括
以上を踏まえると、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものではないから、理由2には理由がない。

ウ.理由3.について
上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められることにより、本件発明6及び本件発明7は、上記3.(1)に示したとおりのものであり、いずれも本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と整合するものとなったから、理由3は、理由のないものとなった。

(4)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件発明1及び5ないし8は、甲4の実施例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を述べている(特許異議申立書の29頁14ないし18行を参照。)が、その具体的理由は述べられていない。
そして、甲4には上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲1発明の基材を、上記特定層構成に変更すべきことを示唆する記載はないし、甲4の実施例1に記載の発明を主たる引用例としても、上記特定層構成の基材を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1及び5ないし8は、甲4の実施例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立人の主張は採用できない。

(5)中括
以上のとおり、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明1及び5ないし8に係る特許は、同条第2項及び同法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものでもないから、同法第113条第2号及び第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件発明1及び5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び5ないし8に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
そして、本件特許の請求項2ないし4は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項2ないし4についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項2ないし4についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蓋材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンで覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装分野において、インスタントラーメン、ゼリー、ヨーグルトなどの内容物をカップもしくはトレーに充填した包装形態が増加している。これらのカップもしくはトレーは一般的に、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂を射出成形、真空圧縮成形などの製法を利用して製造されているが、近年、省資源化、ごみの減容積化、リサイクル性などを考慮して、紙にポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂を積層させた紙カップなどが開発されており、内容物としてインスタントラーメンに限らず、飲料なども充填されるようになってきた。
【0003】
これらのカップ容器に用いる蓋材の要求品質としては、内容物を保護するため蓋材最内層のシーラント層と被着材であるカップなどの容器とが強接着であることが望まれる。また一方、開封時にはできるだけ易開封であるという相反する品質が求められる。
【0004】
上述した要求品質を満たすため、様々な機能が蓋材に付与されてきた。その1つとして、易開封機構の設計がある。易開封機構の例として、層間剥離機構、凝集剥離機構が挙げられる。このうち、凝集剥離機構は、熱可塑性樹脂に非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂をブレンドすることで設計される。凝集剥離機構における剥離原理としては、非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂ブレンド層の凝集力が小さいことを利用し、開封時は蓋材最内シーラントと被着材との界面ではなく、非相溶系あるいは部分相溶系の熱可塑性樹脂ブレンド層の凝集破壊を利用することが挙げられる。
【0005】
上述の凝集剥離機構の問題点としては、開封時に糸引きが発生することが挙げられる。糸引きの発生は、易開封層(熱可塑性樹脂ブレンド層)の層厚を極力薄くすることによって抑制される。あるいは、易開封層は一般的には微細な球状ドメイン相がマトリックス相に分散した海島構造を形成しているので、上記のドメイン相の分散径を極力小さくするなどのモルフォロジー設計をすることによっても糸引きを抑制できる。しかしながら、熱可塑性樹脂ブレンド層を薄く製膜する事は、膜厚制御の点から非常に困難な技術であり、加工性を低下させる。また、ドメイン相の微細分散化は、両者の界面接着性を著しく向上させる事から、開封強度が強くなり、易開封性を付与させる事が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-245399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、易開封性を低下させることなく、開封時の糸引きの発生を低減できる蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、蓋材は、基材と、シーラント層からなり、シーラント層は基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、易開封性に優れ、かつ開封時の糸引きの発生を低減できる蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蓋材の層構成の1例を示した断面模式図
【図2A】第2の熱可塑性樹脂のドメインが楕円形状あるいは扁平状に分散した状態を示す図
【図2B】第2の熱可塑性樹脂のドメインが完全球状に分散した状態を示す図
【図3】参考例1に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図4】参考例2に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図5】参考例3に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図6】参考例4に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図7】実施例5に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図8】比較例1に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【図9】比較例2に係る蓋材の層構成を示した断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る蓋材1の層構成の1例を示す断面模式図である。図1に示すように、蓋材1は、基材2の一方面にシーラント層7を積層して構成されている。
【0012】
基材2は、例えば、紙層4と、紙層4の一方面に印刷を施すことにより形成される印刷インキ層3と、紙層4の他方面に接着樹脂層5を介して積層される金属箔層6とから構成されている。接着樹脂層5として、例えば、ポリエチレン樹脂や、エチレン‐アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマーなどを用いることができる。また、金属箔層6として、アルミニウム箔を好適に用いることができる。尚、基材2の層構成は、上記構成に限らず、例えば、紙層と遮光印刷を付与したPET層との2層を積層した構成でもよい。また、必要に応じて接着剤層などを積層させてもよい。また、紙層の紙の材質も特に限定されるものではない。
【0013】
シーラント層7は、基材側の第1の熱可塑性樹脂層8と最表面となる第2の熱可塑性樹脂層11とから構成される。シーラント層7は、第1の熱可塑性樹脂層8の形成材料と、第2の熱可塑性樹脂層11の形成材料とを、基材2の一方面に共押し出しすることにより形成される。基材2とシーラント層7との接着性を確保するため、必要に応じて基材2の一方面にアンカーコート層12を設けてもよい。第1の熱可塑性樹脂層8と第2の熱可塑性樹脂層11との厚みは、第1の熱可塑性樹脂層8の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなるように構成される。第2の熱可塑性樹脂層11の厚みが第1の熱可塑性樹脂層8の厚みよりも薄いとヒートシール面に第1の熱可塑性樹脂層8が露出してしまう為に、接着を阻害することになる。接着力及びコスト面から第1の熱可塑性樹脂層8と第2の熱可塑性樹脂層11の厚みは等しくすることが好ましい。
【0014】
第1の熱可塑性樹脂層8として、例えば、エチレン‐アクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸エステル‐酸無水物(無水マレイン酸など)三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸エステル‐酸無水物(無水マレイン酸など)三元共重合体樹脂などの少なくとも1種の樹脂からなる層を用いることができる。
【0015】
第2の熱可塑性樹脂層11は、第1の熱可塑性樹脂9と第2の熱可塑性樹脂10とが配合された樹脂層である。ここで、蓋材1において、凝集剥離を開封機構として採用する場合、第2の熱可塑性樹脂層11に配合する第2の熱可塑性樹脂10は、第1の熱可塑性樹脂9に完全非相溶あるいは部分相溶する樹脂である。また、本発明において、カップなどの容器の被着面がポリエチレン樹脂で覆われている場合、第1の熱可塑性樹脂9/第2の熱可塑性樹脂10の組み合わせとして、低密度ポリエチレン/ポリブテン-1の組み合わせが好ましい。第1の熱可塑性樹脂9として用いる低密度ポリエチレンは、融点が100℃?115℃、メルトフローレート(MFR)が15?40g/10minの範囲であるものを用いることが好ましい。また、第2の熱可塑性樹脂10として用いるポリブテン-1は、融点が125℃、密度が0.905?0.917g/cm^(3)、MFRが1?20であるものを用いることが好ましい。
【0016】
また、第1の熱可塑性樹脂9と第2の熱可塑性樹脂10との配合比は、第1の熱可塑性樹脂9を60?80wt%、第2の熱可塑性樹脂10を20?40wt%の範囲であることが好ましい。第2の熱可塑性樹脂10の配合比が20wt%未満であると、シール強度が強くなりすぎ、40wt%を超えると、開封時に糸引きが発生しやすくなる。
【0017】
第2の熱可塑性樹脂層11のモルフォロジーとしては、ベースとなる第1の熱可塑性樹脂9中に分散する第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/s(l:ドメインの長径、s:ドメインの短径)が、1.5≦l/s≦10の範囲であることが好ましい。第2の熱可塑性樹脂10中に、ドメイン径比が上記の範囲である第2の熱可塑性樹脂10が全体の50%以上含まれていれば、易開封性に優れ、糸引きの発生を低減することが達成できる。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/sが、上記範囲で収まっており、図2Aで示すように、楕円形状あるいは偏平状に分散されることで、図2Bで示すように、完全に球状状態で分散(l/s=1)しているよりも、開封時にマトリックス相を破断する面積を小さくする事が可能であり、開封時の強度を抑制することが可能である。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比の範囲がl/s>10の場合には、蓋材1の開封時に第2の熱可塑性樹脂10が引きのばされ、糸引きの原因となる虞がある。第2の熱可塑性樹脂10のドメイン径比l/sの範囲が1.5≦l/s≦10で、さらに好ましくは、以下にも述べるが、第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、JIS.K7113における引張破断強度で5?20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下にする。第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、上記の範囲にすることで、マトリックス相の破断面積を小さくさせる効果と相乗して、糸引き解消の効果を発揮することが可能である。
【0018】
上述したモルフォロジーを形成させるためには、第1の熱可塑性樹脂9および第2の熱可塑性樹脂10のJIS.K7210に準ずる190℃、21.168NにおけるMFR比、あるいは、実際の加工温度およびせん断速度域での溶融粘度比を調整する必要があるが、一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。特に、第1の熱可塑性樹脂9と第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度の差が離れていれば離れているほど、第2の熱可塑性樹脂10が楕円形状あるいは偏平状に分散するので好ましい。よって、第1の熱可塑性樹脂9と、第2の熱可塑性樹脂10とのMFR比は40:1?4:3であることが好ましい。さらに好ましくは175:9?100:9が良い。
【0019】
上述したように、第1の熱可塑性樹脂9は、JIS.K7113における引張破断強度で5?20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。ここで、JIS.K7113における引張破断強度、引張破断伸びの測定試験片および測定条件は、JIS.K7113に従う。例えば、測定する樹脂が低密度ポリエチレン樹脂であれば、2号試験片で厚さ2.0±0.2mm、試験速度200mm/min.の条件で試験を行う。
【0020】
第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が5MPaより小さいと、樹脂としての強度が低くなりすぎ、シール強度が得られない可能性がある。また、第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が20MPaより大きく、かつ、引張破断伸びが600%を超えると、開封時に糸引きを発生する虞がある。したがって、引張破断強度が5?20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。
【0021】
蓋材1の容器との開封強度は、易開封性を考えると1?15N/15mmであることが好ましい。開封強度が1N/15mmよりも小さいと接着強度に劣り、開封強度が15N/15mmより大きいと易開封性に劣る。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
<参考例1>
図3は、参考例1に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
印刷インキ層/紙層/ポリエチレン層/アルミニウム箔層の層構成を有する基材を用いた。
【0024】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-アクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を70wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0025】
<参考例2>
図4は、参考例2に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
参考例1と同様の基材を用いた。
【0026】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:100℃、MFR:20g/10min)を80wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を20wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
<参考例3>
図5は、参考例3に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
参考例1と同様の基材を用いた。
【0027】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-アクリル酸エステル-酸無水物三元共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:115℃、MFR:35g/10min)を60wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を40wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚は5μmとし、第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は15μmとした。
【0028】
<参考例4>
図6は、参考例4に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
PET層/印刷インキ層/紙層/エチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂層/アルミニウム箔層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層とがポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を介して積層されている基材を用いた。
【0029】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を70wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも10μmとした。
【0030】
<実施例5>
図7は、実施例5に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
PET層/印刷インキ層/紙層/遮光印刷を付与したPET層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層と、また紙層と遮光印刷を付与したPET層とをポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を介して積層されている基材を用いた。また、紙層には、紙層とその上層のPET層とを部分的に剥離するためにミシン目線を設けた。
【0031】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-アクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:25g/10min)を70wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を30wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材の遮光印刷を付与したPET層上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも10μmとした。
【0032】
<比較例1>
図8は、比較例1に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
参考例1と同様の基材を用いた。
【0033】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-アクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:105℃、MFR:10g/10min)を90wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を10wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0034】
<比較例2>
図9は、比較例2に係る蓋材の層構成を示す断面模式図である。
(基材)
参考例1と同様の基材を用いた。
【0035】
(シーラント層の形成)
第1の熱可塑性樹脂層の形成材料として、エチレン-メタクリル酸共重合体を用い、第2の熱可塑性樹脂層の形成材料として、低密度ポリエチレン(融点:120℃、MFR:20g/10min)を50wt%、ポリブテン-1(融点:125℃、MFR:1.8g/10min)を50wt%の重量比で混合したブレンド樹脂を用いた。上記の基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層を設けて、第1の熱可塑性樹脂層の形成材料および第2の熱可塑性樹脂層の形成材料を共押し出ししてシーラント層を形成した。第1の熱可塑性樹脂層の膜厚および第2の熱可塑性樹脂層の膜厚は、いずれも15μmとした。
【0036】
上記、参考例1、2、3、4、実施例5、比較例1および2より得られた図3?9で示した層構成を有する蓋材を用いて、以下の測定および評価をおこなった。
【0037】
(シール強度の測定)
上記で得られた蓋材を、ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に130?160℃でヒートシールし、ヒートシール強度を測定した。このときのシール圧は0.15MPaとし、シール時間は1秒とした。この各蓋材をヒートシールした容器を用いて、90度剥離試験を行い、シール強度を測定した。
【0038】
(剥離面の糸引きの評価)
シール強度の測定と同様に各蓋材をヒートシールした容器を用いて、手で蓋材を開封することにより、剥離面糸引きを目視で評価した。
【0039】
(開封感の評価)
シール強度の測定と同様に各蓋材をヒートシールした容器を用いて、手で蓋材を開封した際の開封感を評価した。
【0040】
表1に、シール強度の測定結果および剥離面の糸引き、開封感の評価結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、参考例1、2、3、4、実施例5で得られた蓋材にあっては、比較例1、2で得られた蓋材と比べて、蓋材と容器との間で強接着であることを満たし、易開封性を有する蓋材であることが確認できた。また、参考例1、2、3、4、実施例5で得られた蓋材は、開封時にも糸引きの発生を低減でき、開封感も良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ポリエチレンで覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 蓋材
2 基材
3 印刷インキ層
4 紙層
5 接着樹脂層
6 金属箔層
7 シーラント層
8 第1の熱可塑性樹脂層
9 第1の熱可塑性樹脂
10 第2の熱可塑性樹脂
11 第2の熱可塑性樹脂層
12 アンカーコート層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材は、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする、蓋材。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記第1の熱可塑性樹脂層は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は第1の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを60?80wt%と、第2の熱可塑性樹脂としてポリブテン-1を20?40w%含むブレンド樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性樹脂のJIS.K7113における引張破断強度が5?20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることを特徴とする、請求項1または5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記低密度ポリエチレンと前記ポリブテン-1とのMFR比が40:1?4:3であることを特徴とした請求項5または6に記載の蓋材。
【請求項8】
前記シーラント層が共押出ラミネートにより、前記基材に積層されていることを特徴とする請求項1、5?7のいずれかに記載の蓋材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-10 
出願番号 特願2012-211487(P2012-211487)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 健治  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 蓮井 雅之
渡邊 豊英
登録日 2016-08-12 
登録番号 特許第5983241号(P5983241)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 蓋材  
代理人 杉本 ゆみ子  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  
代理人 特許業務法人小笠原特許事務所  

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