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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41F
管理番号 1341081
異議申立番号 異議2017-700631  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-21 
確定日 2018-05-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6049096号発明「紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷シートをオフライン検査および色測定する装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6049096号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔8-14〕,〔16-18〕について訂正することを認める。 特許第6049096号の請求項1乃至7、9乃至10、12乃至18に係る特許を維持する。 特許第6049096号の請求項8及び11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年3月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月30日,欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされたものであって,これ以降の続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月21日 特許異議の申立て(申立人 梅津雅由)
平成29年 9月12日 取消理由通知
平成29年12月14日 意見書及び訂正請求
平成30年 2月23日 意見書(申立人 梅津雅由)

第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨及び訂正の内容
平成30年2月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,本件特許6049096号(以下「本件特許」という。)の願書に添付した特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものである。
そして,その訂正内容は,以下のとおりである。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9の「請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12の「請求項1乃至11の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7,9,10の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14の「請求項1乃至13の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7,9,10,12,13の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項16の「請求項1乃至15の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7,9,10,12乃至15の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項17の「請求項1乃至16の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7,9,10,12乃至16の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

訂正事項8
特許請求の範囲の請求項18の「請求項1乃至17の何れか一項に記載の装置(1)において」を,
「請求項1乃至7,9,10,12乃至17の何れか一項に記載の装置(1)において」と訂正する。

2 当審の判断
(1) 訂正事項1及び3について
訂正事項1及び3は,請求項の削除であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして,請求項の削除であるから,当然に特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項2及び4乃至8について
訂正事項2及び4乃至8は,いずれも訂正事項1及び3によって削除された請求項8及び11を引用していた訂正前の請求項の記載を,訂正事項1及び3による訂正に伴い,引用しないように訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,単に引用する請求項を整理しただけであるから,当然に特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許についての特許異議の申立て事件では,訂正前の請求項1乃至18について特許異議の申立ての対象とされているから,本件訂正における訂正前の請求項8乃至18に係る訂正事項1乃至8に関して,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 一群の請求項等について
訂正前の請求項8?10,12?14,16?18について,請求項9,10,12?14,16?18はそれぞれ請求項8を直接的又は間接的に引用しているものであって,訂正事項1によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項8?10,12?14,16?18に対応する訂正後の請求項8?10,12?14,16?18は,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項11?14,16?18について,請求項12?14,16?18はそれぞれ請求項11を直接的又は間接的に引用しているものであって,訂正事項3によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求11?14,16?18に対応する訂正後の請求項11?14,16?18は,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
そして,これらの一群の請求項は,共通する請求項12?14,16?18を有するものであるから,互いに組み合わされるものとなって,訂正前の請求項8?14,16?18に対応する訂正後の請求項8?14,16?18が,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項となる。

4 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第第1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項8?14,16?18について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1乃至7,9,10,12乃至18係る発明(以下,「本件発明1」,「本件発明2」などという。)は,その特許請求の範囲の請求項1乃至7,9,10,12乃至18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において,当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって,前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と,前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色,比色測定,および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22,23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており,
当該装置(1)は,前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え,当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ,前記複数のセンサ(22,23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており,これにより,前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する,あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ,
前記制御処理ユニット(40)は,x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており,
前記ディスプレイ(30)が,前記サンプル印刷シート(S)の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置するための前記制御処理ユニット(40)の入力として機能するよう構成された接触感知領域(31)を有するタッチスクリーン型ディスプレイであり,
前記タッチスクリーン型ディスプレイ(30)がさらに,前記多目的測定装置(20)の動作を制御し,様々な動作モード間で前記多目的測定装置(20)を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成され,前記動作モードは,前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと,前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含む
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において,前記可動センサビーム(200)が前記支持面(10a)に近接して配置された縦アームを形成し,前記可動センサビーム(200)と前記支持面(10a)の間の空間は数ミリメートルであって,
前記支持面(10a)と,その上に配置された前記サンプル印刷シート(S)に向かって前記可動センサビーム(200)に下方開口部のみを残すように,前記センサヘッド(21)および複数のセンサ(22,23)が前記可動センサビーム(200)内に完全に囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項3】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において,当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって,前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と,前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色,比色測定,および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22,23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており,
当該装置(1)は,前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え,当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ,前記複数のセンサ(22,23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており,これにより,前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する,あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ,
前記制御処理ユニット(40)は,x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており,
前記ディスプレイ(30)が,前記サンプル印刷シート(S)の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置するための前記制御処理ユニット(40)の入力として機能するよう構成された接触感知領域(31)を有するタッチスクリーン型ディスプレイであり,
当該装置(1)が,複数の行及び列(図2)に配置された個々の多色セキュリティ印刷(P)のマトリクスからなる有効印刷領域(EF)を表すサンプル印刷シート(S)を検査するように設計されており,
前記制御処理ユニット(40)および前記ディスプレイ(30)の接触感知領域(31)は,前記タッチスクリーン型ディスプレイ上で選択すると,前記個々の多色セキュリティ印刷(P)の所望の1つまたはその任意の部分の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置することができるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置(1)において,前記タッチスクリーン型ディスプレイ(30)がさらに,前記多目的測定装置(20)の動作を制御し,様々な動作モード間で前記多目的測定装置(20)を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成されており,
前記動作モードは,前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと,前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において,前記可動センサビーム(200)が前記支持面(10a)に近接して配置された縦アームを形成し,前記可動センサビーム(200)と前記支持面(10a)の間の空間は数ミリメートルであって,
前記支持面(10a)と,その上に配置された前記サンプル印刷シート(S)に向かって前記可動センサビーム(200)に下方開口部のみを残すように,前記センサヘッド(21)および複数のセンサ(22,23)が前記可動センサビーム(200)内に完全に囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置(1)において,
前記カメラ(22)は,白色可視光,赤外(IR)光,および紫外(UV)光の下で前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影することができ,前記カメラ(22)の動作モードは,可視光動作モード,赤外動作モード,および紫外動作モードの間で選択的に切り換えることができ(図5f-5k),
前記多目的測定装置(20)はさらに,前記カメラ(22)の動作モードに依存して個々に作動する複数の光源(24,25,26)を具え,これらの光源は,白色光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第1の光源(24)と,赤外(IR)光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第2の光源(25)と,紫外(UV)光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第3の光源(26)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置(1)において,前記カメラ(22)はカラーカメラ,好適にはRGBカメラであって,前記カメラ(22)によって取り込まれた画像の色成分の各1つは任意に,前記ディスプレイ(30)において個々にかつ別個に表示することができることを特徴とする装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置(1)において,前記サンプル印刷シート(S)の位置および/または回転は,前記カメラ(22)によって初期設定段階で自動的に決定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置(1)において,一定許容範囲内の前記サンプル印刷シート(S)の回転は,前記可動センサビーム(200)がx軸に沿って移動するときに前記カメラ(22)で撮影される画像のy方向位置を調整することによって補正されることを特徴とする装置。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
請求項1乃至7,9,10の何れか一項に記載の装置(1)において,前記制御処理ユニット(40)が,前記カメラ(22)を制御し,前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)の画像を自動的に取り込んで識別するように構成されており,
前記色制御フィールド(CF)は,印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表す(図2-4および5c)ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置(1)において,前記制御処理ユニット(40)が,前記測色センサ(23)を制御し,前記色制御フィールド(CF)において自動で色測定を実施するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1乃至7,9,10,12,13の何れか一項に記載の装置(1)において,前記制御処理ユニット(40)が,前記測色センサ(23)を制御し,前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)において色測定を実施するように構成され,
前記色制御フィールド(CF)は,印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表しており(図2-4),
前記サンプル印刷シート(S)および前記色制御フィールド(CF)に適用された様々なインクに対応する規定の色が,セットアップ時に予め規定されて前記制御処理ユニット(40)に入力され,前記サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)に割り当てられることを特徴とする装置。
【請求項15】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において,当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって,前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と,前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色,比色測定,および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22,23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており,
当該装置(1)は,前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え,当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ,前記複数のセンサ(22,23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており,これにより,前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する,あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ,
前記制御処理ユニット(40)は,x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており,
前記制御処理ユニット(40)が,前記測色センサ(23)を制御し,前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)において色測定を実施するように構成され,
前記色制御フィールド(CF)は,印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表しており(図2-4),
前記サンプル印刷シート(S)および前記色制御フィールド(CF)に適用された様々なインクに対応する規定の色が,セットアップ時に予め規定されて前記制御処理ユニット(40)に入力され,前記サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)に割り当てられ,
前記制御処理ユニット(40)が,前記サンプル印刷シート(S)の印刷前のデータに基づいて,あるいは前記多目的測定装置(20)によって前記色制御フィールド(CF)に実施される測定に基づいて,前記規定の色を対応する色制御フィールド(CF)に自動的に割り当てるよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1乃至7,9,10,12乃至15の何れか一項に記載の装置(1)において,前記コンソール(10)が,吸引によって前記支持面(10a)に前記サンプル印刷シート(S)を保持するための複数の吸引穴(105)を有する吸引テーブル(100)を具えていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1乃至7,9,10,12乃至16の何れか一項に記載の装置(1)において,前記多目的測定装置(20)の前記複数のセンサ(22,23)を較正するために,少なくとも1の較正パターン(110)が前記支持面(10a)に設けられていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1乃至7,9,10,12乃至17の何れか一項に記載の装置(1)において,前記測色センサ(23)が,分光測色または比色測定を実施する分光光度計または分光比色計と,前記サンプル印刷シート(S)の光学密度測定を実施する濃度計とを兼ね備えることを特徴とする装置。」

2.取消理由の概要
当審において通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
理由1 請求項8,11,16乃至18に係る特許は,その出願前日本国内において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2 本件出願は,明細書の記載が不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 刊行物の記載
引用文献1:特開2008-39783号公報(異議申立書における甲第1号証)
ア「【0007】
本発明によると,この目的は請求項1によって達成される。本発明の有利な実施態様は,従属請求項および図面から読み取ることができる。本発明によれば,被印刷体の色に関する測定を行う装置が,2つの異なる測定装置を有している。本発明のこの測定装置は,従来技術とは異なり,異なる幾何学的解像度および/または異なる光学的解像度で,すなわち色に関する異なる解像度で作動し,これにより,第1の測定装置によってまず大まかな測定を行い,場合によっては被印刷体内で目立つ個所をより迅速に認識でき,一方,第2の測定装置によって非常に正確に色に関する測定を行うことができる。異なる動作をする2つの測定装置によって,まず被印刷体の比較的広い範囲を認識し,次いで,正確に測定できる第2の測定装置によって,問題のある個所の色に関して測定することが可能である。このことは,本発明による色に関する測定を行う装置の作業速度を速くし,より迅速な色測定プロセスにつながる。このことは,特に,巻き取り紙輪転印刷機の場合や,枚葉紙印刷機の場合にも組み入れることが増えているインラインの色測定装置に使用する際に必要である。この色に関する測定を行う装置によると,被印刷体がまだ印刷機の中にあるときに測定され,それに相応して頻繁に測定プロセスが行われるが,その場合,印刷速度が速いために,測定プロセスには短い時間しかかけることができない。しかし当然ながら,本発明による装置は,印刷プロセスの後に被印刷体が上に載せられる別の測定テーブルに組み入れることができる。手動式の測定装置の場合であっても組み入れることが可能である。」

イ「【0017】
図1には,移動可能な測定バー1を有する測定テーブル2が図示されている。測定バー1は電気駆動装置を有しており,それにより,測定バー1は左から右へ,またはそれと逆向きに,測定テーブル2の上にある被印刷体の上方でX方向へ移動することができる。測定バー1が被印刷体3の上で移動している間に,被印刷体3は,測定バー1の測定ヘッド8によって色に関して測定される。被印刷体3には,本来の印刷画像に並べて,下側の縁部に色測定用ストライプの形態の色測定用区画13が塗布されているのがわかる。この色測定用区画13は色の管理に利用されるものであり,所定の標準化された特性,たとえば所定の色調を有している。測定バー1の検出された色測定値はコンピュータ4へ転送され,コンピュータはこの測定値をモニタ5で操作員に対して表示する。測定プロセスを制御するために,操作員はキーボード6を通じて入力を行うことができる。さらに,コンピュータ4は印刷機7の機械内コンピュータと接続されており,それにより,コンピュータ4の色測定結果を印刷機7のインキ装置の色制御のためにそのまま利用することができる。印刷見本と,測定された被印刷体3との間に誤差が発見されたときは,その誤差を印刷機7のインキ装置においてしかるべく補正することができる。図1の測定装置は,側方の色測定用区画13だけでなく,被印刷体3の印刷画像全体も認識することができ,そのために測定バー1の測定ヘッド8は,別の電気駆動装置によって側方へY方向に移動することができる状態である。
【0018】
図2には,図1の測定バー1の測定ヘッド8の一例が詳しく図示されている。これにより,測定ヘッド8が複数の測定装置9,10,11から構成されているのがわかる。測定プロセス中の図1の測定バー1の移動方向が左から右へ進む場合,右側には,他の測定装置10,11の前に配置されたプレビューセンサ9がある。このプレビューセンサ9は,明暗差を検出するための高い幾何学的解像度を有するラインセンサとして構成されている。このプレビューセンサ9によって,被印刷体3の色測定用区画13の位置,すなわちその始まりと終わりなどを正確に認識することが可能である。それにより,測定する色測定用区画13の上方で,引き続いて分光測定装置10を迅速に位置決めすることが可能である。分光測定装置10は,特別に高い幾何学的解像度を有している必要はなく,その代わりに,正確な色測定値を検出できるようにするために,色に関する高い分光解像度で測定を行う。色測定用区画13の正確な位置が検知されることで,分光測定装置10は短い測定を絶えず行う必要はなく,しかるべく長い露光時間で,測定すべき色測定用区画13を正確に測定することができる。プレビューセンサ9が次の色測定用区画13の位置を迅速かつ正確に予め認識するので,測定と測定の間に測定ヘッド8全体を迅速に動かすことができる。被印刷体3の測定しない領域を飛ばすことによって,測定バー1はいっそう迅速に左から右へ移動することができ,このことは,測定プロセス全体の時間を短縮する。さらに,図2のプレビューセンサ9は,被印刷体の測定すべき色測定用区画13に所定の照明を行うのに役立つ照明装置12を制御する。プレビューセンサ9の明暗測定により,検知された色測定用区画13の明るさに応じて,照明装置12の照明強度を制御することができる。
【0019】
さらに,図2の測定ヘッド8は,同様に,比較的高い200dpi(1インチ(約2.54cm)当たり200ドット)の幾何学的解像度で作動する,スキャン式測定装置11を有している。このスキャン式測定装置11は,特に,測定バー1内にあり,色測定用区画13がある側方領域では測定をせず,スキャナのように被印刷体3の印刷画像全体を認識する複数の測定ヘッド8を有している。このスキャン式測定装置11は,被印刷体の多数のピクセル(画素)を同時に認識し,それにより,同様に,いっそう迅速な測定プロセスを可能にすることができる。ただし,このスキャン式測定装置11の色測定精度は,プレビューセンサ9の色測定精度と同様に,分光測定装置10の色測定精度よりも低い。それにもかかわらず,色に関する高い測定精度を実現するために,スキャン式測定装置11またはプレビューセンサ9の測定結果は,コンピュータ4で,分光測定装置10の測定値と調整される(例えば均される)。スキャナ11およびプレビューセンサ9は,後で説明するように,分光色測定装置10によって色に関して較正(キャリブレーション)される。センサ9および11は幾何学的解像度が高いので,個々の色分解の間の見当のずれや表面と裏面の間の見当のずれを検出するために,被印刷体3のレジスタマーク,すなわち見当標(トンボ)を認識するのに利用することもできる。ただしそのためには,センサは少なくとも1000dpi(1インチ(約2.54cm)当たり1000ドット)の解像度を有していなくてはならず,このことは,センサを精密測定モードに切り換えることによって行うことができる。それによって測定速度は遅くなるものの,このモードで被印刷体3全体を測定する必要はなく,非常に限られた空間である,レジスタマークや見当標がある領域を認識するには十分である。コンピュータ4を通じて印刷機7の制御に介入して,後続の被印刷体3のために誤差を修正することができる。さらに,センサ9,11は,被印刷体3のバーコードを認識するのに利用することができる。誤差が発見されると,コンピュータ4はそれを不良品として記録し,枚葉紙3が取り出される。そのためには200dpiの解像度があれば十分である。このような解像度によって,センサ9,11はコンピュータ4とともに枚葉紙3のテキストが正しいかどうかチェックし,そのようにして,たとえば医薬品包装の誤記を検知し,前記したのと同様にそれを取り出すことができる。」
引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「移動可能な測定バー1を有する測定テーブル2の上にある被印刷体3は,測定バー1の測定ヘッド8によって色に関して測定され,
被印刷体3には,本来の印刷画像に並べて,下側の縁部に色測定用ストライプの形態の色測定用区画13が塗布され,
測定バー1の検出された色測定値はコンピュータ4へ転送され,コンピュータはこの測定値をモニタ5で操作員に対して表示し,
コンピュータ4は印刷機7の機械内コンピュータと接続されており,コンピュータ4の色測定結果を印刷機7のインキ装置の色制御のためにそのまま利用することができ,印刷見本と,測定された被印刷体3との間に誤差が発見されたときは,その誤差を印刷機7のインキ装置において補正することができるものであって,
測定バー1は電気駆動装置を有して,測定テーブル2の上にある被印刷体の上方でX方向へ移動することができ,
測定バー1の測定ヘッド8は,別の電気駆動装置によって側方へY方向に移動することができ,
測定ヘッド8は,複数の測定装置9,10,11から構成され,
プレビューセンサ9は,明暗差を検出するための高い幾何学的解像度を有するラインセンサとして構成されて,被印刷体3の色測定用区画13の位置,すなわちその始まりと終わりなどを正確に認識することが可能であり,
分光測定装置10は,色に関する高い分光解像度で測定を行うことで,正確な色測定値を検出でき,
スキャン式測定装置11は,特に,測定バー1内にあり,色測定用区画13がある側方領域では測定をせず,スキャナのように被印刷体3の印刷画像全体を認識する複数の測定ヘッド8を有し,被印刷体の多数のピクセル(画素)を同時に認識することができる被印刷体の色に関する測定を行う装置。」

引用文献2:特開2000-318125号公報(異議申立書における甲第3号証)
ウ 「【0016】図1(A)は本発明の多面付け対応カラーバーを備えた枚葉式刷版の構成を示す図で,(B)は(A)を形成する単位体の構成を示す図で,(C)は(B)のカラーバーの構成を示す図である。図2は図1の単位体を刷版用フィルムに配設したときの単位体に設けたパッチブロックの配設状況を示す図で,図3は図1に示す枚葉式刷版に対応するインキキーとの関係位置を示す図で,図4は図1の単位体に設けたパッチブロックを形成するパッチパターンの構成を示す図で,(A)は4,5色用パッチパターンで,(B)は6色用パッチパターンである。
【0017】図1には本発明の多面付け対応カラーバーを備えた枚葉式刷版の概略の構成と単位体の構成を示してある。図の(A)には絵柄8面を2段に配設した場合の構成を示し,枚葉式刷版13は,下段に絵柄11を4面配設し,上段には絵柄11とカラーバーのパッチブロック10とを備えた単位体12を4面配設してある。上記単位体12は図の(B)に見るように,フィルム11a上に絵柄11とその上方位置にパッチブロック10を配設焼き付ける構成としてある。また,パッチブロック10は,図の(C)に見るように後記する7個の色別エレメントよりなるパッチパターン10aを複数個連設する構成とし,図の(B)に示すように絵柄11の左右端よりはみ出ない構成にしてある。なお,上記パッチパターン10aの長さは後記するインキキー15の1個分の幅にさせてある。そして,枚葉式刷版13は,フィルム11a上に上記単位体12を4面2段状に焼き付けをし,其の際上段の焼き付け面にのみパッチブロック10が現出するようにして,図の(A)に示すように上記焼き付けの結果,上段にはパッチブロック10を持つ単位体12が配設され,下段には絵柄11のみ配設された刷版が得られるようにしてある。」

エ 「【0021】図4には,図1の単位体に設けたパッチブロックを形成するパッチパターンの構成を示す図で,(A)は4,5色用パッチパターンで,(B)は6色用パッチパターンである。それぞれシアンCで始まりついで,ブラックBK,ついでイエローYを配設し最終端にマゼンダMを配設し,図の(A)では中間に三色の載り具合を示すグレーGと,ペーパPと色のダブりを示すスペシャルパッチSp1よりなるパッチを充当して7パッチでパッチパターン10aを形成し,図の(B)では中間にスペシャルパッチSp2,ペーパP,パッチSp1よりなるパッチを充当して7パッチのパッチパターン10aを形成し,夫々のパッチパターンの長さをインキキー一つ分の幅に対応させてある。
【0022】上記構成であるので,図1の多面付け対応カラーバーを備えた枚葉式刷版により印刷した印刷紙の濃度計測と制御は,図5に示す色調管理システムを介して行なう。即ち,色調計測管理部60bで本機刷のカラーバー印刷面の色調を,該カラーバー上を走行する分光センサ60aによりカラーバー印刷面に形成されたインキキーと同じ幅の色別エレメントの集合体によりインキキーと同じ幅単位で各色の濃度を読取り,予め設定してあるデータと比較して偏差値を演算し,リモコンデスク61の色調管理端末61a及びインキコントローラ61bとを介して,色別の各印刷機62…に夫々設けた各インキ壷の対応するインキキーを調整して,各インキ壷のインキ元ローラのインキ汲み上げ量をインキキー幅毎に加減調整する。なお,上記分光センサ60aのカラーバーの読取りに際しては,走行走査する前記分光センサ60aにより絵柄毎に設けたパッチブロック10の先頭位置を検出させ,対応するインキキーの位置を検出演算し夫々のインキキーによるインキ濃度の制御を可能にしている。」
引用文献2の上記記載事項を含め,引用文献2の全記載を総合すると,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「多面付け対応カラーバーを備えた枚葉式刷版13は,下段に絵柄11を4面配設し,上段には絵柄11とカラーバーのパッチブロック10とを備えた単位体12を4面配設し,
パッチブロック10は,7個の色別エレメントよりなるパッチパターン10aを複数個連設する構成とし,
パッチブロックを形成するパッチパターンは,夫々のパッチパターンの長さをインキキー一つ分の幅に対応させ,
色調計測管理部60bで本機刷のカラーバー印刷面の色調を,該カラーバー上を走行する分光センサ60aによりカラーバー印刷面に形成されたインキキーと同じ幅の色別エレメントの集合体によりインキキーと同じ幅単位で各色の濃度を読取り,予め設定してあるデータと比較して偏差値を演算し,リモコンデスク61の色調管理端末61a及びインキコントローラ61bとを介して,色別の各印刷機62に夫々設けた各インキ壷の対応するインキキーを調整して,各インキ壷のインキ元ローラのインキ汲み上げ量をインキキー幅毎に加減調整する,多面付け対応カラーバーを備えた枚葉式刷版により印刷した印刷紙の濃度計測と制御を行う色調管理システム。」

引用文献3:米国特許第7626724号明細書(異議申立書における甲第6号証)
オ 「An auto-tracking spectrophotometer has a moveable look-ahead sensor for scanning at least a portion of a color matrix. The look-ahead sensor finds a portion of the color matrix for measurement by an optical system. The optical system for measuring the color matrix is then guided using the information provided by the look-ahead sensor.」(ABSTRACT欄全文)
(自動追跡分光光度計は,カラー・マトリックスの少なくとも一部を走査するための可動ルックアヘッド・センサを備えている。ルックアヘッド・センサは光学装置による測定のためにカラー・マトリックスの一部を捜し出す。そしてカラー・マトリックスを測定するための光学装置はルックアヘッド・センサにより提供される情報を利用して案内される。)(訳文は,異議申立人が提出したものによった。以下同じ。)

カ 「Vacuum pump 28 is attached to station 26 by way of tube 30 and vacuum inlet 33 . Table 22 has vacuum holes 32 . When a graphic composition is placed on table 22 , vacuum pump 28 is energized, thus creating a means to hold the graphic composition to table 22 . The graphic composition is generally on a substrate, such as paper.」(第2欄第41?46行)
(真空ポンプ28は管30及び真空入口33によってステーション26に取り付けられる。テーブル22は真空孔32を有する。グラフィック配合物がテーブル22に配置されるときに,真空ポンプ28は付勢されて,グラフィック配合物をテーブル22に保持する手段を生じさせる。グラフィック配合物は通常基板,例えば紙の上にある。)

キ 「After a graphic composition is placed on platen 23 , head 24 moves across the color chart and reads the color chart on the graphic composition, and transmits the information to a computer.
FIG. 3 shows the contents of head 24 . Head 24 serves as an enclosure for various components. Various circuit boards required to operate head 24 are not shown. Arrow 41 shows the movement of the head 24 in the direction of the scan, which is referred to hereinafter as the X-direction. Head 24 includes a NCIS (non-contact image system) 40 , data acquisition optics 42 , and Y-step motor 44 . 」(第2欄第53?63行)
(グラフィック配合物がプラテン23に配置された後に,ヘッド24はカラーチャートを横切って,グラフィック配合物上のカラーチャートを読取って,情報をコンピュータに送る。
図3はヘッド24の中身を示す。ヘッド24はさまざまな構成要素のためのエンクロージャとして役立つ。ヘッド24を動作させるために必要とするさまざまな回路基板は示されない。矢印41はヘッド24の走査方向への移動を示し,それは以下「X方向」と称される。ヘッド24は,NCIS(非接触画像装置)40,データ収集光学部品42,およびYステップ・モータを含む。)
引用文献3の上記記載事項を含め,引用文献3の全記載を総合すると,引用文献3には以下の事項(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「カラー・マトリックスの少なくとも一部を走査するための可動ルックアヘッド・センサを備え,該ルックアヘッド・センサは光学装置による測定のためにカラー・マトリックスの一部を捜し出し,該光学装置はルックアヘッド・センサにより提供される情報を利用して案内されてカラー・マトリックスを測定し,
通常基板,例えば紙の上にあるグラフィック配合物が,テーブル22に配置されるときに,真空ポンプ28は付勢されて,グラフィック配合物をテーブル22に保持する手段を生じさせ,
グラフィック配合物がプラテン23に配置された後に,ヘッド24はカラーチャートを横切って,グラフィック配合物上のカラーチャートを読取って,情報をコンピュータに送り,
ヘッド24は,NCIS(非接触画像装置)40,データ収集光学部品42,およびYステップ・モータを含む自動追跡分光光度計。」

引用文献4:特開2007-193387号公報
ク 「【0022】
本発明のセキュリティ情報媒体読取装置1は,図1概略外観図のように,読取装置本体部2にPC20がUSBケーブル7により接続した構成になっている。USBケーブル7は,USB2.0仕様のものとする。USB2.0はUSB1.1と互換性を有するが,より高速の転送モード(480Mbps)が追加されている。バスパワーとして,PCから通常2.5W程度の電力が供給される。
読取装置本体部2は,遮光性筐体3内に光源として3種類のLEDとCCDカメラを内蔵している。CCDカメラはUSBバスパワーにより駆動させる。各LEDもバスパワーにより発光可能であるが,バスパワーのみでは電力不足となる場合は,図1のように別途に電源装置6を設けるのが好ましい。バスパワーによる共通電源とする場合は,USBケーブル7を分岐するハブ装置を読取装置本体部2内に設ける。
【0023】
電源装置6は,LEDに電力を供給するもので,レギュレータにより電圧を可変するようにされている。間欠発光させるためにはパルス発生器を使用する。いずれのLEDの場合も,20?110mA程度の直流電圧が供給される。図1には,図示してないが,LED切替スイッチを備えることができる。
3種類のLEDとは,赤外発光LED,紫外発光LED,可視光発光LEDであり,赤外発光LEDは,赤外励起可視蛍光発光材料を発光させ,紫外発光LEDは,紫外励起可視蛍光発光材料を発光させ,可視光発光LEDは可視光により蛍光を発する蛍光発光材料を発光させる目的のためである。それぞれ所定の蛍光発光が得られるように複数個のLEDが用いられる。
【0024】
PC20は,ディスプレイ(モニター)21と画像処理機能を有する汎用的なものでよい。画像保存(記憶)と再生機能が必要とされる。USBコネクタを有しUSB2.0の仕様によりバスパワーを供給できる必要がある。CCDカメラからの画像信号は,USBケーブル7の信号線(D+,D-)を介してPC20に送信される。
パソコンの電源としては,AC100V±10V(50/60Hz)が用いられる。
【0025】
遮光性筐体3の外形は図1のように立方体形状のものであってもよく略円筒状に形成されていてもよい。外光が入らないようにし内面は無反射性にする。下面側はセキュリティ情報媒体10の蛍光像を観察するため,蛍光発光像を通過させる開口を有するようにされている。複数種類のLEDの先端は,下面3dの情報媒体10に接触するか近接するように配列される。遮光性筐体3の内部には,蛍光像を受光して撮像するCCDカメラをさらに内蔵している。
遮光性筐体3は,鉄板やアルミニウム板等の金属材料が好適に用いられるが,遮光性のプラスチック成型体で構成することも好ましい。
【0026】
図1の実施形態では,遮光性筐体3の下面3dは,通常,観察するセキュリティ情報媒体10に直接接触するようにするが,数mm程度の範囲内であれば,セキュリティ情報媒体10から一定の間隔距離を置いて位置するようにしてもよい。その場合は遮光性筐体3を支持する脚部を設ける。ただし,間隔距離が,あまり大きくなる場合は,外光が多くなり蛍光発光像の視認が困難となる。セキュリティ情報媒体10は試料台15に平面状に載置されて読み取りされる。」
引用文献4の上記記載事項を含め,引用文献4の全記載を総合すると,引用文献4には以下の事項(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「遮光性筐体3内に光源として3種類のLEDとCCDカメラを内蔵した読取装置本体部2と,ディスプレイ(モニター)21と画像処理機能を有するPC20とを備え,
CCDカメラからの画像信号は,USBケーブル7の信号線を介してPC20に送信され,
セキュリティ情報媒体10は試料台15に平面状に載置されて読み取りされるセキュリティ情報媒体読取装置1。」

引用文献5:特開2002-48719号公報
ケ 「【0010】
【発明の実施の形態】本発明では,パスポート,紙幣等のセキュリティドキュメントたる対象物を載置したステージを暗室内に移動させながら,予め選択した波長域の光を対象物に対して照射する。対象物からの反射光について,スリットを通過したライン状の光を分光カメラで分光して1ライン毎に取得し,ステージを1ラインずつ移動して走査することによって対象物のエリアに関する3次元画像データ(フレームデータ)を取得すると共に,分光カメラの光学系によって歪んだ3次元画像データを座標変換テーブルに基づいて座標変換し,読取り位置の画素に対応させて画像データを記憶する。」

コ 「【0014】図1は本発明の光学鑑定装置の外観構成を示しており,紙幣,パスポート等の対象物1をステージ101に載置して対象物1の画像データを光学的に取得するための光学ユニット100と,光学ユニット100の制御を行うと共に,光学ユニット100からの読取データを処理演算するパソコン200とで構成されている。パソコン200は画像等を表示する表示部201と,操作部202としてのキーボード202A及びマウス202Bと,記憶部203及び制御演算部204を内蔵した本体ユニット210とで構成されている。」
引用文献5の上記記載事項を含め,引用文献5の全記載を総合すると,引用文献4には以下の事項(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「紙幣,パスポート等のセキュリティドキュメントたる対象物1をステージ101に載置して対象物1の画像データを光学的に取得するための光学ユニット100と,光学ユニット100の制御を行うと共に,光学ユニット100からの読取データを処理演算するパソコン200とで構成されており,
パソコン200は画像等を表示する表示部201と,操作部202としてのキーボード202A及びマウス202Bと,記憶部203及び制御演算部204を内蔵した本体ユニット210とで構成されている光学鑑定装置。」

引用文献6:特開平10-305562号公報
サ 「【0013】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して本発明による印刷物評価装置の実施形態を説明する。図1は第1実施形態の全体的な構成を示す図である。印刷物(図示せず)を載置するための原稿台12が下端が手前側となるように鉛直面に対して多少傾けられた状態で設けられている。原稿台12の上端には印刷物を位置決めするための当て部材14が設けられている。左右方向の位置決めは原稿台12の中央に描かれているセンターライン16により行われる。図示していないが,原稿台12の内部には,エアー吸着装置が内蔵され,原稿台12の表面にあけられた多数の孔を介して印刷物は原稿台12にエアー吸着され,固定される。センターラインで印刷物を位置決めすることにより,印刷物のサイズが変化しても,測定点の位置とインキキーとの対応関係の変更が容易である。また,用紙のサイズによらず,絵柄で中心位置が確認できるので,オフセット輪転機の場合のように印刷物が左右に蛇行した場合でも,対処可能である。」

シ 「【0043】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,測定点を座標入力し,測定器を用いて基準印刷物と評価対象印刷物との測定値を比較する印刷物評価装置において,両印刷物において対応する測定点の座標を正確に求めることができ,高精度な測定が可能である。さらに,多面付け印刷物においても,1面についてだけ基準点を指定すればよいので,測定点の決定が簡単にでき,短時間に精度よく評価ができる。」
引用文献6の上記記載事項を含め,引用文献6の全記載を総合すると,引用文献6には以下の事項(以下,「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「測定点を座標入力し,測定器を用いて基準印刷物と評価対象印刷物との測定値を比較する印刷物評価装置における,印刷物を載置するための原稿台12であって,
内部には,エアー吸着装置が内蔵され,原稿台12の表面にあけられた多数の孔を介して印刷物は原稿台12にエアー吸着され,固定される印刷物評価装置。」

引用文献7:特開平11-326056号公報
ス 「【0041】計測ヘッド7上には,濃度計,色度計または分光光度計が搭載されていて,ステッピングモータ6によるドラム軸方向(X-方向)への移動と,記録ドラム1の回転によるドラム円周方向(Y-方向)への相対移動とによって記録ドラム1上に巻き付けられているプリント画像の任意の位置(座標:(X,Y))を指定でき,その点の濃度および/または色度を測定することができる。なお,第1ないし第4の実施の形態に係るカラープルーファでは,計測ヘッド7には,分光光度計71(図3等参照)が搭載されていて,分光光度計71により測定された分光反射率R(λ)に基づいて濃度データおよび色度データが計算されるものとする。」
引用文献7の上記記載事項を含め,引用文献7の全記載を総合すると,引用文献7には以下の事項(以下,「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。
「記録ドラム1上に巻き付けられているプリント画像の任意の位置(座標:(X,Y))を指定でき,その点の濃度および/または色度を測定するための計測ヘッド7上には濃度計,色度計または分光光度計が搭載されており,測定された分光反射率R(λ)に基づいて濃度データおよび色度データが計算されるカラープルーファ。」

引用文献8:特表2009-531202号公報
セ 「【0031】
第1の測定装置22は,たとえば濃度計として,たとえば手持ち式濃度計として,または分光計として,または濃度測定および比色測定に関するコンビ型測定器具として形成されていて,たとえば印刷機に属する中央の制御スタンド27に提供可能であるか,または空間的に中央の制御スタンド27の傍に提供可能である。第1の測定装置22によって検出される少なくとも1つの測定値,つまり特定の測定値,たとえば特定のインキの,被印刷物21に被着された層厚または色相に関する,検出される実際値に基づいて,測定値に関する目標値で調整して,印刷機によって生産しようとする印刷の品質が評価される。評価しようとするシート21の検査は,シートに印刷された印刷像,または少なくとも印刷像に属する測定帯(Messbalken)に関係しており,この場合測定帯は,たとえば印刷像の外側でシート21の縁に配置されている。第1の測定装置22で検出される実際値が,測定値に関して予め規定された許容範囲よりも,所望の目標値から大きくずれる場合,印刷機の少なくとも1つの印刷装置01;02;03;04;06のインキ装置16における調節は次のように変化され,つまり,インキ装置16における調節を変化したあとで印刷されるシート21で求められる実際値が,先行して行われた測定における実際値よりも良好に,測定値に関して設定された目標値と一致するように変化される。少なくとも1つの印刷装置01;02;03;04;06のインキ装置16における,目標値/実際値比較に基づいて必要な調節は,特に,提供されるインキの層厚に関する,インキゾーンに配設された調節エレメントの調節である。第1の測定装置22は,測定値を,たとえば電気的なデータ接続部を介して中央の制御スタンド27に伝達することができ,この場合中央の制御スタンド27に,たとえば印刷前段階28の計算機によって,第1の測定装置22で検出される測定値に関する目標値が提供されるので,中央の制御スタンド27は,必要な目標値/実際値比較を,たとえば自動的に行うこともできる。」
引用文献8の上記記載事項を含め,引用文献8の全記載を総合すると,引用文献8には以下の事項(以下,「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「印刷機に属する中央の制御スタンド27に提供可能である第1の測定装置22は,濃度測定および比色測定に関するコンビ型測定器具として形成され,評価しようとするシート21の検査は,印刷像の外側でシート21の縁に配置されている印刷像に属する測定帯(Messbalken)に関係し,特定のインキの,被印刷物21に被着された層厚または色相に関する,検出される実際値に基づいて,測定値に関する目標値で調整して,印刷機によって生産しようとする印刷の品質が評価されるものであって,該実際値が,測定値に関して予め規定された許容範囲よりも,所望の目標値から大きくずれる場合,印刷機の少なくとも1つの印刷装置01;02;03;04;06のインキ装置16における調節は,インキ装置16における調節を変化したあとで印刷されるシート21で求められる実際値が,先行して行われた測定における実際値よりも良好に,測定値に関して設定された目標値と一致するように変化され,印刷前段階28の計算機によって,第1の測定装置22で検出される測定値に関する目標値が提供される印刷機。」

また,甲第2,4及び5号証には以下の記載がある。,
甲第2号証(特開2010-64422号公報)
ソ 「【0019】
以下,本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の印刷機1を示し,この印刷機1は,基本の4色であるシアン色(C),マゼンタ色(M),イエロー色(Y),ブラック色(Bk)の4色刷りが行えるように構成され,給紙部2,印刷部3及び排紙部4を備えている。前記給紙部2は,印刷用紙Sを印刷部3に供給することができる。また,前記印刷部3は,給紙部2から供給される印刷用紙Sを印刷することができ,前記4色のインキを備えた印刷ユニット3a?3dを備えている。さらに,前記排紙部4は,グリッパを備えるチェーン搬送装置からなり,印刷部3により印刷された印刷用紙が一枚ずつ排紙されて搬送された後,上下方向に積み重ねておくことができるように構成されている。尚,前記排紙部4のない印刷機であってもよいし,又,印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。」

タ「【0022】
前記印刷用圧胴のうちの印刷用紙の搬送方向終端に位置する印刷用圧胴7D上に,撮像装置であるCCDカメラ9と,分光測色計を内部に備えた分光ユニット10とを配置して,カラーバー内のカラーパッチの色濃度を測定する色濃度測定装置を構成している。
【0023】
前記CCDカメラ9は,平面的な画像を捉えることができる比較的低コストな色測定器であり,印刷用紙の全領域を撮像して,全てのカラーパッチの相対的な色濃度を測定するものである。また,分光測色計は,各カラーパッチの絶対的な色を測定できる高精度な色測定器であり,部品点数が多く構成が複雑になり,コストも高くなる。
【0024】
前記分光ユニット10は,図2に示すように,リニアアクチュエータ11により印刷用紙の幅方向に(印刷用圧胴7Dの幅方向全域に渡って)移動自在に構成され,リニアアクチュエータ11を駆動することによって,搬送されてくる印刷用紙に印刷されているカラーバーを構成する全て又は特定の複数の基本カラーパッチの色測定を順次行えるように構成している。」

タ 「【0035】
前記RGBデータから計算した濃度値を前記分光測色データの濃度値に合わせ込んで(ステップS29),濃度の合わせ込み制御が完了する。前述したように,CCDカメラ9の濃度値を高精度な分光測色計の濃度値に合うように補正することによって,比較的安価なCCDカメラ9により全てのカラーパッチの測色データを高精度なものにすることができる。」

チ 「【0038】
重要キー管理を行う工程は,CCDカメラ9からの撮像情報に基づいてカラーバーの位置を検出し(ステップS6),印刷用紙の色管理を行う上で重要箇所となる特定領域に印刷された画像の特定色に対応するインキツボキー位置のカラーバー(カラーパッチ)へ位置するように分光ユニット10の測定ヘッドを左右方向に移動させる(ステップS7)。前記移動が完了すると(ステップS8),前記重要箇所となるインキツボキー位置のカラーパッチのベタ濃度値及びグレーパッチのLab値を実測する(ステップS9)。これら2つの実測値と前記予め定めた2つの目標値との色差が前記設定した許容範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS10)。
【0039】
前記色差が許容範囲内にあれば,現時点の目標値や条件を維持して印刷用紙管理(色管理)を継続し(ステップS11),印刷が終了したかどうかを判断し(ステップS12),印刷が終了するまでCCDカメラ9により撮像される色データが目標値になるようにインキ量を調整しながら印刷を続行する(ステップS13)。」

ツ 「【0041】
前記通常管理を行う工程は,CCDカメラ9により撮像されたRGBデータを濃度変換して,色データ(濃度データ)を取得し,その色データが目標値になるようにインキ量を調整する(ステップS13)。調整後は,前述同様に,現時点の目標値や条件を維持して印刷用紙管理を継続し(ステップS11)し,印刷が終了したかどうかを判断し(ステップS12),印刷が終了するまでCCDカメラ9により撮像される色データが目標値になるようにインキ量を調整しながら印刷を続行し(ステップS13),印刷が終了するまで行われる。」
甲第2号証における上記記載事項を含め,甲第2号証の全記載を総合すると,甲第2号証には以下の事項(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「シアン色(C),マゼンタ色(M),イエロー色(Y),ブラック色(Bk)の4色刷りが行える,給紙部2,印刷部3及び排紙部4を備えた印刷機1であって,
印刷用紙の搬送方向終端に位置する印刷用圧胴7D上に,撮像装置であるCCDカメラ9と,分光測色計を内部に備えた分光ユニット10とを配置して,カラーバー内のカラーパッチの色濃度を測定する色濃度測定装置を構成し,
CCDカメラ9は,印刷用紙の全領域を撮像して,全てのカラーパッチの相対的な色濃度を測定するものであり,分光測色計は,各カラーパッチの絶対的な色を測定できる高精度な色測定器であって,
分光ユニット10は,リニアアクチュエータ11により印刷用紙の幅方向に移動自在に構成され,搬送されてくる印刷用紙に印刷されているカラーバーを構成する全て又は特定の複数の基本カラーパッチの色測定を順次行い,
RGBデータから計算した濃度値を前記分光測色データの濃度値に合わせ込んで,濃度の合わせ込み制御が完了し,
CCDカメラ9からの撮像情報に基づいてカラーバーの位置を検出し,印刷用紙の色管理を行う上で重要箇所となる特定領域に印刷された画像の特定色に対応するインキツボキー位置のカラーバー(カラーパッチ)へ位置するように分光ユニット10の測定ヘッドを左右方向に移動させ,重要箇所となるインキツボキー位置のカラーパッチのベタ濃度値及びグレーパッチのLab値を実測して,これら2つの実測値と予め定めた2つの目標値との色差が前記設定した許容範囲内にあるかどうかを判断し,印刷が終了するまでCCDカメラ9により撮像される色データが目標値になるようにインキ量を調整しながら印刷を続行する印刷機1。」

甲第4号証(特開2006-68948号公報)
テ 「【0038】
本実施形態の新聞用オフセット輪転機は,最下流の印刷ユニット2dのさらに下流にラインセンサ型IRGB濃度計1を備えている。ラインセンサ型IRGB濃度計1は印刷シート8上の絵柄の色を印刷幅方向ライン状にI(赤外光),R(赤),G(緑),B(青)の反射濃度(混色網濃度)として計測する計測器であり,印刷シート8全体の反射濃度を計測したり,任意の位置の反射濃度を計測したりすることが可能である。本実施形態の新聞用オフセット輪転機は両面刷りなので,ラインセンサ型IRGB濃度計1は印刷シート8の搬送経路を挟むようにして表裏両側に配置され,表裏両面の反射濃度を計測できるようになっている。
【0039】
ラインセンサ型IRGB濃度計1により計測された反射濃度は演算装置10に送信される。演算装置10はインキ供給量の制御データを演算する装置であり,ラインセンサ型IRGB濃度計1で計測された反射濃度に基づいて演算を行い,印刷シート8の絵柄の色を目標色に一致させるためのインキキー7の開度を演算している。ここで,図2は本発明の一実施形態にかかる新聞用オフセット輪転機の絵柄色調制御装置の概略構成を示す図であると同時に,演算装置10の色調制御機能に着目した機能ブロック図である。
【0040】
演算装置10は,印刷機とは離れて設置されたDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)11とPC(パソコン)12とから構成され,PC12には色変換部14,インキ供給量演算部15,オンライン制御部16及びキー開度リミッタ演算部17としての機能が割り当てられている。演算装置10の入力側には,ラインセンサ型IRGB濃度計1が接続され,出力側には印刷機内蔵の制御装置20が接続されている。制御装置20は,インキキー7のキーゾーン毎にインキ供給量を調整するインキ供給量調整手段として機能するものであり,インキキー7を開閉させる図示しない開閉装置を制御しており,各印刷ユニット2a,2b,2c,2dのインキキー7毎に独立してキー開度を調整することができる。また,演算装置10には,紙面に対する印刷絵柄を表示する表示装置(印刷エリアモニタ)が接続されており,この印刷エリアモニタ40がタッチパネルとしての機能も持っている。このタッチパネル40により,ラインセンサ型IRGB濃度計1で撮像された印刷シート8の印刷面が表示され,印刷面上の任意の領域を指で選択できるようになっている。」

ト 「【0049】
ステップS312では,インキ供給単位幅毎に各インキ色に対応する注目点をそれぞれ設定する。注目点の設定方法としては,新聞社の本社から送信されたビットマップデータを用いてタッチパネル40に新聞紙面の絵柄画像を表示し,このタッチパネル40に表示された新聞紙面上の特定点をオペレータが任意に選択する方法がある。また,各色・各画素の網点面積率に対して最も自己相関が大きい画素を演算して自動抽出し,注目点(注目画素)として自動設定する方法もある。具体的には,例えば,シアンの自己相関感度Hcは,画素面積率データ(c,m,y,k)を用いて,“Hc=c2/(c+m+y+k)”で表すことができ,この自己相関感度Hcの値が最も高い画素がシアンの注目点となる。同様に他のインキ色についても自己相関感度が最も高い画素を演算し,その画素を注目点として設定する。」

ナ「【0051】
DSP11は,ステップS20として,各画素の反射光量i’,r’,g’,b’について所定の印刷枚数単位で移動平均を行うことで,ノイズ成分を除去した各画素の反射光量i,r,g,bを算出する。
そして,ステップS30として,ステップS20で演算された各画素の反射光量i,r,g,bを用いて注目点の実混色網濃度I,R,G,Bを演算する。DSP11はタッチパネル40に接続されており,タッチパネル40には製版データの絵柄画像(製版画像)が表示される。注目点はこのタッチパネル40に表示された製版画像上の特定点を任意に選択することで指定され,演算装置10のDSP11へ入力される。注目点とは印刷シート8上の特に色を一致させたい絵柄の位置であり,特定の一画素,或いは,連続する一塊の複数画素を指定する。オペレータにより注目点が指定されていないキーゾーンについては,DSP11が注目点を自動設定する。この自動設定は,製版画像全体の各インキ色の混色網濃度の分布から,インキ色毎に最も濃度感度の高い画素(最も発色の大きい画素)を演算して自動抽出することにより行う。例えば,キーゾーン絵柄が4色で印刷されている場合,注目点(目標色)は墨,藍,紅,黄の4点となり,キーゾーン内において,その4色が独立にコントロールされることになる。また,例えばオペレータが指定した任意の絵柄ポイント中に無い色及び絵柄面積の少ない色は自動で設定することも出来る。」

ニ 「【0073】
つまり,図9(b)に示すように,製版データの印刷画像枠外の予め設定された位置に位置ズレ検出用の見当マークを予め書き込んでおき刷版を作成し,この刷版を用いて印刷を行なう印刷機の例えば濃度計1の近傍の予め設定された位置に,図9(c)に示すように,この見当マークを検出するセンサとして,見当マークを中心にその近傍をスポット的に撮影するカメラ70を印刷面に接近させて設置する。また,本来,位置すべき見当マークの位置(即ち,製版画像に付設された理論上の見当マーク位置)M1をカメラ画像上で把握できるようになっている。例えば,カメラ画像の中心に本来,位置すべき見当マークが来るように,製版データの検討マーク位置とカメラ70の位置とを設定しておく。」
甲第4号証における上記記載事項を含め,甲第4号証の全記載を総合すると,甲第4号証には以下の事項(以下,「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「最下流の印刷ユニット2dのさらに下流にラインセンサ型IRGB濃度計1を備えている新聞用オフセット輪転機であって,ラインセンサ型IRGB濃度計1は印刷シート8上の絵柄の色を印刷幅方向ライン状にI(赤外光),R(赤),G(緑),B(青)の反射濃度(混色網濃度)として計測する計測器であり,
該ラインセンサ型IRGB濃度計1により計測された反射濃度からインキ供給量の制御データを演算して,印刷シート8の絵柄の色を目標色に一致させるためのインキキー7の開度を演算する演算装置10は,印刷機とは離れて設置されたDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)11とPC(パソコン)12とから構成され,PC12には色変換部14,インキ供給量演算部15,オンライン制御部16及びキー開度リミッタ演算部17としての機能が割り当てられ,
また,演算装置10には,タッチパネルとしての機能を有する紙面に対する印刷絵柄を表示する印刷エリアモニタ4が接続され,該印刷エリアモニタ40ラインセンサ型IRGB濃度計1で撮像された印刷シート8の印刷面が表示され,印刷面上の任意の領域を指で選択できるようになっており,
製版データの印刷画像枠外の予め設定された位置に位置ズレ検出用の見当マークを予め書き込んでおき刷版を作成し,この刷版を用いて印刷を行なう印刷機の濃度計1の近傍の予め設定された位置に,この見当マークを検出するセンサとして,見当マークを中心にその近傍をスポット的に撮影するカメラ70を印刷面に接近させて設置する新聞用オフセット輪転機。」

甲第5号証(米国特許出願公開第2009/0107354号明細書)
ヌ 「the operating desk 1 has an operating element in the form of a touchscreen 11 , with which settings on the printing press 2 can be carried out. The touchscreen 11 is connected to the control computer 15 , which in turn is connected to control components of the printing press 2 through a communications link 3 .」([0026]欄内第16?21行)
(操作卓1は,タッチスクリーン11の形式の操作要素を持っており,その操作要素を用いて,印刷機2でのセッティングを実行できる。タッチスクリーン11は制御コンピュータ15に接続され,さらに,制御コンピュータ15が,通信リンク3を介して,印刷機2の制御構成要素に接続される。)

ネ 「The position of the sheet brakes 12 can be set at the touchscreen 11 of the operating desk 1 . A relative position of the sheet brakes 12 or other components with respect to the sheet-shaped printing material 9 and/or a printed image 13 on the printing material 9 , can then be represented on the large monitor 10 . 」([0027]欄内第14?19行)
(シート・ブレーキ12の位置は,操作卓1のタッチスクリーン11にてセットできる。次に,シート状の印刷材料9および/または,印刷材料9上の印刷画像13に対して,シート・ブレーキ12または他の構成要素の相対的位置は,大型モニタ10上に表現できる。)

ノ 「a representation of ink distribution and a result of an influence of lateral distribution in inking units of the printing units 4 in the printing press 2 can be represented on the large monitor 10 .」([0031]欄内下から第9?6行)
(インキ分布の表現と,印刷機2内の印刷ユニット4のインカーでの側方分布の影響の結果が,大型モニタ10上に表示されることもある。)
甲第5号証における上記記載事項を含め,甲第5号証の全記載を総合すると,甲第5号証には以下の事項(以下,「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「タッチスクリーン11の形式の操作要素を持っている操作卓1は,その操作要素を用いて,印刷機2でのセッティングを実行し,
タッチスクリーン11は,通信リンク3を介して,印刷機2の制御構成要素に接続される制御コンピュータ15に接続され,
シート・ブレーキ12の位置は,操作卓1のタッチスクリーン11にてセットでき,シート状の印刷材料9および/または,印刷材料9上の印刷画像13に対して,シート・ブレーキ12または他の構成要素の相対的位置は,大型モニタ10上に表現でき,
インキ分布の表現と,印刷機2内の印刷ユニット4のインカーでの側方分布の影響の結果が,大型モニタ10上に表示される印刷機2。」

4.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 理由1について(特許法第29条第2項)
取消理由の理由1は,請求項8,11,16乃至18に対して通知されたものであるが,平成29年12月14日付け訂正請求により,請求項8,11が削除され,請求項16乃至18が,いずれも請求項1を引用していることから,事案に鑑み,まず,本件発明1と引用発明1とを対比し、その上で、請求項16乃至18について判断することとする。

後者の「被印刷体3」は色に関して測定されるのであるから,前者の「サンプル印刷シート(S)」に相当する。
後者の「測定テーブル2」は,その上に色に関して測定される被印刷体3を載置するのであるから,前者の「コンソール(10)」に相当し,後者の「測定テーブル2」は,前者の「支持面(10a)」に相当する構成を有していることは自明である。
後者の「測定バー1」は,測定テーブル2の上にある被印刷体の上方でX方向へ移動することができるから,前者の「可動センサビーム(200)」に相当する。
後者の「測定ヘッド8」は,測定バー1に設けられ,色に関する測定を行うものであるから,前者の「多目的測定装置(20)」に相当する。
また,後者の「測定ヘッド8」は,Y方向に移動することができるから,前者の「センサヘッド(21)」にも相当する。
後者の「スキャン式測定装置11」は,スキャナのように被印刷体3の印刷画像全体を認識するものであるから,前者の「(選択部分の画像を撮影する少なくとも1の)カメラ(22)」に相当する。
後者の「プレビューセンサ9」は,「明暗差を検出するための高い幾何学的解像度を有するラインセンサとして構成されて,被印刷体3の色測定用区画13の位置,すなわちその始まりと終わりなどを正確に認識する」ことが可能であり,「分光測定装置10」は,「色に関する高い分光解像度で測定を行うことで,正確な色測定値を検出」するものであるから,後者の「プレビューセンサ9」及び「分光測定装置10」は前者の「る測色センサ(23)」に相当する。
後者の「モニタ5」は,前者の「ディスプレイ(30)」に相当する。
後者の「コンピュータ4」は,前者の「制御処理ユニット(40)」に相当する。
後者の「被印刷体3の色測定用区画13」は,前者の「サンプル印刷シート(S)の選択部分」に相当する。
後者の「装置」は,測定テーブル2の上にある被印刷体3を測定しているから,オフライン検査を行っていることは自明であり,該測定は色に関する測定であるから,後者の「装置」は,,前者の「装置」に相当する。
以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置において,当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって,前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と,前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色,比色測定,および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22,23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており,
当該装置(1)は,前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え,当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ,前記複数のセンサ(22,23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており,これにより,前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する,あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ,
前記制御処理ユニット(40)は,x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており,
前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと,前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含む装置。」
で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点1
本件発明1は「紙幣などの印刷されたセキュリティ文書」を測定対象としているのに対して,引用発明1では,どのような文書(被印刷体)であるのかが不明な点。
相違点2
本件発明1のディスプレイが,「サンプル印刷シートの上に可動センサビームおよびセンサヘッドを配置するための制御処理ユニットの入力として機能するよう構成された接触感知領域を有するタッチスクリーン型ディスプレイ」であるのに対して,引用発明1のモニタ5は少なくとも「タッチスクリーン型ディスプレイ」ではない点。
相違点3
本件発明1のディスプレイがタッチスクリーン型ディスプレイであることに起因して,本件発明1のタッチスクリーン型ディスプレイが,「多目的測定装置の動作を制御し,様々な動作モード間で前記多目的測定装置を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成され,前記動作モードは,カメラが作動してサンプル印刷シートの選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと,測色センサが作動して前記サンプル印刷シートの選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含」んでいるのに対して,引用発明1ではそうではない点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み,相違点3について検討する。
引用文献2乃至8において,「タッチスクリーン型ディスプレイ(を有するシートのオフライン検査および色測定をする装置)」について記載も示唆もされていないから,当然に相違点3に係る本件発明1の発明特定事項についても記載も示唆もない。
また,甲2号証には,印刷機における入力デバイスとしての「タッチスクリーン型ディスプレイ」について記載も示唆もないから,当然に相違点3に係る本件発明1の発明特定事項についても記載も示唆もなく,甲4,5号証において,印刷機における入力デバイスとして「タッチスクリーン型ディスプレイ」は記載されているものの,相違点3に係る本件発明1の発明特定事項については記載も示唆もない。
そして,相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないし,当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
そして,本件発明1は,相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えることによって,「「ユーザは,例えば第1オブジェクト23が縦通路20に沿って移動している間に,表示部12に触れたまま指を比較的短い距離だけ動かすことによって,第1オブジェクト23が他の横通路19bまで移動した後に第1オブジェクト23をXw軸に沿った任意の方向に移動可能」となり「移動ユーザ操作の煩雑さが低減する」」(段落【0031】)との作用効果を奏するものである。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,請求項1に係る発明は,引用文献1乃至8に記載された各引用発明,また甲2,4及び5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また,請求項16乃至18はいずれも,本件発明1である請求項1に係る発明を引用しており,本件発明1が引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,本件発明1に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項16乃至18に係る係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
請求項8及び11については,平成29年12月14日付け訂正請求による訂正のとおり,削除された。

イ 理由2について(特許法第36条第4項第1号)
(ア) 請求項9について,異議申立人は「前記サンプル印刷シート(S)の位置および/または回転をどのように検出するか」について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら,平成29年12月14日付け意見書で特許権者が主張するように,本件の発明の詳細な説明の段落【0046】,【0086】,【0087】の各記載,及び当業者における技術常識を踏まえれば,「サンプル印刷シート(S)の位置および/または回転の検出」に関して,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって,本件発明9は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(イ) 請求項10について,異議申立人は「前記サンプル印刷シート(S)の回転をどのように検出するか」について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら,平成29年12月14日付け意見書で特許権者が主張するように,本件の発明の詳細な説明の段落【0088】の記載,及び当業者における技術常識を踏まえれば,「サンプル印刷シート(S)の回転の検出」に関して,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって,本件発明10は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(ウ) 請求項12について,異議申立人は「自動的に取り込んだ色制御フィールド(CF)の画像の何を識別し,かつ識別を具体的にどのような方法で行うのか」ついて,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら,平成29年12月14日付け意見書で特許権者が主張するように,本件の発明の詳細な説明の段落【0091】,【0092】,【0093】の各記載,及び当業者における技術常識を踏まえれば,「自動的に取り込んだ色制御フィールド(CF)の画像の識別対象」及び「識別の具体的な方法」に関して,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって,本件発明12は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
また,本件発明12が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていることから,同様に請求項12を引用する請求項13に係る本件発明13も,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

(エ) 請求項14について,異議申立人は「サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)をどのように割り当てられるか」について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら,平成29年12月14日付け意見書で特許権者が主張するように,本件の発明の詳細な説明の段落【0089】の記載,及び当業者における技術常識を踏まえれば,「サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)の割り当て」に関して,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって,本件発明14は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(オ) 請求項15について,異議申立人は「印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)をどのように割り当てられるか」及び「規定の色を対応する色制御フィールド(CF)に自動的にどのように割り当てるのか」について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。
しかしながら,平成29年12月14日付け意見書で特許権者が主張するように,本件の発明の詳細な説明の段落【0092】の記載,及び当業者における技術常識を踏まえれば,「印刷機の対応するインクユニット(I1-I12,I13-I20,図5b)の割り当て」及び「規定の色を対応する色制御フィールド(CF)への自動的な割り当て」に関して,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
したがって,本件発明15は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

よって,請求項9,10及び12乃至15に係る特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人梅津雅由は,訂正前の特許請求の範囲に関し,特許異議申立書において,本件特許発明1乃至8,11,16乃至18は甲第1乃至6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと主張している。
そして,取消理由を通知した本件特許発明8,11,16乃至18以外の本件特許発明1乃至7について,以下に検討する。
請求項1に係る発明である本件発明1は,「4.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 理由1について(特許法第29条第2項)」で検討したとおり,引用文献1乃至8に記載された各引用発明,また甲2,4及び5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また,請求項2,6及び7はいずれも,本件発明1である請求項1に係る発明を引用しており,上述のとおり,本件発明1が引用文献1乃至8に記載された各引用発明,また甲2,4及び5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。以上,本件発明1に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項2,6及び7に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

請求項3について検討する。
請求項3は,請求項1の「前記タッチスクリーン型ディスプレイ(30)がさらに,前記多目的測定装置(20)の動作を制御し,様々な動作モード間で前記多目的測定装置(20)を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成され,前記動作モードは,前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと,前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含む」の部分が,
「当該装置(1)が,複数の行及び列(図2)に配置された個々の多色セキュリティ印刷(P)のマトリクスからなる有効印刷領域(EF)を表すサンプル印刷シート(S)を検査するように設計されており,」,及び
「前記制御処理ユニット(40)および前記ディスプレイ(30)の接触感知領域(31)は,前記タッチスクリーン型ディスプレイ上で選択すると,前記個々の多色セキュリティ印刷(P)の所望の1つまたはその任意の部分の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置することができるように構成されている」となっている点でのみ,請求項1と相違している。
したがって,前述した請求項1に係る本件発明1と引用発明1における相違点を踏まえて,請求項3に係る本件発明3と引用発明1を対比すると,本件発明3と引用発明1とは以下の点で相違する。
相違点1
本件発明3は「紙幣などの印刷されたセキュリティ文書」を測定対象としているのに対して,引用発明1では,どのような文書(被印刷体)であるのかが不明な点。
相違点2
本件発明3のディスプレイが,「サンプル印刷シートの上に可動センサビームおよびセンサヘッドを配置するための制御処理ユニットの入力として機能するよう構成された接触感知領域を有するタッチスクリーン型ディスプレイ」であるのに対して,引用発明1のモニタ5は少なくとも「タッチスクリーン型ディスプレイ」ではない点。
相違点3
本件発明3のディスプレイがタッチスクリーン型ディスプレイであることに起因して,本件発明3のタッチスクリーン型ディスプレイが,「装置が,複数の行及び列に配置された個々の多色セキュリティ印刷のマトリクスからなる有効印刷領域を表すサンプル印刷シートを検査するように設計」されているのに対して,引用発明1ではそうではない点。
相違点4
本件発明3のディスプレイがタッチスクリーン型ディスプレイであることに起因して,本件発明3のタッチスクリーン型ディスプレイが,「制御処理ユニットおよびディスプレイの接触感知領域は,タッチスクリーン型ディスプレイ上で選択すると,個々の多色セキュリティ印刷の所望の1つまたはその任意の部分の上に可動センサビームおよびセンサヘッドを配置することができるように構成」されているのに対して,引用発明1ではそうではない点。

事案に鑑み,相違点4について検討する。
引用文献2乃至8において,「タッチスクリーン型ディスプレイ(を有するシートのオフライン検査および色測定をする装置)」について記載も示唆もされていないから,当然に相違点4に係る本件発明1の発明特定事項についても記載も示唆もない。
また,甲2号証には,印刷機における入力デバイスとしての「タッチスクリーン型ディスプレイ」について記載も示唆もないから,当然に相違点4に係る本件発明1の発明特定事項についても記載も示唆もなく,甲4,5号証において,印刷機における入力デバイスとして「タッチスクリーン型ディスプレイ」は記載されているものの,相違点4に係る本件発明1の発明特定事項については記載も示唆もない。
そして,相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないし,当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
そして,本件発明1は,相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えることによって,「「ユーザは,例えば第1オブジェクト23が縦通路20に沿って移動している間に,表示部12に触れたまま指を比較的短い距離だけ動かすことによって,第1オブジェクト23が他の横通路19bまで移動した後に第1オブジェクト23をXw軸に沿った任意の方向に移動可能」となり「移動ユーザ操作の煩雑さが低減する」」(段落【0031】)との作用効果を奏するものである。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,請求項3に係る発明は,引用文献1乃至8に記載された各引用発明,また甲2,4及び5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また,請求項4及び5はいずれも,本件発明3である請求項3に係る発明を引用しており,本件発明3が引用文献1乃至8に記載された各引用発明,また甲2,4及び5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない以上,本件発明3に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項4及び5に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1乃至7,9,10,12乃至18に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1乃至7,9,10,12乃至18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項8及び11に係る特許は,訂正により削除されたため,本件特許の請求項8及び11に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しないことになり,却下された。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において、当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって、前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と、前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色、比色測定、および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22、23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており、
当該装置(1)は、前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え、当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ、前記複数のセンサ(22、23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており、これにより、前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する、あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ、
前記制御処理ユニット(40)は、x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており、
前記ディスプレイ(30)が、前記サンプル印刷シート(S)の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置するための前記制御処理ユニット(40)の入力として機能するよう構成された接触感知領域(31)を有するタッチスクリーン型ディスプレイであり、
前記タッチスクリーン型ディスプレイ(30)がさらに、前記多目的測定装置(20)の動作を制御し、様々な動作モード間で前記多目的測定装置(20)を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成され、前記動作モードは、前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと、前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含む
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記可動センサビーム(200)が前記支持面(10a)に近接して配置された縦アームを形成し、前記可動センサビーム(200)と前記支持面(10a)の間の空間は数ミリメートルであって、
前記支持面(10a)と、その上に配置された前記サンプル印刷シート(S)に向かって前記可動センサビーム(200)に下方開口部のみを残すように、前記センサヘッド(21)および複数のセンサ(22、23)が前記可動センサビーム(200)内に完全に囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項3】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において、当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって、前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と、前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色、比色測定、および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22、23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており、
当該装置(1)は、前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え、当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ、前記複数のセンサ(22、23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており、これにより、前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する、あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ、
前記制御処理ユニット(40)は、x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており、
前記ディスプレイ(30)が、前記サンプル印刷シート(S)の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置するための前記制御処理ユニット(40)の入力として機能するよう構成された接触感知領域(31)を有するタッチスクリーン型ディスプレイであり、
当該装置(1)が、複数の行及び列(図2)に配置された個々の多色セキュリティ印刷(P)のマトリクスからなる有効印刷領域(EF)を表すサンプル印刷シート(S)を検査するように設計されており、
前記制御処理ユニット(40)および前記ディスプレイ(30)の接触感知領域(31)は、前記タッチスクリーン型ディスプレイ上で選択すると、前記個々の多色セキュリティ印刷(P)の所望の1つまたはその任意の部分の上に前記可動センサビーム(200)および前記センサヘッド(21)を配置することができるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置(1)において、前記タッチスクリーン型ディスプレイ(30)がさらに、前記多目的測定装置(20)の動作を制御し、様々な動作モード間で前記多目的測定装置(20)を切り換えるためのインタフェースとして機能するよう構成されており、
前記動作モードは、前記カメラ(22)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1の画像取得モードと、前記測色センサ(23)が作動して前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施する少なくとも1の測色モードとを含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において、前記可動センサビーム(200)が前記支持面(10a)に近接して配置された縦アームを形成し、前記可動センサビーム(200)と前記支持面(10a)の間の空間は数ミリメートルであって、
前記支持面(10a)と、その上に配置された前記サンプル印刷シート(S)に向かって前記可動センサビーム(200)に下方開口部のみを残すように、前記センサヘッド(21)および複数のセンサ(22、23)が前記可動センサビーム(200)内に完全に囲まれていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置(1)において、
前記カメラ(22)は、白色可視光、赤外(IR)光、および紫外(UV)光の下で前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影することができ、前記カメラ(22)の動作モードは、可視光動作モード、赤外動作モード、および紫外動作モードの間で選択的に切り換えることができ(図5f-5k)、
前記多目的測定装置(20)はさらに、前記カメラ(22)の動作モードに依存して個々に作動する複数の光源(24、25、26)を具え、これらの光源は、白色光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第1の光源(24)と、赤外(IR)光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第2の光源(25)と、紫外(UV)光で前記サンプル印刷シート(S)を照射する第3の光源(26)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置(1)において、前記カメラ(22)はカラーカメラ、好適にはRGBカメラであって、前記カメラ(22)によって取り込まれた画像の色成分の各1つは任意に、前記ディスプレイ(30)において個々にかつ別個に表示することができることを特徴とする装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置(1)において、前記サンプル印刷シート(S)の位置および/または回転は、前記カメラ(22)によって初期設定段階で自動的に決定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置(1)において、一定許容範囲内の前記サンプル印刷シート(S)の回転は、前記可動センサビーム(200)がx軸に沿って移動するときに前記カメラ(22)で撮影される画像のy方向位置を調整することによって補正されることを特徴とする装置。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
請求項1乃至7、9、10の何れか一項に記載の装置(1)において、前記制御処理ユニット(40)が、前記カメラ(22)を制御し、前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)の画像を自動的に取り込んで識別するように構成されており、
前記色制御フィールド(CF)は、印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表す(図2-4および5c)ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置(1)において、前記制御処理ユニット(40)が、前記測色センサ(23)を制御し、前記色制御フィールド(CF)において自動で色測定を実施するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1乃至7、9、10、12、13の何れか一項に記載の装置(1)において、前記制御処理ユニット(40)が、前記測色センサ(23)を制御し、前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)において色測定を実施するように構成され、
前記色制御フィールド(CF)は、印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表しており(図2-4)、
前記サンプル印刷シート(S)および前記色制御フィールド(CF)に適用された様々なインクに対応する規定の色が、セットアップ時に予め規定されて前記制御処理ユニット(40)に入力され、前記サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12、I13-I20、図5b)に割り当てられることを特徴とする装置。
【請求項15】
紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷されたシートのオフライン検査および色測定をする装置(1)において、当該装置が:
サンプル印刷シート(S)を支持する支持面(10a)を有するコンソール(10)と;
多目的測定装置(20)であって、前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を撮影する少なくとも1のカメラ(22)と、前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で分光測色、比色測定、および/または濃度測定を実施する測色センサ(23)とを含む複数のセンサ(22、23)を具えている多目的測定装置(20)と;
前記カメラ(22)によって撮影された画像および前記測色センサ(23)によって実施された測定結果を表示するためのディスプレイ(30)と;
前記多目的測定装置(20)および前記ディスプレイ(30)に接続された制御処理ユニット(40)とを具えており、
当該装置(1)は、前記多目的測定装置(20)を収容する可動センサビーム(200)を具え、当該可動センサビーム(200)は前記コンソール(10)の支持面(10a)の上および前記支持面(10a)上に配置された前記サンプル印刷シート(S)の表面全体の上をx軸に沿って移動することができ、前記複数のセンサ(22、23)は前記可動センサビーム(200)内をy軸に沿って移動可能な共通のセンサヘッド(21)に取り付けられており、これにより、前記多目的測定装置(20)は前記カメラ(22)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択部分の画像を選択的に撮影する、あるいは前記測色センサ(23)によって前記サンプル印刷シート(S)の選択位置で測定を実施することができ、
前記制御処理ユニット(40)は、x軸に沿った前記可動センサビーム(200)の移動およびy軸に沿った前記センサヘッド(21)の移動を制御するように構成されており、
前記制御処理ユニット(40)が、前記測色センサ(23)を制御し、前記サンプル印刷シート(S)上に設けられた色制御フィールド(CF)において色測定を実施するように構成され、
前記色制御フィールド(CF)は、印刷時に前記サンプル印刷シート(S)に適用された様々なインクを表しており(図2-4)、
前記サンプル印刷シート(S)および前記色制御フィールド(CF)に適用された様々なインクに対応する規定の色が、セットアップ時に予め規定されて前記制御処理ユニット(40)に入力され、前記サンプル印刷シート(S)を印刷するのに使用された印刷機の対応するインクユニット(I1-I12、I13-I20、図5b)に割り当てられ、
前記制御処理ユニット(40)が、前記サンプル印刷シート(S)の印刷前のデータに基づいて、あるいは前記多目的測定装置(20)によって前記色制御フィールド(CF)に実施される測定に基づいて、前記規定の色を対応する色制御フィールド(CF)に自動的に割り当てるよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1乃至7、9、10、12乃至15の何れか一項に記載の装置(1)において、前記コンソール(10)が、吸引によって前記支持面(10a)に前記サンプル印刷シート(S)を保持するための複数の吸引穴(105)を有する吸引テーブル(100)を具えていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1乃至7、9、10、12乃至16の何れか一項に記載の装置(1)において、前記多目的測定装置(20)の前記複数のセンサ(22、23)を較正するために、少なくとも1の較正パターン(110)が前記支持面(10a)に設けられていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1乃至7、9、10、12乃至17の何れか一項に記載の装置(1)において、前記測色センサ(23)が、分光測色または比色測定を実施する分光光度計または分光比色計と、前記サンプル印刷シート(S)の光学密度測定を実施する濃度計とを兼ね備えることを特徴とする装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-04-24 
出願番号 特願2014-501765(P2014-501765)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B41F)
P 1 651・ 121- YAA (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉山 輝和  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
吉村 尚
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6049096号(P6049096)
権利者 カーベーアー-ノタシ ソシエテ アノニム
発明の名称 紙幣などの印刷されたセキュリティ文書を製造するために印刷シートをオフライン検査および色測定する装置  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

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