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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1341086 |
異議申立番号 | 異議2018-700170 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-23 |
確定日 | 2018-05-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6194257号発明「マグネシアカーボンれんが」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6194257号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第6194257号は、平成26年1月29日(優先権主張 平成25年3月6日)に出願された特願2014-14609号の特許請求の範囲に記載された請求項1?4に係る発明について、平成29年8月18日に設定登録がされ、同年9月6日に登録公報の発行がされたものであり、その後、全請求項に係る特許に対し、平成30年2月23日付けの特許異議の申立てが「品川リフラクトリーズ株式会社」(以下、「申立人」という。)によりされたものである。 第2.本件発明の認定 本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 【請求項1】 マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、更に、粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下、粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の炭化硼素を添加金属Al量に対して1質量%以上50質量%以下含有し、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が35質量%以上、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であるマグネシアカーボンれんが。 【請求項2】 1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後の見かけ気孔率が7.8%以下である請求項1に記載のマグネシアカーボンれんが。 【請求項3】 粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する請求項1又は2に記載のマグネシアカーボンれんが。 【請求項4】 結合材として、残炭率が48%以上のフェノール樹脂を使用した請求項1乃至3のいずれかに記載のマグネシアカーボンれんが。 第3.申立理由の概要 申立人は、証拠として、下記の甲第1?5号証(以下、「甲1?5」という。)を提出し、本件発明1?4は、甲1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。 甲1:特開平1-270564号公報 甲2:特願2014-14606号の審査過程で提出された意見書 甲3:国際公開第2008/56655号 甲4:特開2010-105891号公報 甲5:特開平8-81256号公報 第4.当審の判断 1.甲1の記載 摘示1(【特許請求の範囲】) 「1.マグネシアクリンカと黒鉛とを夫々70?90重量%と10?30重量%含有してなり、マグネシアクリンカの粒度構成が、粒径1mm以上の粗粒25?40重量%と、粒径1?0.2mmの範囲にある中間粒30?45重量%と、0.2mm以下の微粒15?25重量%であることを特徴とする緻密質マグネシアカーボンれんが。」 摘示2(第1表の1) 「 」 2.甲1発明 甲1には、粒径1mm以上の粗粒と粒径1?0.2mmの範囲にある中間粒と0.2mm以下の微粒からなるマグネシアクリンカと黒鉛を含有してなる緻密質マグネシアカーボンれんが(摘示1)の具体例である「試料4」(摘示2)として、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「マグネシアクリンカと黒鉛とを夫々80重量%と20重量%含有してなり、マグネシアクリンカの粒度構成が、粒径1mm以上の粗粒35重量%と、粒径1?0.2mmの範囲にある中間粒30重量%と、0.2mm以下の微粒15重量%である緻密質マグネシアカーボンれんが。」 3.発明の対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「マグネシアクリンカ」が本件発明1の「マグネシア原料」に相当し、粒径0.2mm以下のマグネシアクリンカの微粒が15重量%ということは、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下ということになるから、本件発明1のうち、 「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、 マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、更に、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下配合された、 マグネシアカーボンれんが。」 の点は、甲1発明と一致し、次の点で両者は相違する。 相違点1:本件発明1が、「粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下、粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の炭化硼素を添加金属Al量に対して1質量%以上50質量%以下含有」するのに対し、甲1発明は、金属Alも炭化硼素も含有しない点。 相違点2:マグネシア原料の粒度構成が、本件発明1では、「粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が35質量%以上、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上」であるのに対し、甲1発明では、「粒径1?0.2mmの範囲にある中間粒30重量%と、0.2mm以下の微粒15重量%」である点 3.相違点の判断 (1)相違点2について、申立人は甲2を根拠に、甲1発明において0.2mm以下の微粒の半分(7.5重量%)が0.075mm以上であると解され、甲1発明は、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が30+7.5=37.5質量%配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が37.5/(15-7.5)=5.0となるから、一致点であると主張している。 (2)そこで検討するに、甲2には、他の特許出願の審査で引用された特開平7-33513号公報に記載されたマグネシア・カーボン質れんがについて、特許権者が、粒度構成0.2mm?0のマグネシア原料の半分が0.075mm以上であると解釈していることが記載されているが、これは、先行技術に対する特許権者の見解を示したものにすぎず、当業者の技術常識を示したものではない。 したがって、上記主張は、技術的な裏付けをもったものとはいえず採用できない。 なお、申立人は、「試料4」のほか「試料5,6,7,14,15,24」をそれぞれ甲1発明とした場合にも(1)と同様の主張をしているが、やはり採用できない。 (3)次に、相違点2を実質的な差異として検討するに、甲3?5には、1mm以下のマグネシア原料の粒度構成に関する記載や示唆はない。 してみると、甲1発明において相違点2を解消することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1及びこれを引用する本件発明2?4は、甲1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5.むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-05-22 |
出願番号 | 特願2014-14609(P2014-14609) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C04B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 末松 佳記、山田 貴之、粟野 正明 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 宮澤 尚之 |
登録日 | 2017-08-18 |
登録番号 | 特許第6194257号(P6194257) |
権利者 | 黒崎播磨株式会社 |
発明の名称 | マグネシアカーボンれんが |
代理人 | 特許業務法人英和特許事務所 |
代理人 | 福井 豊明 |