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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1341101
異議申立番号 異議2018-700233  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-20 
確定日 2018-06-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6198906号発明「グレープフルーツ果実様飲料及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6198906号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6198906号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許は、平成28年8月12日に特許出願され、平成29年9月1日にその特許権の設定登録(特許掲載公報の発行日:平成29年9月20日)がされ、その後、本件特許の請求項1ないし5に係る特許について、平成30年3月20日に特許異議申立人 末吉 直子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、それぞれ、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
グレープフルーツ果実様飲料であって、
ヌートカトンと、イソブチルアルコールとを含んでなり、
前記ヌートカトンの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記イソブチルアルコールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
Y≧-0.2X+0.4(0.4≦X<1.4) (数式1)
Y≧0.12(1.4≦X≦3.0) (数式2)
で表される関係を満たすものである、グレープフルーツ果実様飲料。
【請求項2】
前記数式1が、Y≧-0.2X+0.52(0.4≦X<1.4)であり、
前記数式2が、Y≧0.24(1.4≦X≦3.0)である、請求項1に記載のグレープフルーツ果実様飲料。
【請求項3】
前記グレープフルーツ果実様飲料のpHが2以上7未満である、請求項1又は2に記載のグレープフルーツ果実様飲料。
【請求項4】
前記前記グレープフルーツ果実様飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、請求項1?3の何れか一項に記載のグレープフルーツ果実様飲料。
【請求項5】
グレープフルーツ果実様飲料を製造する方法であって、
ヌートカトンと、イソブチルアルコールとを混合してなり、
前記混合が、前記ヌートカトンの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記イソブチルアルコールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
Y≧-0.2X+0.4(0.4≦X<1.4) (数式1)
Y≧0.12(1.4≦X≦3.0) (数式2)
で表される関係を満たすように行うものである、グレープフルーツ果実様飲料の製造方法。」

第3 証拠方法
申立人は、以下の証拠方法を提出している。
・甲第1号証:”Asahi SUPER REPORT 株主・投資家の皆様へ 2015年度の報告(2015.1.1?2015.12.31)”(アサヒスーパーレポート2016年春号)の印刷物,[online],アサヒグループホールディングス株式会社,[印刷日2017年12月12日],インターネット<URL:http://www.asahigroup-holdings.com/ir/pdf/busrep/2016/2016spring_all.pdf>
・甲第1号証の2:”株主通信”のウェブページの印刷物,[online],アサヒグループホールディングス株式会社,[印刷日2017年12月12日],インターネット<URL:http://www.asahigroup-holdings.com/ir/library/busrep.html>
・甲第2号証:個人投資家向け説明会資料「”企業価値向上経営”の深化を目指して」の印刷物,[online],2016年4月,アサヒグループホールディングス株式会社,[印刷日2017年12月12日],インターネット<URL:http://www.asahigroup-holdings.com/ir/event/pdf/presentation/160420.pdf>
・甲第2号証の2:”個人投資向け説明会”のウェブページの印刷物,[online],アサヒグループホールディングス株式会社,[印刷日2017年12月12日],インターネット<URL:http://www.asahigroup-holdings.com/ir/event/seminar2016.html>
・甲第3号証:ニュースリリース2016年,”「アサヒもぎたて」発売3週間で100万箱(※1)突破!”のウェブページの印刷物,[online],2016年4月26日,アサヒビール株式会社,[印刷日2017年11月24日],インターネット<URL:https://www.asahibeer.co.jp/news/2016/0426_1.html>
・甲第4号証:”缶チューハイのおいしさはどこで決まる?”のウェブページの印刷物,1ページ,[online],2016年4月5日,PRESIDENT Online,株式会社プレジデント社,[印刷日2017年12月15日],インターネット<URL:http://president.jp/articles/-/17753>
・甲第4号証の2:”缶チューハイのおいしさはどこで決まる?”のウェブページの印刷物,2ページ,[online],2016年4月5日,PRESIDENT Online,株式会社プレジデント社,[印刷日2017年12月15日],インターネット<URL:http://president.jp/articles/-/17753?page=2>
・甲第4号証の3:”缶チューハイのおいしさはどこで決まる?”のウェブページの印刷物,3ページ,[online],2016年4月5日,PRESIDENT Online,株式会社プレジデント社,[印刷日2017年12月15日],インターネット<URL:http://president.jp/articles/-/17753?page=3>
・甲第4号証の4:”缶チューハイのおいしさはどこで決まる?”のウェブページの印刷物,4ページ,[online],2016年4月5日,PRESIDENT Online,株式会社プレジデント社,[印刷日2017年12月15日],インターネット<URL:http://president.jp/articles/-/17753?page=4>
・甲第5号証:特願2016-158878号の早期審査に関する事情説明書(提出日:平成28年10月18日)
・甲第6号証:JOURNAL OF FOOD SCIENCE,”Flavor Studies Nootkatone in Grapefruit Juice”,1967年,Vol.32,No.1,75-78ページ
・甲第7号証:特開平11-46751号公報
・甲第7号証の2:”安全データシート”,[online],改訂 平成29年09月11日,昭和化学株式会社,インターネット<URL:http:/www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/02124250.pdf>
・甲第8号証:”アサヒグループ会社・事業所一覧”のウェブページの印刷物,[online],アサヒグループホールディングス株式会社,[印刷日2017年12月15日],インターネット<URL:http://www.asahigroup-holdings.com/company/group/>

第4 申立理由の概要
申立人の主張する申立理由の概要は、以下のとおりである。
1 申立理由1(新規性)
本件発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4に係る発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立理由2(新規性)
本件発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた「アサヒもぎたて」に係る発明であって、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 申立理由3(進歩性)
本件発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4に係る発明並びに技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

4 申立理由4(進歩性)
本件発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた「アサヒもぎたて」に係る発明並びに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

5 申立理由5(進歩性)
本件発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第6号証に記載された発明並びに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第5 甲各号証の記載
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある。
ア 「アサヒもぎたて」、「発売予定2016年4月5日」、「収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用」、「作りたてのおいしさと新鮮な果実の味わいを実現」、「アルコール度数9%のしっかりした飲みごたえ」(いずれも10ページ中央上欄)

イ 缶の写真に表示された「もぎたて」、「24時間」、「グレープフルーツ」(10ページ中央上欄)

ウ 「申込期限 平成28年3月31日(木)」(21ページ右枠内4ないし5行)

(2)甲1発明A
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。
「収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用したアルコール度数9%の”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料。」

(3)甲1発明B
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認める。
「”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料を製造する方法であって、収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用し、アルコール度数9%とする、”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料を製造する方法。」

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある。
ア 「2016年4月」(表紙)

イ 「「アサヒもぎたて」4月5日(火)発売」、「収穫後24時間以内搾汁!」及び「高アルコール9%の飲みごたえ」(15ページ右上欄)

ウ 缶の写真に表示された「もぎたて」、「24時間」、「グレープフルーツ」(15ページ右上欄)

(2)甲2発明A
上記(1)によれば、甲第2号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲2発明A」という。)が記載されていると認める。
「収穫後24時間以内に搾汁した果汁を使用したアルコール度数9%の”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料。」

(3)甲2発明B
上記(1)によれば、甲第2号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されていると認める。
「”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料を製造する方法であって、収穫後24時間以内に搾汁した果汁を使用し、アルコール度数9%とする、”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の飲料を製造する方法。」

3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の記載がある。
ア 「2016年4月26日」(右上)

イ 「アサヒビール株式会社(本社東京、社長平野伸一)が、4月5日(火)に発売したRTD^((※2))「アサヒもぎたて」ブランドの販売数量が、発売から3週間で100万箱を突破しました。」(2ないし3行)

ウ 「「アサヒもぎたて」は、収穫後24時間以内に搾汁された果汁のみを使用し、独自技術の「アサヒフレッシュキープ製法」^((※3))を採用することで、果実本来の香味成分の劣化を抑制し、つくりたてのおいしさと新鮮な果実の味わいを実現した缶チューハイです。」(6ないし8行)

エ 「(※3)果実本来の香味成分の劣化を抑制し、果実のフレッシュな味わいをキープする製法。特許出願中の独自技術を掛け合わせています。」(9行)

オ 「商品発売前に2万人のモニターを募集し、SNSによる情報拡散を活用」(11ないし12行)。

カ 「当社調べ^((※4))では、本商品のコアターゲットである30-40代のRTDユーザー層に加え、幅広い世代において、トライアルとリピートの双方を獲得しています。また、スッキリとした中にも甘味のある<ぶどう>フレーバーが、RTDに多様な味わいを求めるお客様のトライアルを獲得し、売上拡大に貢献しています。
(※4)発売2週における飲用経験率と継続購入意向率を調査。首都圏(1都3県)20-50代男女/n=1,000/調査期間:4月11-17日」(12ないし16行)

キ 缶の写真に表示された「もぎたて」、「24時間」、「グレープフルーツ」

(2)甲3発明A
上記(1)によれば、甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲3発明A」という。)が記載されていると認める。
「収穫後24時間以内に搾汁された果汁のみを使用し、独自技術の「アサヒフレッシュキープ製法」を採用することで、果実本来の香味成分の劣化を抑制し、つくりたてのおいしさと新鮮な果実の味わいを実現した”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイ。」

(3)甲3発明B
上記(1)によれば、甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲3発明B」という。)が記載されていると認める。
「”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法であって、収穫後24時間以内に搾汁された果汁のみを使用し、独自技術の「アサヒフレッシュキープ製法」を採用することで、果実本来の香味成分の劣化を抑制し、つくりたてのおいしさと新鮮な果実の味わいを実現する、”アサヒもぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法。」

4 甲第4号証ないし甲第4号証の4について
(1)甲第4号証ないし甲第4号証の4の記載
甲第4号証ないし甲第4号証の4には、以下の記載がある。
ア 「2016年4月5日(火)」(甲第4号証;右上)

イ 「アサヒビールがこの春発売する新ブランド「もぎたて」の商品開発チームリーダーに話を聞いた。」(甲第4号証;2ないし3行)

ウ 「2016年4月5日(火)」(甲第4号証の2;右上)

エ 「毎月3?4月は、各社からRTDの新商品が出そろう時期だ。2016年はキリンビールが「氷結プレミアム」、サントリースピリッツが「-196℃ 極キレ」とそれぞれの主力ブランドで新商品を発売する中、アサヒビールは缶チューハイの新ブランド「もぎたて」を投入する。」(甲第4号証の2;17ないし23行)

オ 「「もぎたて」は、レモン、グレープフルーツ、ぶどうの3種類。アルコール度数は9%と缶チューハイの中でもかなり高めで炭酸も強め、飲み応えのある仕上がりである。」(甲第4号証の3;2ないし5行)

カ 「「市場を牽引する高アルコールタイプのチューハイで、新鮮さを具現化した製品を作ろう」-そうしてできたのが「もぎたて」だ。」(甲第4号証の3;23ないし25行)

キ 「1つは、果実を収穫した後24時間以内に搾った果汁のみを使うこと。 ・・・中略・・・ レモンであれば48?72時間程度で搾汁するのが普通だが、「もぎたて」では収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用しているという。」(甲第4号証の4;4ないし14行)

ク 「もう1つのポイントは、製品を製造する工程での工夫である。天然素材のある素材を入れることで香味の劣化をできるだけ防ぐ「香味劣化抑制技術」と、通常よりも低温で殺菌することで果汁の香味成分をキープする低温殺菌技術を実現することにより、果汁の香味成分の劣化を最低限に抑制し、より新鮮な味わいを実現した。香味劣化抑制技術と低温殺菌技術については、何れも特許出願中で「もぎたて」にしか使われていない新技術だ。」(甲第4号証の4;15ないし23行)

ケ 「「もぎたて」は、宮广さんがおいしい缶チューハイの条件として挙げていた「後味にベタッと甘さが残らないことと、口に入れた瞬間の香りの強さ」という条件を満たしている。」(甲第4号証の4;24?25行)

コ 「「後味は工夫しました。あまりにもさっぱりしすぎると物足りないし、残しすぎるとベタッとした甘さになってしまうのです。もぎたてでは、果汁の香りはふんわり残して後味はスッときれるようなイメージにしました。また、口に入った瞬間の香りを強くするのはもちろん、缶を開けた瞬間に香りが広がります」(宮广さん)」(甲第4号証の4;26?29行)

サ 「「もぎたて」は4月5日に販売を開始する。」(甲第4号証の4;30行)

(2)甲4発明A
上記(1)によれば、甲第4号証ないし甲第4号証の4には、次の事項からなる発明(以下、「甲4発明A」という。)が記載されていると認める。
「収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用し、天然素材のある素材を入れることで香味の劣化をできるだけ防ぐ「香味劣化抑制技術」と、通常よりも低温で殺菌することで果汁の香味成分をキープする低温殺菌技術により、果汁の香味成分の劣化を最低限に抑制し、より新鮮な味わいを実現した、アルコール度数9%の”もぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイ。」

(3)甲4発明B
上記(1)によれば、甲第4号証ないし甲第4号証の4には、次の事項からなる発明(以下、「甲4発明B」という。)が記載されていると認める。
「”もぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法であって、収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用し、天然素材のある素材を入れることで香味の劣化をできるだけ防ぐ「香味劣化抑制技術」と、通常よりも低温で殺菌することで果汁の香味成分をキープする低温殺菌技術により、果汁の香味成分の劣化を最低限に抑制し、より新鮮な味わいを実現し、アルコール度数9%とする、”もぎたて”と称するグレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法。」

5 甲第5号証について
甲第5号証には、以下の記載がある。
・「特許請求の範囲に記載されたグレープフルーツ果実様飲料(その製造方法で製造されたグレープフルーツ果実様飲料を含む)は、現在、製品名「アサヒもぎたて」(缶チューハイ)として製造され、販売されている。
よって、本願は、実施関連出願である。」(【早期審査に関する事情説明】の「1.事情」の欄)

6 甲第6号証について
(1)甲第6号証の記載
甲第6号証には、以下の記載がある。
・「Nootkatone was detectable at 1 ppm in water and at 6 ppm in 10.5°Brix reconstituted grapefruit juice.」(75ページSUMMARYの9ないし10行)
<翻訳文>
「ヌートカトンは、水中では1ppm、10.5°ブリックスのグレープフルーツジュース中では、6ppmで感知可能であった。」

・「Nootkatone is a sesquiterpene ketone which possesses a very pungent and aromatic odor and has been established as one of the principal flavor constituents of grapefruit peel oil and juice (MacLeod and Buigues,1964).」(75ページINTRODUCTIONの1ないし4行)
<翻訳文>
「ヌートカトンが非常に刺激的かつ芳香性のある匂いを有するセスキテルペンケトンであり、グレープフルーツピールオイル及びジュースの主な香気成分の一つとして知られている。」

(2)甲6発明A
上記(1)によれば、甲第6号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲6発明A」という。)が記載されていると認める。
「グレープフルーツジュースであって、
ヌートカトンを含んでなる、グレープフルーツジュース。」

(3)甲6発明B
上記(1)によれば、甲第6号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲6発明B」という。)が記載されていると認める。
「グレープフルーツジュースを製造する方法であって、
ヌートカトンを含んでなる、グレープフルーツジュースを製造する方法。」

7 甲第7号証について
甲第7号証には、以下の記載がある。
・「【0015】・・・イソアミルアルコール、ノルマルプロパノールおよびイソブタノールはこれら自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与する」(段落【0015】)

8 甲第7号証の2
甲7第号証の2には以下の記載がある。
・「化学名 : 2-メチル-1-プロパノール
(別名)イソブチルアルコール、イソブタノール」(2ページの「3. 組成、成分情報」の欄)

9 甲第8号証について
甲第8号証には、以下の記載がある。
・「沖縄アサヒ販売(株)
沖縄県における種類の卸・販売を行っています。」(「酒類事業」の欄)

第6 判断
1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明Aとの対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点A1」という。)で相違する。
[相違点A1]
本件発明1は、「ヌートカトンと、イソブチルアルコールとを含んでなり、
前記ヌートカトンの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記イソブチルアルコールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
Y≧-0.2X+0.4(0.4≦X<1.4) (数式1)
Y≧0.12(1.4≦X≦3.0) (数式2)
で表される関係を満たすものである」(この発明特定事項を、以下、「特定事項A」という。)のに対して、甲1発明Aは、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

(イ)本件発明1と甲2発明Aとの対比
本件発明1と甲2発明Aとを対比すると、
本件発明1は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点A2」という。)で相違する。
[相違点A2]
本件発明1は、特定事項Aを有するのに対して、甲2発明Aは、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

(ウ)本件発明1と甲3発明Aとの対比
本件発明1と甲3発明Aとを対比すると、
本件発明1は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点A3」という。)で相違する。
[相違点A3]
本件発明1は、特定事項Aを有するのに対して、甲3発明Aは、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

(エ)本件発明1と甲4発明Aとの対比
本件発明1と甲4発明Aとを対比すると、
本件発明1は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点A4」という。)で相違する。
[相違点A4]
本件発明1は、特定事項Aを有するのに対して、甲4発明Aは、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

イ 相違点A1ないしA4の検討
上記相違点A1ないしA4について検討する。
甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4には、ヌートカトンとイソブチルアルコールについて何ら記載されておらず、特定事項Aを示唆する記載はない。
そして、果汁にヌートカトンが含まれるとしても、甲1発明Aないし甲4発明Aのいずれかにおいて、特定事項Aを有することが明らかであるとはいえない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明Aないし甲4発明Aのいずれかと同一であるとはいえず、特許法第29条第1項3号に掲げる発明に該当しない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由により、甲1発明Aないし甲4発明Aのいずれかと同一であるとはいえず、特許法第29条第1項3号に掲げる発明に該当しない。

(3)本件発明5について
ア 対比
(ア)本件発明5と甲1発明Bとの対比
本件発明5と甲1発明Bとを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点B1」という。)で相違する。
[相違点B1]
本件発明5は、「ヌートカトンと、イソブチルアルコールとを混合してなり、
前記混合が、前記ヌートカトンの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記イソブチルアルコールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
Y≧-0.2X+0.4(0.4≦X<1.4) (数式1)
Y≧0.12(1.4≦X≦3.0) (数式2)
で表される関係を満たすように行うものである」(この発明特定事項を、以下、「特定事項B」という。)のに対して、甲1発明Bは、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

(イ)本件発明5と甲2発明Bとの対比
本件発明5と甲2発明Bとを対比すると、
本件発明5は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点B2」という。)で相違する。
[相違点B2]
本件発明5は、特定事項Bを有するのに対して、甲2発明Bは、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

(ウ)本件発明5と甲3発明Bとの対比
本件発明5と甲3発明Bとを対比すると、
本件発明5は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点B3」という。)で相違する。
[相違点B3]
本件発明5は、特定事項Bを有するのに対して、甲3発明Bは、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

(エ)本件発明5と甲4発明Bとの対比
本件発明5と甲4発明Bとを対比すると、
本件発明5は、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点B4」という。)で相違する。
[相違点B4]
本件発明6は、特定事項Bを有するのに対して、甲4発明Bは、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

イ 相違点B1ないしB4の検討
上記相違点B1ないしB4について検討する。
甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4には、ヌートカトンとイソブチルアルコールについて何ら記載されておらず、特定事項Bを示唆する記載はない。
そして、果汁にヌートカトンが含まれるとしても、甲1発明Bないし甲4発明Bのいずれかにおいて、特定事項Bを有することが明らかであるとはいえない。

ウ 小括
したがって、本件発明5は、甲1発明Bないし甲4発明Bのいずれかと同一であるとはいえず、特許法第29条第1項3号に掲げる発明に該当しない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし5は、特許法第29条第1項3号に掲げる発明に該当しないから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

2 申立理由2(特許法第29条第1項第2号)について
(1)具体的な申立理由
申立理由2は、概略、以下のとおりである。
ア 「甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証乃至甲第4号証の4に記載されている「アサヒもぎたて」の発明(引用発明)は、甲第5号証に記載されているとおり、「特許請求の範囲に記載されたグレープフルーツ果実様飲料(その製造方法で製造されたグレープフルーツ果実様飲料を含む)」であるから、引用発明と、本件発明1?4は同一である。」(特許異議申立書12ページ8ないし12行)

イ 「すなわち、本件発明5は、ヌートカトンと、イソブチルアルコールとを混合する順序は問わない発明である。」(特許異議申立書12ページ18及び19行)

ウ 「また、甲第3号証には、「アサヒもぎたて」について、「商品発売前に2万人のモニターを募集し、SNSによる情報拡散を活用」(甲第3号証11行?12行)したことが記載されている。上記の2万人のモニターは、特段の限定もなく募集されており、またSNSによる情報拡散を行い得る者であるから、秘密保持義務を有するものではない。よって、「アサヒもぎたて」は、甲第3号証が掲載された2016年4月26日の前には、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされていた(以下「実施事実1」ともいう。)。
さらに、甲第3号証には、「アサヒビール(株)は、・・・「アサヒもぎたて」を発売」(甲第3号証10行?11行)、「発売2週における飲用経験率と継続購入意向率を調査。首都圏(1都3県)20-50代男女/n=1,000/調査期間:4月11-17日」(甲第3号証16行)と記載されているため、「アサヒもぎたて」は、遅くとも4月11-17日には、首都圏で販売されており、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされていた(以下「実施事実2」ともいう。)。
したがって、「アサヒもぎたて」は、本件特許の出願日前に公然実施されていたものである。
そして、実施事実1及び実施事実2のある「アサヒもぎたて」の発明(引用発明)と、本件発明1?5は、上述したとおり同一であるので、本件発明1?5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(特許法第29条第1項第2号に掲げる発明)に該当し、新規性を有しない。」(特許異議申立書12ページ23行ないし13ページ16行)

(2)公然実施された発明
甲第3号証に記載された事項により本件特許の出願前に販売されたと認められる甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4に係る「アサヒもぎたて」について、販売時の香気成分及びその含有量を具体的に示す証拠はなく、ヌートカトンの含有量及びイソブチルアルコールの含有量は不明である。
そして、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4の記載を総合すると、本件特許の出願前に公然実施された甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4に係る「アサヒもぎたて」の発明(以下、「実施発明1」という。)及び「アサヒもぎたて」を製造する方法の発明(以下、「実施発明2」という。)は、それぞれ以下の事項からなるものと認められる。
ア 実施発明1
「果汁を使用した、アルコール度数9%のグレープフルーツ味の缶チューハイ。」

イ 実施発明2
「グレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法であって、果汁を使用し、アルコール度数9%とする、グレープフルーツ味の缶チューハイを製造する方法。」

(3)対比・検討
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と実施発明1とを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点C」という。)で相違する。
[相違点C]
本件発明1は、特定事項Aを有するのに対して、実施発明1は、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

(イ)相違点Cの検討
上記相違点Cについて検討する。
果汁にヌートカトンが含まれるとしても、実施発明1において、特定事項Aを有することが明らかであるとはいえない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、実施発明1と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項2号に掲げる発明に該当しない。

イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由により、実施発明1と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項2号に掲げる発明に該当しない。

ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と実施発明2とを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点D」という。)で相違する。
[相違点D]
本件発明5は、特定事項Bを有するのに対して、実施発明2は、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

(イ)相違点Dの検討
上記相違点Dについて検討する。
果汁にヌートカトンが含まれるとしても、実施発明2において、特定事項Bを有することが明らかであるとはいえない。

(ウ)小括
したがって、本件発明5は、実施発明2と同一であるとはいえず、特許法第29条第1項2号に掲げる発明に該当しない。

エ 甲第5号証に記載された事項について
申立人は、上記(1)アに示すように、甲第5号証に記載された「特許請求の範囲に記載されたグレープフルーツ果実様飲料(その製造方法で製造されたグレープフルーツ果実様飲料を含む)は、現在、製品名「アサヒもぎたて」(缶チューハイ)として製造され、販売されている。」との事項(以下、「甲5記載事項」という。)に基づき、実施発明1と、本件発明1ないし4が同一であると主張するが、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証ないし甲第4号証の4に係る「アサヒもぎたて」について、販売時の香気成分及びその含有量を具体的に示す証拠はないのであるから、甲5記載事項から直ちに本件発明1ないし4と実施発明1が同一とはいえない。

(4)まとめ
したがって、本件発明1ないし5は、特許法第29条第1項2号に掲げる発明に該当しないから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

3 申立理由3(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明Aないし甲4発明Aとの対比については、上記1(1)アに示したとおりである。

イ 相違点A1ないしA4の検討
上記相違点A1ないしA4について検討するにあたり、技術常識の例証として挙げた甲第6号証ないし甲第7号証の2について、特定事項Aが記載されているか以下に検討する。
(ア)甲第6号証について
甲第6号証には、「ヌートカトンが非常に刺激的かつ芳香性のある匂いを有するセスキテルペンケトンであり、グレープフルーツピールオイル及びジュースの主な香気成分の一つとして知られている。」(75ページINTRODUCTIONの1ないし4行)と記載されているように、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であることが示されている。
しかしながら、甲第6号証には、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量とが所定の関係となるようにした特定事項Aは記載も示唆もされていない。

(イ)甲第7号証及び甲第7号証の2について
甲第7号証には、「イソアミルアルコール、ノルマルプロパノールおよびイソブタノールはこれら自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与する」(段落【0015】)と記載され、甲第7号証の2には、「イソブタノール」の別名が「イソブチルアルコール」であることが記載されており(2ページの「3. 組成、成分情報」の欄)、イソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが示されている。
しかしながら、甲第7号証及び甲第7号証の2には、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量が所定の関係となるようにした特定事項Aは記載も示唆もされていない。

上述のとおり、甲第6号証ないし甲第7号証の2の何れにも、特定事項Aは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、甲第6号証ないし甲第7号証の2の記載から、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であること、及びイソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、甲1発明Aないし甲4発明Aにおいて、特定事項Aとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 効果について
そして、本件発明1は、上記相違点A1ないしA4のいずれかに係る本件発明1の発明特定事項(特定事項A)を備えることにより、本件特許に係る願書に添付された明細書に記載された「ヌートカトンと、イソブチルアルコールを採用することにより、ヌートカトンによるグレープフルーツ果実様香味感、とりわけ、グレープフルーツをもぎたて搾り立てした際の果汁感、新鮮感及び爽快感を継続付与し、促進させることが可能となる。」(段落【0011】)という所期の効果(以下、「本件発明の効果」という。)を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明Aないし甲4発明A及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由により、甲1発明Aないし甲4発明A及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明Bないし甲4発明Bとの対比については、上記1(3)アに示したとおりである。

イ 相違点B1ないしB4の検討
上記(1)イの相違点A1ないしA4についての検討を踏まえると、甲第6号証ないし甲第7号証の2の何れにも、特定事項Bは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、甲第6号証ないし甲第7号証の2の記載から、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であること、及びイソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、甲1発明Bないし甲4発明Bにおいて、特定事項Bとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 効果について
そして、本件発明5は、上記相違点B1ないしB4のいずれかに係る本件発明5の発明特定事項(特定事項B)を備えることにより、本件発明の効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明5は、甲1発明Bないし甲4発明B及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 申立理由4(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 実施発明1
実施発明1は、上記2(2)アに示したとおりである。

イ 対比
本件発明1と実施発明1との対比については、上記2(3)ア(ア)に示したとおりである。

ウ 相違点Cの検討
上記3(1)イの検討を踏まえると、甲第6号証ないし甲第7号証の2の何れにも、特定事項Aは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、甲第6号証ないし甲第7号証の2の記載から、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であること、及びイソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、実施発明1において、特定事項Aとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

エ 効果について
そして、本件発明1は、上記相違点Cに係る本件発明1の発明特定事項(特定事項A)を備えることにより、本件発明の効果を奏するものである。

オ 小括
したがって、本件発明1は、実施発明1及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由により、実施発明1及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5について
ア 実施発明2
実施発明2は、上記2(2)イに示したとおりである。

イ 対比
本件発明5と実施発明2との対比については、上記2(3)ウ(ア)に示したとおりである。

ウ 相違点Dの検討
上記3(1)イの検討を踏まえると、甲第6号証ないし甲第7号証の2の何れにも、特定事項Bは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、甲第6号証ないし甲第7号証の2の記載から、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であること、及びイソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、実施発明2において、特定事項Bとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

エ 効果について
そして、本件発明5は、上記相違点Dに係る本件発明5の発明特定事項(特定事項B)を備えることにより、本件発明の効果を奏するものである。

オ 小括
したがって、本件発明5は、実施発明2及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 申立理由5(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明Aとを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点E」という。)で相違する。
[相違点E]
本件発明1は、特定事項Aを有するのに対して、甲6発明Aは、そのような特定事項Aを有するか不明である点。

イ 相違点Eの検討
上記相違点Eについて検討すると、上記3(1)イ(イ)のとおり、技術常識の例証として挙げられた甲第7号証及び甲第7号証の2には、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量が所定の関係となるようにした特定事項Aは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であって、甲第7号証及び甲第7号証の2の記載から、イソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、甲6発明Aにおいて、特定事項Aとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 効果について
そして、本件発明1は、上記相違点Eに係る本件発明1の発明特定事項(特定事項A)を備えることにより、本件発明の効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲6発明A及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由により、甲6発明A及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲6発明Bとを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点F」という。)で相違する。
[相違点F]
本件発明5は、特定事項Bを有するのに対して、甲6発明Bは、そのような特定事項Bを有するか不明である点。

イ 相違点Fの検討
上記(1)イの相違点Eについての検討を踏まえると、技術常識の例証として挙げられた甲第7号証及び甲第7号証の2には、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量が所定の関係となるようにした特定事項Bは記載も示唆もされておらず、グレープフルーツ果実様飲料において、香気向上が自明の課題であり、また、ヌートカトンがグレープフルーツの主な香気成分であって、甲第7号証及び甲第7号証の2の記載から、イソブチルアルコールが、自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与することが本件特許の出願前に技術常識であったといえるとしても、ヌートカトンの含有量とイソブチルアルコールの含有量を、所定の関係を有するように調整することまでは着想し得ないから、甲6発明Bにおいて、特定事項Bとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 効果について
そして、本件発明5は、上記相違点Fに係る本件発明5の発明特定事項(特定事項B)を備えることにより、本件発明の効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明5は、甲6発明B及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第7 むすび
したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-31 
出願番号 特願2016-158878(P2016-158878)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 112- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 厚田 一拓  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 槙原 進
窪田 治彦
登録日 2017-09-01 
登録番号 特許第6198906号(P6198906)
権利者 アサヒビール株式会社
発明の名称 グレープフルーツ果実様飲料及びその製造方法  
代理人 堅田 健史  
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