• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05B
管理番号 1341115
異議申立番号 異議2018-700262  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-27 
確定日 2018-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6202419号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6202419号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6202419号の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年9月12日に特許出願され、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年3月27日に特許異議申立人宮本俊明により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6202419号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の主張をしている。

(1)特許法第29条第2項について(特許法第113条第2号)
主たる証拠として特開2009-200431号公報(以下「刊行物1」という。)及び従たる証拠として特開平11-67471号公報(以下「刊行物2」という。)、特開2009-105354号公報(以下「刊行物3」という。)、特開2011-113876号公報(以下「刊行物4」という。)、特開2010-67367号公報(以下「刊行物5」という。)、特開2010-212043号公報(以下「刊行物6」という。)、特開2010-80844号公報(以下「刊行物7」という。)、特開2008-130438号公報(以下「刊行物8」という。)、特開2011-142026号公報(以下「刊行物9」という。)を提出し、請求項1に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)特許法第36条第6項第2号について(特許法第113条4号)
本件発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである。
具体的には、
(ア)「ケース」について
本件特許の請求項1において、「ケース」が何をどのように収納するものであるか、特に光源ユニットの半導体発光素子との関係について何ら記載されていないから、本件発明の「ケース」の技術的意味が明確ではない。
(イ)「半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値」について
請求項1の「半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値」(以下「構成要件E」という)との記載について、人間が認識できる発光レベルには、目や脳の機能に個体差によるばらつき、すなわち個人差があって、人間が認識できる発光レベルは一意的に定まらない。また、周囲(部屋)の明るさによっても人間か認識できる発光レベルは異なる。よって、当該記載は技術的範囲を一意に特定することができない不明確な記載である。

(3)特許法第36条第4項第1号について(特許法第113条4号)
本件発明は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反して特許されたものである。
具体的には、
どのような原理により光源ユニット全体と直列に浮遊容量が発生するのかについて、本件明細書の発明の詳細な説明に十分に開示されていない。
「光源ユニットの負側の端からのみ浮遊容量が発生する」という前提が成り立つ理由について本件明細書の発明の詳細な説明において説明されていない以上、「半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfが1.5V以下になるように、半導体発光素子3の直列接続数を設定する」構成(願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0029】)を採用したとしても、「小型、低コストで微発光を抑制する」という課題(本件明細書の段落【0015】)を解決することができるとはいえない。
また、本件明細書には「ケース」が何ら特定されていないのであるから、電極と器具外郭4との間に発生する浮遊容量を支配的なものとし得るような「光源ユニット2のケース」および「電極」の構成について当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載があるとは到底いえない。

(4)特許法第36条第6項第1号について(特許法第113条4号)
本件発明は、同法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。
具体的には、
(ア)課題解決手段が反映されていない
本件明細書の段落【0015】には本件発明の課題として「小型、低コストで微発光を抑制することができ、且つ施工性を向上させた照明器具を提供する」と記載されている。
上記「小型、低コストで」とは、「半導体発光素子103と同数のコンデンサC100」のような構成を含まないことを意味するものと解される。
しかしながら、本件発明においては、構成要件Eにおいて「前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である」との特定事項を有するのみである。
したがって、本件発明の範躊には、例えば、バイポーラトランジスタによって光源ユニットの両端に印加される電圧を減らして微発光を防止する甲1発明の構成に加えて前記構成要件Eの構成を採用した場合や、甲7に記載されている、発光ダイオード5の個々にそれぞれ並列してバイパス用コンデンサ6を設けた構成(段落【0032】等)に加えて前記構成要件Eの構成を採用した場合が含まれている。
よって、本件発明の範躊には、上記課題の解決手段が反映されているとはいえないものも含まれている。
(イ)ケースについて
本件発明の請求項1に「ケース」が記載されていることをもって、「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量が他の浮遊容量に比べて支配的である」と解釈することはできないし、「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量の中でも電極と器具外郭との間に発生する浮遊容量が支配的である」と解釈することもできない。
そして、仮に上記の解釈が成立し得たとしても、「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量が他の浮遊容量に比べて支配的である」ことや、「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量の中でも電極と器具外郭との間に発生する浮遊容量が支配的である」ことは本件明細書から読み取ることはできないから、サポート要件を満たさないことは明白である。

4.刊行物の記載
(1)刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。以下同様。)
ア.「【0040】
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光ダイオード点灯回路および照明装置の概略構成回路の実施例1を示す回路状態図であり、(A)はスイッチをオンして発光ダイオードを点灯した場合の電流状況を示し、(B)はスイッチをオフして発光ダイオードを消灯した場合の電流状況を示し、(C)は比較のためにpn接合素子を省いた状態でスイッチをオフして発光ダイオードを消灯した場合の電流状況を示す回路状態図である。
【0041】
なお、図1(A)、(B)、(C)は、基本的に同等な回路構成であることから図上の符号を適宜省略してある。図3以下でも同様である。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態に係る発光ダイオード点灯回路および照明装置に適用される発光ダイオードモジュールの概略構成を示す説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)の矢符B-Bでの端面図である。なお、端面図でのハッチングは図面の見易さを考慮して省略してある。
【0043】
本実施の形態に係る照明装置1は、交流電源ACSから供給された交流を直流に変換する発光ダイオード点灯回路10と、発光ダイオード点灯回路10から供給された直流によって駆動され発光(点灯)する発光ダイオードモジュール40とを備え、動作電流制御部としてのスイッチ15によって、発光ダイオードモジュール40(発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2)の発光(点灯/消灯)を制御する。
【0044】
なお、発光ダイオードモジュール40は、例えば金属製の照明器具本体1bに取り付けられている。また、照明器具本体1bは、安全性を確保するためにアース電位GNDに接地された状態となっている。
【0045】
また、照明装置1はスイッチ15で点灯/消灯するほか、リモートコントローラでスイッチング素子Q(スイッチングトランジスタQ)をオフすることにより消灯することも可能である(実施の形態3参照)。
【0046】
本実施例に係る発光ダイオード点灯回路10は、非接地側配線11および接地側配線12を有する交流電源ACSから供給される交流を整流する整流回路20と、整流回路20の整流出力をDC-DC変換して生成した直流を複数の発光ダイオードLED(発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2。以下、発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2を特に区別する必要が無い場合は、単に発光ダイオードLEDとする。)が直列接続された発光ダイオードモジュール40に供給して発光ダイオードLEDを点灯する直流供給回路30とを備える。
【0047】
本実施例に係る整流回路20は、非接地側配線11に接続される電源接続端子20pと、接地側配線12にスイッチ15を介して接続される電源接続端子20gと、交流を全波整流するようにブリッジ接続された整流ダイオード21、22、23、24と、整流ダイオード21、22、23、24によって形成された脈流を平滑化して直流化する平滑コンデンサCrとを備える。
【0048】
ブリッジ接続された整流ダイオード21、22、23、24で構成されるブリッジの一方のブリッジで直列接続された整流ダイオード21および整流ダイオード22の中間位置に非接地側配線11(電源接続端子20p)が接続され、他方のブリッジで直列接続された整流ダイオード23および整流ダイオード24の中間位置に接地側配線12(電源接続端子20g)が接続されている。
【0049】
したがって、カソードを共通に接続された整流ダイオード22および整流ダイオード23のカソード接続点からプラス側の配線経路34が導出され、アノードを共通に接続された整流ダイオード21および整流ダイオード24のアノード接続点からマイナス側の配線経路35が導出され、直流供給回路30に接続されている。なお、平滑コンデンサCrは、プラス側の配線経路34およびマイナス側の配線経路35に対応させて接続してある。
【0050】
本実施例に係る直流供給回路30は、「ローサイドスイッチ型降圧チョッパー方式」とした場合であり、転流用のダイオードDおよびスイッチング素子Qの直列回路がプラス側の配線経路34とマイナス側の配線経路35との間に接続してある。また、ダイオードDおよびスイッチング素子Qの接続点にコイルLの一方の端子が接続してある。なお、ダイオードDのカソードはプラス側の配線経路34に接続され、ダイオードDのアノードとマイナス側の配線経路35の間にスイッチング素子Qが接続され、ダイオードDおよびスイッチング素子Qの接続点にコイルLの一方の端子が接続してある。
【0051】
プラス側の配線経路34は、直流供給回路30の一方の出力端子となる出力プラス端子34tに接続され、マイナス側の配線経路35は、スイッチング素子QおよびコイルLを介して直流供給回路30の他方の出力端子となる出力マイナス端子35tに接続されている。」
イ.「【0054】
本実施例に係る発光ダイオードモジュール40は、例えば発光ダイオードLED1および発光ダイオードLED2が直列接続してあり、直流電力供給端子となるモジュールプラス端子40pおよびモジュールマイナス端子40mに順方向となるように接続してある。モジュールプラス端子40pは、発光ダイオードLED1のアノードが接続された配線パターン43fに接続され、モジュールマイナス端子40mは、発光ダイオードLED2のカソードが接続された配線パターン43tに接続されている。
【0055】
また、発光ダイオードLED1および発光ダイオードLED2は、配線パターン43sを介して相互に接続されることから、発光ダイオードモジュール40の適宜の所望された位置に配置されることとなる。
【0056】
発光ダイオードモジュール40は、絶縁性基材42に積層した導体層を適宜パターニングすることによって形成された配線パターン43f、43s、43tを備えるプリント基板41と、配線パターン43f、43s、43tに接続された発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2を備える(図2)。配線パターン43fおよび配線パターン43sに発光ダイオードLED1が接続され、配線パターン43sおよび配線パターン43tに発光ダイオードLED2が接続されている。
【0057】
配線パターン43f、配線パターン43s、配線パターン43tは、照明器具本体1bとの間に絶縁性基材42をそれぞれ挟む構成となることから、その面積に比例した寄生容量Cf、寄生容量Cs、寄生容量Ctを有することとなる。特に、発光ダイオードLED1および発光ダイオードLED2の間に配置された配線パターン43sは、発光ダイオードLED1および発光ダイオードLED2を適宜の位置に配置するために他のパターンに比較して大きな面積(長い距離)とされることがある。
【0058】
したがって、配線パターン43sによって生じる寄生容量Csは、寄生容量Cf、寄生容量Ctに比較して大きな値となり、図1(C)で説明するようにバイポーラトランジスタ31が存在しない場合にスイッチ15をオフして発光ダイオードLEDを消灯したとき、寄生容量Csを介して寄生電流としての微弱電流Is(正周期微弱電流Isp、負周期微弱電流Ism)が流れ、消灯時に微弱発光を生じることがある。なお、正周期微弱電流Ispと負周期微弱電流Ismとを区別する必要が無い場合は、単に微弱電流Isとすることがある。
【0059】
なお、寄生容量Csは、真空の誘電率をε(0)、絶縁性基材42の比誘電率をε(r)、配線パターン43sの面積をS、厚さをdとした場合、寄生容量C=ε(0)・ε(r)・S/dで算出される。」
ウ.「【0067】
次に本実施の形態での効果を比較説明するためにpn接合素子(バイポーラトランジスタ31)を省いた状態でスイッチをオフして発光ダイオードを消灯した場合の電流状況を説明する(図1(C))。・・・
【0068】
図1(B)の場合と同様、発光ダイオードLEDを消灯する場合は、スイッチ15をオフする。スイッチ15をオフした場合、交流電源ACSの正の半周期では正周期微弱電流Ispが寄生容量Csを充電する形態で発光ダイオードLED1に流れ、負の半周期では負周期微弱電流Ismが寄生容量Csを逆方向に充電する形態で発光ダイオードLED2に流れる。したがって、発光ダイオードLEDは、交流電源ACSの正負状態に関係なく、常に微弱電流Isが流れる状態となり微弱発光を防止することはできない。
【0069】
つまり、交流電源ACSの正の半周期では、非接地側端子11t→非接地側配線11(電源接続端子20p)→整流ダイオード22→プラス側の配線経路34→出力プラス端子34t→モジュールプラス端子40p→発光ダイオードLED1→寄生容量Cs→アース電位GND(照明器具本体1bのアース電位GNDおよび交流電源ACSのアース電位GND)の経路で正周期微弱電流Ispが流れる。
【0070】
また、交流電源ACSの負の半周期では、接地側端子12t→接地側配線12→アース電位GND(交流電源ACSのアース電位GNDおよび照明器具本体1bのアース電位GND)→寄生容量Cs→発光ダイオードLED2→モジュールマイナス端子40m→出力マイナス端子35t→コイルL→ダイオードD→プラス側の配線経路34(電流を阻止するバイポーラトランジスタ31が存在しないことから、動作電流Idと逆方向の負周期微弱電流Ismが流れることが可能となる。)→平滑コンデンサCr→整流ダイオード21→電源接続端子20p(非接地側配線11)→非接地側端子11tの経路で負周期微弱電流Ismが流れる。
【0071】
したがって、バイポーラトランジスタ31が存在しないプラス側の配線経路34では、交流電源ACSの正負の半周期にそれぞれ対応する両方向で微弱電流Is(発光ダイオードLED1を流れる正周期微弱電流Ispおよび発光ダイオードLED2を流れる負周期微弱電流Ism)が流れることとなる。すなわち、上述したとおり、バイポーラトランジスタ31が存在しない場合、交流電源ACSの正負状態に関係なく、発光ダイオードLEDには常に微弱電流Isが流れる状態となり微弱発光を防止することはできない状態となる。」
エ.【図1】(C)から、交流電源ACSは一方がアース電位GNDに接地されていること、整流回路20及び直流供給回路30からなる点灯回路10は非絶縁型の電源回路を構成していること、を看取しうる。

以上のア.?エ.の事項及び【図1】(C)の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「一方がアース電位GNDに接地された交流電源ACSの非接地側配線11及び接地側配線12から供給される交流を整流する整流回路20と、整流回路20の整流出力をDC-DC変換して生成した直流を発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2とが直列接続された発光ダイオードモジュール40に供給して発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2を点灯する直流供給回路30とからなる非絶縁型の電源回路である点灯回路10と、
発光ダイオードモジュール40が取り付けられ、アース電位GNDに接地された金属製の照明器具本体1bとを備えて、
接地側配線12に設けられたスイッチ15をオフしたとき、発光ダイオードLED1は、交流電源ACSから、発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2との間の配線43sと器具本体1bとの間に生じる寄生容量Cs、及びアース電位GNDを介して交流電力を供給される、
照明装置。」

(2)刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0003】昇圧回路4は、全波整流回路2の出力端子にコンデンサ6を接続するとともにインダクタ7を介してトランジスタ等からなるスイッチ素子8を接続し、さらに、インダクタ7及びダイオード9を直列に介して平滑コンデンサ10を接続して構成している。そして、スイッチ素子8を制御回路11によってオン、オフ動作するようになっている。」
イ.「【0005】この照明装置は、昇圧回路3において制御回路11によりスイッチ素子8がオン動作すると、インダクタ7に電流が流れ磁気エネルギーが蓄えられる。次に制御回路11によりスイッチ素子8がオフ動作すると、インダクタ7から電流がダイオード9を介して平滑コンデンサ10に流れ込む。この動作によりインダクタ7に蓄えられた磁気エネルギーが電荷のエネルギーに変換されて平滑コンデンサ10に蓄えられる。平滑コンデンサ10は充分に容量が大きいので、商用周波数である50Hzのリップル成分を吸収でき、平滑コンデンサ10の両端間には略フラットな直流電圧が出力される。」
ウ.「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に示すように、商用交流電源31にダイオードブリッジ全波整流回路32の入力端子を接続し、この全波整流回路32の出力端子に抵抗33,34の直列回路からなる分圧回路を接続している。前記全波整流回路32の出力端子の負極側を接地している。
【0018】また、前記全波整流回路32の出力端子にインダクタとしてのチョークコイル35を介してスイッチ素子であるMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)36と抵抗37との直列回路を接続するとともに、前記チョークコイル35及びダイオード38を直列に介して平滑コンデンサ39を接続している。そして、前記平滑コンデンサ39に抵抗40と可変抵抗41との直列回路を並列に接続し、さらに、複数個の発光ダイオード42を直列接続した回路を2個並列接続した点灯回路43を接続している。
【0019】また、IC化した制御回路44を設け、・・・また、前記制御回路44に点灯ボタン、調光(1)ボタン、調光(2)ボタン、消灯ボタンを備えた操作部46を接続している。
【0020】この回路の基本動作を述べる。MOSFET36をオン動作させると、チョークコイル35、MOSFET36及び抵抗37を介して電流が流れ、チョークコイル35には流れる電流に見合った磁気エネルギーが蓄積される。そして、MOSFET36をオフ動作させると、MOSFET36を介して流れていた電流が遮断され、今度はチョークコイル35からダイオード38を介して平滑コンデンサ39に電流が流れる。これにより平滑コンデンサ39への電荷の蓄積が行われ、チョークコイル35の磁気エネルギーが減少する。
【0021】そして、チョークコイル35に流れる電流がゼロになるタイミングでMOSFET36を再びオン動作させる。以下、同様の動作を繰返す。チョークコイル35に流れる電流をゼロまで落とすには入力電圧のピークよりも平滑コンデンサ39の電位が高い必要があり、昇圧型の交流-直流変換である必要がある。
【0022】平滑コンデンサ39の充電はMOSFET36のオン、オフ動作に依存するので、MOSFET36を常時オン、オフ動作することで入力電圧に依存しつつも平滑コンデンサ39に対して電流が常時流入することになる。このときの平滑コンデンサ39のリップル成分はコンデンサインプットタイプに比べて少なくなる。
【0023】今、仮に発光ダイオード42の順方向電圧の最低が1V、最大が電流20mA流したときの1.5Vとすると、発光ダイオード42を200個直列に接続したときの順方向電圧の総和は、200V?300Vの範囲となる。すなわち、平滑コンデンサ39の両端電圧が0?200Vの間は発光ダイオード42には全く電流が流れず、200V?300Vの間は電圧に応じて発光ダイオード42に流れる電流量が決定され、発光ダイオード42の発光量が電圧により可変される。そして、300Vのときが点灯回路43として最大照度を出せる状態となる。このときの電圧と電流の関係をグラフで示せば図2に示すようになる。
【0024】平滑コンデンサ39の両端電圧は、MOSFET36のオン時間を長くすればチョークコイル35に蓄積される磁気エネルギーがそれだけ多くなり、結果的に平滑コンデンサ39に電荷エネルギーとして変換される量が多くなって高くなる。逆に、MOSFET36のオン時間を短くすれば平滑コンデンサ39の両端電圧は低くなる。これを利用すれば点灯回路43に印加する電圧を200V?300Vの範囲で変化させることができ、点灯回路43を調光制御できることになる。
【0025】そこで、制御回路44は操作部46の点灯ボタンが操作されたときには平滑コンデンサ39の両端電圧が300VになるようにMOSFET36をオン、オフ制御し、操作部46の調光(1)ボタンが操作されたときには平滑コンデンサ39の両端電圧が例えば270VになるようにMOSFET36をオン、オフ制御し、操作部46の調光(2)ボタンが操作されたときには平滑コンデンサ39の両端電圧が例えば230VになるようにMOSFET36をオン、オフ制御し、操作部46の消灯ボタンが操作されたときには平滑コンデンサ39の両端電圧が200V未満になるようにMOSFET36をオン、オフ制御するかオフ保持状態の制御をすれば、点灯ボタンの操作時には点灯回路43は最大照度で点灯し、調光(1)ボタンの操作時には点灯回路43は約70%の照度で点灯し、調光(2)ボタンの操作時には点灯回路43は約30%の照度で点灯し、消灯ボタンの操作時には点灯回路43は消灯することになる。これにより、消灯制御、調光制御、点灯制御が簡単にできる。」

以上のウ.の事項及び【図1】の記載からみて、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
〔刊行物2に記載された発明〕
「商用交流電源31にダイオードブリッジ全波整流回路32の入力端子を接続し、
前記全波整流回路32の出力端子にインダクタとしてのチョークコイル35を介してスイッチ素子であるMOSFET36と抵抗37との直列回路を接続するとともに、前記チョークコイル35及びダイオード38を直列に介して平滑コンデンサ39を接続し、
前記平滑コンデンサ39に、複数個の発光ダイオード42を直列接続した回路を2個並列接続した点灯回路43を接続している、照明装置において、
点灯時または調光時には、MOSFET36をオン、オフ制御して、平滑コンデンサ39の両端電圧を発光ダイオード42が点灯する順方向電圧の総和の範囲となるようにし、
消灯時には、MOSFET36をオフ保持状態として、平滑コンデンサ39の両端電圧を上記の発光ダイオード42が点灯する順方向電圧の総和の範囲未満とし、発光ダイオード42に電流が流れないようにした、照明装置。」

(3)刊行物3には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明はLED照明装置に関するものである。」
イ.「【0008】
図1はこの発明に係るLED照明装置の斜視図である。図1において、1は従来の蛍光灯と同様な寸法の口金、2はたとえば1?2mほどの長いポリカーボネート製の管体、3は管体2を支持する断面略工字形状のアルミニウム製のブロックである。
【0009】
図2は図1のII-II線断面図である。
図2において、4はLED、5はLED4が配設されたプリント基板、6はプリント基板5とブロック3との間を接合する接着剤である。なお、接着剤6を使用しないでボルトなど周知の接続方法で接合しても良い。」
ウ.【図2】には、実施例1に係るLED照明装置の断面図が記載されている。

(4)刊行物4には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、LEDを発光源としたLED式照明装置に関するもので、より具体的には、蛍光灯に変わる照明装置に関する。」
イ.「【0019】
管体11は、透明或いは半透明のポリカーボネート製であって、断面略C字状に形成されている。つまり、管体11の本体11aは、その円周の一部が切断されて開口部11bが設けられる。この開口部11bは、本体11aの一端から他端まで軸方向に延びるように形成される。そして、本体11aの開口部11bに望む切り欠かれて対向する両内側端には、その全長に渡り第1突片11c,第2突片11dが形成される。それら第1突片11cと第2突片11dは、一定の間隔をおいて平行に配置され、第1,第2突片11c,11d間にガイド溝11eが形成される。このガイド溝11e内に、実装基板15の側縁が挿入されることで、その実装基板15が支持される。
【0020】
実装基板15は、ガラスエポキシ基板により構成され、その表面には、所定のプリント配線が形成される。実装基板15の所定位置には、多数のLED14が装着され、LED14のハンダ付けリードとプリント配線とがハンダ付け等で接続される。LED14は、一定のピッチで一列に配置しているが、そのレイアウトは任意である。また、本実施形態の照明装置10は、実装基板15にガラスエポキシ基板を用いることで、軽量化を図っている。」
ウ.【図3】(a)には、LED式照明装置の好適な一実施形態の断面図が記載されている。

(5)刊行物5には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を光源として用いられた照明装置、特に直管型蛍光灯タイプのLED照明装置用集光レンズおよびそれを用いたLED照明装置に関する。」
イ.「【0023】
図1?図3に示すように、LED照明装置100は、取付け板10と、基板20と、LED(発光ダイオード)30と、LED照明装置用集光レンズ40と、透光性のカバー50と、端子61を有する口金60とから構成されている。」
ウ.【図3】には、LED照明装置100の口金を外した状態の端面図が記載されている。

(6)刊行物6には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、既存の蛍光灯のソケットに着脱可能な、LED素子を光源とする蛍光灯型LED照明管と、この照明管を装着した蛍光灯型LED照明装置に関する。」
イ.「【0053】
次に、図2及び図3において、本発明のLED照明管50は、基板3と、この基板3上に設けられた複数のLED素子ユニット1A?2C(図5参照)と、これらLED素子ユニット1A?2CのLED制御回路20と、上部にスリット5aを有する直管状の筒体5と、その両端部に位置する口金6と、筒体5と口金6間に位置し、両部材を接続する接続具7と、基板3の上部に位置するヒートシンク8とで構成されている。」
ウ.【図4】には、本発明に係るLED照明管を、既存の蛍光灯本体に装着して本発明に係るLED照明装置とした例のLED照明管を平面S位置で切断した横断面図が記載されている。

(7)刊行物7には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、発光ダイオードを点灯するLED点灯装置およびこのLED点灯装置を具備する照明器具に関する。」
イ.「【0004】
特許文献1のLED点灯回路は、対地ノイズ電圧によるパルス電流やDC-DCコンバータ回路からの漏れ高周波電流が浮遊容量の大きいLEDと導電部との間を介してアースに流れることがあり、これにより、個々のLEDの点灯状態がちらつくことがあるという欠点を有する。また、対地ノイズ電圧バイパス用のコンデンサは、DC-DCコンバータ回路の2次側グランドと金属ケースとの間に接続するので、少なくとも数百ボルトの耐電圧を必要とする高価な部品であり、LED点灯装置をコスト上昇させるという欠点を有する。」
ウ.「【0030】
回路基板14は、例えば、絶縁性の放熱シート15を介して器具本体などの金属筐体16に取付けられている。金属筐体16は、アース線17により、アース(E)に接続されている。放熱シート15は、発光ダイオード5に発生した熱を金属筐体16に伝熱させるものであるが、回路基板14の金属と金属筐体16に挟まれているので、誘電体となり、発光ダイオード5とアース(E)との間には、それぞれ浮遊容量Csを有しているものである。」
エ.「【0032】
バイパス用コンデンサ6は、図1に示すように、発光ダイオード5の個々にそれぞれ並列的に接続されている。バイパス用コンデンサ6の合成容量は、発光ダイオード5とアース(E)との間の浮遊容量Csよりも大きくしている。」
オ.「【0048】
また、器具本体26は、図6に示すように、下端側内部に発光ダイオード5およびバイパス用コンデンサ6を配設しているLEDモジュール30および反射板31を配設している。また、器具本体26の内部には、電源ユニット32が配設されている。この電源ユニット32に点灯回路4などが配設されている。そして、器具本体26の上面側には、商用交流電源Vsからの図示しない電源線やアース線17を接続する端子台33が配設されている。」
カ.【図6】には、本発明の第4の実施形態を示す照明器具の一部切り欠き概略側面図が記載されている。

(8)刊行物8には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、LEDユニットと別置型の電源ユニットとが好ましくは3線で接続された電源別置型のLED点灯装置に関するものである。」
イ.「【0027】
LEDユニット2は複数のLEDチップをフレキシブル配線基板上で直列に接続したものであり、各LEDチップと器具筐体を兼ねるアルミ放熱板(導電部4)の間には絶縁物である誘電体シートが配置されているので、非充電導電部4であるアルミ放熱板と各LEDチップの間には浮遊容量Cyが存在することになる。
【0028】
この浮遊容量を介して対地ノイズ電圧によるパルス電流が流れると、LEDチップが破壊されることがある。そこで、本実施形態では、前記DC-DCコンバータ回路5の2次側グランドG2を前記金属ケース6に接続する対地ノイズ電圧バイパス用の第1のコンデンサC5を設けるとともに、金属ケース6とLEDユニット2の非充電導電部4とを接続するアース線7を設けたことを特徴とする。」
ウ.【図1】には、本発明の実施形態1の構成を示す回路図が記載されている。

(9)刊行物9には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
本発明は、主として高速道路のトンネルに設置される照明装置に関する。」
イ.「【0037】
光源部4のLED直列回路32は、直列に接続するLED31の個数で、供給する最低電圧が特定される。たとえば、定格電圧を3VとするLED31を20個直列に接続すると、LED直列回路32は、少なくとも60Vの電圧を供給して、スイッチング素子52で電流をコントロールする必要がある。460Vの三相交流は、電源部3で整流して出力電圧が600Vを超える電圧となる。したがって、この電源部3には、定格電圧を3VとするLED31を200個直列に接続して点灯することができる。ただ、LED直列回路32に直列接続するLED31の個数を多くすると、いずれかひとつのLED31が断線すると、直列に接続している全てのLED31を点灯できなくなる。したがって、LED直列回路32は、たとえば10個?100個のLED31を直列に接続して、スイッチング素子52でLED直列回路32の電流をコントロールする。」

5.判断
(1)特許法第29条第2項について
(1-1)本件発明と引用発明とを対比する。
ア.後者の「一方がアース電位GNDに接地された交流電源ACS」は、前者の「接地相を有する交流電源」に相当する。
イ.後者の交流電源ACSの「非接地側配線11及び接地側配線12」は、前者の交流電源からの「一対の給電路」に相当する。
ウ.後者の「供給される交流を整流する整流回路20と、整流回路20の整流出力をDC-DC変換して生成した直流を発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2とが直列接続された発光ダイオードモジュール40に供給して発光ダイオードLED1、発光ダイオードLED2を点灯する直流供給回路30とからなる非絶縁型の電源回路である点灯回路10」は、全体の点灯回路10としては、入力された交流を整流し直流電力として出力する非絶縁形の電源回路であるので、前者の「入力された交流を整流および昇圧した直流電力を出力する非絶縁型の電源回路」と、「入力された交流を整流し直流電力を出力する非絶縁型の電源回路」である限りにおいて一致する。
エ.後者の「発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2とが直列接続された発光ダイオードモジュール40」は、点灯回路10の直流供給回路30で生成された直流を供給され点灯するものであるので、前者の「電源回路が出力する直流電力によって点灯する複数の半導体発光素子、およびケースを有する光源ユニット」と、「電源回路が出力する直流電力によって点灯する複数の半導体発光素子を有する光源ユニット」である限りにおいて一致する。
オ.後者の「発光ダイオードモジュール40が取り付けられ、アース電位GNDに接地された金属製の照明器具本体1b」は、前者の「接地経路を介して接地された導電材料で形成されて、電源回路および光源ユニットを設けた器具外郭」と、「接地経路を介して接地された導電材料で形成されて、光源ユニットを設けた器具外郭」である限りにおいて一致する。
カ.後者の「接地側配線12に設けられたスイッチ15をオフしたとき」は、前者の「接地相の給電路が遮断された場合」に相当する。
キ.後者の「発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2との間の配線43sと器具本体1bとの間に生じる寄生容量Cs」は、「発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2との間の配線43s」も「発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2とが直列接続された発光ダイオードモジュール40」の部分であるので、前者の「光源ユニットと器具外郭との間に形成された浮遊容量」に相当する。
そして、後者の「接地側配線12に設けられたスイッチ15をオフしたとき、発光ダイオードLED1は、交流電源ACSから、発光ダイオードLED1と発光ダイオードLED2との間の配線43sと器具本体1bとの間に生じる寄生容量Cs、及びアース電位GNDを介して交流電力を供給される」ことは、前者の「前記接地相の給電路が遮断された場合、前記半導体発光素子は、前記交流電源から、前記光源ユニットと前記器具外郭との間に形成された浮遊容量、および前記接地経路を介して交流電力を供給され」ることに相当する。
ク.後者の「照明装置」は、前者の「照明器具」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点1〕
「接地相を有する交流電源から一対の給電路を介して入力された交流を整流し直流電力を出力する非絶縁型の電源回路と、
前記電源回路が出力する前記直流電力によって点灯する複数の半導体発光素子を有する光源ユニットと、
接地経路を介して接地された導電材料で形成されて、前記光源ユニットを設けた器具外郭とを備えて、
前記接地相の給電路が遮断された場合、前記半導体発光素子は、前記交流電源から、前記光源ユニットと前記器具外郭との間に形成された浮遊容量、および前記接地経路を介して交流電力を供給される、
照明器具。」

〔相違点1〕
本件発明は、「電源回路」が「昇圧した直流電力を出力」するものであり、「前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である」と、特定されているのに対して、引用発明は、交流電源ACSの電圧の最大振幅と発光素子との関係が前記のように特定されていない点。

〔相違点2〕
本件発明は、「光源ユニット」が「ケース」を有するものであるのに対して、引用発明は、ケースを有してない点。

〔相違点3〕
本件発明は、器具外郭が「電源回路」も設けたものであるのに対して、引用発明は、器具本体1bが電源回路である点灯回路10を設けているとは特定されていない点。

(1-2)相違点1について検討する。
ア.刊行物1又は刊行物2のいずれにも、「電源回路」が「昇圧した直流電力を出力」するものであり、「前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である」照明器具は記載されていない。この点は、刊行物3?9にも記載されていない。
イ.さらに、引用発明の点灯回路10は、入力された交流を昇圧した直流電力を出力するものではないので、そもそも、その交流電源の電圧の最大振幅を半導体発光素子の直列接続数で除した値を、半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値未満とすると、スイッチ15がオンである状態としても、視認可能な発光が出来なくなるものであり、「前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である」構成とすることに対する阻害要因を有するものである。
ウ.また、刊行物2に記載された発明は、消灯時に「平滑コンデンサ39の両端電圧」(「【0021】・・入力電圧のピークよりも平滑コンデンサ39の電位が高い」もの)を「発光ダイオード42が点灯する順方向電圧の総和の範囲未満」とし、発光ダイオード42に電流が流れないようにしたものであって、「交流電源の電圧の最大振幅」を発光ダイオード42が点灯する順方向電圧の総和の範囲未満とするものではないので、引用発明に、刊行物2記載の技術事項を組み合わせても、「交流電源の電圧の最大振幅を」半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、閾値は、半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である構成とはならない。
エ.さらに、引用発明の電流ループは、発光ダイオードと寄生容量とにより形成されるものであり、各発光ダイオードにかかる電圧値は、交流電源の電圧を各発光ダイオードと寄生容量とで分圧した値となるものであって、その値を微発光状態となる微弱電流が流れないような値としたところで、「前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である」ものとはならない。
オ.特許異議申立人は、
「上記電流ループにおいては、発光ダイオードの直列接続数が多くなるほど各発光ダイオードにかかる電圧値が小さくなり、当該接続数に応じた下限値以下の電圧となったときには非点灯の状態となることは技術常識であり、このことは甲2の図2、段落【0023】?【0025】にも記載されている。そして、上述のとおり、甲1および甲2は、何れもLEDを光源とした照明装置に関する文献であって技術分野が共通しており、甲1発明に甲2に記載されている技術事項を組み合わせることに困難性はない。
したがって、甲1発明において、スイッチ15がオフである状態で上記電流ループが形成される構成とした場合に、微弱電流が流れないようにするために、上記の技術常識や甲2の記載に基づいて、相違点5に係る『前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値である』との構成を採用することは当業者にとって容易である。」と主張しているが、上記イ.?エ.で述べた様に、特許異議申立人の主張は理由がない。

したがって、本件発明は、相違点2、3について検討するまでもなく、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2?9に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法第36条第6項第2号について
(ア)「ケース」について
「ケース」は、「箱。入れ物。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]の意味で普通に用いられている日本語であって、光源ユニットが有する「箱。入れ物。」であることが明確である。
(イ)「半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値」について
本件発明は、本件明細書【0015】の「小型、低コストで微発光を抑制することができ、且つ施工性を向上させた照明器具を提供する」ことを目的とするものであり、本件発明の「半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値」は、発明の目的を達成し得るに足りる微発光抑制の程度を特定したものと解すべきであり、「認識できない」ことに意味を有し、「認識できる」か「認識できない」かの境界自体にを特別な意味を有するものと解すべきではない。
そうすると、「半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値」は、照明装置の用途等に対応して定まる、現実的な「認識できない」発光レベルで決められる値であって、「人の目に認識できない」が、人間の個体差や周囲の環境によって異なることを根拠に、微発光を抑制する本件発明が不明確であるとまではいえない。

(3)特許法第36条第4項第1号について
ア.本件特許公報の【発明の詳細な説明】には、
(ア)【発明が解決しようとする課題】として、
「【0010】・・従来の照明器具B1では、スイッチSW100をオフした状態でも、半導体発光素子103が僅かに発光する微発光を発生し、半導体発光素子103が点灯しているように見えるという問題があった。
【0011】これは、光源ユニット102を器具外郭104に近接して取り付けた場合、光源ユニット102と器具外郭104との間に発生する浮遊容量Cbによるものである。具体的には、スイッチSW100をオフした状態でも、交流電源110-給電路Wb1-電源回路101-半導体発光素子103-浮遊容量Cb-器具外郭104-接地経路Wb4-接地経路Wb3-交流電源110の電流ループが存在する。この電流ループには、交流電源110から電流が流れ込み、半導体発光素子103は、この電流ループを流れる電流によって、スイッチSW100をオフした状態でも微発光する。なお、浮遊容量Cbは、半導体発光素子103と器具外郭104との間の浮遊容量、半導体発光素子103が実装された基板と器具外郭104との間の浮遊容量、光源ユニット102のケースと器具外郭104との間の浮遊容量等で形成される。」
「【0015】本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型、低コストで微発光を抑制することができ、且つ施工性を向上させた照明器具を提供することにある。」と記載されている。
(イ)また、【発明を実施するための形態】として、
「【0027】・・照明器具A1において、光源ユニット2は、器具外郭4に近接して取り付けられており、光源ユニット2と器具外郭4との間には、浮遊容量Caが発生している。而して、スイッチSW1をオフした状態でも、交流電源10-給電路Wa1-電源回路1-半導体発光素子3-浮遊容量Ca-器具外郭4-接地経路Wa4-接地経路Wa3-交流電源10の電流ループが存在する。この電流ループには、交流電源10から電流が流れ込み、この電流ループ内の半導体発光素子3に電流が流れる。このとき、半導体発光素子3には、交流電圧が印加され、交流電圧の半周期毎に、順電圧が印加される期間と逆電圧が印加される期間とが交互に繰り返される。なお、浮遊容量Caは、半導体発光素子3と器具外郭4との間の浮遊容量、半導体発光素子3が実装された基板と器具外郭4との間の浮遊容量、光源ユニット2のケースと器具外郭4との間の浮遊容量等で形成される。」
「【0028】・・半導体発光素子3の順電流Ifを0.01mA未満に設定し、人の目が半導体発光素子3の発光を認識できないようにする。」
「【0029】図2では、半導体発光素子3に順電流If=0.01mAが流れているとき、その順電圧Vfは、約2.3Vになる。そこで・・半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfが1.5V以下になるように、半導体発光素子3の直列接続数を設定する。例えば、交流電圧Vi1の実効値が100Vの場合、交流電圧Vi1の最大振幅は141Vになる。而して、半導体発光素子3の直列接続数を94個以上にすれば、半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfの最大値が1.5V以下になり、半導体発光素子3の順電流Ifの最大値を0.01mA未満に設定できる。」
ことが記載されている。
イ.まず、「浮遊容量Ca」は、「半導体発光素子3と器具外郭4との間の浮遊容量、半導体発光素子3が実装された基板と器具外郭4との間の浮遊容量、光源ユニット2のケースと器具外郭4との間の浮遊容量等で形成される」(【0027】)ものであって、光源ユニットの負側の端の半導体発光素子3のカソード電極、及び当該半導体発光素子3が実装された基板の該カソード電極が接続された導電部分(以下、まとめて「光源ユニット負側導電部分」という。)と、器具外郭4との間にも浮遊容量が存在することは技術常識であって、【0027】の電流ループは、交流電源10-給電路Wa1-電源回路1-光源ユニット2の各半導体発光素子3-光源ユニット負側導電部分-浮遊容量Ca-器具外郭4-接地経路Wa4-接地経路Wa3-交流電源10の電流ループとしても存在することは自明である。
ウ.そして、【0029】の「半導体発光素子3の直列接続数を94個以上にすれば」、光源ユニット負側導電部分と、器具外郭4との間の浮遊容量が如何なる値(如何に大きくても)でも、上記イ.の電流ループにおいて、「半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfの最大値が1.5V以下になり、半導体発光素子3の順電流Ifの最大値を0.01mA未満に設定できる。」条件が成立し、【0028】の「半導体発光素子3の発光を認識できないようにする」ことができて、【0015】の微発光を「抑制」することができるものである。
エ.また、上記ウ.に記載したように抑制は、上記イ.の電流ループにおいて、光源ユニット負側導電部分と、器具外郭4との間の浮遊容量が如何なる値(大きくても)でも生ずる作用効果であって、「光源ユニット2のケース」および「電極」の構成が特定されている必要性も認められない。
オ.そうすると、【発明の詳細な説明】の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に記載されているものと認められる。

(4)特許法第36条第6項第1号について
(ア)本件特許公報の【発明の詳細な説明】には、「本発明の照明器具は、接地相を有する交流電源から一対の給電路を介して入力された交流を整流および昇圧した直流電力を出力する非絶縁型の電源回路と、前記電源回路が出力する前記直流電力によって点灯する複数の半導体発光素子、およびケースを有する光源ユニットと、接地経路を介して接地された導電材料で形成されて、前記電源回路および前記光源ユニットを設けた器具外郭とを備えて、前記接地相の給電路が遮断された場合、前記半導体発光素子は、前記交流電源から、前記光源ユニットと前記器具外郭との間に形成された浮遊容量、および前記接地経路を介して交流電力を供給され、前記交流電源の電圧の最大振幅を前記半導体発光素子の直列接続数で除した値が閾値未満となり、前記閾値は、前記半導体発光素子の発光レベルが人の目に認識できない順電圧の値であることを特徴とする。」(【0016】)ことが、上記「(3)ア.(ア)」の「・・小型、低コストで微発光を抑制することができ、且つ施工性を向上させた照明器具を提供する」という【発明が解決しようとする課題】、及び、上記「(3)ア.(イ)」の「半導体発光素子3の直列接続数を94個以上にすれば・・半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfの最大値が1.5V以下になり、半導体発光素子3の順電流Ifの最大値を0.01mA未満に設定できる半導体発光素子3のそれぞれの順電圧Vfの最大値が1.5V以下になり、半導体発光素子3の順電流Ifの最大値を0.01mA未満に設定でき」(【0029】)、「半導体発光素子3の発光を認識できないようにする」(【0028】)ことができる【発明を実施するための形態】の動作説明とともに記載されており、【0016】の構成と、【発明が解決しようとする課題】、【発明を実施するための形態】の動作説明とは、相互に対応しているので、本件発明(【0016】と同じもの)は発明の詳細な説明に記載された発明である。

(イ)特許異議申立人は、特許異議申立書「第3 5(3)(ア)」において「上記『小型、低コストで』とは、『半導体発光素子103と同数のコンデンサC100』のような構成を含まないことを意味するものと解される。・・本件発明の範躊には、例えば、バイポーラトランジスタによって光源ユニットの両端に印加される電圧を減らして微発光を防止する甲1発明の構成に加えて前記構成要件Eの構成を採用した場合や、甲7に記載されている、発光ダイオード5の個々にそれぞれ並列してバイパス用コンデンサ6を設けた構成(段落【0032】等)に加えて前記構成要件Eの構成を採用した場合が含まれている。
よって、本件発明の範躊には、上記課題の解決手段が反映されているとはいえないものも含まれている。」旨主張しているが、
(a)微発光の原因となる浮遊容量は、そもそも導体間距離に反比例して大きくなるものであって、微発光が小型化で顕著になる性質のものあることや、「小型、低コスト」が照明器具における一般的な課題であることから、【0015】の「小型、低コスト」も当該一般的な課題を記載したと解するべきものであって、「半導体発光素子103と同数のコンデンサC100」のような構成を含まないことを意味すると解するのは適当でない。
さらに、【発明を実施するための形態】で説明されている微発光を抑制が、バイパス用コンデンサの存在により機能しなくなるようなものでもない。
(b)また、本件発明は「接地相の給電路が遮断された場合、前記半導体発光素子は、前記交流電源から、前記光源ユニットと前記器具外郭との間に形成された浮遊容量、および前記接地経路を介して交流電力を供給され」るものであるので、刊行物1の「【0065】・・スイッチ15をオフした場合、バイポーラトランジスタ31はオフ状態となる。つまり、交流電源ACSの正の半周期での正周期微弱電流Isp(図1(C)参照)、交流電源ACSの負の半周期での負周期微弱電流Ism(図1(C)参照)が流れることはない。」(すなわち、交流電力を供給されない)ものは排除されている。
(c)そうすると、特許異議申立人の主張は理由がない。

(ウ)また、特許異議申立人は、特許異議申立書「第3 5(3)(イ)」において「『光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量が他の浮遊容量に比べて支配的である』ことや、『光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量の中でも電極と器具外郭との間に発生する浮遊容量が支配的である』ことは本件明細書から読み取ることはできないから、サポート要件を満たさない」旨主張しているが、
「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量が他の浮遊容量に比べて支配的である」ことや、「光源ユニットのケースと器具外郭との間の浮遊容量の中でも電極と器具外郭との間に発生する浮遊容量が支配的である」ことは、請求項に記載された発明特定事項ではないので、当該事項が、発明の詳細な説明に記載されていないことをもって、本件発明が発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。
そうすると、特許異議申立人の主張は理由がない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-05-31 
出願番号 特願2011-198278(P2011-198278)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (H05B)
P 1 651・ 121- Y (H05B)
P 1 651・ 537- Y (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三島木 英宏  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 真一
仁木 学
登録日 2017-09-08 
登録番号 特許第6202419号(P6202419)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 照明器具  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ