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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A63F
管理番号 1341128
判定請求番号 判定2017-600037  
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 判定 
判定請求日 2017-09-13 
確定日 2018-05-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第4367956号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 甲第2号証,甲第4号証,甲第5号証,甲第10乃至12号証に示す「全自動麻雀卓 悟空」は,特許第4367956号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求は,甲第2号証,甲第4号証,甲第5号証,甲第10乃至12号証に示す製品(以下「イ号製品」という。)は,特許第4367956号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する,との判定を求めたものであると認める。
ここで,特許第4367956号発明は,請求項1乃至4に係るものであるところ,判定請求書には,イ号製品が「どの請求項に係る発明の技術的範囲に属する」との判定を求めるものであるかについては,明確には特定されない。
しかしながら,判定請求書やその後に提出された回答書において,特許第4367956号の請求項1のみに係る発明とイ号製品との検討に終始しているから,上記のとおり認定した。
また,特許第4367956号の請求項1に係る発明を,以下「本件発明1」ということとする。

第2 本件発明1
1 手続の経緯
平成14年 8月 9日 本件の原出願の出願
平成18年 7月28日 本件の出願
平成21年 9月 4日 本件の設定登録
平成29年 9月12日 本件判定請求
平成29年 9月29日 審尋
平成29年12月19日 回答書
平成30年 2月 9日 答弁書,上申書

2 本件発明1
本件発明1は,特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりであって,本件発明1の構成要件を符号を付して分説すると以下のとおりである(以下「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。
なお,この分説は,請求人の判定請求書によるものであるが,被請求人との間に争いはなく,妥当と認められるので,そのとおりとした。

A 各場へ牌を供給するための4つの開口が設けられている天板を有する本体と,
B 磁性体を埋設した牌を攪拌するため前記本体内に設けられた攪拌装置と,
C 前記各場の開口に対応してそれぞれ前記攪拌装置から牌を取り上げる汲上機構と,
D 該汲上機構によって取り上げられた牌を一方向に整列して送り出すための整列機構と,
E 該整列機構から牌を受け取り所定の整列牌を形成して待機させるための形成・待機機構と,
F 該形成・待機機構で形成され待機している前記整列牌を対応する開口から天板上に上昇させる機構とを備えた自動麻雀卓であって,
G 前記攪拌装置は回転するターンテーブルと外壁とが設けられ,攪拌された牌は前記ターンテーブルの回転により外壁に向かって移動させ,
H 前記牌を取り上げる汲上機構は円筒回転体が設けられ,
I 該円筒回転体の周面部位には前記円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面を配設し,
J 前記吸着面の中心には磁石を埋没し,前記吸着面に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転体を回転させ,
K 前記整列機構は,前記円筒回転体に吸い上げられた牌の方向を揃えるため前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材と,
L 該案内部材の延長上であって前記円筒回転体の頂上付近には前記円筒回転体の吸着面から牌を剥離して前記形成・待機機構に導くための誘導路を設け,
M 前記円筒回転体によって下方位置にて取り上げられた牌は,前記案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動するとともに前記誘導路の一端に捕捉されて前記円筒回転体から離脱するようにした
N ことを特徴とする自動麻雀卓。

第3 当事者の主張の概要
1 請求人の主張の概要
イ号製品は,本件発明1の「構成要件A」乃至「構成要件N」を充足する。
イ号製品は,本件発明1の構成要件Mを充足しないとした場合であっても,構成要件Mに関して均等の要件を満たすから,構成要件Mと均等な構成を有するものである。
よって,イ号製品は,本件発明1の技術的範囲に属する。

2 被請求人の主張の概要
イ号製品は,本件発明1の構成要件I,K,L,Mを充足しない。
イ号製品は,構成要件Mに関して均等の要件を満たさない。
よって,イ号製品は,本件発明1の技術的範囲に属さない。

第4 イ号製品
1 甲第2及び4号証から,以下の事項が看取できる。
ア イ号製品は「自動麻雀卓」であることが看取できる。
したがって,上記アより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(1)「イ号製品は,自動麻雀卓である。」

2 甲第4号証の図A及び図Bから,以下の事項が看取できる。
イ 中央に設けられた一つの円形の孔と,四辺のそれぞれ内側に設けられた長方形の孔(以下,「長方形孔」という。)を有する緑色の四角形状の板状体(以下,「板状体」という。)を備えた装置。
ウ 各長方形孔の上に2段に積まれた牌。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,板状体の四辺のそれぞれ内側に設けられた長方形孔は,「各場へ牌を供給する」ための4つの孔であることは自明である。
板状体の下部には空間が存在し,空間から見て,板状体は上面に相当し,空間の四つの側面には外界を隔てる壁体が設けられ,空間の下面は有底であることは自明である。
各長方形孔の上に2段に積まれた牌は,「各場に対応する長方形孔から板状体の上に上昇した整列牌」であることは自明であり,整列牌を形成して待機させるための形成・待機機構を有すること,整列牌を上昇させる機構を有することも自明である。
したがって,上記イ,ウより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(2-1)「各場へ牌を供給するための4つの長方形孔が設けられている板状体を有する自動麻雀卓」,
(2-2)「整列牌を形成して待機させるための形成・待機機構」,
(2-3)「形成・待機機構で形成され待機している整列牌を対応する長方形孔から板状体の上に上昇させる機構」
(2-4)「板状体の下部には,該板状体を天面とし,四周には壁を設けた有底の空間が存在すること」

3 甲第12号証の悟空牌内部構造の写真から,以下の事項が看取できる。
エ 牌の内部に黒色の直方体が埋め込まれていること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,黒色の直方体は,磁石を含む少なくとも磁性体であることは自明である。
したがって,上記エより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(3)「磁性体を埋設した牌」

4 甲第4号証の図A及び図C,甲第10号証の写真7から,以下の事項が看取できる。
オ 板状体の下部に,灰色の4枚の羽根状体(以下,「羽根状体」という。)が設けられ,該羽根状体間に多数の牌が存在しうる空間が設けられていること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,羽根状体の下方にはターンテーブルが設けられ,羽根状体はターンテーブル上で回転する牌をターンテーブルの中心から外周方向へ移動させるための部材であって,羽根状体とターンテーブルが攪拌装置を構成していることは自明である。
したがって,上記オより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(4-1)「板状体の下部に設けられた羽根状体とターンテーブルから構成される攪拌装置」
(4-2)「攪拌された牌は,ターンテーブルの中心から外周方向へ移動させられること」

5 甲第4号証の図C乃至H,甲第11号証の写真17及び18から,以下の事項が看取できる。
カ 灰色の円筒形部材(以下,「円筒形部材」という。)の外周曲面に緑色の帯状体(以下,「帯状体」という。)が巻回されていること。
キ 円筒形部材に巻回された帯状体上に,牌が載置されること。
ク 牌の絵柄面が略直立した状態にあっても,円筒形部材に巻回された帯状体上に載置されること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,円筒形部材は(甲第4号証の図Dにおける)時計回りに回転し,巻回された帯状体もその長手方向に,時計回りに回転して,円筒形部材と帯状体とが協働して,攪拌装置によって攪拌された牌を取り上げることから,円筒形部材と帯状体が汲上機構の機能を有しているといえる。
円筒形部材と帯状体が各場に対応して,攪拌装置の外側に設けられていることは自明である。
したがって,上記カ乃至クより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(5)「各場に対応して設けられ,攪拌装置により攪拌された牌を,回転することによって取り上げる円筒形部材と帯状体から構成される汲上機構」

6 甲第4号証の図E乃至I,甲第5号証の図1及び図2,甲第10号証の写真9乃至14,甲第11号証の写真17及び19から,以下の事項が看取できる。
ケ 牌は,円筒形部材の頂上部付近で,(甲第4号証の図Gにおける)帯状体の進行方向右側方にある灰色の突起状体(以下,「突起状体」という。)に接触しうること。
コ 突起状体に接触した牌の向きが変化すること。
サ 牌は,帯状体が円筒形部材の外周面から離れた後も,帯状体上に載置されていること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,牌は円筒形部材と帯状体により(甲第4号証の図Gにおける)下方から上方に移動せしめられること,円筒形部材の頂上付近で突起状体に接触することで,牌の絵柄面の短辺(以下,「短辺」という。また,牌の絵柄面の長辺を「長辺」という。)を前方とする向きに整列され,そのまま帯状体により搬送方向下流に向けて搬送されることは自明である。
突起状体が,各場に対応して設けられていることは自明である。
したがって,上記ケ乃至サより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(6)「各場に対応した円筒形部材と帯状体によって取り上げられた牌は,下方から上方に移動し,円筒形部材の頂上部付近で帯状体の進行方向右側方にある突起状体に接触すると,短辺を前方とする向きに整列せしめられ,さらに円筒形部材の頂上付近において,帯状体が円筒形部材から離れることにより,帯状体に載置された牌も円筒形部材から剥離されて搬送方向下流に向けて搬送されること」

7 甲第11号証の写真1,2及び6から以下の事項が看取できる。
シ 円筒形部材は,円筒形状部と,該円筒形状部の平面の一側に円筒形状部の円周よりも一回り大径の鍔部からなること。
ス 円筒形状部の厚さは,32.61ミリであること。
セ 円筒形状部の周面には,略等間隔に3箇所の平坦面を有し,該平坦面の周方向長さは,33.27ミリであること。(なお,甲第11号証の「第2 写真の説明」 「1 写真1及び2」には,当該箇所の寸法について「32.27mm」と記載されているが,写真2のデジタルノギスの実測値が「33.27」であるため,上記のとおり認定した。)
ソ 円筒形部材の円筒形状部の一側端から突起状体の当該一側端側の側面までの距離は27.0mmであること。
したがって,上記シ乃至ソより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(7)「円筒形部材は,厚さが32.61ミリの円筒形状部と,円筒形状部の平面の一方に円筒形状部の円周よりも一回り大径の鍔部を有し,円筒形状部の周面には,略等間隔に3箇所の平坦面が設けられ,該平坦面の周方向長さは,33.27ミリであって,筒形部材の円筒形状部の一側端から突起状体の当該一側端側の側面までの距離は27.0ミリであること」

8 甲第11号証の写真3乃至5から以下の事項が看取できる。
タ 牌の長辺は,32.91ミリであること。
チ 牌の短辺は,23.97ミリであること。
ツ 牌の絵柄面と該絵柄面と対向する面との距離(以下,「厚さ」という。)は,17.72ミリであること。
したがって,上記タ乃至ツより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(8)「長辺は32.91ミリ,短辺は23.97ミリ,厚さは,17.72ミリである牌」

9 甲第11号証の写真7-1,写真12及び13から以下の事項が看取できる。
テ 円筒形部材の外周曲面に巻回された帯状体は,円筒形部材の外周曲面以外にも存在していること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,帯状体はベルトコンベアのような無端状の移送体として機能していることは自明である。
したがって,上記テより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(9)「帯状体は無端状の移送体であること」

10 甲第11号証の写真23及び24から以下の事項が看取できる。
ト 円筒形部材の内側には,外周面に形成された平坦面に対応して,黒い箱状体(以下,「箱状体」という。)が略等間隔に3個設けられていること。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,牌には磁性体が埋設されており,円筒形部材は牌を取り上げるにあたって,円筒形部材の内部にある上記箱状体が,牌を磁気力によって吸着することを可能とする性質を有するものであることは自明である。
したがって,上記トより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(10)「円筒形部材の内部には,円筒形部材の外周部に磁気力によって磁性体を内蔵した牌を吸着可能とする箱状体が設けられていること」

11 甲第11号証の写真1及び2,写真3乃至5,写真17及び18から以下の事項が看取できる。
ナ 円筒形部材の厚さは,牌の長辺よりも短いこと。
ニ 円筒形部材の最下部から頂上部にかけての露出した部分(以下,「露出部」という。)において,円筒形部材の鍔部が設けられていない側から,円筒形部材を下から上に移動する牌に対して接触する部材はないこと。
そして,自動麻雀卓の技術常識を踏まえると,牌は露出部において,取り上げられた向きのまま円筒形部材を下から上に移動することは自明である。
したがって,上記ナ及びニより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(11)「円筒形部材によって下方位置にて取り上げられた牌は,取り上げられた向きのまま上方に移動すること」

12 甲第4号証の図G乃至I及びL,甲第11号証の写真8乃至13から以下の事項が看取できる。
ヌ 帯状体によって,円筒形部材の頂上付近において円筒形部材から剥離され,そのまま搬送される整列済みの牌が,搬送方向下流にある形成・待機機構に導かれることは自明である。
したがって,上記ヌより,イ号製品には以下の事項が認められる。
(12)「円筒形部材の頂上付近において円筒形部材から剥離された整列済みの牌は,帯状体によって形成・待機機構に導かれる」

上記「1」?「12」で認定した事項からみて,イ号製品の構成を,本件特許発明1の構成要件の分説と対応するように分説すると,イ号製品は次の構成を具備するものである(以下「構成(a)」などという。)。
(a) 各場へ牌を供給するための4つの長方形孔が設けられている板状体を有し,
(b) 磁性体を埋設した牌を攪拌するため,板状体の下部であって,該板状体を天面とし,四周には壁を設けた有底の空間に設けられた羽根状体とターンテーブルから構成される攪拌装置と,
(c) 前記各場の長方形孔に対応して,それぞれ攪拌装置から牌を取り上げる円筒形部材と該円筒形部材に巻回された帯状体とから構成される汲上機構と,
(d) 円筒形部材と帯状体によって取り上げられた牌は,円筒形部材の頂上部付近で帯状体の進行方向右側方にある突起状体に接触すると,短辺を前方とする向きに整列せしめられ,さらに円筒形部材の頂上付近において,帯状体が円筒形部材から離れることにより,帯状体に載置された牌も円筒形部材から剥離され,整列された牌を搬送方向下流に向けて搬送され,
(e) 牌を整列させて整列牌を形成して待機させるための形成・待機機構と,
(f) 該形成・待機機構で形成され待機している前記整列牌を対応する長方形孔から板状体上に上昇させる機構とを備えた自動麻雀卓であって,
(g) 攪拌装置は,羽根状体とターンテーブルから構成され,攪拌された牌はターンテーブル回転により,ターンテーブルの中心から外周方向へ移動させられ,
(h) 前記牌を取り上げる円筒形部材と帯状体は,回転する円筒形部材と該円筒形部材に巻回された無端状の帯状体であり,
(i) 該円筒形部材の周面部位には前記円筒形部材の一側端から32.61ミリの幅をもつ平坦面を配設し,牌の長辺は32.91ミリ,短辺は23.97ミリ,厚さは,17.72ミリであり,
(j) 前記平坦面の内部には磁性体を内蔵した牌を吸着可能とする箱状体を設け,前記平坦面に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒形部材と帯状体とを回転させ,
(k) 前記突起状体は,帯状体の進行方向右側方,かつ筒形部材の円筒形状部の一側端から突起状体の当該一側端側の側面までの距離を27.0ミリとするものであって,前記円筒形部材と帯状体とに吸い上げられた牌の方向を揃えるため円筒形部材の頂上部付近で牌に接触し,
(l) 前記円筒形部材の頂上付近において,帯状体が円筒形部材から離れることにより,帯状体に載置された牌も筒形部材の平坦面から剥離し,該剥離した牌は帯状体によって前記形成・待機機構に導かれ,
(m) 前記円筒形部材と帯状体によって,円筒形部材の下方位置にて取り上げられた牌は,取り上げられた向きのまま上方に移動し,円筒形部材の頂上部付近で,牌が円筒形部材から離れるようにした,
(n) 自動麻雀卓。

第5 イ号製品が本件発明1の「構成要件A」乃至「構成要件N」を充足するか否かについて
1 本件発明1の構成要件とイ号製品の構成の対比及び判断
(1)構成要件Aと構成aについて
イ号製品の「4つの長方形孔」及び「板状体」は,本件発明1の「4つの開口」及び「天板」に相当する。
また,イ号製品は自動麻雀卓であり,甲第2号証の装置全体を写した写真を参酌すると,イ号製品も本件発明1の「本体」に相当する構成を有するものと認められる。
したがって,イ号製品の構成aは,構成要件Aを充足する。
(2)構成要件Bと構成bについて
イ号製品の「板状体」は,本件発明1の「天板」に相当し,その「天板」は,本件発明1の「本体」に相当する構成に設けられていることは,上記(1)で述べたとおりである。
また,イ号製品の磁性体を埋設した牌を攪拌するための「羽根状体とターンテーブル」は,板状体の下部に設けられているのであるから,「本体内」に設けられているといえる。
また,本体内の空間の四周には壁が設けられている。
したがって,イ号製品の構成bは,構成要件Bを充足する。
(3)構成要件Cと構成cについて
イ号製品の「長方形孔」は,本件発明1の「開口」に相当することは,上記(1)で述べたとおりである。
したがって,イ号製品の構成cは,構成要件Cを充足する。
(4)構成要件Dと構成dについて
イ号製品の「突起状体」は,牌が接触すると,牌を短辺を前方とする向きに整列し,「突起状体」に接触して整列された牌は,搬送方向下流に向けて搬送されるから,イ号製品の構成dが,本件発明1の「牌を一方向に整列して送り出す」に相当する機能を有していることは自明である。
したがって,イ号製品の構成dは,構成要件Dを充足する。
(5)構成要件Eと構成eについて
イ号製品の「整列牌」は,突起状体に接触して整列されて,搬送方向下流に向けて搬送された牌から形成されたものであることは自明である。
そして,上記「突起状体に接触して整列されて,搬送方向下流に向けて搬送」されることは,上記(4)で述べたとおり,本件発明1の構成dの「牌を一方向に整列して送り出す」に相当する機能のことである。
したがって,イ号製品の構成eは,構成要件Eを充足する。
(6)構成要件Fと構成fについて
イ号製品の「長方形孔」及び「板状体」が,本件発明1の「開口」及び「天板」に相当することは上記(1)で述べたとおりである。
したがって,イ号製品の構成fは,構成要件Fを充足する。
(7)構成要件Gと構成gについて
イ号製品の「羽根状体とターンテーブル」から構成される攪拌装置は,本体内に設けられ,該本体内の空間の四周には壁を設けられていることは,上記(2)で述べたとおりである。
イ号製品の「攪拌された牌」は,ターンテーブル回転により,ターンテーブルの中心から外周方向へ移動させられており,イ号製品の構成gが,本件発明1の「攪拌された牌は前記ターンテーブルの回転により外壁に向かって移動」させるに相当する機能を有していることは自明である。
したがって,イ号製品の構成gは,構成要件Gを充足する。
(8)構成要件Hと構成hについて
イ号製品の「牌を取り上げる円筒形部材と帯状体」は,本件発明1の「汲上機構」に相当し,イ号製品の「牌を取り上げる円筒形部材と帯状体」は,回転する円筒形部材と該円筒形部材に巻回された無端状の帯状体とから構成されるものである。
したがって,イ号製品の構成hは,構成要件Hを充足する。
(9)構成要件Iと構成iについて
イ号製品の「平坦面」は,本件発明1の「吸着面」に相当する。
イ号製品の平坦面の幅は「32.61ミリ」であり,牌の横幅に相当する牌の短辺は「23.97ミリ」,牌の縦幅に相当する牌の長辺は「32.91ミリ」であって,牌の横幅より8.64ミリ大きく,牌の縦幅より0.3ミリ小さいから,イ号製品の平坦面の幅は,牌の縦幅に近似しているといえる。
ここで,本件発明1の「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」は,明細書の段落【0006】乃至【0009】及び【0033】の記載等を参酌すれば,吸着面の幅が,牌の横幅と同一か,牌の吸着面からはみ出た部分に案内部材を接触させることによって牌の方向を揃えることができる程度に狭くなっていることを意味し,少なくとも牌の縦幅に近似した幅を有する吸着面はこれに含まれないと解するのが相当である。
これに対し,イ号製品の平坦面の幅は,上記のとおり,牌の縦幅に近似しているから,構成要件Iの「前記円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅」であるとはいえないし,また,「円筒形部材の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に案内部材を当接させることによって,牌の向きを揃える」という本件発明1の技術的意義を発揮させるものでもない。
したがって,イ号製品の構成iは,構成要件Iを充足しない。
(10)構成要件Jと構成jについて
イ号製品の「箱状体」は,磁気力により牌を吸着しているものであり,技術常識を踏まえると,平坦面の中心に埋没されている磁石を含む磁性体であることは自明である。
したがって,イ号製品の構成jは,構成要件Jを充足する。
(11)構成要件Kと構成kについて
イ号製品の「突起状体」は,筒形部材の円筒形状部の一側端から突起状体の前記一側端側の側面までの距離を27.0ミリになるように,つまり筒形部材の円筒形状部の他側端から5.61ミリも内側に配設されていると認められる。
そして,本件発明1の技術的意義は上記(9)で述べたとおり,「円筒形部材の周面部位に配設された「円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面」上で,吸着面からはみ出た牌の部分に案内部材を当接させることによって,牌の向きを揃える」ことにあることからすると,構成要件Kの「前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材」は,吸着面からはみ出した牌の部分に当接して牌の向きを揃えることができる位置に案内部材を配設することを意味し,少なくとも吸着面の外側の軌道に近似する線よりも内側に配設された案内部材はこれに含まれないと解される。
これに対し,イ号製品の突起状体は,吸着面の外側の軌道に沿って配設されたものであるとはいえないし,また,吸着面からはみ出た牌の部分に案内部材を当接させることによって,牌の向きを揃えるという技術的意義を発揮させるものでもない。
したがって,イ号製品の構成kは,構成要件Kを充足しない。
(12)構成要件Lと構成lについて
イ号製品において,「帯状体」は,円筒形部材の頂上付近において円筒形部材から離れることで,帯状体に載置された牌を筒形部材の平坦面から剥離し,該剥離した牌を形成・待機機構に導くための機能を有している。
よって,イ号製品の「帯状体」は,本件発明1の「誘導路」に相当する機能を有していると認められる。
したがって,イ号製品の構成lは,構成要件Lを充足する。
(13)構成要件Mと構成mについて
イ号製品の「帯状体」は,上記(12)で述べたとおり,本件発明1の「誘導路」に相当する機能を有している。
しかし,イ号製品の「帯状体」は,構成(h)のとおり,無端状であるから,構成要件Mでいうところの「牌」を「捕捉」して「前記円筒回転体から離脱するようにする」ための「誘導路」の「一端」を観念することができず,よって,「一端」を備えるものではない。
すなわち,イ号製品において,牌は筒形部材の平坦面から剥離して,筒形部材から離脱しているとしても,それは,「誘導路の一端」に捕捉されることによるものではない。
したがって,イ号製品の構成mは,構成要件Mを充足しない。
(14)構成要件Nと構成nについて
イ号製品は,自動麻雀卓である。
したがって,イ号製品の構成nは,構成要件Nを充足する。

2 小括
以上のとおり,イ号製品は本件発明1の構成要件I,K及びMを充足しない。

3 まとめ
イ号製品は本件発明1の構成要件を充足しないものである。

第6 均等の判断
請求人は,構成要件Mの均等について主張しているので,以下,検討する。
1 均等の要件
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)は,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,以下の5つの要件をすべて満たす場合には,対象商品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であると,判示している。
第1要件:異なる部分が特許発明の本質的部分ではない。
第2要件:異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものである。
第3要件:異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものである。
第4要件:対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではない。
第5要件:対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない。

2 第5要件について
事案に鑑み,まず第5要件を検討する。
本件は,「第1 請求の趣旨」に記載したとおり,本件判定の請求は,イ号製品が,本件発明1の技術的範囲に属するかについての判定の請求であり,上記第5要件は以下のとおりである。
第5要件:対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない。

3 本件発明1の補正について
本件発明1の構成要件Mを含む特許請求の範囲について,補正された順に以下に記す。
願書に最初に添付された平成18年7月18日付けのもの(以下,「最初の本件発明1」という。)。
「【請求項1】
各場へ牌を供給するための4つの開口が設けられている天板を有する本体と,磁性体を埋設した牌を攪拌するため前記本体内に設けられた攪拌装置と,前記4つの開口に対応して設けられ前記攪拌装置から牌を取り上げる汲上機構と,
該汲上機構によって取り上げられた牌を整列する整列機構と前記4つの開口から整列牌として形成・供給機構とを備えてなる自動麻雀卓であって,
前記攪拌装置は回転するターンテーブルと外壁とが設けられ,攪拌された牌は前記ターンテーブルの回転により外壁に向かって移動させ,
前記牌を取り上げる汲上機構は円筒回転体が設けられ,該円筒回転体には磁石を埋没した吸着面を設け,該吸着面に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転体を回転させ,
前記複数の形成・供給機構には前記円筒回転体の頂上付近に誘導路を設け,該誘導路に円筒回転体により下方から上方に吸い上げられた牌が補足する
ことを特徴とする自動麻雀卓。」

平成19年10月1日付け手続補正書によるもの(以下,「2番目の本件発明1」という。)。
「【請求項1】
各場へ牌を供給するための4つの開口が設けられている天板を有する本体と,磁性体を埋設した牌を攪拌するため前記本体内に設けられた攪拌装置と,前記4つの開口に対応して設けられ前記攪拌装置から牌を取り上げる汲上機構と,
該汲上機構によって取り上げられた牌を整列する整列機構と前記4つの開口から整列牌として形成・供給機構とを備えてなる自動麻雀卓であって,
前記攪拌装置は回転するターンテーブルと外壁とが設けられ,攪拌された牌は前記ターンテーブルの回転により外壁に向かって移動させ,
前記牌を取り上げる汲上機構は円筒回転体が設けられ,該円筒回転体には磁石を埋没した吸着面を設け,該吸着面に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転体を回転させ,
前記複数の形成・供給機構には前記円筒回転体の頂上付近に誘導路を設け,該誘導路に円筒回転体により下方から上方に吸い上げられた牌が補足する
ことを特徴とする自動麻雀卓。」

平成21年7月14日付け手続補正書によるもの(以下,「3番目の本件発明1」)という。)(補正箇所には当審で下線を付した。)。
「【請求項1】
各場へ牌を供給するための4つの開口が設けられている天板を有する本体と,磁性体を埋設した牌を攪拌するため前記本体内に設けられた攪拌装置と,前記各場の開口に対応してそれぞれ前記攪拌装置から牌を取り上げる汲上機構と,
該汲上機構によって取り上げられた牌を一方向に整列して送り出すための整列機構と,該整列機構から牌を受け取り所定の整列牌を形成して待機させるための形成・待機機構と,該形成・待機機構で形成され待機している前記整列牌を対応する開口から天板上に上昇させる機構とを備えた自動麻雀卓であって,
前記攪拌装置は回転するターンテーブルと外壁とが設けられ,攪拌された牌は前記ターンテーブルの回転により外壁に向かって移動させ,
前記牌を取り上げる汲上機構は円筒回転体が設けられ,該円筒回転体の周面部位には前記円筒回転体の一側端から牌の横幅ほどの幅をもつ吸着面を配設し,前記吸着面の中心には磁石を埋没し,前記吸着面に磁気力により牌を吸着して下方から上方に吸い上げるように円筒回転体を回転させ,
前記整列機構は,前記円筒回転体に吸い上げられた牌の方向を揃えるため前記吸着面の外側の軌道に沿って配設した案内部材と,該案内部材の延長上であって前記円筒回転体の頂上付近には前記円筒回転体の吸着面から牌を剥離して前記形成・待機機構に導くための誘導路を設け,
前記円筒回転体によって下方位置にて取り上げられた牌は,前記案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動するとともに前記誘導路の一端に捕捉されて前記円筒回転体から離脱するようにしたことを特徴とする自動麻雀卓。」

4 検討及び判断
請求項1に関して,2番目の本件発明1と,3番目の本件発明1について検討する。
なお,請求項1に関して,平成19年10月1日付け手続補正書による補正はなかったので,最初の本件発明1と2番目の本件発明1は同一である。
構成要件Mに対応する2番目の本件発明1における構成要件(以下,「構成要件M’」という。)の記載は以下のとおりである。
「該誘導路に円筒回転体により下方から上方に吸い上げられた牌が補足する」
3番目の本件発明1における構成要件Mの記載は以下のとおりである。
「前記円筒回転体によって下方位置にて取り上げられた牌は,前記案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動するとともに前記誘導路の一端に捕捉されて前記円筒回転体から離脱するようにした」

ここで,2番目の本件発明1の当該箇所に対して通知された平成21年6月15日付け拒絶理由通知は以下のとおりである。
「(4)請求項1には「誘導路に・・・牌が補足する」と記載されているが,なにを意味しているのか不明確である。」
そして,誘導路に牌が「補足する」という記載が不明確であるとの上記の拒絶理由に対し,単に「補足」を「捕捉」と誤記の部分を補正するだけでなく,牌が「案内部材にそって牌の向きを揃えながら上方に移動する」こと,及び「誘導路の一端に捕捉されて前記円筒回転体から離脱する」ことを限定する補正がなされた。
つまり,「2番目の本件発明1」において何ら特定されていなかった,牌が「案内部材に沿って」「向きを揃え」る際に上方に移動していること,及び,牌が誘導路「の一端」に捕捉されることで円筒回転体から離脱することが,平成21年7月14日付け手続補正によって,3番目の本件発明1の構成要件Mとして追加されたものである。
したがって,平成21年7月14日付け手続補正によって,3番目の本件発明1は,牌の上方への移動中に,「牌の向きを揃え」るという牌整列タイミングを限定し,牌を円筒回転体から離脱するためになされる牌の捕捉が「一端」が観念できる「誘導路」によって行われるという牌離脱用部材の限定をしたものである。
よって,2番目の本件発明1には,構成要件Mのうち上記牌整列タイミング及び牌離脱用部材を具備するものも具備しないものも含まれていたところ,上記補正によって上記牌整列タイミング及び牌離脱用部材を具備することが付加されたから,構成要件Mのうち上記牌整列タイミング及び牌離脱用部材を具備しないものは,上記補正によって除外された。
そうすると,「第5 対比,判断 1 イ号製品が本件発明1の「構成要件A」乃至「構成要件N」を充足するか否かについて」で述べたように,イ号製品は本件発明1の構成要件Mのうち上記牌離脱用部材を具備しておらず,本件特許出願人は,そのようなイ号製品を,特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外したものであると,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと認められる。

5 小括
以上のとおり,均等の第5要件を満たさない。

6 まとめ
少なくとも上記第5要件を満たさないから,他の要件について判断するまでもなく,イ号製品の構成mが本件発明1の構成要件Mと均等なものであるとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり,イ号製品は,本件発明1の構成要件I,K,L及びMを充足しないものであり,また,イ号製品の構成mと当該構成要件Mは均等なものともいえないから,イ号製品は,本件発明1の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2018-05-14 
出願番号 特願2006-205597(P2006-205597)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉村 尚
登録日 2009-09-04 
登録番号 特許第4367956号(P4367956)
発明の名称 自動麻雀卓  
代理人 弁護士法人GVA法律事務所  
代理人 田久保 敦子  
代理人 笠原 基広  
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