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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
審判 全部無効 2項進歩性  E04F
管理番号 1341335
審判番号 無効2016-800014  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-03 
確定日 2018-05-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5717955号発明「建築板」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5717955号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5717955号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5717955号の請求項3に係る特許についての審判請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5717955号(以下「本件特許」は、平成21年8月26日の出願であって、平成27年3月27日に特許権の設定登録がなされた。
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成28年 2月 3日 審判請求
平成28年 4月18日 訂正請求書、審判事件答弁書
平成28年 5月25日 弁駁書
平成28年 6月28日 審理事項通知
平成28年 8月 2日 口頭審理陳述要領書(請求人)、証拠説明書(請求人)
平成28年 8月30日 口頭審理陳述要領書(被請求人)、証拠説明書(被請求人)
平成28年 9月13日 口頭審理
平成28年 9月29日 上申書(請求人)、証拠説明書(2)(請求人)
平成28年10月12日 上申書(被請求人)
平成28年10月21日 審決の予告
平成28年12月26日 訂正請求書、上申書(被請求人)、証拠説明書(2)(被請求人)
平成29年 2月 9日 弁駁書、証拠説明書(3)(請求人)

第2 本件特許発明(訂正前(設定登録時)の本件発明)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件特許発明1ないし3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(分説及び記号「A」などは、請求人の主張に沿って審決で付した。)。

「【請求項1】
A イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされている、建築板であって、
B 前記イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、前記マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28であり、
C シー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184である前記イエロー顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントレッド101である前記マゼンタ顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントブルー28である前記シアン顔料を含むインクとは、全て紫外線硬化型インクであり、
D 前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットとで模様付けされた建築板のJTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であることを特徴とする
E 建築板。
F <超促進耐候試験条件>
光源:水冷式メタルハライドランプ
照度:90mW/cm^(2)
波長:295?450nm
温度:60℃(照射),30℃(結露)
湿度:50%(照射),90%(結露)
サイクル:照射5時間,結露5時間
シャワー:結露前後10秒
【請求項2】
G 建築物の外装材として用いられることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
H 前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされ、
前記ブラック顔料は、無機顔料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建築板。」

第3 訂正請求
被請求人が平成28年12月26日付けで提出した訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲について、当該訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1ないし3について訂正することを求めるものであって、次の事項をその訂正内容とするものである(下線は、訂正箇所を示す。)。
なお、平成28年4月18日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定によりみなし取下げとなった。

1 訂正請求の内容
本件訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲について、訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「模様付けされている、建築板」とあるのを、「模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層の表面には透明な被覆層が形成されている、建築板」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「全て紫外線硬化型インクであり、前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットとで模様付けされた建築板の」とあるのを、「全て紫外線硬化型インクであり、前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされており、前記ブラック顔料はシー・アイ・ピグメント7であり、前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットと前記ブラックドットとで模様付けされた建築板の」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内である」とあるのを、「イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であり、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内である」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされている「建築板」について、「これらのインクから形成されるインクジェット層の表面」に「透明な被覆層」が形成されることを特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
イ そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、「紫外線が照射されて硬化したインクジェット層540の表面には、耐候性向上を目的として、トップコート550が形成されている。また、トップコート550の表面には、例えば防汚機能を付与するためのコーティング(以下、「付加価値コート層」ともいう。)560が形成されている。なお、トップコート550と付加価値コート層560とは、透明(無色透明)の被覆層であって、インクジェット層540に付与された模様は、トップコート550と付加価値コート層560とを介して視認される。」(段落【0020】)、「シーラー520,ベースコート530,トップコート550,付加価値コート層560のそれぞれは、各種の点を考慮し、省略できる。」(段落【0053】)と記載されており、インクジェット層540の表面に、透明の被覆層(トップコート550、付加価値コート層560)が形成されることが記載されているから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものと認められる。
ウ さらに、訂正事項1は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ なお、請求人は、本件特許明細書には、インクジェット層の表面に、トップコート550のみ又は付加価値コート層560のみを形成した建築板は記載されていない旨、本件特許明細書に記載された実施例では、トップコートと付加価値コート層を含む層構造を有する建築板の変退色(色差)についてのみ記載されており、それ以外の層構造の建築板の変退色(色差)について記載されていない旨主張する(平成28年5月25日付け弁駁書18頁7行ないし21頁3行)。
しかし、トップコート550、付加価値コート層560が省略できることは、本件特許明細書の段落【0053】に記載されており、また、無効理由3についての判断(下記「第7、3(3)」を参照。)で詳述するように、トップコート又は付加価値コート層の一方を省略しても、他方の樹脂の種類や添加する紫外線吸収剤、光安定剤の量、厚み等を調整するすることにより、変退色後の色差(ΔE^(*)ab)を0.99又は1.44以内とすることができることは、技術常識を踏まえれば当業者にとって明らかであるから、請求人の主張はいずれも採用できない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、建築板の模様付けについて、イエロードットとマゼンタドットとシアンドットに加え、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされていること、及び、ブラック顔料はシー・アイ・ピグメント7であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
イ そして、本件特許明細書には、「第3の課題解決手段は、……前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされ、前記ブラック顔料は、無機顔料であることを特徴とする。これによれば、さらに、イエローとマゼンタとシアンとブラックとについて、全てを無機顔料とし、これらを含む紫外線硬化型インクそれぞれを使用し、模様付けされた建築板とすることができる。」(段落【0012】)、「ブラックの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブラック7が好適である。」(段落【0018】)、「実施例1,2、……について、インクジェット層540を形成するための紫外線硬化型インクに含まれる顔料は、表1のとおりである。」(段落【0025】)と記載されており、表1には、実施例1及び2のブラックの顔料としてシー・アイ・ピグメントブラック7が記載されているから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものと認められる。
ウ さらに、訂正事項2は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での変退色後の色差(ΔE^(*)ab)について、促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
イ そして、本件特許明細書には、実施例1及び2の試験結果に関し、「試験開始から600時間経過後の各色の色差(ΔE)は、イエローで2.12、マゼンタで1.27、シアンで1.13である。ブラックの色差(ΔE)は、0.68である。したがって、色差(ΔE)について各色間での差は、最大で1.44(イエローおよびブラック間)であり、この場合についても、各色成分の色差は、略同一の範囲であると認められる。ブラックを除いたその他3色を対象としたとき、最大差は、0.99(イエローおよびシアン間)であり、その差はさらに縮小する。」(段落【0045】)と記載されているから、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものと認められる。
ウ さらに、訂正事項3は、発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)請求項2の訂正について
請求項2及び3は、請求項1を引用する請求項であるから、訂正事項1ないし3によって、請求項1が訂正されることにより実質的に訂正されている。
そして、上記(1)ないし(3)のとおり、訂正事項1ないし3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項2の訂正も同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
さらに、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

(6)一群の請求項について
本件訂正は、訂正後の請求項1ないし3が請求の対象とされており、一群の請求項ごとに請求がされているものであるから、本件訂正は特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

3 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第3項及び同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第4 本件訂正発明
上記第3のとおり、本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件訂正発明1及び2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層の表面には透明な被覆層が形成されている、建築板であって、
B 前記イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、前記マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28であり、
シー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184である前記イエロー顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントレッド101である前記マゼンタ顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントブルー28である前記シアン顔料を含むインクとは、全て紫外線硬化型インクであり、
前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされており、前記ブラック顔料はシー・アイ・ピグメントブラック7であり、
前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットと前記ブラックドットとで模様付けされた建築板のJTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であり、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であることを特徴とする建築板。
<超促進耐候試験条件>
光源:水冷式メタルハライドランプ
照度:90mW/cm^(2)
波長:295?450nm
温度:60℃(照射),30℃(結露)
湿度:50%(照射),90%(結露)
サイクル:照射5時間,結露5時間
シャワー:結露前後10秒
【請求項2】
建築物の外装材として用いられることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】(削除)」

第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、本件特許の請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成28年5月25日付け弁駁書、平成28年8月2日付け口頭審理陳述要領書、平成28年9月29日付け上申書、第1回口頭審理調書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証の2を提出している。
また、請求人は、以下の無効の理由は、本件訂正発明1及び2に対しても成り立つ旨主張し(平成29年2月9日付け弁駁書を参照。)、証拠方法として甲第43号証ないし甲第52号証を提出している。

(1)無効理由1(進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

(2)無効理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、並びに甲第2号証、甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

(3)無効理由3(実施可能要件違反、サポート要件違反)
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1ないし3に係る発明を実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、その特許は無効とすべきものである。
イ 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許明細書に記載されていない事項を含むものであるから、特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特許第5717955号公報(本件特許)
甲第2号証:特開2008-63831号公報
甲第3号証:特開2004-107637号公報
甲第4号証:「建築構造物用塗料の耐候性に関する調査研究〔報告書・第2報〕」、社団法人日本塗料工業会、平成12年10月、表紙、3頁、4頁、10頁、奥付
甲第5号証:「塗料原料便覧」、第8版、社団法人日本塗料工業会、平成16年5月31日、表紙、20-23頁、348-353頁、360-363頁、奥付
甲第6号証:特開2009-52030号公報
甲第7号証:特開2008-81594号公報
甲第8号証:高橋淳他、「塗料・インキがわかる技術読本-材料・製造・評価と環境社会への提案-」、シーエムシー出版、平成16年6月10日、表紙、40-51頁、264頁、奥付
甲第9号証:日本印刷学会誌、社団法人日本印刷学会、平成15年6月30日、第40巻第3号、表紙、176-203頁、奥付
甲第10号証:高橋恭介、「インクジェット技術と材料」、普及版第1刷、シーエムシー出版、平成19年5月24日、表紙、107-119頁、奥付
甲第11号証:赤松清、「感光性樹脂の応用技術」、普及版第1刷、シーエムシー出版、平成21年1月25日、表紙、112-113頁、186-187頁、248頁、奥付
甲第12号証:特開2006-7618号公報
甲第13号証:特開平7-100431号公報
甲第14号証:請求人により作成された平成28年1月14日付けの実験報告書1
甲第15号証:請求人により作成された平成28年1月14日付けの実験報告書2
甲第16号証:請求人により作成された平成28年1月14日付けの実験報告書3
甲第17号証:松本幹男他、「外装建材分野における開発動向」、塗料の研究、No.145、関西ペイント株式会社、平成18年3月、38-41頁
甲第18号証:高田俊洋、「窯業系住宅用建材の商品化動向」、DNTコーティング技報、No.5、平成17年10月、23-26頁
甲第19号証:伊藤征司郎、「顔料の事典」、初版第1刷、株式会社朝倉書店、平成12年9月25日、表紙、258-259頁、奥付
甲第20号証:日本顔料技術協会、「改訂新版 顔料便覧」、株式会社誠文堂新光社、平成元年3月10日、表紙、14-15頁、26-27頁、446-451頁、奥付
甲第21号証:社団法人色材協会、「色材工学ハンドブック」、新装版、株式会社朝倉書店、平成20年10月10日、表紙、278-281頁、286-289頁、奥付
甲第22号証:塩川二朗、「カーク・オスマー化学大事典」、丸善株式会社、昭和63年9月20日、表紙、294-297頁、奥付
甲第23号証:日本画像学会、「シリーズ「デジタルプリンタ技術」 インクジェット」、東京電機大学出版局、平成20年9月10日、表紙、102-113頁、奥付
甲第24号証:株式会社ミマキエンジニアリング会社説明資料、2016年3月1日、表紙、37頁
甲第25号証の1:特願2008-189765号に係る平成25年3月1日付け拒絶理由通知書
甲第25号証の2:特開2007-119773号公報(甲第25号証の1の引用文献1)
甲第25号証の3:特開2001-55530号公報(甲第25号証の1の引用文献2)
甲第25号証の4:特開2003-261799号公報(甲第25号証の1の引用文献9)
甲第25号証の5:特開2005-178331号公報(甲第25号証の1の引用文献10)
甲第25号証の6:特願2008-189765号の平成25年5月9日付け拒絶査定
甲第26号証:飯田眞司他、「促進耐候性試験法」、塗料の研究、No.145、関西ペイント株式会社、平成18年3月、22-37頁
甲第27号証:「JIS 高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法 JIS A 1415」、一般財団法人日本規格協会、平成25年2月20日、表紙、目次、1-3頁、8頁、13頁、18頁、奥付
甲第28号証:「JIS 窯業系サイディング JIS A 5422」、一般財団法人日本規格協会、平成26年9月22日、表紙、目次、1-2頁、9-10頁、19頁、22頁、奥付
甲第29号証:経済産業省ホームページ、「グリーン購入法」、平成16年3月31日、<URL:http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/09/>
甲第30号証:松田安廣、「窯業系外壁材における最近の耐久性塗装」、DNTコーティング技報、No.8、平成20年10月、24-27頁
甲第31号証:請求人により作成された平成28年5月20日付けの報告書
甲第32号証:「第31回 塗料入門講座テキスト」、社団法人色材協会関西支部、平成10年7月22日、42-43頁、80-81頁
甲第33号証:特開平10-113608号公報
甲第34号証:特開2008-73602号公報
甲第35号証:飯田眞司他、「促進耐候性試験法(その2)」、塗料の研究、No.146、関西ペイント株式会社、平成18年10月、26-39頁
甲第36号証:光技術情報誌「ライトエッジ」、No.15、ウシオ電機株式会社、平成10年11月、65-75頁
甲第37号証:日本色彩学会、「色彩科学事典」、株式会社朝倉書店、平成3年10月20日、表紙、28-29頁、38-39頁、62-63頁、奥付
甲第38号証の1:本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面
甲第38号証の2:本件特許に係る平成25年7月26日付け拒絶理由通知書
甲第38号証の3:本件特許に係る平成25年9月24日付け手続補正書
甲第38号証の4:本件特許に係る平成25年9月24日付け意見書
甲第38号証の5:本件特許に係る平成26年3月17日付け拒絶理由通知書
甲第38号証の6:本件特許に係る平成26年5月8日付け手続補正書
甲第38号証の7:本件特許に係る平成26年5月8日付け意見書
甲第38号証の8:本件特許に係る平成26年10月15日付け補正の却下の決定
甲第38号証の9:本件特許に係る平成26年10月15日付け拒絶査定
甲第38号証の10:本件特許に係る平成27年1月23日付け手続補正書
甲第38号証の11:本件特許に係る平成27年1月23日付け審判請求書
甲第38号証の12:本件特許に係る平成27年2月13日付け特許査定
甲第39号証:特開平8-19756号公報
甲第40号証:赤池照子他、「顔料の色変化に及ぼす環境の影響(第2報)」、日本色彩学会誌、Volume20、Number2、日本色彩学会、平成8年8月1日、表紙、63-72頁、奥付
甲第41号証:「「亜鉛鉄板」および「カラー亜鉛鉄板」の関係資料」、近代建築、Vol43、1989年4月号、株式会社近代建築社、表紙、49頁、115-119頁
甲第42号証の1:「カラーコーディネーションの基礎」、第2版第4刷、東京商工会議所、平成16年4月20日、表紙、51-55頁、奥付
甲第42号証の2:コニカミノルタ株式会社ホームページ、「色の用語のいろいろ」、<URL:http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/part4/06.html>
甲第43号証:特開平10-204321号公報
甲第44号証:特開2000-194132号公報
甲第45号証:「高分子劣化・崩壊の<樹脂別>トラブル対策と最新の改質・安定化技術-総合技術資料集-」、経営開発センター出版部、昭和56年5月31日、表紙、399-405頁、奥付
甲第46号証:蒲池幹治他、「ラジカル重合ハンドブック-基礎から新展開まで-」、初版第1刷、株式会社エヌ・ティー・エス、平成11年8月10日、表紙、74-77頁、奥付
甲第47号証:(社)色材協会、「色材工学ハンドブック」、初版第1刷、株式会社朝倉書店、平成元年11月25日、表紙、目次、232-235頁、272-277頁、452-463頁、奥付
甲第48号証:伊藤征司郎、「顔料の事典」、初版第1刷、株式会社朝倉書店、平成12年9月25日、表紙、目次、226-233頁、奥付
甲第49号証:甘利武司、「インクジェットプリンター」、普及版第1刷、株式会社シーエムシー出版、平成17年8月19日、表紙、目次、252-264頁、奥付
甲第50号証:日本色彩学会、「新編色彩科学ハンドブック(第2版)」、初版、財団法人東京大学出版会、平成10年6月10日、表紙、目次、782-789頁、奥付
甲第51号証:「機能性顔料の技術」、普及版第1刷、株式会社シーエムシー出版、平成16年9月24日、表紙、目次、246-271頁、奥付
甲第52号証:橋本勲、「有機顔料ハンドブック」、初版、カラーオフィス、平成18年5月、表紙、612-615頁、奥付

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件特許発明1と甲2発明は以下の点で相違する。
相違点1:(構成要件B、C。構成b、c)
本件特許発明1は「前記イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、前記マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28」であり、各顔料を含むインクが紫外線硬化型インクであるのに対し、
甲2発明は、イエロー顔料は「黄色酸化鉄」、マゼンタ顔料は「赤色酸化鉄」、シアン顔料は「Co-Al系ブルー」であり、各顔料を含むインクが水性インクである点
相違点2:(構成要件D、F。構成d、f)
本件特許発明1は「前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットとで模様付けされた建築板のJTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であることを特徴」とし、試験条件が構成要件F記載の条件であるのに対し、
甲2発明は「前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットとで模様付けされた建築板の下記の試験条件における目視による耐褪色性試験の結果は「◎」(色褪せが全く生じなかった)であることを特徴」とし、試験条件が構成f記載の条件である点
(審判請求書23頁15行ないし24頁17行)

(イ)甲2の「黄色酸化鉄」が「シー・アイ・ピグメントイエロー42」を、「赤色酸化鉄」が「シー・アイ・ピグメントレッド101」を、「Co-Al系ブルー」が「シー・アイ・ピグメントブルー28」を意味することは、甲4、甲5に記載されている。
(審判請求書25頁2ないし5行)

(ウ)甲2の「黄色酸化鉄」は「シー・アイ・ピグメントイエロー42」を、「赤色酸化鉄」は「シー・アイ・ピグメントレッド101」を、「Co-Al系ブルー」は「シー・アイ・ピグメントブルー28」を意味し、両者は表記の違いに過ぎないから、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、上記の点が相違点であると考えたとしても、甲4、甲5の上記の記載からすれば、「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、「シー・アイ・ピグメントレッド101」、「シー・アイ・ピグメントブルー28」が、「黄色酸化鉄」、「赤色酸化鉄」、「Co-Al系ブルー」のそれぞれ代表的・典型的な顔料であることは明らかであり、甲2の「黄色酸化鉄」、「赤色酸化鉄」、「Co-Al系ブルー」の具体的な顔料として、「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、「シー・アイ・ピグメントレッド101」、「シー・アイ・ピグメントブルー28」を選択することは当業者にとって容易である。
(審判請求書28頁下から4行ないし29頁10行)

(エ)工業製品(化粧建築板)への適用を当然の前提とした甲2の耐褪色性を評価する実験において、「成分は一定せず」、不純物である「アルミナ、硫酸カルシウム、珪酸等を含有する」「黄色酸化鉄(黄土)」(乙1)を含有させたインクを使用せず、「純度、粒径の均質性、および粒径分布」の優れた合成酸化鉄(甲22)を含有させたインクを使用するのは当然であって(顔料の成分や不純物量が一定していなければ、せっかく行った耐褪色性を評価する実験が無意味になってしまう。)、甲2では、「黄色酸化鉄」(仕様3、13、14)の語を「黄色酸化鉄(黄土)」(乙1)を含む意味で使用していないことは当業者にとって自明である。
(平成28年5月25日付け弁駁書25頁下から2行ないし26頁7行)

(オ)本件出願当時、「黄色酸化鉄」の語は、「シー・アイ・ピグメントイエロー42」を意味しており、とりわけ、工業製品(化粧建築板)、より具体的にはインクジェットインク用途への適用を当然の前提とした甲2の「黄色酸化鉄」(仕様3、13、14)が「シー・アイ・ピグメントイエロー42」であることは当業者にとって自明である。
(平成28年5月25日付け弁駁書26頁8ないし12行)

(カ)本件出願当時、「赤色酸化鉄」の語は、「シー・アイ・ピグメントレッド101」を意味しており、とりわけ、工業製品(化粧建築板)、より具体的にはインクジェットインク用途への適用を当然の前提とした甲2の「赤色酸化鉄」(仕様3、13、14)が「シー・アイ・ピグメントレッド101」であることは当業者にとって自明である。
(平成28年5月25日付け弁駁書27頁下から5ないし末行)

(キ)甲6及び甲7には、無機顔料を含むインクが「紫外線硬化型インク」である構成が記載されている。
(審判請求書32頁18ないし19行)

(ク)本件特許発明1では、顔料を含むインクが「紫外線硬化型インク」であるのに対し、甲2発明では、「水性インク」である点については、両者は、顔料を分散するインク成分を代えただけであり、格別の試行錯誤を要するものではないから、甲2発明に、甲6及び甲7に記載された事項を適用して、「紫外線硬化型インク」とすることが当業者にとって容易想到であることは明らかである。
(審判請求書32頁下から4行ないし33頁2行)

(ケ)水性インクや紫外線硬化型インクの差異はインク成分の違いにあるところ、一般的に、「顔料」に、水性インク用の顔料や紫外線硬化型インク用の顔料などという区別があるわけではない。
(審判請求書33頁7ないし9行)

(コ)甲2の無機顔料を含むインクを「水性インク」から「紫外線硬化型インク」に代えることは可能であり、かつそうする動機付けがあるから(甲6及び甲7)、甲2の特定の顔料の水性インクについて、甲6及び甲7の記載事項を適用して、紫外線硬化型インクに代えることは、当業者において容易に想到し得た技術事項である。
(審判請求書41頁1ないし5行)

(サ)本件特許発明1の各成分の色差の差に関する要件(構成要件D及びF)は、対象物が他の構成要件(構成要件A?C、E)を備えることによって当然に奏される効果を記載したにすぎないか、少なくとも、これに明細書に記載するまでもない設計事項程度のことを行うことにより、充足される内容を規定したものであると解するほかはない。
(審判請求書43頁10ないし15行)

(シ)仮に、構成要件A?Cの構成を備えているにもかかわらず、何らかの理由により、模様付けされた建築板の変退色前後の色差について、イエロー成分の色差とマゼンタ成分の色差とシアン成分の色差(ΔE^(*)ab)の差が「0.99以内であること」(構成要件D及びF)がもたらされないことがあったとしても、本件明細書の開示に照らせば、これに明細書に記載するまでもない設計事項程度のことを行うことにより、構成要件D及びFの構成がもたらされるはずであり、相違点2の構成が容易想到であることに変わりはない。
(審判請求書44頁8ないし15行)

(ス)本件明細書でも、甲2においても、相違点2に係る構成は、建築板全体の色合いの変化を評価対象とする点では何ら異なるところがないのであり、両者は、評価の指標とするパラメータが異なるに過ぎない。
換言すれば、本件特許発明1における「JTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験」による各色の色差(ΔE)の差は、建築板全体の色合いの変化を定量化するために発明者が選択した一つのパラメータにすぎず、当該パラメータの選択そのものを進歩性の根拠とすることはできないことは明らかである。
(審判請求書49頁7ないし15行)

(セ)甲2の「色褪せが生じない」(ないしは「耐褪色性に優れる」)は、目視において、化粧建築板全体として褪色していないこと、及び、特定の成分が褪色していないこと、を意味し、本件特許発明における「特定の色成分の色味……が消えてしまうような状態を防止する」(段落【0010】)とは、目視において、レンガ調の模様付けがされた試験用建築板の特定の成分が褪色していないこと、を意味する。
すなわち、甲2の「色褪せが生じない」(ないしは「耐褪色性に優れる」)と本件特許発明の「特定の色成分の色味……が消えてしまうような状態を防止する」(段落【0010】)は、どちらも、目視において建築板の特定の成分が褪色していないことを意味しているから、両者は同質である。
(口頭審理陳述要領書6頁1ないし10行)

(ソ)仮に、甲2の「色褪せが生じない」の意味を各色がいずれも色褪せをしない(各色が耐褪色性に優れる)というような意味に理解したとしても、本件発明は、その出願段階での補正(甲38の1?12)で、変退色の比較的大きい3つの顔料を組み合わせた実施例3(現在の参考例1)を権利範囲から除外し、実施例1及び実施例2で用いられた耐候性の良い3つの顔料の組み合わせに限定している(別紙「補正の経緯」参照)、すなわち、本件訂正発明は、もはや、単に、耐候性の良い顔料を組み合わせただけの発明となっているのであるから、仮に甲2「色褪せが生じない」の意味を上記のように理解したとしても、やはり、本件訂正発明と甲2の効果に差異はない。
(口頭審理陳述要領書6頁11ないし19行)

(タ)複数の異なる色成分を組み合わせる場合に、塗膜の経時的な色相の変化を防止するために、各色成分の耐褪色性を揃えることは、本件出願当時に広く知られていたことである。
(口頭審理陳述要領書13頁7ないし9行)

(チ)建材業界において、ΔE^(*)abは、色成分の耐褪色性の指標に用いられる典型的なパラメータである。
(口頭審理陳述要領書13頁14ないし15行)

(ツ)塗膜の経時的な色相の変化を目立たなくするためには、ΔEの差の最大値を0.3?1.3程度とすればよいことは周知の事項であり、0.99を選択することに何の困難性もない。
(口頭審理陳述要領書21頁7ないし9行)

(テ)本件訂正発明1と甲2発明1を対比すると、両者は審決予告が認定した相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
<相違点4>
インクジェット層につき、
本件訂正発明1では、さらに、シー・アイ・ピグメントブラック7のブラック顔料を含むインクによるブラックドットで模様付けされているのに対し、
甲2発明1では、ブラックドットで模様付けされていない点。
<相違点5>
建築版の耐候性に関し、
本件訂正発明1では、さらに、JTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であるのに対し、
甲2発明1では、そのような特定がされていない点。
(平成29年2月9日付け弁駁書7頁9行ないし8頁4行)

(ト)甲2には、
<甲2記載事項>
「「黄色酸化鉄、Ti-Ni-Ba系イエロー、Ti-Sb-Ni系イエロー、Ti-Nb-Ni系イエロー、Ti-Sb-Cr系イエローから選ばれる顔料を含有するイエローのインクと、Co-Al系ブルー、Co-Al-Cr系ブルーから選ばれる顔料を含有するシアンのインクと、赤色酸化鉄、Fe-Zn系ブラウン、Fe-Zn-Cr系ブラウン、Fe-Ni-Al系ブラウンから選ばれる顔料を含有するマゼンタのインクとからなる、有機顔料を含有しない3色のインク」でインクジェット層が形成されていることを特徴とする化粧建築板において、さらに、「黒色酸化鉄、Cu-Cr系ブラック、Cu-Cr-Mn系ブラック、Cu-Fe-Mn系ブラック、Co-Fe-Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するブラックのインク」を加えて、有機顔料を含有しない4色のインクでインクジェット層が形成されている化粧建築版とすること」
が記載されている。
そして、甲2発明1(仕様3)の化粧建築板は、甲2記載事項所定の3色のインク(黄色酸化鉄、赤色酸化鉄及びCo-Al系ブルー)で模様付けされた化粧建築板であるから、甲2記載事項を適用することができる。
(平成29年2月9日付け弁駁書9頁7行ないし10頁1行)

(ナ)カーボンブラックは、黒色顔料として、最も一般的に使用されているものであり、耐候性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、「UVインキ」や「ジェットインキ」に適用できることが知られており、現に、シー・アイ・ピグメントブラック7(カーボンブラック)を用いたUVインクの具体例(甲6【0071】)も存在していた。さらに、カーボンブラックがポリマーを紫外線劣化から保護する性質を有することが知られていた(甲47・458?460頁)。
したがって、甲2記載事項に記載された「黒色酸化鉄、Cu-Cr系ブラック、Cu-Cr-Mn系ブラック、Cu-Fe-Mn系ブラック、Co-Fe-Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料」の中から、「カーボンブラック」を選択することは、当業者が適宜なし得たことであり、容易である。
(平成29年2月9日付け弁駁書11頁13ないし末行)

(ニ)「シー・アイ・ピグメントブラック7」は、「カーボンブラック」またはファーネス法で製造された「カーボンブラック」を意味している。
(平成29年2月9日付け弁駁書12頁21ないし末行)

(ヌ)塗膜の色相を保持することが周知の課題であること、外装材の塗膜に10年程度の耐久性が求められること、などは、建築板の模様付けに用いられるインクにブラックの成分が加わることによって変わるものではないから、相違点5についても相違点3の認定が当てはまる。
そうすると、審決の予告が相違点3について正しく認定したのと同様に、相違点5に係る本件訂正発明1の構成(4色の色差(ΔE*ab)が1.44以内の耐久性とすること)は、当業者が容易になし得たことであり、相違点5に係る構成は容易である。
(平成29年2月9日付け弁駁書14頁5ないし12行)

(ネ)本件訂正発明1と甲2発明2を対比すると、両者は、審決予告が認定した第1次訂正発明3と甲2発明2の相違点A?Cに加えて、以下の点で相違する。
<相違点D>(被請求人の言う相違点1の一部)
ブラック顔料が、
本件訂正発明1では、シー・アイ・ピグメントブラック7であるのに対し、
甲2発明2では、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料である点
<相違点E>(被請求人の言う相違点3の一部)
建築板の耐候性に関し、
本件訂正発明1では、さらに、JTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であるのに対し、
甲2発明2では、そのような特定がされていない点。
(平成29年2月9日付け弁駁書14頁下から2行ないし15頁14行)

(ノ)ほとんどのポリマーは顔料や分散剤に含まれる金属の接触作用による熱劣化を受けること……、金属イオンが重合反応を進行させること……は、古くから知られていた現象であるにもかかわらず、そのことはこれらの無機顔料を含むUVインクその他の樹脂組成物の製造において支障となるとはされていない(甲7段落【0048】、甲45、甲46等。)。とりわけ、UVインクにおける無機顔料の濃度は、0.1?10%(好ましくは、0.5?5%)程度であり(甲7段落【0017】)、この程度の無機顔料濃度においては、UVインクの製品化に支障をきたすものではないし(甲7)、甲6【0047】や甲7【0032】に、UVインクに重合禁止剤を添加してもよいことが記載されているとおり、必要に応じて、重合禁止剤を添加して反応を適切に調整すればよいだけのことである。
したがって、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラックのブラック顔料を含む甲2発明2のインクを紫外線硬化型インクに代えることは容易であり、被請求人の主張に理由はない。
(平成29年2月9日付け弁駁書17頁11ないし25行)

(ハ)甲2発明2に接した当業者が、同じく甲2の【請求項1】【請求項2】【0009】などの記載に照らし、「Cu-Fe-Mn系ブラック」又は「Co-Fe-Cr系ブラック」を「カーボンブラック」に置換することに何ら困難はない。
(平成29年2月9日付け弁駁書19頁23ないし末行)

イ 本件訂正発明2について
甲2には【0012】「基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。」と記載されており、甲2には構成要件Gが開示されている。
(審判請求書51頁2ないし6行)

(2)無効理由2
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件特許発明1と甲3発明は以下の点で相違する。
相違点1:(構成要件B、C。構成b、c)
本件特許発明1は「前記イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、前記マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28であり」、各顔料を含むインクが紫外線硬化型インクであるのに対し、
甲3発明は、イエロー顔料として「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、マゼンタ顔料として「シー・アイ・ピグメントレッド101」の記載はあるが(【0024】)、組み合わせとして記載されておらず、シアン顔料「シー・アイ・ピグメントブルー28」は記載されておらず、水性または油性インクである点
相違点2:(構成要件D、F。構成d、f)
本件特許発明1は、構成要件Fの「超促進耐候試験条件」において「前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットとで模様付けされた建築板のJTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であることを特徴とする」のに対し、
甲3発明は、構成fの試験条件において、強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内である点
(審判請求書57頁下から2行ないし58頁下から2行)

(イ)「BLUE28(コバルトブルー)」の記載がなかったとしても、甲3には、青系(シアン)顔料の記載がある以上、その代表的な顔料である「シー・アイ・ピグメントブルー28」(甲4、甲5)とすることに何ら困難性はない。しかも、被請求人も指摘するとおり、甲第5号証に「「シー・アイ・ピグメントブルー28」が・・・「耐候性、耐熱性に優れている」ことが記載されているのであるから、甲3のシアン顔料として「シー・アイ・ピグメントブルー28」を選択する十分な動機付けもある。
(弁駁書56頁12ないし18行)

(ウ)本件特許発明は、限られた選択肢の中において、シアン2種のうちから1種を、イエロー3種のうちから2種を、マゼンタ1種類からその1種類を選択したというに過ぎず、極めて通常の組み合わせを規定しているだけである。
(審判請求書61頁13ないし16行)

(エ)甲3には、3色の退色速度を揃えて、カラーバランスの変化を抑えることが記載されているところ(【請求項1】、【0008】)、甲2には、耐褪色性の高い化粧建築版用のインクとして(【請求項1】)、本件の3色の顔料の組み合わせが開示されており(0053の仕様3、13、14)、耐褪色性試験結果「◎ 色褪せが全く生じなかった」(【0054】)と記載されている。ここでいう「◎ 色褪せが全く生じなかった」ということは、カラーバランスが大きく変化していないはずであるから、甲2に記載された3色の顔料の組み合わせ(「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、「シー・アイ・ピグメントレッド101」、「シー・アイ・ピグメントブルー28」)をカラーバランスが大きく変化していない顔料の候補として、甲3発明に適用する動機付けが存在する。
したがって、甲3発明について、甲2の技術事項を適用し、上記3色の顔料を選択することは容易である。
(審判請求書61頁下から4行ないし62頁9行)

(オ)甲3は、「光、熱、空気、水や薬品に対する堅牢性に優れている」インクジェット記録用インクを提供することを目的の一つとしているところ、甲2には、「色褪せが全く生じなかった」顔料の組み合わせとして、本件特許発明の無機顔料の組み合わせが具体的に記載されているから、インクジェットを構成する個々のインクの耐褪色性を揃える目的で、これらの「色褪せが全く生じなかった」顔料の組み合わせ(甲2)を選択することも極めて自然である。
(口頭審理陳述要領書23頁16ないし22行)

(カ)無効理由1で述べたのと同様に、甲3発明の無機顔料を含むインクを「水性インク」から「紫外線硬化型インク」に代えることは可能であり、かつそうする動機付けがあるから、甲3発明の顔料の水性インクについて、甲6及び甲7記載事項を適用して、紫外線硬化型インクに代えることは、当業者において容易に想到し得た技術事項である。
(審判請求書62頁17ないし21行)

(キ)本件明細書の開示を前提とすれば、構成要件D及びFは、構成要件A?Cを備えることによって当然に奏される効果を記載したものにすぎないか、少なくとも、これに明細書に記載するまでもない設計事項程度のことを行うことにより、充足される内容を規定したものであるところ、甲3発明の水性インクを紫外線硬化型インクに代え、顔料を本件発明の「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、「シー・アイ・ピグメントレッド101」、「シー・アイ・ピグメントブルー28」とした構成(構成要件A?Cの構成)が容易想到である以上、相違点2の構成も当業者にとって容易想到である。
(審判請求書63頁11ないし19行)

イ 本件訂正発明2について
甲3の段落【0221】には、「屋外装飾材料」と記載されている。すなわち、甲3には構成要件Gが開示されている。
(審判請求書64頁5ないし6行)

(3)無効理由3
実施可能要件違反について
(ア)本件特許が規定する「色差(ΔE^(*)ab)の差「0.99以内」は、顔料だけでなく、これに加え、インク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤)の種類、トップコートの有無・種類、顔料の性状という様々な要素の総合的な組み合わせに依存するということである。
この点、本件明細書は、インク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤)の種類、トップコートの有無・種類、顔料の性状について何ら特定しておらず、また、どのように選択すべきかに関する示唆さえもないから、本件明細書には構成要件Dを実施する方法が記載されていないことになる。
(審判請求書66頁下から2行ないし67頁8行)

(イ)本件明細書には、実施例1及び2において、ΔE^(*)abを0.99以内とする測定結果(【表6】【表7】)が得られたことは記載されているが、それは特定の条件下での測定結果に過ぎないし、本件特許が規定するΔE^(*)ab要件(構成要件D、F)は、顔料やトップコート・付加価値コート層の有無だけでなく、これに加え、インク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤)の種類、トップコートの種類、顔料の性状という様々な要素の総合的な組み合わせに依存するにもかかわらず、本件明細書は、インク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤)の種類、トップコートの有無・種類、顔料の性状について何ら特定しておらず、また、どのように選択すべきかに関する示唆さえもないから、当業者が(構成要件A?C、Eを充足し、)ΔE^(*)abが0.99以内である建築板(構成要件D及びF)を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解することはできない。
したがって、本件明細書に、実施例1及び2において、ΔE^(*)abを0.99以内とする測定結果(【表6】【表7】)が得られたとの記載があることをもって、実施可能要件を充足するということはできない。
(平成28年5月25日付け弁駁書62頁18行ないし63頁9行)

(ウ)実験1及び2(甲14及び15)のサンプルの中には、ΔE^(*)abを0.99以内とする測定結果が得られたものが含まれているが、そのような結果が得られたものは、全サンプル数に比べて比較的少数であり、かつ、どのサンプルについてそのような結果が得られるかが本件明細書において示唆されているわけでもない。
したがって、実験1及び2(甲14及び15)のサンプルの中に、ΔE^(*)abを0.99以内とする測定結果が得られたものが含まれていることをもって、実施可能要件を充足するということはできない。
(平成28年5月25日付け弁駁書63頁11ないし17行)

イ サポート要件違反について
(ア)本件明細書の実施例では、課題解決の重要な手段であるはずのインクジェット層のインク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤の種類等)、トップコートや付加価値コート層の成分等につき、具体的な記載がないばかりか、顔料の組み合わせが同一である場合に、インクジェット層のインク成分・厚さ、トップコートや付加価値コート層の具体的成分・厚さ、その他の具体的な層の構造がΔE^(*)abに与える影響はまったく検証されておらず、ΔE^(*)ab要件の実現のために、これらの要素につき何を選択すればよいかについて何らの記載も示唆もない。本件明細書の実施例における「促進耐候試験」(段落【0027】)で照射される紫外線は、付加価値層、トップコート層及びインクジェット層の顔料以外のインク成分を介して顔料に到達するのである(しかも、試験用建築板の変退色(色差)も、これらを介して測定される)から、少なくとも、これら(とりわけ、トップコート層)が建築板の変退色(色差)に影響を与えることは自明であり、実施例における測定結果(【表6】【表7】)を実施例に係る具体的なインク成分や層構造(厚さを含む)を超えて一般化することはできない。
(平成28年5月25日付け弁駁書7頁11行ないし8頁7行)

(イ)同様に、本件明細書に、実施例1及び2において、ΔE^(*)abを0.99以内とする測定結果(【表6】【表7】)が得られたとの記載があることをもって、サポート要件を充足するとはいえず、被請求人の主張には理由がない。
(平成28年5月25日付け弁駁書63頁19ないし21行)

第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(審判事件答弁書、平成28年8月30日付け口頭審理陳述要領書、平成28年10月12日付け上申書、平成28年12月26日付け上申書を参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:岩井信次他、「塗料ハンドブック」、産業図書株式会社、昭和29年6月25日、表紙、20-21頁、奥付
乙第2号証:日本色彩学会、「新編 色彩科学ハンドブック【第2版】」、東京大学出版会、平成10年6月10日、表紙、773-782頁、784頁、奥付
乙第3号証:大武義人、「腐食と劣化(6)合成樹脂(ゴム・プラスチック)の劣化評価・分析手法」、空気調和・衛生工学、第80巻第1号、社団法人空気調和・衛生工学会、平成18年1月5日、表紙、目次、69-75頁、裏表紙
乙第4号証:被請求人により作成された平成28年12月12日付け実験成績証明書
乙第5号証:「機能性顔料」、普及版第1刷、株式会社シーエムシー、平成13年1月25日、表紙、19頁、奥付

3 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 甲第2号証に記載されている「黄色酸化鉄」との語は、少なくともシー・アイ・ピグメントイエロー43をも意味し得るものであり、本件訂正発明1における「シー・アイ・ピグメントイエロー42」のみを意味するものであるとはいえない。
(答弁書10頁20ないし23行)

イ 甲第2号証に記載されている「赤色酸化鉄」との語は、少なくともシー・アイ・ピグメントレッド102をも意味し得るものであり、本件訂正発明1における「シー・アイ・ピグメントレッド101」のみを意味するものであるとはいえない。
(答弁書11頁2ないし5行)

ウ 甲第6、7、13号証には、各甲号証に記載の発明において紫外線硬化型インクを用いることが記載されているにすぎず、甲2発明において、「好適な変退色を実現可能な建築板を提供する」という本件訂正発明の課題を解決するために、水性インクに代えて紫外線硬化型インクを敢えて用いる動機となる記載がないことは勿論、後記のとおり、甲2発明の内容からしても甲2発明の水性インクを紫外線硬化型インクに変更する記載ないし示唆はない。
甲第8?11号証には、紫外線硬化型インクの一般的な記載があるにすぎず、甲2発明において、水性インクに代えて紫外線硬化型インクを敢えて用いる動機となる記載ないし示唆はない。
(答弁書12頁12ないし20行)

エ 顔料を含むインクの組成を例えば水性インクから紫外線硬化型インクへ変更する際には、顔料、樹脂、溶剤、添加剤等の処方全体について検討をする必要があるのであって、顔料を含むインクを水性インクから紫外線硬化型インクへ変更することは、「顔料を分散するインク成分を代えただけであり、格別の試行錯誤を要するものではない」などといえるようなものではない。
(答弁書13頁下から5ないし末行)

オ 甲第2号証においては、請求項1に「インク受理層」を備えることが特定され、インク受理層が必要であることも明記されている(【0014】)が、紫外線硬化型インクにおいてはインク受理層を設ける必要がないのである(例えば甲第7号証の【0002】等)から、当業者は、敢えてそのような甲2発明においてインク受理層が不要な紫外線硬化型インクに変更するわけがない。
(答弁書14頁7ないし11行)

カ 仮に「紫外線硬化型インクは、瞬時に硬化し、乾燥工程が不要となること、インク受容層が不要であること、基材との密着性に優れる等の利点がある」という事実があったとしても、かかる事実は、甲2発明から出発して、「好適な変退色を実現可能な建築板を提供する」という本件訂正発明の課題を解決しようとした当業者が水性インクを紫外線硬化型インクに変更することを動機づけるものではない。
(答弁書15頁13ないし18行)

キ 甲第7号証に記載されているのは、「紫外線硬化型樹脂」が「他の樹脂」(紫外線硬化型樹脂以外の樹脂)と比較して耐候性に優れているという、あくまで「紫外線硬化型樹脂」と「他の樹脂」(紫外線硬化型樹脂以外の樹脂)との間の耐候性の違いにすぎない。言い換えれば、甲第7号証は、「紫外線硬化型インク」が「水性インク」と比較して耐候性に優れることなど一切教示していない。
したがって、甲第7号証に「一般的に、紫外線硬化型樹脂は、他の樹脂と比較して耐候性に優れている」と記載されていたところで、「甲2の無機顔料を含むインクを「水性インク」から優れた耐候性を有する「紫外線硬化型インク」に代える動機付けがある」という結論には至らない。
(答弁書16頁11ないし19行)

ク 甲第2号証には、「耐褪色性の試験」が「紫外線を1000時間照射した後」の「耐褪色性を評価した」ものであること(【0049】)が記載されているにすぎず、甲第2号証のその他の記載をみても、当該「耐褪色性の試験」は、少なくとも本件訂正発明が前提としている「熱」や「水(雨)」による変退色を一切考慮していない試験であるというべきである。
また、甲2発明では、色ごとの退色性についての言及がないとおり、本件訂正発明1における各色間での色差を計測しようということはあり得ない。
すなわち、甲2発明における耐褪色性試験は、本件訂正発明1における促進耐候試験とは、技術的意義が根本的に異なるものである。
そして、甲第2号証には、本件訂正発明が前提としている「熱」や「水(雨)」による変退色についての記載は一切ないから、甲2発明において、「光(太陽光)」のみならず、「熱」や「水(雨)」による変退色をも考慮した本件訂正発明1における促進耐候試験による変退色後の色差(ΔE^(*)ab)に着目する動機はなく、ましてやその色差(ΔE^(*)ab)を0.99以内とする動機など存在し得ない。
(答弁書18頁10ないし23行)

ケ 本件訂正発明における「好適な変退色を実現可能な建築板を得ることができる」(「特定の色成分の色味…が消えてしまうような状態を防止することができる」)と、甲第2号証に記載の発明における「耐褪色性を高く得ることができる」とは、効果に関する現象自体、すなわち、各色成分間の関係を考慮したものであるか否かという点で異なっています。本件訂正発明の効果は、各色成分間のバランスを考慮したものであるのに対し、甲第2号証に記載の発明の効果は、各色成分間のバランスを全く考慮していないインクジェット層全体の「色の鮮やかさ」を意味するものです。
また、本件訂正発明は、長期間の熱、光、水への暴露による抑制困難な変退色を許容しつつ、いずれかの色成分のみが消えてしまうような状態を防止するものであるのに対して、甲第2号証に記載の発明は上記のとおり、全体の色が当初の時点で鮮やかであるとともに、その鮮やかさを維持しようというものであって、これらは互いに異質であることはもちろん、互いに相容れない課題、効果といえます。
(口頭審理陳述要領書8頁12ないし24行)

コ 請求人の主張は、相違点1に係る構成(構成要件A?C)が容易想到であること、及び、構成要件A?Cを備えた建築板(甲2発明とは異なる発明)において、「屋外用建築板に10年程度の耐候性が求められる」といった課題を認識した上で、相違点2の構成(構成要件D及びF)を採用することは容易想到であることを主張するものであり、いわゆる「容易の容易」に基づいて容易想到性を判断するものです。
(口頭審理陳述要領書26頁3ないし8行)

サ 顔料の中には、ポリマー等の有機材料を劣化させるものがあるため、水性インクに適用することはできても、水性インクよりもポリマー等の有機材料を大量に含む紫外線硬化型インクに適用することはできないものがある。つまり、顔料の組合せと紫外線硬化型インクとすることは一体の技術事項であり、別個独立に適宜採用し得るようなものではない。子のような状況下で、本件訂正発明は、紫外線硬化型インクとすることを前提に、「好適な変退色を実現可能な建築板を得る」ために最適な特定の4色の顔料の組合せを採用したものである。
(平成28年12月26日付け上申書6頁末行ないし7頁6行)

シ 当業者が、ポリマー等の有機材料との相性が特に悪いCo、Mn、Cu、Feといった金属を含むCu-Fe-Mn系ブラックやCo-Fe-Cr系ブラックが用いられている甲2発明の水性インクを、水性インクよりも明らかに有機材料を多く含む紫外線硬化型インクに変更しようとする動機付けはなく、むしろそのような変更には阻害要因がある。
(平成28年12月26日付け上申書8頁10ないし14行)

ス 甲2発明において、ブラック顔料だけに着目し、その上でブラック顔料だけをシー・アイ・ピグメントブラック7に変更する動機付けは一切存在しない。
(平成28年12月26日付け上申書9頁19ないし20行)

(2)無効理由2
ア 甲第3号証には、熱、光(太陽光)、水(雨)に暴露された場合にも「好適な変退色を実現可能な建築板を提供する」ために、多数例示された顔料の中から、「シー・アイ・ピグメントイエロー42又はシー・アイ・ピグメントイエロー184」と「シー・アイ・ピグメントレッド101」とを選択して組み合わせる動機があるとはいえないし、ましてや、これらに加えて、甲第3号証に記載すらされていない「シー・アイ・ピグメントブルー28」を更に組み合わせて用いる動機が存在するなどといえるはずがない。
(答弁書23頁下から7ないし末行)

イ 請求人は、当業者が甲3発明において、多数列挙されている染料や有機顔料、無機顔料を選択する際に、甲第4号証に記載の「現在市場でよく使用されている代表的着色顔料」から選択することを前提にしているようであるが、そのような前提が成立するといえる根拠は何ら見出せない。当業者が甲3発明における顔料や染料を選択するにあたっては、甲第3号証に記載されているあらゆる顔料や染料を対象にするはずであるというのが自然な理解であって、対象を「現在市場でよく使用されている代表的着色顔料」に限定し、さらにそのうちの無機顔料に限定すべき事情はない。
(答弁書25頁17ないし24行)

ウ 甲第3号証には、同号証に記載の発明が「着色剤を水性もしくは油性媒体中に溶解又は分散」することを必須の構成とすることが記載されており(【請求項1】)、また、「本発明のインクセットに使用するインクは、染料もしくは顔料を水もしくは有機溶媒に溶解または分散してなるインクである。中でも水溶性染料による水溶液タイプのインクであることが好ましい」(【0018】)と記載されている。一方、甲第3号証には、顔料を含む紫外線硬化型インクについては記載も示唆もない。
そうすると、甲第3号証に記載に接した当業者は、水溶性染料による水溶液タイプのインクを積極的に用いようとするはずであり、顔料を含むインクを用いるにしても、せいぜい顔料を水や有機溶媒に分散してなるインクを用いようとするにとどまるのであって、甲第3号証において顔料を含む紫外線硬化型インクを用いる動機はない。
(答弁書28頁16ないし27行)

エ 甲第3号証に記載の「D65光による光照射試験」は所定の光を照射して「褪色などの劣化を試験する試験方法」(【0013】)にすぎず、少なくとも「熱」や「水(雨)」による変退色を一切考慮していない試験である。すなわち、甲3発明におけるD65光による光照射試験は、本件訂正発明1における促進耐候試験とは、技術的意義が根本的に異なるものである。
そして、甲第3号証には、「光(太陽光)」のみならず、「熱」や「水(雨)」による変退色をも考慮した本件訂正発明1における促進耐候試験による変退色後の色差(ΔE^(*)ab)に着目する動機はなく、ましてやその色差(ΔE^(*)ab)を0.99以内とする動機など存在し得ない。
(答弁書31頁8ないし16行)

オ 請求人が引用する甲第3号証【0221】には、「本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。」とした上で、その例外的な用途の1つとして、「屋外装飾材料」を挙げ、さらにその例示の1つとして「壁材」が記載されているにすぎない。そのため、このような記載から仮に建築板の記載が認定できたとしても、主たる対象はオフィスや家庭で紙、フィルム、布等に印字するために利用されるものであって、建築板のインクジェット層の表面に形成される透明な被覆層までが想定できることはない。
(答弁書32頁21ないし末行)

(3)無効理由3
ア 本件訂正発明においては、請求人のいう「3色の顔料の組み合わせ」及び「色差(ΔE^(*)ab)の差「0.99以内」」はそれぞれ別個の特定事項であり、これら両方(更にはその他の特定事項)を具備することにより、好適な変退色が実現可能となるのである。
(答弁書7頁3ないし7行)

イ 本件明細書(【0016】?【0021】,【0052】?【0054】)及び図面(【図1】)には、本件訂正発明に係る建築板を実施するための形態(生産する方法)が記載されている。また、本件明細書の実施例(【0022】?【0049】)、特に実施例1,2には、本件訂正発明に係る建築板を実施するための形態(生産する方法)がより具体的に記載されている。
そして、このような本件明細書の記載に接した当業者であれば、本件訂正発明に係る建築板を作ることができ、かつ使用できる。
そうすると、物の発明である本件訂正発明(建築板)について、本件明細書にはその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載がある上に、本件明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、当然にその物を使用できるのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」である。
(答弁書35頁22行ないし36頁5行)

ウ 請求項1において特定した3種の顔料の紫外線硬化型インクによって形成されたインクジェット層の表面に透明な被覆層が形成され、同じく請求項1に特定された光、温度、湿度、水のシャワーを含む超促進耐候試験の600時間後の各色間の色差が0.99以内である建築板によれば、特定の色成分の色味が消えてしまうような状態を防止できることが実施例1、2から明らかであり、請求項1に記載の発明特定事項によって、本件訂正発明の好適な変退色を実現可能な建築板を得ることができるという課題を解決することができると当業者は認識する。
(答弁書38頁13ないし19行)

エ 実験報告書1(甲第14号証)において、請求人自身が本件明細書の記載に従って本件訂正発明を実施できたことが立証されている。
また、同様に実験報告書2(甲第15号証)においても、請求人自身が本件明細書の記載に従って本件訂正発明を実施できたことが立証されている。
これらの事実は、本件明細書の発明の詳細な説明が、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたもの」であることを意味していることに他ならない。
(答弁書40頁6ないし13行)

オ もしも仮に、本件特許出願時の技術常識を有する当業者が、本件訂正発明において規定する色差(ΔE^(*)ab)の差「0.99以内」は、請求人が主張するようなインク成分(反応性モノマ一、反応性オリゴマ一、光重合開始剤)の種類、トップコートの種類、顔料の性状という様々な要素の総合的な組み合わせに依存すると認識するのであれば、当業者は、色差(ΔE^(*)ab)の差が「0.99以内」となるように、インク成分(反応性モノマ一、反応性オリゴマ一、光重合開始剤)の種類、トップコートの種類、顔料の性状等を適宜選択すればよいのであって、本件訂正発明が実施可能であることに何ら変わりはない。
(答弁書40頁14ないし21行)

第7 当審の判断
1 甲各号証の記載
(1)甲第2号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【請求項1】
基材の表面に、下塗り層、インク受理層、インクジェット層、クリアー層、無機質塗料層、光触媒塗料層をこの順に積層して形成されると共に、黄色酸化鉄、Ti-Ni-Ba系イエロー、Ti-Sb-Ni系イエロー、Ti-Nb-Ni系イエロー、Ti-Sb-Cr系イエローから選ばれる顔料を含有するイエローのインクと、Co-Al系ブルー、Co-Al-Cr系ブルーから選ばれる顔料を含有するシアンのインクと、赤色酸化鉄、Fe-Zn系ブラウン、Fe-Zn-Cr系ブラウン、Fe-Ni-Al系ブラウンから選ばれる顔料を含有するマゼンタのインクとからなる、有機顔料を含有しない3色のインクでインクジェット層が形成されていることを特徴とする化粧建築板。
【請求項2】
黒色酸化鉄、Cu-Cr系ブラック、Cu-Cr-Mn系ブラック、Cu-Fe-Mn系ブラック、Co-Fe-Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するブラックのインクを加えて、有機顔料を含有しない4色のインクでインクジェット層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧建築板。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板に関するものである。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化粧建築板にあっては、せっかく色鮮やかな有機顔料を用いてインクジェット層4を形成しても、早期に色褪せが生じてしまうという問題があった。そこで、本発明者らは、この問題を解決すべく、耐候性の高い無機顔料のみを用いてインクジェット層4を形成してみたが、色の鮮やかさに大きく欠けてしまうことが分かった。そして本発明者らはさらに研究を続けた結果、有機顔料と無機顔料(中でも酸化物系の無機顔料)とを混合して用いた場合には、この無機顔料が光半導体として作用し、これにより有機顔料が劣化してしまうということを突き止めた。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、耐褪色性を高く得ることができる化粧建築板を提供することを目的とするものである。」

エ 「【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る化粧建築板によれば、所定のイエロー、シアン、マゼンタの3色のインクを組み合わせて用いることによって、有機顔料を用いる場合に比べて色の鮮やかさが低下するのを極力防止することができると共に、このように有機顔料が含有されていない3色のインクを用いてインクジェット層を形成することによって、インクジェット層の劣化が防止され、耐褪色性を高く得ることができるものである。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、所定のブラックのインクを加えることによって、イエロー、シアン、マゼンタの3色で表現される黒色よりも、鮮明な黒色を表現することができると共に、黒色をブラックの1色で表現することによって、イエロー、シアン、マゼンタの3色で黒色を表現する必要がなくなり、材料費を節約することができるものである。」

オ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明に係る化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、下塗り層2、インク受理層3、インクジェット層4、クリアー層5、無機質塗料層6、光触媒塗料層7をこの順に積層することによって形成されている。
【0012】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。……」

カ 「【0017】
具体的には、本発明では、インクジェット層4を形成するインクとしては、次のようなものを用いる。すなわち、イエロー(Y)のインクとしては、黄色酸化鉄、Ti-Ni-Ba系イエロー、Ti-Sb-Ni系イエロー、Ti-Nb-Ni系イエロー、Ti-Sb-Cr系イエローから選ばれる顔料を含有するものを用いる。また、シアン(C)のインクとしては、Co-Al系ブルー、Co-Al-Cr系ブルーから選ばれる顔料を含有するものを用いる。また、マゼンタ(M)のインクとしては、赤色酸化鉄、Fe-Zn系ブラウン、Fe-Zn-Cr系ブラウン、Fe-Ni-Al系ブラウンから選ばれる顔料を含有するものを用いる。このように、所定のイエロー、シアン、マゼンタの3色のインクを組み合わせて用いることによって、有機顔料を用いる場合に比べて色の鮮やかさが低下するのを極力防止することができるものである。
【0018】
黒色は、上記イエロー、シアン、マゼンタの3色のインクで表現することができるが、次のようなブラック(K)のインクを加えて、4色のインクとすることが好ましい。すなわち、ブラックのインクとしては、黒色酸化鉄、Cu-Cr系ブラック、Cu-Cr-Mn系ブラック、Cu-Fe-Mn系ブラック、Co-Fe-Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するものを用いるのが好ましい。」

キ 「【0024】
その後、インクジェット層4の表面にクリアー層5を形成する。クリアー層5は、この下に形成されたインクジェット層4を保護するために必要な層であり、水性塗料で形成することができる。このように、水性塗料でクリアー層5を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。」

ク 「【0027】
また、クリアー層5の厚みは3?30μmであることが好ましい。これにより、耐候性等の耐久性をさらに高く得ることができると共に、クラックの発生及び水性インクの滲みを防止することができるものである。しかし、クリアー層5の厚みが3μmより薄いと、耐候性等の耐久性を高く得ることができないおそれがあり、逆に、クリアー層5の厚みが30μmより厚いと、クラックが発生したり、水性インクが滲んだりするおそれがある。」

ケ 「【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0036】
実施例1?5及び比較例1、2の化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、下塗り層2、インク受理層3、インクジェット層4、クリアー層5、無機質塗料層6、光触媒塗料層7をこの順に積層することによって製造した。
……
【0041】
また、インクジェット層4は、図2に示すようなインクジェット装置を用い、インク受理層3の表面に水性インクをインクジェット印刷することによって形成した。
【0042】
ここで、水性インクとしては、分散体を50重量%、ジエチレングリコールを10重量%、グリセリンを20重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを10重量%、水を10重量%含有するものを用いた。上記分散体としては、顔料と水溶性樹脂(アクリル酸共重合体)と水とを、顔料/水溶性樹脂/水=10/4/86となるように混合したものを用いた。なお、上記顔料としては、下記[表1]の仕様3、7、8、11、12に示すものを用い、各色の顔料ごとに水性インクを調製した。
【0043】
また、クリアー層5は、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料を用いて形成した。」

コ 「【0048】
そして、実施例1?5及び比較例1、2について、耐褪色性を評価する試験を行った。
【0049】
<耐褪色性>
耐褪色性の試験は、次のようにして行った。すなわち、各化粧建築板を1週間養生し、次に各化粧建築板の表面にサンシャインウェザオメーター(SWOM)により紫外線を1000時間照射した後、各化粧建築板の表面を目視により観察して耐褪色性を評価した。各化粧建築板の耐褪色性は、以下の基準に基づいて判定した。その結果を下記[表2]に示す。
【0050】
「◎」:色褪せが全く生じなかったもの。
【0051】
「○」:気にならない程度であるが、色褪せがわずかに生じたもの。
【0052】
「×」:色褪せが生じたもの。」

サ 表1には、仕様13のインクジェット層(インク)は、シアン(C)のインク、マゼンダ(M)のインク、イエロー(Y)のインク及びブラック(K)のインクとして、Co-Al系ブルー、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及びCu-Fe-Cr系ブラックを顔料として用いること、並びに、仕様14のインクジェット層(インク)は、シアン(C)のインク、マゼンダ(M)のインク、イエロー(Y)のインク及びブラック(K)のインクとして、Co-Al系ブルー、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及びCo-Fe-Cr系ブラックを顔料として用いることが、それぞれ記載されている。

シ 上記コの記載に照らせば、表2からは、仕様13ののインクジェット層を有する実施例6、及び、仕様14ののインクジェット層を有する実施例7の化粧建築板では、耐褪色性の試験の結果、色褪せが全く生じなかったことがみてとれる。

ス 上記アないしシ(特にア、イ、オ、サ)によれば、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「基材の表面に、下塗り層、インク受理層、インクジェット層、クリアー層、無機質塗料層、光触媒塗料層をこの順に積層して形成されると共に、黄色酸化鉄顔料を含有するイエローの水性インクと、Co-Al系ブルー顔料を含有するシアンの水性インクと、赤色酸化鉄顔料を含有するマゼンタの水性インクと、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料を含有するブラックの水性インクとからなる、有機顔料を含有しない4色の水性インクで所望の模様が施されたインクジェット層が形成されている、瓦や外壁材等の用途に使用される化粧建築板。」

(2)甲第3号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
着色剤を水性もしくは油性媒体中に溶解又は分散してなり、かつ互いに異なる分光吸収領域に最大吸収スペクトルを有する少なくとも3種類のインクジェット用インクから構成されたインクジェット記録用インクセットであって、反射型受像媒体上に該インクセットを用いて印画した該少なくとも3種類のインクの印画領域について求めたそれぞれのインクのD65光による強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内にあることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
インクセットが、少なくとも1種のシアン、少なくとも1種のマゼンタ及び少なくとも1種のイエローの各インクからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
インクセットが、少なくとも1種のブラックインクを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
……
【請求項5】
着色剤が、顔料であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクセット。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録画像の品質が保存環境に影響され難い画像保存性が優れたインクジェット用インクセットならびにインクジェット記録方法に関する。とくに、屋外展示や広告のような太陽光の影響を受け易い条件の下でも画像保存性が優れたインクジェット用インクセットならびにインクジェット記録方法に関する。」

ウ 「【0004】
耐久性に優れた色像形成剤としては、顔料の方が一般的に染料より優れてはいるが、逆に顔料を用いた分散型のインクの場合、画像の透明度(特に高濃度部)や画質が劣る。そのために染料及び顔料のいずれにおいても堅牢性と高画質の双方を両立させることができていない。……特にインクジェット描画の反射画像を太陽光成分の多い屋外においた場合、展示中の経時によって光による褪色が進んで画像濃度が低下する(狭義の褪色)だけでなく、その褪色の進行が画像を構成する各着色剤ごとに異なるので褪色(色濃度低下)とともに、画像のカラーバランスも崩れた画像になってしまうという問題を有していた。
【0005】
このような記録画像の経時的な画質劣化は、高温、高湿、高照度の照明、酸化性雰囲気への曝気などによって促進されるので、インク組成中のインクの熱安定性、光堅牢性及び耐酸化性がともに優れていることが肝要であることは言うまでもないが、上記のような屋外光照射によるカラーバランスのくずれは、特定のインクの着色剤を堅牢化しただけでは解決に至らない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記の背景からなされたものであって、記録画像の品質が高く、しかも得られた画像が明所とくに太陽光成分の多い屋外に置かれてもカラーバランスの変化が少なく画像品質を維持することができるインクジェット用インクセットならびにインクジェット記録方法を提供することである。」

エ 「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
はじめに本発明のインクセットの各インクの屋外光に対する堅牢性を表すD65光による強制褪色速度定数について説明する。D65光とは、国際照明委員会が定めた太陽の平均昼光を指す用語である。
本明細書における各インクのD65光による強制褪色速度定数とは、インクセット中の当該インクのみを反射型受像媒体に印画して得られた画像の該インクの主分光吸収領域の色であってステータスAのフィルターを通して測定した反射濃度が0.90?1.10の濃度の着色領域を初期濃度点として選択し、この初期濃度を開始濃度(=100%)とする。次に、この画像を国際規格(ISO18909:色素画像の安定度試験方法)の5.9(D65屋外太陽光条件)の規定に準拠したキセノン光照射によって褪色させ、その濃度が初期濃度の80%となるまでの時間を測定し、褪色濃度と時間との関係が一次反応の速度式に従うと仮定して、この時間からD65光による褪色反応速度定数を求める。したがって、求められる褪色速度定数は当該インクによって印画された着色領域の褪色速度定数であるが、本明細書では、この値をインクの褪色速度定数として用いる。
……
【0013】
本発明において、強制褪色速度定数を測定するために用いる上記国際規格の5.9に規定されたD65光による光照射試験は、太陽光成分が多い屋外を代表する試験条件で、高圧キセノン灯(内套1.5mmと外套2.5mm厚の厚ホウ珪酸ガラスで保護)の光にさらに6.0mm厚の厚ホウ珪酸ガラスを通すことによってCIE(国際照明委員会)が定めた平均昼光(D65すなわち6500°K)に近似させた光を画像面に6.5kluxで照射して褪色などの劣化を試験する試験方法である。
上記試験に用いる高圧キセノン灯は、アトラスエレクトリックデバイス社(米国、Atlas Electric Devices, Inc.)製のウエザーオーメータCi65Aを挙げることができる他、JIS Z8902(キセノン標準白色光源)に規定されたキセノン灯と紫外吸収補正用ソーダガラスのくみ合わせを用いることができる。……
【0014】
次ぎに本発明のインクセット及びそれを構成する各インクについて説明する。本発明のインクジェット用インクセットは、少なくとも3種以上のインクを含有する。各インクには着色成分が含有されており、好ましくは少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3色が少なくとも各1種ずつ含まれている。また、好ましくはブラックインクも含まれている。さらに好ましくは、シアン、マゼンタ、イエローのカラーインクが各色2種ずつ含まれている。
【0015】
通常このようなインクセットを用いて記録した画像は、明所で保管あるいは展示されると、画像のそれぞれの領域の濃度、色調、コントラストによって褪色速度が異なるためにカラーバランスに歪みを生じて画像形成直後の優れた画像品質の維持困難がつきまとう。
とくに、反射型受像媒体に画像を形成させる本発明に係る場合には、透過材料におけるランバート・ベールの法則が成立せず、とくに低濃度領域においては褪色色素量と濃度低下量の乖離がはなはだしくなる。すなわち色素存在量と濃度の間にリニアな関係が存在しない領域が広く存在する。
それに加えて、インクセットを形成するインクが各色2種以上用いられた場合には、その同一色相あるいは類似色相で濃度の異なる各インク間で、褪色速度が異なることが色調を著しく変化させる。
そのために、屋外太陽光で代表される可視光全域及び紫外光に富む照明光に画像が曝された場合には、色素の光化学的褪色に伴なう濃度低下のみでなく、むしろそれ以上にカラーバランスの歪みによる画像の劣化、画像寿命の減少が引起される。
【0016】
しかしながら、本発明は、インクセットを構成する色相を異にする少なくとも3種類のインクの印画領域について求めたそれぞれのインクのオゾンガスに対する強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内に調整したことが特徴で、このように設計したインクセットでは上記した屋外太陽光で代表される可視光と紫外光とに富む照明光に画像が曝された場合にも画像のカラーバランスが崩れにくく、画像のとしての総合品質が劣化しにくくなる。
すなわち、本発明にインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法では、インクセットを構成する各色インクに対して求めたD65光による強制褪色速度定数は、そのいずれの2つをランダムに選択しても、その比は0.5?20、好ましくは0.7?1.4、さらに好ましくは0.8?1.25の範囲にあり、そのような範囲に調整することによって、発明が目的とする効果が発揮される。」

オ 「【0024】
本発明のインクセットには顔料を用いてもよく、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。……具体的には、……無機顔料では、黄色顔料のC. I. Pigment Yellow 34, 37, 42, 53など、赤系顔料のC. I. Pigment Red 101, 108など、青系顔料のC. I. Pigment Blue 27, 29,17:1など、黒系顔料のC. I. Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC. I. Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。」

カ 「【0028】
黒顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。
この他、オレンジ顔料(C. I. Pigment Orange 13, 16など)や緑顔料(C. I. Pigment Green 7など)を使用してもよい。」

キ 「【0221】
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料および屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。」

ク 「【0224】
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像ののみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。」

ケ 上記アないしク(特にア、キ、ク)によれば、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「顔料を水性もしくは油性媒体中に溶解又は分散してなり、かつ互いに異なる分光吸収領域に最大吸収スペクトルを有する少なくとも4種類のインクジェット用インクから構成されたインクジェット記録用インクセットを使用して抽象的なデザイン、幾何学的なパターンなどを形成した壁材、ルーフィング材などの屋外装飾材料であって、
該インクセットが、少なくとも1種のシアン、少なくとも1種のマゼンタ、少なくとも1種のイエロー及び少なくとも1種のブラックインクの各インクからなり、
反射型受像媒体上に該インクセットを用いて印画した該少なくとも4種類のインクの印画領域について求めたそれぞれのインクのD65光による強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内にある、壁材、ルーフィング材などの屋外装飾材料。」

(3)甲第4号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「無彩色(白)を含め、色系統を8種に分割し、それぞれの色相域で、現在市場でよく使用されている代表的着色顔料を選択した。また、塗料業界に於いても、鉛・クロムの低減は環境、安全面から強く要望されているが、鉛・クロム系顔料がその鮮やかな色調と耐候性及びコスト面等によりまだ多く使用されている現状に鑑み、その代替について、対象顔料種を多く選定した。淡彩の顔料配合比については、一律の配合比ではなく、明度70程度を目標に調整した。
試験に用いた顔料の概略を、2.4の章末に表2-2で示す。」(4頁2ないし7行)

イ 10頁の「表2-2 顔料種一覧表」には、色系統が「ブルー」の顔料種である「コバルトブルー」のC.I.Generic Nameが「BULE28」であること、色系統が「イエロー」の顔料種である「黄色酸化鉄」のC.I.Generic Nameが「YELLOW42」であること、及び、色系統が「レッド」の顔料種である「弁柄」のC.I.Generic Nameが「RED101」であることが記載されている。

(4)甲第5号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「4.1.3.2 ベンガラ(弁柄)
一般名 ベンガラ(べんがら、弁柄、紅柄)、赤色酸化鉄、酸化第二鉄、ヘマタイト
……
C.I.番号 C.I.Pigment Red 101(C.I.77491)
……
[性 状] ベンガラは、α-Fe_(2)O_(3)を主成分とする赤褐色の顔料で、顔料の粒子形状は粒状で不定形である。……酸、アルカリには安定で、耐熱性、耐候性も良好な、安価で堅牢な人畜無害な着色顔料である。」(348頁下から3行ないし11行)

イ 「4.1.4.2 黄色酸化鉄
一般名 黄色酸化鉄、鉄黄、含水酸化第二鉄、……
……
C.I.番号 C.I.Pigment Yellow 42(C.I.77492)
……
[性 状] 黄色酸化鉄は、α-FeO(OH)を主成分とする黄色顔料で、その色調は茶色を帯びた暗い橙黄色からごく僅かに緑色を帯びた明るい黄色を呈する粉体がある。……酸、アルカリには安定で、耐候性に優れる。」(352頁11ないし25行)

ウ 「4.1.6.3 コバルト・アルミブルー(複合酸化物系顔料)
一般名 コバルトブルー、テナールブルー、アルミン酸コバルト
……
C.I.番号 C.I.Pigment Blue 28(C.I.77346)
……
化学式 CoO-Al_(2)O_(3)
[性 状] コバルトブルーは酸化コバルト、酸化アルミから成るスピネル型の結晶構造を有する青色焼成顔料で、色調調整剤としてMgO、ZnO、SiO2を含むこともある。……耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れた堅牢度の高い顔料である……
[塗料用途] 耐久性を要求される外装用塗料、耐熱性塗料、無機質塗料等」(362頁14ないし28行)

(5)甲第6号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
オレンジ色顔料インク(a)と赤色顔料インク(b)を備え、前記オレンジ色顔料インク(a)がオレンジ色顔料である酸化鉄および溶媒からなり、前記赤色顔料インク(b)が赤色顔料である酸化鉄および縮合多環化合物顔料から選択される1種以上の顔料および溶媒からなるインクジェット用インクセット。
【請求項2】
前記オレンジ色顔料である酸化鉄が、シー・アイ・ピグメントレッド101である請求項1記載のインクジェット用インクセット。
……
【請求項5】
前記溶媒が反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマーである請求項1?4のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを使用して着色媒体に模様を形成することを特徴とするインクジェット着色方法。
【請求項7】
請求項6記載のインクジェット着色方法を使用して得られることを特徴とする屋外用着色物。」

イ 「【0017】
本発明のインクセットにより、サイディング材などの屋外用途の素材に対して、レンガ調や木目調の色表現を与えることが可能となる。さらに、サイディング材で多用される暖色系の色表現、特に濃色のオレンジ色、茶色、レンガ色の表現および耐候性に優れた屋外用着色物を得ることができる。」

ウ 「【0020】
オレンジ色顔料インク(a)は、少なくともオレンジ色顔料である酸化鉄を含んでいる。かかる酸化鉄としては、シー・アイ・ピグメントレッド101が好ましい。シー・アイ・ピグメントレッド101は粒子径により色相が変化する特徴を有し、粒子径が小さいと黄みを呈し、粒子径が大きいと紫みを呈する。」

エ 「【0030】
本発明のインクジェット用インクセットは、フタロシアニン化合物(シー・アイ・ピグメントブルー15、シー・アイ・ピグメントブルー15:1、シー・アイ・ピグメントブルー15:2、シー・アイ・ピグメントブルー15:3、シー・アイ・ピグメントブルー15:4、シー・アイ・ピグメントブルー15:6およびシー・アイ・ピグメントブルー16)などの青色有機顔料、紺青(シー・アイ・ピグメントブルー27)、コバルトブルー(シー・アイ・ピグメントブルー28、シー・アイ・ピグメントブルー36)、群青(シー・アイ・ピグメントブルー29)などの青色無機顔料、カーボンブラック(シー・アイ・ピグメントブラック7)などの黒色無機顔料、酸化チタン(シー・アイ・ピグメントホワイト6)などの白色無機顔料、バナジウム酸ビスマス(シー・アイ・ピグメントイエロー184)、黄色酸化鉄(シー・アイ・ピグメントイエロー42)などの黄色無機顔料、およびアゾメチン化合物(シー・アイ・ピグメントイエロー129、シー・アイ・ピグメントイエロー150)などの黄色有機顔料からなるインクを併用したインクセットとすることもできる。」

オ 「【0034】
本発明で使用される溶媒としては、水、有機溶媒、反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマーがあげられ、これらの中で反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマーが好ましい。
【0035】
反応性モノマーおよび反応性オリゴマーは特に限定されないが、紫外線の照射により硬化するものであり、いわゆる、紫外線硬化型樹脂である。この紫外線硬化型樹脂は、紫外線照射されることにより樹脂が瞬時に硬化する特徴を有しているため、記録基材に対してインク受容層を必要としないというメリットがあり、その硬化物は基材との密着性に優れている。」

カ 「【0068】
実施例1
〔オレンジ色顔料インクの作製〕
無機顔料であるSicotrans Red L2818(シー・アイ・ピグメントレッド101、酸化鉄、BASFジャパン(株)製)を3重量部、分散剤(Disperbyk-168、Byk Chemie社製)を3重量部、反応性オリゴマー(CN985B88、脂肪族ウレタンアクリレート、2官能、サートマー(株)製)を20重量部、反応性モノマー(SR238F、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2官能、サートマー(株)製)を69重量部、および光重合開始剤(イルガキュア2959、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕2-ヒドロキシ-2-メチルー1-プロパンー1-オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を5重量部加え、ビーズミル分散機を用いて分散した後、濾過を行って不純物を除去し、均質なオレンジ色顔料インクを作製した。使用した無機顔料の平均粒子径は79nmであった。
……
【0072】
得られたオレンジ色顔料インク、赤色顔料インク、青色顔料インクおよび黒色顔料インクをインクセットとし、インクジェットプリンタにより下記条件にて着色媒体に付与し、紫外線ランプによりインクを硬化させることにより着色物を得た。」

(6)甲第7号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
顔料、反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマー、および光重合開始剤を含有する紫外線硬化型インクジェット用インクであって、顔料が無機顔料であり、光重合開始剤がヒドロキシケトン類またはアシルホスフィンオキサイド類である紫外線硬化型インクジェット用インク。」

イ 「【0002】
近年、水系または溶剤系インクジェットプリント以外の技術として、紫外線硬化型樹脂を用いたインクジェットプリントが研究されている。この紫外線硬化型樹脂は、紫外線照射されることにより樹脂が瞬時に硬化する特徴を有しているため、記録基材に対してインク受容層を必要としないというメリットがある。このメリットのために、前記紫外線硬化型樹脂の使用は、紙への着色には留まらず、フィルム、プラスチック、金属およびガラスなど、様々な素材への着色材としての応用が検討されている。
【0003】
また、紫外線硬化型樹脂は、引っ掻き硬度および基材との密着性に優れた硬化膜となるため、その記録物は屋外および屋内の両方で使用可能である。しかし、屋内使用と比較した場合、例えば建材や看板など、屋外で使用する場合においては、あらゆる自然条件に対応できる優れた耐性が必要である。その一例として、耐光性、耐熱性、耐水性および耐酸性などがあげられる。そして、記録物は、一定期間、その画像を変色および退色なしで保持できるものでなければならない。一般的に、紫外線硬化型樹脂は、他の樹脂と比較して耐候性に優れているが充分ではない。
【0004】
そのため、屋外で使用するインクジェット用のインクにおいても日々研究がなされており、着色剤として染料よりも耐光性の優れた有機顔料が採用され始めている。しかしながら、屋外用途においては、長期間太陽光に曝されることになるため有機顔料を使用した場合であっても退色を免れることはできない。屋外用途の場合には、屋外にて5?10年曝露された後もほとんど退色しない耐光性が必要であるため、有機顔料よりも耐光性の優れた無機顔料を着色剤として使用する方法がある。」

ウ 「【0016】
本発明で使用される顔料は、無機顔料であればとくに限定されない。たとえば、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)および金属粉類などがあげられる。なかでも、鮮明で着色力があり、無害である点で、酸化物類、水酸化物類およびフェロシアン化物が好ましい。
【0017】
前記顔料は、0.1?10重量%含有されていることが好ましく、0.5?5重量%含有されていることがより好ましい。顔料の含有量が0.1重量%より少ないとインクの濃度として不充分になる傾向にあり、10重量%をこえるとノズルからの吐出が困難になる傾向にある。」

エ 「【0041】
本発明のインクは顔料を含有しており、耐光性に非常に優れるため、建造物の外装材、看板および標識など、とくに屋外で使用されるものに対して、好ましく使用することができる。」

オ 「【0047】
実施例1
無機顔料としてSicotrans Yellow L1100(シー・アイ・ピグメントイエロー184、バナジウム酸ビスマス、BASF社製)を3重量部、分散剤(Disperbyk-168、高分子化合物、BykChemie社製)を3重量部、反応性オリゴマー(CN985B88、脂肪族ウレタンアクリレート、2官能、サートマー(株)製)を20重量部、反応性モノマー(SR238F、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2官能、サートマー(株)製)を69重量部、および光重合開始剤(ヒドロキシケトン類、1-{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル}-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を5重量部加え、ビーズミル分散機を用い分散した後、濾過を行って不純物除去し、均質なイエローインクを作製した。得られたインクを下記評価方法にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
実施例2
無機顔料としてDAIPYROXIDE BLUE 9410(シー・アイ・ピグメントブルー28、複合酸化物、大日精化(株)製)、光重合開始剤として(アシルホスフィンオキサイド類、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を使用したほかは実施例1と同様にして、ブルーインクを作製した。得られたインクを実施例1同様に評価を行った。結果を表1に示す。」

(7)甲第12号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、次の事項が記載されている。

ア 「請求項1】
金属材の表面模様を無機系の顔料を含有する水系インクをインクジェットプリンターにてプリントすることを特徴とする金属建材の架飾方法。
【請求項2】
水系インクをプリントした上に耐候性を有する保護膜を形成することを特徴とする金属建材の架飾方法。」

イ 「【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、水系インクをプリントした上に耐候性を有する保護膜を形成することを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、金属建材およびそのプリントした部分が経年劣化するのを抑えることができる。」

ウ 「【0027】
また更に、この水系インクによってプリントした上に、耐候性を有する透明な保護膜を塗布して形成してもよい。保護膜は、水系のアクリルクリヤーやフッ素系または溶剤系のクリヤーで、紫外線を遮断したりする効果を有し、水系インクの経年劣化を抑えるため、無機質顔料を用いた上記水系インクが経年劣化するのをより一層抑えることができる。」

(8)甲第13号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 被塗物上に着色顔料を含有する紫外線硬化型塗料を全面もしくは部分的に模様状に塗布し、紫外線を照射することにより模様状硬化塗膜を形成し、次いで含フッ素樹脂をバインダーとする透明もしくは不透明塗料を塗布し、硬化せしめることを特徴とする立体模様塗膜の形成方法。」

イ 「【0016】
本発明で使用する含フッ素樹脂をバインダーとする塗料は前記紫外線硬化型塗料の耐候性、耐汚染性の悪さを解消するために該塗膜上に塗布するものであり、塗料の塗料形態は、有機溶剤型、水系型、非水ディスパージョン型、粉体型等特に制限なく、また乾燥形態も常温乾燥型、焼付硬化型、紫外線硬化型のいずれであってもよい。」

(9)甲第17号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第17号証には、次の事項が記載されている。

ア 「2.外装建材分野の動向
2.1窯業サイディング
……
窯業サイディングはほとんどが新築戸建て住宅向けであり、その着工戸数がそのまま需要に反映される。需要拡大と差別化のため高意匠感と高耐久化がより求められてきている。……塗料面からは塗膜10年保証商品の展開が増えてきた事によりアクリル樹脂塗料からシリコン変性アクリル樹脂塗料などの高耐候性塗料の適用、また、エナメル塗料仕上げからさらにクリヤー塗料を上掛けする事による耐候性向上が計られてきている。」(38頁左欄9ないし26行)

イ 「3.4上塗り塗料
上塗り塗料は美観・保護が最大の機能目標である。
……
保護は、冒頭に述べたように塗膜での10年保証、さらに長期の保証が要求されてきているため、塗料そのものの材質の変更が活発に行われてきている。従来アクリル樹脂塗料であったものが、シリコン変性アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などが使用されている。
また、エナメル塗装で終了していたものが、クリヤー塗料の上掛けによってさらに高耐候となり、無機系塗料のクリヤー掛けも行われている。
クリヤー塗料に必要なものは、紫外線の透過を抑えるためのUVA(紫外線吸収剤)や、HALS(光安定剤)の添加技術の活用があり、水性塗料にあったものの開発と適用化が進んでいくものと思われる。」(40頁右欄下から4行ないし41頁左欄14行)

(10)甲第18号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。

「2.1 高耐久性化
2000年に住宅品質確保促進法が施行された後、窯業系外装材では、近年塗膜10年保証商品が増加してきた。……
各社が塗膜10年保証を打ち出し、対象商品が増加して差別化が出来なくなっている現状では、さらにメンテナンス周期の延長として、15?20年保証への動きも見られる。」(24頁左欄1ないし13行)

(11)甲第19号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、次の事項が記載されている。

258頁の「表II.3.51 無機顔料の一覧表」には、金属酸化物系顔料である「黄色酸化鉄(ゲーサイト)」のC.I.G.Nが「P.Yellow42」であることが記載されている。

(12)甲第20号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第20号証には、次の事項が記載されている。

ア 15頁の黄色顔料の一覧名表には、「黄色酸化鉄」は、「Pig.Yellow42」であること、「加熱すると300℃位より結晶水(nH_(2)O)を失いべんがらになる」ことが記載されている。

イ 26頁の赤色顔料の顔料名一覧には、「べんがら」は、「Pig.Red101」であることが記載されている。

ウ 「べんがらはFe_(2)O_(3)を主成分とする安定な赤色系鉄酸化物である。」(447頁2ないし3行)

エ 「1.天然酸化鉄
歴史的にその製法をみるならば、人類が最初に赤色系顔料の一つとしてべんがらを用いた頃は、赤鉄鉱(天然酸化第二鉄)が風化、水簸(すいひ)され堆積した物を採取しそれを用いて古代壁画における赤系絵具としたものと考えられる。
なお現在でも量は少ないが、この様な形で得られた天然酸化鉄も使用されている。」(447頁13ないし22行)

(13)甲第21号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第21号証には、次の事項が記載されている。

ア 「3.4.2 べんがら、赤色酸化鉄
……
天然べんがらはα-Fe_(2)O_(3)を70?95%含有しており、塗料、セメント、陶磁器、絵具などに広く使われているが、合成品も安価に大量に生産され、近年は合成品が主流である。」(279頁14ないし23行)

イ 「3.5.3 黄色酸化鉄、黄鉄
α-FeO(OH)あるいはα-Fe_(2)O_(3)・H_(2)Oで示されるオキシ水酸化鉄からなる黄色顔料で、天然のものと合成のものとがある。
……
天然の黄色酸化鉄はオーカー、シエナ、アンバーなどに分類され、オーカーは明るい黄色、シエナは粒子が細かく、透明度が高い、アンバーはマンガン含有量が多いことを特徴としている。」(287頁下から7行ないし288頁1行)

(14)甲第22号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第22号証には、次の事項が記載されている。

「有彩無機顔料
酸化鉄 酸化鉄は小さい彩度(クローマ)と優れた耐候性をもち毒性もなく安価である。……合成酸化鉄には、赤、黄、茶、黒がある。純度、粒径の均質性、および粒径分布が天然酸化物より優れている。これはフラッシング技術によって前分散されたビヒクル系に使うことができる。」(297頁右欄5ないし20行)

(15)甲第23号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第23号証には、次の事項が記載されている。

ア 「4.2.1 インクに要求される特性
(1)吐出特性
インクジェットインクは、直径数十μmのノズルからインク滴が吐出されることによってプリントされる。ノズルが詰まりインク滴が吐出されない、あるいはインク滴の吐出方向不良が発生しインク着弾精度が劣化すると、たとえ1ノズルの問題であっても画質の劣化を招く。したがって、インクジェット記録において要求される諸特性のうち最も重要なことは、さまざまな使用環境において、ノズルの目詰まりがなくつねに安定したインク滴をノズルから吐出させることであり(吐出安定性)、インク滴の吐出方向、速度、体積が一定であることである。」(107頁下から3行ないし108頁7行)

イ 「4.2.2. インクの構成材料
(1)色材(着色剤)
……
工業的な染料・顔料ともに実際には多くの不純物を含んでおり、これらの不純物しばしばインクの特性に影響を及ぼすことがある(インクの保存安定性の劣化、ノズル詰まり、サーマルインクジェットにおけるコゲの発生など)。このため、インクジェット用途として使用するためには、色材を精製し不純物を除去することが必要とされることが多い。」(109頁16ないし25行)

(16)甲第30号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第30号証には、次の事項が記載されている。

「3.1 高耐久性水系塗料の開発
外装材の耐久性向上と環境負荷低減を狙って他社に先駆け1997年に開発したのが、外壁材用水系エナメル・クリヤー塗料仕様である。
この水系エナメル・クリヤー塗料仕様は、耐水性を有する水系アクリルエマルジョン樹脂をベースに、長年市場で実績のある高耐候性着色顔料を使用したエナメル塗膜を下層とし、高耐水性を有する水系アクリルエマルジョン樹脂クリヤー塗膜を上層に塗装し複合させたものである。
……
本塗料は長期の野外暴露テスト結果から、高耐久性を有するトップクリヤーとして採用されており、長年の市場実績から耐久性に優れた点が評価されつつある。」(26頁左欄7ないし末行)

(17)甲第32号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第32号証には、次の事項が記載されている。

ア 「塗料用顔料を選択する場合、設計者はまず問題となっている塗料のタイプおよび最終用途を考えなければならない。塗料は一般に建築用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、一般工業用塗料といった具合に使用されるマーケットで考えられる。」(42頁2ないし4行)

イ 「塗料配合をできるだけ単純にするためには使用する顔料の種類を最少にすることが望ましい。理想的には似通った性質および耐久性をもった顔料だけをブレンドすべきである。そうすれば、その塗色が暴露中に褪色あるいはダークニングしたとしても塗膜の色相はある程度保持される。」(43頁17ないし20行)

ウ 「複数の顔料を組み合わせた場合、その中の一部の顔料が、他の顔料と比べて著しく耐久性が異なると、塗膜の色が、時間とともに大きく変化する。……この為、一部顔料が変化しても、色変化として少なく、目立たない塗料設計にするためには、組み合わせる顔料の色が近く、更に耐久性が大きく異ならない事が必要である。」(81頁32ないし41行)

(18)甲第33号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第33号証には、次の事項が記載されている。

「【0169】
耐光性:試験塗板の塗面について、スガ試験機社製、促進耐候性試験機であるサンシャインウエザオメータにて、2,000時間促進暴露試験を行い、色差計で初期塗膜と試験後の塗膜との色差(ΔE* )を測定した。色差(ΔE* )は、小さいほど良好である。また光沢変化を目視にて調べた。光沢変化の評価は下記基準に従った。」

(19)甲第34号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第34号証には、次の事項が記載されている。

「【0075】
また、実施例5及び比較例1で得られた建築板に対し、その表面にサンシャインウエザーメータ(スガ試験機株式会社製、オープンフレームカーボンアークランプ)を用いて連続光を照射すると共に、1時間毎に12分間散水する促進耐候性試験を行い、各建築板の表面の色差の変化をミノルタ株式会社製のCR-200を用いて測定した。このとき、色差の測定は、各建築板のブラック、マゼンタ、シアン、イエローの各色がそれぞれ塗布された領域について行った。この結果を図2に示す。
【0076】
図示の結果のように実施例5ではブラック、マゼンタ、シアン、イエローの各色それぞれにつき、色差の変化が比較例1よりも小さく、耐候性に優れていることが確認できた。」

(20)甲第35号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第35号証には、次の事項が記載されている。

ア 「2.メタルハライドランプ式耐候性試験機(メタハラ)
「メタルハライドランプ式耐候性試験機」との名称を使用したが、この種の促進耐候性試験機はユーザー、メーカーそれぞれでさまざまな名称が使用されており、一般に認証されているものはない。この種の促進耐候性試験機が1980年代の後半に日本で独自に開発されたことから、他の試験機に比べて耐候性試験機としての歴史が比較的浅いことや国際的な認知度が未だ十分ではないことなどが影響しているようである。ここでは、日本試験機工業会の自主規格として制定されているJTM-G01:2000「メタルハライドランプ方式試験機」の名称を参考にして首記の名称で表すこととした。」(26頁左欄下から5行ないし同頁右欄8行))

イ 「2.3 試験条件
ランプ照射時の温度は他の促進耐候性試験にならってブラックパネル温度(BPT)63℃での設定が一般的であるが、紫外線照射時50?80℃、暗黒・結露時35?75℃の範囲で設定できる。メタハラの場合、照射強度、シャワー条件、暗黒・結露条件などについて時間、温湿度を自由に設定できるようになっており、それぞれのユーザーで試験目的によって様々な試験条件が設定されノウハウとなっている。
ちなみに紫外線照射→シャワー(短時間)→暗黒・結露→停止のサイクルが6?12時間で設定されていることが多く、これらを数?数10サイクル繰り返す試験方法が一般的で比較的短時間で試験結果が得られるようになっている。」(31頁左欄14ないし24行))

ウ 「2.4 関連規格
公的規格と言われるものでは日本試験機工業会「JTM-G01:2000メタルハライドランプ方式試験機」(2000)があるが、ランプとフィルターの基本的な規定に留まっている。
現状、メーカーや型式によって試験条件の違いが小さくないことが原因しているようで、一つの試験方法として細かく統一された内容にはなっておらず、試験法や試験装置の解説書として捉えた方がよい。」(31頁左欄下から2行ないし右欄6行)

エ 「(社)日本塗料工業会では、「各種耐候性試験機の調査研究」(技術委員会 耐候性部会)でメタハラの試験条件を指定してこれを今後の標準規格とすることを提案しているが、ここでも厳密な統一はできていない。(表5参照)」(31頁右欄21ないし24行)

オ 31頁の表5は次のものである。


(21)甲第37号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第37号証には、次の事項が記載されている。

「56.色の許容差
人間は、二つの色が提示された場合、その2色が等しい色であるかどうかを視覚的に観察して判断することができる。また、同時に2色が等しい色でない場合、その色の差の程度を判定することができる。この2色の色の知覚的な差を定量的に表したものを色差という。工業的な色再現では、ユーザー等から提示された目標色に完全に等色することは少なく、わずかな色違いが生じている場合が一般的である。その場合、どの程度の色違いまでを許容できるかどうかが問題となる。
ごくわずかに異なる二つの色を併置して並べ、その色の差を識別できるかどうかを実験的に求めると、色差でΔE_(ab)^(*)=0.3程度になることが知られている。同様な実験で、二つの色の差が製品として許容できるかどうかを判断した結果では、ΔE_(ab)^(*)=0.6程度で約50%が許容できないと答え、ΔE_(ab)^(*)=1.2程度で100%の人が許容できないと答えることが報告されている。工業的には、要求に応じて、ΔE_(ab)^(*)で0.3、0.6、1.2、2.5などの許容値が設定される。」(28頁18ないし29行)

(22)甲第39号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第39号証には、次の事項が記載されている。

「【0035】
得られた塗装鋼板の曲げ加工性と耐候性を下記試験方法により評価した。
試験方法
……
(2) 耐候性試験
試験片をサンシャインウェザオメーターにより紫外線に500時間暴露した後、塗膜面の色差ΔEと光沢度保持率G (%) を測定し、次の基準で評価した。
◎: 0<ΔE<0.5; 80<G≦100
○: 0.5≦ΔE<1.5; 60<G≦80
△: 1.5≦ΔE<2 ; 40<G≦60
×: 2≦ΔE ; G≦40」

(23)甲第41号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第41号証には、次の事項が記載されている。

「なお、色差値と目視判断との関係は、色の種類によっても異なり、また個人差もあるので一概にいえない。およそ色差値が1.3を超えると目視で色差が判別できるといわれている。」(119頁右欄9ないし11行)

(24)甲第43号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第43号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、黒色顔料組成物、黒色感放射線性樹脂組成物及び高抵抗黒色硬化膜に関し、特に液晶表示装置、電子表示装置等の表示材料に使用されるブラックマトリックス形成用の樹脂組成物に関するものである。」

イ 「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、
(1)高分子化合物、分散助剤2種以上の金属酸化物からなる複合金属酸化物顔料を含有することを特徴とする黒色顔料組成物
……
(7)複合金属酸化物が、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルトの酸化物から選択されたものである(1)?(6)項のいずれか一項に記載の黒色顔料組成物
(8)複合金属酸化物が、銅-クロムの酸化物、銅-クロム-マンガンの酸化物、銅-鉄-マンガンの酸化物、コバルト-鉄-マンガンの酸化物である(1)?(7)項のいずれか一項に記載の黒色顔料組成物
……
(11)放射線により架橋反応を起こし得る化合物、光重合開始剤及び(1)?(10)項のいずれか一項に記載の黒色顔料組成物とからなる、高抵抗黒色感放射線性樹脂組成物」

ウ 「【0062】 本発明の高抵抗黒色感放射線性樹脂組成物により得られる高抵抗黒色硬化膜は通常次のように作成される。……次に放射線(例えばX線、電子線、紫外線、可視光線、好ましくは紫外線)を全面に照射し、ポストベーク等の処理をして黒色硬化膜を得る。」

(25)甲第44号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第44号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線硬化型インキやフォトレジストなどに有用な感光性樹脂組成物に関するものであり、特に、カラー液晶表示装置や撮像素子などに使用される着色画像(画素とも呼ばれる)を形成するためのレジストに好適な着色感光性樹脂組成物に関するものである。」

イ 「【0010】本発明の着色感光性樹脂組成物は、主に顔料分散レジストとして使用されるものであって、溶剤(F)中に、通常は顔料である着色材料(A)が分散され、さらに、バインダー樹脂と呼ばれるカルボキシル基含有(メタ)アクリル共重合体(B)、光重合性モノマー(C)、光重合開始剤(D)及び側鎖にオキシアルキレン骨格を有する共重合体(E)、任意にその他の添加剤が、溶剤(F)に溶解又は分散されている。
【0011】 着色材料(A)は通常顔料であり、顔料分散レジストに通常用いられる無機顔料又は有機顔料であることができる。無機顔料としては、金属酸化物や金属錯塩のような金属化合物が挙げられ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモンなどの金属の酸化物又は複合金属酸化物が挙げられる。……そして黒色顔料としては、CuO-Cr_(2)O_(3)やCuO-Fe_(2)O_(3)-Mn_(2)O_(3)などが、それぞれ挙げられる。」

(26)甲第45号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第45号証には、次の事項が記載されている。

「(1)顔料や分散剤に含まれる金属の接触作用による熱劣化
ほとんどのポリマーは金属の接触作用による熱劣化を受ける。金属のSourceとしては顔料と分散剤が最も大きい。金属含有顔料(無機顔料、フタロシアニンなどの有機金属顔料、アゾレーキ顔料)と金属石けんが対象となる。
高橋らは各種無機顔料、フタロシアニンブルーなどのPPの熱劣化に対する影響を調べた。その結果、紺青(Fe)、フタロシアニンブルー(Cu)、コバルト紫(Co)、コバルトブルー(Co)、フタロシアニングリーン(Cu)、ミネラルバイオレット(Mn)、弁柄(Fe)が劣化を促進し、群青(Na,Al)、グロムグリーン(Cr)(審決注:「クロムグリーン(Cr)」の誤記と認める。)、チタンホワイト(Ti)、インダンスレンブルー、カドミウムレッド(Cd)、カドミウムイエロー(Cd)が劣化を促進しないことを見出した。また、これら金属の塩化物、酸化物、単体での測定も顔料と同じような傾向を示した。」(399頁12ないし21行)

(27)甲第46号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第46号証には、次の事項が記載されている。

「フリーラジカルとある種の遷移金属イオンとの間に炭素-金属結合が生じ、動的平衡状態にあることが報告されている。例えば、アクリル酸エステルの重合において、二価のコバルトラジカルのポリフィリン錯体を用いると、炭素-コバルト(III)がドーマント種となって、停止のない重合が起こることが分かった。……また、適当なハロゲン化アルキルが、ルテニウム、銅、ニッケル、鉄などの遷移金属錯体によりラジカル解離し、アルケンに 付加する反応が知られているが、これをラジカル重合に適用すると、ハロゲン化アルキル型末端を有するポリマーが生成する。その末端では、共存する遷移金属錯体を活性化剤とする重合が繰り返され、リビングラジカル重合が進行することが明らかになった。」(76頁右欄2ないし17行)

(28)甲第47号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第47号証には、次の事項が記載されている。

ア 「顔料は、日光暴露により光学的変化を起こして黒変したり退色したりする。……カーボンブラックや酸化鉄は紫外線遮断効果が大きいので、屋外塗料用として広く使用されている……一般に無機顔料は耐光性が大きい。また、高温処理したものほど耐光性も大きい。たとえば、酸化チタン、カーボンブラック、べんがらなどである。」(233頁12ないし21行)

イ 「3.3.1 カーボンブラック
……黒色顔料として高い着色力および優れた耐候性をもっていることから、古くから印刷インキ、塗料などの着色剤として使われてきた。」(273頁12ないし17行)

ウ 「顔料のプラスチックへの影響は次の三つのパターンに分けられる。各パターンで例としてあげた顔料は、これらの現象が最もよく研究されているポリオレフィンでの例であるが、他のプラスチックでも例外はあるが共通点は多いと考えられる。……顔料がポリマーを紫外線劣化から保護する。(例)カーボンブラック、……」(458頁26ないし30行)

(29)甲第48号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第48号証には、次の事項が記載されている。

ア 「カーボンブラックは、原料や製法の違いによって、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどがある。」(227頁左欄下から2行ないし同頁右欄2行)

イ 「現在、最も多く用いられている方法はファーネス法で……」(227頁右欄32ないし33行)

ウ 「耐候性、耐水性に優れた黒色顔料として、インキ、塗料、樹脂着色、捺染、繊維原液着色、セメント着色などに多量に用いられている。
インキ:凸版インキ、……UVインキ、……ジェットインキ……」(230頁右欄下から5行ないし231頁左欄3行)

(30)甲第49号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第49号証には、次の事項が記載されている。

「黒色顔料として、最も一般的に使用されているのがカーボンブラックである。カーボンブラックは製造方法(不完全燃焼法、熱分解法)、あるいは物理的、化学的性質(比表面積、ストラクチャー、一次粒子径、表面状態)によって分類される。……現在では全カーボンブラック生産量の95%以上がファーネス法によって製造されている。」(255頁下から4行ないし256頁10行)

(31)甲第50号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第50号証には、次の事項が記載されている。

784頁の「表20.4(2) 無機顔料(2)」には、「No.60」の一般名が「ファーネスブラック」である顔料のClour Index Generic Nameが「Black 7」であることが記載されている。

(32)甲第51号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第51号証には、次の事項が記載されている。

268頁の「付表 顔料一覧」のつづきには、C.I.Nameが「PBk 7」である顔料の顔料名が「カーボンブラック」であることが記載されている。

(33)甲第52号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第52号証には、次の事項が記載されている。

ア 「Pigment Black 7
構造名:無機顔料 一般名:カーボンブラック」(613頁下から4ないし下から2行)

イ 「当初はチャンネルと言う鉄板に天然ガスを燃やした炎を吹き付けて不完全燃焼によって出る炭素をかき集めるチャンネル法が取られていたが、収率が悪く、したがって公害の問題もありファーネス法に代わっていった。」(614頁8ないし10行)

2 乙各号証の記載
(1)乙第1号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である乙第1号証には、次の事項が記載されている。

「黄色酸化鉄(黄土)
天然産の顔料で、鉄分に富む土壌を水簸したものである。広く使用されるオーカー(Ochre)はこれに属する。成分は一定せず、酸化鉄も20%前後で、他にアルミナ、硫酸カルシウム、珪酸等を含有する。」(21頁15ないし18行)

(2)乙第2号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である乙第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 782頁の「表20.4(1) 無機顔料(1)」には、「黄色酸化鉄」のColour Index Generic Nameは「Pigment Yellow 42」であること、及び、「オーカー(天然)」のColour Index Generic Nameは「Pigment Yellow 43」であることが記載されている。

イ 784頁の「表20.4(2) 無機顔料(2)」には、「べんがら(合成)」のColour Index Generic Nameは「Pigment Red 101」であること、及び、「べんがら(天然)」のColour Index Generic Nameは「Pigment Red 102」であることが記載されている。

3 無効理由について
(1)無効理由1
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。

a 甲2発明の「黄色酸化鉄顔料」、「赤色酸化鉄顔料」、「Co-Al系ブルー顔料」、「Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料」、「インクジェット層」及び「化粧建築板」は、本件訂正発明1の「イエロー顔料」、「マゼンタ顔料」、「シアン顔料」、「ブラック顔料」、「インクジェット層」及び「建築板」に、それぞれ相当する。

b 甲2発明の「4色のインクで」「施された」「(インクジェット印刷による)インクジェット層」の「模様」は、4色のインクのドットで模様付けされていることは、当業者にとって自明の事項であるから、甲2発明の「黄色酸化鉄顔料を含有するイエローの水性インクと、Co-Al系ブルー顔料を含有するシアンの水性インクと、赤色酸化鉄顔料を含有するマゼンタの水性インクと、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料を含有するブラックの水性インクとからなる、有機顔料を含有しない4色の水性インクで所望の模様が施されたインクジェット層」は、本件訂正発明1の「イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットと」、さらに「ブラック顔料を含む」「インクによるブラックドット」「とで模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層」に相当する。

c 甲2発明の「クリアー層」が透明な層であることは当業者にとって自明の事項であるから、甲2発明の「インクジェット層」に「積層」される「クリアー層」は、本件訂正発明1の「インクジェット層の表面」に「形成されている」「透明な被覆層」に相当する。

d 甲第4号証には、コバルトブルーのC.I.Generic NameがBULE28であることが記載されており(上記1(3)イを参照。)、甲第5号証には、コバルトブルーの化学式はCoO-Al_(2)O_(3)であり、C.I.番号はC.I.Pigment Blue 28であることが記載されている(上記1(4)ウを参照。)。これらの記載に照らせば、甲2発明の「Co-Al系ブルー顔料」は、本件訂正発明1の「シー・アイ・ピグメントブルー28」に相当する。

e 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層の表面には透明な被覆層が形成されている、建築板であって、
前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28であり、
前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含むインクによるブラックドットで模様付けされている建築板。」

f 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
イエロー顔料及びマゼンタ顔料に関し、本件訂正発明1は、イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184であり、マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101であるのに対し、甲2発明では、イエロー顔料は黄色酸化鉄顔料であり、マゼンタ顔料は赤色酸化鉄顔料である点。

<相違点2>
ブラック顔料に関し、本件訂正発明1は、シー・アイ・ピグメントブラック7であるのに対し、甲2発明では、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料である点。

<相違点3>
インクに関し、本件訂正発明1では、インクは全て紫外線硬化型インクであるのに対し、甲2発明では、水性インクである点。

<相違点4>
建築板の耐候性に関し、本件訂正発明1では、JTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であり、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であるのに対し、甲2発明では、そのような特定がされていない点。
<超促進耐候試験条件>
光源:水冷式メタルハライドランプ
照度:90mW/cm^(2)
波長:295?450nm
温度:60℃(照射),30℃(結露)
湿度:50%(照射),90%(結露)
サイクル:照射5時間,結露5時間
シャワー:結露前後10秒

(イ)判断
a 相違点1について
(a)甲第4号証、甲第5号証、甲第19号証、甲第20号証、乙第1号証及び乙第2号証の記載(上記1(3)、(4)、(11)、(12)、及び、2(1)、(2)を参照。)を総合すると、顔料としての黄色酸化鉄には、狭義と広義があり、狭義の黄色酸化鉄は合成されたもののみを意味し、そのC.I.番号は、C.I.Pigment Yellow 42、すなわちシー・アイ・ピグメントイエロー42であり、広義の黄色酸化鉄は、天然のものをも含み、天然の黄色酸化鉄のC.I.番号は、C.I.Pigment Yellow 43であると解され、同様に、顔料としての赤色酸化鉄には、狭義と広義があり、狭義の赤色酸化鉄は合成されたもののみを意味し、そのC.I.番号は、C.I.Pigment Red 101、すなわちシー・アイ・ピグメントレッド101であり、広義の赤色酸化鉄は、天然のものをも含み、天然の赤色酸化鉄のC.I.番号は、C.I.Pigment Red 102であると解される。
一方、顔料をインクジェット用途として使用するためには、ノズル詰まり等を防止するため、精製し不純物を除去することが必要とされるところ(甲第23号証。上記1(15)を参照。)、合成酸化鉄の顔料は、純度、粒径の均質性、及び粒径分布が天然酸化物より優れていること(甲第22号証。上記1(14)を参照。)、及び、合成酸化鉄は安価で大量生産可能であって(甲第21号証。上記1(13)を参照。)、工業製品である建築板の顔料に適していることに鑑みれば、甲2発明1の「(インクジェット印刷による)インクジェット層」を形成するインクに含有される「黄色酸化鉄顔料」及び「赤色酸化鉄顔料」は、狭義のもの、すなわち「シー・アイ・ピグメントイエロー42」及び「シー・アイ・ピグメントレッド101」を意味する蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
(b)また、甲2発明1の「黄色酸化鉄顔料」及び「赤色酸化鉄顔料」が広義のものであるとしても、インクジェット用途として使用することや安価で大量生産可能であって工業製品である建築板の顔料に適していることに鑑み、「シー・アイ・ピグメントイエロー42」及び「シー・アイ・ピグメントレッド101」を選択すること、すなわち上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

b 相違点2について
(a)甲第2号証には、「ブラックのインクとしては、黒色酸化鉄、Cu-Cr系ブラック、Cu-Cr-Mn系ブラック、Cu-Fe-Mn系ブラック、Co-Fe-Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するものを用いるのが好ましい。」(上記1(1)カを参照。)と記載されており、ブラック顔料としてカーボンブラックを用いることが開示されている。また、甲第2号証の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明は、4色の顔料として、黄色酸化鉄顔料、Co-Al系ブルー顔料、赤色酸化鉄顔料、及びカーボンブラックの組合せを包含するものである(上記1(1)アを参照。)。
さらに、甲第47号証ないし甲第49号証に記載(上記1(28)ないし(30)を参照。)のように、カーボンブラックは最も一般的に使用されている黒色顔料であって、優れた耐候性を有することは周知である。
(b)他方、甲第6号証、甲第48号証ないし甲第52号証の記載(上記1(5)エ、(29)ないし(33)を参照。)を総合すると、カーボンブラック、あるいはファーネス法によって製造されたカーボンブラックのC.I.Nameがシー・アイ・ピグメントブラック7であると解される。また、甲第48号証、甲第49号証及び甲第52号証には、カーボンブラックのほとんどはファーネス法で製造されることが記載されている。
(c)してみると、甲2発明において、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料に代えて、カーボンブラックあるいはファーネス法によって製造されたカーボンブラックであるシー・アイ・ピグメントブラック7を用いること、すなわち上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

c 相違点3について
甲第6号証及び甲第7号証に記載のように、建材において、無機顔料を含むインクとして紫外線硬化型インクを用いること、及び、紫外線硬化型インクを用いることによりインク受理層が不要になることは周知である(上記1(5)、(6)を参照。)。特に、甲第6号証には、紫外線硬化型インクに含有する顔料として、シー・アイ・ピグメントイエロー42、シー・アイ・ピグメントレッド101、シー・アイ・ピグメントブルー28及びシー・アイ・ピグメントブラック7が例示されている。
そして、建築板の技術分野において製造コストを下げることは周知の課題であるから、甲2発明において、「インク受理層」を省略し、「インク」として「紫外線硬化型インク」を用いること、すなわち上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

d 相違点4について
甲第3号証及び甲第32号証に記載のように、建築用を含めた塗料一般において、塗膜の色相を保持することは周知の課題である(上記1(2)、(17)を参照。)。
また、甲第18号証に記載のように、外装材の塗膜に10年程度の耐久性を求めることは周知である(上記1(10)を参照。)。
一方、本件訂正発明1において、本件耐候試験による変退色後のイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)を0.99以内とし、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)1.44以内とすることの技術的意義は、本件特許明細書の「色差(ΔE)について各色間での差は、……であり、各色成分の色差は、略同一の範囲(出願人は、経験的に略5以内が好適であることを見出している。)であると認められる。」(段落【0029】)、「屋外に10年暴露された状態に相当する600時間経過後の各色の色差(ΔE)は、……」(段落【0030】)との記載に照らせば、屋外に10年暴露された状態での各色成分の色差について、設計上適宜の上限値を設定した以上の技術的意義は認められない。
そして、甲2発明は、耐褪色性の高い化粧建築板を提供することを目的とするものであるところ(上記1(1)ウを参照。)、上記周知の色相を保持するとの課題を併せて解決することは、一般に、耐褪色性を高めていくと、色相の変化も小さくなることに照らせば、当業者が適宜なし得ることであり、その際、10年程度の耐久性を設定することにより、結果として、本件耐候試験による変退色後のイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内の耐久性とすること、すなわち上記相違点4に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、JTM G01:2000は、日本試験機工業会による公的規格であり、本件耐候試験の超促進耐候試験条件についても一般的に行われている耐候性試験の条件(甲第35号証。上記1(20)を参照。)と概ね同様のものであるから、本件訂正発明1において、本件耐候性試験を採用したことが格別のものであるとも認められない。また、変退色の指標として色差(ΔE)を用いることも甲第33号証、甲第34号証、甲第37号証及び甲第39号証に記載のように技術常識にすぎない(上記1(18)、(19)、(21)、(22)を参照。)。

e 本件訂正発明1の効果について
本願訂正発明1によってもたらされる効果を全体としてみても、甲2発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

f 被請求人の主張について
被請求人は、
(a)顔料を含むインクを水性インクから紫外線硬化型インクへ変更することは、「顔料を分散するインク成分を代えただけであり、格別の試行錯誤を要するものではない」などといえるようなものではない旨、
(b)ポリマー等の有機材料との相性が特に悪いCo、Mn、Cu、Feといった金属を含むCu-Fe-Mn系ブラックやCo-Fe-Cr系ブラックが用いられている甲2発明の水性インクを紫外線硬化型インクに変更することには阻害要因がある旨、
(c)甲2発明は、「インク受理層」を備えるが、紫外線硬化型インクにおいてはインク受理層を設ける必要がないから、甲2発明においてインクをインク受理層が不要な紫外線硬化型インクに変更するわけがない旨、
(d)甲第2号証に記載された耐褪色性試験は、本件訂正発明1における促進耐候試験とは、技術的意義が根本的に異なるものである旨、
主張する。
しかし、(a)については、建材において、無機顔料を含むインクとして紫外線硬化型インクを用いることが周知である以上、顔料、樹脂、添加剤等の処方全体について検討をする必要があるとしてもそれが格別困難であるとはいえない。(b)については、甲第43号証及び甲第44号証に記載(上記1(24)及び(25)を参照。)のように、Cu-Fe-Mn系ブラックやCo-Fe-Cr系ブラック顔料を紫外線硬化樹脂に含有することは普通に行われており、顔料に含まれる金属による熱劣化は格別支障となるものとは認められないから、甲2発明において水性インクに代えて紫外線硬化型インクとすることに特段の阻害要因があるとはいえない。(c)、(d)についても上記c、dのとおりである。よって、被請求人の主張は、いずれも採用できない。

(ウ)小括
よって、本件訂正発明1は、当業者が甲2発明1及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、さらに「建築板」が「建築物の外装材として用いられる」ことを限定したものである。
本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「瓦や外壁材等の用途に使用される」「化粧建築板」は、本件訂正発明2の「建築物の外装材として用いられる」「建築板」に相当するから、両者は、上記ア(ア)の相違点1ないし4で相違し、その余の点で一致する。
よって、上記ア(イ)の判断のとおり、本件訂正発明2は、当業者が甲2発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

(2)無効理由2
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。

a 甲3発明の「1種のシアン」の「インクジェット用インク」に「分散」された「顔料」は、本件訂正発明1の「シアン顔料」に相当し、以下同様に、「1種のマゼンタ」の「インクジェット用インク」に「分散」された「顔料」は、「マゼンタ顔料」に、、「1種のイエロー」の「インクジェット用インク」に「分散」された「顔料」は、「イエロー顔料」に、「1種のブラック」の「インクジェット用インク」に「分散」された「顔料」は、「ブラック顔料」に、それぞれ相当する。

b 甲3発明の「少なくとも1種のシアン、少なくとも1種のマゼンタ、少なくとも1種のイエロー及び少なくとも1種のブラックインクの」「顔料を」「分散してなり、かつ互いに異なる分光吸収領域に最大吸収スペクトルを有する少なくとも4種類のインクジェット用インク」は、本件訂正発明1の「イエロー顔料を含むインク」、「マゼンタ顔料を含むインク」、「シアン顔料を含むインク」及び「ブラック顔料を含む」「インク」に相当する。

c 甲3発明の「少なくとも1種のシアン、少なくとも1種のマゼンタ、少なくとも1種のイエロー及び少なくとも1種のブラックインクの」「少なくとも4種類のインクジェット用インクから構成されたインクジェット記録用インクセットを使用して」「形成した」「抽象的なデザイン、幾何学的なパターンなど」は、インクジェット用インクのドットで模様付けされていることは、当業者にとって自明の事項であるから、本件訂正発明1の「イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされており」、「さらに、ブラック顔料を含む」「インクによるブラックドットで模様付けされ」、「これらのインクから形成される」「インクジェット層」に相当する。

d 甲3発明の「壁材、ルーフィング材などの屋外装飾材料」は、本件訂正発明1の「建築板」に相当する。

e 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層が形成されている、建築板であって、
さらに、ブラック顔料を含むインクによるブラックドットで模様付けされている建築板。」

f 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点ア>
本件訂正発明1では、インクジェット層の表面には透明な被覆層が形成されているのに対し、甲3発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点イ>
顔料に関し、本件訂正発明1では、イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28で、ブラック顔料はシー・アイ・ピグメントブラック7であるのに対し、甲3発明では、顔料の特定がされていない点。

<相違点ウ>
インクに関し、本件訂正発明1では、インクは全て紫外線硬化型インクであるのに対し、甲3発明では、インクジェット用インクは、水性もしくは油性媒体からなる点。

<相違点エ>
建築板の耐変退色性に関し、本件訂正発明1では、JTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であり、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であるのに対し、甲3発明では、反射型受像媒体上にインクジェット記録用インクセットを用いて印画した、少なくとも1種のシアン、少なくとも1種のマゼンタ、少なくとも1種のイエロー及び少なくとも1種のブラックの少なくとも4種類のインクの印画領域について求めたそれぞれのインクのD65光による強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内にある点。
<超促進耐候試験条件>
光源:水冷式メタルハライドランプ
照度:90mW/cm^(2)
波長:295?450nm
温度:60℃(照射),30℃(結露)
湿度:50%(照射),90%(結露)
サイクル:照射5時間,結露5時間
シャワー:結露前後10秒

(イ)判断
a 相違点ア及びウについて
甲第12号証及び甲第13号証に記載のように、建材において、インクにより模様付けされた層の表面に透明な被覆層を形成し、耐候性を高めることは周知である(上記1(7)、(8)を参照。)。
また、甲第6号証及び甲第7号証に記載のように、建材において、無機顔料を含むインクとして紫外線硬化型インクを用いること、及び、紫外線硬化型インクを用いることによりインク受理層が不要になることは周知である(上記1(5)、(6)を参照。)。
そして、建築板の技術分野において耐候性を高めること及び製造コストを下げることは周知の課題であるから、甲3発明に上記周知技術を適用し、「インクジェット用インク」として水性もしくは油性媒体に代えて「紫外線硬化型インク」を用いるとともに、「抽象的なデザイン、幾何学的なパターンなど」の表面に「透明な被覆層」を形成すること、すなわち上記相違点ア及びウに係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

b 相違点イについて
(a)甲第3号証に記載された発明が解決しようとする課題は、「記録画像の品質が高く、しかも得られた画像が明所とくに太陽光成分の多い屋外に置かれてもカラーバランスの変化が少なく画像品質を維持することができるインクジェット用インクセットならびにインクジェット記録方法を提供する」ことであると認められる(上記1(2)ウを参照)。
そして、甲第3号証には、インクジェット用インクに分散する顔料に関し、市販のものや公知のものが利用できることが記載され、具体例としてシー・アイ・ピグメントイエロー42、シー・アイ・ピグメントレッド101、カーボンブラックが挙げられているが、上記課題を解決する顔料の組み合わせとして、シー・アイ・ピグメントイエロー42又はシー・アイ・ピグメントイエロー184、シー・アイ・ピグメントレッド101、シー・アイ・ピグメントブルー28、及びシー・アイ・ピグメントブラック7を採用することは記載も示唆もされていない(上記1(2)オ、カを参照)。
(b)甲2発明の化粧建築板は、黄色酸化鉄顔料を含有するイエローの水性インクと、Co-Al系ブルー顔料を含有するシアンの水性インクと、赤色酸化鉄顔料を含有するマゼンタの水性インクと、Cu-Fe-Mn系ブラック又はCo-Fe-Cr系ブラック顔料を含有するブラックの水性インクとからなる4色の水性インクでインクジェット層を形成するものであって(上記1(1)を参照。)、甲第2号証には、上記相違点イに係る本件訂正発明1の顔料の組合せは開示されていない。
さらに、甲2発明は、有機顔料と無機顔料とを混合して用いた場合には、無機顔料が光半導体として作用し、有機顔料が劣化してしまうとの知見、及び、耐候性の高い無機顔料のみを用いてインクジェット層を形成すると色の鮮やかさに大きく欠けてしまうとの知見に基づき、甲2発明の特定の無機顔料を含有し、有機顔料が含有されていない水性インクを用いてインクジェット層を形成することによって、有機顔料を用いる場合に比べて色の鮮やかさが低下するのを極力防止するとともに、インクジェット層の劣化を防止し、耐褪色性を高めたものであって(上記1(1)ウ、エを参照。)、甲2発明の特定の無機顔料の組み合わせにより、カラーバランスが大きく変化しないインクセットが得られることを教示するものでもない。
してみると、甲3発明に甲2発明を適用する動機付けはなく、甲第2号証の記載に照らしても、甲3発明において上記相違点イに係る本件訂正発明1の構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
(c)甲第4号証及び甲第5号証は、「黄色酸化鉄」、「赤色酸化鉄」及び「Co-Al系ブルー」が、「シー・アイ・ピグメントイエロー42」、「シー・アイ・ピグメントレッド101」及び「シー・アイ・ピグメントブルー28」を意味することを示すために提出されたものであり、甲第6号証及び甲第7号証は、建材において、無機顔料を含むインクとして紫外線硬化型インクを用いることが周知であることを示すために提出されたものであって、いずれも甲3発明において、上記相違点イに係る本件訂正発明1の構成とすることを教示するものではない。

c 相違点エについて
上記(1)ア(イ)dで検討したとおり、JTM G01:2000は、日本試験機工業会による公的規格であり、本件耐候試験の超促進耐候試験条件は一般的に行われている耐候性試験の条件と概ね同様のものであり、本件訂正発明1において、本件耐候試験による変退色後のイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)を0.99以内とし、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)1.44以内とすることに、屋外に10年暴露された状態での各色成分の色差について、設計上適宜の上限値を設定した以上の技術的意義は認められない。
一方、上記b(a)のとおり、甲第3号証に記載された発明が解決しようとする課題は、「記録画像の品質が高く、しかも得られた画像が明所とくに太陽光成分の多い屋外に置かれてもカラーバランスの変化が少なく画像品質を維持することができるインクジェット用インクセットならびにインクジェット記録方法を提供する」ことである。
そして、甲3発明は、上記課題を解決する手段として、反射型受像媒体上にインクジェット記録用インクセットを用いて印画した少なくとも4種類のインクの印画領域について求めたそれぞれのインクのD65光による強制褪色速度定数のいずれの2つについても該速度定数の比が0.5以上2.0以下の範囲内にあるとの構成を採用したものである。
してみると、本件耐候試験の超促進耐候試験条件が一般的に行われているものと概ね同様であり、本件耐候試験による色差(ΔE^(*)ab)に設計上適宜の上限値を設定した以上の技術的意義は認められないとしても、甲3発明において、上記試験及びその結果としての強制褪色速度定数の比の範囲に代えて、本件耐候試験及びその結果としての色差(ΔE^(*)ab)の値を採用する動機付けはない。

d 請求人の主張について
請求人は、甲第2号証には、本件訂正発明1のイエロー、マゼンダ、シアンの3色の顔料の組み合わせが開示されており、耐褪色性試験結果、色褪せが全く生じなかったということは、カラーバランスが大きく変化していないはずであるから、甲第2号証に記載された3色の顔料の組み合わせをカラーバランスが大きく変化していない顔料の候補として、甲3発明に適用する動機付けが存在する旨主張するが、上記bのとおりであって、請求人の主張は採用できない。

(ウ)小括
以上のとおりであって、本件訂正発明1は、甲3発明、並びに甲第2号証、甲第4号証ないし甲第7号用に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、請求人が主張する無効理由2によっては、本件訂正発明1に係る特許を無効とすることはできない。

イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、更に構成を限定したものである。
したがって、本件訂正発明1についての判断と同様に、本件訂正発明2は、甲3発明、並びに甲第2号証、甲第4号証ないし甲第7号用に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、請求人が主張する無効理由2によっては、本件訂正発明2に係る特許を無効とすることはできない。

(3)無効理由3
ア 請求人の主張
請求人は、本件特許明細書の実施例では、課題解決の重要な手段であるはずのインクジェット層のインク成分(反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤の種類等)、トップコートや付加価値コート層の成分等につき、具体的な記載がないばかりか、顔料の組み合わせが同一である場合に、インクジェット層のインク成分・厚さ、トップコートや付加価値コート層の具体的成分・厚さ、その他の具体的な層の構造がΔE^(*)abに与える影響はまったく検証されておらず、ΔE^(*)ab要件の実現のために、これらの要素につき何を選択すればよいかについて何らの記載も示唆もないから、当業者がΔE^(*)abが0.99以内あるいは1.44以内である建築板を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解することはできないし、実施例における測定結果を実施例に係る具体的なインク成分や層構造を超えて一般化することはできない旨主張する(第5、3(3)を参照。)。

イ 判断
例えば、甲第12号証、甲第13号証、甲第17号証、甲第30号証に記載のように、建材の模様塗膜(インクジェット層)の表面にクリヤー層等の透明な被覆層を形成することにより、模様塗膜の耐候性を高めることは周知の技術であり、透明な被覆層の樹脂の種類や厚み、添加する紫外線吸収剤、光安定剤の量等を調整することにより所望の耐候性とすることも周知の事項である(上記1(7)ないし(9)、(16)を参照。)。
してみると、本件訂正発明1及び2において、本件耐候試験による変退色後のイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)の差が0.99以内、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)の差が1.44以内となるように、透明な被覆層の樹脂の種類や厚み、添加する紫外線吸収剤、光安定剤の量等を調整することは、技術常識を踏まえ当業者が適宜なし得ることにすぎない。よって、本件特許明細書には、本件耐候試験による変退色後のイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)の差が0.99以内、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分の各色間での色差(ΔE^(*)ab)の差が1.44以内とし、本件訂正発明1及び2を実施するための構成が実質的に記載されているといえ、また、本件訂正発明1及び2は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。
なお、甲第14号証、甲第15号証の実験報告書からも、本件訂正発明1及び2が実施可能であることが推認できる。
よって、請求人が主張する無効理由3によっては本件訂正発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。

第8 本件訂正前の請求項3についての審判請求
上記第3のとおり、本件訂正が認められ、請求項3は削除された。
その結果、請求人の審判請求のうち、本件訂正前の請求項3に係る特許についての請求は、その対象が存在しないものとなった。
よって、請求人の審判請求のうち、本件訂正前の請求項3に係る特許についての請求は、不適法な審判請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下されるべきものである。

第9 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、当業者が甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により、その特許は無効とされるべきものである。
本件訂正前の請求項3についての審判請求は、特許法第135条の規定により却下されるべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー顔料を含むインクによるイエロードットと、マゼンタ顔料を含むインクによるマゼンタドットと、シアン顔料を含むインクによるシアンドットとで模様付けされており、これらのインクから形成されるインクジェット層の表面には透明な被覆層が形成されている、建築板であって、
前記イエロー顔料はシー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184で、前記マゼンタ顔料はシー・アイ・ピグメントレッド101で、前記シアン顔料はシー・アイ・ピグメントブルー28であり、
シー・アイ・ピグメントイエロー42またはシー・アイ・ピグメントイエロー184である前記イエロー顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントレッド101である前記マゼンタ顔料を含むインクと、シー・アイ・ピグメントブルー28である前記シアン顔料を含むインクとは、全て紫外線硬化型インクであり、
前記建築板は、さらに、ブラック顔料を含む紫外線硬化型インクによるブラックドットで模様付けされており、前記ブラック顔料はシー・アイ・ピグメントブラック7であり、
前記イエロードットと前記マゼンタドットと前記シアンドットと前記ブラックドットとで模様付けされた建築板のJTM G 01:2000にしたがった下記の超促進耐候試験条件による促進耐候試験による変退色前後のCIE1976L^(*)a^(*)b^(*)色空間における色差(ΔE^(*)ab)について、イエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が0.99以内であり、かつイエロー成分とマゼンタ成分とシアン成分とブラック成分との各色間での前記促進耐候試験による試験時間600時間における変退色後の色差(ΔE^(*)ab)が1.44以内であることを特徴とする建築板。
<超促進耐候試験条件>
光源:水冷式メタルハライドランプ
照度:90mW/cm^(2)
波長:295?450nm
温度:60℃(照射),30℃(結露)
湿度:50%(照射),90%(結露)
サイクル:照射5時間,結露5時間
シャワー:結露前後10秒
【請求項2】
建築物の外装材として用いられることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-03-07 
結審通知日 2017-03-10 
審決日 2017-03-22 
出願番号 特願2009-195074(P2009-195074)
審決分類 P 1 113・ 537- ZAA (E04F)
P 1 113・ 121- ZAA (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
中田 誠
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5717955号(P5717955)
発明の名称 建築板  
代理人 加治 梓子  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 中塚 岳  
代理人 牧野 知彦  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 堀籠 佳典  
代理人 黒木 義樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 黒木 義樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 中塚 岳  
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