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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F
管理番号 1341475
審判番号 不服2017-12772  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-29 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2015- 12354「遮光膜用感光性組成物、及びその硬化物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日出願公開、特開2015-165297、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月26日(優先権主張 平成26年2月4日)の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年10月17日付け:拒絶理由通知書
平成29年 2月22日付け:意見書、手続補正書
平成29年 5月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 8月29日付け:審判請求書、手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1-9に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2013/129403号
引用文献2:特表2014-500852号公報
引用文献3:国際公開第2012/133148号
引用文献4:特開2012-145699号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成29年8月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。

「 【請求項1】
下記(A)?(D)成分、
(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)下記一般式(IV)で表される化合物を含有する光重合開始剤、及び
(D)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれた1以上の遮光成分を
必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
(A)成分と(B)成分との重量割合(A)/(B)が、60/40?80/20であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分を5?25質量部含有し、且つ、組成物の全固形分に対して(D)成分を40?70質量%含有することを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。
【化1】

但し、一般式(V)において、R_(6)及びR_(7)は、独立に水素原子、炭素数1?5のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、Xは、フルオレン-9,9-ジイル基を示し、lは0?10の数である。
【化2】

【請求項2】
下記(A)?(D)成分、
(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)下記一般式(XII)で表される化合物を含有する光重合開始剤、及び
(D)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれた1以上の遮光成分を必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
(A)成分と(B)成分との重量割合(A)/(B)が、60/40?80/20であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分を5?25質量部含有し、且つ、組成物の全固形分に対して(D)成分を40?70質量%含有することを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。
【化3】

但し、一般式(V)において、R_(6)及びR_(7)は、独立に水素原子、炭素数1?5のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、Xは、フルオレン-9,9-ジイル基を示し、lは0?10の数である。
【化4】

【請求項3】
下記(A)?(D)成分、
(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)下記一般式(XV)で表される化合物を含有する光重合開始剤、及び
(D)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれた1以上の遮光成分を必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
(A)成分と(B)成分との重量割合(A)/(B)が、60/40?80/20であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分を5?25質量部含有し、且つ、組成物の全固形分に対して(D)成分を40?70質量%含有することを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。
【化5】

但し、一般式(V)において、R_(6)及びR_(7)は、独立に水素原子、炭素数1?5のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、Xは、フルオレン-9,9-ジイル基を示し、lは0?10の数である。
【化6】

【請求項4】
(D)遮光成分が、カーボンブラックである請求項1?3のいずれかに記載の遮光膜用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の遮光膜用感光性樹脂組成物を硬化させて形成したことを特徴とする塗膜。
【請求項6】
請求項1?4のいずれかに記載の遮光膜用感光性樹脂組成物により作製された遮光膜を透明基板上に備えてなるカラーフィルターの製造方法であって、
当該遮光膜用感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布、プリベークした後、紫外線露光装置による露光、アルカリ水溶液による現像、及びポストベークして遮光膜を作製することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項7】
請求項1?4のいずれかに記載の遮光膜用感光性樹脂組成物により作製された遮光膜を透明基板上に備えてなるタッチパネルの製造方法であって、
当該遮光膜用感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布、プリベークした後、紫外線露光装置による露光、アルカリ水溶液による現像、及びポストベークして遮光膜を作製することを特徴とするタッチパネルの製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

ア 「技術分野
[0001] 本発明は、高遮光かつ高抵抗な細線パターンのブラックマトリックスを形成するのに好適で保存安定性にも優れるカラーフィルターのブラックマトリックス用感光性樹脂組成物およびその製造法に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話等あらゆる分野でカラー液晶表示装置が用いられるようになってきた。カラーフィルターはカラー液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つであり、視認性の向上、すなわち、より鮮明な画像を得るためには、カラーフィルターのブラックマトリックスでは更なる高遮光化を達成する必要があり、感光性樹脂組成物に顔料等の遮光材を従来よりも多量に添加しなければならなくなってきている。
[0003] しかし、顔料等の遮光材の含有量が増加すると、カラーフィルター形成時、ブラックレジスト膜では紫外線領域の光が塗膜深部にまで届きにくくなり、光硬化性組成物中の硬化不良によってパターンの密着不良や現像時のパターン剥がれ、エッジ形状のシャープ性低下が生じるという問題が発生する。
[0004] そこで、高濃度の顔料等の遮光材が含まれる場合でも硬化不良が生じないように、高感度の光重合開始剤や重合度の高いアクリルモノマーが用いられるようになってきたが、現在の技術では光重合開始剤やアクリルモノマーについて高感度化が限界に来ているのが現状であり、顔料等の遮光材の高濃度領域において良好なパターン形成をおこなうための十分な感度やガラス基板との密着性及び感光性樹脂組成物の保存安定性が得られないという問題があった。
[0005] そこで、先に本発明者らは、顔料分散の際に使用するアルカリ可溶性樹脂として特定のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を利用し、それらを分散剤とともに共分散させた顔料分散体を使用したカラーフィルター用感光性樹脂組成物を提案した(特許文献1参照)。かかる感光性樹脂組成物によれば、ブラックマトリックスで高遮光を達成する高濃度の顔料等の遮光材を含む領域において、高感度で高いガラス基板への密着性能を有し、かつ感光性樹脂組成物の優れた保存安定性を達成することができる。
[0006] しかしながら、より明るくより鮮やかなカラーフィルターにするためブラックマトリックスをより細線化し遮光度も上げるというように要求特性がますます高度化しているのに加え、液晶の表示方式によっては、これまで以上にブラックマトリックスを高抵抗にすることが必要となってきている。こういった高レベルの高遮光、高抵抗を達成するための顔料等の遮光材の添加量にしようとする場合、10μm以下の細線パターンの現像密着性が十分に確保できず、カラーフィルターを液晶パネルに組上げる際のシール剤によるガラス基板との密着性を高く維持することが困難になるという問題も生じてきていた。
先行技術文献
特許文献
[0007]特許文献1:特開2008-9401号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0008] 上記のように、高遮光かつ高抵抗な細線パターンを形成するためのブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を得ることが困難であり、例えば遮光のためにカーボンブラックを多量に添加した場合には10μm以下の細線パターンの密着性やガラス基板との密着性が十分に得られず高抵抗にすることも困難であり、逆に細線パターンの密着性や抵抗を要求レベルにしようとすると塗膜の厚さを大きくしないと十分な遮光性得られずカラーフィルターの設計上適用不可になる等の問題を解決することが強く求められていた。
[0009] 本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、上記感光性樹脂組成物において、高遮光、高抵抗を維持しつつ、細線パターンを形成した場合に現像密着性を十分に確保し、ガラス基板との密着性にも優れ、保存安定性にも優れる、ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
・・・(中略)・・・
[0011] (2)本発明はまた、下記(A1)?(A4)成分、
(A1)表面が染料で被覆されてなる染料被覆カーボンブラック、
(A2)分散剤、
(A3)下記一般式(I)の構造を有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(A4)溶剤
を有してあらかじめ調製された(A)顔料分散体と、必須成分として下記(B)?(E)成分、
(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(C)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(D)光重合開始剤、
(E)溶剤
を含む配合成分とが混合されてなることを特徴とするカラーフィルターブラックマトリックス用感光性樹脂組成物である。


〔一般式(I)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はいずれかの酸一無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物とを、(a)と(b)のモル比が1:10?10:1となるよう反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。ここで、式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)及びR_(4)は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1?5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R_(5)は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、-CO-、-SO_(2)-、-C(CF_(3))_(2)-、-Si(CH_(3))_(2)-、-CH_(2)-、-C(CH_(3))_(2)-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y_(1)及びY_(2)は、それぞれ独立して水素原子又は-OC-Z-(COOH)_(m)(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1?2の数を表す)を表し、nは1?20の整数を表す。〕」

イ「[0039] なお、本発明の(A)顔料分散体は、前記染料被覆カーボンブラック以外に、通常の又は所定の処理を施したカーボンブラックを含むものであっても構わない。また、その他の顔料や遮光材等を含んでもよい。その他の顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック等の黒色有機顔料、赤、青、緑、紫、イエロー、シアン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化した混色有機顔料を用いることができる。また、その他の遮光材としては、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックを挙げることができる。染料被覆カーボンブラック以外の顔料や遮光材は、それぞれ2種以上を適宜選択して用いることもでき、互いに組み合わせて用いるようにしてもよい。」

ウ 「[0042] 本発明で利用される一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はいずれかの酸一無水物とテトラカルボン酸又はその酸二無水物とを反応させて得られる。
[0043] このうち、本発明の一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を与えるビスフェノール類としては、
・・・(中略)・・・
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、9,9-フルオレニル基を有するものが特に好適に利用される。
[0044] そして、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得る。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(II)の化合物を得ることになる。一般式(II)の式中R _(1) 、R _(2) 、R _(3) 、R _(4) 、Aは一般式(I)と同様の意味である。lは0?10の整数である。好ましいR _(1) 、R _(2) 、R _(3) 、R _(4) は水素原子であり、好ましいAは9,9-フルオレニル基である。また、lは通常複数の値が混在するため平均値0?10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0?3である。lの値が上限値を超えると、一般式(I)の化合物として樹脂組成物としたとき組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性が十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする。

[0045] 次に、一般式(II)の化合物にアクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの両方を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する反応物に、多塩基酸であるジカルボン酸類(又はトリカルボン酸類)とテトラカルボン酸類の少なくとも各1種類を反応させてエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物(I)を得る。このエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物(I)は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え、良好なブラックマトリックスが得られるものである。」

エ 「[0055] 次に、(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂としては、より好適には(A3)成分である一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を用いるのがよい。これ以外にも、例えば、ビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物の代わりにフェノールノボラック型エポキシ化合物やクレゾールノボラック型エポキシ化合物等の2個以上のグリシジルエーテル基を有する化合物を用いて、感光性基である不飽和二重結合とアルカリ可溶性をもたらすカルボキシル基等の酸性官能基とを有する化合物に誘導体化した不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を用いることができる。(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。高遮光かつ高抵抗の感光性樹脂組成物のためには、(A)顔料分散体の共分散樹脂(A3)と同様の成分を用いることが好ましい。
[0056] (C)成分のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、
・・・(中略)・・・
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
・・・(中略)・・・
を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、当該エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を3個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(C)成分のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
[0057] 本発明の感光性樹脂組成物では、不飽和基含有樹脂((A3)+(B))成分と(C)成分の配合割合(各成分量は溶剤を除く固形分の量)は、質量比((A3)+(B)):(C)で20:80?90:10であることがよく、好ましくは40:60?80:20である。((A3)+(B))成分の配合割合が少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に多いと、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅よりも細ったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じる恐れがある。
[0058] (D)成分の光重合開始剤としては、1種類以上の開始剤を用いることができる。なお、本発明でいう光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
[0059] 使用可能な光重合開始剤としては例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、
・・・(中略)・・・
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、
・・・(中略)・・・
などが挙げられる。
[0060] (D)成分の光重合開始剤の使用量は、(A3)および(B)の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と(C)光重合性モノマーの各成分の合計100質量部を基準として2?60質量部であることがよく、好ましくは10?50質量部であるのがよい。(D)成分の配合割合が少ないと、光重合の速度が遅くなって感度が低下し、一方、多過ぎると感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又はパターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる恐れがある。」

オ 「[0064] (A1)成分の染料被覆カーボンブラックの含有率は、感光性樹脂組成物の固形分中に、40質量%以上となるように配合するのがよい。好ましくは45?60質量%、より好ましくは50?55質量%の範囲であるのがよい。(A1)成分の含有率が低いと、遮光性が十分でなくなり、望ましいコントラストを得るためには膜厚を厚くしなければならなくなり、ブラックマトリックスの面平滑性が得にくい。反対に(A1)成分の含有率が高いと、(A)成分の顔料分散体だけでなく、感光性樹脂組成物の分散安定性が低下し、また、バインダーとなる感光性樹脂の含有量も減少して現像密着性やガラス基板との密着性を十分に付与することができなくなるとか、アルカリ可溶性が不足して良好な現像特性が得られなくなるという好ましくない問題が生じる恐れがある。」

カ 「実施例
[0071] 次に、本発明のブラックマトリクス用感光性樹脂組成物の製造方法および当該感光性樹脂組成物の特性を、実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0072]
[調製例1]
<染料被覆カーボンブラックの調製(1)>
カーボンブラック(TPX-1099:Cabot社製)1000gを水と混合してスラリー10Lを調製し、95℃で1時間撹拌させ放冷した後水洗した。これを再び水と混合処理してスラリー10Lを調製し、70%の硝酸42.9gを添加して40℃で4時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、13%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液769.2gを添加して40℃で6時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、純度38.4%の染料(Direct Deep BLACK)38.1gを添加して40℃で1時間撹拌し、その後更に硫酸アルミニウム10.1gを添加して40℃で1時間撹拌した。これを放冷した後水洗し、ろ過乾燥させて、染料被覆カーボンブラックを得た。
・・・(中略)・・・
[0077] [調製例4]
<(A)-1本発明の顔料分散体の調製>
調製例1で得られた染料被覆カーボンブラック(A1成分)600gと、A2成分としてウレタン系分散剤のBYK-167(ビックケミー・ジャパン社製)93.2gと、A3成分としてフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5質量%、新日鐵化学社製「V259ME」)378gと、A4成分として溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1328.8gをビーズミルで分散して本発明の顔料分散体(A)-1を得た。得られた顔料分散体(A)-1の染料被覆カーボンブラックの平均2次粒子径は110nmであった。
・・・(中略)・・・
[0081]
[使用する(B)?(E)成分および添加剤(F)?(G)成分]
<(B)-1 一般式(I)構造を有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂>
フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5質量%、新日鐵化学社製「V259ME」)
<(B)-2 一般式(I)構造以外の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂>
N-フェニルマレイミド/アクリル酸/スチレン共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=35.5質量%、N-フェニルマレイミド:アクリル酸:スチレン=19:22:59モル%、重量平均分子量9000、酸価80)
<(C)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製「KAYARAD-DPHA」)
<(D)光重合開始剤>
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製「イルガキュアOXE02」)
<(E)-1 溶剤1>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<(E)-2 溶剤2>
シクロヘキサノン
<(F)シランカップリング剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM-503」)
<(G)界面活性剤>
メガファックF475(DIC社製)
[0082][実施例1]
<ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物の調製>
調製例4で得られた顔料分散体(A)-1 565g、(B)-1 43.7g、(C)25g、(D)15gおよびシランカップリング剤(F)2.5g、界面活性剤(G)2.0gを溶剤(E)-1 537.9g、(E)-2 752.0gに均一に混合し、ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を調製した。この配合成分および以下の比較例の配合成分を表1に示す。
・・・(中略)・・・
[0087]
[表1]



(2)引用発明
引用文献1の[0072]、[0077]、[0081]及び[0082]には、実施例1として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 以下に示す、565gの顔料分散体(A)-1、43.7gの不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(B)-1、25gの光重合性モノマー(C)、15gの光重合開始剤(D)、2.5gのシランカップリング剤(F)、及び2.0gの界面活性剤(G)を、537.9gの溶剤(E)-1及び71.0gの溶剤(E)-2に均一に混合して調製してなる、
ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
(A)-1:染料被覆カーボンブラック(A1成分)600gと、ウレタン系分散剤のBYK-167(ビックケミー・ジャパン社製)(A2成分)93.2gと、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5質量%、新日鐵化学社製「V259ME」)(A3成分)378gと、溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(A4成分)1328.8gをビーズミルで分散した、顔料分散体
(B)-1:フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5質量%、新日鐵化学社製「V259ME」)
(C):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製「KAYARAD-DPHA」)
(D):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製「イルガキュアOXE02」)
(E)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E)-2:シクロヘキサノン
(F):3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM-503」)
(G):メガファックF475(DIC社製)」

2.引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカルバゾール誘導体を基礎とする新規のオキシムエステル化合物ならびに前記化合物の光重合性の組成物における光開始剤としての使用に関する。
・・・(中略)・・・
【0003】
光重合技術においては、反応性が高く、製造が容易で、かつ取り扱いが容易な光開始剤に対しての要求がいまだ存在する。例えば、カラーフィルターレジスト用途においては、高度に顔料着色されたレジストは、高い色品質特性のために必要である。顔料含分の増加に伴い、カラーレジストの硬化はより困難になる。ここで、高い感度を有する光開始剤が必要である。更にまた、かかる新規の光開始剤は、例えば取り扱いの容易性、高い可溶性、熱安定性および貯蔵安定性などの特性に関する高い工業的要求を満たさねばならない。
【0004】
ここで、選択された化合物は、特に光開始剤として好適であることが判明した。」

イ 「【0116】
本発明の式Iの化合物の例は、
【化89】

【0117】
【化90】

【0118】
【化91】

【0119】
【化92】

【0120】
【化93】

である。
【0121】
式Iの化合物は、ラジカル光開始剤として適している。従って、本発明の対象は、上記定義の式(I)の化合物の、少なくとも1種のエチレン性不飽和の光重合性の化合物を含む組成物の光重合のための使用である。
【0122】
従って、本発明のもう一つの対象は、光重合性の組成物であって、
(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和の光重合性の化合物と、
(b)光開始剤としての、上記定義の、少なくとも1種の式Iの化合物と、
を含む前記組成物である。」

ウ 「【0177】
光重合性の組成物を、様々な目的のために、例えば、
・・・(中略)・・・
様々なディスプレイ用途用のカラーフィルターを製造するためのレジストとして、
・・・(中略)・・・
使用できる。
・・・(中略)・・・
【0187】
カラーフィルターは、通常は、ガラス基板上に、赤色と緑色と青色のピクセルと、黒色のマトリクスとを形成することによって製造される。これらのプロセスにおいて、本発明による光硬化性組成物を使用できる。特に好ましい使用方法は、赤色、緑色および青色の着色物質、染料および顔料を本発明の感光性の樹脂組成物に添加することと、基板を前記組成物でコーティングすることと、該コーティングを短時間の熱処理で乾燥させることと、該コーティングをパターン状に化学線にさらすことと、引き続き水性アルカリ性現像溶液中で前記パターンを現像することと、任意に熱処理することとを含む。このように、引き続きこのプロセスで互いの上部に任意の所望の順番で赤色に、緑色に、そして青色に顔料着色されたコーティングを適用することによって、赤色、緑色および青色のカラーピクセルを有するカラーフィルター層を製造できる。」

エ 「【0327】
例1 1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]-エタノンオキシムO-アセテートの合成
・・・(中略)・・・
【0332】
1.c 1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]エタノンオキシムO-アセテート
【化101】

【0333】
1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]エタノン(0.49g;0.95ミリモル)をトルエン(5mL)およびN-メチルピロリドン(NMP)(0.85ml)中に入れて80℃で温めたものに、酢酸ナトリウム(93.5mg;1.14ミリモル)およびヒドロキシルアンモニウムクロリド(78.9mg;1.14ミリモル)を添加し、次いで該混合物を100℃で一晩撹拌する。該反応混合物を0℃で冷却した後に、トリエチルアミン(0.145g;1.43ミリモル)および塩化アセチル(0.11g;1.43ミリモル)をそこに添加し、次いで該混合物を室温で2時間にわたり撹拌する。反応が完了した後に、該反応混合物を水中に添加する。次いで粗生成物をトルエンで抽出する。有機層を、水およびブラインで洗浄し、MgSO_(4)上で乾燥させ、そして濃縮し、真空中で乾燥させることで、残留物が得られる。この残留物をt-ブチルメチルエーテルで洗浄することで、白色の固体(0.33g;60%)が得られる。その構造は、以下の^(1)H-NMRスペクトルによって確認される:
・・・(略)・・・」

3.その他の文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の請求の範囲、[0015]、[0045]には、感光性の黒色樹脂組成物をタッチパネル用遮光膜に用いることが記載されている。また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の【特許請求の範囲】、【0081】-【0088】には、着色感光性樹脂組成物をタッチパネルの硬化樹脂パターンを形成することが記載されている。
そうしてみると、引用文献3及び4は、感光性の黒色樹脂組成物をタッチパネルに用いることが周知技術であることを示す文献であると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア (A)成分
引用発明のA3成分及び(B)-1成分である「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5質量%、新日鐵化学社製「V259ME」)」における「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」は、記載事項イ、ウ及び引用文献1の[0081]の記載に基づけば、本願発明1の「(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂」に相当するものと認められる。

イ (B)成分
引用発明の「(C):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製「KAYARAD-DPHA」)は、その化学構造からみて、本願発明1の「(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー」に相当する。

ウ (C)成分
引用発明の「(D):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製「イルガキュアOXE02」と、本願発明1の「(C)成分」は「光重合開始剤」である点で共通する。

エ (D)成分
引用発明の「染料被覆カーボンブラック(A1成分)」は、技術的にみて、本願発明1の「(D)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれた1以上の遮光成分」に相当する。

オ (A)成分と(B)成分との重量割合
引用発明の「顔料分散体(A)-1」における「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」の含有率は、8.90重量%(378/(600+93.2+378+1328.8)*0.565*100)である。そうすると、引用発明の「顔料分散体(A)-1」565gにおける「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」の含有量は、24.7gである。
そうしてみると、引用発明における「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」の総含有量は75gであって、引用発明における「光重合性モノマー(C)」の含有量は25gであるから、両者の比は75:25である。
したがって、引用発明は、本願発明1の「A)成分と(B)成分との重量割合(A)/(B)が、60/40?80/20であ」るという要件を満たすものである。

カ (C)成分の含有量
上記オより、引用発明における「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」の総含有量は75gであって、「光重合性モノマー(C)」の含有量は25g、「光重合開始剤(D)」の含有量は15gであるから、「フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物」の総含有量と「光重合性モノマー(C)」の含有量の合計と「光重合開始剤(D)」との比は100:15である。
したがって、引用発明は、本願発明1の「(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分を5?25質量部含有」という要件を満たすものである。

キ (D)成分の含有量
引用発明の「顔料分散体(A)-1」における「染料被覆カーボンブラック(A1成分)」の含有量は、25.0重量%(600/(600+93.2+378+1328.8)*100)である。そうすると、引用発明の「顔料分散体(A)-1」565gにおける「染料被覆カーボンブラック(A1成分)」の含有量は、141gである。
また、引用発明の「顔料分散体(A)-1」における「ウレタン系分散剤のBYK-167(ビックケミー・ジャパン社製)(A2成分)」の含有量は、3.89重量%(93.2/(600+93.2+378+1328.8)*100)である。そうすると、引用発明の「顔料分散体(A)-1」565gにおける「ウレタン系分散剤のBYK-167(ビックケミー・ジャパン社製)(A2成分)」の含有量は、22.0gである。
そうしてみると、引用発明における全固形分の総含有量は、278g(141+22.0+75+25+15)であって、引用発明における「顔料分散体(A)-1」における「染料被覆カーボンブラック(A1成分)」と全固形分の総含有量との比は、141:278である。
したがって、引用発明は、本願発明1の「組成物の全固形分に対して(D)成分を40?70質量%含有する」という要件を満たすものである。

ク 遮光膜用感光性樹脂組成物
引用発明の「ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物」は、その組成や記載事項アからみて、本願発明1の「遮光膜用感光性樹脂組成物」に相当する。

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
【一致点】
「 下記(A)?(D)成分、
(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)光重合開始剤、及び
(D)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれた1以上の遮光成分を
必須成分として含む遮光膜用感光性樹脂組成物において、
(A)成分と(B)成分との重量割合(A)/(B)が、60/40?80/20であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分を5?25質量部含有し、且つ、組成物の全固形分に対して(D)成分を40?70質量%含有することを特徴とする遮光膜用感光性樹脂組成物。

但し、一般式(V)において、R_(6)及びR_(7)は、独立に水素原子、炭素数1?5のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、Xは、フルオレン-9,9-ジイル基を示し、lは0?10の数である。」

イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
【相違点1】
本願発明1の「(C)光重合開始剤」は、「下記一般式(IV)で表される化合物を含有する」のに対し、引用発明は、一般式(IV)で表される化合物を含有しない点。


(3)相違点についての判断
引用発明は、本願発明1の「(A)下記一般式(V)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応物に、更に多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂」(以下「本願発明成分(A)」という。)を用いるものである。しかしながら、本願発明1の「(C)下記一般式(IV)で表される化合物を含有する光重合開始剤」(以下「本願発明成分(C)」という。)を用いるものではない。また、引用文献1の[0059]には、光重合開始剤としてアシルオキシム系化合物類を用いることが記載されているものの、本願発明成分(C)は記載されておらず、本願発明成分(A)と本願発明成分(C)を組み合わせて用いることも記載されていない。
また、引用文献2の【0332】には、本願発明成分(C)が開示されているが、引用文献2にも、本願発明成分(A)と本願発明成分(C)を組み合わせて用いることは記載されていない。
他方、本願の明細書の【0048】-【0077】には、比較例3、4及び6として、本願発明成分(A)とともに、光重合開始剤として、実施例1及び2で用いられている本願発明成分(C)にかえて、引用発明の「(D):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製「イルガキュアOXE02」)」を用いた感光性樹脂組成物が記載されており、比較例3、4及び6は、引用発明に対応するものであると認められる。
そして、本願の明細書の【0087】には、本願発明1に該当する、実施例1及び2が、引用発明に対応する比較例3、4及び6と比較して、5μmマスク線幅(μm)、パターン直線性及び密着強度に優れるという効果を有していることが記載されている。
こうした効果は、本願発明成分(A)と本願発明成分(C)の両者を組み合わせて用いることによって生じるものであるといえ、引用発明及び引用文献2の記載事項から予測し得ない、当業者の予測を超えた格別なものである。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1における、本願発明成分(C)を「(C)下記一般式(XII)で表される化合物を含有する光重合開始剤」に変更したものである。
そして、本願明細書の【0068】-【0088】には、「(C)下記一般式(XII)で表される化合物を含有する光重合開始剤」を用い、本願発明2に該当する実施例3が、実施例1及び2と同様に、比較例1-4、6に比べて優れた効果を有していることが記載されている。
したがって、本願発明2は、本願発明1と同様、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
本願発明3は、本願発明1における、本願発明成分(C)を「(C)下記一般式(XV)で表される化合物を含有する光重合開始剤」に変更したものである。
そして、本願明細書の【0068】-【0088】には、「(C)下記一般式(XV)で表される化合物を含有する光重合開始剤」を用い、本願発明3に該当する実施例4が、実施例1及び2と同様に、比較例1-4、6に比べて優れた効果を有していることが記載されている。
したがって、本願発明3は、本願発明1と同様、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明4-本願発明7について
本願発明4-本願発明7は、本願発明1-3のいずれかの「遮光膜用感光性樹脂組成物」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1-本願発明3と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由2(特許法29条2項)について
審判請求時の補正により、補正後の請求項1-3は、それぞれ、「(C)下記一般式(IV)で表される化合物を含有する光重合開始剤」、「(C)下記一般式XII)で表される化合物を含有する光重合開始剤」又は「(C)下記一般式(XIV)で表される化合物を含有する光重合開始剤」を必須成分とするという技術的事項を有する構成となった。当該構成は、上記第5 1.-3.に記載のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由もない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2015-12354(P2015-12354)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉持 俊輔  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 遮光膜用感光性組成物、及びその硬化物  
代理人 佐々木 一也  
代理人 原 克己  
代理人 佐野 英一  
代理人 成瀬 勝夫  
代理人 久本 秀治  
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