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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1341760
審判番号 不服2017-3060  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2018-06-27 
事件の表示 特願2015-124868「複数個の端末と同時に通信する無線パケット通信システムにおけるデータ送/受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日出願公開、特開2016- 6960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年(平成21年)12月18日 韓国、2010年(平成22年)2月4日 韓国、2010年(平成22年)7月9日 韓国)を国際出願日とする特願2012-544391号(以下、「原出願1」という。)の一部を、平成26年2月6日に新たな特許出願とした特願2014-21284号(以下、「原出願2」という。)の一部を、平成27年6月22日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月 9日付け 拒絶理由の通知
平成28年10月12日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年10月27日付け 拒絶査定
平成29年 3月 1日 拒絶査定不服審判請求及び手続補正書の
提出

第2 平成29年3月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は、平成28年10月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線通信システムにおいてデータを複数の受信器に送信する方法であって、前記方法は、
送信されるべき物理階層プロトコルデータ単位(PPDU)のためのシンボル数に基づいて、前記複数の受信器に従って、複数のデータ長を決定するステップであって、前記複数のデータ長のそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つに対応する、ステップと、
前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップと、
前記最大データ長に基づき、時間領域内の前記PPDUの長さを決定するステップと、
前記複数の受信器に前記PPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、第1のシグナルフィールドと、複数の第2のシグナルフィールドとを含む、ステップと、
を備え、
前記第1のシグナルフィールドは、前記PPDUの長さを示し、前記複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つのためのデータ長を示す、データ送信方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、
「無線通信システムにおいてデータを複数の受信器に送信する方法であって、前記方法は、
送信されるべき物理階層プロトコルデータ単位(PPDU)のためのシンボル数に基づいて、前記複数の受信器に従って、パディングビット及びテールビットを含む複数のデータ長を決定するステップであって、前記複数のデータ長のそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つに対応する、ステップと、
前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップと、
前記最大データ長に基づき、時間領域内の前記PPDUの長さを決定するステップと、
前記複数の受信器に前記PPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、第1のシグナルフィールドと、複数の第2のシグナルフィールドとを含む、ステップと、
を備え、
前記第1のシグナルフィールドは、前記PPDUの長さを示し、前記複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つのための前記テールビットを含まないデータ長を示す、データ送信方法。」
という発明とすることを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無
ア 請求項1についての上記補正は、「前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップ」で使用する「複数のデータ長」を決定するステップにて決定される「複数のデータ長」を「パディングビット及びテールビットを含む複数のデータ長」とするものである。

一方、本願明細書の図9に関連する段落60に「各MPDU902、912は、互いに異なる長さを有すると仮定する。」と記載され、段落62に「互いに異なるMPDU902、912のうち最も長い長さによって全体長さ情報を知らせるための情報は、L-SIG900で長さ値を用いて参照符号910のように送信することができる。」と記載されている。よって、本願明細書では「MPDU902、912のうち最も長い長さ」を求めるために「MPDU902」と「MPDU912」の長さを決定している。
また、明細書段落61に「互いに異なる長さを有するMPDU902、912を複数個の端末に同時に送るフレームの終端位置を合わせなければならないため、差のある部分をMAC階層とPHY階層でパッド(Pad)を挿入しなければならない。即ち、MPDU1(902)の後にMACパッド1(903)を挿入し、以後にPHYパッド1(904)を挿入し、最後にテール1(905)が付加される。」、「また、MPDU2(912)の後にはMACパッド2(913)を挿入し、以後にPHYパッド2(914)を挿入し、最後にテール2(915)が付加される。」と記載されている。
したがって、パッドとテールを含まない長さが「MPDU902」や「MPDU912」のそれぞれの長さであり、パッドとテールを含む長さは「MPDU902」や「MPDU912」のそれぞれの長さでは無く、異なる長さを有するMPDU902、912の長さをパッドとテールで合わせた後の長さである。
その他に図10に関連する段落64?65や図11に関連する段落69?71においても同様の記載がある。
よって、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項では、「前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップ」で使用する「複数のデータ長」を決定するステップにて決定される「複数のデータ長」は「パディングビット及びテールビットを含まない複数のデータ長」である。

したがって、「複数のデータ長」が補正後の請求項1と本願の当初明細書等に記載した事項とでは一致していない。

よって、補正後の請求項1の「送信されるべき物理階層プロトコルデータ単位(PPDU)のためのシンボル数に基づいて、前記複数の受信器に従って、パディングビット及びテールビットを含む複数のデータ長を決定するステップ」は本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。

イ 補正後の請求項1では、「複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれ」が示すデータ長は「パディングビットを含め、テールビットのみを含めないデータ長」を含んでいる。

しかしながら、本願明細書段落65に「MPDU1(1012)の後にMACパッド1(1013)を挿入し、以後にPHYパッド1(1014)を挿入し、最後にテール1(1015)が付加される。」、「MPDU2(1022)の後にはMACパッド2(1023)を挿入し、以後にPHYパッド2(1024)を挿入し、最後にテール2(1025)が付加される。」と記載され、段落66に「各MPDUの情報は、SIGフィールド1001で各々のMPDU1012、1022をSIG長さ1、SIG長さ2のように指示することができる。」と記載されており、本願の当初明細書等に記載した事項では「複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれ」が示すデータ長はパディングビットもテールビットも含まないデータ長である。

したがって、補正後の請求項1に含まれる「複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれ」が示すデータ長が「パディングビットを含め、テールビットのみを含めないデータ長」であるということは本願の当初明細書等に記載した事項と一致していない。

よって、「前記複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つのための前記テールビットを含まないデータ長を示す」という補正は本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。

ウ 以上のことから、上記補正により追加された、「前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップ」で使用する「複数のデータ長」を決定するステップにて決定される「複数のデータ長」を「パディングビット及びテールビットを含む複数のデータ長」とする点と、「複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれ」が示すデータ長は「パディングビットを含め、テールビットのみを含めないデータ長」を含んでいる点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.まとめ
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成28月10月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 平成29年3月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」の項目で示した本願発明のとおりのものと認める。

ここで、本願の出願日について検討すると、本願は原出願2に対し分割要件を全て満たし、原出願2は原出願1に対し分割要件を全て満たし、本願が原出願1の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されたものであり、原出願1から原出願2を分割する直前の原出願1の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されたものであるから、本願の出願日は原出願1の出願日である2010年(平成22年)12月16日と認め、そして、その最先の優先日は2009年12月18日である。

2.先願発明及び周知技術
(1)先願発明
原査定の拒絶の理由で先の出願として引用された2010年(平成22年)8月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年(平成21年)8月12日 米国、2009年(平成21年)9月9日 米国、2009年(平成21年)9月11日 米国、2009年(平成21年)9月16日 米国、2009年(平成21年)10月14日 米国、2009年(平成21年)10月16日 米国、2010年(平成22年)4月14日 米国)を国際出願日とする国際特許出願(PCT/US2010/044457)であって、本願出願日後の2011年2月17日に国際公開され(国際公開第2011/019571号)、その後、特許法184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願(以下、「先願」という。)の国際出願日における明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)にはア?カが記載されている。
なお、本願の発明者が先願に係る発明をした者と同一であるとも、また本願出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められない。

ア「[0040]・・・The techniques and architectures presented herein can be implemented in a variety of wireless communication systems such as ones based on IEEE 802.11n or IEEE 802.11ac.」(7?8ページ)
(当審仮訳:
[0040]・・・ここで紹介された技術及び構造は、IEEE802.11n又はIEEE802.11acに基づくシステムのような、様々な無線通信システムに実装することができる。)

イ「[0057]In some implementations,a wireless communication device 150 can perform omni-directional transmissions that are intended for multiple client devices.・・・In some implementations,a wireless communication device 150 can perform steered transmissions that concurrently separate data to multiple client devices.The device 150 can alternate between omni-directional transmissions and steered transmissions.In steered transmissions,the device 150 can transmit a first Physical Layer Protocol Data Unit(PPDU)to a first client via a first spatial wireless channel and concurrently transmit a second PPDU to a second client via a second spatial wireless channel.」(12ページ)
(当審仮訳:
[0057]ある実装形態では、無線通信デバイス150は、複数のクライアントデバイス宛の無指向性送信を実行することができる。・・・ある実装形態では、無線通信デバイス150は、複数のクライアントデバイスにデータを分離して送信するステアされた送信を実行することができる。デバイス150は、無指向性送信とステアされた送信とを切り替えることができる。ステアされた送信では、デバイス150は、第1空間無線チャネルを介して、第1クライアントへ物理層プロトコルデータユニット(PPDU)を送信し、同時に、第2空間無線チャネルを介して、第2クライアントへPPDUを送信することができる。)

ウ「[0075]With respect to the following figures,transmission signals can include one or more legacy training fields(L-TFs)such as a Legacy Short Training Field(L-STF)or Legacy Long Training Field(L-LTF).Transmission signals can include one or more Legacy Signal Fields (L-SIGs).Transmission signals can include one or more Very High Throughput(VHT)fields such as a VHT Signal Field(VHT-SIG),a VHT Short Training Field(VHT-STF),or a VHT Long Training Field(VHT-LTF).Transmission signals can include VHT-Data fields.」(16ページ)
(当審仮訳:
以下に参照する図面について、送信信号としては、レガシー短期トレーニングフィールド(L-STF)又はレガシー長期トレーニングフィールド(L-LTF)のような、1以上のレガシートレーニングフィールド(L-TF)を含むことができる。送信信号としては、1以上のレガシー信号フィールド(L-SIG)を含むことができる。送信信号はVHT信号フィールド(VHT-SIG)、VHT短期トレーニングフィールド(VHT-STF)又はVHT長期トレーニングフィールド(VHT-LTF)のような1以上のVHTフィールドを含むことができる。送信信号は、VHT-データフィールドを含むことができる。)

エ「[0077]As shown in FIG. 7A,an access point transmits signals to SDMA clients using omni-directional transmission periods and a steered transmission period.In the steered transmission period,the access point uses two different acknowledgement policies.The access point uses an implicit ACK policy 701 for a first client,e.g.,STA 1, and a block ACK policy 702 for a second client,e.g.,STA 2.In an implicit ACK policy 701,a client can transmit an acknowledgement response 703 after the end of a received frame,which can include PHY padding.・・・ 」(17ページ)
(当審仮訳:
[0077]図7Aに示すように、アクセスポイントは、無指向性送信期間及びステアされた送信期間を使用して、信号をSDMAクライアントに送信する。ステアされた送信期間では、アクセスポイントは、2つの異なる確認応答ポリシーを使用する。アクセスポイントは、例えば、STA 1である第1クライアントに対しては黙示的ACKポリシー701を使用し、例えば、STA 2である第2クライアントに対してはブロックACKポリシー702を使用する。黙示的ACKポリシー701では、クライアントは、PHYパディングを含み得る受信されたフレームの終了後に、確認応答703を送信することができる。・・・)

オ「[0079]・・・A L-SIG length can indicate the end of a maximum length PPDU.・・・A VHT-SIG length or MCS can indicate the end of a PSDU without PHY padding.・・・」(17?18ページ)
(当審仮訳:
[0079]・・・L-SIGの長さは、最大長PPDUの終わりを示すことができる。・・・VHT-SIGの長さ又はMCSがPHY パディングのないPSDUの終了を示すことができる。・・・」)




次に、上記の摘記した記載ア?カ及び技術常識からみて、次の事項が先願明細書等には記載されていると認められる。

アの記載によれば、先願明細書等に示されるシステムは無線通信システムである。
イ及びエの記載によれば、第1クライアントであるSTA 1へのデータと第2クライアントであるSTA 2へのデータを送信していることから、「データをSTA 1とSTA 2に送信する方法」が記載されているといえる。
カの「VHT-SIG Length/MCS」の実線の矢印の記載及びオの記載によれば、VHT-Dataの長さを知るためにはPHYパディングを含まないVHT-Dataの長さが必要であるから、STA 1のVHT-Dataの長さとSTA 2のVHT-Dataの長さを決定することを送信端末で行われていることは明らかである。したがって、「複数のVHT-Dataの長さを決定するステップであって、前記複数のVHT-Dataのデータ長のそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataに対応する、ステップ」が送信端末で行われていると解釈することが自然である。
カのPHYパディング708の記載によれば、STA 2のVHT-Dataの長さに合わせるようにSTA 1のVHT-DataにPHYパディング708を付加していることが見てとれるから、複数のSTA 1のVHT-Dataの長さとSTA 2のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長であるSTA 2のVHT-Dataの長さを決定しなければならないことは明らかである。したがって、「複数のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長を決定するステップ」が送信端末で行われていると解釈することが自然である。
カの「VHT-Data(STA 1)」と「VHT-Data(STA 2)」の記載によれば、STA 2のVHT-Dataの長さが最大のデータ長であることが見てとれ、カの「CTS-to-Self MAC Duration」と「L-SIG Length」の実線の矢印の記載とオの「L-SIGの長さは、最大長PPDUの終わりを示す」という記載によれば、CTS-to-Self MAC Duration内のL-SIGの長さは、STA 2のVHT-Dataの終わりまでのPPDUの長さであるから、「最大のデータ長に基づき、CTS-to-Self MAC Duration内のVHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さであるL-SIGの長さを決定」していることが送信端末で行われていると解釈することが自然である。
イ及びエの記載によれば、STA 1とSTA 2にPPDUを送信することは行われており、カの記載及び「L-SIG LengthはL-SIGフィールド内にある」ことと「VHT-SIG LengthはVHT-SIGフィールド内にある」という技術常識によれば、PPDUがL-SIG Lengthと複数のVHT-SIG Lengthとを含むことは明らかであるから、「STA 1とSTA 2にPPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、L-SIG Lengthと、複数のVHT-SIG Lengthとを含む、ステップ」が送信端末で行われているといえる。
カの「L-SIG Length/rate」の実線の矢印の記載及びオの「L-SIG Lengthは、最大長PPDUの終わりを示す」という記載によれば、「L-SIG Lengthは、PPDUの長さを示し」ているといえ、またカの「VHT-SIG Length/MCS」の実線の矢印の記載及びオの「VHT-SIG LengthがPHY パディングのないPSDUの終了を示す」との記載によれば、「複数のVHT-SIG Lengthのそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataのためのデータ長を示」しているといえる。

以上を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。

「無線通信システムにおいてデータをSTA 1とSTA 2に送信する方法であって、前記方法は、
複数のVHT-Dataの長さを決定するステップであって、前記複数のVHT-Dataのデータ長のそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataに対応する、ステップと、
前記複数のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長を決定するステップと、
前記最大データ長に基づき、CTS-to-Self MAC Duration内のVHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さであるL-SIGの長さを決定するステップと、
前記STA 1とSTA 2にPPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、L-SIG Lengthと、複数のVHT-SIG Lengthとを含む、ステップと、
を備え、
前記L-SIG Lengthは、前記PPDUの長さを示し、前記複数のVHT-SIG Lengthのそれぞれは、前記STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataのためのデータ長を示す、データ送信方法。」

ここで、本願発明が本願の最先の優先日(2009年12月18日)以前の、先願の優先基礎出願に記載されていることを確認する。
先願の2番目の優先基礎出願である61/240933号(出願日:2009年9月9日)(以下、「先願優先基礎出願」という。)には下記キ、クが記載されている。







次に、上記の摘記した記載キ、ク及び技術常識によれば、次の事項が先願優先基礎出願には記載されていると認められる。

クの図の記載によれば、無線通信システムのフォーマットであることは技術常識であるから、先願優先基礎出願のシステムは無線通信システムであることは明らかである。
クの図の記載によれば、STA 1へのデータVHT-DataとSTA 2へのデータVHT-Dataを送信していることが見てとれることから、「データをSTA 1とSTA 2に送信する方法」が記載されているといえる。
クの図の「VHT-SIG Length/MCS」の実線の矢印の記載によれば、VHT-Dataの長さを知るためにはPHYパディングを含まないVHT-Dataの長さが必要であるから、STA 1のVHT-Dataの長さとSTA 2のVHT-Dataの長さを決定することを送信端末で行われていることは明らかである。したがって、「複数のVHT-Dataの長さを決定するステップであって、前記複数のVHT-Dataのデータ長のそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataに対応する、ステップ」が送信端末で行われていると解釈することが自然である。
クの図の「PHY Padding」の記載によれば、STA 2のVHT-Dataの長さに合わせるようにSTA 1のVHT-Dataに「PHY Padding」を付加していることが見てとれることから、複数のSTA 1のVHT-Dataの長さとSTA 2のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長であるSTA 2のVHT-Dataの長さを決定しなければならないことは明らかである。したがって、「複数のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長を決定するステップ」が送信端末で行われていると解釈することが自然である。
クの図の「VHT-Data(STA 1)」と「VHT-Data(STA 2)」の記載によれば、STA 2のVHT-Dataの長さが最大のデータ長であることが見てとれ、クの図の「CTS-to-Self MAC Duration」と「L-SIG Length」の実線の矢印の記載及びクの表の「L-SIG Length/rate」は、「End of Maximum PPDU(w/ PHY padding)」(ここで、「w/」は「with」の略であることは明らかである。「w/o」は「without」の略であることは明らかである。)においてXとして表していることから、L-SIGの長さが最大長PPDUの終わりを示していることは明らかである。したがって、CTS-to-Self MAC Duration内のL-SIGの長さは、STA 2のVHT-Dataの終わりまでのPPDUの長さであるから、「最大のデータ長に基づき、CTS-to-Self MAC Duration内のVHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さであるL-SIGの長さを決定」することを送信端末が行っていると解釈することが自然である。
クの図の記載によれば、STA 1とSTA 2にPPDUを送信することは見てとれ、「L-SIG LengthはL-SIGフィールド内にある」ことと「VHT-SIG LengthはVHT-SIGフィールド内にある」ことは技術常識であるから、「STA 1とSTA 2にPPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、L-SIG Lengthと、複数のVHT-SIG Lengthとを含む、ステップ」が送信端末で行われているといえる。
クの図の「L-SIG Length/rate」の実線の矢印の記載及びクの表の「L-SIG Length/rate」は、「End of Maximum PPDU(w/ PHY padding)」においてXとして表していることから、「L-SIG Lengthは、PPDUの長さを示し」ているといえ、またクの図の「VHT-SIG Length/MCS」の実線の矢印の記載によれば、「複数のVHT-SIG Lengthのそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataのためのデータ長を示」しているといえる。

以上を総合すると、先願優先基礎出願には、次の発明(以下「先願優先基礎発明」という。)が記載されているといえる。

「無線通信システムにおいてデータをSTA 1とSTA 2に送信する方法であって、前記方法は、
複数のVHT-Dataの長さを決定するステップであって、前記複数のVHT-Dataのデータ長のそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataに対応する、ステップと、
前記複数のVHT-Dataの長さのうち、最大データ長を決定するステップと、
前記最大データ長に基づき、CTS-to-Self MAC Duration内のVHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さであるL-SIGの長さを決定するステップと、
前記STA 1とSTA 2にPPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、L-SIG Lengthと、複数のVHT-SIG Lengthとを含む、ステップと、
を備え、
前記L-SIG Lengthは、前記PPDUの長さを示し、前記複数のVHT-SIG Lengthのそれぞれは、前記STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataのためのデータ長を示す、データ送信方法。」

そして、先願発明と先願優先基礎発明は同一であるから、先願発明は先願優先基礎出願に記載された発明と認められる。

(2)周知技術
特開2003-110581号公報の段落26には「SIGNAL部21-2は、データ部21-3のシンボル長を示すPSDU(PLCP Service Data Unit)長21-4を含んでいる。」と記載されている。
また、特開2007-258799号の段落2には「SIGNALは、1フレーム中のデータシンボルのシンボル数と各データシンボルの変調方式とを示すシンボルである。」と記載されている。

したがって、「シグナルフィールドにおいてデータ長をシンボル数で表す」ことは周知技術である。

3.対比及び判断

(1)先願発明の「STA 1とSTA 2」、「VHT-Dataの長さ」は、本願発明の「複数の受信器」、「データ長」に相当する。
(2)先願発明の「複数のVHT-Dataの長さを決定するステップ」は、STA 1宛かSTA 2宛かに従って、複数のデータ長の長さをそれぞれ決定していることから、「複数の受信器に従って、複数のデータ長を決定するステップ」である点で本願発明と一致している。
(3)先願発明の「複数のVHT-Dataのデータ長のそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataに対応」しているので、「複数のデータ長のそれぞれは、複数の受信器における対応する一つに対応する」点で本願発明と一致している。
(4)先願発明の「CTS-to-Self MAC Duration」は、「時間領域」といえ、先願発明の「L-SIGの長さ」は「VHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さ」であるから、先願発明の「最大データ長に基づき、CTS-to-Self MAC Duration内のVHT-Dataの最大データ長の終わりまでのPPDUの長さであるL-SIGの長さを決定するステップ」は「最大データ長に基づき、時間領域内のPPDUの長さを決定するステップ」である点で本願発明と一致している。
(5)先願発明の「L-SIG Length」、「VHT-SIG Length」は、本願発明の「第1のシグナルフィールド」、「第2のシグナルフィールド」にそれぞれ相当する。
(6)先願発明の「複数のVHT-SIG Lengthのそれぞれは、STA 1とSTA 2における対応する一つのVHT-Dataのためのデータ長を示」しているので、「複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれは、複数の受信器における対応する一つのためのデータ長を示」している点で本願発明と一致している。

以上を総合すると、本願発明と先願発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「無線通信システムにおいてデータを複数の受信器に送信する方法であって、前記方法は、
前記複数の受信器に従って、複数のデータ長を決定するステップであって、前記複数のデータ長のそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つに対応する、ステップと、
前記複数のデータ長のうち、最大データ長を決定するステップと、
前記最大データ長に基づき、時間領域内の前記PPDUの長さを決定するステップと、
前記複数の受信器に前記PPDUを送信するステップであって、前記PPDUは、第1のシグナルフィールドと、複数の第2のシグナルフィールドとを含む、ステップと、
を備え、
前記第1のシグナルフィールドは、前記PPDUの長さを示し、前記複数の第2のシグナルフィールドのそれぞれは、前記複数の受信器における対応する一つのためのデータ長を示す、データ送信方法。」

(相違点)
複数のデータ長を決定するステップにおいて、本願発明は「送信されるべき物理階層プロトコルデータ単位(PPDU)のためのシンボル数に基づいて、」「複数のデータ長を決定する」のに対し、先願発明ではデータ長を何の単位により表現するかは特定されていない点。

以下、相違点について検討する。
上記「2.先願発明及び周知技術」にて「(2)周知技術」として示したように、「シグナルフィールドにおいてデータ長をシンボル数で表す」ことは本願優先日(2009年12月18日)前に既に周知技術である。そして、先願発明においてデータ長をシンボル長で表すことに阻害要因は見当たらない。

そうすると、先願発明において何の単位によりデータ長を表現するか特定していないことから、周知技術である「データ長をシンボル数で表す」ことが先願発明には含まれていると解され、前記相違点は、実質的な相違点ではない。
よって、本願発明と先願発明とは同一であるから、本願発明は特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日(2009年12月18日)前の優先日(2009年9月9日)を有する国際特許出願(PCT/US2010/044457)であって、本願出願日(2010年12月16日)後の2011年2月17日に国際公開され(国際公開第2011/019571号)、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願の国際出願日における明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも、この出願の発明者が上記国際特許出願に係る上記発明をした者と同一であるとも、またこの出願の時において、その出願人が上記国際特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第184条の13で読み替えて適用する特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-01 
結審通知日 2018-02-02 
審決日 2018-02-14 
出願番号 特願2015-124868(P2015-124868)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 川口 貴裕
中木 努
発明の名称 複数個の端末と同時に通信する無線パケット通信システムにおけるデータ送/受信方法  
代理人 吉元 弘  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 関根 毅  
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