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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1341849
審判番号 不服2017-11018  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-25 
確定日 2018-07-24 
事件の表示 特願2013-113739「光学フィルム積層体及びそれを用いた複合偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日出願公開、特開2014-232251、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2013-113739号(以下、「本件出願」という。)は、平成25年5月30日の特許出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成28年 9月14日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月21日付け:意見書
平成28年11月21日付け:手続補正書(この手続補正書による補正を、
以下、「本件補正」という。)
平成29年 4月18日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成29年 7月25日付け:審判請求書

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

理由2.(進歩性) この出願の請求項1-7に係る発明は、下記の引用文献1、引用文献3に記載された発明、並びに引用文献2及び4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-67260号公報
2.特開2008-158534号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013-3515号公報
4.特開2010-217870号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1-請求項7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと、前記(メタ)アクリル系樹脂層の表面に接着剤層を介して接着された熱可塑性樹脂フィルムとからなる光学フィルム積層体であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムは、その最大屈折率方向(遅相軸方向)の波長590nmにおける屈折率を n_(x)、面内でそれと直交する方向(進相軸方向)の波長590nmにおける屈折率をn_(y)、遅相軸方向及び進相軸方向とそれぞれ直交する厚さ方向の波長590nmにおける屈折率をn_(z)とするとき、Nz=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で定義されるNz係数が-2から-0.5 の範囲にある屈折率異方性を有するフィルムであって、
前記接着剤層は、前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーを2?35重量部及び前記重合性多官能アクリレート化合物を30?60重量部含有する活性エネルギー線硬化型接着剤によって形成されており、
前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーが、テトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート、アルコール部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、アルコール部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート及びN-位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1つである
光学フィルム積層体。
【請求項2】
前記重合性多官能アクリレート化合物は、下式(I)
【化1】


(式中、R_(1)は水素原子又はメチル基を表し、pは1?6の整数を表し、h、i及びjはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、h+i+jの合計が6以上21以下となる整数を表す)
で表されるグリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び末端に2つ以上の重合性アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーからなる群より選ばれる請求項1に記載の光学フィルム積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、シクロオレフィン系樹脂フィルム及びセルロースアセテート系樹脂フィルムより選ばれる請求項1又は2に記載の光学フィルム積層体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムは、位相差発現層を、(メタ)アクリル系樹脂層で挟み込んだ三層構造である請求項1?3のいずれかに記載の光学フィルム積層体。
【請求項5】
前記位相差発現層は、スチレン系樹脂からなる請求項4に記載の光学フィルム積層体。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系樹脂層は、ゴム粒子を含有する請求項1?5のいずれかに記載の光学フィルム積層体。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載された光学フィルム積層体の熱可塑性樹脂フィルム面とポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光フィルムとを第二の接着剤層を介して接着した複合偏光板。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-67260号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)?(C):
(A)ラジカル重合性化合物、
(B)光ラジカル発生剤、および
(C)光酸発生剤、を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)として、下記一般式(1):
CH_(2)=C(R^(1))-CONH_(2-m)-(X-O-R^(2))_(m) (1)
(R^(1)は水素原子またはメチル基を示し、Xは-CH_(2)-基または-CH_(2)CH_(2)-基を示し、R^(2)は-(CH_(2))_(n)-H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す)で表されるN-置換アミド系モノマーを含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記N-置換アミド系モノマーとして、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを含有する請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)として、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル発生剤を含有する請求項1?3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)として、PF_(6)^(-)、SbF_(6)^(-)およびAsF_(6)^(-)からなる群より選択される少なくとも1種をカウンターアニオンとして有する光酸発生剤を含有する請求項1?4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)として、さらに、(E)2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーを含有する請求項1?5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化物層。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物層により形成された接着剤層を介して少なくとも2枚の部材を積層してなる積層体。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも2枚の部材を積層するための硬化物層を提供し得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、接着性、耐久性および耐水性を向上した硬化物層を提供し得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化物層および積層体を提供することにある。」

ウ 「【発明の効果】
【0024】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射することで、(B)光ラジカル発生剤がラジカルを発生し、(A)ラジカル重合性化合物が光ラジカル重合することにより、硬化物層を形成することができる。本発明では、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、(A)ラジカル重合性化合物および(B)光ラジカル発生剤に加えて、(C)光酸発生剤を含有するため、(C)光酸発生剤を含有しない場合に比べて、硬化物層の耐水性および接着性を飛躍的に向上することができる。この耐水性および接着性が向上する理由は明らかではないが、活性エネルギー線の照射により、(C)光酸発生剤の存在下で、(A)ラジカル重合性化合物の重合ポリマーが架橋(光酸架橋)することが原因であると推測される。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性化合物、(B)光ラジカル発生剤、および(C)光酸発生剤を含有する。
【0034】
上記(A)ラジカル重合性化合物は、(B)光ラジカル発生剤に活性エネルギー線を照射することで発生するラジカルの存在下で光ラジカル重合する硬化性成分として作用する。したがって、本発明においては(A)ラジカル重合性化合物として、少なくとも1個以上の炭素-炭素二重結合を含むビニル基、(メタ)アクリロイル基などを有する化合物であれば、特に限定なく使用可能である。しかしながら、本発明においては、(A)ラジカル重合性化合物の中でも、下記一般式(1):
CH_(2)=C(R^(1))-CONH_(2-m)-(X-O-R^(2))_(m) (1)
(R^(1)は水素原子またはメチル基を示し、Xは-CH_(2)-基または-CH_(2)CH_(2)-基を示し、R^(2)は-(CH_(2))_(n)-H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す)で表されるN-置換アミド系モノマーが好ましい。
【0035】
上記一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーの具体例としては、例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらN-置換アミド系モノマーは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーとしては、市販品も好適に使用可能である。具体的には例えば、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名「HEAA」、興人社製)、N-メトキシメチルアクリルアミド(商品名「NMMA」、MRCユニテック社製)、N-ブトキシメチルアクリルアミド(商品名「NBMA」、MRCユニテック社製)、N-メトキシメチルメタクリルアミド(商品名「ワスマー2MA」、笠野興産社製)などが挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーとしては、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好適である。N-置換アミド系モノマーは、低水分率の偏光子や、透湿度の低い材料を用いた透明保護フィルムに対しても、良好な接着性を示すが、上記で例示のモノマーの中でも、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドは特に良好な接着性を示す。
【0038】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性化合物として、上記一般式(1)で表される以外のN-置換アミド系モノマー、各種の芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、各種の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などを含有してもよい。但し、接着剤層の接着性および耐水性を考慮した場合、(A)ラジカル重合性化合物の合計量に対する上記一般式(1)で表されるN-置換アミド系モノマーの割合が、50?99質量%であることが好ましく、60?90質量%であることがより好ましい。
・・・(中略)・・・
【0044】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)ラジカル重合性化合物として、上述した炭素-炭素二重結合を1個有するモノマーに加えて、さらに、(E)2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー、特に好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、接着剤層の耐水性が向上するため好ましい。接着剤層の耐水性を考慮した場合、2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーは疎水性であることがより好ましい。疎水性の2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー、特に疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、ビスフェノールA-EO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1,6-ジイソシアネートヘキサンとの重合物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0045】
本発明においては、(A)ラジカル重合性化合物の合計量に対する2個以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマーの割合が、5?50質量%であることが好ましく、9?40質量%であることがより好ましい。この割合が5質量%未満である場合、十分な耐水性を得られない場合があり、一方、50質量%を超える場合には、十分な接着性を得られない場合がある。」

オ 「【実施例】
【0118】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0119】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調整)
実施例1?3、比較例1?2
表1に記載の配合表に従い、各成分を混合して50℃で1時間撹拌し、(a)?(e)の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(実施例1?3、比較例1?2)を得た。使用した各成分は以下のとおりである。
【0120】
HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド((A)ラジカル重合性化合物であって、一般式(1)に記載のN-置換アミド系モノマー))、興人社製
ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド((A)ラジカル重合性化合物であって、一般式(1)に記載のN-置換アミド系モノマー))、笠野興産社製
NBMA(N-ブトキシメチルアクリルアミド((A)ラジカル重合性化合物であって、一般式(1)に記載のN-置換アミド系モノマー))、MRCユニテック社製
アロニックスM-5700(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート((A)ラジカル重合性化合物))、東亞合成社製
IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド((B)光ラジカル発生剤))チバ・ジャパン社製
CPI-100P(トリアリールスルホニウム-PF_(6)塩((C)光酸発生剤))サンアプロ社製
CPI-101A(トリアリールスルホニウム-SbF_(6)塩((C)光酸発生剤))サンアプロ社製
UVS-1221(9,10-ジプロポキシアントラセン(光増感剤))川崎化成社製
【0121】
【表1】

【0122】
実施例4?6、比較例3?4
表2に記載の各部材上に、表1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(a)(以下、単に「組成物(a)という」)?(e)を、厚さ1μmになるように塗工した。その後、パナソニック電工社製Aicure UD80を使用し、ピーク照度:3900mW/cm^(2)、積算照射量300/mJ/cm^(2)(波長380?440nm)の紫外線を照射した。この照度、積算照射量は、Solatell社製Sola-Checkシステムを使用して測定した。使用した各部材(各被着体)は以下のとおりである。
【0123】
(各被着体)
PETフィルム(ルミラーS10)、東レ社製
ゼオノアフィルム(ZF14フィルム)、日本ゼオン社製
TACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム)、富士フィルム社製
ガラス板(MICRO SLIDE GLASS)、松浪硝子社製
アクリル板(アクリサンデー板)、アクリサンデー社製
ポリカーボネート(PC)板(レキサンシート)、アクリサンデー社製
【0124】
上記各被着体の接着面には、ライン速度8m/min、出力2kWの条件でコロナ処理することで易接着処理を行った。
【0125】
なお、実施例4の積層体(PETフィルムとガラス板との積層体)は、太陽電池とバックシートPETフィルムとの積層体として有用であり、実施例5の積層体(ゼオノアフィルムとアクリル板との積層体)は、一般的に難接着材料と言われるゼオノアフィルムの積層体として有用であり、実施例6の積層体(TACフィルムとポリカーボネート板との積層体)は、偏光板と前面板との積層体として有用である。
【0126】
[評価]
実施例および比較例で得られた、積層体について下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
<初期接着試験>
JIS K5600に準拠した碁盤目剥離試験後の剥がれ状態を目視にて確認し、以下の基準に基づいて判定した。
○;剥がれが発生していない面積が80%以上
△;剥がれが発生していない面積が50?80%
×;剥がれが発生していない面積が50%以下
【0128】
<湿熱耐久性>
85℃/85%RH環境下で100時間静置した後の剥がれ状態を目視にて確認し、以下の基準に基づいて判定した。
○;剥がれが発生していない面積が80%以上
△;剥がれが発生していない面積が50?80%
×;剥がれが発生していない面積が50%以下
【0129】
<耐水性>
60℃の温水中で6時間静置した後の剥がれ状態を目視にて確認し、以下の基準に基づいて判定した。
○;剥がれが発生していない面積が80%以上
△;剥がれが発生していない面積が50?80%
×;剥がれが発生していない面積が50%以下
【0130】
【表2】



(2)上記(1)の記載アないしオから、引用文献1には、請求項8に係る発明(請求項1及び請求項7に記載された発明特定事項を具備するもの)に対応する具体的実施例(実施例4)として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、引用文献1全体の記載からみて、各成分の分量の単位は、「質量部」と理解される。)。

「硬化物層により形成された接着剤層を介して2枚の部材を積層してなる積層体であって、
上記硬化物層は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射してなり、
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記成分(A)?(C)からなり、
上記2枚の部材は、PETフィルムとガラス板である、
積層体。
成分(A):HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)70質量部、ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)30質量部からなるラジカル重合性化合物、
成分(B):IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)0.5質量部からなる光ラジカル発生剤、
成分(C):CPI-100P(トリアリールスルホニウム-PF_(6)塩)3.0質量部からなる光酸発生剤。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2008-158534号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0214】
[製造例1?18]
メタクリル酸メチル-無水マレイン酸-スチレン共重合体と低分子化合物(B-1)?(B-3)を用いて樹脂組成物を調製し、これをテクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW-25MG-NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を表1に示す条件に調整し押し出し成形をすることにより製造例1?3の未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。 また、表1に示す条件で得られた未延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表1に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、製造例4?7の一軸延伸フィルムを得た。
さらに、表1に示す条件で得られた一軸延伸フイルムを幅が50mmになるように切り出し、表1に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、製造例8?18の2軸延伸フィルムを得た。
【0215】
【表1】

【0216】
本願の第一発明に該当する製造例1?18の光学材料用樹脂組成物は成形加工性がよく、これを用いて製造されたフイルムはいずれも光弾性係数の絶対値が小さかった。
また、本願の第二発明に該当する製造例1、2、4、6?10、14?18のフィルムは、光弾性係数の絶対値が一段と小さく、低分子化合物(B)を配合することにより光弾性係数の絶対値を小さくすることができることが確認できた。
さらに、製造例5、7、12?18より、フイルムの縦(MD)方向と横(TD)方向の少なくとも一方の延伸倍率を120%以上とし、その上で延伸倍率差を調整することにより、Nz係数を-1.5?-0.5に制御できることが確認できた。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2013-3515号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0007】
本発明の目的は、スチレン系樹脂からなるコア層の両面にゴム粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるスキン層が積層された3層構造の位相差フィルムを有し、その表面に粘着剤層を設けた粘着剤層付き複合偏光板において、該位相差フィルムと粘着剤層との密着性に優れるとともに、ガラス基板に対して適度な粘着性と剥離性(リワーク性)を有する複合偏光板およびそれを用いた液晶表示装置を提供することにある。」

(2)「【0127】
[第2の位相差フィルム]
第2の位相差フィルム105は、そのコア層31がスチレン系樹脂からなり、その両面に、ゴム粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるスキン層32が形成されたものである。」

(3)「【符号の説明】
【0177】
100 複合偏光板、101 偏光フィルム、102 透明保護フィルム、103 第1の位相差フィルム、104 第1の粘着剤層、105 第2の位相差フィルム、106 第1の接着剤層、107 第2の接着剤層、108 第2の粘着剤層、109 セパレーター、31 コア層、32 スキン層。
【図1】




4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2010-217870号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0029】
Re、RthおよびNz係数は、市販の各種位相差計を用いて測定することができる。これらの値は、可視光の中央付近の波長で測定されるものを代表値とするのが通例であるが、本明細書でいうレターデーション値およびNz係数は、波長590nmで測定された値である。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「積層体」は、「硬化物層により形成された接着剤層を介して2枚の部材を積層してなる積層体」である。これに対して、本願発明1の「光学フィルム積層体」は、「(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと、前記(メタ)アクリル系樹脂層の表面に接着剤層を介して接着された熱可塑性樹脂フィルムとからなる光学フィルム積層体」である。
そうしてみると、引用発明の「積層体」と、本願発明1の「光学フィルム積層体」は、「接着剤層を介して接着された」「積層体」の点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「接着剤層を介して接着された、
積層体。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「積層体」について、本願発明1は、「(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと、前記(メタ)アクリル系樹脂層の表面に接着剤層を介して接着された熱可塑性樹脂フィルムとからなる光学フィルム積層体」であるのに対して、引用発明は、「硬化物層により形成された接着剤層を介して2枚の部材を積層してなる積層体であって」、「上記2枚の部材は、PETフィルムとガラス板である」点。

(相違点2)
本願発明1は、「その最大屈折率方向(遅相軸方向)の波長590nmにおける屈折率を n_(x)、面内でそれと直交する方向(進相軸方向)の波長590nmにおける屈折率をn_(y)、遅相軸方向及び進相軸方向とそれぞれ直交する厚さ方向の波長590nmにおける屈折率をnzとするとき、Nz=(n_(x)-n_(z))/(n_(x)-n_(y))で定義されるNz係数が-2から-0.5 の範囲にある屈折率異方性を有するフィルム」である「(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム」を有するに対し、引用発明は、そのようなフィルムを有しない点。

(相違点3)
「接着剤層」について、本願発明1は、「前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーを2?35重量部及び前記重合性多官能アクリレート化合物を30?60重量部含有する活性エネルギー線硬化型接着剤によって形成されており」、「前記(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーが、テトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート、アルコール部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、アルコール部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート及び
N-位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1つである」のに対して、引用発明の「接着剤層」は、その接着剤(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)の組成が異なる点。

(3)判断
事案に鑑み、相違点3のうち、「(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー」の分量について検討する。
本件出願明細書の【0057】-【0059】の記載によると、引用発明の「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に含有される「ワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)」及び「HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)」は、いずれも、本願発明1の「N-位に置換基を有する(メタ)アクリルアミド」であって、「(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー」である。
そうしてみると、引用発明の「接着剤層」は、活性エネルギー線硬化性化合物のほぼ全量が、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーである活性エネルギー線硬化型接着剤によって形成されていることとなる。
そして、引用発明は、「少なくとも2枚の部材を積層するための硬化物層を提供し得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、接着性、耐久性および耐水性を向上した硬化物層を提供し得る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化物層および積層体を提供することにある」という目的(引用文献1の【0015】)を達成することができる以上、引用発明において、接着剤層を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の成分を変更する動機付けはないといえる。
また、仮に、引用文献1の【0044】、【0045】に記載されたように、引用発明のラジカル重合性化合物として、さらに疎水性の多官能(メタ)アクリレート系モノマーであるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートをラジカル重合性化合物の合計量に対して50質量%程度を含有させたとしても、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーであるHEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)及びワスマー2MA(N-メトキシメチルアクリルアミド)の分量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全量100重量部に対し、2?35重量部とはならない。
さらに、接着剤層を、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーを2?35重量部及び重合性多官能アクリレート化合物を30?60重量部含有する活性エネルギー線硬化型接着剤によって形成することは、引用文献2-4に記載されていない。
そして、本願発明1は、相違点3に係る構成を有することにより、「(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムに熱可塑性樹脂フィルムを積層して光学フィルム積層体を製造するにあたり、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが活性エネルギー線硬化型接着剤により充分な接着力で接着され、軽量で薄膜化を達成した光学フィルム積層体が得られる」という効果(本件出願明細書の【0022】参照。)を奏するものである。
そうすると、引用発明において、相違点3に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。

(4)小括
したがって、相違点1及び2を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が、引用発明、引用文献2-4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということができない。

2 本願発明2-本願発明7について
本願発明2-本願発明7も、上記相違点3に係る本願発明1の構成を具備するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明、引用文献2-4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということができない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-11 
出願番号 特願2013-113739(P2013-113739)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小西 隆山▲崎▼ 和子吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
宮澤 浩
発明の名称 光学フィルム積層体及びそれを用いた複合偏光板  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
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