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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 F03D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 F03D
管理番号 1341913
審判番号 不服2017-6346  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-01 
確定日 2018-07-04 
事件の表示 特願2016- 29610「垂直軸型風車」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016-114063〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本願は、2010年(平成22年)11月30日を国際出願日とする特願2012-546603号の一部を平成28年2月19日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月10日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年10月14日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年12月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、この手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)が平成29年2月1日付け補正の却下の決定(以下「本件決定」という。)において却下されるとともに、本件決定と同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.本件補正の適否

請求人は審判請求書において、本件決定において却下された本件補正は適法なものであり、この却下を取り消すべき旨主張しているので(審判請求書4.参照)、本件補正の適否について以下検討する。

1.本件補正の内容

(1)本件補正後の請求項1

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおり補正するものである。なお、下線は当審が付したものであり、本件補正前の記載からの変更箇所を示す。

「【請求項1】
円筒状回転軸と、
円筒状回転軸に上下二か所の翼支持腕にて複数支持される翼と、
前記円筒状回転軸と軸を共有する発電機と、
からなる垂直軸型風車であって、
前記翼と前記円筒状回転軸の間隔は、前記翼の鉛直方向の長さ以下であり、
前記発電機は、円筒状回転軸内で円筒状回転軸とともに回転する少なくとも断面視でケース状に形成されるとともに高さ方向で前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍にあり、このケース状部を介して円筒状回転軸を軸支する後記する軸に回転可能に支持されており、
前記円筒状回転軸を軸支する軸は、前記二か所の翼支持腕の上方を回転可能に軸支するように構成され、前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍にて軸の直線方向に渡されたボルトを用いたナットによる継ぎ足し構造となっている垂直軸型風車。」

(2)本件補正前の請求項1

本件補正前である、平成28年8月25日提出の手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
円筒状回転軸と、
円筒状回転軸に上下二か所の翼支持腕にて複数支持される翼と、
前記円筒状回転軸と軸を共有する発電機と、
からなる垂直軸型風車であって、
前記翼と前記円筒状回転軸の間隔は、前記翼の鉛直方向の長さ以下であり、
前記発電機は、高さ方向で前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍にあり、
円筒状回転軸を軸支する軸は、前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍にてナットによる継ぎ足し構造となっている垂直軸型風車。」

2.本件決定における本件補正の却下の理由

本件決定における本件補正の却下の理由の概要は次のとおりである。
本件補正により請求項1に記載された、発電機のケース状に形成されているものが「円筒状回転軸内で円筒状回転軸とともに回転する」こと、「このケース状部を介して円筒状回転軸を軸支する後記する軸に回転可能に支持されて」いること、そして、前記円筒状回転軸を軸支する軸が、「前記二か所の翼支持腕の上方を回転可能に軸支するように構成され」ていることは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に何ら記載されておらず、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)の規定に違反するものである。

3.新規事項の追加についての請求人の主張

請求人は審判請求書において、本件補正が新規事項を追加するものではないことの説明として、以下のとおり主張している。

「以下に、本願の図10を示し出願人が行った補正について改めてご説明します。なお、説明のため符号(A?L)を付しました。
【図10】

本願の図10には、円筒状回転軸に上下二か所の翼支持腕にて支持される翼が記載されており、下方の翼支持腕(A)の延伸部分(B)は、発電機の外郭を構成するケース状部(C)と円筒状回転軸内にて接続部材(D)(ケース状部から円筒状回転軸内の下方に伸びている部材)を介して接続しています。また、図8には、下方の翼支持腕(A)の延伸部分(B)と接続部材(D)とがボルト及びナット(E)により接続されていることが記載されています。これは、下記に参照として示す図1(特開2002-266830を引用)に記載されているようにボルト及びナットにて部材を固定することを示す一般的な図の有り様と同様の記載です。
【図1】

上方の翼支持腕(F)についても、円筒状回転軸内にて延伸部分(G)とボルト及びナット(H)により接続される接続部材(I)を介して軸(11)に支持されている態様が図10に記載されています。
ここで、当初明細書の段落0044には「「発電機」は、円筒状回転軸の軸回転を電力に変換する機能を有する。本実施形態の発電機は円筒状回転軸と軸を共有しているため、円筒状回転軸の回転力を直接的に利用することができ、効率的に発電を行うことが可能になる。発電機の具体例としては、例えば永久磁石式の交流発電機などを用いることが考えられる。」と記載されています。また、当初明細書の段落0016には、円筒状回転軸を軸支する軸(11)が支柱としての機能を果たすものであるが記載されており、この軸自体は回転することなく基台や地盤などに固設されるものであることが明らかであることから、この支柱となる円筒状回転軸を軸支する軸(11)は、上方の翼支持腕(F)をこの翼支持腕の延伸部分(G)とボルト及びナット(H)で接続される接続部材(I)を介して円筒状回転軸とともに回転可能に軸支することは明らかです。そして、発電機のケース状部(C)は下方の翼支持腕(A)と接続部材(D)を介して接続していることから円筒状回転軸の回転に伴い円筒状回転軸を支持する軸(11)に対して回転します。すなわち、発電機のケース状部(C)は円筒状回転軸を支持する軸(11)に回転可能に軸支されるということになります。
そして、図10における発電機のケース状部(C)の外側に斜め格子状の網掛けがなされた箇所(J)は、下記に参照として示す図2(特開2009-38944を引用)に記載されているように銅線を巻線して発電コイル(引用した図2の符号26)を形成していることを示す一般的な図の有り様と同様に記載したものです。そして、ケース状部とともに回転する発電コイルと円筒状回転軸を軸支する軸に固設されている磁石(L)とで発電がおこなわれます。
【図2】

以上の通り、上記の補正に係る事項はいずれも図10を見た当業者であれば記載されているのと同然であると理解できる事項です。また、換言すれば上記補正に係る事項は、図10に記載されている構成を言葉で表現したものに過ぎず、係る補正は何ら新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかです。したがって、上記の補正はいずれも新規事項を追加するものではないと思料いたします。」

4.本件補正の適否についての当審の判断

(1)新規事項の追加についての判断

本件補正は、本件補正前の請求項1に対し、以下の補正事項を追加する補正を含むものである。

〈補正事項〉
「円筒状回転軸を軸支する軸」は「上下二か所」の「翼支持腕」の「上方」を「回転可能に軸支」し、かつ「発電機」の「ケース状部」を介して「発電機」を「回転可能に支持」するものであること。

そこで、補正事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるかについて検討する。

ア.当初明細書等の記載事項

当初明細書等には、以下の(ア)ないし(サ)に示す記載事項がある。

(ア)「【0001】
本発明は、風力発電などに用いられる垂直軸型風車に関する。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の垂直軸型風車では微風速域において揚力よりも抗力が強く作用するため、高い回転起動性を得ることが難しかった。そこで、本発明は、微風速域においても効率的に回転させることが可能な垂直軸型風車を提案することを目的とする。」

(ウ)「【0010】
<<実施形態1>>
【0011】
<概要>
本実施形態の垂直軸型風車は、翼と円筒状回転軸の間隔が、翼の鉛直方向の長さ以下であることを特徴とする。当該構成とすることにより、翼を後縁側に引きずる力(誘導抗力)が減少し、抗力に対する揚力の比率が大きくなるため、翼の回転起動性が高くなる。
【0012】
<構成>
図1と図2は、本実施形態の垂直軸型風車の形状の一例を示す平面図と正面図である。これらの図に示されているように、本実施形態の「垂直軸型風車」は、「円筒状回転軸」1と、「円筒状回転軸」に「翼支持腕」2にて支持される複数の「翼」3と、からなる。
【0013】
「円筒状回転軸」1は、翼の回転軸としての機能と、水平方向から吹いてくる風をその側面で受け止めて、軸周りの気流を形成する機能を有する。さらに、「翼の下面」31に対向する面としての役割を担い、翼と円筒状回転軸の間の気流の圧力を高める機能を有する。
・・・
【0016】
図3と図4は、本実施形態の垂直軸型風車の内部構造の一例を示す側面図と平面図である。図3に示すように、「円筒状回転軸」は、「支柱部材」11と、支柱部材と翼支持腕の部材を連結する「連結部材」12と、支柱部材などを覆うための「円筒カバー部材」13などからなる構成が考えられる。また、円筒カバー部材には翼支持腕の部材を通すための「アーム取出孔」14が設けられている。
・・・
【0018】
「翼支持腕」2は、翼と円筒状回転軸をつなぎ、翼による回転力を円筒状回転軸に伝達する機能を有する。「翼支持腕」は、例えば図3及び図4に示すように、円筒状回転軸に連結される二本の「アーム部材」21A・21Bと、アーム部材を覆う一組の「アームカバー部材」22A・22Bなどからなる構成が考えられる。」

(エ)「【0031】
<<実施形態2>>
【0032】
<概要>
本実施形態の垂直軸型風車は、実施形態1の特徴に加えて、翼支持腕が上下二か所で翼を支持することで、翼支持腕と円筒状回転軸と翼とによって囲まれる整流窓が形成されることを特徴とする。・・・
【0035】
図9は本実施形態の垂直軸型風車の構造の一例を示す側面図である。この図に示すように、「翼支持腕」が二本の「アーム部材」21A・21B(21C・21D)と「アームカバー部材」22A・22B(22C・22D)とからなる場合、アームカバー部材を双曲面として、整流窓を正面から見た場合に略0字型になるようにすることが考えられる。」

(オ)「【0040】
<<実施形態3>>
【0041】
<概要>
【0042】
本実施形態の垂直軸型風車は、実施形態1又は2の構成に加えて、円筒状回転軸と軸を共有する発電機を有することを特徴とする。当該構成により、円筒状回転軸の回転をダイレクトに発電機に伝達することが可能になり、効率的に発電を行うことが可能になる。
【0043】
<構成>
図10は、本実施形態の垂直軸型風車の構造の一例を示す図である。基本的な構成は、実施形態1又は2と同様であるが、本実施形態の垂直軸型風車は、「円筒状回転軸」1と「軸」11を共有する「発電機」5を有することを特徴とする。
【0044】
「発電機」は、円筒状回転軸の軸回転を電力に変換する機能を有する。本実施形態の発電機は円筒状回転軸と軸を共有しているため、円筒状回転軸の回転力を直接的に利用することができ、効率的に発電を行うことが可能になる。発電機の具体例としては、例えば永久磁石式の交流発電機などを用いることが考えられる。発電機により発電された電力は図示しない配線によって取り出される。当該電力は、照明器具などの電気機器にて消費されたり、バッテリーに充電されたりすることが考えられる。」

(カ)「【0045】
図11は、本実施形態の垂直軸型風車の構造の他の例を示す図である。発電機は図10に示したように円筒状回転軸の内部に配置することも可能であるが、例えば発電機の形状が大きく、円筒状回転軸の内部に配置できない場合などは、図11に示すように円筒状回転軸の下方に配置する構成も可能である。」

(キ)「【実施例1】
【0049】
本実施例の垂直軸型風車は、円筒状回転軸と、翼を上下二か所で支持する翼支持腕と、回転方向にて等間隔に支持される三枚翼と、円筒状回転軸と軸を共有し円筒状回転軸の内部に配置される発電機と、から構成される。本実施形態の垂直軸型風車の形状は、図7及び図8に示す例と同様であり、構造は図10に示す例と同様である。
【0050】
円筒状回転軸は、支柱部材と、支柱部材と翼支持腕を連結する連結部材と、支柱部材などを覆う中空の円筒カバー部材と、から構成される。・・・
【0053】
発電機は永久磁石式の三相交流発電機であり、円筒状回転軸の内部に配置されている。ここで、発電機のボディと翼支持腕はアルミニウムの連結部材で連結されている。」

(ク)「【図3】



(ケ)「【図9】



(コ)「【図10】




(サ)「【図11】



イ.補正事項についての判断

当初明細書等では、「風力発電などに用いられる垂直軸型風車」(段落0001)に関する発明であって(上記(ア)参照)、「微風速域においても効率的に回転させる」(段落0005)ことを課題とすることが記載されている(上記(イ)参照)。そして、当初明細書等では、発明の実施形態として、実施形態1ないし3が記載されており、実施形態1は基本的な構成であって「翼と円筒状回転軸の間隔が、翼の鉛直方向の長さ以下であることを特徴とする」(段落0011)もの(上記(ウ)及び(ク)参照)、実施形態2は「実施形態1の特徴に加えて、翼支持腕が上下二か所で翼を支持することで、翼支持腕と円筒状回転軸と翼とによって囲まれる整流窓が形成されることを特徴とする」(段落0032)もの(上記(エ)及び(ケ)参照)、そして実施形態3は「実施形態1又は2の構成に加えて、円筒状回転軸と軸を共有する発電機を有することを特徴とする」(段落0042)ものであり、実施形態3における垂直軸型風車の構造として、図10に図示された発電機を円筒状回転軸の内部に配置した構成(上記(オ)及び(コ)参照)、及び図11に図示された発電機を円筒状回転軸の下方に配置する構成が記載されている(上記(カ)及び(サ)参照)。更に、当初明細書等には実施例1が記載されており、その構造は実施形態3の図10記載の構造と同様であるとされている(上記(キ)参照)。
本件補正後の請求項1では、「発電機」が「高さ方向で前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍」にある構成であることが記載されており、当該構成は、当初明細書等では実施形態3における図10記載の構成に対応するものであるが、上記のとおり実施形態3は実施形態1又は2を基礎とするものであって、また図10記載の構成による実施例1も記載されていることから、補正事項についての検討に当たっては、当初明細書等における実施形態3についての記載に加えて、実施形態1及び2並びに実施例1についての記載も合わせて参照する必要がある。
まず、補正事項における「円筒状回転軸を軸支する軸」という記載について検討すると、当初明細書等には「円筒状回転軸を軸支する軸」という文言は存在せず、実施形態3の図10記載の構成において、どの部分が「円筒状回転軸を軸支する軸」に当たるものであるのかを明示的に示す記載はない。
「円筒状回転軸」については、当初明細書等では、実施形態1の説明において「図3に示すように、「円筒状回転軸」は、「支柱部材」11と、支柱部材と翼支持腕の部材を連結する「連結部材」12と、支柱部材などを覆うための「円筒カバー部材」13などからなる構成が考えられる。」(段落0016)と記載され、更に実施例1の説明において「円筒状回転軸は、支柱部材と、支柱部材と翼支持腕を連結する連結部材と、支柱部材などを覆う中空の円筒カバー部材と、から構成される。」(段落0050)と記載されていることから、「円筒状回転軸」とは、その構成要素として上記の支柱部材、連結部材及び円筒カバー部材を含むものであって、「円筒状回転軸を軸支する軸」とは、具体的には、「円筒状回転軸」の構成要素である支柱部材、連結部材及び円筒カバー部材を「軸支する軸」ということになるが、支柱部材、連結部材及び円筒カバー部材の全てに対し「軸支する軸」は、当初明細書等には記載も示唆もされていない。
連結部材と支柱部材については、当初明細書等には、実施形態1及び実施例1の説明において、「支柱部材と翼支持腕の部材を連結する「連結部材」12」(段落0016)、及び「支柱部材と翼支持腕を連結する連結部材」(段落0050)と記載されており、更に図10記載の構成を図3記載の構成と照らして検討すると、図10記載の構成において、軸11と、上下二か所の翼支持腕のうちの上方の翼支持腕とを連結する、図3記載の構成における連結部材12と同様の部材(仮に「部材イ」という。)が存在することが看取できる。この部材イは、請求人が審判請求書に記載した、図10に対して説明のための符号を付した図(上記3.参照。この図を以下「図10説明図」という。)において、符号Iを付した部分に当たり、当該符号Iを付した部分について、請求人は審判請求書において「接続部材(I)」と記載している。しかしながら、部材イは、上記のとおり図3記載の構成における連結部材12と同様の部材と考えられるので「連結部材」というべきである。そして、軸11は、円筒状回転軸の構成要素である当該連結部材を支持する軸であるとはいえる。
軸11について、当初明細書等には、翼及び翼支持腕の回転に伴い軸11が回転するものであるか、又は回転せず固定されたものであるかについて直接的な記載は存在しない。しかしながら、当初明細書等の「「円筒状回転軸」1と「軸」11を共有する「発電機」5」(段落0043)及び「本実施形態の発電機は円筒状回転軸と軸を共有しているため、円筒状回転軸の回転力を直接的に利用することができ」(段落0044)との記載からすれば、軸11と円筒状回転軸1は一体として回転するといえる。更に、軸11は上方の翼支持腕と連結部材によって「連結」されるものであって、この「連結」という用語は、一般的には、2つの部材を連ね結ぶことや繋ぎ結ぶことという意味であり、「連結」された当該2つの部材の間で「軸支」、すなわち回転可能に支持されるという関係が生じるということまでを意味するものではなく、むしろ、当該2つの部材の一方が回転すれば他方も回転するものであるという関係を意味すると解釈するのが自然である。更に、当初明細書等の記載では、垂直軸型風車が「風力発電などに用いられる」(段落0001)ものとされており、実施形態1の説明において、「「円筒状回転軸」は、「支柱部材」11と、支柱部材と翼支持腕の部材を連結する「連結部材」12と、支柱部材などを覆うための「円筒カバー部材」13などからなる構成が考えられる。」(段落0016)、及び「「翼支持腕」2は、翼と円筒状回転軸をつなぎ、翼による回転力を円筒状回転軸に伝達する機能を有する。」(段落0018)と記載されていることから、翼3による回転力は円筒状回転軸1に伝達されるものであって、具体的には、翼支持腕2及び連結部材12を介して支柱部材11に伝達され、支柱部材11に付された回転力が垂直軸型風車の出力として風力発電などに用いられると考えられる。また、当初明細書等に記載された実施形態3のうち、図11に図示された発電機5を円筒状回転軸1の下方に配置する構成においても、軸11の下方に配置された発電機5まで翼の回転力を伝達するため、軸11は翼の回転力を受けて回転する必要があるものである。以上のことから、実施形態3の図10記載の構成における軸11も同様に翼の回転力を受けて回転するものであると考えるのが当初明細書等の記載に接した当業者にとって自然なことであるといえる。
更に、当初明細書等には「発電機のボディと翼支持腕はアルミニウムの連結部材で連結されている。」(段落0053)という記載があり、下方の翼支持腕と発電機のボディは「連結」されているということから、上記と同様に、下方の翼支持腕の回転に伴い、この「発電機のボディ」も回転するものであるといえる。前記「ボディ」は請求項1記載の「ケース状部」に対応すると考えられ、図10記載の構成では、請求人が審判請求書に記載した図10説明図において符号Cが付された部分に当たり、また、前記「アルミニウムの連結部材」は符号Dが付された部分に当たるといえる(符号Dが付された部材は、審判請求書では「接続部材(D)」と記載されているが、明細書の段落0053の上記記載に基づき「連結部材」というべきである。)。そして、図10の記載から、発電機のケース状部は、軸11の端部に接続されたフランジ状部材にボルトによって連結されることが看取できることから(下記の【図10一部拡大図】を参照。本図は図10を基に当審が作成した。)、下方の翼支持腕の回転力も、連結部材、発電機のケース状部及び上記フランジ状部材を介して、軸11に伝達されると考えられる。

【図10一部拡大図】


図10の記載から看取できる事項を更に検討すると、発電機のケース状部の内部に、軸11に連なる、軸11より小径の軸(以下「小径軸M」という。なお、図10説明図で付された符号との重複を避けるため記号Mを用いた。当審が作成した下記の【参考図】に、上記図10一部拡大図において小径軸Mに該当する部分を濃灰色で示した。)が存在し、発電機の紙面上下方向での中央部にある、紙面左右方向に幅広(ケース状部の幅よりはやや小さい幅)の部材を小径軸Mは通過し、更に小径軸Mは発電機のケース状部に接続されたフランジ状部材を通って、軸11及び小径軸Mよりも大径の軸(以下「大径軸N」という。当審が作成した下記の【参考図】に、上記図10一部拡大図において大径軸Nに該当する部分を薄灰色で示した。)の内部まで続き(図10において大径軸Nの内部に記載された紙面上下方向の破線参照)、大径軸Nには紙面左右方向に渡されたボルトと当該ボルトにはめられたナットが設けられていることが看取できる。また、紙面垂直方向にもボルトの頭部又はナットが看取できることから、大径軸N及び小径軸Mは、紙面左右方向及び紙面垂直方向に渡されたボルト及びナットによって締結された構造、つまり請求項1に記載された「継ぎ足し構造」になっていると考えられる。そうすると、小径軸Mは、回転する軸11に連なるものであって、回転するケース状部とフランジ状部材を介して接続されたものであり、また、大径軸Nも、小径軸Mと締結され、回転するケース状部とフランジ状部材を介して接続されたものであるから、小径軸M及び大径軸Nは軸11と一体となって回転すると考えるのが自然であるといえる。軸11を回転軸としながら小径軸M及び大径軸Nを固定軸として構成したことを示す記載、また当該構成を可能とする具体的な構造を開示する記載は当初明細書等には存在しない。

【参考図】


以上のとおり、上方の翼支持腕及び連結部材並びに下方の翼支持腕、連結部材及び発電機のケース状部の回転に伴い、軸11は回転するものであるから、補正事項の「円筒状回転軸を軸支する軸」という記載を円筒状回転軸の構成要素である連結部材を軸支する軸と解釈したとしても、軸11は、連結部材を「軸支」するものでなく、上方の翼支持腕を「回転可能に軸支」するものでもなく、発電機のケース状部を介して発電機を「回転可能に支持」するものでもない。また、ボルト及びナットの締結による「継ぎ足し構造」となっている小径軸M及び大径軸Nは、上記のとおり、軸11、翼支持腕及び発電機のケース状部と共に回転するものであると考えられるので、円筒状回転軸を構成する支柱部材としての軸11を支持するものであるとはいえるものの「軸支」するものであるとはいえず、更に、上方の翼支持腕を「回転可能に軸支」するものでもなく、発電機のケース状部を介して発電機を「回転可能に支持」するものでもない。したがって、図10の記載から看取できる、円筒状回転軸の回転中心に存在する軸11、小径軸M及び大径軸Nのいずれを根拠としても、補正事項が当初明細書等に記載されているということはできない。
請求人は審判請求書において、「当初明細書の段落0016には、円筒状回転軸を軸支する軸(11)が支柱としての機能を果たすものであるが記載されており、この軸自体は回転することなく基台や地盤などに固設されるものであることが明らかであることから、この支柱となる円筒状回転軸を軸支する軸(11)は、上方の翼支持腕(F)をこの翼支持腕の延伸部分(G)とボルト及びナット(H)で接続される接続部材(I)を介して円筒状回転軸とともに回転可能に軸支することは明らかです。」と主張している。しかし、上記のとおり、実施形態1において、支柱部材11に付された回転力が垂直軸型風車の出力として風力発電などに用いられると考えられるので、支柱部材11は「支柱」(なお、その一般的な意味は「ささえる柱・棒。つっかい柱。つっぱり。」である。)としての機能を果たすものであるとしても、請求人が主張するような、支柱部材11が回転することなく基台や地盤などに固設されるものであるということまで、当初明細書等に記載されているとはいえず、「支柱となる円筒状回転軸を軸支する軸(11)は、上方の翼支持腕(F)をこの翼支持腕の延伸部分(G)とボルト及びナット(H)で接続される接続部材(I)を介して円筒状回転軸とともに回転可能に軸支することは明らかです。」という請求人の主張は採用することができない。もし、支柱部材11が回転しないものであれば、垂直軸型風車で得られた回転力を出力する回転軸がほかに存在することになるが、そのような回転軸が存在することは、当初明細書等には何ら記載されていない。
また、請求人は審判請求書において、「発電機のケース状部(C)は・・・円筒状回転軸を支持する軸(11)に対して回転します。すなわち、発電機のケース状部(C)は円筒状回転軸を支持する軸(11)に回転可能に軸支されるということになります。」、及び「図10における発電機のケース状部(C)の外側に斜め格子状の網掛けがなされた箇所(J)は、・・・銅線を巻線して発電コイル・・・を形成していることを示す一般的な図の有り様と同様に記載したものです。そして、ケース状部とともに回転する発電コイルと円筒状回転軸を軸支する軸に固設されている磁石(L)とで発電がおこなわれます。」と主張している。しかし、当初明細書等には、図10記載の構成において発電機のコイル及び磁石がどの部分に該当するのかを明示する記載はなく、発電機のコイル及び磁石が図10に記載されているのか否かも判然としない。図10には確かに斜め格子状の網掛けがなされた箇所の記載があるものの(上記【図10一部拡大図】参照)、回転電機(発電機及び電動機)を示す図面において、斜め格子状の網掛けがなされた箇所が必ずコイルを表すとは限らない(例えば、特開2010-63205号公報(以下「参考文献」という。)の図1においてステータコイル28(段落0040参照)の箇所は斜格子で示されておらず、図11においてコイルではない部分である突部72(段落0061参照)の箇所が斜格子で示されている。下記の【参考文献図1】及び【参考文献図11】を参照。)。更に永久磁石式の三相交流発電機における回転子は必ずしも発電コイルである(永久磁石ではない)とは限らない(つまり、発電コイルは回転子及び固定子のいずれもあり得る)ことは当業者にとって出願時の技術常識であるといえるので、図10の記載から、当該箇所(J)が発電コイルであるということはできない。更に、請求人が審判請求書に記載した図10説明図において符号Lは付されていないため必ずしも明らかではないが、審判請求書において「磁石(L)」が「円筒状回転軸を軸支する軸に固設されている」と記載され、また「円筒状回転軸を軸支する軸(11)は、上方の翼支持腕(F)を・・・回転可能に軸支する」及び「発電機のケース状部(C)は円筒状回転軸を支持する軸(11)に回転可能に軸支される」と記載されていることから、「磁石(L)」が固設されているのは、「円筒状回転軸を軸支する軸」である軸11、より詳細には、発電機のケース状部の内部にある小径軸Mの部分であるとの主張であると考えられる。しかし、上記で検討したとおり、当初明細書等の記載によれば、軸11及び小径軸Mは発電機のケース状部と共に回転するものであると考えられるので、発電機のケース状部が軸11に回転可能に軸支されて発電が行われるという請求人の主張は採用できない。

【参考文献図1】


【参考文献図11】


ウ.新規事項の追加についての判断のむすび

したがって、補正事項は、当初明細書等に明示的に記載された事項ではなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもない。補正事項を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)独立特許要件についての判断

請求人は平成28年12月16日提出の意見書において、「請求項1における発電機及び円筒状回転軸を軸支する軸に係る構成を、以下のようにより減縮して改める補正を行いました。」と記載しており、当該記載は、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号(限定的減縮)を目的とするものに該当する旨を主張するものであると考えられる。
仮に本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでなく、同法第17条の2第5項第2号を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、予備的に検討する。

ア.本件補正発明

本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される、上記1.(1)に記載のとおりのものである。

イ.明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載内容

本願の明細書及び図面については、本願出願時から補正されていないため、本件補正後における明細書の発明の詳細な説明及び図面は、当初明細書等と記載内容が同じであり、上記(1)ア.で示した記載事項(ア)ないし(サ)を有するものである。

ウ.実施可能要件についての判断

本件補正発明は「垂直軸型風車」という「物の発明」である。「物の発明」について発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすためには、請求項に記載された当該物の発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」という。)の各々が、相互に矛盾せず、全体として当該発明を理解し得るように発明の詳細な説明に記載されなければならず、更に、当該物の発明についての発明特定事項の各々がどのような構造であるのか、当業者がその物を作成し、使用するために必要となる程度まで記載されなければならない。
そうすると、本件補正発明における発明特定事項である「発電機」については、発明の詳細な説明には、「垂直軸型風車」においてどのように機械力が入力されるのか、そして当該機械力からどのような構造によって電力を発生するのか、具体的には、入力される機械力が風車の回転に基づく回転力であれば、電力発生を可能とする発電機の回転子及び固定子の構造、及び当該回転力が回転子に伝達されるまでの構造が、当業者が出願時の技術常識に基づき理解できる程度まで記載されていなければならない。
本件補正発明は、「発電機」が「前記円筒状回転軸と軸を共有」するものであって、「高さ方向で前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍」にある構成のものであるので、当該構成は、発明の詳細な説明では実施形態3における図10(記載事項(コ))記載の構成に対応するものである。この実施形態3の図10記載の構成における発電機については、発明の詳細な説明には、「円筒状回転軸と軸を共有する発電機」の構成であり、当該構成により「円筒状回転軸の回転をダイレクトに発電機に伝達することが可能」であって、「「発電機」は、円筒状回転軸の軸回転を電力に変換する機能を有する」ものであり、発電機は「円筒状回転軸の内部に配置」され、「発電機のボディと翼支持腕はアルミニウムの連結部材で連結」されるものであることが記載されている(記載事項(オ)ないし(キ)参照)。
しかし、発明の詳細な説明には、図10記載の構成における発電機について、どの部分が回転子及び固定子であって、それぞれどのような構造を有するのか、発明の詳細な説明には何ら記載されておらず不明である。
また、発明の詳細な説明には、発電機が円筒状回転軸と軸を共有し、円筒状回転軸の回転力を直接的に利用して電力に変換することまでは記載されていても、発電機で直接的に利用される回転力とは、具体的に円筒状回転軸を構成する支柱部材、連結部材及び円筒カバー部材(段落0050参照)のうちのどの部材に付された回転力であって、当該回転力により回転子を固定子に対して回転させる構造はどのようなものであるのか、発明の詳細な説明には何ら記載されておらず不明である。円筒状回転軸の構成要素のうちの支柱部材について、発明の詳細な説明に記載された実施形態1では符号11が付され、上記(1)イ.で検討したとおり、翼支持腕の回転に伴い回転するものであって、また、実施形態3において円筒状回転軸1と発電機5とで共有とされた軸11も翼支持腕の回転に伴い回転するものであるので、実施形態3における軸11は円筒状回転軸の構成要素である支柱部材に当たると考えられ、図10の記載から軸11と発電機5とが連続して配置されたものであることが看取できることから、発電機5が電力変換に際し直接的に利用する円筒状回転軸の回転力とは、具体的には軸11の回転力と考えることができる。しかしながら、上記(1)イ.で検討したように、発電機のケース状部、軸11及び小径軸Mは共に回転すると考えられる。そうすると、図10記載の構成における発電機において、その回転子は、回転部分であるケース状部又は小径軸Mに設けられるとしても、固定子が発電機のどの部分に設けられるのか、その構造が不明であって、その結果、本件補正発明における「発電機」において直接的に利用される回転力とは、円筒状回転軸の構成要素のうちのどの部材に付された回転力であるのか、更に、当該回転力により回転子を固定子に対して回転させて発電を可能とする構造はどのようなものであるのかが不明である。
機械入力が回転力である発電機は、当該回転力を受けて回転する回転子と、回転せず固定された固定子を有するものであることが技術常識であって、この技術常識に基づいて図10記載の構成における発電機5も発電のためには必ず回転部材と固定部材が存在するとして、図10の記載から看取できる、発電機のケース状部と小径軸Mのいずれを固定部材として考えても、上記のとおり、発明の詳細な説明の記載から導かれる事項と両立しないため、発明の詳細な説明は、発明特定事項の各々が相互に矛盾せずに全体として本件補正発明を理解し得るように記載されているとはいえない。
請求人は審判請求書において、「図10における発電機のケース状部(C)の外側に斜め格子状の網掛けがなされた箇所(J)」は銅線を巻線した発電コイルであって、「ケース状部とともに回転する発電コイルと円筒状回転軸を軸支する軸に固設されている磁石(L)とで発電がおこなわれます。」と主張しているが、上記(1)イ.で記載したとおり、図10の記載から、当該箇所(J)が発電コイルであるということはできず、また、小径軸Mは発電機のケース状部と共に回転すると考えられるので、小径軸Mが発電機の固定部材であるとする請求人の主張は採用できない。

オ.独立特許要件についての判断のむすび

したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分になされたものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件補正発明は特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3)本件補正の適否についてのむすび

以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものであり、本件決定における本件補正の却下は妥当であるといえる。

仮に、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでなく、同法第17条の2第5項第2号を目的とするものに該当するとしても、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものであり、本件決定は本件補正を却下したその結論において誤りはない。

第3.本願発明

本件補正は却下されたものであるので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年8月25日に提出された手続補正書でした補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.1.(2)に記載のとおりのものである。

第4.原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、平成28年10月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び理由2であって、その理由1のうち実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)に係る理由の概要は次のとおりである。
請求項1記載の「前記円筒状回転軸を軸支する軸は、前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍にてナットによる継ぎ足し構造」であって、図8に開示された前記円筒状回転軸(1)内に前記軸(11)と発電機(5)が設けられている構成の場合、図8を参酌するに、発電機(5)内にある発電機の回転子のような円板は、前記軸(11)に設けられており、かつ前記円板と上下方向に間隔を有し配置されている外周が先細りとなっている円板も前記翼支持腕と連結されているため、2つの円板がともに回転することとなり、前記発電機(5)はどの様な構成により発電することが可能となるのか理解することができないから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
なお、上記拒絶理由通知書の記載では、「図10」ではなく「図8」を参照して、上記拒絶の理由が示されているが、図8は発電機を有しない実施形態2を示す図であって、本願の図面において「前記円筒状回転軸(1)内に前記軸(11)と発電機(5)が設けられている構成」を示す図は図10のみであることから、上記拒絶理由通知書の記載における「図8」は「図10」の誤記であることは明らかであり、更に、審判請求書において図10の記載に基づき実施可能要件を満たしている旨の主張がされていることから(上記第2.4.(2)ウ.参照)、当該誤記は、請求人においてその誤り及び正しい記載を十分に認識し得たものであったといえる。

第5.当審の判断

1.明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載内容

本願の明細書及び図面については、本願出願時から補正されていないため、明細書の発明の詳細な説明及び図面は、当初明細書等と記載内容が同じであり、上記第2.4.(1)ア.で示した記載事項(ア)ないし(サ)を有するものである。

2.判断

本願発明における発明特定事項である「発電機」については、発明の詳細な説明には、「垂直軸型風車」においてどのように機械力が入力されるのか、そして当該機械力からどのような構造によって電力を発生するのか、具体的には、入力される機械力が風車の回転に基づく回転力であれば、電力発生を可能とする発電機の回転子及び固定子の構造、及び当該回転力が回転子に伝達されるまでの構造が、当業者が出願時の技術常識に基づき理解できる程度まで記載されていなければならない。この点は、上記第2.4.(2)ウ.で検討した、本件補正発明について発明の詳細な説明に求められる記載要件と何ら変わるものではない。
また、本願発明は、「発電機」が「前記円筒状回転軸と軸を共有」するものであって、「高さ方向で前記上下二か所の翼支持腕の間の中心近傍」にある構成のものであるので、当該構成は、発明の詳細な説明では実施形態3における図10記載の構成に対応するものであって、この点も本件補正発明と同じである。
そうすると、上記第2.4.(2)ウ.に記載した、本件補正発明について発明の詳細な説明に求められる記載要件が満たされていないと判断した理由によって、本願発明についても発明の詳細な説明に求められる記載要件が満たされていないといえる。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

第6.むすび

以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-10 
結審通知日 2018-05-11 
審決日 2018-05-23 
出願番号 特願2016-29610(P2016-29610)
審決分類 P 1 8・ 561- ZB (F03D)
P 1 8・ 536- ZB (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀之  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 永田 和彦
藤井 昇
発明の名称 垂直軸型風車  
代理人 工藤 一郎  
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