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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C09J
管理番号 1341953
異議申立番号 異議2017-701084  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-17 
確定日 2018-05-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6128970号発明「接着剤組成物、接着フィルム、貼付方法、および処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128970号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第6128970号の請求項1?15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6128970号の請求項1?15に係る特許についての出願は、平成25年6月3日(優先権主張 平成24年8月13日)に特許出願され、平成29年4月21日に特許権の設定登録がされ、同年5月17日にその特許公報が発行され、その請求項1?15に係る発明の特許に対し、平成29年11月17日に袖岡恭子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 1月26日付け 取消理由通知
同年 3月26日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 3月30日付け 通知書
同年 5月 2日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
平成30年3月26日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6128970号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1?15について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?2のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、
上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。」とあるのを、
「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、 上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、
上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の明細書の段落0079に、
「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法も本発明の範囲に含まれる。」とあるのを、
「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法も本発明の範囲に含まれる。」に訂正する。

3.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的
訂正事項1の前段の訂正事項は、訂正前の請求項1の「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物」を「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」として、その接着剤組成物の範囲を「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去」するためのものに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1の後段の訂正事項は、訂正前の請求項1の「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」を「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」として、訂正前の請求項1の「220℃における貯蔵弾性率(G’)」及び「220℃における損失弾性率(G”)」の各々が、具体的には「サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したとき」の値であることを明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物」を「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」とすることにより「特許請求の範囲の減縮」をするとともに、訂正前の請求項1の「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」を「上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていること」とすることにより「明瞭でない記載の釈明」をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.特許明細書等に記載した事項の範囲内
訂正事項1の前段の訂正事項について、本件特許明細書の段落0080には「本発明に係る接着剤組成物によって接着されたウエハと支持体とを、上記の反応層を変質すること等によって分離した後に、接着層を除去する場合、上述の溶剤を用いれば容易に溶解して除去することができる。」との記載があり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1には「ウエハと支持体とを接着するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、」との記載があるから、当該訂正事項1の前段の訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項1の後段の訂正事項について、本件特許明細書の段落0019には「ここで、貯蔵弾性率および損失弾性率は、公知の動的粘弾性測定装置を用いて測定した、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの貯蔵弾性率および損失弾性率を意味している。」との記載があるから、当該訂正事項1の前段の訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア.訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の明細書の段落0079の「なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法も本発明の範囲に含まれる。」との記載が、本件特許の請求項1の「上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、」という事項と齟齬しているために、当該記載にある「、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法」との記載部分を削除して、本件特許の請求項1に係る発明の範囲を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更
訂正事項2は、本件特許の特許請求の範囲の記載と齟齬する明細書の記載箇所を「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.特許明細書等に記載した事項の範囲内
訂正事項2は、訂正前の明細書の段落0079の記載部分から、その「、当該積層体を150℃以上の温度で加熱する方法」との記載部分を削除するだけのものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?15について、その請求項2?15はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?15に対応する訂正後の請求項1?15は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

また、訂正事項2による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1?15であるから、訂正事項2と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。
したがって、訂正事項2による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

(4)訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?15に係る発明(以下「本1発明」?「本15発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。

「【請求項1】
ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、
上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。
【請求項2】
上記エラストマーは、スチレン基を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
上記エラストマーの質量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であることを特徴とする請求項1?4の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
上記エラストマーは、水添物であることを特徴とする請求項1?5の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
上記エラストマーは、ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1?6の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
上記エラストマーは、上記ブロック共重合体の水添物と、シクロオレフィンコポリマーおよびスチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つと、を含んでなることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
フィルム上に、請求項1?8の何れか一項に記載の接着剤組成物を含有する接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項10】
請求項1?8の何れか一項に記載の接着剤組成物を用いて、ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含することを特徴とする貼付方法。
【請求項11】
上記支持体に貼り付けたウエハを処理する処理方法であって、
請求項10に記載の貼付方法を行なった後、上記支持体に接着した上記ウエハを、220℃以上の環境下に曝す工程を包含していることを特徴とする処理方法。
【請求項12】
上記220℃以上の環境下に曝す工程を行なった後、上記ウエハから上記支持体を分離する工程を包含していることを特徴とする請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
上記支持体には、厚さ方向に貫通する穴が設けられており、
上記支持体を分離する工程では、当該穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
上記支持体と上記ウエハとの間には、上記接着層の他に反応層が介在しており、
当該反応層は、上記支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、
上記支持体を分離する工程では、光を照射することによって当該反応層を変質させることで、上記支持体と上記ウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項15】
上記支持体を分離した上記ウエハから、溶剤を用いて接着層を溶解して除去することを特徴とする請求項12?14の何れか一項に記載の処理方法。」

第4 取消理由
1.特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。

(1)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1?12及び15係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証の記載事項から容易想到である。
訂正前の請求項13に係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載事項から容易想到である。
訂正前の請求項14に係る発明は、甲第1号証記載の発明、並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第6号証の記載事項から容易想到である。

(2)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1?7、9?12及び15係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証及び甲第8号証?甲第13号証の記載事項から容易想到である。
訂正前の請求項13に係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証、甲第5号証及び甲第8号証?甲第13号証の記載事項から容易想到である。
訂正前の請求項14に係る発明は、甲第7号証記載の発明、並びに甲第1号証、甲第6号証及び甲第8号証?甲第13号証の記載事項から容易想到である。

(3)証拠方法
甲第1号証:特表2010-506406号公報
甲第2号証:特表平11-508924号公報
甲第3号証:Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, Vol.47, 955-965(2009)
甲第4号証:特開2010-180325号公報
甲第5号証:特開2006-135272号公報
甲第6号証:特開2004-64040号公報
甲第7号証:特許第5679732号公報
甲第8号証:特開2010-90352号公報
甲第9号証:特開2006-83364号公報
甲第10号証:国際公開第2011/158550号
甲第11号証:特開2000-86860号公報
甲第12号証:特開2010-109324号公報
甲第13号証:「株式会社クラレ製 SEPTON 8004、8006、8007 製品安全データシート」(改訂日2010年12月1日)

2.当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1?15に係る発明の特許に対して平成30年1月26日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

〔理由1〕本件特許の請求項1?15に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特表2010-506406号公報
刊行物2:特表平11-508924号公報
刊行物3:Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, Vol.47, 955-965(2009)
刊行物4:特開2010-180325号公報
刊行物5:特開2006-135272号公報
刊行物6:特開2004-64040号公報
刊行物7:特開2012-36269号公報(甲7の公開公報)
刊行物8:特開2010-90352号公報
刊行物9:特開2006-83364号公報
刊行物10:国際公開第2011/158550号
刊行物11:特開2000-86860号公報
刊行物12:特開2010-109324号公報
参考例A:「株式会社クラレ製 SEPTON 8004、8006、8007 製品安全データシート」(改訂日2010年12月1日)
参考例B:特開2012-124230号公報
参考例C:特開2012-51258号公報
参考例D:特開2012-92283号公報

よって、本件特許の請求項1?15に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

なお、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1?12及び参考例Aは、特許異議申立人が提示した甲第1?12号証及び甲第13号証に同じである。

第5 当審の判断
当審は、本1発明?本15発明は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)甲第1号証及び甲第7号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
摘記1a:請求項1、37、42、45及び47
「【請求項1】溶媒系に溶解または分散されたポリマーを含有する接合用組成物で形成される接合層を介して接合された、第1の基板と第2の基板とを含むスタックを提供し、
前記スタックを、少なくとも約190℃の温度に曝して前記接合層を軟化させ、
前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方に力を印加すると同時に、前記第1の基板および前記第2の基板の他方を、前記力に耐えられるようにすることを含み、前記力は、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離するに足る十分な量で印加されるウェーハの接合方法。…
【請求項37】粘着付与剤と、
ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、
前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。…
【請求項42】前記組成物が、更に、酸化防止剤、界面活性剤、接着促進剤およびそれらの混合物からなる群から選択される成分を含有する請求項37に記載の組成物。…
【請求項45】前記組成物が、本質的に、架橋剤を含有しない請求項37に記載の組成物。…
【請求項47】前記組成物が、250℃で約1,000ポアズ未満の粘度を有する請求項37に記載の組成物。」

摘記1b:段落0028
「【0028】酸化防止剤を用いる場合、該酸化防止剤は、上記組成物中の固体の総重量を100重量%として、上記組成物中に、約0.01重量%?約3重量%存在するのが好ましく、約0.01重量%?約1.5重量%存在するのがより好ましく、約0.01重量%?約0.1重量%存在するのが更に好ましい。適する酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox^((R))1010の名称で、チバ(Ciba)から市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート)およびホスファイト系酸化防止剤(例えば、Irgafos^((R))168の名称で、チバ(Ciba)から市販されているトリス(2,4‐ジtert‐ブチルフェニル)ホスファイト)からなる群から選択される酸化防止剤が含まれる。」

摘記1c:段落0033?0035、0045及び0047
「【0033】上記組成物は、キャリア基板かアクティブウェーハのいずれか一方に最初に塗布されうるが、アクティブウェーハに最初に塗布されることが好ましい。…
【0034】コーティングの後、上記基板を(例えば、ホットプレート上で)ベークして、溶媒を蒸発させることができる。典型的なベーキングでは、温度が、約150?275℃、好ましくは約150?225℃であり、時間が、約2?15分、より好ましくは約3?10分であるだろう。…
【0035】ベーキングの後、所望のキャリアウェーハを、本発明の組成物の層に接触させ、その層に対して押し付ける。上記キャリアウェーハは、約150?250℃、好ましくは約180?220℃の温度で加熱することにより本発明の上記組成物に接合される。この加熱は、好ましくは、真空下で、約1?10分間、約1?約15キロニュートンの接合力で行われる。…
【0045】所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。これらの温度範囲は、上記接合用組成物層の好ましい軟化点を示す。…
【0047】デバイス領域に残存する、いかなる接合用組成物も、乾燥前に上記組成物の一部であった最初の溶媒、または、キシレン、ベンゼン、リモネン等の溶媒を用いて、容易に除去することができる。」

摘記1d:段落0057
「【0057】(実施例5)
塗布、接合および剥離
実施例1?4の配合物について、様々な基板ウェーハ上へのスピンコーティングを行った。ベーキングを行い、溶媒を蒸発させて、上記接合用組成物をリフローさせた後、第2のウェーハを、加圧することにより、コーティングされた各ウェーハに接合した。これらの接合用組成物を用いたウェーハの仮接合の手順を、図2のフローチャートに示す。接合されたウェーハについて、機械的強度、熱安定性、耐薬品性の試験を行った。上記ウェーハについて、許容範囲内の温度で、それらのウェーハを離すように手動でスライドさせることによって剥離試験を行った。」

摘記1e:段落0061?0062
「【0061】【表5】

【0062】【表6】



摘記1f:図2
「【図2】



イ.甲第7号証の記載事項
摘記7a:段落0006及び0014
「【0006】上述の例以外に、貫通電極の形成などの裏面配線における高温プロセスを伴う工程は、半導体ウエハを接着固定した状態において行われる。高温プロセスを伴う工程において好適に使用され得る接着剤組成物として、耐熱性に優れているという観点から、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を含んでいる接着剤組成物が数多く提案されている。…
【0014】本発明によれば、以上のような構成によって、高温曝露時の反りを抑制でき、優れた耐熱性を示し、除去が容易な仮止め用の接着剤組成物を提供することができる。」

摘記7b:段落0067?0069及び0079?0082
「【0067】〔接着剤組成物の組成〕
本発明の実施例および比較例の組成物として、組成の異なる複数の接着剤組成物を調製した。調製した接着剤組成物のそれぞれが有する組成を以下の表1に示す。なお、各接着剤組成物は、樹脂および添加剤を溶剤に加えて混合することによって作製された。
【0068】【表1】

【0069】(各接着剤組成物における各成分の詳細)
樹脂1は、SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEPTON8007、クラレ社製)である(以下の化学式(2)によって表される)。…
溶剤は、p-メンタンである。…
【0079】(耐熱性の評価)
実施例および比較例の接着剤組成物のそれぞれについて、半導体ウエハ上に膜厚50μmの層になる量をスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークした。その後、サポート板を接着剤組成物の膜の上において、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた。各接着剤組成物を用いてサポート板に貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)後における接着剤組成物の膜の沈み込み量(膜厚の変量)から評価した。評価基準は以下の通りである。
○:耐熱性試験後の膜厚>耐熱性試験前の膜厚×60%
△:耐熱性試験後の膜厚=耐熱性試験前の膜厚×40?60%
×:耐熱性試験後の膜厚<耐熱性試験前の膜厚×40%
この基準にしたがって評価した結果を表2に示す。
【0080】(反りの評価)
耐熱性の評価と同様にして各接着剤組成物の耐熱性試験を行った後に、フィルム反り測定器(TENCOR FLX-2908、KLA Tencor Japan製)を用いて、各接着剤組成物の膜の反りの程度を測定した。測定結果を表2に示す。なお、反りが100μmを超えない限り、実際の使用に耐え得ると見做す。
【0081】(残渣の確認)
耐熱性の評価と同様にして各接着剤組成物の耐熱性試験を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、各接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った。この除去の後に、半導体ウエハ上に接着剤組成物が除去され切らずに残っていないか(残渣の有無)を目視にて確認した。この結果を表に示す。なお、目視にて残渣が確認された場合には可溶性が低く、使用に耐えないと判断した。
【0082】【表2】



摘記7d:段落0086
「【0086】本発明によれば、様々な製品の製造に適用される高温プロセスにおいて、好適に使用可能な接着剤組成物を提供することができる。特に、150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程にとって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」

(2)刊行物1及び7に記載された発明
ア.刊行物1に記載された発明(甲1発明)
摘記1aの「請求項37…粘着付与剤と、ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物とを含有する、流動性を有する接合用組成物であって、前記粘着付与剤および化合物は、溶媒系に分散または溶解され、前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%として、少なくとも約30重量%の溶媒系を含有する、流動性を有する接合用組成物。…請求項42…前記組成物が、更に、酸化防止剤…を含有する請求項37に記載の組成物。…請求項45…前記組成物が、本質的に、架橋剤を含有しない請求項37に記載の組成物。」との記載、
摘記1bの「適する酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox^((R))1010の名称で、チバ(Ciba)から市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート)…が含まれる。」との記載、
摘記1cの「所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。これらの温度範囲は、上記接合用組成物層の好ましい軟化点を示す。…デバイス領域に残存する、いかなる接合用組成物も、乾燥前に上記組成物の一部であった最初の溶媒、または、キシレン、ベンゼン、リモネン等の溶媒を用いて、容易に除去することができる。」との記載、
摘記1dの「(実施例5)…これらの接合用組成物を用いたウェーハの仮接合の手順を、図2のフローチャートに示す。」との記載、及び
摘記1fの「図2…ベークして溶媒を除去 約150-220℃で約2-4分…キャリアウェーハに接合 真空下で約150-250℃…裏面処理(例えば、研削、ビアホールの形成)…剥離 約200-270℃でスライド」との記載からみて、刊行物1には、
『粘着付与剤と、ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物と、市販品の「Irganox^((R))1010」などのフェノール系酸化防止剤を含有し、本質的に、架橋剤を含有しない、ウェーハの仮接合の手順として、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウェーハに接合し、裏面処理を行い、約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離し、溶媒を用いて除去される接合用組成物。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ.刊行物7に記載された発明(甲7発明)
摘記7aの「貫通電極の形成などの裏面配線における高温プロセスを伴う工程…において好適に使用され得る接着剤組成物として、耐熱性に優れているという観点から、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を含んでいる接着剤組成物が数多く提案されている。…本発明によれば、…高温曝露時の反りを抑制でき、優れた耐熱性を示し、除去が容易な仮止め用の接着剤組成物を提供することができる。」との記載、
摘記7bの「表1」及び「樹脂1は、SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEPTON8007、クラレ社製)である…溶剤は、p-メンタンである。…実施例および比較例の接着剤組成物のそれぞれについて、半導体ウエハ上に膜厚50μmの層になる量をスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークした。その後、サポート板を接着剤組成物の膜の上において、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた。各接着剤組成物を用いてサポート板に貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)後における接着剤組成物の膜の沈み込み量(膜厚の変量)から評価した。…耐熱性試験を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、各接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った。」との記載、並びに、
摘記7dの「本発明によれば、様々な製品の製造に適用される高温プロセスにおいて、好適に使用可能な接着剤組成物を提供することができる。特に、150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程にとって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」との記載からみて、刊行物7には、
『樹脂1(SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体としてのSEPTON8007)100質量部、及び溶剤(p-メンタン)400質量部とからなる接着剤組成物であって、当該接着剤組成物を半導体ウエハ上にスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークし、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った、接着剤組成物。』についての発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているといえる。

(3)刊行物1を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物」は、本1発明の「エラストマー」に相当し、
甲1発明の「市販品の「Irganox^((R))1010」などのフェノール系酸化防止剤」は、本件特許明細書の段落0100の「熱重合禁止剤としては…IRGANOX(商品名)1010…を用いた」との記載にある「熱重合禁止剤」と合致する添加剤であるから、本1発明の「熱重合禁止剤」に相当し、
甲1発明の「本質的に、架橋剤を含有しない」は、本1発明の「ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない」に相当し、
甲1発明の「接合用組成物」は、本1発明の「接着剤組成物」に相当し、
甲1発明の「ウェーハの仮接合の手順として、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウェーハに接合し、裏面処理を行い、約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離し、溶媒を用いて除去される接合用組成物」と、本1発明の「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」とは、両者とも「ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」である点において共通する。
そして、本1発明は「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであ」る点を発明特定事項とするところ、[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]によれば、「環境」とは「1.めぐり囲む区域。2.四囲の外界。周囲の事物。」を指すものであるから、上記発明特定事項は、「ウエハ」と「支持体」とが「接着剤組成物」によって接合され、その後、「ウエハ」及び「接着剤組成物」は、それらの環境(めぐり囲む区域)が「220℃以上」となった後に、「接着剤組成物」は「溶剤に溶解して除去」されることを意味するといえる。
そして、甲1発明の「約150-250℃でキャリアウェーハに接合」する構成の「約150-250℃」という温度の規定は、接合する前の温度についての規定である。
また、甲1発明の「約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離」する構成の「約200-270℃」という温度の規定は「アクティブウェーハまたは基板」の温度に関するものであって、環境温度についての規定とはいえない。
そうすると、甲1発明は、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」る構成及び「支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハ」を含むものではない。

してみると、本1発明と甲1発明は、両者とも『ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記接着剤組成物は、エラストマーを含む接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含む、接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。』という点において一致し、次の相違点(α)?(γ)において相違する。

(α)ウエハと支持体とを接着した後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物が、本1発明においては、ウエハと支持体を接着した後に「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」るのに対して、甲1発明においては、約150-220℃でベークして溶媒を除去し、約150-250℃でキャリアウエハーに接合するという「ウエハと支持体を接着」する工程の後に「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝され」るかどうか不明な点。

(β)接着剤組成物が、本1発明においては「エラストマーを主成分」として含むのに対して、甲7発明においては「ゴム類、スチレン‐イソプレン‐スチレン、スチレン‐ブタジエン‐スチレン、ハロゲン化ブチルゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物」を主成分として含むものとして特定していない点。

(γ)接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)、および、220℃における損失弾性率(G”)の少なくとも一方が、本1発明においては「20,000Pa以上」に特定されているのに対して、甲1発明においては当該「貯蔵弾性率(G’)」及び/又は「損失弾性率(G”)」の値が特定されていない点。

イ.判断
上記(α)の相違点について検討する。
甲1発明に係る接合用組成物は、「約200-270℃でアクティブウェーハまたは基板を加熱して剥離」するものであるから、200℃を超える「220℃以上の環境下に曝され」ることは想定されるものではない。
したがって、上記(α)の相違点については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記(α)の相違点について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記(β)?(γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明が、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(4)刊行物7を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本1発明と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「樹脂1(SEBS:水添ブチレン・ブタジエンブロック共重合体としてのSEPTON8007)100質量部」は、本1発明の「エラストマー」に相当する。
甲7発明の「接着剤組成物」は、架橋剤を含むものではないから、本1発明の「接着剤組成物物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)」に相当する。
甲7発明の「当該接着剤組成物を半導体ウエハ上にスピン塗布し、110℃、150℃または220℃でベークし、150℃でベークしてサポート板を貼り付けた半導体ウエハの耐熱性を、耐熱性試験(200℃の真空中における1時間の加熱処理)を行った後に、剥離剤(p-メンタン)を用いて、接着剤組成物の膜を半導体ウエハから除去する操作を行った、接着剤組成物」は、本1発明の「ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり」に対応して、両者とも『ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に高温の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に高温の環境下に曝されるウエハであり』という点において共通する。

してみると、本1発明と甲7発明は、両者とも『ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に高温の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、上記ウエハは、上記支持体と接着した後に高温の環境下に曝されるウエハであり、上記接着剤組成物は、エラストマーを含む接着剤組成物である接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。』という点において一致し、次の(δ)?(η)の点において一応相違する。

(δ)接着剤組成物の曝される高温の環境の温度が、本1発明においては「220℃以上」であるのに対して、甲7発明においては「耐熱性試験」を行う「200℃」である点。

(ε)接着剤組成物が、本1発明においては「エラストマーを主成分」として含むのに対して、甲7発明においては「溶剤(p-メンタン)」を主成分として含むものである点。

(ζ)接着剤組成物が、本1発明においては「さらに熱重合禁止剤を含」むのに対して、甲7発明においては、さらに熱重合禁止剤を含むものではない点。

(η)接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)、および、220℃における損失弾性率(G”)の少なくとも一方が、本1発明においては「20,000Pa以上」に特定されているのに対して、甲7発明においては当該「貯蔵弾性率(G’)」及び/又は「損失弾性率(G”)」の値が特定されていない点。

イ.判断
上記(δ)の相違点について検討する。
甲7発明は、200℃で耐熱性試験を行っていることから、甲7発明は、せいぜい200℃の環境下に曝されるといえるとしても、200℃を超える「220℃以上の環境下に曝され」ることは想定されるものではない。
したがって、上記(δ)の相違点については、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
そして、上記(δ)の相違点について、当業者が容易に想到し得ない以上、上記(ε)?(η)の相違点について検討するまでもなく、本1発明が、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(5)本2発明?本15発明について
ア.本2?7発明
本2発明は、本1発明において「上記エラストマーは、スチレン基を含んでいること」を更に特徴とするものであり、
本3発明は、本2発明において「上記エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であること」を更に特徴とするものであり、
本4発明は、本2又は3発明において「上記エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であること」を更に特徴とするとするものであり、
本5発明は、本1?4発明において「上記エラストマーの質量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であること」を更に特徴とするものであり、
本6発明は、本1?5発明において「上記エラストマーは、水添物であること」を更に特徴とするものであり、
本7発明は、本1?6発明において「上記エラストマーは、ブロック共重合体であること」を更に特徴とするものである。
してみると、本1発明の「接着剤組成物」が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本2?7発明が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本2?7発明は、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

イ.本8発明
本8発明は、本7発明において「上記エラストマーは、上記ブロック共重合体の水添物と、シクロオレフィンコポリマーおよびスチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つと、を含んでなること」を更に特徴とするものである。
してみると、本7発明の「接着剤組成物」が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本8発明が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本8発明は、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

ウ.本9及び10発明
本9発明は、本1?8発明の接着剤組成物を「フィルム上」に「含有する接着層が形成されていること」を特徴とする「接着フィルム」に関するものであり、
本10発明は、本1?8発明の接着剤組成物を用いて「ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含すること」を特徴とする「貼付方法」に関するものである。
してみると、本1?8発明の「接着剤組成物」が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本9及び10発明が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本9及び10発明は、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

エ.本11?12及び15発明
本11発明は、本10発明の貼付方法を行った後「上記支持体に接着した上記ウエハを、220℃以上の環境下に曝す工程を包含していること」を特徴とする「支持体に貼り付けたウエハを処理する処理方法」に関するものであり、
本12発明は、本11発明において「上記220℃以上の環境下に曝す工程を行なった後、上記ウエハから上記支持体を分離する工程を包含していること」を更に特徴とするものであり、
本15発明は、本12?14発明において「上記支持体を分離した上記ウエハから、溶剤を用いて接着層を溶解して除去すること」を更に特徴とするものである。
してみると、本10発明の「貼付方法」が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本11?12及び15発明が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本11?12及び15発明は、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

オ.本13及び14発明
本13発明は、本12発明において「上記支持体には、厚さ方向に貫通する穴が設けられており、上記支持体を分離する工程では、当該穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを分離すること」を更に特徴とするものであり、
本14発明は、本12発明において「上記支持体と上記ウエハとの間には、上記接着層の他に反応層が介在しており、当該反応層は、上記支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、上記支持体を分離する工程では、光を照射することによって当該反応層を変質させることで、上記支持体と上記ウエハとを分離すること」を更に特徴とするものである。
してみると、本12発明の「処理方法」が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいてに容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本13及び14発明が刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本13及び14発明は、刊行物1?12及び参考例A?Dに記載された発明又は技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(6)特許異議申立人の意見書の主張について
平成30年5月2日付けの意見書の第2頁において、特許異議申立人は『刊行物1の段落【0045】には、「【0045】所望の処理が行われた後、アクティブウェーハまたは基板は、少なくとも約190℃、好ましくは少なくとも約200℃、より好ましくは少なくとも約220℃、更に好ましくは少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。」と記載されているから、接合用組成物を220℃に加熱することが記載されている点すなわち、上記構成要件Aは、刊行物1に記載ないしは示唆されているものといえる。』と主張している。
しかしながら、刊行物1の段落0045の「約240℃の温度に加熱」とは、アクティブウェーハまたは基板を加熱するものであって、ウエハと支持体とを接着する接着剤組成物を「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝」すものではない。また、平成30年3月26日付けの意見書の第6頁において、特許権者は「刊行物1?刊行物12および参考例A?Dには、構成要件A,Dに相当する構成が一切記載されておらず、示唆する記載さえ全く無い」との主張がなされていることからみて、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後」という高温プロセス及びその温度条件は、刊行物1の段落0045の「所望の処理が行われた後…少なくとも約240℃の温度に加熱することによって、キャリア基板から分離されうる。」との示唆ないし記載にあるプロセスや温度条件とは全く異なる高温プロセスと温度条件を意図していることが明らかである。このため、刊行物1の段落0045の記載をもって、刊行物1に構成要件Aに相当する構成が記載されているとは認められない。

また、平成30年5月2日付けの意見書の第3?4頁において、特許異議申立人は『刊行物12や参考例Dの記載から、「高温プロセス」は普通に知られているものであり、刊行物7にも、「150℃以上の高温環境にさら」すことが記載されており(段落【0086】)、高温プロセスとして220℃以上の環境を設定することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮である。』と主張している。
しかしながら、刊行物12の段落0067の「熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に250℃?350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される。」との記載、参考例Dの段落0030の「半導体製造工程において、サポートプレートが接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスがある。」との記載、及び刊行物7の段落0086の「150℃以上の高温環境にさらして半導体ウエハまたはチップを加工する工程によって、好適な接着剤組成物を提供することができる。」との記載にある高温プロセスと温度条件は、平成30年3月26日付けの意見書(特許権者)の第6頁の「刊行物1?刊行物12および参考例A?Dには、構成要件A,Dに相当する構成が一切記載されておらず、示唆する記載さえ全く無い」との主張からみて、本1発明の「ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後」という高温プロセス及びその温度条件とは全く異なるものと解されるので、刊行物1?刊行物12および参考例A?Dに構成要件Aについての記載があるとは認められない。

さらに、平成30年5月2日付けの意見書の第4頁において、特許異議申立人は『本件明細書には、本件発明の接着剤組成物は、p-メンタン等の炭化水素系溶剤に溶解することしか記載されておらず、任意の溶剤に溶解するとの記載はない。実際、エラストマーが水添物であるか、分子の両末端がスチレン部位である場合は、レジスト溶剤への耐性により優れると記載されている(段落【0031】、【0033】)。そうすると、本件発明の接着剤組成物がp-メンタン等の炭化水素系溶剤に溶解するという事項を、本件訂正請求項1に特定されている単なる「溶剤」に溶解することにまで拡張ないし一般化することができるとはいえない。』と主張している。
しかしながら、本1発明の「溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物」という事項における「溶剤」とは「接着剤組成物」を「溶解して除去」することができる「溶剤」を意図することが明らかであって、本1発明の「接着剤組成物」を「溶解して除去」できない「レジスト溶剤」などの剤は、本1発明の「溶剤」の範疇に含まれないことが明らかである。このため、上記意見書の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1?本15発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本1?本15発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着剤組成物、接着フィルム、貼付方法、および処理方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、接着フィルムおよび貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化および薄型化することによって、パッケージ内にチップを高集積化する要求が高まっている。例えば、CSP(chip size package)またはMCP(multi-chip package)に代表されるような複数のチップをワンパッケージ化する集積回路においては、一層の薄型化が求められている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25?150μmの範囲にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースになる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄になるため、その強度は弱くなり、クラックまたは反りが生じ易くなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑である。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、シリコンまたは硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハハンドリングシステムが開発されている。ウエハハンドリングシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化したウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハハンドリングシステムにおいて、ウエハとサポートプレートとは粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤組成物等を用いて貼り合わせられる。そして、サポートプレートが貼り付けられたウエハを薄板化した後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。このウエハとサポートプレートとの貼り合わせに接着剤を用いた場合には、接着剤を溶解してウエハをサポートプレートから剥離する。
【0006】
ここで、近年、上記接着剤組成物として、環状オレフィン系樹脂(A1)と、数平均分子量が10,000以下である低分子量環状オレフィン系樹脂(A2)とで構成されている環状オレフィン系樹脂組成物が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 国際公開第WO2007/132641号パンフレット(2007年11月22日国際公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物を用いてウエハとサポートプレートとを貼り合わせて積層体を形成する場合、当該積層体の加熱処理時に積層体の反り量が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱処理時における積層体の反りを抑制することができる接着剤組成物、当該接着剤組成物を含有する接着層が形成された接着フィルム、および当該接着剤組成物を用いた貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る接着剤組成物は、上記課題を解決するために、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であって、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たすことを特徴としている。
【0011】
本発明に係る接着フィルムは、フィルム上に、上記接着剤組成物を含有する接着層が形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る貼付方法は、上記接着剤組成物を用いて、ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱処理時における積層体の反りを抑制する接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔接着剤組成物〕
本発明に係る接着剤組成物は、エラストマーを主成分としており、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たす。
【0015】
従来の接着剤組成物においては、高温領域で接着剤の熱流動が起こるため、熱工程時の保持方法、ウエハと支持体とを接着して形成される積層体の線膨張係数の差による応力によって積層体(ウエハ)の反りが発生していた。
【0016】
一方、本発明に係る接着剤組成物においては、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たすため、加熱処理時における積層体の反りを抑制することができる。つまり、本発明に係る接着剤組成物を用いて形成した接着層は、加熱時に高い貯蔵弾性率(G’)または損失弾性率(G”)を有するため、接着層は熱流動が生じにくく、変形しにくい。よって、積層体の線膨張係数の差による応力の影響を低減し、積層体に生じる反りを抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係る接着剤組成物を用いて形成した接着層においては、220℃における貯蔵弾性率(G’)が50,000Pa以上、および220℃における損失弾性率(G”)が50,000Pa以上の少なくとも一方を満たすことがより好ましい。
【0018】
なお、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)の上限は特に限定されないが、220℃における貯蔵弾性率(G’)は1,000,000以下であり、ウエハと支持体との貼り付け性を考慮すると、500,000以下が好ましく、200,000以下が特に好ましい。また、220℃における損失弾性率(G”)は1,000,000以下であり、ウエハと支持体との貼り付け性を考慮すると、500,000以下が好ましく、200,000以下が特に好ましい。
【0019】
ここで、貯蔵弾性率および損失弾性率は、公知の動的粘弾性測定装置を用いて測定した、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの貯蔵弾性率および損失弾性率を意味している。
【0020】
(エラストマー)
本発明に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーは、接着剤組成物の主成分であり、当該接着剤組成物を用いて形成した接着層において、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たすものであればよい。
【0021】
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン基を含んでいることが好ましい。また、エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であることがより好ましい。
【0022】
本明細書において「構成単位」とは、重合体であるエラストマーを構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を指す。
【0023】
本明細書において「スチレン単位」とは、スチレンまたはスチレン誘導体を重合した際に重合体に含まれる当該スチレン由来の構成単位であり、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1?5のアルキル基、炭素数1?5のアルコキシ基、炭素数1?5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0024】
エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であることが好ましく、20重量%以上、50重量%以下であることがより好ましい。これにより、本発明に係る接着剤組成物は、加熱処理時における積層体の反りをより好適に抑制することができる。
【0025】
また、エラストマーの質量平均分子量は、20,000以上、200,000以下であることが好ましく、50,000以上、150,000以下であることがより好ましい。これにより、本発明に係る接着剤組成物は、加熱処理時における積層体の反りをより好適に抑制することができる。
【0026】
また、エラストマーはブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン-プロピレンターポリマー(EPT)、および、これらの水添物、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレンブロックコポリマー(SEEPS-OH:末端水酸基変性)等が挙げられる。エラストマーのスチレン基含有量および質量平均分子量は、上記の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、ブロック共重合体は、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体であることが好ましく、トリブロック共重合体であることがより好ましい。さらに、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、またはこれらの組み合わせを含有する接着剤組成物を用いて形成した接着層の220℃における損失係数(tanσ)を、1.1以下の値にすることができる。
【0028】
ここで、損失係数は、公知の動的粘弾性測定装置を用いて測定した、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの損失係数を意味している。
【0029】
本発明に係るブロック共重合体には、少なくとも1個の官能基含有原子団が結合してもよい。このようなブロック共重合体は、例えば、公知のブロック共重合体に対し、変性剤を用いて当該官能基含有原子団を少なくとも1個結合させることによって得ることができる。
【0030】
官能基含有原子団とは、1個以上の官能基を含む原子団である。本発明における官能基含有原子団が含む官能基としては、例えば、アミノ基、酸無水物基(好ましくは無水マレイン酸基)、イミド基、ウレタン基、エポキシ基、イミノ基、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、およびアルコキシシラン基(当該アルコキシ基は炭素数1?6であることが好ましい)が挙げられる。本発明において、エラストマーは、ブロック共重合体であり、かつ、極性をもたらす官能基を有していることが好ましい。本発明において、少なくとも1個の官能基含有原子団を有するブロック共重合体を含有させることにより、接着剤組成物の柔軟性および接着性が向上する。
【0031】
上記エラストマーは、水添物であることがより好ましい。エラストマーが水添物であれば、熱に対する安定性が向上して分解や重合等の変質が起こり難く、さらに、炭化水素系溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性により優れる。
【0032】
また、上記エラストマーのうち、分子の両末端がスチレン部位であるエラストマーがより好ましい。熱安定性の高いスチレン部位を両末端にブロック構造として有することで、エラストマーはより高い耐熱性を示す。
【0033】
さらに、エラストマーは、分子の両末端がスチレン部位である、スチレンおよび共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。これにより、熱に対する安定性が向上して分解や重合等の変質が起こり難く、さらに、炭化水素系溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性により優れるとともに、熱安定性の高いスチレン部位を両末端にブロック構造として有することで、より高い耐熱性を示す。
【0034】
本発明に係る接着剤組成物の主成分である上記エラストマーとして用いることができる市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、同社製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
【0035】
本発明に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、10重量部以上、80重量部以下が好ましく、20重量部以上、60重量部以下がより好ましい。
【0036】
また、エラストマーは複数の種類を混合してもよい。つまり、本発明に係る接着剤組成物は複数の種類のエラストマーを含んでもよい。接着剤組成物は、複数の種類のエラストマーが含まれている場合であっても、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の220℃における貯蔵弾性率が20,000Pa以上、および220℃における損失弾性率が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たせば、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
また、本発明に係る接着剤組成物において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン基含有量が上記の範囲となるように調製してもよい。例えば、スチレン基含有量が10重量%のものと60重量%のものとを1対1で混合すると35重量%となる。また、本発明に係る接着剤組成物に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲のスチレン基含有量であり、かつ、上記の範囲の重量平均分子量であることが最も好ましい。
【0038】
(炭化水素樹脂)
また、本発明に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂を含んでいてもよい。炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマーが挙げられる。
【0039】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
【0040】
前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーがより好ましい。
【0041】
炭化水素樹脂を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、炭素数2?10のアルケンモノマーが挙げられ、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0042】
また、炭化水素樹脂を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。炭化水素樹脂を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、炭化水素樹脂を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0043】
また、炭化水素樹脂を構成する単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有していてもよい。炭化水素樹脂を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点からは10?90モル%であることが好ましく、20?85モル%であることがより好ましく、30?80モル%であることがさらに好ましい。
【0044】
なお、炭化水素樹脂は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
【0045】
単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0046】
炭化水素樹脂として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
【0047】
炭化水素樹脂のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。炭化水素樹脂のガラス転移点が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層の軟化を抑制することができる。
【0048】
本発明に係る接着剤組成物に含まれる炭化水素樹脂の含有量としては、当該接着剤組成物を用いて形成した接着層の、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たす範囲であればよく、例えば、エラストマーを100重量部として、1重量部以上、50重量部以下が好ましい。
【0049】
(溶剤)
本発明に係る接着剤組成物に含まれる溶剤(主溶剤)は、エラストマーを溶解する機能を有していればよく、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、並びに、極性および無極性の石油系溶剤等を用いることができる。
【0050】
また、上記溶剤は、縮合多環式炭化水素を含んでいることがより好ましい。溶剤が縮合多環式炭化水素を含むことにより、接着剤組成物を液体状態で(特に低温にて)保存したときに生じ得る白濁化を防止することができ、製品安定性を向上させることができる。
【0051】
炭化水素系溶剤としては、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素が挙げられる。当該炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の炭素数3から15の直鎖状の炭化水素;メチルオクタン等の炭素数4から15の分岐状の炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、α-ピネン、β-ピネン、α-ツジョン、β-ツジョン等の環状の炭化水素が挙げられる。
【0052】
石油系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)等が挙げられる。
【0053】
また、縮合多環式炭化水素とは、二つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに一つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、二つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
【0054】
そのような縮合多環式炭化水素としては、5員環および6員環の組み合わせ、または二つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環および6員環を組み合わせた縮合多環式炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、二つの6員環を組み合わせた縮合多環式炭化水素としては、例えば、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0055】
これら溶剤は、一種類のみを用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、溶剤が上記縮合多環式炭化水素を含む場合、溶剤に含まれる成分は上記縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の成分を含有していてもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量%以上である場合には、上記樹脂に対する高い溶解性が発揮することができる。縮合多環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合多環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
【0056】
上記飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の炭素数3から15の直鎖状の炭化水素;メチルオクタン等の炭素数4から15の分岐状の炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
【0057】
なお、本発明の接着剤組成物における溶剤の含有量としては、当該接着剤組成物を用いて成膜する接着層の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えば、接着剤組成物の全量を100重量部としたとき、20重量部以上、90重量部以下の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整が容易となる。
【0058】
(熱重合禁止剤)
本発明に係る接着剤組成物は、必要に応じて熱重合禁止剤を含有していてもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤は、ラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含むことにより、高温環境下(特に、250℃?350℃)において重合反応が抑制される。
【0059】
例えば、半導体製造工程においては、サポートプレート(支持体)が貼り付けられたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスがある。このとき、高温により接着剤組成物の重合が起こると、高温プロセス後にウエハからサポートプレートを剥離する剥離液への接着剤組成物の溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができなくなる。ところが、接着剤組成物が熱重合禁止剤を含むことにより、熱による酸化およびそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしてもウエハからサポートプレートを容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。
【0060】
熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有していればよく、特に限定されるものではないが、フェノール構造を有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、接着剤組成物は大気下での高温処理後にも良好な溶解性を確保することができる。フェノール構造を有する熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能であり、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert-ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n-ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)、4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-〔4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”-エチリデントリス(2-メチルフェノール)、4,4’,4”-エチリデントリスフェノール、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、n-オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、トリス(3,5-ジ-tert-ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
熱重合禁止剤の含有量は、エラストマーの種類、並びに接着剤組成物の用途および使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、エラストマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱によるラジカル重合反応を防止する効果が良好に発揮され、高温プロセス後における接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができる。
【0062】
また、本発明に係る接着剤組成物は、必要に応じて、エラストマーを溶解するための溶剤(主溶剤)とは異なる組成からなり、熱重合禁止剤を溶解する添加溶剤をさらに含有していてもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、接着剤組成物に含まれる各成分を溶解する有機溶剤を用いることができる。
【0063】
上記有機溶剤としては、接着剤組成物に含まれる各成分を溶解して均一な溶液にすることができる溶剤であればよく、任意の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
有機溶剤の具体例としては、例えば、極性基として酸素原子、カルボニル基またはアセトキシ基等を有するテルペン溶剤が挙げられ、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファーが挙げられる。また、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類または上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0065】
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、熱重合禁止剤を1重量部としたとき、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、1?30重量部がさらに好ましく、1?15重量部が最も好ましい。添加溶剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
【0066】
(その他の成分)
本発明に係る接着剤組成物は、本発明における接着剤組成物の本質的な特性を損なわない範囲において、混和性を有する他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、接着剤組成物の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤および界面活性剤等の、慣用されている各種添加剤が挙げられる。
【0067】
(接着剤組成物の調製方法)
本発明に係る接着剤組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよいが、例えば、エラストマーを溶剤に溶解させ、既存の攪拌装置を用いて、各組成を攪拌することにより、本発明に係る接着剤組成物を得ることができる。
【0068】
また、本発明に係る接着剤組成物が熱重合禁止剤を含有する場合には、熱重合禁止剤を添加溶剤に予め溶解させた後、エラストマーを主溶剤に溶解させた溶液に添加することが好ましい。
【0069】
〔本発明に係る接着剤組成物の用途〕
本発明に係る接着剤組成物はウエハと当該ウエハの支持体とを貼り付け、積層体を形成するために用いられる。
【0070】
支持体は、例えば、ウエハを薄化する工程で支持する役割を果たす部材であり、本発明に係る接着剤組成物によってウエハに接着される。一実施形態において、支持体は、例えば、その膜厚が500?1000μmであるガラスまたはシリコンで形成されている。
【0071】
なお、一実施形態において、支持体には、支持体を厚さ方向に貫通する穴が設けられている。この穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体と基板とを容易に分離することができる。
【0072】
また、他の実施形態において、支持体とウエハとの間には、接着層の他に反応層が介在していてもよい。反応層は、支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、反応層に光等を照射して反応層を変質させることによって、支持体とウエハとを容易に分離することができる。この場合、支持体は厚さ方向に貫通する穴が設けられていない支持体を用いることが好ましい。
【0073】
反応層に照射する光としては、反応層が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO_(4)レーザ、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO_(2)レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、または、非レーザ光を適宜用いればよい。反応層に吸収されるべき光の波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長の光であればよい。
【0074】
反応層は、例えば光等によって分解される光吸収剤を含んでいてもよい。光吸収剤としては、例えば、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛、テルルなどの微粒子金属粉末、黒色酸化チタンなどの金属酸化物粉末、カーボンブラック、または芳香族ジアミノ系金属錯体、脂肪族ジアミン系金属錯体、芳香族ジチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、スクアリリウム系化合物、シアニン系色素、メチン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの染料もしくは顔料を用いることができる。このような反応層は、例えば、バインダー樹脂と混合して、支持体上に塗布することによって形成することができる。また、光吸収基を有する樹脂を用いることもできる。
【0075】
また、反応層として、プラズマCVD法により形成した無機膜または有機膜を用いてもよい。無機膜としては、例えば、金属膜を用いることができる。また、有機膜としては、例えば、フルオロカーボン膜を用いることができる。このような反応膜は、例えば、支持体上にプラズマCVD法により形成することができる。
【0076】
また、本発明に係る接着剤組成物は、支持体と接着した後に薄化工程に供されるウエハと当該支持体との接着に好適に用いられる。上述のように、この支持体はウエハを薄化する際に当該ウエハの強度を保持する。本発明に係る接着剤組成物はこのようなウエハと支持体との接着に好適に用いられる。
【0077】
また、本発明に係る接着剤組成物は、優れた耐熱性を有しているので、ウエハと支持体とを接着するために用いられる。当該ウエハは、好ましくは、当該支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されるウエハである。より好ましくは、ウエハは、支持体と接着した後に180℃以上、さらには220℃以上の環境下に曝されるウエハである。
【0078】
例えば、ウエハに貫通電極等を形成する場合、当該ウエハと当該支持体とを接着した積層体は、150℃以上の環境下に曝される。このような環境下に曝された接着層であっても、本発明に係る接着剤組成物によって形成されている接着層であれば、溶剤に容易に溶解するので、ウエハと支持体との分離が容易である。なお、本発明に係る接着剤組成物では上述した範囲のスチレン含有量および重量平均分子量のエラストマーを含んでいるので、接着層を加熱しても膜応力が発生することを抑制することができ、その結果、反りの発現を抑制することができる。
【0079】
なお、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法も本発明の範囲に含まれる。
【0080】
〔接着剤組成物により形成された接着層の除去〕
本発明に係る接着剤組成物によって接着されたウエハと支持体とを、上記の反応層を変質すること等によって分離した後に、接着層を除去する場合、上述の溶剤を用いれば容易に溶解して除去することができる。また、上記の反応層等を用いずに、ウエハと支持体とを接着した状態で接着層に直接、溶剤を供給することによって、容易に接着層が溶解して当該接着層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる。この場合、接着層への溶剤の供給効率を上げるため、支持体には貫通した穴が設けられていることがより好ましい。
【0081】
〔接着フィルム〕
本発明に係る接着剤組成物は、用途に応じて様々な利用形態を採用することができる。例えば、接着剤組成物を液体状態のまま、所望する接着層の膜厚に応じて適宜、公知の方法を用いて、被加工体であるウエハ上や支持体上に塗布し、乾燥させて接着層を形成する方法を採用してもよく、或いは、可撓性フィルム等のフィルム上に接着剤組成物を塗布し、乾燥させて接着層を形成することにより接着フィルムとした後、当該接着フィルムを、被加工体であるウエハや支持体に貼り付ける方法を採用してもよい。
【0082】
このように、本発明に係る接着フィルムは、フィルム上に、本発明に係る接着剤組成物を含有する接着層が形成されている。
【0083】
接着フィルムは、接着層にさらに保護フィルムを被覆して用いてもよい。この場合には、接着層上の保護フィルムを剥離し、被加工体の上に露出した接着層を重ねた後、接着層から上記フィルムを剥離することによって被加工体上に接着層を容易に設けることができる。
【0084】
したがって、この接着フィルムを用いれば、被加工体の上に直接、接着剤組成物を塗布して接着層を形成する場合と比較して、膜厚がより均一でかつ表面平滑性の良好な接着層を形成することができる。
【0085】
接着フィルムを構成する上記フィルムは、当該フィルム上に形成された接着層を剥離してウエハや支持体に貼り付ける(転写する)ことができるように離型性を備えていればよく、特に限定されるものではないが、可撓性フィルムであることがより好ましい。可撓性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の、膜厚15?125μmの合成樹脂フィルムが挙げられる。上記フィルムには、必要に応じて、接着層の転写が容易となるように離型処理が施されていることが好ましい。
【0086】
上記接着フィルムを形成する方法としては、接着層の乾燥後の膜厚が例えば10?1000μmとなるように、所望する接着層の膜厚に応じて適宜、公知の方法を用いて、フィルム上に、本発明に係る接着剤組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0087】
また、保護フィルムを用いる場合、保護フィルムとしては、接着層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエチレンフィルムが好ましい。また、各保護フィルムは、シリコンをコーティングまたは焼き付けしてあることが好ましい。これにより、接着層からの剥離が容易となる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、15?125μmであることが好ましい。これにより、保護フィルムを備えた接着フィルムの柔軟性を確保することができる。
【0088】
接着フィルムの使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、保護フィルムを用いた場合には、これを剥離した上で、被加工体の上に露出した接着層を重ねて、フィルム上(接着層の形成された面の裏面)から加熱ローラを移動させることにより、接着層を被加工体の表面に熱圧着させる方法が挙げられる。このとき、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラなどのローラでロール状に巻き取れば、保存して再利用することが可能である。
【0089】
〔貼付方法〕
本発明に係る貼付方法は、本発明に係る接着剤組成物を用いて、ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含することを特徴としている。本発明に係る接着剤組成物を用いて、ウエハと支持体とを貼り付けて形成される積層体は、加熱処理時における反りが抑制される。
【0090】
貼付工程においては、本発明に係る接着剤組成物を用いて予め形成した接着層を介してウエハに支持体を貼り付けてもよい。接着層は、例えば、ウエハ上に接着剤組成物を塗布して焼成することによって、形成することができる。接着剤組成物の焼成温度、焼成時間等は、使用する接着剤組成物等に応じて適宜選択することができる。
【0091】
また、貼付工程においては、減圧環境下で加熱および加圧することによって、ウエハに支持体を貼り付けることができる。ウエハに支持体を貼り付けるときの温度、時間および圧力は、使用する接着剤組成物等に応じて適宜選択することができるが、例えば、貼り付け温度は50?250℃であり、好ましくは100℃?250℃である。貼り付け時間は10秒?15分であり、好ましくは30秒?10分である。貼り付け圧力は100kg?10,000kgであり、好ましくは1,000kg?10,000kgである。また、貼付工程において、減圧状態(例えば、1Pa以下)でウエハと支持体を貼り付けてもよい。
【0092】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0093】
〔接着剤組成物の調製〕
実施例1?14および比較例1?3において使用したエラストマー(炭化水素樹脂)、熱重合禁止剤、主溶剤、添加溶剤を、以下の表4?7に示す。なお、表4?7に記載の「部」は、全て重量部である。
【0094】
実施例1?14におけるエラストマーとして、株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton8004(SEP:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック)、Septon4055(SEEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、Septon4033(SEPS:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SeptonV9827(SEBS:スチレンブロックが反応架橋型のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー)、Septon2002(SEPS:スチレン-イソプレン-スチレンブロック)、SeptonHG252(SEEPS-OH:ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン 末端水酸基変性)、旭化成株式会社製のタフテック(商品名)H1051(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、およびA1(スチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレート=20/60/20(重量比)の共重合体)を用いた。また、実施例4?7においては、エラストマーとともに、炭化水素樹脂である三井化学株式会社製のAPEL(商品名)のAPEL8008T(シクロオレフィンコポリマー;エチレン-テトラシクロドデセンのコポリマー、Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、エチレン:シクロドデセン=80:20(モル比))、APEL5015(シクロオレフィンコポリマー;エチレン-テトラシクロドデセンのコポリマー、Mw=70,000、Mw/Mn=2.0、エチレン:シクロドデセン=55:45(モル比))、APEL6013T(シクロオレフィンコポリマー;エチレン-テトラシクロドデセンのコポリマー、Mw=90,000、Mw/Mn=2.0、エチレン:シクロドデセン=65:35(モル比))、ポリプラスチック株式会社製のTOPAS(商品名)TM(シクロオレフィンコポリマー;エチレン-ノルボルネンのコポリマー、Mw=10,000、Mw/Mn=2.08、ノルボルネン:エチレン=50:50(重量比))を、表4および5に示す混合比でエラストマーに混合して用いた。なお、本実施例における「水添」とは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーである。説明の便宜上、以下の説明において、エラストマーは、エラストマー単独、またはエラストマーと炭化水素樹脂との混合物を指すこととする。
【0095】
比較例1?3におけるエラストマー(炭化水素樹脂)としては、ポリプラスチック株式会社製のTOPAS(商品名)8007(シクロオレフィンコポリマー;エチレン-ノルボルネンのコポリマー、Mw=100,000、Mw/Mn=1.9、ノルボルネン:エチレン=65:35(重量比))、三井化学株式会社製のAPEL(商品名)8008T、旭化成株式会社製のSepton(商品名)2063(SEPS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)を、それぞれ用いた。
【0096】
なお、各エラストマーのスチレン含有量および重量平均分子量を表1および2に示し、各炭化水素樹脂の重量平均分子量を表3に示す。重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)にて測定した。スチレン含有量は各商品に添付の説明に記載されていた数値である。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
また、熱重合禁止剤としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。また、主溶剤としては、下記化学式(I)に示すデカヒドロナフタレンを用いた。また、添加溶剤として、酢酸ブチルを用いた。
【0101】
【化1】

【0102】
実施例1の接着剤組成物の調製方法は次の通りである。まず、水添スチレン系エラストマーであるSepton8004を、主溶剤に25重量%の濃度になるように溶解させた。次に、エラストマー100重量部に対して、熱重合禁止剤が1重量部、かつ主溶剤100重量部に対して、添加溶剤が15重量部になるように熱重合禁止剤および添加溶剤をそれぞれ加えた。これにより、接着剤組成物を得た。また、実施例2?14、比較例1?3についても、同様の手法により、接着剤組成物を得た。
【0103】
〔粘弾性測定〕
また、調製した実施例1?14、比較例1?3の接着剤組成物について、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定した。まず、調製した接着剤組成物を、離型剤付のポリエチレンフィルムに塗布し、大気圧下のオーブンで100℃、180℃で各60分間焼成して接着層を形成した(厚さ0.5mm)。ポリエチレンフィルムから剥がした接着層の貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を、動的粘弾性測定装置(VAR100、Fischer社製)を用いて測定した。測定条件を、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びにパラレルプレートφ25mmを用い、周波数10Hzのせん断条件において、室温から220℃まで、速度5℃/分で昇温する条件とし、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を測定した。表4?6に示すように、実施例1?14については、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)が20,000Pa以上であった。また、表7に示すように、比較例1?3については、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)が20,000Pa未満であった。
【0104】
〔接着層の形成〕
半導体ウエハ基板(12インチ、シリコン)に接着剤組成物を膜厚50μmでスピン塗布し、100℃、160℃、220℃の温度で各5分間ベークし、接着層を形成した。
【0105】
〔貼付〕
真空下、215℃、4000kgの条件で5分間、532nmのレーザ吸収を示す反応層を兼ね備えたベアのガラス支持体(12インチ)とウエハとの貼り合わせを行い積層体とした。その際、その後の薄化工程および熱工程でウエハの破損またはウエハの面内均一性の低下につながる貼付不良(未接着部分)が無いことを確認した。
【0106】
次に、ウエハ裏面をDISCO社製バックグラインド装置にて薄化(50μm)処理し、220℃で3時間、窒素環境下において加熱処理し、積層体の耐熱性に問題が無いことを確認した。また、そのときの積層体の反り量をKEYENCE社製のレーザ変位計(型式:LK-G30)により測定した。その結果、実施例1における積層体の反り量は200μmであった。
【0107】
次に、積層体の反り量を測定する方法について説明する。上記レーザ変位計を用いてウエハ上面の各位置における厚さ方向の高さを測定した。そして、積層体の厚さ方向において、ウエハの端部の高さからウエハの中心部の高さを引いた値として、反り量を算出した。
【0108】
〔剥離〕
ウエハに対し、ガラス面から532nmのレーザ照射を行い、ガラス支持体と接着層との間で分離した。ガラス支持体を取り除いたウエハは、p-メンタンでスピン洗浄することで接着層を残渣なく除去することができた。実施例1?14の結果を表4?6に示し、比較例1?3の結果を表7に示す。
【0109】
【表4】


【0110】
【表5】

【0111】
【表6】


【0112】
【表7】

【0113】
表4?6に示すように、比較例1?3と比較して実施例1?14に係る接着剤組成物では、積層体の反り量が低減していた。より具体的には、実施例1?14に係る接着剤組成物では、積層体の反り量がそれぞれ200μm以下であり、実施例1?14における積層体の反り量は何れも比較例1?3における積層体の反り量の半分以下であった。
【0114】
以上の結果より、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の接着層を形成する接着剤組成物は、220℃における貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)が20,000Pa未満の接着層を形成する接着剤組成物と比較して、積層体の反り量を抑制することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る接着剤組成物および接着フィルムは、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において好適に利用することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハと支持体とを接着し、ウエハと共に220℃以上の環境下に曝された後に、溶剤に溶解して除去するために用いられる接着剤組成物であって、
上記ウエハは、上記支持体と接着した後に220℃以上の環境下に曝されるウエハであり、
上記接着剤組成物は、エラストマーを主成分とする接着剤組成物であり、さらに熱重合禁止剤を含み、上記接着剤組成物を用いて形成した接着層の、サンプル形状が厚さ1mmおよび直径φ25mm、並びに周波数10Hzのせん断条件において、温度範囲50?250℃および速度5℃/分で昇温したときの、220℃における貯蔵弾性率(G’)が20,000Pa以上、および、220℃における損失弾性率(G”)が20,000Pa以上の少なくとも一方を満たしていることを特徴とする接着剤組成物(ただし、上記接着剤組成物は架橋剤を含んでいない)。
【請求項2】
上記エラストマーは、スチレン基を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記エラストマーは、主鎖の両末端がスチレン基であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記エラストマーのスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
上記エラストマーの質量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であることを特徴とする請求項1?4の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
上記エラストマーは、水添物であることを特徴とする請求項1?5の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
上記エラストマーは、ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1?6の何れか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
上記エラストマーは、上記ブロック共重合体の水添物と、シクロオレフィンコポリマーおよびスチレン/1-アダマンチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つと、を含んでなることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
フィルム上に、請求項1?8の何れか一項に記載の接着剤組成物を含有する接着層が形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項10】
請求項1?8の何れか一項に記載の接着剤組成物を用いて、ウエハに支持体を貼り付ける貼付工程を包含することを特徴とする貼付方法。
【請求項11】
上記支持体に貼り付けたウエハを処理する処理方法であって、
請求項10に記載の貼付方法を行なった後、上記支持体に接着した上記ウエハを、220℃以上の環境下に曝す工程を包含していることを特徴とする処理方法。
【請求項12】
上記220℃以上の環境下に曝す工程を行なった後、上記ウエハから上記支持体を分離する工程を包含していることを特徴とする請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
上記支持体には、厚さ方向に貫通する穴が設けられており、
上記支持体を分離する工程では、当該穴を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
上記支持体と上記ウエハとの間には、上記接着層の他に反応層が介在しており、
当該反応層は、上記支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、
上記支持体を分離する工程では、光を照射することによって当該反応層を変質させることで、上記支持体と上記ウエハとを分離することを特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項15】
上記支持体を分離した上記ウエハから、溶剤を用いて接着層を溶解して除去することを特徴とする請求項12?14の何れか一項に記載の処理方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-17 
出願番号 特願2013-117292(P2013-117292)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (C09J)
P 1 651・ 851- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小久保 敦規  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 原 賢一
木村 敏康
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128970号(P6128970)
権利者 東京応化工業株式会社
発明の名称 接着剤組成物、接着フィルム、貼付方法、および処理方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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