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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1341955
異議申立番号 異議2017-700843  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-06 
確定日 2018-05-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6101785号発明「鮮度保持フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6101785号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11、13?15〕について訂正することを認める。 特許第6101785号の請求項1、3ないし12、14及び15に係る特許を維持する。 特許第6101785号の請求項2及び13に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6101785号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2014年3月13日(優先権主張2013年3月14日、日本国、2013年5月23日、日本国、2013年7月2日、日本国、2013年10月18日、日本国、2013年11月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月3日にその特許権の設定登録(請求項数:14)がされ、その後、その特許に対し、同年9月6日付け(受理日:同年9月7日)で特許異議申立人 小関 勝成(以下、「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9及び14)がされ、同年9月20日に特許異議申立人 江崎 宗憲(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし14)がされ、当審において同年12月20日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、平成30年2月15日付け(受理日:同年2月16日)に特許権者 三井化学東セロ株式会社より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年2月22日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月26日に特許異議申立人2より意見書が提出され、同年3月28日付け(受理日:同年3月29日)で特許異議申立人1より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成30年2月15日付け(受理日:同年2月16日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「少なくとも一方の表面に、パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(a)が存在し、
前記表面における前記(a)の量が0.002?0.5g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」の記載を、
「少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、
前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であり、
前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の
「前記(a)が含まれる請求項1又は2に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4の
「前記(a)が含まれる請求項1から3のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1又は3に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の
「少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(b)が存在し、
前記表面における前記(b)の量が0.002?0.5g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」の記載を、
「少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、
前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6の
「前記(b)が含まれる請求項5に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7の
「前記(b)が含まれる請求項5又は6に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5又は6に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8の
「請求項1から7のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「請求項1及び3から7のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9の
「請求項1から8のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10の
「請求項1から9のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「請求項1及び3から9のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11の
「請求項1から10のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「請求項1及び3から10のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14の
「請求項1から13のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「請求項1及び3から12のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15として、
「少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。」を追加する。

(15)訂正事項15
明細書の【0007】の
「本発明は以下の[1]?[14]である。」の記載を、
「本発明は以下の[1]、[3]?[12]、[14]及び[15]である。」に訂正する。

(16)訂正事項16
明細書の【0008】の
「[1]少なくとも一方の表面に、パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(a)が存在し、前記表面における前記(a)の量が0.002?0.5g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」の記載を、
「[1]少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であり、前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(17)訂正事項17
明細書の【0009】を削除する。

(18)訂正事項18
明細書の【0010】の
「前記(a)が含まれる[1]又は[2]に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる[1]に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(19)訂正事項19
明細書の【0011】の「前記(a)が含まれる[1]から[3]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる[1]又は[3]に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の【0017】の
「[5]少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(b)が存在し、前記表面における前記(b)の量が0.002?0.5g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」の記載を、
「[5]少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(21)訂正事項21
明細書の【0018】の
「前記(b)が含まれる[5]に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記グリセリンモノラウレートが含まれる[5]に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(22)訂正事項22
明細書の【0019】の
「前記(b)が含まれる[5]又は[6]に記載の鮮度保持フィルム。」の記載を、
「前記グリセリンモノラウレートが含まれる[5]又は[6]に記載の鮮度保持フィルム。」に訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の【0020】の
「[8]プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含有する[1]から[7]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[9]少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である[1]から[8]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[10]さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含む[1]から[9]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[11]前記鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなる[1]から[10]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[12]プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムであって、パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む鮮度保持フィルム。
[13]密度が0.89?0.95g/cm^(3)である直鎖状低密度ポリエチレン(A)および密度が0.91?0.93g/cm^(3)である高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量を100質量%とするとき、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)50?95質量%と、前記高圧法低密度ポリエチレン(B)5?50質量%と、を含み、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)および前記高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100質量部に対し、粘着剤(C)0.5?10質量部と、防曇剤(D)0.5?5質量部と、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の特定化合物(E)0.3?3質量部と、を含み、少なくとも一方の表面に、前記特定化合物(E)が0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在する鮮度保持フィルム。
[14][1]から[13]のいずれかに記載の鮮度保持フィルムを備える包装材。」の記載を、
「[8]プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含有する[1]及び[3]から[7]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[9]少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である[1]、[3]及び[4]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[10]さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含む[1]及び[3]から[9]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[11]前記鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなる[1]及び[3]から[10]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[12]プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムであって、パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む鮮度保持フィルム。
[14][1]及び[3]から[12]のいずれかに記載の鮮度保持フィルムを備える包装材。
[15]少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項ごとに訂正の請求をするときに、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行っているか否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(a)」を、「ステアリルジエタノールアミン」に限定し、含有量を「0.03?3質量%」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1に係る訂正に伴い、訂正前の請求項3における「化合物(a)」からその一部を削除して「ステアリルジエタノールアミン」に特定するものであり、また、訂正事項2に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴い、訂正前の請求項3における「化合物(a)」からその一部を削除して「ステアリルジエタノールアミン」に特定するものであり、また、訂正事項2に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5における「グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(b)」を、「グリセリンモノラウレート」に限定し、表面における量を「0.01?2g/m^(2)」に限定し、含有量を「0.001?3質量%」に限定し、少なくとも一方の表面の濡れ指数を「35dyn以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項5に係る訂正に伴い、訂正前の請求項6における「化合物(b)」からその一部を削除して「グリセリンモノラウレート」に特定して整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項5に係る訂正に伴い、訂正前の請求項7における「化合物(b)」からその一部を削除して「グリセリンモノラウレート」に特定して整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項2に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正事項2及び5に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正事項2に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正事項2に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正前の請求項13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正事項2及び12に係る訂正に伴い、引用関係を整理するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、訂正前の請求項5における「グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(b)」を、「ジグリセリンモノラウレート」に限定し、表面における量を「0.2?0.5g/m^(2)」に限定し、少なくとも一方の表面の濡れ指数を「35dyn以上」に限定したものを新たな請求項として追加したものである。そして、訂正前の請求項5には、「化合物(b)」として「グリセリンモノラウレート」を選択した発明と、「化合物(b)」として「ジグリセリンモノラウレート」を選択した発明の少なくとも2つが記載されていたといえるから、訂正事項14により追加された請求項15に係る発明は、訂正前の請求項5の「化合物(b)」として「ジグリセリンモノラウレート」を選択した発明と対応関係にあるものといえる。したがって、訂正事項14は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項15ないし23について
訂正事項15ないし23は、訂正事項1ないし14により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項15ないし23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項15ないし23は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1ないし11、13及び14について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。

(16)一群の請求項
訂正前の請求項1ないし4と訂正前の請求項5ないし7は、訂正前の請求項8ないし11及び14を介して一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係にあるので、訂正前の請求項1ないし11及び14は、一群の請求項である。
そして、訂正前の請求項1ないし11及び14並びに訂正前の請求項13は、訂正前の請求項14を介して一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係にあるので、訂正前の請求項1ないし11、13及び14は、一群の請求項である。
したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1ないし23は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし14は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1ないし23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
さらにまた、訂正事項15ないし23は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正の請求は行われているので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされている(特許異議申立人2は、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てをしている。)ので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1?11、13?15〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1?11、13?15〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、平成30年2月15日付け(受理日:同年2月16日)の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、
前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であり、
前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である鮮度保持フィルム。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項4】
前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1又は3に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項5】
少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、
前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。
【請求項6】
内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項7】
前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5又は6に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項8】
プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含有する請求項1及び3から7のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項9】
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項10】
さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含む請求項1及び3から9のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項11】
前記鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなる請求項1及び3から10のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項12】
プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムであって、
パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、
ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む鮮度保持フィルム。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
請求項1及び3から12のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルムを備える包装材。
【請求項15】
少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。」

2 特許異議申立ての理由の概要
(1)特許異議申立人1の特許異議申立理由の概要
特許異議申立人1は、証拠方法として以下の文献を提出し、おおむね次の理由を主張している。

・(新規性)本件特許の請求項1ないし3、5、6、8及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5、6、8及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・(進歩性)本件特許の請求項1ないし9及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・(実施可能要件)本件特許の請求項1ないし9及び14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・(サポート要件)本件特許の請求項1ないし9及び14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2003-176384号公報
甲第2号証:特開2006-70131号公報
甲第3号証:特開2007-290338号公報
甲第4号証:特開2003-182007号公報
甲第5号証:特開平10-225281号公報
甲第6号証:特開2002-233471号公報
甲第7号証:実験成績証明書(小関勝成、2017年6月8日作成)
以下、順に「甲1(1)」のようにいう。

(2)特許異議申立人2の特許異議申立理由の概要
特許異議申立人2は、証拠方法として以下の文献を提出し、おおむね次の理由を主張している。

・(新規性)本件特許の請求項1ないし3、5、6、8、10及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5、6、8、10及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・(進歩性)本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証:特公昭55-33819号公報
甲第2号証:特開2008-266463号公報
甲第3号証:特開平4-20571号公報
甲第4号証:特開平10-120039号公報
甲第5号証:特開2003-176384号公報
甲第6号証:再公表2003-066713号公報
甲第7号証:特開2000-940号公報
甲第8号証:特開2008-184478号公報
甲第9号証:特開2001-162737号公報
以下、順に「甲2(1)」のようにいう。

3 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。

(1)(新規性)本件特許の請求項1、5、6、8及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、5、6、8及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)(進歩性)本件特許の請求項1、5ないし9、13及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、5ないし9、13及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)(実施可能要件)本件特許の請求項1ないし11及び14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4)(サポート要件)本件特許の請求項1ないし11及び14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

甲1(3):特開2007-290338号公報
甲1(4):特開2003-182007号公報
甲2(3):特開平4-20571号公報
甲2(4):特開平10-120039号公報
甲2(5):特開2003-176384号公報
甲2(7):特開2000-940号公報
甲2(9):特開2001-162737号公報
なお、甲2(5)は、特許異議申立人1が提出した甲第1号証でもある。

なお、該取消理由は、訂正前の本件特許の請求項1ないし11、13及び14に係る発明に対して通知したものである。以下、順に「取消理由1」のようにいう。

4 取消理由についての判断
(1)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 甲1(3)、甲2(3)及び甲2(5)に記載された発明
(ア)甲1(3)に記載された発明
甲1(3)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献も同様。

・「【請求項1】
被包装物が接触することとなるフィルム層がポリオレフィン系樹脂組成物で成形された包装用積層フィルムにおいて、被包装物が接触することとなるフィルム層が、ポリオレフィン系樹脂に下記のA成分を0.05?1質量%となるよう含有させたポリオレフィン系樹脂組成物で成形され且つ被包装物が接触することとなる面に下記のB成分が5?80mg/m^(2)となるよう塗布されたものから成ることを特徴とする包装用積層フィルム。
A成分:3?12価の脂肪族多価アルコールと炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物、アルキル基の炭素数6?22のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩及びアルキル基の炭素数2?22のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩及びアルキル基の炭素数2?22の1,2-ビス(アルキルオキシカルボニル)-1-エタンスルホン酸アルカリ金属塩から選ばれる一つ又は二つ以上
B成分:3価又は4価の脂肪族多価アルコールと炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物、炭素数8?22のアルキルジエタノールアミン、炭素数8?22のアルキルジエタノールアミド及び炭素数8?22のアルキルジエタノールアミンと炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物から選ばれる一つ又は二つ以上」

・「【請求項6】
被包装物が接触することとなるフィルム層を形成するポリオレフィン系樹脂組成物に用いるポリオレフィン系樹脂がエチレン単独重合体又はエチレンと炭素数4?8のα-オレフィンとの共重合体である請求項1?5のいずれか一つの項記載の包装用積層フィルム。」

・「【0001】
本発明は包装用積層フィルム及びその製造方法に関する。近年、野菜、肉、鮮魚、惣菜等の食品の包装には、合成樹脂製の積層フィルムが広く使用され、なかでも被包装物が接触することとなるフィルム層をポリオレフィン系樹脂組成物で成形した積層フィルムが多く使用されている。かかる包装用積層フィルムには、被包装物を鮮明に見せるために透明性及び防曇性が要求され、また包装の自動化や高速化に適応するために滑性及びヒートシール性が要求される。本発明はこれらの要求に応える包装用積層フィルム及びその製造方法に関する。」

・「【0023】
B成分としての3価又は4価の脂肪族多価アルコールと炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物において、部分エステル化合物の原料となる3価又は4価の脂肪族多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビタン、ジグリセリン、エチレングリコールジグリセリルエーテル等が挙げられる。また部分エステル化合物の他の原料となる炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸としては、オクタン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、テトラデセン酸、オクタデセン酸、エイコセン酸、イソオクタデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。B成分としての部分エステル化合物は、以上説明した3価又は4価の脂肪族多価アルコールと炭素数8?22の脂肪族モノカルボン酸との適宜の組み合わせから得られるものであり、いずれの場合においても分子中に少なくとも1個の遊離の水酸基を有するものであるが、なかでも3価又は4価の脂肪族多価アルコールと炭素数12?18の脂肪族モノカルボン酸とから得られる部分エステル化合物が好ましく、グリセリン又はジグリセリンと炭素数12?18の脂肪族モノカルボン酸とから得られる部分エステル化合物がより好ましい。かかる部分エステル化合物としてはグリセリン=モノオレアート、ジグリセリン=モノラウラート、ジグリセリン=モノステアラート、ジグリセリン=モノオレアート等が挙げられる。
【0024】
B成分としての炭素数8?22のアルキルジエタノールアミンとしては、カプリリルジタエノールアミン、カプリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ベヘニルジエタノールアミン等が挙げられるが、なかでもアルキル基の炭素数が12?18のアルキルジエタノールアミンが好ましい。」

・「【0035】
試験区分1(包装用積層フィルムの製造)
・実施例1
エチレン-(1-ブテン)共重合体(エチレン共重合比率95%、密度0.920g/cm^(3)、MFR2.1g/10分)(E-1)90部及びデカグリセリン=モノラウラート(A-1)10部をタンブラーブレンダーに投入して、混合した後、更に二軸押出機により溶融混練して、マスターペレットを得た。このマスターペレット1.5部と前記のエチレン-(1-ブテン)共重合体(E-1)98.5部をタンブラーブレンダーにて混合し、被包装物が接触することとなるフィルム層用のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。このポリオレフィン系樹脂組成物が被包装物が接触することとなる一方の外側のフィルム層に、また前記のエチレン-(1-ブテン)共重合体(E-1)が中間のフィルム層及び他方の外側のフィルム層になるよう、Tダイ法により30℃に冷却しながら成形し、厚さ60μmの3層共押出しフィルム(各フィルム層の厚さの比は、被包装物が接触することとなる一方の外側のフィルム層/中間のフィルム層/他方の外側のフィルム層=1/4/1)を得た。続いて、グリセリン=モノオレアート0.4部をイソプロピルアルコール99.6部に溶解し、固形分濃度0.4%とした溶液を前記した3層共押出しフィルムの被包装物が接触することとなる面にグラビアコート法で片面当り10g/m^(2)(固形分換算では40mg/m^(2))となるよう塗布した後、70℃で乾燥して包装用積層フィルムを得た。
【0036】
・実施例2?16及び比較例1?8
実施例1と同様にして、実施例2?16及び比較例1?8の包装用積層フィルムを製造した。実施例1も含め、以上で製造した各例の包装用積層フィルムの内容を表1にまとめて示した。
【0037】
【表1】
・・・(略)・・・
【0038】
表1において、
*1:表1中の含有量(%)となるようA成分を含有させたポリオレフィン系樹脂組成物で成形された被包装物が接触することとなる一方の外側のフィルム層
*2:中間のフィルム層
*3:他方の外側のフィルム層
A-1:デカグリセリン=モノラウラート
A-2:ヘキサグリセリン=モノミリスタート
A-3:ジグリセリン=モノステアラート
A-4:トリグリセリン=モノパルミタート
A-5:テトラグリセリン=モノオレアート
A-6:ジグリセリン=モノステアラート/テトラグリセリン=モノオレアート=50/50(質量比)の混合物
A-7:ジグリセリン=モノステアラート/ヘキサグリセリン=モノラウラート=50/50(質量比)の混合物
A-8:グリセリン=モノステアラート
A-9:ソルビタン=モノステアラート
A-10:ドデシルスルホン酸ナトリウム
A-11:オクタデシルスルホン酸ナトリウム
A-12:ジグリセリン=モノステアラート/テトラデシルスルホン酸ナトリウム/ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム=50/25/25(質量比)の混合物
A-13:グリセリン=モノベヘナート
A-14:デカグリセリン=モノカプリラート
A-15:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
A-16:1,2-ビス(オクチルオキシカルボニル)-1-エタンスルホン酸エステルナトリウム
a-1:ドデシルジエタノールアミン
a-2:ステアリルジエタノールアミド
a-3:ステアリルジエタノールアミンとステアリン酸とのエステル化合物(モノエステル含有量70%)
【0039】
B-1: グリセリン=モノオレアート
B-2:ジグリセリン=モノラウラート
B-3:ジグリセリン=モノステアラート
B-4:ジグリセリン=モノオレアート
B-5:グリセリン=モノオレアート/ジグリセリン=モノラウラート=50/50(質量比)の混合物
B-6:グリセリン=モノオレアート/ジグリセリン=モノステアラート=50/50(質量比)の混合物
B-7:グリセリン=モノオレアート/ジグリセリン=モノオレアート=50/50(質量比)の混合物
B-8:ソルビタン=モノラウラート
B-9:ソルビタン=モノオレアート
B-10:グリセリン=モノオレアート/ソルビタン=モノラウラート=50/50(質量比)の混合物
B-11:ジグリセリン=モノラウラート/ソルビタン=モノオレアート=50/50(質量比)の混合物
B-12:ジグリセリン=モノステアラート/ソルビタン=モノオレアート=50/50(質量比)の混合物
B-13:ジグリセリン=モノカプリラート
B-14:ドデシルジエタノールアミン
B-15:ステアリルジエタノールアミド
B-16:ステアリルジエタノールアミンとステアリン酸とのエステル化合物(モノエステル含有量70%)
b-1:ヘキサグリセリン=モノラウラート
b-2:ショ糖ラウラート
b-3:ドデシルアルコールのエレンオキサイド10モル付加物」

・「【0049】
【表3】
・・・(略)・・・」

・「【0055】
【表5】
・・・(略)・・・」

甲1(3)の上記記載を整理すると、甲1(3)には、次の発明(以下、順に「甲1(3)発明1」及び「甲1(3)発明2」という。)が記載されていると認める。

<甲1(3)発明1>
「B成分としての炭素数8?22のアルキルジエタノールアミンとして、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、
被包装物が接触することとなる面にB成分が5?80mg/m^(2)となるよう塗布された、
包装用積層フィルム。」

<甲1(3)発明2>
「B成分として、グリセリン又はジグリセリンと炭素数12?18の脂肪族モノカルボン酸とから得られる部分エステル化合物、
被包装物が接触することとなる面にB成分が5?80mg/m^(2)となるよう塗布された、
被包装物が接触することとなるフィルム層が、エチレン共重合体である、
包装用積層フィルム。」

(イ)甲2(3)に記載された発明
甲2(3)には、次の記載がある。

・「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、従来の技術で不充分な点を改善し、安全で長期間有効な抗菌力を持ち、同時に防曇性、帯電防止性を合わせ持ち、用途に通した物性を維持したフィルム・シート、シートから加工される容器などの食品包装用品を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明はオクタン酸モノグリセリド、デカン酸モノグリセリド及びラウリン酸モノグリセリド(以下それぞれC_(8)、C_(10)およびC_(12)と略称する。)の混合物を含有させたシート、フィルムが優れた抗菌性、防曇性、帯電防止性を合せ持っていることを見い出し本発明に到達したものである。」(第2ページ右上欄第1ないし14行)

・「〔作用〕
C_(8)、C_(10)およびC_(12)各単独の抗菌力は菌の種類によって相違するが、概してC_(8)≧C_(10)>C_(12)の順に小になる。しかしそれぞれを樹脂に混練するとおよそC_(8)≦C_(10)<C_(12)の順になる。」(第3ページ右上欄第5ないし9行)

・「(本発明の試料)
低密度ポリエチレン(三菱化成社製 三菱ポリエチF131 MFR=1.3 ρ=0.924)のペレット粉砕品にC_(8)とC_(12)をそれぞれ1:2、1:3、3:1の重量比で混合した組成物、C_(10)とC_(12)をそれぞれ1:3、3:1の重量比で混合した組成物、およびC_(8)とC_(10)を等重量づつ混合したものとC_(12)を3:1の重量比で混合した組成物をそれぞれ均一に混合し、二軸スクリュータイプ混練機を用いて溶融混練し、5重量%マスターバッチを作成した。このマスターバッチをF131ペレットで、0.1%、0.3%、0.5%含有まで希釈し、厚さ50μmのフィルムをインフレーション法で得た。
(比較の試料)
モノグリセリドとしてC_(8)、C_(10)またはC_(12)をそれぞれ単独に用いた以外は上記と全く同じ方法で厚さ50μmのフィルムを得た。
またモノグリセリドの代りにゼオライト銀(Xと略する)、パラオキシ安息香酸ブチルエステル(Yと略する)を用いた以外は上記と全く同じ方法で厚さ50μmのフィルムを得た。
(無添加の試料)
F131ペレットを用いてインフレーション法で厚さ50μmのフィルムを得た。
実施例-1
前記のフィルム試料を用いて、次の方法で抗菌効力試験を実施した。
・・・(略)・・・
結果を表-1に示す。
比較例に較べて、格段に有効なことが示されている。また本結果はフィルム接触面だけでなく、非接触範囲にも効果の及ぶことが分かる。
実施例-2
前記のフィルム試料および菌株を供試して、繊維衛生協議会の菌数測定方法に準じて試験をした。
フィルム試料を非滅菌および121℃、20分のオートクレーブ滅菌の2法について実施した結果を表-2に示す。
比較例に較べて、本発明の各例が優れており、静菌性でなく殺菌性があることが分る。」(第3ページ左下欄第13行ないし第4ページ右上欄第6行)

・「表-1 抗菌効力試験(ハロー試験)
・・・(略)・・・
表-2 抗菌効力試験(菌数測定)
・・・(略)・・・」(第4ページ右下欄表-1及び第5ページ左上欄表-2)

甲2(3)の上記記載を整理すると、甲2(3)には、次の発明(以下、「甲2(3)発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2(3)発明>
「低密度ポリエチレンにグリセリンモノラウレートを抗菌剤として添加して得た食品の包装に用いられる抗菌性フィルム。」

(ウ)甲2(4)に記載された発明
甲2(4)には、次の記載がある。

・「【0023】
【実施例】以下、実験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
実験例1
[試料1の作成]ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、下記するようにそれぞれの配合剤を所定量配合し、スーパーミキサーでドライアップ後、押出機により厚さ0.015mmのフィルムに押出し、試料1とし、抗菌性及び防曇性について評価した。
【0024】
ポリ塩化ビニル樹脂 100重量部
ジイソノニルアジペート(DINA) 28重量部
ジ(n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル)アジペート(610A)
4重量部
エポキシ化大豆油 10重量部
安定剤(Ca-Zn系液状安定剤) 2重量部
抗菌剤{ジグリセリンモノラウリン酸エステル(DGML)(モノエステル含量85重量%)} 1.5重量部
【0025】
[試料2の作成]上記試料1中の抗菌剤をジグリセリンモノミリスチン酸エステル(DGMM)(モノエステル含量83重量%)に代えた以外は試料1と同じにして試料2を作成し、抗菌性及び防曇性について評価した。
【0026】
[試料3の作成]上記試料1中の抗菌剤をジグリセリンモノパルミチン酸エステル(DGMP)(モノエステル含量85重量%)に代えた以外は試料1と同じにして試料3を作成し、抗菌性及び防曇性について評価した。
【0027】
[比較の試料4の作成]上記試料1中の抗菌剤をグリセリンモノカプリル酸エステル(GMC)(モノエステル含量85重量%)に代えた以外は試料1と同じにして比較の試料4を作成し、抗菌性及び防曇性について評価した。」

・「【0035】実験例2
低密度ポリエチレン(MI=3)のペレット粉砕品に、前記実験例1の試料1?3で使用した抗菌剤{ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(DGML、DGMM、DGMP)}及び前記実験例1の比較の試料4?7に用いた抗菌剤(GMC、DGL、銀ゼオライト、試料7は無し)を3重量%混合し、二軸押出機を用いて溶融混練し、3重量%マスターバッチを作成した。このマスターバッチを使用して、最終濃度1重量%含有まで希釈し、厚さ0.025mmのフィルムをTダイ押出し法にて作成し、試料8?14とした。各試料を50℃、20時間エージング処理後、抗菌性及び防曇性について評価した。
【0036】<抗菌性の評価>得られた試料8?14を用いて、下記方法で抗菌性について評価した。菌株として、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)を用い、生菌数104?106CFU/mlになるように生菌数測定用SCD培地(日本製薬社製)で希釈し、希釈菌液とした。この希釈菌液をプラスチック製滅菌シャーレに0.2ml分注する。各試料50×50mm栽片を、希釈菌液の上に載せ、試料と菌液を密着させる。この試料の入ったシャーレを、37℃、20時間培養した。所定時間培養後、試料に密着した菌液を生理食塩水10mlで洗い流し、洗液0.1mlを標準寒天培地を用い、混釈平板培養法(37℃、24時間培養)により生菌数を測定し、試料片1枚当たりに換算した。結果を表3に示す。尚、試料15として、検体に滴下した菌液と同量の菌液をシャーレに保存した対照についても評価した。
【0037】<防曇性の評価>前記した通り。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
・・・(略)・・・」

・「【0045】
【発明の効果】本発明によれば、人体や食品に接触しても極めて安全で優れた抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物が得られた。しかも本発明は、抗菌性と共に優れた帯電防止性及び防曇性を有している。本発明による抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物によって食品包装用フィルムや容器を形成し、該フィルムや容器を用いて食品を包装した場合、フィルム又は容器表面に付着した微生物の生育を抑制ないしは殺菌できる。更に防曇性を有しているため内面に曇りが生じることがない。また、本発明による抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物によって成型品(文具、玩具、雑貨品等)を形成した場合、優れた抗菌性を有していると共に、帯電防止性をも有しているため、埃等の付着が少ない。更に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を農業用フィルム(ハウス用、展張用等)として用いた場合、表面に付着した微生物の生育を抑制ないしは殺菌できる。更に防曇性を有しているため内面に曇りが生じることがない。そして帯電防止性をも有しているため、埃等の付着が少ない。本発明に係る抗菌剤は、食品添加物であるポリグリセリン脂肪酸エステルであるので食品衛生上極めて安全である。本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、シート、フィルムその他の成形品であってもよいし、ペレット、コンパウンドその他の成形用材料であってもよい。」

甲2(4)の上記記載を整理すると、甲2(4)には、次の発明(以下、「甲2(4)発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2(4)発明>
「低密度ポリエチレンにジグリセリンモノラウレートを抗菌剤として添加して得た食品の包装に用いられる抗菌性フィルム。」

イ 対比・判断
(ア)甲1(3)を主引用文献とした場合
a 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1(3)発明1を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、
前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であるフィルム。」

そして、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である」のに対し、甲1(3)発明1においては、そうであるか不明な点。

<相違点2>
本件特許発明1においては、「鮮度保持フィルム」であるのに対し、甲1(3)発明1においては、そうであるか不明な点。

そこで、事案に鑑み、相違点1について検討するに、甲1(3)発明1に対して、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を適用することについては、甲1(3)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲1(3)発明1において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1(3)発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件特許発明5について
本件特許発明1と甲1(3)発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であるフィルム。」

そして、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3>
本件特許発明5においては、「前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲1(3)発明2においては、そうであるか不明な点。

<相違点4>
本件特許発明5においては、「鮮度保持フィルム」であるのに対し、甲1(3)発明2においては、そうであるか不明な点。

そこで、事案に鑑み、相違点3について検討するに、甲1(3)発明2に対して、相違点3に係る本件特許発明5の発明特定事項を適用することについては、甲1(3)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲1(3)発明2において、相違点3に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1(3)発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件特許発明6ないし9及び14について
本件特許発明6ないし9及び14は、請求項1又は5を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明1及び5と同様に、甲1(3)発明1又は2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

d 本件特許発明15について
本件特許発明15と甲1(3)発明2を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在するフィルム。」

そして、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5>
本件特許発明15においては、「前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲1(3)発明2においては、そうであるか不明な点。

<相違点6>
本件特許発明15においては、「鮮度保持フィルム」であるのに対し、甲1(3)発明2においては、そうであるか不明な点。

そこで、事案に鑑み、相違点5について検討するに、甲1(3)発明2に対して、相違点5に係る本件特許発明15の発明特定事項を適用することについては、甲1(3)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲1(3)発明2において、相違点5に係る本件特許発明15の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点6について検討するまでもなく、本件特許発明15は、甲1(3)発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)甲2(3)を主引用文献とした場合
a 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2(3)発明を対比する。
甲2(3)発明は現に抗菌性を備えたものであること及び本件特許明細書の【0022】において、グリセリンモノラウレートが鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することにより高い抗菌性を示す旨説明されていることから、甲2(3)発明において、グリセリンモノラウレートの量は、0.002?0.5g/m^(2)の範囲に含まれるものといえる。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」

そして、次の点で相違する。
<相違点7>
本件特許発明5においては、「前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲2(3)発明においては、そうであるか不明な点。

そこで、相違点7について検討するに、甲2(3)発明に対して、相違点7に係る本件特許発明5の発明特定事項を適用することについては、甲2(3)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲2(3)発明において、相違点7に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明5は、甲2(3)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件特許発明6ないし9及び14について
本件特許発明6ないし9及び14は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明5と同様に、甲2(3)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件特許発明15について
本件特許発明15と甲2(3)発明を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「鮮度保持フィルム。」

そして、次の点で相違する。
<相違点8>
本件特許発明15においては、「少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲2(3)発明においては、そうであるか不明な点。

そこで、相違点8について検討するに、甲2(3)発明に対して、相違点8に係る本件特許発明15の発明特定事項を適用することについては、甲2(3)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲2(3)発明において、相違点8に係る本件特許発明15の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、甲2(3)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)甲2(4)を主引用文献とした場合
a 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2(4)発明を対比するに、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「鮮度保持フィルム。」

そして、次の点で相違する。
<相違点9>
本件特許発明5においては、「少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲2(4)発明においては、そうであるか不明な点。

そこで、相違点9について検討するに、甲2(4)発明に対して、相違点9に係る本件特許発明5の発明特定事項を適用することについては、甲2(4)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲2(4)発明において、相違点9に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明5は、甲2(4)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件特許発明6ないし9及び14について
本件特許発明6ないし9及び14は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明5と同様に、甲2(4)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件特許発明15について
本件特許発明15と甲2(4)発明を対比する。
甲2(4)発明は現に抗菌性を備えたものであること及び本件特許明細書の【0022】において、ジグリセリンモノラウレートが鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することにより高い抗菌性を示す旨説明されていることから、甲2(4)発明において、ジグリセリンモノラウレートの量は、0.002?0.5g/m^(2)の範囲に含まれるものといえる。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)である鮮度保持フィルム。」

そして、次の点で相違する。
<相違点10>
本件特許発明15においては、「少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である」のに対し、甲2(4)発明においては、そうであるか不明な点。

そこで、相違点10について検討するに、甲2(4)発明に対して、相違点10に係る本件特許発明15の発明特定事項を適用することについては、甲2(4)には、記載も示唆もされていない。
また、このことは、取消理由で提示した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲2(4)発明において、相違点10に係る本件特許発明15の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明15は、甲2(4)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についてのむすび
したがって、本件特許発明1、5、6、8、14及び15は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえない。
また、本件特許発明1、5ないし9、14及び15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

(2)取消理由3(実施可能要件)について
実施可能要件
物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産及び使用をすることができる程度の記載を要する。
そこで、検討する。

イ 本件特許発明1、5及び15の特徴
本件特許発明1は、抗菌性の発揮の観点から特定化合物1であるステアリルジエタノールアミンの含有量を0.03?3質量%とし、0.002?0.5g/m^(2)の量で表面に存在するように調整したことを特徴とするものである。
本件特許発明5は、抗菌性の発揮の観点から特定化合物1であるグリセリンモノラウレートの含有量を0.001?3質量%とし、0.01?0.2g/m^(2)の量で表面に存在するようにし、少なくとも一方の表面の濡れ指数を35dyn以上に調整したことを特徴とするものである。
本件特許発明15は、抗菌性の発揮の観点から特定化合物1であるジグリセリンモノラウレートを0.2?0.5g/m^(2)の量で表面に存在するようにし、少なくとも一方の表面の濡れ指数を35dyn以上に調整したことを特徴とするものである。

ウ 本件特許の発明の詳細な説明の記載について
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から5に記載の技術では、抗菌性及びそれに基づく鮮度保持性が低く、また安定して高い抗菌性を得ることができなかった。本発明は、高い抗菌性を有する鮮度保持フィルム及び包装材を提供することを目的とする。」

・「【0022】
[第一の実施形態]
本発明に係る鮮度保持フィルムは、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、特定化合物1とも示す)が、少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在する。特定化合物1が、鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することで、高い抗菌性を有する鮮度保持フィルムが得られる。該鮮度保持フィルムは、抗菌性の観点から、特定化合物1を0.001?3質量%含有することが好ましい。また、該鮮度保持フィルムは、軽量で、フィルム加工性に優れる観点から、プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、該鮮度保持フィルムは、抗菌性の観点から、JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌を用いて行う時、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りを行わない条件下において、24時間後の鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面の生菌数が1/100倍以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明においての鮮度保持フィルムとは、該鮮度保持フィルムにより包装体を形成し、被包装物を封入した場合に、前記被包装物と面する表面の菌抑制作用のより、被包装物の鮮度が保たれる効果を有するフィルムをいう。
【0024】
<特定化合物1>
本発明に係る特定化合物1としては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレートを単独で用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。パルミチルジエタノールアミンは、炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールアミンは、炭素数18のステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。ジグリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とジグリセリンとのモノエステルである。
【0025】
ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミンやラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高い。このため、鮮度保持フィルムを溶融成形する際、特に鮮度保持フィルムが延伸フィルムである場合の熱固定において、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは比較的揮発しにくい。また、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、抗菌性、および鮮度保持性に優れる。さらに、鮮度保持フィルムを包装用フィルムとして用いた場合、包装用フィルムに接触する内容物である被包装物への移行が比較的遅く、安全性に優れており、加えてその性能を持続することができる。なお、鮮度保持フィルムの「被包装物」を「内容物」と記すことがある。
【0026】
(アルキルジエタノールアミン;長鎖アルキル基の部分の炭素数;融点)
ステアリルジエタノールアミン;18個;51℃
パルミチルジエタノールアミン;16個;28℃
ミリスチルジエタノールアミン;14個;22?23℃
ラウリルジエタノールアミン;12個;常温で液体。
【0027】
本発明に係る特定化合物1は、個々に、類似化合物を含有していてもよい。パルミチルジエタノールアミン(炭素数16)は、例えば少量のミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12?20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンを含んでもよい。また、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)は、例えば炭素数16?20のアルキル基を有するアルキルジエタノール等を少量含んでもよい。また、特定化合物1は、これらのパルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの類似化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成した化合物を少量含んでもよい。さらに、グリセリンモノラウレートは、例えば炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、ジグリセリンモノラウレートは、炭素数が10、14等である高級脂肪族カルボン酸とジグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、前記(ジ)グリセリンモノエステルは、(ジ)グリセリンジエステル、(ジ)グリセリントリエステルなどの類似化合物、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、ジグリセリン部分がトリグリセリンである類似化合物を少量含んでもよい。これら特定化合物1の類似化合物は、一般に特定化合物1の合成、分離などの工程において、同時に合成されたり、分離が困難であったりする。また、当該類似化合物は、特定化合物1 100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、含まれないことが好ましい。
【0028】
さらに、本発明に係る鮮度保持フィルムは、後述するように特定化合物1以外にも、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤(但し、特定化合物1を除く。)滑材などの他の添加剤を含むことができる。これら他の添加剤と、前記類似化合物との合計は、特定化合物1 100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、30質量部以下含まれてもよい。
【0029】
<抗菌性、鮮度保持性などの機能付与>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、少なくとも一方の表面に特定化合物1が0.002?0.5g/m^(2)存在する。本発明に係る鮮度保持フィルムは、少なくとも一方の表面に特定化合物1が0.004?0.4g/m^(2)存在することが好ましく、0.01?0.3g/m^(2)存在することがより好ましく、0.02?0.2g/m^(2)存在することがさらに好ましい。前記特定化合物1は、鮮度保持フィルムの内容物と接する面に0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましい。特定化合物1を鮮度フィルムの表面に存在させる方法としては、前述したように、表面に特定化合物1を噴霧したり、表面に特定化合物1を含む溶液、懸濁液等を塗布したりするコート法が挙げられる。また、鮮度保持フィルムの内容物と接する面を含む表面層や中間層に特定化合物1を含有させてもよい。鮮度保持フィルム中の特定化合物1の含有量は、特定化合物1を表面に前記範囲の量ブリードアウトさせることができる観点から、0.001?3質量%が好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.1?2質量%がさらに好ましい。」

・「【0052】
また、本発明に係る鮮度保持フィルムが三層以上の構造の場合であっても、一層または二層からなる場合であっても、鮮度保持フィルム全体に対する特定化合物1の含有量は0.001?3質量%であることが好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.03?2質量%がさらに好ましく、0.04?0.9質量%が特に好ましく、0.04?0.6質量%が最も好ましい。」

・「【0078】
<他の好ましい形態>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、抗菌性が向上する観点から、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが好ましい。該濡れ指数は36dyn以上であることがより好ましく、37dyn以上であることがさらに好ましく、38dyn以上であることが特に好ましい。該濡れ指数の上限は特に限定されないが、例えば50dyn以下とすることができる。また、内容物と接する鮮度保持フィルムの表面層の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが好ましい。なお、該濡れ指数は和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液を用いて確認した値である。鮮度保持フィルムの表面の濡れ指数を35dyn以上にする方法としては、該表面に対してコロナ処理を行う方法が好ましい。」

・「【実施例】
【0163】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0164】
[実験1]
<試験方法>
(1)抗菌試験
JISZ2801に準じて抗菌試験を、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。但し、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
【0165】
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ菌(Salmonella)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)を規定数量(JIS試験で0.4cc用いたブイヨン)入れて4cm角の鮮度保持フィルム表面に滴下して、ポリエチレンフィルムとの間に挟み込んだ。35℃で24時間経過した後に鮮度保持フィルム表面を洗浄し、その普通ブイヨン培地を含む洗浄液を回収し、それを、普通寒天培地を用いて培養してコロニーの数をカウントした。
【0166】
即ち、顕微鏡下で菌の個数をカウントすることは困難なため、コロニーの数を、目視によりカウントし、その1グラム(g)あたりのコロニーの数を生菌数CFU(colony forming unit)(単位[個/g])とした。また2枚のポリエチレンフィルムの間に挟み込んだサンプルをコントロール(Control)として、比較の基準とした。表にはn=1から3の平均値も合わせて示した。但し、測定値のバラツキが10倍以上の場合には、JIS規格上平均値は計算できない。
【0167】
また、抗菌性のバラツキと、抗菌性能は以下の基準で評価した。
【0168】
(バラツキ)
なし:n=1?3における最大値と最小値との比が10よりも小さい。
小 :n=1?3における最大値と最小値との比が10?100の範囲内である。
大 :n=1?3における最大値と最小値との比が100よりも大きい。
【0169】
(抗菌性能)
A:菌数が<10であり、事実上不検出である。
B:controlとの比(実験結果/control)が1/100以下である。
C:controlとの比(実験結果/control)が1/100を超えて1/10以下である。
D:controlとの比(実験結果/control)が1/10よりも大きい。
【0170】
(2)鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量(g/m^(2))
ステアリルジエタノールアミンの塗布量から鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量を求めた。
【0171】
(3)鮮度保持フィルム表面のグリセリンモノラウレート(C12)の量(g/m^(2))
グリセリンモノラウレートの塗布量から鮮度保持フィルム表面のグリセリンモノラウレートの量を求めた。
【0172】
(4)鮮度保持フィルム表面のジグリセリンモノラウレート(C12)の量(g/m^(2))
グリセリンモノラウレートの塗布量から鮮度保持フィルム表面のジグリセリンモノラウレートの量を求めた。
【0173】
<実施例1?13、比較例1、2>
(1)プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム
(1-1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0174】
(1-2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0175】
前記材料を用いた裏面層/中間層/表面層の三層フィルムを二軸延伸機で層厚み比1/8/1で連続成形し、多層延伸フィルムからなる鮮度保持フィルムを製造した。鮮度保持フィルムの延伸温度は縦延伸:100℃、横延伸:180℃であった。ヒートセット温度は180℃であり、セット時間は10秒であった。更に、コロナ面の濡れ指数が38dynとなるように、裏面層の表面に対しコロナ処理を行った。
【0176】
ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート(C12)、又はジグリセリンモノラウレートを、50℃に加温された精製水/IPA(イソプロピルアルコール)=80/20(質量比)の溶液に溶解した。これらの溶液の一つを、前記鮮度保持フィルムの表面層の表面に対し、表面における特定化合物1の量が表1から3に示される量となるようにコートバーを用いてコートし、100℃の温風で1分間加熱し、乾燥した。試験結果を表1から3に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
【表3】

【0180】
表1から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)の範囲内で存在する実施例1?7は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、ステアリルジエタノールアミンの量が前記範囲から外れる比較例1は、抗菌性が認められなかった。
【0181】
また、表2から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にグリセリンモノラウレートが0.002?0.5g/m^(2)の範囲内で存在する実施例8?13は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、グリセリンモノラウレートの量が前記範囲から外れる比較例2は、抗菌性が認められなかった。
【0182】
更に、表3から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にジグリセリンモノラウレートが0.200g/m^(2)存在する実施例14は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100程度であり、ある程度の抗菌性が認められた。」

・「【0183】
<実施例15?26、比較例3?9>
(2)エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルム
(2-1)中間層
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:0.920g/cm^(3)、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
【0184】
(2-2)裏面層
裏面層の材料として、前記直鎖状低密度ポリエチレンに以下の材料をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0185】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753。
【0186】
(2-3)表面層
表面層の材料として、前記直鎖状低密度ポリエチレンに以下の(a)及び(b)をそれぞれ1000ppm配合し、さらに以下の(c)から(f)を表4から8に示す量配合した材料を用いた。
【0187】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753
(c)ステアリルジエタノールアミン
花王株式会社製
(d)グリセリンモノラウレート(C12モノグリ)
理研ビタミン社製
(e)ジグリセリンモノラウレート(C12ジグリ)
理研ビタミン社製
(f)ポリエチレングリコール(PEG)
PEG-1 分子量:20万(g/M) 第一工業製薬製
PEG-2 分子量:2万(g/M) 日油製。
【0188】
前記材料を用いた裏面層/中間層/表面層の三層キャストフィルムを層厚み比1/3/1で製造した。押出条件はダイス温度が200℃、チル温度が50℃であった。また、濡れ指数が38dynなるように表面層(シール層)の表面にコロナ処理を行った。試験結果を表4?8に示す。
【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
【表8】



・「【0239】
<実施例9>
(1)中間層
中間層の材料には、エチレン・1-ヘキセン共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(三井化学株式会社製、密度:0.920g/cm^(3)、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃、重量平均分子量(Mw):71,700、分子量分布(Mw/Mn):2.48)を用いた。
【0240】
(2)表面層及び裏面層
裏面層の材料には、下記(a)が0.1質量%(1000ppm)、及び下記(b)が0.1質量%(1000ppm)配合された前記LLDPEを用いた。また、表面層の材料には、下記(a)が0.1質量%(1000ppm)、下記(b)が0.1質量%(1000ppm)、及びステアリルジエタノールアミンが0.5質量%(5000ppm)配合された前記LLDPEを用いた。
【0241】
(a)シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)。
【0242】
前記材料を用いて、表面層/中間層/裏面層の3層フィルムをキャスト法により溶融成形した。成形条件は以下の通りである。
【0243】
成形条件
押出機のダイス温度:200℃
チル温度:50℃。
【0244】
3層フィルムの厚さの比率は表面層/中間層/裏面層=1/3/1であり、全体の厚みは40μmであった。得られた3層フィルムの裏面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。この3層フィルムを用いて、大腸菌についての抗菌試験とヘイズの測定を行った。結果を表12に示す。
【0245】
<比較例5>
実施例9において、表面層にステアリルジエタノールアミンを配合しない以外は実施例9と同様に行った。結果を表12に示す。
【0246】
【表12】

【0247】
表12から明らかなように、内容物が接触する表面層の表面にステアリルジエタノールアミンが2×10^(-3)g/m^(2)の割合で存在している実施例9は、大腸菌に対して優れた抗菌性を示した。またヘイズも10%を越えておらず、透明性に優れる鮮度保持フィルムであった。」

・「【0269】
<実施例1>
(粘着剤(C)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕50質量%、及び粘着剤(C)として芳香族系炭化水素樹脂〔荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンA100〕50質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(MC)を得た。
【0270】
(防曇剤(D)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕90質量%、及び防曇剤(D)としてジグリセリンオレート〔理研ビタミン(株)製、商品名:O-71-DE〕10質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(MD)を得た。
【0271】
(特定化合物(E)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕90質量%、及び特定化合物(E)としてステアリルジエタノールアミン〔東京化成(株)〕10質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(ME)を得た。
【0272】
(樹脂組成物の調製)
下記材料を混合して樹脂組成物を得た。
【0273】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕39質量部
高圧法低密度ポリエチレン(B)〔三井デュポン(株)製、密度0.917g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR7.2g/10分〕30質量部
前記マスターバッチ(MC)10質量部
前記マスターバッチ(MD)25質量部
前記マスターバッチ(ME)5質量部。
【0274】
なお、樹脂組成物の組成は、(A)及び(B)の合計を100質量%とするとき、(A)70質量%、(B)30質量%であった。また、(A)及び(B)の合計量100質量部に対し、(C)5質量部、(D)2.5質量部、(E)0.5質量部であった。
【0275】
(鮮度保持フィルムの成形)
Tダイ付押出機を用いて前記樹脂組成物を、成形樹脂温度250℃、キャストロール温度25℃、延伸倍率1.2倍、巻取速度200m/分の条件下で、厚みが13μmの単層フィルムを押出成形し、鮮度保持フィルムを得た。
【0276】
<比較例1>
前記マスターバッチ(ME)5質量部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕4.5質量部を加えた以外は実施例1と同様に行い、鮮度保持フィルムを得た。
【0277】
得られた鮮度保持フィルムについて、上記方法により各種特性を評価した。評価結果を表19に示す。
【0278】
【表19】

【0279】
表19から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンが0.010g/m^(2)存在する実施例1は、24時間経過後の大腸菌数および黄色ブドウ球菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、特定化合物(E)が表面に存在しない比較例1は抗菌性が認められなかった。」

本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の特徴及びその実施例(作成方法を含めて)について、【0022】ないし【0029】、【0052】、【0173】ないし【0176】、【0183】ないし【0193】、【0239】ないし【0247】及び【0269】ないし【0279】等に詳細に記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明5の特徴及びその実施例(作成方法を含めて)について、【0022】ないし【0029】、【0052】、【0078】、【0173】ないし【0176】、【0178】及び【0183】ないし【0193】等に詳細に記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明15の特徴及びその実施例(作成方法を含めて)について、【0022】ないし【0029】、【0078】、【0173】ないし【0176】、【0179】及び【0183】ないし【0193】等に詳細に記載されている。
したがって、本件特許発明1、5及び15の物の発明について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産及び使用をすることができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
請求項1及び5を直接又は間接的に引用する他の発明についても、同様である。

エ 取消理由3(実施可能要件)についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、3ないし11、14及び15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(3)取消理由4(サポート要件)について
ア サポート要件
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

イ 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、上記第3 4(2)ウのとおりの記載がある。

ウ 発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明の【0006】等の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「高い抗菌性を有する鮮度保持フィルム及び包装材を提供すること」である。

エ 本件特許発明5、請求項5を直接又は間接的に引用する本件特許発明6ないし11及び14並びに本件特許発明15について
本件特許の発明の詳細な説明の【0163】ないし【0182】等(特に【0178】の【表2】及び【0179】の【表3】)の記載から、少なくとも一方の表面にグリセリンモノラウレートが存在するフィルムについて、その量が0.01?0.2g/m^(2)の場合、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。また、同じく上記記載から、少なくとも一方の表面にジグリセリンモノラウレートが存在するフィルムについて、その量が0.2?0.5g/m^(2)の場合、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
したがって、本件特許発明5、請求項5を直接又は間接的に引用する本件特許発明6ないし11及び14並びに本件特許発明15について、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明5、請求項5を直接又は間接的に引用する本件特許発明6ないし11及び14並びに本件特許発明15に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

オ 本件特許発明1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし4、8ないし11及び14について
本件特許の発明の詳細な説明の【0163】ないし【0182】等(特に【0177】の【表1】)の記載から、少なくとも一方の表面にステアリルジエタノールアミンが存在するフィルムについて、その量が0.002?0.5g/m^(2)の場合、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
したがって、本件特許発明1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、8ないし11及び14について、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明3、4、8ないし11及び14に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

カ 取消理由4(サポート要件)についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1、3ないし11、14及び15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(4)取消理由の判断についてのむすび
以上のとおり、取消理由1ないし4によっては、本件特許の請求項1、3ないし11、14及び15に係る特許を取り消すことはできない。

(5)平成30年2月22日付けの訂正請求があった旨の通知(特許法第1205条の5第5項)に対しての特許異議申立人の意見書における主張について
ア 特許異議申立人1の主張について
特許異議申立人1は、平成30年3月28日付け(受理日:同年3月29日)で提出した意見書において、特定化合物の含有量が限定された本件特許発明1及び5は、明確でなく、また、実施可能要件違反である旨主張するが、本件特許発明1及び5は、鮮度保持フィルムの表面における特定化合物の量と該フィルムが含有する特定化合物の量を特定したものであり、それらの意味は明確であるから、本件特許発明1及び5は明確であるし、発明の詳細な説明には、鮮度保持フィルムの表面における特定化合物の量と該フィルムが含有する特定化合物の量について詳細に記載され、実施例も記載されているから、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしているので、これらの主張は採用できない。
また、特許異議申立人1は、請求項1及び5の記載は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームに該当し、本件特許発明1及び5は不明確であるし、結果物としての鮮度保持フィルム自体の構成を特定するものではないので、本件特許発明1及び5は甲1(3)発明1等と差異があるとは認められない旨主張するが、請求項1及び5の記載は、プロダクトバイプロセスクレームには該当しないので、これらの主張は採用できない。
さらに、特許異議申立人1は、周知技術を示す文献として、参考資料1(WO2005/102693号)、参考資料2(特開2012-36259号公報)及び参考資料3(特開2013-159739号公報)を提示した上で、本件特許発明15は依然として進歩性を有さない旨主張するが、参考資料1には、実施例11及び12に印刷インキの原料としてジグリセリンラウレートを使用するものが示されているにすぎず、参考資料2及び3には、ジグリセリンラウレートは非常に多くの化合物とともに例示されているにすぎず、いずれの参考資料においても、その機能は防曇であって、本件特許発明15とは異なるものであるから、周知技術を考慮しても、本件特許発明15を想到することは容易とはいえないので、この主張も採用できない。

イ 特許異議申立人2の主張について
特許異議申立人2は、平成30年3月26日に提出した意見書において、参考資料1(特開平11-71482号公報)を提示した上で、本件特許発明1は依然として新規性を有さず、また、本件特許発明5及び15は依然として進歩性を有さない旨主張するが、参考資料1を参酌しても、取消理由で提示した文献には、上記相違点1、3、5及び7ないし10に係る各本件特許発明の発明特定事項は記載も示唆もされているとはいえないので、この主張は採用できない。

5 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立人1の特許異議申立理由について
特許異議申立人1の特許異議申立理由の内、取消理由で採用しなかった特許異議申立理由は、概ね、次のとおりである。

・本件特許の請求項1ないし3、5、6、8及び14に係る発明に対しての甲1(1)を主引用文献とした場合の新規性進歩性違反及び甲1(4)を主引用文献とした場合の新規性進歩性違反。

・本件特許の請求項4、7及び9に係る発明に対しての甲1(1)を主引用文献とした場合の進歩性違反及び甲1(4)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

そこで、検討するに、甲1(1)又は甲1(4)に記載された発明に対して、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項、上記相違点3に係る本件特許発明5の発明特定事項及び上記相違点5に係る本件特許発明5の発明特定事項を適用することについては、甲1(1)及び甲1(4)の何れにも記載も示唆もされていない。また、このことは、特許異議申立人1が提出した他の文献にも記載も示唆もされていない。
なお、甲1(7)は、特許異議申立人1自身が行った実験成績証明書であるが、特許異議申立人1がどのような人であるか(経歴等)や実験が行われた日時・場所が明らかにされておらず、また、実験も甲1(1)記載の実施例とは、成分量が異なり、コロナ処理等の甲1(1)にない処理が追加されていることから、甲1(1)記載の実施例の正確な追試とは認められないので、証拠として採用できない。
したがって、上記申立理由は、いずれも理由がない。

(2)特許異議申立人2の特許異議申立理由について
特許異議申立人2の特許異議申立理由の内、取消理由で採用しなかった特許異議申立理由は、概ね、次のとおりである。

・本件特許の請求項1ないし3に係る発明に対しての甲2(1)又は甲2(2)を主引用文献とした場合の新規性進歩性違反。

・本件特許の請求項4に係る発明に対しての甲2(1)又は甲2(2)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項5、8及び10に係る発明に対しての甲2(8)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項9に係る発明に対しての甲2(1)、甲2(2)、甲2(3)又は甲2(4)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項10に係る発明に対しての甲2(2)を主引用文献とした場合の新規性進歩性違反。

・本件特許の請求項11に係る発明に対しての甲2(1)、甲2(3)又は甲2(4)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項12に係る発明に対しての甲2(1)又は甲2(2)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項13に係る発明に対しての甲2(3)又は甲2(4)を主引用文献とした場合の進歩性違反。

・本件特許の請求項14に係る発明に対しての甲2(1)又は甲2(2)を主引用文献とした場合の新規性進歩性違反。

そこで、検討するに、甲2(1)、甲2(2)、甲2(3)、甲2(4)及び甲2(8)の何れかに記載された発明に対して、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項、上記相違点3に係る本件特許発明5の発明特定事項及び上記相違点5に係る本件特許発明5の発明特定事項を適用することについては、甲2(1)、甲2(2)、甲2(3)、甲2(4)及び甲2(8)の何れにも記載も示唆もされていない。また、このことは、特許異議申立人2が提出した他の文献にも記載も示唆もされていない。
また、本件特許発明12の「パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む」という発明特定事項を、甲2(1)又は甲2(2)に記載された発明に対して、適用することについては、甲2(1)及び甲2(2)のいずれにも記載も示唆もされていない。また、このことは、特許異議申立人2が提出した他の文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、上記申立理由は、いずれも理由がない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項1、3ないし12、14及び15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3ないし12、14及び15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2及び13は、訂正により削除されたため、請求項2及び13に対して、特許異議申立人1及び2がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鮮度保持フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鮮度保持フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物等の生鮮食品など鮮度が求められる商品は、フィルムからなる包装材に入れられて流通している。これらの生鮮食品は、経時による変色、萎えなどの劣化、さらには腐敗が生じると、その商品価値が低下する。そのため、これらの生鮮食品をはじめとする商品は、包装材に包まれることでその鮮度を保持することが求められている。
【0003】
特に近年、キャベツ、レタス等を2?10mm程度の千切りにして、100?200ppmの次亜塩素酸水溶液に5?30分浸し、一般細菌を殺菌した後にフィルムで包装することで得られるカット野菜包装が、スーパーマーケット等で販売されたり、チェーンレストランで調理の手間を省くために利用されたりしている。該カット野菜包装においては、折角殺菌処理した内容物に菌が入らないように、また内容物から溶出した栄養液が包装材の内面に付着して菌が繁殖しないようにする必要があり、抗菌性が高く、かつ抗菌成分の内容物への移行が少ないフィルム及び包装材の開発が求められている。
【0004】
特許文献1及び2には、抗菌性能を有するフィルムに関する技術が開示されている。一方、特許文献3?5には、帯電防止性能を有するフィルムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-158391号公報
【特許文献2】特開2003-176384号公報
【特許文献3】特開平9-3273号公報
【特許文献4】特公昭60-57461号公報
【特許文献5】特開昭48-54155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から5に記載の技術では、抗菌性及びそれに基づく鮮度保持性が低く、また安定して高い抗菌性を得ることができなかった。本発明は、高い抗菌性を有する鮮度保持フィルム及び包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の[1]、[3]?[12]、[14]及び[15]である。
【0008】
[1]少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であり、前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である鮮度保持フィルム。
【0009】(削除)
【0010】
[3]内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる[1]に記載の鮮度保持フィルム。
【0011】
[4]前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる[1]又は[3]に記載の鮮度保持フィルム。
【0017】
[5]少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。
【0018】
[6]内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に前記グリセリンモノラウレートが含まれる[5]に記載の鮮度保持フィルム。
【0019】
[7]前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ前記グリセリンモノラウレートが含まれる[5]又は[6]に記載の鮮度保持フィルム。
【0020】
[8]プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含有する[1]及び[3]から[7]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[9]少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である[1]、[3]及び[4]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[10]さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含む[1]及び[3]から[9]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[11]前記鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなる[1]及び[3]から[10]のいずれかに記載の鮮度保持フィルム。
[12]プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムであって、パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む鮮度保持フィルム。
[14][1]及び[3]から[12]のいずれかに記載の鮮度保持フィルムを備える包装材。
[15]少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い抗菌性を有する鮮度保持フィルム及び包装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一の実施形態]
本発明に係る鮮度保持フィルムは、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、特定化合物1とも示す)が、少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在する。特定化合物1が、鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することで、高い抗菌性を有する鮮度保持フィルムが得られる。該鮮度保持フィルムは、抗菌性の観点から、特定化合物1を0.001?3質量%含有することが好ましい。また、該鮮度保持フィルムは、軽量で、フィルム加工性に優れる観点から、プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、該鮮度保持フィルムは、抗菌性の観点から、JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌を用いて行う時、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りを行わない条件下において、24時間後の鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面の生菌数が1/100倍以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明においての鮮度保持フィルムとは、該鮮度保持フィルムにより包装体を形成し、被包装物を封入した場合に、前記被包装物と面する表面の菌抑制作用のより、被包装物の鮮度が保たれる効果を有するフィルムをいう。
【0024】
<特定化合物1>
本発明に係る特定化合物1としては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレートを単独で用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。パルミチルジエタノールアミンは、炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールアミンは、炭素数18のステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。ジグリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とジグリセリンとのモノエステルである。
【0025】
ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミンやラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高い。このため、鮮度保持フィルムを溶融成形する際、特に鮮度保持フィルムが延伸フィルムである場合の熱固定において、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは比較的揮発しにくい。また、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、抗菌性、および鮮度保持性に優れる。さらに、鮮度保持フィルムを包装用フィルムとして用いた場合、包装用フィルムに接触する内容物である被包装物への移行が比較的遅く、安全性に優れており、加えてその性能を持続することができる。なお、鮮度保持フィルムの「被包装物」を「内容物」と記すことがある。
【0026】
(アルキルジエタノールアミン;長鎖アルキル基の部分の炭素数;融点)
ステアリルジエタノールアミン;18個;51℃
パルミチルジエタノールアミン;16個;28℃
ミリスチルジエタノールアミン;14個;22?23℃
ラウリルジエタノールアミン;12個;常温で液体。
【0027】
本発明に係る特定化合物1は、個々に、類似化合物を含有していてもよい。パルミチルジエタノールアミン(炭素数16)は、例えば少量のミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12?20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンを含んでもよい。また、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)は、例えば炭素数16?20のアルキル基を有するアルキルジエタノール等を少量含んでもよい。また、特定化合物1は、これらのパルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの類似化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成した化合物を少量含んでもよい。さらに、グリセリンモノラウレートは、例えば炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、ジグリセリンモノラウレートは、炭素数が10、14等である高級脂肪族カルボン酸とジグリセリンとのモノエステル等を少量含んでもよい。また、前記(ジ)グリセリンモノエステルは、(ジ)グリセリンジエステル、(ジ)グリセリントリエステルなどの類似化合物、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、ジグリセリン部分がトリグリセリンである類似化合物を少量含んでもよい。これら特定化合物1の類似化合物は、一般に特定化合物1の合成、分離などの工程において、同時に合成されたり、分離が困難であったりする。また、当該類似化合物は、特定化合物1 100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、含まれないことが好ましい。
【0028】
さらに、本発明に係る鮮度保持フィルムは、後述するように特定化合物1以外にも、必要に応じて帯電防止剤、防曇剤(但し、特定化合物1を除く。)滑材などの他の添加剤を含むことができる。これら他の添加剤と、前記類似化合物との合計は、特定化合物1 100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、30質量部以下含まれてもよい。
【0029】
<抗菌性、鮮度保持性などの機能付与>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、少なくとも一方の表面に特定化合物1が0.002?0.5g/m^(2)存在する。本発明に係る鮮度保持フィルムは、少なくとも一方の表面に特定化合物1が0.004?0.4g/m^(2)存在することが好ましく、0.01?0.3g/m^(2)存在することがより好ましく、0.02?0.2g/m^(2)存在することがさらに好ましい。前記特定化合物1は、鮮度保持フィルムの内容物と接する面に0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましい。特定化合物1を鮮度フィルムの表面に存在させる方法としては、前述したように、表面に特定化合物1を噴霧したり、表面に特定化合物1を含む溶液、懸濁液等を塗布したりするコート法が挙げられる。また、鮮度保持フィルムの内容物と接する面を含む表面層や中間層に特定化合物1を含有させてもよい。鮮度保持フィルム中の特定化合物1の含有量は、特定化合物1を表面に前記範囲の量ブリードアウトさせることができる観点から、0.001?3質量%が好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.1?2質量%がさらに好ましい。
【0030】
<鮮度保持フィルムの表面における特定化合物1の定量方法>
鮮度保持フィルムの表面における特定化合物1の量は、コート法により表面に特定化合物1を付与する場合は、特定化合物1のコート量から算出した値である。特定化合物1が鮮度保持フィルム内に配合されている場合には、鮮度保持フィルムの表面における特定化合物1の量は、鮮度保持フィルムの表面を、ジクロロメタンを用いて洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮して定容した後、シリル化し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量した値である。
【0031】
<ポリエチレングリコール(PEG)>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、ポリエチレングリコール(PEG)を0.001?1質量%の割合で含有することが、特定化合物1のブリードアウトの促進の観点から好ましい。該割合は0.010?0.500質量%がより好ましく、0.030?0.400質量%がさらに好ましく、0.040?0.300質量%が特に好ましい。ポリエチレングリコール(PEG)の重量平均分子量は特に限定されないが、成形時の加熱による特定化合物1の揮発の抑制の観点から、50,000以上であることが好ましい。特定化合物1による鮮度保持性および抗菌性をより効果的に発現させる観点から、ポリエチレングリコール(PEG)は特定化合物1が存在する層中に含まれることが好ましい。
【0032】
<熱可塑性樹脂>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、熱可塑性樹脂により構成されていることが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル・1-ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0033】
<プロピレン系重合体>
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα-オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0034】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890?0.930g/cm^(3)であることが好ましく、0.900?0.920g/cm^(3)であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)は、0.5?60g/10分が好ましく、0.5?10g/10分がより好ましく、1?5g/10分がさらに好ましい。
【0036】
本発明に係る鮮度保持フィルムが3層以上から構成されている場合、表面の層(表面層及び裏面層)以外の中間層を構成する樹脂としては、融点(Tm)が155?170℃の範囲にあるプロピレン単独重合体、またはプロピレンと、1モル%以下のα-オレフィンとの共重合体が、鮮度保持フィルムの剛性、耐熱性の向上の観点から好ましい。また、表面層および裏面層を構成する樹脂としては、融点(Tm)が125℃以上、155℃未満、好ましくは130?145℃の範囲にあるプロピレン系重合体が好ましい。特に、ヒートシール性に優れ、ヒートシール性と耐熱性とのバランスに優れた鮮度保持フィルムが得られる観点から、表面層および裏面層を構成する樹脂としては、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が好ましい。ここで、本明細書において表面層とは、2層以上から構成される鮮度保持フィルムにおいて、内容物である被包装物に接する面を含む層を示す。また、裏面層とは、表面層の表面とは反対側の表面を含む層を示す。
【0037】
<エチレン系重合体>
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα-オレフィンの割合は、1?15モル%であることが好ましい。
【0038】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン-1、ヘプテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-ペンテン-1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0039】
前記エチレン系重合体の密度は0.910?0.940g/cm^(3)が好ましく、0.920?0.930g/cm^(3)がより好ましい。該密度が0.910g/cm^(3)以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm^(3)以下であることにより、加工性および透明性が向上する。
【0040】
<他の添加剤>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでもよい。
【0041】
耐熱安定剤としては、例えば、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4-t-ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトルのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0043】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0044】
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2、2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0045】
防曇剤としては、特定化合物1を除き、例えば、高級脂肪族アルコール類、グリセリン脂肪酸類、ジグリセリン脂肪酸類、これらのモノ又はジグリセリン脂肪酸の酸エステル類、高級脂肪族アミン類、高級脂肪酸エステル類、これらの混合物等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0046】
<鮮度保持フィルム及びその製造方法>
以下、プロピレン系重合体又はエチレン系重合体を含む鮮度保持フィルムについて、その製造方法と共に説明するが、本発明はこれらの鮮度保持フィルムに限定されない。
【0047】
(プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム)
本発明に係る鮮度保持フィルムがプロピレン系重合体を含む場合には、該鮮度保持フィルムは単層フィルムであってもよく、二層フィルムであってもよく、三層以上から構成されていてもよい。
【0048】
該鮮度保持フィルムは無延伸プロピレンフィルム、または一軸延伸ポリプロピレンフィルムであってもよいが、例えばカット野菜用途では二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが透明性及び機械的物性面の観点から好ましい。
【0049】
特に延伸フィルムにおいては、表面層および裏面層の融点を低く、中間層の融点を高くし、融点差をつけることでヒートシール時に表面層および裏面層が融解しても中間層が溶けず、収縮を生じさせずにヒートシールできる観点から、該鮮度保持フィルムは三層以上から構成されることが好ましい。本発明に係る鮮度保持フィルムが裏面層/中間層/表面層の少なくとも三層からなる多層フィルムであって、プロピレン系重合体から構成される場合には、該鮮度保持フィルムの裏面層/中間層/表面層の少なくとも一層に特定化合物1を含んでいればよいが、特にその中間層に、特定化合物1を0.001?3質量%含むことが好ましい。中間層に特定化合物1を0.001?3質量%含むことで、表面層および/または裏面層の特定化合物1の含有量が0.001質量%以下の場合であっても、層間を移行するので、該鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に、特定化合物1を0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在させることができる。
【0050】
層厚み比は、裏面層/中間層/表面層=3/94/3?10/80/10が好ましく、4/92/4?8/84/4がより好ましい。裏面層および表面層の厚み比率が3%以上であることにより、十分なヒートシール強度が得られる。また、裏面層および表面層の厚み比率が10%以下であることにより、鮮度保持フィルムの表面層の表面に特定化合物1を容易にブリードアウトさせることができ、安定した抗菌性を維持できる。
【0051】
また、前記鮮度保持フィルムの全体の厚みは15?50μmが好ましく、20?40μmがより好ましい。前記鮮度保持フィルムが三層以上の多層フィルムである場合には、表面層、中間層及び裏面層の層厚み比が上記範囲にあることで、ヒートシール性、剛性、及び耐熱性のバランスに優れる鮮度保持フィルムが得られる。前記厚みが15μm以上であることにより、剛性が向上し、袋にした時の形状維持が容易となり、ハンドリング性が高く、突き刺し強度も高い。前記厚みが50μm以下であることにより、生産性が高くなり、かつ低コストである。
【0052】
また、本発明に係る鮮度保持フィルムが三層以上の構造の場合であっても、一層または二層からなる場合であっても、鮮度保持フィルム全体に対する特定化合物1の含有量は0.001?3質量%であることが好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.03?2質量%がさらに好ましく、0.04?0.9質量%が特に好ましく、0.04?0.6質量%が最も好ましい。
【0053】
前記鮮度保持フィルムの製造方法としては、前記鮮度保持フィルムが三層以上で構成される場合には、表面層の表面に特定化合物1をコートする方法、または表面層中に特定化合物1を含有させる方法が挙げられる。表面層にのみ特定化合物1を含有させてもよい。また、他の好ましい態様としては、中間層または中間層の一部の層に特定化合物1を含有させる方法が挙げられる。この場合、特定化合物1が中間層から表面層の表面へブリードアウトすることで、表面層の表面に特定の量の特定化合物1が存在するようになる。また、特定化合物1は中間層のみ、または中間層の一部のみに含まれるようにしてもよい。この場合、特定化合物1が中間層のみ、または中間層の一部のみに、鮮度保持フィルム全体に対し0.001?3質量%含まれることが好ましく、0.01?3質量%含まれることがより好ましく、0.03?2質量%含まれることがさらに好ましく、0.04?0.9質量%含まれることが特に好ましく、0.04?0.6質量%含まれることが最も好ましい。
【0054】
前記鮮度保持フィルムが各層内に特定化合物1を含む場合には、特定化合物1を各層の材料中に、特定化合物1の表面量が所定の量となるように予め配合しても良い。しかしながら、特定化合物1及び他の添加剤を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備して、最終的に特定化合物1の表面量が所望の範囲になるように、マスターバッチとプロピレン系重合体とを混合して、この混合物を押出機等に投入して成形することが好ましい。
【0055】
本発明に係る鮮度保持フィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、二軸延伸の条件は、縦延伸(温度:90?140℃、倍率:4?6倍)、横延伸(温度:140?200℃、倍率:8?12倍)が好ましい。なお、延伸処理の後に、フィルムの熱収縮率を安定化させる観点からフィルムをヒートセットすることが好ましい。ヒートセットは、160℃以上の条件下で5秒以上行うことが好ましく、160?220℃の条件下で5?10秒行うことがより好ましい。
【0056】
また、特に無延伸フィルムにおいては、表面層の融点を低く、中間層及び裏面層の融点を高くし、融点差をつけることでヒートシール時にシール面となる表面層が融解しても中間層、裏面層が溶けずに、ヒートシールができる観点から、該鮮度保持フィルムは二層以上から構成されることが好ましい。
【0057】
本発明に係る鮮度保持フィルムが裏面層/中間層/表面層の少なくとも三層からなる多層フィルムであって、プロピレン系重合体から構成される場合には、該鮮度保持フィルムの裏面層/中間層/表面層の少なくとも一層に特定化合物1を含んでいればよいが、特にその表面層に、特定化合物1を0.001?3質量%含むことが好ましい。表面層に特定化合物1を0.001?3質量%含むことで、内容物と接する表面層の表面に特定化合物1を0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在させることができる。
【0058】
層厚み比は、表面層/中間層/裏面層=10/80/10?40/30/40が好ましく、20/60/20?35/30/35がより好ましい。また、表面層の厚み比率が10%以上であることにより、単体包装でも十分なヒートシール強度が得られる。また、シール面となる表面層に特定化合物1を容易にブリードアウトさせることができ、安定した抗菌性を維持できる。
【0059】
また、前記鮮度保持フィルムの全体の厚みは15?120μmが好ましく、20?100μmがより好ましい。前記鮮度保持フィルムが三層以上の多層フィルムである場合には、表面層、中間層及び裏面層の層厚み比が上記範囲にあることで、ヒートシール性、剛性、及び耐熱性のバランスに優れる鮮度保持フィルムが得られる。
【0060】
プロピレン系重合体を含む多層フィルムの態様において、中間層のプロピレン系重合体の融点(Tm)は135?160℃が好ましい。また、表面層及び裏面層のプロピレン系重合体の融点(Tm)は、120℃以上、155℃未満が好ましく、130?145℃がより好ましい。該プロピレン系重合体の中でも、特にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が、ヒートシール性に優れる多層フィルムが得られるため好ましい。
【0061】
また、多層フィルムの態様において、表面層、中間層にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを配合する態様においては、予め表面層、中間層の材料に配合しても良い。しかしながら、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミン、および他の添加剤を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備して、最終的にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの配合量が所望の範囲になるように、マスターバッチとプロピレン系重合体とを混合し、混合物を押出機に投入して表面層、中間層を形成することが好ましい。
【0062】
(エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルム)
本発明に係る鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含む場合には、該鮮度保持フィルムは単層フィルムであってもよく、二層フィルムであってもよく、三層以上からなる多層フィルムであってもよい。また、無延伸フィルムでも一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルム等少なくも一軸方向に延伸処理されたフィルムであってもよい。エチレン系重合体しては、上述したように高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0063】
前記鮮度保持フィルムがフィルム内に特定化合物1を含む場合には、前記鮮度保持フィルム内の特定化合物1の含有量は0.01?3質量%が好ましく、0.01?2質量%がより好ましい。また、特定化合物1を前記鮮度保持フィルムの表面にコートして、前記鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に特定化合物1を0.002?0.5g/m^(2)存在させるようにしてもよい。
【0064】
特に二軸延伸フィルムにおいては、表面層および裏面層の融点を低く、中間層の融点を高くし、融点差をつけることでヒートシール時に表面層および裏面層が融解しても中間層が溶けず、収縮を生じさせずにヒートシールできる観点から、該鮮度保持フィルムは三層以上から構成されることが好ましい。本発明に係る鮮度保持フィルムが裏面層/中間層/表面層の少なくとも三層からなる多層フィルムであって、エチレン系重合体から構成される二軸延伸フィルムの場合には、該鮮度保持フィルムの裏面層/中間層/表面層の少なくとも一層に特定化合物1を含んでいればよいが、特にその中間層に、特定化合物1を0.001?3質量%含むことが好ましい。中間層に特定化合物1を0.001?3質量%含むことで、層間を移行し、表面層および/または裏面層の特定化合物1の含有量が0.001質量%以下の場合であっても該鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に、特定化合物1を0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在させることができる。
【0065】
層厚み比は、裏面層/中間層/表面層=3/94/3?10/80/10が好ましく、4/92/4?8/84/4がより好ましい。裏面層および表面層の厚み比率が3%以上であることにより、十分なヒートシール強度が得られる。また、裏面層および表面層の厚み比率が10%以下であることにより、鮮度保持フィルムの表面層の表面に特定化合物1を容易にブリードアウトさせることができ、安定した抗菌性を維持できる。
【0066】
また、前記鮮度保持フィルムの全体の厚みは15?50μmが好ましく、20?40μmがより好ましい。前記鮮度保持フィルムが三層以上の多層フィルムである場合には、表面層、中間層及び裏面層の層厚み比が上記範囲にあることで、ヒートシール性、剛性、及び耐熱性のバランスに優れる鮮度保持フィルムが得られる。前記厚みが15μm以上であることにより、剛性が向上し、袋にした時の形状維持が容易となり、ハンドリング性が高く、突き刺し強度も高い。前記厚みが50μm以下であることにより、生産性が高くなり、かつ低コストである。
【0067】
また、本発明に係る鮮度保持フィルムが三層以上の構造の場合であっても、一層または二層からなる場合であっても、鮮度保持フィルム全体に対する特定化合物1の含有量は0.001?3質量%であることが好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.03?2質量%がさらに好ましく、0.04?0.9質量%が特に好ましく、0.04?0.6質量%が最も好ましい。
【0068】
前記鮮度保持フィルムの製造方法としては、前記鮮度保持フィルムが三層以上で構成される場合には、表面層の表面に特定化合物1をコートする方法、または表面層、中間層中に特定化合物1を含有させる方法が挙げられる。表面層にのみ特定化合物1を含有させてもよい。また、他の好ましい態様としては、延伸フィルムの場合は中間層または中間層の一部の層に特定化合物1を含有させる方法が挙げられる。この場合、特定化合物1が中間層から層間を移行し、表面層の表面へブリードアウトすることで、表面層の表面に特定の量の特定化合物1が存在するようになる。また、特定化合物1は中間層のみ、または中間層の一部のみに含まれるようにしてもよい。この場合、特定化合物1が中間層のみ、または中間層の一部のみに、鮮度保持フィルム全体に対し0.001?3質量%含まれることが好ましく、0.01?3質量%含まれることがより好ましく、0.03?2質量%含まれることがさらに好ましく、0.04?0.9質量%含まれることが特に好ましく、0.04?0.6質量%含まれることが最も好ましい。
【0069】
前記鮮度保持フィルムが各層内に特定化合物1を含む場合には、特定化合物1を各層の材料中に、特定化合物1の表面量が所定の量となるように予め配合しても良い。しかしながら、特定化合物1及び他の添加剤を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備して、最終的に特定化合物1の表面量が所望の範囲になるように、マスターバッチとポリエチレン系重合体とを混合して、この混合物を押出機等に投入して成形することが好ましい。
【0070】
本発明に係る鮮度保持フィルムが二軸延伸ポリエチレンフィルムである場合、二軸延伸の条件は、縦延伸(温度:60?120℃、倍率:4?6倍)、横延伸(温度:100?120℃、倍率:8?12倍)が好ましい。なお、延伸処理の後に、フィルムの熱収縮率を安定化させる観点からフィルムをヒートセットすることが好ましい。ヒートセットは、100℃以上の条件下で5秒以上行うことが好ましく、100?150℃の条件下で5?10秒行うことがより好ましい。
【0071】
また、特に無延伸フィルムにおいては、表面層の融点を低く、中間層及び裏面層の融点を高くし、融点差をつけることでヒートシール時に片側の表面層が融解しても中間層、反対側である裏面層が溶けず、ヒートシールできる観点から、該鮮度保持フィルムは二層以上から構成されることが好ましい。
【0072】
また、前記融点は、各層に含まれるエチレン系重合体の密度を上げることで上げることができる。ここで、裏面層の表面に特定化合物1がブリードしないようにするため、裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度を上げることにより特定化合物1が移行しないようにして、表面層への特定化合物1のブリードをさらに促進させることができる。表面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、中間層の特定化合物1が表面層へ移行しやくすく、かつブロッキングしない観点から、0.880?0.935g/cm^(3)が好ましく、0.900?0.930g/cm^(3)がより好ましい。中間層および裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、中間層の特定化合物1を表面層へ移行しやくすく、かつフィルム剛性が高すぎない観点から、0.910?0.960g/cm^(3)が好ましく、0.920?0.950g/cm^(3)がより好ましい。中間層及び裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、表面層に含まれるエチレン系重合体の密度より0.005?0.050g/cm^(3)高いことが好ましい。
【0073】
本発明に係る鮮度保持フィルムが裏面層/中間層/表面層の少なくとも三層からなる多層フィルムであって、プロピレン系重合体から構成される場合には、該鮮度保持フィルムの裏面層/中間層/表面層の少なくとも一層に特定化合物1を含んでいればよいが、特に表面層と中間層に、特定化合物1を0.001?3質量%含むことが好ましい。表面層と中間層に特定化合物1を0.001?3質量%含むことで、内容物と接する表面層の表面に特定化合物1を0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在させることができる。
【0074】
無延伸フィルムの層厚み比は、表面層/中間層/裏面層=10/80/10?40/20/40が好ましく、20/60/20?35/30/35がより好ましい。表面層の厚み比率が10%以上であることにより、単体包装でも十分なヒートシール強度が得られる。また、表面層の表面に特定化合物1を容易にブリードアウトさせることができ、安定した抗菌性を維持できる。
【0075】
また、前記鮮度保持フィルムの全体の厚みは15?120μmが好ましく、20?100μmがより好ましい。前記鮮度保持フィルムが三層以上の多層フィルムである場合には、表面層、中間層及び裏面層の層厚み比が上記範囲にあることで、ヒートシール性、剛性、及び耐熱性のバランスに優れる鮮度保持フィルムが得られる。
【0076】
前記鮮度保持フィルムが二層以上のフィルムであり、一部の層内に特定化合物1を含む場合には、特定化合物1は各層の材料中に直接配合してもよい。しかしながら、特定化合物1および他の添加剤を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備しておき、最終的に鮮度保持フィルム中の特定化合物1の配合量が所望の範囲になるように、マスターバッチとエチレン系重合体とを混合し、この混合物を押出機に投入し、一部の層を形成することが好ましい。
【0077】
<包装材>
本発明に係る包装材は、本発明に係る鮮度保持フィルムを備える。本発明に係る包装材は、本発明に係る鮮度保持フィルムからなってもよい。本発明に係る包装材は、例えば、前記鮮度保持フィルムの表面層を内面として二つに折畳んで、両端をヒートシール、溶断シールなどにより封止することにより製造することができる。また、二枚の前記鮮度保持フィルムを、表面層が内面になるように重ね合わせて、三方をヒートシール、溶断シールなどにより封止することで製造することができる。前記包装材は、包装材に成型する前に必要に応じて裏面層に印刷処理を行ってもよい。
【0078】
<他の好ましい形態>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、抗菌性が向上する観点から、少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが好ましい。該濡れ指数は36dyn以上であることがより好ましく、37dyn以上であることがさらに好ましく、38dyn以上であることが特に好ましい。該濡れ指数の上限は特に限定されないが、例えば50dyn以下とすることができる。また、内容物と接する鮮度保持フィルムの表面層の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが好ましい。なお、該濡れ指数は和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液を用いて確認した値である。鮮度保持フィルムの表面の濡れ指数を35dyn以上にする方法としては、該表面に対してコロナ処理を行う方法が好ましい。
【0079】
本発明に係る鮮度保持フィルムは、特定化合物1のブリードアウトを促進させることができること、およびフィルム内の特定化合物1の量を低減できるという観点から、さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含むことが好ましい。鮮度保持フィルム内に含まれるミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方の量は、0.001?1質量%であることが好ましく、0.002?0.1質量%であることがより好ましい。
【0080】
また、特定化合物1のブリードアウトを促進させる観点から、本発明に係る鮮度保持フィルムは、さらに、グリセリンモノステアレート(C18MG)、グリセリンモノパルミテート(C16MG)、およびジグリセリンモノパルミテート(C16DG)からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。特に、本発明に係る鮮度保持フィルムは、成形性の観点から、C16DGを含むことがより好ましい。また、C18MG、C16MGおよびC16DGからなる群から選択される少なくとも一種は、前記ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよび前記ステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方と併用することが好ましい。鮮度保持フィルム内に含まれるC18MG、C16MGおよびC16DGからなる群から選択される少なくとも一種の量は、0.01?1.0質量%であることが好ましく、0.03?0.80質量%であることがより好ましく、0.05?0.80質量%であることがさらに好ましく、0.05?0.50質量%であることが特に好ましい。鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面に存在するC18MG、C16MGおよびC16DGからなる群から選択される少なくとも一種の量は、0.01?1.0g/m^(2)が好ましく、0.03?0.80g/m^(2)がより好ましく、0.05?0.80質量%であることがさらに好ましく、0.05?0.50質量%であることが特に好ましい。なお、該表面に存在する量は、表面における特定化合物1の定量方法と同様の方法により求めた値である。
【0081】
鮮度保持フィルムが2層以上からなる場合には、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方は、いずれの層に含まれてもよいが、特定化合物1が含まれる層と同じ層に少なくとも含まれることが好ましい。すなわち、特定化合物1が中間層に含まれる場合には、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方は中間層に含まれることが好ましい。また、特定化合物1が表面層に含まれる場合には、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方は表面層に含まれることが好ましい。各層へのミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方の配合方法は、特定化合物1を各層へ配合する方法と同様の方法を用いることができる。
【0082】
本発明に係る鮮度保持フィルムは、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に特定化合物1が含まれることが好ましい。すなわち、フィルム全体の厚みを100%として、被包装物である内容物と接触する面の位置を0%の位置、内容物と接触する面とは反対の面の位置を100%の位置とするとき、50から90%の範囲に特定化合物1が含まれることが好ましい。該範囲に特定化合物1が含まれることにより、特定化合物1が内容物と接触する面に適度にブリードアウトして抗菌性とそれに伴って鮮度保持性を発現することが可能となる。該範囲は、65から90%がより好ましく、80から90%がさらに好ましい。該範囲に特定化合物1が含まれるようにする方法としては、例えば本発明に係る鮮度保持フィルムを3層構造として、中間層に特定化合物1が含まれるようにする方法が挙げられる。また、中間層と表面層または裏面層に特定化合物1が含まれるようにする方法が挙げられるが、特定化合物1の円滑なブリードアウトによる効果的な抗菌性、鮮度保持性の発現の観点から、中間層および表面層に特定化合物1が含まれるようにすることが好ましい。なお、該範囲にのみ特定化合物1が含まれてもよく、該範囲以外にも特定化合物1が含まれてもよい。また、該範囲に、さらにミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方が含まれることが好ましい。鮮度保持フィルムにおいて、内容物と接触する面は特定化合物1が0.002?0.5g/m^(2)の範囲で存在するか否かから判断することができる。
【0083】
本発明に係る鮮度保持フィルムは2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ特定化合物1が含まれることが好ましい。すなわち、特定化合物1は内容物と直接接する表面層にのみ含まれることが好ましい。特定化合物1が表面層にのみ含まれることにより、容易に特定化合物1を内容物と接触する表面に所定量ブリードアウトさせることができるため、高い抗菌性を示し、かつ、フィルム全体としての特定化合物1の含有量を低減させることができる。なお、表面層の表面に特定化合物1が付与されている場合にも、特定化合物1が表面層にのみ含まれる場合に該当する。
【0084】
本発明に係る鮮度保持フィルムはエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなることが好ましい。すなわち、エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルムにおいて、内容物と接触する面から、内容物と接触する面とは反対側の面に向けて、該エチレン系重合体の樹脂密度が大きくなることが好ましい。このような樹脂密度の勾配を有することにより、鮮度保持フィルム内に存在する特定化合物1が内容物と接触する面側にブリードアウトしやすくなり、鮮度保持フィルム内の特定化合物1の含有量を少なくしても内容物と接触する表面に存在する特定化合物1の量を本発明の範囲内とすることができ、高い抗菌性が得られる。エチレン系重合体の密度は、厚さ方向に向けて連続的に大きくなっていってもよく、段階的に大きくなっていってもよい。例えば、鮮度保持フィルムが3層からなる場合には、表面層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、中間層及び裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度が高いことが好ましい。また、表面層及び中間層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度が高くてもよい。また、表面層、中間層、裏面層の順序で含まれるエチレン系重合体の密度が高くなっていてもよい。また、少なくとも、表面層に含まれるエチレン系重合体の密度よりも、中間層に含まれるエチレン系重合体の密度が高いことが好ましい。
【0085】
[第二の実施形態]
本発明に係る鮮度保持フィルムは、フィルム表面にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在する。フィルム表面にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在することにより、高い抗菌性が得られる。該表面は、内容物と接触する表面であることが好ましい。本発明に係る鮮度保持フィルムは、抗菌効果があり、鮮度保持性に優れるだけでなく、透明性に優れ、かつ成形時における抗菌成分の飛散が少ないため成形性に優れている。該鮮度保持フィルムは、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを、フィルム全体に対して0.01?3質量%の割合で含有することが好ましい。該鮮度保持フィルムは、ヘイズが10%を越えないことが好ましい。該鮮度保持フィルムは、JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌を用いて行う時、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りを行わない条件下において、24時間後の鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面の生菌数が1/100倍以下であることが好ましい。また、鮮度保持フィルムにおいて、前記生菌数が1/100倍以下である面を内容物に接する面とすることで、内容物の鮮度保持効果を奏することができる。なお、本発明に係る包装材は、本発明に係る鮮度保持フィルムを備える。
【0086】
本発明に係る鮮度保持フィルムは、高い抗菌性を有する。また、本発明に係る包装材は、内容物の安全性を維持して包装することができる。包装される内容物には、野菜、果物などの青果物や花卉、精肉、鮮魚などの動物性食材が挙げられ、これらを比較的長い期間にわたり鮮度保持できる。特に、本発明に係る鮮度保持フィルムおよび包装材はカット野菜などの予備調理又は調理された生鮮食品の包装に適しており、雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0087】
本発明に係る鮮度保持フィルムの樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、プロピレン系重合体及びエチレン系重合体の少なくとも一種がより好ましい。熱可塑性樹脂、プロピレン系重合体及びエチレン系重合体としては、第一の実施形態において例示したものを用いることができる。
【0088】
<ステアリルジエタノールアミン及び/又はパルミチルジエタノールアミン>
本発明では、ステアリルジエタノールアミン及び/又はパルミチルジエタノールアミンがフィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在することにより、優れた鮮度保持性を発揮する。フィルムの表面の存在量が0.002g/m^(2)未満では、大腸菌の24時間後の増殖抑制効果が不十分である。一方、フィルムの表面の存在量が0.5g/m^(2)を越えると、フィルム表面にベタ付きが生じ、ヘイズが10%を超えるため、包装用フィルムとして好ましくない。フィルム表面のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの存在量は、0.004?0.3g/m^(2)が好ましく、0.007?0.1g/m^(2)がより好ましく、0.01?0.03g/m^(2)がさらに好ましい。なお、フィルム表面のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの存在量は、第一の実施形態に記載の方法により求めた値である。
【0089】
前述したように、ステアリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高く、フィルムを溶融成形する際に比較的揮発しにくい。さらに、鮮度保持フィルムの包装材とした際の内容物への移行が比較的遅く安全性に優れている。さらに、フィルム中に配合する態様においても、ステアリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミンに比べて、フィルム中の移行を制御し易く、鮮度保持の性能を持続することが可能である。
【0090】
パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンをフィルム内に配合する態様では、フィルム中のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの含有量は0.001?3質量%が好ましく、0.01?3質量%がより好ましく、0.05?2質量%がさらに好ましく、0.1?0.5質量%が特に好ましい。該含有量が0.001質量%以上であることにより、大腸菌、黄色ブドウ球菌の24時間後の増殖抑制効果が得られ、鮮度保持効果が高い。また、該含有量が3質量%以下であることにより、フィルム表面がベタ付かずに取り扱いやすく、ヘイズが10%を超えないため、包装用フィルムとして好適である。
【0091】
本発明に係る鮮度保持フィルムには、鮮度保持の性能を有する限りにおいて、さらに必要に応じて第一の実施形態に示した他の添加剤をコートしたり、配合したりすることができる。
【0092】
<プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム>
プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルムとしては、単層フィルムの他、2層以上からなる多層フィルムが挙げられる。また、該鮮度保持フィルムは包装フィルムとして好適な少なくとも一軸方向に延伸した延伸フィルムであることが好ましい。一軸方向の延伸倍率は2から15倍が好ましい。延伸フィルムの中でも、二軸延伸フィルムは透明性に優れているためより好ましい。二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれでもよい。延伸倍率は、縦横それぞれ2から15倍が好ましい。二軸延伸フィルムを製造する方法としては、縦方向に5?8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8?10倍延伸し、フィルムの厚みを最終的に15?50μm、好ましくは20?40μmとする方法が好ましい。前記厚みが15μm以上であることにより、剛性が向上し、袋にした時の形状維持が容易となり、ハンドリング性が高く、突き刺し強度も高い。前記厚みが50μm以下であることにより、生産性が高くなり、かつ低コストである。また、縦方向及び横方向にそれぞれ5?10倍(面倍率で25?100倍)延伸する方法が好ましい。
【0093】
プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルムとしては、表面層/中間層/裏面層の少なくとも三層からなる多層フィルムが好ましい。この場合、中間層のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの配合量は0.01?3質量%であることが好ましく、0.01?1質量%であることがより好ましく、0.03?0.9質量%であることがさらに好ましく、0.04?0.6質量%であることが特に好ましい。この態様において、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの多層フィルム全体に対する配合量は、0.01?3質量%であることが好ましく、0.01?1質量%であることがより好ましく、0.03?0.9質量%であることがさらに好ましく、0.04?0.6質量%であることが特に好ましい。パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンは、表面層、中間層、および裏面層のいずれか一層のみに配合されていてもよく、中間層と表面層のみに配合されていてもよく、中間層と表面層と裏面層に配合されていてもよい。
【0094】
前記鮮度保持フィルムが三層以上からなる多層フィルムである場合、各層の厚みの比率としては、裏面層/中間層/表面層=3/94/3?10/80/10が好ましく、4/92/4?8/84/4がより好ましい。裏面層および表面層の厚み比率が10%以下であることにより、中間層のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンをフィルム表面の方向へ移行させて、フィルムの表面のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの存在量を適正な範囲に維持することができ、十分な抗菌性能が発揮される。なお、この態様によれば、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを表面層または裏面層に積極的に配合しない場合であっても、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの経時的な中間層から表面側への移行により、フィルム表面のパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの存在量を0.002?0.5g/m^(2)にすることができる。前記鮮度保持フィルムの厚みは第一の実施形態と同様とすることができる。この態様における二軸延伸の条件は、縦延伸(温度:90?140℃、倍率:4?6倍)、横延伸(温度:140?200℃、倍率:8?12倍)が好ましい。なお、延伸処理の後に機械的物性の安定化の観点からフィルムをヒートセットすることが好ましい。ヒートセットは、160℃以上で5秒以上行うことが好ましく、160?220℃で5?10秒行うことがより好ましい。
【0095】
また、他の態様として、二軸延伸フィルムの表面にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在するようにコートしてもよい。
【0096】
プロピレン系重合体を含む多層フィルムの態様において、中間層のプロピレン系重合体の融点(Tm)は155?170℃が好ましい。また、表面層及び裏面層のプロピレン系重合体の融点(Tm)は、125℃以上、155℃未満が好ましく、130?145℃がより好ましい。該プロピレン系重合体の中でも、特にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が、ヒートシール性に優れる多層フィルムが得られるため好ましい。これにより、ヒートシール性、剛性、耐熱性のバランスが優れ、かつ優れた鮮度保持性能を有する多層フィルムが得られる。
【0097】
また、二軸延伸多層フィルムの態様において、中間層にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを配合する態様においては、予め中間層の材料に配合しても良い。しかしながら、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミン、および他の添加剤を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備して、最終的にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの配合量が所望の範囲になるように、マスターバッチとプロピレン系重合体とを混合し、混合物を押出機に投入して中間層を形成することが好ましい。
【0098】
<エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルム>
エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルムとしては、単層フィルムでもよく、2層以上の多層フィルムでもよい。また、該鮮度保持フィルムは包装フィルムとして好適な少なくとも一軸方向に延伸した延伸フィルムとすることもできる。一軸方向の延伸倍率は2から15倍が好ましく、二軸延伸フィルムとする場合には、面倍率を25?100倍とすることが好ましい。
【0099】
パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンをフィルム内に配合する態様では、その配合量は0.01?3質量%が好ましく、0.01?1質量%がより好ましい。また、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンをフィルムの表面にコートすることで、フィルムの表面にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを0.002?0.5g/m^(2)存在させてもよい。
【0100】
前記鮮度保持フィルムが多層フィルムの場合は、例えば多層押出機による共押出により表面層/中間層/裏面層からなる3層フィルムをキャスト成形することができる。この場合、鮮度保持の機能が必要な表面層にのみパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを配合することができる。また、印刷等を行う裏面層にのみアンチブロッキング剤を配合することができる。大部分を占める中間層にはそのような化合物を配合する必要がないため、前記方法は生産効率及び経済性の観点から好ましい。前記鮮度保持フィルムが3層フィルムである場合、各層の厚みの比率、フィルム全体の厚みは第一の実施形態と同様とすることができる。
【0101】
前記鮮度保持フィルムが多層フィルムであり、内容物に接する表面層にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンを配合する態様において、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンをエチレン系重合体に予め配合してもよい。しかしながら、パルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミン、および他の添加材を多量に含む組成物(マスターバッチ)を準備しておき、最終的にパルミチルジエタノールアミン及び/又はステアリルジエタノールアミンの配合量が所望の範囲になるように、マスターバッチとエチレン系重合体とを混合して、混合物を押出機に投入し、表面層を形成することが好ましい。
【0102】
<包装材>
本発明に係る包装材は、本発明に係る鮮度保持フィルムを備える。本発明に係る包装材は、例えば本発明に係る鮮度保持フィルムからなる袋、包装用ラップ等の包装材である。包装材の製造方法は第一の実施形態と同様である。また、前記包装材の一部に孔を設けたり、上部を開放したりすることで、嫌気性菌が発生しないため、被包装材に腐敗臭がこもらない様にすることもできる。さらに、酸素濃度、二酸化炭素濃度を制御したり、その他のガスを利用して包装したりすることもできる。
【0103】
特に延伸フィルムの場合、袋等の前記包装材には、例えば、必要に応じて製造する前にフィルムの裏面層に印刷をしておいてもよい。無延伸フィルムの場合、袋等の前記包装材には、例えば、必要に応じて延伸フィルムに貼り合わせて内容物と接触するラミネートフィルムの内面に用いても良い。
【0104】
前記包装材は、殺菌処理されたカット野菜、予備調理済又は調理済の食材などの鮮度保持包装という、厳しい鮮度保持が求められる用途に適しており、有効に雑菌の繁殖を抑制することができる。包装される内容物には、野菜、果物などの青果物や花卉、精肉、鮮魚などの動物性食材が挙げられ、これらを比較的長い期間にわたり鮮度保持できる。特に、カット野菜などの予備調理または調理された生鮮食品の包装に適しており、雑菌の繁殖を十分に抑制することができる。
【0105】
特に近年、キャベツ、レタス等を2?10mm程度の千切りにして、一般細菌を殺菌した後にフィルムに包装し、スーパーマーケット等で販売したり、調理の手間を省くために配送センターから各チェーンレストランに配送したりする際に用いることのできる、鮮度保持フィルムからなる包装材が望まれている。いわゆるカット野菜の包装には、殺菌処理した内容物に菌が入らないように、又は内容物から溶出した栄養液が包装材の内面に付着して菌が繁殖しないように、特に抗菌が高く、かつ内容物への移行が少ない鮮度保持フィルムからなる包装材が求められている。しかしながら、これらの要望に応えるには、従来に比べはるかに厳しくかつ安全な抗菌性能が必要である。これに対し、本発明に係る鮮度保持フィルムは、フィルムの表面に特定の化合物が特定の割合で確実に存在しているため、これらの要望に応えることができ、優れた鮮度保持の性能を発揮することができる。
【0106】
さらに、本発明に係る鮮度保持フィルムでは、特定の化合物が特定の割合で存在しており、溶融成形の際の制御により、気化による発煙や、成形後の表面へのブリードアウトも適度である。このため、前記包装材は特定の化合物の内容物への移行が抑制され、さらには内容物の味覚に影響を及ぼさない。
【0107】
[第三の実施形態]
本発明に係る鮮度保持フィルムは、表面上を含む全体としてアルキルジエタノールアミンが0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが0.01?1.0質量%(ジグリセリンモノパルミテート及びジグリセリンモノミリステートの双方を含有する場合にはジグリセリンモノパルミテート及びジグリセリンモノミリステートの合計が0.01?1.0質量%)、を含有することを特徴とする。ここで、「表面上を含む全体として」とは「本発明に係る鮮度保持フィルムの表面上、及び表面上以外に含まれる総量として」を意味する。ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートとともにアルキルジエタノールアミンをフィルムに含有させることにより、抗菌性を有するアルキルジエタノールアミンがジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートに伴って表面上にブリードアウトし、本発明に係る鮮度保持フィルムの表面が抗菌性とともに、防曇性、静防性を同時に有することができる。さらに、本発明に係る鮮度保持フィルム、特に雑菌が最も繁殖しやすい温度帯である25?40℃の温度帯においても、安定して高い再現性を有する抗菌性を示す。
【0108】
前記鮮度保持フィルムは、表面上に前記アルキルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましい。ここで「表面上」とは「本発明に係る鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面上」を意味する。該表面は、内容物と接触する表面であることが好ましい。表面上のアルキルジエタノールアミンの量が前記範囲内であることにより、生鮮食品等の内容物である被包装物の鮮度保持効果を奏するための十分な抗菌性をフィルムに付与することができる。
【0109】
前記アルキルジエタノールアミンとしてはカプリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等が挙げられるが、パルミチルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミンが好ましい。アルキルジエタノールアミンとして、パルチミルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方を用いることにより、延伸フィルムの成形加工時の揮発が小さく、成形性に優れ、かつ高い抗菌性能を発現することができる。
【0110】
本発明に係る包装材は、本発明に係る鮮度保持フィルムから構成されている。鮮度を保つことが困難なカット野菜等の生鮮食品や花卉等の鮮度を保つため、当該生鮮食品等を被包装物として前記鮮度保持フィルムから構成された包装材で包むことにより、被包装物の鮮度を長期間保つことができる。本発明に係る包装材は特に保存温度が25?40℃の範囲であっても、安定して高い再現性で抗菌性を示すことから、雑菌の繁殖を効果的に抑制でき、被包装物の鮮度を効果的に保持することができる。特に、カット野菜のように殺菌処理後に包装されるものについては、雑菌の再繁殖防止という観点から好適である。
【0111】
本発明に係る鮮度保持フィルムの樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、プロピレン系重合体及びエチレン系重合体の少なくとも一種がより好ましい。熱可塑性樹脂、プロピレン系重合体及びエチレン系重合体としては、第一の実施形態において例示したものを用いることができる。また、前記鮮度保持フィルムには、必要に応じて第一の実施形態に示した他の添加剤を含むことができる。
【0112】
<ジグリセリン脂肪酸エステル>
ジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とを脱水縮合して得られる。また反応混合物を高真空蒸留にすることによって、モノエステルを効率よく取り出し、モノ脂肪酸エステル含有量を80質量%以上に高めることが好ましい。ジグリセリン脂肪酸エステルの構造は、下記式(1)に示されるように脂肪酸とのエステル結合を1つ含む直鎖C3炭化水素+直鎖C3炭化水素にOH基が3つ結合した構造である。
【0113】
【化1】

【0114】
そのため、後述するグリセリン脂肪酸エステルに比べて揮発温度が高く、2軸延伸ポリプロピレンフィルム製造時、特にテンターでの発煙が少ない。また、融点が低いためにパルミチルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミンと共に表面にブリードアウトしやすい。前記式(1)のRの具体例としては、カプリル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、12-ヒドロキシステアリル基、ベヘニル基等が挙げられるが、揮発性を抑え、かつ静防性、防曇性及び抗菌性を発現する観点から、本発明では、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを好ましく用いることができる。
【0115】
<グリセリン脂肪酸エステル>
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とを脱水縮合して得られる。グリセリン脂肪酸エステルの構造は、下記式(2)に示されるように脂肪酸とのエステル結合を1つ含む直鎖C3炭化水素にOH基が2つ結合した構造である。
【0116】
【化2】

【0117】
下記式(2)のRの具体例としては、カプリル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、12-ヒドロキシステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルはこのような構造のため、前述のジグリセリン脂肪酸エステルに比べて、揮発温度が低く、2軸延伸ポリプロピレンフィルム製造時特にテンターでの発煙が多い。また、融点が高いためにパルミチルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミンと共に表面にブリードアウトしにくい。
【0118】
<アルキルジエタノールアミン>
アルキルジエタノールアミンはアルキルアミンとエチレンオキサイドとを付加反応させて得られる。アルキルジエタノールアミンのアルキル基の炭素数は16?18が好ましい。アルキルジエタノールアミンの構造は、例えば下記式(3)に示されるステアリルジエタノールアミンのように、アルキルアミンに2つのC2炭化水素とOH基が結合した構造である。
【0119】
【化3】

【0120】
本発明で高い抗菌性を発現するパルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンは炭素数が16、18である。パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンは、融点、沸点がミリスチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミンよりも高く、成形時に揮発しにくく、かつ被包装物への移行が少ない。また、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンは構造的に先述のジグリセリン脂肪酸エステルに近いため、共存すると相溶して一緒にフィルム表面にブリードアウトすることができる。アルキルジエタノールアミンは衛生上の問題で各国において使用上限があり、より少ない量で効果的にフィルム表面上にブリードアウトさせ、かつ静防性、防曇性を発現させる観点から、本発明ではジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを配合する。
【0121】
ここで、フィルム表面にアルキルジエタノールアミンが結晶状態で存在しても、静防性能、防曇性能を発揮することができる。例えば食品が置かれる温度は一般に5?40℃であり、ステアリルジエタノールアミンの融点(51℃)より低いため、ステアリルジエタノールアミンは結晶として存在する。
【0122】
しかし、アルキルジエタノールアミンが結晶状態のままでは抗菌性を発現しない場合がある。例えばJISZ2801に準じた抗菌試験では大腸菌(Escherichia coli)等を1/500普通ブイヨン培地に規定数量入れて4cm角のフィルム表面に滴下してポリエチレンフィルムと挟み込み、35℃、24時間経過した後に鮮度保持フィルム表面を洗浄し、普通ブイヨン培地を回収し、普通寒天培地を用いて菌数を測定する。この試験方法では、ブイヨン培地(液)に30ppm以上の濃度でアルキルジエタノールアミンが拡散することが必要である。
【0123】
ここでグリセリン脂肪酸エステルはジグリセリン脂肪酸エステルに比べて融点が高く、融解熱量も大きいことから、アルキルジエタノールアミンを取り込んで結晶を作った際に、容易に溶け出さず、アルキルジエタノールアミンの抗菌性の発現を阻害する。例えば食品が置かれる温度は一般に5?40℃であり、グリセリンモノステアレートの融点(73℃)に比べて低く、液と接触しても必要量のステアリルジエタノールアミンが溶出することができない。そこでステアリルジエタノールアミンの融点(51℃)よりも低い融点(43℃、26℃)であり、かつ10%揮発温度が高いジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを用いることにより、抗菌性を十分に発現することができる。
【0124】
<鮮度保持フィルム>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムが好ましい。本発明に係る鮮度保持フィルムは、表面上を含む全体としてアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを0.01?1.0質量%含有する。このようにアルキルジエタノールアミン、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノミリステートを含むことにより、含有成分が適量ブリードアウトし、べたつかず透明性に優れる。さらには包装材として用いた場合に被包装物への各成分の移行が少ないため、特に被包装物が食品である場合でも味覚などに影響を及ぼさず、抗菌性、防曇性、静防性に優れる鮮度保持フィルムが得られる。さらに、包装材の一部に孔を設けたり、上部を開放したりしておけば、嫌気性菌が発生しないため、被包装物に腐敗臭がこもらない様にすることも可能である。
【0125】
本発明に係る鮮度保持フィルムでは、経時的にアルキルジエタノールアミンがジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノミリステートとともにフィルム表面上にブリードアウトするため、フィルム内部の各成分の含有量が変化する。本発明に係る鮮度保持フィルムの表面上に存在するアルキルジエタノールアミン、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノミリステートの測定方法は、フィルム表面をジクロロメタンで洗浄し、洗浄液を回収して濃縮後、定容し、さらにシリル化後ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)にて測定した値である。また、アルキルジエタノールアミンのフィルム内の含有量は、成形加工時における加工機器等への汚染、余剰なフィルム表面へのブリードアウトを抑制し、かつ必要十分な抗菌性能を発現できるアルキルジエタノールアミンを表面にブリードアウトさせることができることから、0.01?1.0質量%であり、0.03?0.80質量%が好ましく、0.05?0.80質量%がより好ましい。該含有量が0.01質量%未満では十分な抗菌性を付与することができない。また、該含有量が1.0質量%を超えると包装材を形成した場合にアルキルジエタノールアミンが被包装物に付着する可能性がある。
【0126】
さらに、前記鮮度保持フィルムは、アルキルジエタノールアミンのブリードアウトをより円滑にするため、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレートの少なくとも一方を含んでもよい。但し、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレートを多く含有するとアルキルジエタノールアミンの抗菌性が減殺されることがあるため、グリセリンモノパルミテート及び/又はグリセリンモノステアレートを、ジグリセリンモノパルミテート及び/又はジグリセリンモノミリステートの含有量100質量部に対し、20質量部未満含有することが好ましい。
【0127】
また、前記鮮度保持フィルムの表面上に存在するアルキルジエタノールアミンの量は、抗菌性の効果的付与の観点から、0.002?0.5g/m^(2)が好ましく、0.003?0.1g/m^(2)がより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)がさらに好ましく、0.003?0.01g/m^(2)が特に好ましい。さらに、アルキルジエタノールアミンがパルミチルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミンであることが、高温時の蒸気圧が小さいため成形加工時の揮発が少なく、かつ必要十分な抗菌性能を有することから好ましい。また、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが鮮度保持フィルム表面上に存在してもよく、その表面上に存在する総量は0.002?0.5g/m^(2)が好ましく、0.003?0.1g/m^(2)がより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)がさらに好ましく、0.003?0.01g/m^(2)が特に好ましい。さらに、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレートの少なくとも一方が鮮度保持フィルムの表面上に存在してもよく、その量は、フィルムの効果的な抗菌性の保持の観点から、フィルム表面上に存在するジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの総量100質量部に対し、20質量部未満であることが好ましい。
【0128】
また、ジグリセリンモノパルミテートおよび/またはジグリセリンモノミリステートのフィルム内の含有量は、成形加工時における加工機器等への汚染、余剰なフィルム表面へのブリードアウトを抑制し、かつ必要十分な抗菌性能を発現できる量のアルキルジエタノールアミンを表面にブリードアウトさせることができることから、0.01?1.0質量%であり、0.03?0.80質量%が好ましく、0.05?0.80質量%がより好ましい。該含有量が0.01質量%未満の場合、アルキルジエタノールアミンを十分にブリードアウトさせることができないため、抗菌性が低下する。また、該含有量が1.0質量%を超える場合、包装材を形成した場合にアルキルジエタノールアミンが被包装物に付着する可能性がある。
【0129】
<プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム及びその製造方法>
本発明に係る鮮度保持フィルムをプロピレン系重合体から形成する場合は、該鮮度保持フィルムは裏面層/中間層/表面層の少なくとも三層からなる二軸延伸多層フィルムであることが好ましい。成形において、中間層にのみ添加剤を配合し、裏面層、表面層と接触するロール等の加工機器を汚さないようにすることができるためである。また、包装袋加工時において、裏面層、表面層のいずれか一方、または両方を低融点化して包装材として加工しやすくできるためである。中間層には、アルキルジエタノールアミン(特にパルミチルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミン)が、表面上を含む全層に対して0.01?1.0質量%含まれることが好ましく、0.02?0.80質量%含まれることがより好ましく、0.05?0.50質量%含まれることがさらに好ましい。また、中間層には、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが、表面上を含む全層に対して0.01?1.0質量%含まれることが好ましく、0.02?0.80質量%含まれることがより好ましく、0.05?0.50質量%含まれることがさらに好ましい。中間層にグリセリンモノパルミテート、グリセリンステアレートを含有させる場合には、グリセリンモノパルミテート及び/又はグリセリンステアレートの含有量は、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの含有量100質量部に対し、20質量部未満であることが好ましく、10質量部未満であることがより好ましく、5質量部未満であることがさらに好ましい。
【0130】
中間層に含まれるアルキルジエタノールアミンの量が上記範囲内にあると、抗菌効果があり、透明性に優れ、成形時における抗菌成分の飛散が少ないため成形性に優れる。さらに、包装時における内容物への抗菌成分の移行が少ないため、被包装物の味覚などに影響を及ぼさない。また、中間層に含まれるジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの量が上記範囲内にあると、抗菌成分であるアルキルジエタノールアミンを表面にブリードアウトする効果があり、ブリードアウトの量が適量なため、べたつかず、透明性に優れており、成形時における成分の飛散が少ないため成形性に優れる。さらに、包装時における内容物への成分の移行が少ないため、被包装物の味覚などに影響を及ぼさない。
【0131】
本発明に係る鮮度保持フィルムが、裏面層/中間層/表面層からなるプロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルムである場合には、内容物と接する表面層の表面上にアルキルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましく、0.003?0.1g/m^(2)存在することがより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)存在することがさらに好ましく、0.004?0.03g/m^(2)存在することが特に好ましい。また、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましく、0.003?0.1g/m^(2)存在することがより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)存在することがさらに好ましく、0.004?0.03g/m^(2)存在することが特に好ましい。グリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートの少なくとも一方が存在する場合には、グリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートの表面層の表面上に存在する量は、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの量100質量部に対して20質量部未満であることが好ましい。
【0132】
プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルムが三層から構成される場合には、各層の厚みの比率は、第一の実施形態と同様とすることができる。また、鮮度保持フィルムの厚みも第一の実施形態と同様とすることができる。プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルムを得る方法としては、第二の実施形態に記載された方法を用いることができる。
【0133】
中間層がアルキルジエタノールアミン、並びにジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを所望の量含む場合には、予めこれらを中間層の材料に配合しても良い。しかしながら、アルキルジエタノールアミン、及びジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを多量に含む組成物(マスターバッチ)を用意して置き、最終的にアルキルジエタノールアミン、及びジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの量が所定の範囲になるように、マスターバッチとプロピレン系重合体とを混合して、混合物を押出機に投入し、中間層を形成することが、製造効率の観点から好ましい。
【0134】
<エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルム及びその製造方法>
本発明に係る鮮度保持フィルムをエチレン系重合体から形成する場合は、該フィルムが2層以上から構成され、アルキルジエタノールアミン(特にパルチミルジエタノールアミン及び/またはステアリルジエタノールアミン)並びにジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが内容物と接する表面層に含まれることが好ましい。該フィルムのアルキルジエタノールアミンの含有量は0.01?1.00質量%であり、0.02?0.80質量%が好ましく、0.05?0.50質量%がより好ましい。ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの含有量は0.01?1.00質量%であり、0.02?0.80質量%が好ましく、0.05?0.50質量%がより好ましい。また、該フィルムがグリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートの少なくとも一方を含む場合には、グリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートの含有量の総量が、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの含有量の総量100質量部に対して20質量部未満であることが好ましく、10質量部未満であることがより好ましく、0.05質量部未満であることがさらに好ましい。
【0135】
また、前記鮮度保持フィルムは、フィルム表面上にアルキルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましく、0.003?0.1g/m^(2)存在することがより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)存在することがさらに好ましく、0.004?0.03g/m^(2)存在することが特に好ましい。また、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートが0.002?0.5g/m^(2)存在することが好ましく、0.003?0.1g/m^(2)存在することがより好ましく、0.003?0.05g/m^(2)存在することがさらに好ましく、0.004?0.03g/m^(2)存在することが特に好ましい。また、グリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートの少なくとも一方が前記鮮度保持フィルムの表面上に存在する場合には、グリセリンモノパルミテート及びグリセリンモノステアレートのフィルム表面上に存在する総量が、ジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートのフィルム表面上に存在する総量100質量部に対して20質量部未満であることが好ましい。
【0136】
前記鮮度保持フィルムは単層であっても良く、二層以上の多層でも良い。裏面層/中間層/表面層の3層を有する鮮度保持フィルムを形成する場合には、キャスト成型、インフレーション成型等を用いることができるが、エクストルーダーによる共押出による3層キャスト成型が好ましい。この場合、キャスト成型時に、鮮度保持機能が必要な表面層にのみ所定量のアルキルジエタノールアミンとジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートとを含有させることができる。また、印刷等を行う裏面層にアンチブロッキング剤を配合することができる。これにより、大部分を占める中間層には添加剤を入れる必要がなくなるため、生産効率および経済性の観点から好ましい。各層の厚みの比率および鮮度保持フィルムの厚みは、第一の実施形態と同様とすることができる。
【0137】
また、表面層がアルキルジエタノールアミンとジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートとを含む場合、表面層の材料として、アルキルジエタノールアミンとジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートを所定の量で含むエチレン系重合体を予め配合して調製してもよい。しかしながら、アルキルジエタノールアミンとジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートとを含むマスターバッチを用意して置き、最終的にアルキルジエタノールアミンとジグリセリンモノパルミテート及び/またはジグリセリンモノミリステートの量が所定の範囲になるように、マスターバッチとエチレン系重合体とを混合して、混合物を押出機に投入し、表面層を形成することが好ましい。
【0138】
本発明に係る包装材は、第一の実施形態と同様に製造することができる。
【0139】
[第四の実施形態]
本発明に係る鮮度保持フィルムは、密度が0.85?0.95g/cm^(3)である直鎖状低密度ポリエチレン(A)および密度が0.91?0.93g/cm^(3)である高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量を100質量%とするとき、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)50?95質量%と、前記高圧法低密度ポリエチレン(B)5?50質量%と、を含み、前記直鎖状低密度ポリエチレン(A)および前記高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100質量部に対し、粘着剤(C)0.5?10質量部と、防曇剤(D)0.5?5質量部と、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の特定化合物(E)0.001?3質量部と、を含み、少なくとも一方の表面に、前記特定化合物(E)が0.002?0.5g/m^(2)、好ましくは0.005?0.1g/m^(2)、より好ましくは0.008?0.08g/m^(2)、さらに好ましくは0.010?0.050g/m^(2)の割合で存在する。該鮮度保持フィルムは、鮮度保持ストレッチフィルムであることができる。また、少なくとも、内容物と接触する表面に、前記特定化合物(E)が0.002?0.5g/m^(2)、好ましくは0.005?0.1g/m^(2)、より好ましくは0.008?0.08g/m^(2)、さらに好ましくは0.010?0.050g/m^(2)の割合で存在することが好ましい。該鮮度保持フィルムは、JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌を用いて行う時、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによる拭き取りを行わない条件下において、24時間後の鮮度保持フィルムの少なくとも一方の表面の生菌数が1/100倍以下であることが好ましい。本発明に係る鮮度保持フィルムは、フィルム表面に存在する特定化合物(E)により抗菌性と防曇性を有し、該抗菌性と防曇性の相乗的効果として優れた鮮度保持性を有する。また、本発明に係る鮮度保持フィルムは、フィルムに含まれる粘着剤(C)により粘着性を有することから、生鮮食品及び加工食品をトレイ包装するのに好適に用いることができる。また、本発明に係る鮮度保持フィルムは、25?40℃の常温帯で安定かつ再現性の高い抗菌性を発現するため、被包装物の鮮度保持性に優れている。
【0140】
<直鎖状低密度ポリエチレン(A)>
本発明に用いる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、密度が0.85?0.95g/cm^(3)である。該密度は0.87?0.945g/cm^(3)であることが好ましく、0.89?0.94g/cm^(3)であることがより好ましい。該直鎖状低密度ポリエチレン(A)としては、X線回折法による結晶化度が0?50%であるエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。該結晶化度は5?45%が好ましく、10?40%がさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン(A)はエチレン単位が主成分であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、エチレン単位を80?99モル%含むことが好ましく、85?97モル%含むことがより好ましく、88?95モル%含むことがさらに好ましい。エチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。コモノマーとしてのα-オレフィンは1種類に限らず、ターポリマーのように2種類以上用いることもできる。
【0141】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、遷移金属触媒の存在下にエチレンと前記α-オレフィンとを気相または液相下で共重合して製造することができる。遷移金属触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、フィリップス型触媒、メタロセン型触媒などが使用できる。低温でのシール性、強度、弾性率、伸び等のバランスを考慮すると、メタロセン型触媒が好ましい。また、重合方法には特に制限はなく、気相法、溶液法、バルク重合法などの重合方法により重合することができる。
【0142】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)のメルトフローレート(以下、MFRという)は、得られるフィルムの低温シール性、強度、弾性率、伸び特性等を考慮すると、190℃、2.16kg荷重におけるMFRが0.1?10g/10分であることが好ましく、1?8g/10分であることがより好ましく、2?6g/10分であることがさらに好ましい。
【0143】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)および後述する高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量を100質量%とするとき、直鎖状低密度ポリエチレン(A)の含有量は50?95質量%であり、55?90質量%が好ましく、60?85質量%がより好ましく、70?80質量%がさらに好ましい。
【0144】
<高圧法低密度ポリエチレン(B)>
本発明において、高圧法低密度ポリエチレン(B)は、いわゆる高圧ラジカル重合により製造される長鎖分岐を有する分岐の多い低密度ポリエチレンであり、密度が0.91?0.93g/cm^(3)である。該密度は0.912?0.925g/cm^(3)であることが好ましく、0.914?0.920g/cm^(3)であることがより好ましい。本発明に用いる高圧法低密度ポリエチレン(B)は、フィルムの成形性、得られるフィルムの透明性、柔軟性、伸び特性等を考慮すると、190℃、2.16kg荷重におけるMFRが0.01?100g/10分であることが好ましく、0.05?10g/10分であることがより好ましく、1?9g/10分であることがさらに好ましく、4?8g/10分であることが特に好ましい。高圧法低密度ポリエチレン(B)の市販品としては、例えば、三井化学(株)製、商品名:ミラソンF212、同12、同11P、同16P等が挙げられる。
【0145】
また、高圧法低密度ポリエチレン(B)は、長鎖分岐の度合を表わすスウェル比、すなわち、毛細式流れ特性試験機を用い、190℃の条件下で内径(D)2.0mm、長さ15mmのノズルより押出速度10mm/分で押し出したストランドの径(Ds)と、ノズル内径Dとの比(Ds/D)が1.3以上であることが好ましい。
【0146】
また、高圧法低密度ポリエチレン(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン以外の他の単量体との共重合体であってもよい。高圧法低密度ポリエチレン(B)は、例えば、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下の他のα-オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等の重合性単量体との共重合体であってもよい。
【0147】
鮮度保持フィルムに含まれる高圧法低密度ポリエチレン(B)の割合は、フィルムの成形性、得られるフィルムの透明性、柔軟性等に影響を及ぼす。直鎖状低密度ポリエチレン(A)および高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量を100質量%とするとき、直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量は5?50質量%であり、10?45質量%が好ましく、15?40質量%がより好ましく、20?30質量%がさらに好ましい。該含有量が5質量%未満である場合、成形性が低い。また、該含有量が50質量%を超える場合、透明性、柔軟性が低い。
【0148】
<粘着剤(C)>
本発明に用いる粘着剤(C)としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、水添脂肪族系炭化水素樹脂、水添芳香族系炭化水素樹脂、水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、合成テルペン系炭化水素樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、水添テルペン系炭化水素樹脂、クマロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹脂、及びロジン系炭化水素樹脂等が挙げられる。これらは、1種類でもよいし、2種類以上の混合物でもよい。粘着剤(C)としては、具体的には、石油、ナフサなどの分解によって得られるC4留分、C5留分、これらの混合物、あるいはこれらの任意の留分、例えばC5留分中のイソプレン及び1,3-ペンタジエンなどを主原料とする脂肪族系炭化水素樹脂;石油、ナフサなどの分解によって得られるC9留分中のスチレン誘導体およびインデン類を主原料とする芳香族系炭化水素樹脂;C4留分およびC5留分の任意の留分とC9留分とを共重合した脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂;石油、ナフサ等の分解によって得られるC5留分中に含まれるシクロペンタジエン等を原料とした2量体を主原料として得られるジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂;脂肪族系炭化水素樹脂を水素添加した水添脂肪族系炭化水素樹脂;芳香族系炭化水素樹脂を水素添加した水添芳香族系炭化水素樹脂;脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂を水素添加して得られる水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂;ジシクロペンタジエン系樹脂を水素添加して得られる水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂;脂肪族、脂環族および芳香族炭化水素樹脂を含む構造を持つ合成テルペン系炭化水素樹脂;テレピン油中のα、β-ピネンを原料とするテルペン系炭化水素樹脂;テルペン系炭化水素樹脂を水素添加した水添テルペン系炭化水素樹脂;コールタール系ナフサ中のインデンおよびスチレン類を原料とするクマロンインデン系炭化水素樹脂;低分子量スチレン系樹脂;ロジン系炭化水素樹脂などが挙げられる。
【0149】
前記脂肪族系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製、商品名:マスカレッツS-110A、トーネックス(株)製、商品名:エスコレッツ1315が挙げられる。また、前記芳香族系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、東ソー(株)製、商品名:ペトコール120、三井化学(株)製、商品名:ハイレッツ等が挙げられる。また、前記脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂の市販品としては、例えばトーネックス(株)製、商品名:エスコレッツ2307、同213が挙げられる。また、前記ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製、商品名:マルカレッツM-525A、同M-510が挙げられる。また、前記水添脂肪族系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製、商品名:マスカレッツH-505が挙げられる。また、前記水添芳香族系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学(株)製、商品名:アルコンP-125、同P-115が挙げられる。また、前記水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、出光石油化学(株)製、商品名:アイマーブP-125、同P-140が挙げられる。また、前記水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂の市販品としては、トーネックス(株)製、商品名:エスコレッツ5320HC、同228Fが挙げられる。また、前記合成テルペン系炭化水素樹脂の市販品としては、トーネックス(株)製、商品名:エスコレッツ1401が挙げられる。また、前記テルペン系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:YSレジンPX-1250、同1150が挙げられる。また、前記水添テルペン系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロンP-125、同P-115が挙げられる。また、前記クマロンインデン系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵化学(株)製、商品名:エスクロンV-120が挙げられる。また、前記低分子量スチレン系樹脂としては、例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSが挙げられる。さらに、前記ロジン系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学(株)製、商品名:スーパーエステルA-125、同S-100が挙げられる。
【0150】
鮮度保持フィルムに含まれる粘着剤(C)の割合は、得られるフィルムの粘着性、密着性、カット性、衝撃強度等の特性を考慮すると、直鎖状低密度ポリエチレン(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100質量部に対し、0.5?10質量部であり、1?8質量部が好ましく、2?7質量部がより好ましく、3?6質量部がさらに好ましい。
【0151】
<防曇剤(D)>
本発明に用いる防曇剤(D)は、空気中の水分が凝縮してフィルムの表面を曇らせるのを防止するために配合する添加剤(但し、特定化合物(E)を除く。)である。従って、フィルムの表面を親水性にして、生じた水滴を拡がらせる作用を有するものであれば特に制限はない。このような防曇剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。該界面活性剤としては、具体的には、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンベヘネート、ソルビタンステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンオレート、グリセリンステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンベヘネート、トリグリセリンオレート、トリグリセリンラウレート、トリグリセリンベヘネート、テトラグリセリンオレート、テトラグリセリンステアレート、ヘキサグリセリンラウレート、ヘキサグリセリンベヘネート、デカグリセリンオレート、デカグリセリンラウレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;パルミチルジエタノールアミン及びステアリルジエタノールアミン以外のラウリルジエタノールアミン等のアルキルアミン;ラウリン酸ジエタノールアミド等のアルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。ただし、防曇剤(D)はこれらに限定されるものではない。またこれらは単独で、または混合物として使用される。
【0152】
鮮度保持フィルムに含まれる防曇剤(D)の割合は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)及び高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100質量部に対し、0.5?5質量部であり、0.7?4質量部が好ましく、0.8?3質量部がより好ましく、1?2.5質量部がさらに好ましい。該割合が0.5質量部未満である場合、防曇効果が得られない。また、該割合が5質量部を超える場合、防曇剤のブリードのために得られるフィルムの透明性が低下する。防曇剤(D)は、予め、直鎖状低密度ポリエチレン(A)または高圧法低密度ポリエチレン(B)成分のいずれかに混合してマスターバッチを形成し、これを残余の成分として混合して樹脂組成物を得ることが好ましい。
【0153】
<特定化合物(E)>
本発明において特定化合物(E)は、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート、及びグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。なお、パルミチルジエタノールアミンは炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールは炭素数18のステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。グリセリンモノカプレートは、カプリン酸(炭素数10)とグリセリンとのモノエステルである。前述したように、ステアリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高く、フィルムを成形する際に比較的揮発しにくい。さらに、抗菌性、鮮度保持性に優れ、包装用フィルムとして用いた場合にそれに接触する内容物への移行が比較的遅く安全性に優れており、その性能を持続することが可能である。
【0154】
これらの特定化合物(E)は個々に、類似化合物を含有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン(炭素数16)は、少量のミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12?20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンを含んでいてもよい。また、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)は、炭素数16?20のアルキル基を有するアルキルジエタノール等を少量含んでいてもよい。また、これらのアミン化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成している類似化合物を少量含んでいてもよい。さらに、グリセリンモノラウレートは、炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでいてもよい。グリセリンモノカプレート(C10)は、炭素数が8、12等である高級脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等を少量含んでいてもよい。また、これらのグリセリンモノエステルには、類似化合物である少量のグリセリンジエステル、グリセリントリエステルなど、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、トリグリセリンである類似化合物が含まれていてもよい。これらの類似化合物は、特定化合物(E)の合成、分離などの工程において同時に合成されたり、分離が困難であったりする化合物である。これらの類似化合物は、特定化合物(E)100質量部に対して50質量部以下の割合で含まれてもよいが、含有量は少ないことが好ましい。
【0155】
さらに、本発明では特定化合物(E)と共に、必要に応じて、帯電防止剤、滑材などの他の添加剤を併用することもできる。これらの他の添加剤と前記類似化合物との合計の量は、用いられる特定化合物(E)100質量部に対して、50質量部以下であってもよいが、含有量は少ないことが好ましい。
【0156】
鮮度保持フィルムに含まれる特定化合物(E)の割合は、十分な抗菌性が得られる観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(A)及び高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100質量部に対し、0.001?3質量部であり、0.01?2質量部が好ましく、0.1?1.5質量部がより好ましく、0.3?1質量部がさらに好ましい。
【0157】
<抗菌性、鮮度保持性などの機能付与>
本発明に係る鮮度保持フィルムには、表面に特定化合物(E)が0.002?0.5g/m^(2)の割合で存在している。表面に存在する特定化合物(E)の量は、0.005?0.1g/m^(2)であることが好ましく、0.008?0.08g/m^(2)であることがより好ましく、0.010?0.050g/m^(2)であることがさらに好ましい。特定化合物(E)が前記範囲の量表面に存在することにより、優れた抗菌性および鮮度保持性を得ることができる。一方、表面に存在する特定化合物(E)の量が0.002g/m^(2)未満の場合、十分な抗菌性および鮮度保持性が得られない。また、表面に存在する特定化合物(E)の量が0.5g/m^(2)を超えると、フィルムの透明性が低下する。なお、フィルム表面の特定化合物(E)の定量方法は、第一の実施形態における方法と同様の方法により行うことができる。また、該表面は、内容物と接触する表面であることが好ましい。
【0158】
<製造方法>
本発明に係る鮮度保持フィルムは、前記所定量の(A)?(E)を含む樹脂組成物から製造してもよい。鮮度保持フィルムの製造方法としては、例えば、下記の1)?4)に示される方法が挙げられる。
1)前記所定量の(A)?(E)成分、及び、所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的に混合する方法。
2)前記所定量の(A)?(E)成分、及び、所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(たとえば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで、溶媒を除去する方法。
3)前記所定量の(A)?(E)成分、及び、所望により添加される他の成分を適当な良溶媒にそれぞれ別個に溶解した溶液を調製した後、混合し、次いで、溶媒を除去する方法。
4)前記1)?3)の方法を組み合わせて行う方法。
【0159】
これらのうち、1)の方法が好ましく使用される。詳しくは、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機、一軸又は二軸押出機等を用いて加熱し、溶融し、混練して行うことができる。また、各種樹脂ペレットをドライブレンドしてもよい。なお、前記鮮度保持フィルムが複数層からなる場合には、該鮮度保持フィルムを構成する各層を、前記方法を利用して製造することができる。
【0160】
前記所定量の(A)?(E)、及び必要に応じて他の成分を含む樹脂組成物を、例えば、Tダイが装着された押出成形機を用いて、混練し、溶融してフィルム状に成形することにより鮮度保持フィルムを製造してもよい。鮮度保持フィルムは、前記所定量の(A)?(E)、及び必要に応じて他の成分を含む層のみで形成されてもよいし、また、他の樹脂フィルム層との積層体であってもよい。他の樹脂フィルム層を形成する樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマー及びコポリマー等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。また、これらのポリオレフィン系樹脂に、上記所定量の(A)?(E)を含むフィルムを成形する際に発生する、いわゆる耳部と称されるフィルム端部の回収物を混合したものも用いることができる。
【0161】
前記鮮度保持フィルムの厚みは、強度、ハンドリング性、コスト等の観点から、5?50μmが好ましく、8?30μmがより好ましく、8?20μmがさらに好ましい。他の樹脂フィルム層を積層する場合は、(A)?(E)を必須成分として含む樹脂組成物から形成された各層、及び、他の樹脂組成物から形成された各層の厚みをそれぞれ1?5μmとし、それらを交互に積層し、フィルム全体の厚みが上記範囲となるようにしてもよい。その場合、前記所定量の(A)?(E)を必須成分として含む樹脂組成物から形成された層が最外層となるように積層することが好ましい。前記鮮度保持フィルムが積層体である場合、前記所定量の(A)?(E)を必須成分として含む樹脂組成物から形成された層の厚みは、フィルム全体の厚みの50%以上であることが好ましい。
【0162】
前記鮮度保持フィルムは、上述したように前記所定量の(A)?(E)をフィルム全体として含めば成型方法は特に限定されないが、当該所定量の(A)?(E)を含む樹脂組成物を用いて、Tダイ付押出機を用いる押出成形法により成形することが好ましい。Tダイ押出成形法としては、配向防止処理として、例えば、成形温度180?270℃、ドラフト比(ドラフト距離内での延伸比)40?130、ドラフト距離(ダイ先端部からフィルムが例えば冷却ロールに接触するまでの距離)50?120mmとし、フィルム温度40?70℃で延伸倍率を1.1?1.3倍にして巻き取る方法が好ましい。また、溶融成形したフィルムを冷却ロール等の冷却装置により冷却し、賦形する温度は15?80℃が好ましい。さらに、他のフィルム層を積層する場合には、別途それぞれのフィルムを成形した後、ラミネーター等を用いて積層してもよいが、生産効率の観点から多層押出成形機を用いる共押出法により積層フィルムを形成することが好ましい。
【実施例】
【0163】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0164】
[実験1]
<試験方法>
(1)抗菌試験
JISZ2801に準じて抗菌試験を、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。但し、鮮度保持フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
【0165】
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ菌(Salmonella)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)を規定数量(JIS試験で0.4cc用いたブイヨン)入れて4cm角の鮮度保持フィルム表面に滴下して、ポリエチレンフィルムとの間に挟み込んだ。35℃で24時間経過した後に鮮度保持フィルム表面を洗浄し、その普通ブイヨン培地を含む洗浄液を回収し、それを、普通寒天培地を用いて培養してコロニーの数をカウントした。
【0166】
即ち、顕微鏡下で菌の個数をカウントすることは困難なため、コロニーの数を、目視によりカウントし、その1グラム(g)あたりのコロニーの数を生菌数CFU(colony forming unit)(単位[個/g])とした。また2枚のポリエチレンフィルムの間に挟み込んだサンプルをコントロール(Control)として、比較の基準とした。表にはn=1から3の平均値も合わせて示した。但し、測定値のバラツキが10倍以上の場合には、JIS規格上平均値は計算できない。
【0167】
また、抗菌性のバラツキと、抗菌性能は以下の基準で評価した。
【0168】
(バラツキ)
なし:n=1?3における最大値と最小値との比が10よりも小さい。
小 :n=1?3における最大値と最小値との比が10?100の範囲内である。
大 :n=1?3における最大値と最小値との比が100よりも大きい。
【0169】
(抗菌性能)
A:菌数が<10であり、事実上不検出である。
B:controlとの比(実験結果/control)が1/100以下である。
C:controlとの比(実験結果/control)が1/100を超えて1/10以下である。
D:controlとの比(実験結果/control)が1/10よりも大きい。
【0170】
(2)鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量(g/m^(2))
ステアリルジエタノールアミンの塗布量から鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量を求めた。
【0171】
(3)鮮度保持フィルム表面のグリセリンモノラウレート(C12)の量(g/m^(2))
グリセリンモノラウレートの塗布量から鮮度保持フィルム表面のグリセリンモノラウレートの量を求めた。
【0172】
(4)鮮度保持フィルム表面のジグリセリンモノラウレート(C12)の量(g/m^(2))
グリセリンモノラウレートの塗布量から鮮度保持フィルム表面のジグリセリンモノラウレートの量を求めた。
【0173】
<実施例1?13、比較例1、2>
(1)プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム
(1-1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0174】
(1-2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0175】
前記材料を用いた裏面層/中間層/表面層の三層フィルムを二軸延伸機で層厚み比1/8/1で連続成形し、多層延伸フィルムからなる鮮度保持フィルムを製造した。鮮度保持フィルムの延伸温度は縦延伸:100℃、横延伸:180℃であった。ヒートセット温度は180℃であり、セット時間は10秒であった。更に、コロナ面の濡れ指数が38dynとなるように、裏面層の表面に対しコロナ処理を行った。
【0176】
ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレート(C12)、又はジグリセリンモノラウレートを、50℃に加温された精製水/IPA(イソプロピルアルコール)=80/20(質量比)の溶液に溶解した。これらの溶液の一つを、前記鮮度保持フィルムの表面層の表面に対し、表面における特定化合物1の量が表1から3に示される量となるようにコートバーを用いてコートし、100℃の温風で1分間加熱し、乾燥した。試験結果を表1から3に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
【表3】

【0180】
表1から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)の範囲内で存在する実施例1?7は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、ステアリルジエタノールアミンの量が前記範囲から外れる比較例1は、抗菌性が認められなかった。
【0181】
また、表2から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にグリセリンモノラウレートが0.002?0.5g/m^(2)の範囲内で存在する実施例8?13は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、グリセリンモノラウレートの量が前記範囲から外れる比較例2は、抗菌性が認められなかった。
【0182】
更に、表3から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にジグリセリンモノラウレートが0.200g/m^(2)存在する実施例14は、24時間経過後の大腸菌数がcontrolの1/100程度であり、ある程度の抗菌性が認められた。
【0183】
<実施例15?26、比較例3?9>
(2)エチレン系重合体を含む鮮度保持フィルム
(2-1)中間層
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:0.920g/cm^(3)、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
【0184】
(2-2)裏面層
裏面層の材料として、前記直鎖状低密度ポリエチレンに以下の材料をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0185】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753。
【0186】
(2-3)表面層
表面層の材料として、前記直鎖状低密度ポリエチレンに以下の(a)及び(b)をそれぞれ1000ppm配合し、さらに以下の(c)から(f)を表4から8に示す量配合した材料を用いた。
【0187】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753
(c)ステアリルジエタノールアミン
花王株式会社製
(d)グリセリンモノラウレート(C12モノグリ)
理研ビタミン社製
(e)ジグリセリンモノラウレート(C12ジグリ)
理研ビタミン社製
(f)ポリエチレングリコール(PEG)
PEG-1 分子量:20万(g/M) 第一工業製薬製
PEG-2 分子量:2万(g/M) 日油製。
【0188】
前記材料を用いた裏面層/中間層/表面層の三層キャストフィルムを層厚み比1/3/1で製造した。押出条件はダイス温度が200℃、チル温度が50℃であった。また、濡れ指数が38dynなるように表面層(シール層)の表面にコロナ処理を行った。試験結果を表4?8に示す。
【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
【表8】

【0194】
表4から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面層にステアリルジエタノールアミンを2000ppm配合した実施例15、16は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオに対して抗菌性を有していた。更にステアリルジエタノールアミン2000ppmに加えて、グリセリンモノラウレート(C12)、ジグリセリンモノラウレート(C12)、ポリエチレングリコール(PEG-2、分子量2万)をそれぞれ2000ppm添加した実施例16、17は、前記菌に対して更に安定した抗菌性を示した。
【0195】
表5から明らかなように、特定化合物1を全く含まない比較例3は、抗菌性能が認められなかった。一方、ステアリルジエタノールアミンを表面層に5000、2000ppm含む実施例19、20は抗菌性が認められた。しかし、ステアリルジエタノールアミンを1000ppm含む比較例4は抗菌性がなかった。ステアリルジエタノールアミン1000ppmに加えて、グリセリンモノラウレート(C12)を2000ppm配合した実施例21は、わずかではあるが抗菌性が認められた。
【0196】
表6から明らかなように、ステアリルジエタノールアミン1000ppmに加えて、ジグリセリンモノラウレート(C12)、ジグリセリンパルミテート(C16)、ジグリセリンミリステート(C14)を2000ppm配合した比較例5、6、7は、抗菌性が認められなかった。また、ステアリルジエタノールアミン1000ppmに加えて、分子量20万のポリエチレングリコール(PEG-1)2000ppmを添加した比較例8も抗菌性が認められなかった。一方、ステアリルジエタノールアミン1000ppmに加えて、分子量2万のポリエチレングリコール(PEG-2)2000ppmを添加した実施例22は、安定した抗菌性が認められた。
【0197】
表7から明らかなように、ステアリルジエタノールアミン1000ppm又は2000ppmに加えて、グリセリンモノラウレート(C12)、ジグリセリンモノラウレート(C12)を2000ppm配合した実施例23から25は優れた抗菌性を示した。
【0198】
表8から明らかなように、ステアリルジエタノールアミンを加えずに、グリセリンモノラウレート(C12)、ジグリセリンモノラウレート(C12)をそれぞれ2000ppm加え、さらに分子量20万のポリエチレングリコール(PEG1)2000ppmを添加した比較例9は抗菌性が認められなかった。ここで分子量20万のポリエチレングリコール(PEG1)に代えて分子量2万のポリエチレングリコール(PEG2)を2000ppm添加した実施例26は、抗菌性が認められた。
【0199】
なお、実施例15から26では十分な抗菌性が示されており、特定化合物1が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。
【0200】
<実施例27?30、比較例10、11>
(3)プロピレン系重合体を含む鮮度保持フィルム
(3-1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))に、以下の(a)および(b)をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0201】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753。
【0202】
(3-2)表面層
前記プロピレン単独重合体に、以下の(a)及び(b)をそれぞれ1000ppm配合し、さらに以下の(c)から(f)を表9に示す量配合した材料を用いた。
【0203】
(a)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMERSA1753
(c)ステアリルジエタノールアミン(C18)
花王株式会社製
(d)グリセリンモノラウレート(C12)
理研ビタミン社製
(e)ジグリセリンモノラウレート(C12)
理研ビタミン社製
(f)ジグリセリンパルミテート(C16)
理研ビタミン社製。
【0204】
(3-2)裏面層
裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0205】
裏面層/中間層/表面層の三層フィルムを二軸延伸機で連続成形し、多層延伸フィルムからなる鮮度保持フィルムを製造した。鮮度保持フィルムの延伸温度は縦延伸:100℃、横延伸:165℃であった。ヒートセット温度は165℃、セット時間は10秒であった。試験結果を表9に示す。
【0206】
【表9】

【0207】
表9から明らかなように、ステアリルジエタノールアミンを0又は500ppm、ジグリセリンパルミテート(C16)を3000ppm、グリセリンモノラウレート(C12)及びジグリセリンモノラウレート(C12)をそれぞれ3000ppm配合した比較例10、11は抗菌性能を示さなかった。一方、ステアリルジエタノールアミンを0又は500ppm、ジグリセリンパルミテート(C16)を3000ppm、グリセリンモノラウレート(C12)及びジグリセリンモノラウレート(C12)をそれぞれ6000ppm配合した実施例27、28は抗菌性を示した。更に、ステアリルジエタノールアミンを0又は500ppm、ジグリセリンパルミテート(C16)を3000ppm、グリセリンモノラウレート(C12)及びジグリセリンモノラウレート(C12)をそれぞれ9000ppm配合した実施例29、30は安定した高い抗菌性を示した。なお、実施例27から30では十分な抗菌性が示されており、特定化合物1が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。
【0208】
[実験2]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。
【0209】
(2)ブロッキング
鮮度保持フィルムを40mm×60mmで切り出し、コロナ面同士、非コロナ面同士を合わせて上から100gの荷重を与えた状態でオーブンに入れ、40℃で24時間置いた。その後、取り出して、目視により、簡単に剥がれるものを「A」、剥がれないものを「B」とした。
【0210】
(3)ヘイズ(HZ)[%]
日本電色工業社製ヘイズメーター300A(商品名)を用いて、ヘイズ(HZ)(%)を測定した。表に示した測定値は5回の平均値である。
【0211】
(4)鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量(g/m^(2))
ステアリルジエタノールアミンが鮮度保持フィルムの表面に塗布された場合は、ステアリルジエタノールアミンの塗布量から表面の量を求めた。一方、ステアリルジエタノールアミンを樹脂中に配合した場合は、室温23℃の環境下で鮮度保持フィルムの表面をジクロロメタンで洗浄し、その洗浄液を回収し、濃縮定容し、シリル化した。その後、Aglient Technologies社製のGC/MSを用いてステアリルジエタノールアミンを定量して、鮮度保持フィルム表面のステアリルジエタノールアミンの量を求めた。
【0212】
<実施例1?7、比較例1、参考例1?5>
以下に示す原料を用い以下に示す方法により、プロピレン系重合体を含む3層のフィルム(表面層/中間層/裏面層)からなる鮮度保持フィルムを成形した。
【0213】
(1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製)を用いた。
【0214】
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0215】
これらを原料とし、2種3層の溶融押出成形を行い、引き続き二軸延伸機を用いて、表面層/中間層/裏面層の3層の延伸フィルムを成形した。3層の延伸フィルム(表面層/中間層/裏面層)は、層厚み比が5/90/5であり、延伸は以下の条件であった。
【0216】
延伸温度 縦延伸: 100℃
横延伸: 165℃
ヒートセット温度: 165℃
セット時間: 10秒。
【0217】
得られた3層の延伸フィルムの表面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
【0218】
次に、三層延伸フィルムのコロナ処理をした表面層の表面に、以下のコート液をコートした。すなわち、以下の溶液を調製し、更に適宜希釈して、それをコート液として用いた。溶液には、精製水/IPA(イソプロピルアルコール)の質量比80/20の混合溶媒に、ステアリルジエタノールアミンを50℃で溶解した溶液を用いた。コートは、コートバーを用いて、コート量を制御して行い、コート面を100℃の温風を用いて1分間乾燥させた。
【0219】
評価結果を表10に示す。なお、鮮度保持フィルムの表面のステアリルジエタノールアミンの量は、コート量から算出した。
【0220】
表10から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンが0.002?0.5g/m^(2)の範囲内で存在する実施例1?7は、24時間経過後の大腸菌数がコントロール(control)の1/100倍以下であり、抗菌性が認められた。一方、ステアリルジエタノールアミンの量が前記範囲に含まれない比較例1は、抗菌性が認められなかった。
【0221】
また、鮮度保持フィルムの表面にグリセリンモノステアレート0.2g/m^(2)、0.014g/m^(2)のみが存在する参考例1及び参考例2はいずれも大腸菌に対する抗菌性が認められなかった。
【0222】
また、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンモノステアレートが存在する参考例3、参考例4及び参考例5では、ステアリルジエタノールアミンモノステアレートが0.2g/m^(2)存在する参考例3でも大腸菌に対する抗菌性があった。しかし、参考例3はステアリルジエタノールアミンが0.2g/m^(2)存在する実施例1に比べ抗菌性が大きく劣っていた。このように、ステアリルジエタノールアミンの抗菌性は、ステアリルジエタノールアミンモノステアレートよりも大きく優れている。
【0223】
【表10】

【0224】
<実施例8>
実施例1と同じプロピレン系重合体の原料を用いて3層の延伸フィルム(表面層/中間層/裏面層)を実施例1と同様にして成形した。ただし、ステアリルジエタノールアミンはコート法ではなく、中間層の原料に予め配合した。すなわち、中間層にはステアリルジエタノールアミンを含む下記の化合物がそれぞれ表11に示される割合で配合されたプロピレン単独重合体を用いた。なお、その配合には下記の化合物(いずれも、理研ビタミン株式会社製(製品名リケマールシリーズ)の試薬)のイソプロピルアルコール溶液を利用してマスターバッチを調製して、それを利用した。
【0225】
マスターバッチの組成
ステアリルジエタノールアミン 1.9質量%
ステアリルジエタノールアミンモノステアレート 6.0質量%
グリセリンモノステアレート 2.0質量%。
【0226】
得られた3層の延伸フィルム(表面層/中間層/裏面層)は、層厚み比が5/90/5であり、全層の厚さは40μmであった。また、延伸は以下の条件であった。
【0227】
延伸温度
縦延伸:100℃
横延伸:165℃
ヒートセット温度:165℃
ヒートセット時間:10秒。
【0228】
得られた3層の延伸フィルムの表面層の表面には、ステアリルジエタノールアミンが0.005g/m^(2)存在していた。この三層の延伸フィルムの評価結果を表11に示す。
【0229】
<比較例2>
実施例8において、ステアリルジエタノールアミンに代えて、ミリスチルジエタノールアミンを用いた以外は実施例8と同様に行った。この3層の延伸フィルムの評価結果を表11に示す。
【0230】
<比較例3>
実施例8において、ステアリルジエタノールアミンに代えて、ラウリルジエタノールアミンを用いた以外は実施例8と同様に行った。この3層の延伸フィルムの評価結果を表11に示す。
【0231】
<比較例4>
実施例8において、ステアリルジエタノールアミンを配合しない以外は実施例8と同様に行った。この3層の延伸フィルムの評価結果を表11に示す。
【0232】
【表11】

【0233】
表11から明らかなように、ステアリルジエタノールアミンを中間層に0.19質量%配合した、鮮度保持フィルム表面にステアリルジエタノールアミンが0.005g/m^(2)存在する実施例8は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオに対して高い抗菌性能を示した。
【0234】
また、ステアリルジエタノールアミンに代えて、ミリスチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミンを用いた場合(比較例2、3)は高い抗菌性を示したが、ブリードが大きく、ブロッキングが起き、ヘイズが10%を越えており、透明性が損なわれた。更にこれらの化合物の内容物への移行も懸念される等、実用に適しない点があった。また、ステアリルジエタノールアミンを用いない場合(比較例4)は、抗菌性能が得られなかった。
【0235】
ここで、ヒートセット後に表面に0.005g/m^(2)のステアリルジエタノールアミンが存在する実施例8の鮮度保持フィルムについて、更に高周波を利用した抽出により、ステアリルジエタノールアミンの総量を測定した結果、0.1質量%であった。これは、0.001?3質量%の範囲内である。
【0236】
更に以下のようにして鮮度保持試験を行った。すなわち、キャベツを幅5mmの千切りにして、次亜塩素酸水溶液(濃度250ppm)に10分間浸し、一般細菌を殺菌した。また実施例8、比較例4のフィルムを用いて大きさ100mm×100mm、厚み30μmの袋を作り、各袋に殺菌した千切りキャベツを30g入れて、ヒートシールにより、密閉した。その後、5℃の冷蔵庫に保存し、毎日封を開けて、臭いと菌数の測定を行った。サンプルはn=3×5日分用意した。臭いがない場合を「A」、臭いがややある場合を「B」、臭いがある場合を「C」として評価した。
【0237】
1日目はいずれも臭いもなく良好な結果であった。しかし、3日目、5日目と経過するにつれて、実施例8の袋の臭いの強さはほぼ同じレベルであったが、比較例4は早い時期から臭いが強くなった。更に内容物のキャベツをすり鉢ですりつぶし、生理食塩水中で攪拌した後にフィルターで濾し取り、普通寒天培地を用いて培養して、そのコロニーの数をカウントした。即ち、顕微鏡下で菌を1つ1つ数えるのは困難なため、コロニーの数をカウントし、それを生菌数CFU(colony forming unit)とした。菌数はn=3の平均値を示した。
【0238】
その結果、抗菌性を有する実施例8の鮮度保持フィルムは、比較例4の鮮度保持フィルムに比べて、菌の増殖が抑えられた。このように、抗菌性の高い本発明の鮮度保持フィルムを用いることにより、製袋時、キャベツ充填時の雑菌の混入を抑えられることができる。また保管中も、包装袋内面に付着したキャベツの栄養液により繁殖する雑菌の増殖を抑えることができる。
【0239】
<実施例9>
(1)中間層
中間層の材料には、エチレン・1-ヘキセン共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(三井化学株式会社製、密度:0.920g/cm^(3)、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃、重量平均分子量(Mw):71,700、分子量分布(Mw/Mn):2.48)を用いた。
【0240】
(2)表面層及び裏面層
裏面層の材料には、下記(a)が0.1質量%(1000ppm)、及び下記(b)が0.1質量%(1000ppm)配合された前記LLDPEを用いた。また、表面層の材料には、下記(a)が0.1質量%(1000ppm)、下記(b)が0.1質量%(1000ppm)、及びステアリルジエタノールアミンが0.5質量%(5000ppm)配合された前記LLDPEを用いた。
【0241】
(a)シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm)
(b)エルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)。
【0242】
前記材料を用いて、表面層/中間層/裏面層の3層フィルムをキャスト法により溶融成形した。成形条件は以下の通りである。
【0243】
成形条件
押出機のダイス温度:200℃
チル温度:50℃。
【0244】
3層フィルムの厚さの比率は表面層/中間層/裏面層=1/3/1であり、全体の厚みは40μmであった。得られた3層フィルムの裏面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。この3層フィルムを用いて、大腸菌についての抗菌試験とヘイズの測定を行った。結果を表12に示す。
【0245】
<比較例5>
実施例9において、表面層にステアリルジエタノールアミンを配合しない以外は実施例9と同様に行った。結果を表12に示す。
【0246】
【表12】

【0247】
表12から明らかなように、内容物が接触する表面層の表面にステアリルジエタノールアミンが2×10^(-3)g/m^(2)の割合で存在している実施例9は、大腸菌に対して優れた抗菌性を示した。またヘイズも10%を越えておらず、透明性に優れる鮮度保持フィルムであった。
【0248】
[実験3]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。なお、24時間保持する際の温度を5つの温度(5℃、25℃、29℃、35℃、40℃)にて行った。
【0249】
<実施例1、比較例1、参考例1?4>
(1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))を用いた。
【0250】
(2)裏面層及び表面層
裏面層及び表面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分(株式会社プライムポリマー社製 商品名:F327))を用いた。
【0251】
裏面層/中間層/表面層の三層フィルムを、エクストルーダー及び二軸延伸機を用いて層厚み比1/8/1で連続成形し、三層延伸フィルムを製造した。三層延伸フィルムの延伸温度は縦延伸:100℃、横延伸:180℃であった。ヒートセット温度は180℃、セット時間は10秒であった。更に濡れ指数が38dynとなるように、三層延伸フィルムの表面層の表面にコロナ処理を行った。
【0252】
実施例1では、ステアリルジエタノールアミン(50モル%)+ジグリセリンモノパルミテート(50モル%)を、50℃に加温された精製水/IPA(イソプロピルアルコール)=10/90(質量比)の溶液に溶解した。比較例1では、ステアリルジエタノールアミン(50モル%)+グリセリンモノステアレート(50モル%)を、50℃に加温された前記精製水/IPAの溶液に溶解した。参考例1?3では、ステアリルジエタノールアミン、ジグリセリンパルミテート、又はグリセリンモノステアレートを50℃に加温された前記精製水/IPAの溶液に溶解した。前記三層延伸フィルムのコロナ処理を行った表面層の表面に、表面における各化合物の量が下記量になるようにコートバーを用いてコートし、100℃の温風で1分間加熱し、乾燥した。
実施例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)+ジグリセリンモノパルミテート0.20g/m^(2)
比較例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)+グリセリンモノステアレート0.20g/m^(2)
参考例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)
参考例2:ジグリセリンモノパルミテート0.20g/m^(2)
参考例3:グリセリンモノステアレート0.20g/m^(2)
参考例4:control(ポリエチレンフィルム同士に挟み込んだサンプル)
【0253】
【表13】

【0254】
【表14】

【0255】
【表15】

【0256】
【表16】

【0257】
【表17】

【0258】
【表18】

【0259】
表13から表18に基づいて説明する。各成分単体をコートした参考例1?3を比較すると、抗菌性を有するのは参考例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)であり、参考例2:ジグリセリンモノパルミテート0.20g/m^(2)、参考例3:グリセリンモノステアレート0.20g/m^(2)はほとんど参考例4:control(PEフィルム同士に挟み込んだサンプル)と同じであった。
【0260】
また、各温度で見ると、5℃では参考例4:controlの菌数上昇が小さかったが、参考例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)も菌数が多く、抗菌性能が十分発揮できなった。これは温度が低いためステアリルジエタノールアミンが十分溶け出せなかったためと推定する。37℃でcontrolの菌数はピークに達し、50℃では菌が死滅するため<1.0×10となった。
【0261】
次に実施例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)+ジグリセリンモノパルミテート0.20g/m^(2)を見ると、各温度で菌数は参考例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)に一致していた。したがって、ジグリセリンモノパルミテート0.20g/m^(2)はステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)の抗菌性能を阻害しないことは明白である。
【0262】
ここで、ステアリルジエタノールアミンに他の化合物を混練して表面にブリードアウトさせるには、ステアリルジエタノールアミンの量を抑えるために、各種のグリセリンエステルを一緒に混練することが好ましい。その際にジグリセリンモノパルミテートであれば表面にブリードアウトした際にステアリルジエタノールアミンの抗菌性能を阻害しないことが分かる。
【0263】
更に比較例1:ステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)+グリセリンモノステアレート0.20g/m^(2)では、25℃で1.0×10^(2)倍程度菌数が多く、更に29、35、37℃でも菌数が多かった。また、均一にコートしたサンプルであるにも関わらず、菌数のバラツキが大きく、グリセリンモノステアレート0.20g/m^(2)がステアリルジエタノールアミン0.20g/m^(2)の抗菌性能を阻害していることは明白である。
【0264】
ここで、ステアリルジエタノールアミンに他の化合物を混練する際にグリセリンモノステアレートを用いた場合には、表面にブリードアウトした際にステアリルジエタノールアミンの抗菌性能を阻害することが分かる。
【0265】
[実験4]
<試験方法>
(1)メルトフローレート(MFR)(g/10分)
ASTM D1238に規定される方法により測定した。
【0266】
(2)密度(g/cm^(3))
ASTM D1505に規定される方法により測定した。
【0267】
(3)ステアリルジエタノールアミンの表面量測定
室温23℃の環境下でサンプルフィルム測定面をジクロロメタンで洗浄し、洗浄液を回収し、濃縮定容し、シリル化後にAglient Technologies社製GC/MSで定量した。その際ステアリルジエタノールアミンのシリル化合物と、ジグリセリンオレートのシリル化合物のピークとは重複しているため、GC/MSの抽出イオンクロマトグラムにより定量した。
【0268】
(4)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。
【0269】
<実施例1>
(粘着剤(C)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕50質量%、及び粘着剤(C)として芳香族系炭化水素樹脂〔荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンA100〕50質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(MC)を得た。
【0270】
(防曇剤(D)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕90質量%、及び防曇剤(D)としてジグリセリンオレート〔理研ビタミン(株)製、商品名:O-71-DE〕10質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(MD)を得た。
【0271】
(特定化合物(E)マスターバッチの調製)
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕90質量%、及び特定化合物(E)としてステアリルジエタノールアミン〔東京化成(株)〕10質量%を含む組成物を、二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練、造粒し、マスターバッチ(ME)を得た。
【0272】
(樹脂組成物の調製)
下記材料を混合して樹脂組成物を得た。
【0273】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕39質量部
高圧法低密度ポリエチレン(B)〔三井デュポン(株)製、密度0.917g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR7.2g/10分〕30質量部
前記マスターバッチ(MC)10質量部
前記マスターバッチ(MD)25質量部
前記マスターバッチ(ME)5質量部。
【0274】
なお、樹脂組成物の組成は、(A)及び(B)の合計を100質量%とするとき、(A)70質量%、(B)30質量%であった。また、(A)及び(B)の合計量100質量部に対し、(C)5質量部、(D)2.5質量部、(E)0.5質量部であった。
【0275】
(鮮度保持フィルムの成形)
Tダイ付押出機を用いて前記樹脂組成物を、成形樹脂温度250℃、キャストロール温度25℃、延伸倍率1.2倍、巻取速度200m/分の条件下で、厚みが13μmの単層フィルムを押出成形し、鮮度保持フィルムを得た。
【0276】
<比較例1>
前記マスターバッチ(ME)5質量部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(A)〔三井化学(株)製、密度0.920g/cm^(3)、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR4.0g/10分〕4.5質量部を加えた以外は実施例1と同様に行い、鮮度保持フィルムを得た。
【0277】
得られた鮮度保持フィルムについて、上記方法により各種特性を評価した。評価結果を表19に示す。
【0278】
【表19】

【0279】
表19から明らかなように、鮮度保持フィルムの表面にステアリルジエタノールアミンが0.010g/m^(2)存在する実施例1は、24時間経過後の大腸菌数および黄色ブドウ球菌数がcontrolの1/100以下であり、抗菌性が認められた。一方、特定化合物(E)が表面に存在しない比較例1は抗菌性が認められなかった。
【0280】
[実験5]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。
【0281】
<実施例1?10、比較例1、参考例1>
(1)中間層
(a)ポリエチレン系重合体(PE系)
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度0.920g/cm^(3)、MFR;4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
【0282】
(b)ポリプロピレン系重合体(PP系)
中間層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー社製、融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分)を用いた。
【0283】
(2)表面層及び裏面層
(a)ポリエチレン系重合体(PE系)
前記直鎖状低密度ポリエチレンに、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))と、エルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0284】
(b)ポリプロピレン系重合体(PP系)
前記プロピレン・エチレンランダム共重合体に、前記シリカと、前記エルカ酸アミドをそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0285】
(3)抗菌成分
各層に、下記抗菌成分が表20及び表21に示される量含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
【0286】
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)
理研ビタミン社製
(b)ミリスチルジエタノールアミン/ステアリルジエタノールアミン=4/6(モル比)混合体(C16/C18DEA)
理研ビタミン社製
(c)ミリスチルジエタノールアミンモノステアレート/ステアリルジエタノールアミンアミンモノステアレート=4/6(モル比)混合体(C16/C18DEA-MS)
理研ビタミン社製。
【0287】
(4)鮮度保持フィルム(PE系、PP系)の成形
前記各材料を用いて、裏面層/中間層/表面層の3層キャストフィルムを層厚み比1/3/1で製造した。PE系の鮮度保持フィルムの成形は、押出機のダイス温度:200℃、チル温度:50℃で行った。また、PP系の鮮度保持フィルムの成形は、押出機のダイス温度:230℃、チル温度:20℃で行った。得られた鮮度保持フィルムの裏面層(ラミ層)の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
【0288】
この鮮度保持フィルムを用いて、抗菌試験を行った。結果を表20及び表21に示す。なお、実施例1から10では十分な抗菌性が示されており、抗菌成分が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。
【0289】
【表20】

【0290】
【表21】

【0291】
[実験6]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。なお、24時間保持する際の温度を2つの温度(25℃、35℃)にて行った。
【0292】
<実施例1?3>
(1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(株式会社プライムポリマー社製、融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分)を用いた。
【0293】
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー社製、融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分)を用いた。
【0294】
(3)抗菌成分
中間層に、下記抗菌成分が表22に示される量含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
【0295】
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)
理研ビタミン社製
(b)ステアリルジエタノールアミンモノステアレート(C18DEA-MS)
理研ビタミン社製。
【0296】
(4)ブリード促進成分
中間層に、下記ブリード促進成分が表22に示される量含まれるように、下記ブリード促進成分をマスターバッチに配合した。
【0297】
(a)グリセリンモノステアレート(C18MG)
理研ビタミン社製
(b)グリセリンモノパルミテート(C16MG)
理研ビタミン社製
(c)ジグリセリンモノパルミテート(C16DG)
理研ビタミン社製。
【0298】
(5)鮮度保持フィルムの成形
裏面層/中間層/表面層の3層フィルムを、二軸延伸機を用いて層厚み比1/8/1で連続成形し、多層延伸フィルムからなる鮮度保持フィルムを製造した。延伸後の厚みは30μmであった。鮮度保持フィルムの延伸温度は、縦延伸:100℃、横延伸:180℃であった。ヒートセット温度は180℃、セット時間は10秒であった。得られた鮮度保持フィルムの表面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
【0299】
この鮮度保持フィルムを用いて抗菌試験を行った。結果を表22に示す。なお、実施例1?3では十分な抗菌性が示されており、抗菌成分が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。また、実施例2では成形時に成形性が低かった。
【0300】
【表22】

【0301】
[実験7]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。
【0302】
<実施例1?7、比較例1>
(1)中間層
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:表23に記載の樹脂密度の値、MFR:4.0g/10分、融点:117.3℃)を用いた。
【0303】
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、前記直鎖状低密度ポリエチレンに対し、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)をそれぞれ1000ppm添加した材料を用いた。
【0304】
(3)添加剤
各層に、下記抗菌成分が表23に示される量含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
【0305】
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)
理研ビタミン社製。
【0306】
また、実施例7では、表面層に防曇剤(C16/C18ジグリセリンライド:7質量%と、ジ/トリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:3質量%とを含有するポリエチレンベースのマスターバッチ)が0.07質量%含まれるように、該防曇剤をマスターバッチに配合した。
【0307】
(4)鮮度保持フィルムの成形
前記各材料を用いて、裏面層/中間層/表面層の3層キャストフィルムを層厚み比1/3/1で製造した。鮮度保持フィルムの成形は、押出機のダイス温度:200℃、チル温度:50℃で行った。得られた鮮度保持フィルムの裏面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。
【0308】
この鮮度保持フィルムを用いて、抗菌試験を行った。結果を表23に示す。なお、実施例1から7では十分な抗菌性が示されており、抗菌成分が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。
【0309】
【表23】

【0310】
[実験8]
<試験方法>
(1)抗菌試験
実験1の抗菌試験と同様に行った。
【0311】
<実施例1、比較例1?5>
(1)中間層
中間層の材料には、プロピレン単独重合体(株式会社プライムポリマー社製、融点(Tm)=160℃、MFR=3g/10分)を用いた。
【0312】
(2)表面層及び裏面層
表面層及び裏面層の材料には、プロピレン・エチレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー社製、融点(Tm)=138℃、MFR=7g/10分)を用いた。
【0313】
(3)抗菌成分
中間層に、下記抗菌成分が下記に示される量含まれるように、下記抗菌成分をマスターバッチに配合した。
【0314】
(a)ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)
理研ビタミン社製、2000ppm
(b)ステアリルジエタノールアミンモノステアレート(C18DEA-MS)
理研ビタミン社製、6000ppm。
【0315】
(4)鮮度保持フィルムの成形
裏面層/中間層/表面層の3層フィルムを、二軸延伸機を用いて層厚み比1/8/1で連続成形し、延伸原反を得た。一週間後に該延伸原反を、バッチ延伸機を用いて、縦方向に5倍、横方向に10倍の倍率で延伸し、多層延伸フィルムからなる鮮度保持フィルムを製造した。延伸後の厚みは30μmであった。延伸前に、該延伸原反を165℃で表24に示される時間予熱した。なお、予熱時間が長いほど抗菌成分が表面にブリードアウトし、抗菌性が高くなるため、短い予熱時間でも高い抗菌性を示す鮮度保持フィルムが好ましい。また、鮮度保持フィルムの延伸温度は、縦延伸:100℃、横延伸:165℃であった。ヒートセット温度は65℃、セット時間は10秒であった。また、実施例1、比較例1及び2では、得られた鮮度保持フィルムの表面層の表面をコロナ処理した。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。一方、比較例3から5において、コロナ処理されていない表面の濡れ指数は35dyn未満であった。
【0316】
この鮮度保持フィルムを用いて抗菌試験を行った。結果を表24に示す。なお、実施例1では十分な抗菌性が示されており、抗菌成分が鮮度保持フィルムの表面に0.002?0.5g/m^(2)存在することは明らかである。
【0317】
【表24】

【0318】
この出願は、2013年3月14日に出願された日本出願特願2013-51536、2013年5月23日に出願された日本出願特願2013-108524、2013年7月2日に出願された日本出願特願2013-139180、2013年10月18日に出願された日本出願特願2013-217871、および2013年11月21日に出願された日本出願特願2013-240601を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0319】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0320】
本発明に係る鮮度保持フィルムを用いることにより、スーパーマーケット、コンビニエンスストアー、青果店等で販売される野菜、果物などの青果物や、精肉、鮮魚、特にカット野菜の鮮度を保持することができる。具体的には、本発明に係る鮮度保持フィルムで包装したり、これを袋に加工して用いたりすることで、高い抗菌性能を発現でき、生鮮食品、特にカット野菜の腐敗を抑え、衛生性を保ち、食中毒を避けることができる。さらに、本発明に係る鮮度保持フィルムは、抗菌成分が直接内容物に移行し人体に入ることがないように考慮されているため、広く包装袋等の包装材に用いることができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に、ステアリルジエタノールアミンが存在し、
前記表面における前記ステアリルジエタノールアミンの量が0.002?0.5g/m^(2)であり、
前記ステアリルジエタノールアミンの含有量が0.03?3質量%である鮮度保持フィルム。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項4】
前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ、前記ステアリルジエタノールアミンが含まれる請求項1又は3に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項5】
少なくとも一方の表面に、グリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記グリセリンモノラウレートの量が0.01?0.2g/m^(2)であり、
前記グリセリンモノラウレートの含有量が0.001?3質量%であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。
【請求項6】
内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項7】
前記鮮度保持フィルムが2層以上からなり、内容物と接触する面を含む層にのみ前記グリセリンモノラウレートが含まれる請求項5又は6に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項8】
プロピレン系重合体およびエチレン系重合体の少なくとも一方を含有する請求項1及び3から7のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項9】
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項10】
さらに、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレートおよびステアリルジエタノールアミンモノステアレートの少なくとも一方を含む請求項1及び3から9のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項11】
前記鮮度保持フィルムがエチレン系重合体を含み、内容物と接触する面から厚さ方向に向けて、該エチレン系重合体の密度が大きくなる請求項1及び3から10のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルム。
【請求項12】
プロピレン系重合体またはエチレン系重合体を含む、単層フィルム、または2層以上からなる多層フィルムであって、
パルミチルジエタノールアミンおよびステアリルジエタノールアミンの少なくとも一方であるアルキルジエタノールアミンを0.01?1.0質量%、
ジグリセリンモノパルミテートおよびジグリセリンモノミリステートの少なくとも一方を0.05?0.80質量%含む鮮度保持フィルム。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
請求項1及び3から12のいずれか1項に記載の鮮度保持フィルムを備える包装材。
【請求項15】
少なくとも一方の表面に、ジグリセリンモノラウレートが存在し、
前記表面における前記ジグリセリンモノラウレートの量が0.2?0.5g/m^(2)であり、
少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上である鮮度保持フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-11 
出願番号 特願2015-505540(P2015-505540)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 小柳 健悟
加藤 友也
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6101785号(P6101785)
権利者 三井化学東セロ株式会社
発明の名称 鮮度保持フィルム  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  
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