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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F24F
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  F24F
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  F24F
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F24F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F24F
管理番号 1341956
異議申立番号 異議2017-700952  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-04 
確定日 2018-05-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6110288号発明「空気調和システムおよび空調管理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6110288号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6110288号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 特許第6110288号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6110288号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成25年11月29日に特許出願され、平成29年3月17日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報の発行日:平成29年4月5日)、その後、その特許について、平成29年10月4日に特許異議申立人 柳田 征史(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年11月21日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月29日に特許権者 ダイキン工業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成30年2月13日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知がされ、申立人より平成30年3月16日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、願書に添付した特許請求の範囲を、平成30年1月29日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし7について訂正することを求めるものであって、以下の(1)及び(2)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記携帯端末の前記空調管理プログラム(54)は、
空気調和機が備え得る複数の機能に関する表示を、前記携帯端末のディスプレイ(55)に表示させることができ、
前記情報仲介装置を介して前記空気調和機の前記保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない前記機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成し、前記携帯端末の前記ディスプレイ(55)に表示させる、」
と記載されているのを、
「前記携帯端末の前記空調管理プログラム(54)は、
前記ユーザーが予めダウンロードして前記携帯端末にインストールしたものであり、
空気調和機が備え得る複数の機能に関する表示を、前記携帯端末のディスプレイ(55)に表示させることができ、
前記ユーザーによって起動されて前記ユーザーはログインすると、前記情報仲介装置を介して前記空気調和機の前記保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない前記機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成し、前記携帯端末の前記ディスプレイ(55)に表示させる、」
に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する(以下、「訂正事項2」という。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「携帯端末の空調管理プログラム(54)」について、「ユーザーが予めダウンロードして前記携帯端末にインストールしたものであ」ることを限定するとともに、同「携帯端末の空調管理プログラム(54)」の「情報仲介装置を介して空気調和機の保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成し、携帯端末のディスプレイ(55)に表示させる」機能について、「ユーザーによって起動されて前記ユーザーはログインすると」という動作条件を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等には、段落【0063】に「上述のようにユーザーが空調管理アプリケーション54をダウンロードしてスマートフォン50にインストールし」という記載、段落【0070】に「初期設定後、ユーザーがスマートフォン50で空調管理アプリケーション54を起動すると、ログインIDおよびパスワードの入力箇所を含む初期画面がスマートフォン50のタッチパネル55に表示される。」という記載、及び、段落【0072】に「建物30の外部において、スマートフォン50の空調管理アプリケーション54が起動され、ユーザーによってログインIDおよびパスワードが入力されると、空調機情報要求部54aが、ログインIDに関連づけられた全てのアダプタ20a,20b,・・・に接続されている空気調和機10a,10b,・・・の情報を、第1無線通信部51aを介してサーバ40に要求する。かかる情報送信要求を受けて、サーバ40は、アダプタ別データベース43aからログインIDに関連づけられているアダプタ20a,20b,・・・が接続された空気調和機10a,10b,・・・に関する各種データを、スマートフォン50に送信する。この空気調和機10a,10b,・・・に関する各種データには、保有機能情報18aを含む機器データ25a、設定温度などの温度データ25b、などが含まれている。」という記載があり、これらの記載によると、訂正事項1に係る訂正後の事項は特許明細書等の記載から導かれる技術事項ということができる。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「携帯端末の空調管理プログラム(54)」について、概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項7を削除するというものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項7を削除するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7が請求項1を引用する関係にあり、訂正事項1に係る請求項1の訂正に基づいて連動して訂正されるものであり、訂正事項2に係る訂正は請求項7を削除するものであるから、本件訂正請求は、請求項〔1-7〕という一群の請求項について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

4 小括
以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
空気調和機が備え得る複数の機能のうち1又は複数の所定機能を有する空気調和機(10a,10b,・・・)と、
前記空気調和機のユーザーが携帯し、前記空気調和機を管理する空調管理プログラムを有する、携帯端末(50)と、
公衆回線(80)を利用して前記空気調和機と前記携帯端末との間で情報のやりとりを行わせる情報仲介装置(40,20a,20b,・・・)と、
を備え、
前記空気調和機が、自己が実際に保有している前記所定機能を示す情報である保有機能情報(18a)を記憶しており、
前記携帯端末の前記空調管理プログラム(54)は、
前記ユーザーが予めダウンロードして前記携帯端末にインストールしたものであり、
空気調和機が備え得る複数の機能に関する表示を、前記携帯端末のディスプレイ(55)に表示させることができ、
前記ユーザーによって起動されて前記ユーザーがログインすると、前記情報仲介装置を介して前記空気調和機の前記保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない前記機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成し、前記携帯端末の前記ディスプレイ(55)に表示させる、
空気調和システム(100)。
【請求項2】
前記情報仲介装置は、前記空気調和機と接続される中間機器(20a,20b,・・・)と、公衆回線を介して前記携帯端末および前記中間機器と接続されるサーバ機器(40)とを有しており、
前記中間機器は、前記保有機能情報を含む前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に送り、
前記サーバ機器は、前記携帯端末の要求があったときに前記空気調和機の情報を前記携帯端末に送る、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記携帯端末の前記空調管理プログラムは、前記空気調和機を操作する操作コマンドを前記サーバ機器および/又は前記中間機器に送る操作機能を有しており、
前記サーバ機器は、前記携帯端末から前記操作コマンドを受け取り、前記中間機器が接続されたときに前記中間機器に前記操作コマンドを送り、
前記中間機器は、前記携帯端末又は前記サーバ機器から前記操作コマンドを受け取ると、前記空気調和機に前記操作コマンドを送って前記空気調和機を操作する、
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記中間機器は、前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に定期的に送る、
請求項2又は3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記中間機器は、前記携帯端末から前記サーバ機器に対して最初にアクセスがあったときに、前記保有機能情報を含む前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に送り、
前記サーバ機器は、前記中間機器に対して識別符号を付与し、前記中間機器から送られてくる前記空気調和機の情報を管理する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
空気調和機が備え得る複数の機能は、積算運転時間を計測する時間計測機能、消費電力を計測する電力計測機能、洗濯物を乾燥させるための乾燥運転機能、前記空気調和機の近くに居る人の存在を検知する人検知機能、および遠隔操作によって前記空気調和機の風向きを変更する風向き変更機能のうち少なくとも1つの機能を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項7】(削除)」(なお、下線は訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲において、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。)

2 申立人による証拠方法
申立人は、平成29年10月4日付け特許異議申立書において、甲第1号証を提示するとともに、平成30年3月16日付け意見書において、参考資料1ないし4を提示する。
(1)甲第1号証:特開2009-111901号公報
(2)参考資料1:特開2006-129219号公報
(3)参考資料2:特開2008-35108号公報
(4)参考資料3:特開2009-237835号公報
(5)参考資料4:特開2004-180102号公報

3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して平成29年11月21日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。なお、当該取消理由は申立人の主張する申立理由を全て採用したものである。
(1)取消理由1
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由1」という。)。

(2)取消理由2
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)。

3 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項
ア 甲第1号証の段落【0034】及び図1の記載によれば、空調設備10、遠隔管理サーバ20及び利用者端末60を備え、これらがインターネット6を介して接続された遠隔管理システム100が記載されていることが分かる。
イ 甲第1号証の段落【0037】ないし【0041】及び【0071】並びに図2の記載によれば、空調設備10が、元画面80のデータ内に定義されている全ての機能のうち所定の機能を有する空調機本体11を備えていることが分かる。
ウ 甲第1号証の段落【0049】ないし【0054】及び【0096】並びに図3、5及び6の記載によれば、利用者端末60が、空調設備10の空調機本体11の利用者が携帯し、Webブラウザを有する、携帯電話60であることが分かる。
エ 甲第1号証の段落【0042】ないし【0048】、【0055】ないし【0057】並びに図1ないし4の記載と上記アによれば、遠隔管理システム100において、アダプタ30及び遠隔管理サーバ20が、インターネット6に接続されて前記空調設備10の空調機本体11と前記携帯電話60との間で通信を行うものであることが分かる。
オ 甲第1号証の段落【0041】及び【0070】ないし【0073】並びに図1、2及び4の記載によれば、空調設備10の空調機本体11が、自己の有する所定の機能に関する機能情報を記憶していることが分かる。
カ 甲第1号証の段落【0058】ないし【0062】及び【0079】ないし【0081】並びに図9の記載と上記ウによれば、利用者が、携帯電話60上にWebブラウザを立ち上げ、当該Webブラウザ上に所定のURLを指定して遠隔管理サーバ20にアクセスし、入力部64を操作してログイン画面に前記利用者ID及びパスワードを入力すると、遠隔管理サーバ20が、編集条件ファイル25c、元画面データベース25b及びプログラムデータベース25dから、空調設備10に対応する編集条件データ85、元画面80のデータ及び画面作成プログラムを抽出して前記携帯電話60に送信することが分かる。
キ 甲第1号証の段落【0082】及び【0093】並びに図5ないし7及び9の記載によれば、携帯電話60の画面作成プログラムは、Webブラウザ上で実行され、編集条件データ85に従って、元画面80のデータを加工し、空調設備10の空調機本体11が有する所定の機能に対応する設定入力部80aをそのまま有効にしておき、前記空調設備10の空調機本体11が有していない機能に対応する設定入力部80aを削除した空調設備10用の操作画面90を作成することが分かる。
ク 甲第1号証の段落【0022】、【0054】及び【0083】並びに図6の記載によれば、携帯電話60の表示部63は、空調設備10用の操作画面90を表示することが分かる。

(2)甲1発明
上記(1)を踏まえると、甲第1号証(特に、段落【0001】ないし【0011】、【0022】、【0034】ないし【0089】、【0092】、【0093】、【0096】、【0099】及び【0100】並びに図1ないし9を参照。)には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「元画面80のデータ内に定義されている全ての機能のうち所定の機能を有する空調設備10の空調機本体11と、
前記空調設備10の空調機本体11の利用者が携帯し、Webブラウザを有する、携帯電話60と、
インターネット6に接続されて前記空調設備10の空調機本体11と前記携帯電話60との間で通信を行うアダプタ30及び遠隔管理サーバ20と、
を備え、
前記空調設備10の空調機本体11が、自己の有する前記所定の機能に関する機能情報を記憶しており、
前記利用者が、前記携帯電話60上にWebブラウザを立ち上げ、当該Webブラウザ上に所定のURLを指定して遠隔管理サーバ20にアクセスし、入力部64を操作してログイン画面に前記利用者ID及びパスワードを入力すると、遠隔管理サーバ20が、前記編集条件ファイル25c、前記元画面データベース25b及びプログラムデータベース25dから、空調設備10に対応する編集条件データ85、元画面80のデータ及び画面作成プログラムを抽出して前記携帯電話60に送信し、
前記携帯電話60の前記画面作成プログラムは、前記Webブラウザ上で実行され、前記編集条件データ85に従って、前記元画面80のデータを加工し、前記空調設備10の空調機本体11が有する所定の機能に対応する設定入力部80aをそのまま有効にしておき、前記空調設備10の空調機本体11が有していない機能に対応する設定入力部80aを削除した空調設備10用の操作画面90を作成し、
前記携帯電話60の表示部63は、空調設備10用の操作画面90を表示する、
遠隔管理システム100。」

4 取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明1は、「前記携帯端末の前記空調管理プログラム(54)」が、
「前記ユーザーが予めダウンロードして前記携帯端末にインストールしたものであり」、
「前記ユーザーによって起動されて前記ユーザーがログインすると、前記情報仲介装置を介して前記空気調和機の前記保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない前記機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成」するのに対して、
甲1発明は、「元画面80のデータ及び画面作成プログラム」が、
「前記利用者が、前記携帯電話60上にWebブラウザを立ち上げ、当該Webブラウザ上に所定のURLを指定して遠隔管理サーバ20にアクセスし、入力部64を操作してログイン画面に前記利用者ID及びパスワードを入力すると」、
「遠隔管理サーバ20」から「携帯電話60に送信」されるものであり、
「前記携帯電話60の前記画面作成プログラムは、前記Webブラウザ上で実行され、前記編集条件データ85に従って、前記元画面80のデータを加工し、前記空調設備10の空調機本体11が有する所定の機能に対応する設定入力部80aをそのまま有効にしておき、前記空調設備10の空調機本体11が有していない機能に対応する設定入力部80aを削除した空調設備10用の操作画面90を作成」する点(以下、「相違点」という。)。
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲1発明は、元画面80のデータ及び画面作成プログラム(本件発明1の「空調管理プログラム」に相当。括弧内は以下同様。)が、利用者(ユーザー)が携帯電話60(携帯端末)でログイン画面に利用者ID及びパスワードを入力(ログイン)した後に遠隔管理サーバ20から携帯電話60に送信(ダウンロード)され、携帯電話60にインストールされて実行されるものといえるところ、申立人が提示した参考文献1(特に、段落【0041】、【0059】及び【0060】)及び参考文献2(特に、段落【0032】及び【0034】)に記載があるように、「携帯端末の家電機器用のプログラムを、ユーザーが予めダウンロードして携帯端末にインストールすること」が本件特許の出願前に周知技術であり、甲1発明に周知技術を適用することができたとしても、甲1発明においては、元画面80のデータ及び画面作成プログラム(空調管理プログラム)を携帯電話60にダウンロードしてインストールする際にログインをしており、携帯電話60による空調設備10の空調機本体11の操作権限について認証済みの状態であることを考慮すると、携帯電話60にインストールされた元画面80のデータ及び画面作成プログラム(空調管理プログラム)がユーザーによって起動された際に、さらにユーザーがログインをするものになるとはいえない。
また、参考文献1ないし4のいずれにも、「携帯端末の家電機器用のプログラムをダウンロードや初期設定等でユーザーが一度ログインをしたものにおいて、その後、ユーザーによって携帯端末の家電機器用のプログラムが起動された際に、さらにユーザーがログインをすること」については、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
そして、本件発明1は、「携帯端末の空調管理プログラムを更新する必要がなくなり、ユーザーに空調管理プログラムの更新作業の手間をかけさせることが抑制される。」(特許明細書等の段落【0020】)という所期の効果を奏するものである。
ウ まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、しかも、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし6について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件発明2ないし6は、本件発明1と同様の理由で、甲1発明と同一ではなく、しかも、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由1及び2によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正により請求項7が削除されたため、請求項7に係る特許についての特許異議の申立てについては、対象が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機が備え得る複数の機能のうち1又は複数の所定機能を有する空気調和機(10a,10b,・・・)と、
前記空気調和機のユーザーが携帯し、前記空気調和機を管理する空調管理プログラムを有する、携帯端末(50)と、
公衆回線(80)を利用して前記空気調和機と前記携帯端末との間で情報のやりとりを行わせる情報仲介装置(40,20a,20b,・・・)と、
を備え、
前記空気調和機が、自己が実際に保有している前記所定機能を示す情報である保有機能情報(18a)を記憶しており、
前記携帯端末の前記空調管理プログラム(54)は、
前記ユーザーが予めダウンロードして前記携帯端末にインストールしたものであり、
空気調和機が備え得る複数の機能に関する表示を、前記携帯端末のディスプレイ(55)に表示させることができ、
前記ユーザーによって起動されて前記ユーザーがログインすると、前記情報仲介装置を介して前記空気調和機の前記保有機能情報を読み取り、前記保有機能情報に応じて、前記空気調和機が保有していない前記機能に関する表示を省いた空気調和機管理画面を生成し、前記携帯端末の前記ディスプレイ(55)に表示させる、
空気調和システム(100)。
【請求項2】
前記情報仲介装置は、前記空気調和機と接続される中間機器(20a,20b,・・・)と、公衆回線を介して前記携帯端末および前記中間機器と接続されるサーバ機器(40)とを有しており、
前記中間機器は、前記保有機能情報を含む前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に送り、
前記サーバ機器は、前記携帯端末の要求があったときに前記空気調和機の情報を前記携帯端末に送る、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記携帯端末の前記空調管理プログラムは、前記空気調和機を操作する操作コマンドを前記サーバ機器および/又は前記中間機器に送る操作機能を有しており、
前記サーバ機器は、前記携帯端末から前記操作コマンドを受け取り、前記中間機器が接続されたときに前記中間機器に前記操作コマンドを送り、
前記中間機器は、前記携帯端末又は前記サーバ機器から前記操作コマンドを受け取ると、前記空気調和機に前記操作コマンドを送って前記空気調和機を操作する、
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記中間機器は、前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に定期的に送る、
請求項2又は3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記中間機器は、前記携帯端末から前記サーバ機器に対して最初にアクセスがあったときに、前記保有機能情報を含む前記空気調和機の情報を、前記サーバ機器に送り、
前記サーバ機器は、前記中間機器に対して識別符号を付与し、前記中間機器から送られてくる前記空気調和機の情報を管理する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
空気調和機が備え得る複数の機能は、積算運転時間を計測する時間計測機能、消費電力を計測する電力計測機能、洗濯物を乾燥させるための乾燥運転機能、前記空気調和機の近くに居る人の存在を検知する人検知機能、および遠隔操作によって前記空気調和機の風向きを変更する風向き変更機能のうち少なくとも1つの機能を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項7】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-14 
出願番号 特願2013-248643(P2013-248643)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (F24F)
P 1 651・ 121- YAA (F24F)
P 1 651・ 851- YAA (F24F)
P 1 651・ 854- YAA (F24F)
P 1 651・ 841- YAA (F24F)
P 1 651・ 855- YAA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
槙原 進
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6110288号(P6110288)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 空気調和システムおよび空調管理プログラム  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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