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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1341974
異議申立番号 異議2017-700052  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-20 
確定日 2018-06-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5954176号発明「香気・風味付与組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5954176号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?14〕、〔15?19〕、〔20?24〕について訂正することを認める。 特許第5954176号の請求項15、17、20?24に係る特許を維持する。 特許第5954176号の請求項1?14、16、18、19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5954176号の請求項1?24に係る出願は、平成28年6月24日にその特許権の設定登録され、その後、その特許について、平成29年1月20日に特許異議申立人藤本信男により特許異議の申立てがなされ、当審において同年5月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月13日付け意見書の提出及び訂正の請求がなされ、特許異議申立人より同年8月23日付けで意見書の提出がなされ、同年12月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内の平成30年2月7日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされた後、同年3月16日付けで、特許異議申立人から意見書の提出がなされたものである。

なお、平成29年7月13日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否の判断
1 平成30年2月7日の訂正の請求の内容
本件訂正の請求は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?24について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであり、訂正の内容は以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1?14を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項15に「飲食品に対して、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加することと、アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を添加することとを含む、畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種である方法。」とあるのを、
「飲食品に対して、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加することと、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を添加することとを含む、畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a1)?(n1)のいずれかである方法。
(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類」と訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様である。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項16、18及び19を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項17に「飲食品に対して、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加し、
低級脂肪酸類を1.0重量ppb以上19.3重量ppm未満の濃度となるように添加し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppb以上262重量ppb未満の濃度となるように添加することを含む、請求項15記載の方法。」とあるのを、
「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(h1)及び(j1)?(l1)のいずれかであり、
飲食品に対して、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加し、
イソ吉草酸を1.0重量ppb以上19.3重量ppm未満の濃度となるように添加し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppb以上262重量ppb未満の濃度となるように添加することを含む、請求項15記載の方法。」と訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項20に「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための香気・風味付与組成物。」とあるのを、
「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための香気・風味付与組成物。
(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類」と訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項21に「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.020重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
オクタン酸を1.0重量ppm以上130000重量ppm未満含有し、且つ、
デカン酸を1.0重量ppm以上390000重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上6.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」とあるのを、
「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(b2)?(j2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.020重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
オクタン酸を1.0重量ppm以上130000重量ppm未満含有し、且つ、
デカン酸を1.0重量ppm以上390000重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上6.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」と訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項22に「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
低級脂肪酸類を1.0重量ppm以上19300重量ppm未満含有し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppm以上262重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上3.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」とあるのを、
「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(m2)及び(o2)?(q2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を1.0重量ppm以上19300重量ppm未満含有し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppm以上262重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上3.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」と訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項23に「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
低級脂肪酸類を0.10重量ppm以上48600重量ppm未満含有し、且つ、
ピラジン類を0.10重量ppm以上38800重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上9.5重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」とあるのを、
「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(l2)?(n2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を0.10重量ppm以上48600重量ppm未満含有し、且つ、
ピラジン類を0.10重量ppm以上38800重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上9.5重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」と訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項24に「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上300重量ppm未満含有し、
オクタン酸を0.74重量ppm以上44100重量ppm未満含有し、且つ、
低級脂肪酸類を0.047重量ppm以上2820重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」とあるのを、
「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(c2)又は(k2)であり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上300重量ppm未満含有し、
オクタン酸を0.74重量ppm以上44100重量ppm未満含有し、且つ、
イソ吉草酸を0.047重量ppm以上2820重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正の目的について
ア 訂正事項1及び3は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項15に係る発明では、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」の化合物の組合せが限定されておらず、「低級脂肪酸類」の種類が特定されていなかったものを、訂正後の請求項15に係る発明では、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」の化合物の組合せを上記(a1)?(n1)のいずれかの組合せに限定し、「低級脂肪酸類」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 訂正事項4は、訂正前の請求項17に係る発明では、「低級脂肪酸類」が特定されていなかったところ、訂正後の請求項17に係る発明では、「低級脂肪酸」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項4は、訂正後の請求項15における「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a1)?(n1)のいずれかである」という記載との整合を図るためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
エ 訂正事項5は、訂正前の請求項20に係る発明では、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」の化合物の組合せが限定されておらず、「低級脂肪酸類」の種類が特定されていなかったものを、訂正後の請求項20に係る発明では、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」の化合物の組合せを上記(a2)?(t2)のいずれかの組合せに限定し、「低級脂肪酸類」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
オ 訂正事項6は、請求項20を引用する訂正後の請求項21において、訂正後の請求項20における「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり」という記載との整合を図るために、請求項21に濃度が記載されているオクタン酸及びデカン酸を含む「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(b2)?(j2)のいずれかであ」ることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
カ 訂正事項7は、請求項20を引用する訂正前の請求項22に係る発明では、「低級脂肪酸類」の種類が特定されていなかったものを、訂正後の請求項22に係る発明では、「低級脂肪酸類」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項7は、請求項20を引用する訂正後の請求項22において、訂正後の請求項20における「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり」という記載との整合を図るために、請求項22に濃度が記載されているイソ吉草酸及びメチオナールを含む「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(m2)及び(o2)?(q2)のいずれかであ」ることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
キ 訂正事項8は、請求項20を引用する訂正前の請求項23に係る発明では、「低級脂肪酸類」の種類が特定されていなかったものを、訂正後の請求項23に係る発明では、「低級脂肪酸類」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項8は、請求項20を引用する訂正後の請求項23において、訂正後の請求項20における「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり」という記載との整合を図るために、請求項23に濃度が記載されているイソ吉草酸及びピラジン類を含む「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(l2)?(n2)のいずれかであ」ることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
ク 訂正事項9は、請求項20を引用する訂正前の請求項24に係る発明では、「低級脂肪酸類」の種類が特定されていなかったものを、訂正後の請求項24に係る発明では、「低級脂肪酸類」を「イソ吉草酸」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項9は、請求項20を引用する訂正後の請求項24において、訂正後の請求項20における「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり」という記載との整合を図るために、請求項24に濃度が記載されているオクタン酸及びイソ吉草酸を含む「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(c2)又は(k2)であ」ることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
(2) 新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
ア 訂正事項1及び3は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2の「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」としての、上記(a1)は、本件特許明細書【0100】表9-3の添加例29として、アセトール及びオクタン酸の組合せが、上記(b1)は、同じく【0123】の記載事項及び【0124】表22のサンプル5-1?5-8として、アセトール、オクタン酸及びデカン酸の組合せが、上記(c1)は、同じく【0097】の記載事項及び【0100】表9-3の添加例28として、アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸の組合せが、上記(d1)は、同じく【0100】表9-3の添加例30として、アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナールの組合せが、上記(e1)は、同じく【0100】表9-3の添加例23として、アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類の組合せが、上記(f1)は、同じく【0100】表9-3の添加例25、26として、アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類の組合せが、上記(g1)は、同じく【0100】表9-3の添加例24として、アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類の組合せが、上記(h1)は、同じく【0097】の記載事項及び【0101】表9-4の添加例36?38として、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類の組合せが、上記(i1)は、同じく【0099】表9-2の添加例14と、【0140】の記載事項及び【0141】表29の実施例11として、イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類の組合せが、上記(j1)は、同じく【0097】の記載事項及び【0098】表9-1の添加例4、5、9、10、【0099】表9-2の添加例11、20、【0100】表9-3の添加例21、22、【0111】表15のサンプル10?14として、イソ吉草酸及びメチオナールの組合せが、上記(k1)は、同じく【0129】の記載事項及び【0130】表24のサンプル12-1?12-6として、イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類の組合せが、上記(l1)は、同じく【0136】の記載事項及び【0137】表27に、イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類の組合せが、上記(m1)は、同じく【0101】表9-4の、添加例31として、ピラジン類及びチアゾール類の組合せが、上記(n1)は、同じく【0101】表9-4の添加例34として、チアゾール類が、それぞれ記載されている。
また低級脂肪酸類として「イソ吉草酸」について、同じく【0019】には、「本発明の香気・風味付与組成物に用いられる低級脂肪酸は、炭素数3?7(好ましくは、4?6)の飽和又は不飽和のモノカルボン酸であり、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、イソ吉草酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプコン酸)、ヘプタン酸等が挙げられるが、より畜肉らしい香気・風味を付与できる点から、イソ吉草酸又は吉草酸が好ましく用いられる。」と記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項4について、低級脂肪酸類の種類については、上記イのとおりである。したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項5の「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」としての、上記(a2)アセトール及びオクタン酸、(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸、(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸、(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール、(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類、(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類、(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類、(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類、(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類、(o2)イソ吉草酸及びメチオナール、(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類、(r2)ピラジン類及びチアゾール類及び(t2)チアゾール類については、上記イと同様である。
さらに、訂正事項5の「アセトール、オクタン酸、デカン酸、低級脂肪酸類、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」としての、上記(h2)は、本件特許明細書【0098】表9-1の添加例1?3、6?8、【0099】表9-2の添加例13、17?19及び【0106】表12のサンプル2?7に、オクタン酸及びデカン酸の組合わせが、上記(i2)は、同じく【0099】表9-2の添加例12及び【0101】表9-4の添加例39に、オクタン酸、デカン酸及びメチオナールの組合わせが、上記(j2)は、同じく【0126】の記載事項及び【0127】表23のサンプル5-9?5-14に、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類の組合わせが、上記(k2)は、同じく【0121】表21のサンプル26?32に、オクタン酸及びイソ吉草酸の組合わせが、上記(l2)は、同じく【0097】の記載事項、【0099】表9-2の添加例15、16、【0100】表9-3の添加例27、【0101】表9-4の添加例40、【0116】表18のサンプル17?23及び【0144】?【0146】の実施例12として、イソ古草酸及びピラジン類の組合わせが、上記(s2)は、同じく【0101】表9-4の添加例33にメチオナールが、それぞれ記載されている。
また低級脂肪酸類として「イソ吉草酸」について、同じく【0019】には、「本発明の香気・風味付与組成物に用いられる低級脂肪酸は、炭素数3?7(好ましくは、4?6)の飽和又は不飽和のモノカルボン酸であり、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、イソ吉草酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプコン酸)、ヘプタン酸等が挙げられるが、より畜肉らしい香気・風味を付与できる点から、イソ吉草酸又は吉草酸が好ましく用いられる。」と記載されている。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項6は、上記のとおり明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
カ 訂正事項7、8、9について、低級脂肪酸類の種類については、上記イのとおりである。したがって、訂正事項7、8、9は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
キ さらに、訂正事項1は、一群の請求項1?14について、訂正事項2?4は、一群の請求項15?19について、訂正事項5?9は、一群の請求項20?24について、なされたものである。
(3) 小括
したがって、本件訂正による訂正事項1?3、5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項6は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項4、7?9は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ訂正事項1?9は、同条4項、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?14〕、〔15?19〕、〔20?24〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正による訂正後の請求項15、17、20?24に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項15、17、20?24に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、訂正後の本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。

「【請求項15】
飲食品に対して、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加することと、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を添加することとを含む、畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a1)?(n1)のいずれかである方法。
(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類

【請求項17】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(h1)及び(j1)?(l1)のいずれかであり、
飲食品に対して、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加し、
イソ吉草酸を1.0重量ppb以上19.3重量ppm未満の濃度となるように添加し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppb以上262重量ppb未満の濃度となるように添加することを含む、請求項15記載の方法。

【請求項20】
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための香気・風味付与組成物。
(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類

【請求項21】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(b2)?(j2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.020重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
オクタン酸を1.0重量ppm以上130000重量ppm未満含有し、且つ、
デカン酸を1.0重量ppm以上390000重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上6.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。

【請求項22】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(m2)及び(o2)?(q2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を1.0重量ppm以上19300重量ppm未満含有し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppm以上262重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上3.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。

【請求項23】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(l2)?(n2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を0.10重量ppm以上48600重量ppm未満含有し、且つ、
ピラジン類を0.10重量ppm以上38800重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上9.5重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。

【請求項24】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(c2)又は(k2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上300重量ppm未満含有し、
オクタン酸を0.74重量ppm以上44100重量ppm未満含有し、且つ、
イソ吉草酸を0.047重量ppm以上2820重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。

2 取消理由の概要
請求項1?24に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1) 本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2) 本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(4) 本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(5) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。

なお、上記取消理由は本件特許異議の申立てにおいて申立てられた全ての申立理由(特許法29条1項3号29条2項36条4項1号36条6項1号36条6項2号)を含んでいる。

理由(1)について
ア 引用例4を主引用例として
・請求項 1、7、15
・引用例 4

イ 引用例5を主引用例として
・請求項 1、15
・引用例 5

・請求項 20
・引用例 5

理由(2)について
ア 引用例1を主引用例として
・請求項 1、4、7、8、15、18
・引用例 1、7、8、10

・請求項 3、6、9?14、17
・引用例 1、4?11

イ 引用例2を主引用例として
・請求項 1、4、7、8、13?15、18
・引用例 2、7、8、10、12

・請求項 2、5、16、19
・引用例 2、7、8、10、12

・請求項 3、6、9?14、17
・引用例 2、4?12

ウ 引用例3を主引用例として
・請求項 1、4、7、8、15、18
・引用例 3、7、8、10

・請求項 2、5、16、19
・引用例 3、7、8、10、11、13

・請求項 3、6、9?14、17
・引用例 3、4?11

エ 引用例4を主引用例として
・請求項 1、7、15
・引用例 4

・請求項 2、16
・引用例 4

・請求項 3?14、17?19
・引用例 4、5、6、9

・請求項 20?24
・引用例 4

オ 引用例5を主引用例として
・請求項 1、15
・引用例 5

・請求項 3、4、6?14、17、18
・引用例 5、4、6、9

・請求項 20
・引用例 5

・請求項 22、23
・引用例 5、4、6、9

<< 引 用 例 >>
引用例1:特開2004-215598号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
引用例2:特開2007-228939号公報(異議申立人提出の甲第2号証)
引用例3:特開平7-236453号公報(異議申立人提出の甲第3号証)
引用例4:特開2005-15683号公報(異議申立人提出の甲第4号証)
引用例5:特開2001-149034号公報(異議申立人提出の甲第5号証)
引用例6:特開昭60-9465号公報(異議申立人提出の甲第6号証)
引用例7:特開平6-30732号公報(異議申立人提出の甲第7号証)
引用例8:特開平2-60565号公報(異議申立人提出の甲第8号証)
引用例9:特開昭50-155668号公報(異議申立人提出の甲第9号証)
引用例10:特開平10-174563号公報(異議申立人提出の甲第10号証)
引用例11:福場博保,小林彰夫,”調味料・香辛料の事典”,朝倉書店,2002年4月1日 第6刷,p.53-57(異議申立人提出の甲第11号証)
引用例12:特開平10-191934号公報(異議申立人提出の甲第12号証)
引用例13:特開2009-95338号公報(異議申立人提出の甲第13号証)
引用例14:鷲尾友紀子,”畜肉だしの風味に関する研究”,日本獣医生命科学大学大学院,平成26年9月(異議申立人提出の参考文献1)
引用例15:M.Susan Brewer, "The Chemistry of Beef Flavor -Executive Summary",National Cattlemen's Beef Association, December, 2006 (異議申立人提出の参考文献2)
引用例16:渡邊彰,外4名,”牛肉中の甘い香りを含む揮発性物質を迅速・簡便に測定する方法”のプリントアウト,[online],平成20年度東北農業研究成果情報-分類別Index-,[2017年1月19日検索],インターネット<URL:http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H20/seika-index.html>(異議申立人提出の参考文献3)
引用例17:飯塚佳子,外4名,”定量的記述分析法による異なる品種の豚肉の評価”,日本食品科学工学会誌,2006年1月,第53巻,第1号,p.23-30(異議申立人提出の参考文献4)
引用例18:特開2005-261396号公報(異議申立人提出の参考文献5)
引用例19:特開2004-2237号公報(異議申立人提出の参考文献6)
引用例20:文部科学省食品データベースの食品成分「乳類/(液状乳類)/普通牛乳」,「乳類/(粉乳類)/全粉乳」及び「乳類/(粉乳類)/脱脂粉乳」のプリントアウト,[online],インターネット<URL:http://fooddb.mext.go.jp/index.pl>(異議申立人提出の参考文献7)
引用例21:特開平8-116932号公報(異議申立人提出の参考文献8)
引用例22:石黒恭佑,”冷凍食品原材料講座5.調味料・エキス”,冷凍食品技術研究,冷凍食品技術研究会,1988年12月,No.11,p.10-32(異議申立人提出の参考文献9)

理由(3)について
ア 本件発明1?14は、製造時の技術的な特徴や条件が付与された記載を有している。
イ 本件発明1?24は、畜肉だし様の香気・風味を有する/有さない、付与する/付与しないを、どのように判別するか不明である。
ウ 本件発明1?14は、得られる飲食品から、既に存在しているのものと新たに添加されたものとを区別することはできず、得られる飲食品から添加濃度を知ることができない。
エ 本件発明1?19は、添加濃度が特定の範囲内であるという発明特定事項が有する技術的意味を理解できず、発明を特定するための事項が不足している。

理由(4)について
本件発明1?24について、発明の詳細な説明の記載では、発明を実施するために、過度の試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある。

理由(5)について
ア 本件発明1?19は、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン等の化合物を食品素材の形態で飲食品に添加する場合、食品素材は請求項に記載されていない他の香気・風味を有する化合物により、余分な香気・風味が付与されるので、発明の課題が解決されない範囲にまで及んでいる。
イ 本件発明1?24は、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンが既に存在している飲食品に、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の添加濃度で添加した飲食品も包含され、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンの添加濃度が低濃度から高濃度になるに従い、ある一定値を超えると、畜肉だし様の香気・風味が低下し始めるから、本件発明1?24は、発明の課題が解決されない範囲にまで及んでいる。

3 引用例に記載された事項
(1) 引用例1に記載された事項
ア 「【0020】
ビーフエキスなどの畜肉エキスや魚肉エキスにはこれらのタンパク質が含まれているため、ヘモグロビンやミオグロビンの精製品を用いなくても、これらのタンパク質を含む畜肉エキス、魚肉エキス等を用いても良い。畜肉エキスの添加は、特に乳化状スープ独特の風味の増強効果をもたらすので、好ましい。」
イ 「【0046】
[ヘモグロビン、ミオグロビン含有素材(各種エキス類)が豚骨スープの官能(風味)、濁度に与える影響]
豚骨スープ1:20gに各種エキス類を添加して加熱し、経時的に官能評価と濁度測定を行った。用いたエキスは「アリアケポークストックAJ-1」(商品名、アリアケ食品社製)、「YSKビーフエキスY」(商品名、焼津水酸化学社製)、「SPIチキンエキス」(商品名、SPI-DIANA社製)、「Bordonビーフエキス」(商品名、Bordon社製)であった。また添加量は0.25?1.0%とし、1?6時間加熱を行った。
結果を表2に示す。」
ウ 「【0048】
ここで官能評価の記号は、豚骨スープ1に比べて、◎:非常に好ましい獣臭、○:好ましい獣臭、△:普通の獣臭、×:好ましくない獣臭を示す。
【0049】
表2の結果より、これらのエキスを添加して加熱した場合、濁度はコントロールである豚骨スープ1よりすべて高い数値となった。また豚骨スープの好ましい獣臭が強くなり、コクが感じられるものが存在した。」
(2) 引用例2に記載された事項
ア 「【請求項1】
調味液を保持させた可食性吸収体を含有する固形食品。」
イ 「【0010】
また、第1発明で用いられる調味液としては、特に制限されるものではなく、固形食品の種類に応じて適宜決めることができるが、固形食品の味を補強または調整するものが好ましい。この調味液を調製するための調味料としては、例えば、塩、砂糖、醤油、味噌、各種ソースなどの一般的な調味料が挙げられるが、これらの一般的な調味料に限定されるものではなく、かつおぶしなどのだし汁、牛肉、鶏肉、豚肉などからなる肉類のエキス、清酒などを用いることもできる。」
ウ 「【実施例】
【0022】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1および比較例1)
表1に示す材料を用い、下記製法によりハンバーグをそれぞれ製造した。市販の生麩を使用し、この生麩をミキサーで粉砕して生麩の小片を形成した。この生麩の小片の大きさは、約2mmであった。
・・・
【0025】
(ハンバーグの製法)
挽肉、塩、胡椒およびナツメグを混練し、これに、炒め玉ねぎを混合し、次いで牛乳に浸したパン粉を混合した後、肉エキスを保持させた生麩(実施例1)または肉エキスのみ(比較例1)を混合する。以下、常法に従って、成型(200g/個)し、蒸し、焼成し、ハンバーグを得る。
【0026】
得られたハンバーグを中心部が-10℃以下になるように、1時間、-30℃の条件で冷凍保存後、電子レンジまたはスチーマーを用いて解凍調理し、喫食した。実施例1のハンバーグは、焼成時、冷凍時および解凍調理時には肉汁が内部に保持され、喫食時に肉汁が放出され、ハンバーグの風味を強く感じることができ、かつふっくらと柔らかく、ジューシー感を得ることができた。これに対し、比較例1のハンバーグは、焼成時や解凍調理時に肉汁が滲みだし、喫食時のハンバーグの風味が弱く、かつジューシー感に乏しいものであった。」
(3) 引用例3に記載された事項
ア 「【請求項1】パウダ状ビーフエキスまたはペースト状ビーフエキスを含有することを特徴とするビーフエキス入り食品。」
イ 「【0004】本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、牛肉の味が食品全体に浸透しており、牛肉の風味が良好なビーフエキス入り食品およびビーフエキス入り調味料を提供することを目的としている。」
ウ 「【実施例】以下、本発明の第1実施例を説明する。
【0009】図1に示すように、原料として、缶詰の牛肉15gと、乾燥わかめを水戻ししたわかめ3gと、粉砕した玉ねぎ1gと、液卵を十分にかき混ぜた鶏卵5gと、ビーフエキス調味料2gと、食塩1.6gに、でんぷん、香辛料、アミノ酸等の調味料、ゼラチン、カロチン色素を若干量加え、さらに酸化防止のため、ビタミンE、油性甘草の若干量を加え、準備した(ステップ1)。牛肉の缶詰は、熱処理工程で、芯温が120℃となる温度で4時間程度、加熱して製造されたものである。また、ビーフエキス調味料は、ビーフエキス、動植物蛋白加水分解物、糖類、食塩、アミノ酸等の調味料、増粘多糖類を原料とするペースト状の調味料である。
【0010】次に、うきみとなる牛肉、わかめを適宜の大きさにカッティングした(ステップ2)。以上のカッティングしたものに、鶏卵と、ビーフエキスと、食塩と、でんぷんと、香辛料と、調味料とを加えて調理・味付けし、これに、カロチン色素と、酸化防止剤としてビタミンEと油性甘草とを混合し、さらに、ゼラチン溶液を注入した(ステップ3)。
【0011】次に、これを、一食分に見合う量を盛付ける大きさとして、縦7cmX横5cmX高さ2cmの大きさのプラスチック製トレーに充填し盛付けた(ステップ4)。これをトレーごと、予備凍結としてー30℃以下に急速凍結した(ステップ5)。予備凍結したものを30℃?35℃の温度で15?17時間保って凍結乾燥し、水分を昇華させた(ステップ6)。こうして、重さ10gのブロック状の乾燥スープを得た。これをアルミニウム包装し(ステップ7)、箱詰して(ステップ8)、製品の即席食品とした(ステップ9)。
【0012】こうして製造された卵入り牛肉わかめ乾燥即席スープは、90℃の熱湯160mlを注ぐと、瞬時に復元させることができ、復元したスープは、牛肉の味が全体に浸透しており、牛肉の風味が良好であった。」
(4) 引用例4に記載された事項
ア 「【請求項1】
(A)ピロール類、(B)ピリジン類、(C)ピラジン類、(D)オキサゾール類、(E)オキサゾリン類、(F)アミン類、(G)チアゾール類、(H)チアゾリン類、(I)チアゾリジン類、(J)チオール類、(K)スルフィド類、(L)チオエーテル類、(M)含硫カルボン酸類、(N)キノキサリン類、及び(O)フラノン類、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有することを特徴とするミート系フレーバー組成物。」
イ 「【0006】
ミート系フレーバーの用途は極めて広く、例えば、惣菜類(植物性蛋白質から作られるハンバーグ、ソーセージ、ミートボール、コロッケ、餃子、シューマイ、ミートパイ、ミートローフなどにミート風味をつけるのに使用)、スナック食品(スナック食品に、例えば、ビーフタイプ、バーベキュータイプ、カレータイプなどの風味付けに使用)、スープ類(インスタントラーメン、コンソメをはじめとした各種のスープに使用)、調理食品(焼肉のたれ、ミートソースなど、肉の風味付け補強に利用)、畜肉加工品(ハム、ソーセージなどに利用)等に配合されて使用されている。
【0007】
これらミート系フレーバーの素材としては、例えば、(1)畜肉エキス、(2)酵母エキス、(3)動植物蛋白質加水分解物、(4)加熱調理フレーバー、(5)合成香料などが挙げられ、用途に応じてこれらの少なくとも1種または2種以上を、適宜に組み合わせてミート系フレーバーが調製される。ミート系フレーバーに要求されるフレーバー特性としては、その肉の自然な香味や、料理に調和した食欲をそそる香味を想起させるような香味特性が求められているが、そのために用いられる素材としては、上記素材のうち(1)?(4)が主体であり、(5)の合成香料の使用方法は確立されていなかった。」
ウ 「【0018】
本発明で用いられる(C)ピラジン類は特に限定されるものではないが、好ましくは、(C)ピラジン、2-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-エチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、2,3-ジエチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチル-5-ビニルピラジン、メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-3-エチルピラジン、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-アセチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、メチルチオメチルピラジン、5-メチル-6,7-ジヒドロシクロペンタピラジン、5-メチルキノキサリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、イソプロペニルピラジン、2-エチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-エチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,5,6-トリメチルピラジン、2-メトキシ-5-イソプロピルピラジン、キノリンなどが例示される。」
エ 「【0022】
本発明で用いられる(G)チアゾール類は特に限定されるものではないが、好ましくは、(G)チアゾール、4-メチルチアゾール、4,5-ジメチルチアゾール、トリメチルチアゾール、2-メチル-5-メトキシチアゾール、2-イソプロピル-4-メチルチアゾール、4-メチル-5-ビニルチアゾール、2-イソブチルチアゾール、4-メチル-5-チアゾールエタノール、4-メチル-5-チアゾールエタノールアセテート、2-アセチルチアゾール、5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2-(1-メチルプロピル)チアゾール、などが例示される。」
オ 「【0026】
本発明で用いられる(K)スルフィド類は特に限定されるものではないが、好ましくは、(K)ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、メチルプロピルトリスルフィド、プロピルジスルフィド、ジプロピルトリスルフィド、ジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジブチルスルフィド、メチオノール、3-メチルチオ-1-ヘキサノール、メチオナール、ミントスルフィド、ジチオスピロフラン、フルフリルメチルスルフィド、2-メチル-5-メチルチオフラン、メチルフルフリルジスルフィド、フルフリルジスルフィド、メチルフェニルジスルフィド、メチルo-トリルジスルフィド、sec-ブチル-1-プロペニルジスルフィド、ジ(sec-ブチル)ジスルフィド、メチルプロペニルスルフィド、sec-ブチル-1-プロピルジスルフィド、メチル(2-メチル-3-フリル)ジスルフィド、エチルメチルジスルフィドなどが例示される。」
カ 「【0049】
本発明のミート系フレーバー組成物の香気・香味付与、増強乃至改良剤として使用される天然香料・香辛料としては、例えば、レモン、オレンジ、ライム、バニラ、クローブ、スペアミント、ペパーミント、サフラン、タイム、ベイ、セロリー、エストラゴン、マジョラム、ピメンタ、セイボリー、ターメリック、カルミン、キュベブ、フェンネル、マスタード、スターアニス、カッシュ、クミン、フェネグリーク、オリガナム、ローレル、カルダモン、タラゴン、アサフェチダ、シダーウッド、シダーリーフ、デイル、ジュニパー、パプリカ、バジル、オレガノ、プチグレイン、メース、オールスパイス、シンナモン、ジンジャー、ローズマリー、ナッツメグ、アニス、ホップ、セージ、セージスパニッシュ、キャラウエイ、コリアンダー、ペパーなどを例示することができる。これらの天然香料・香辛料に限らず、天然香料基原物質の解説、食品香料ハンドブック(日本香料工業会編、平成11年8月発行)に記載の天然香料・香辛料も香気・香味付与、増強乃至改良剤として使用される。」
キ 「【0081】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、2-エトキシエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、メチルブタノール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、1-ペンタノール、1-ペンテン-3-オール、1-ヘキサノール、2-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクテン-1-オール、1-オクテン-3-オール、1-ノナノール、ノナジエノール、1-デカノール、1-ドデカノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、2-ペンテナール、トランス-2-ノネン-1-オール、p-メンタ-3-エン-1-オール、p-メンタ-8-エン-1-オール、1-ヘキセン-3-オール、シス-2-ノネン-1-オールなどを好ましく挙げることができる。」
ク 「【0082】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、2-プロペナール、2-メチルプロパナール、ブタナール、2-ブテナール、(Z)-2-ブテナール、2-メチルブタナール、イソペンタナール、2-メチル-2-ブタナール、ペンタナール、2-ペンタナール、(Z)-2-ペンテナール、2-メチルペンタナール、3-メチルペンタナール、2-メチル-2-ペンテナール、ヘキサナール、2-ヘキセナール、(Z)-2-ヘキセナール、2,4-ヘキサジエナール、ヘプタナール、2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、2,4-ヘプタジエナール、6-メチル-2-ヘプテナール、オクタナール、2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、ノナナール、2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-2-ノネナール、2,4-ノナジエナール、(E,E)-2,4-ノナジエナール、(E,Z)-2,4-ノナジエナール、デカナール、2-デセナール、(Z)-2-デセナール、2,4-デカジエナール、(E,Z)-2,4-デカジエナール、(E,E)-2,4,デカジエナール、ウンデカナール、2-ウンデセナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、ペンタデカナール、ヘキサデカナール、ヘプタデカナール、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、メチルシンナミルアルデヒド、2,4-ペンタジエナール、4-デセナール、(Z,Z)2,4-ヘプタジエナール、(E,E)-2,4-トランス-ヘプタジエナール、3-フェニル-4-ペンテナール、3-メチル-2-ブテナール、トランス-2-トランス-6-オクタジエナール、シス-4-ヘキセナール、2-フェニル-4-ペンテナール、p-メンタ-1,8-ジエン-7-アール、p-メトキシシンナミックアルデヒド、トランス-2-シス-6-ドデカジエナール、トランス-2-シス-4-トリデカジエナール、トランス-トランス-2,4-ドデカジエナール、トランス-トランス-2,4-オクタジエナール、シンナミルアルデヒド、5-(2-フリル)-2,4-ベンタジエナール、4-エチルベンズアルデヒドなどを好ましく挙げることができる。」
ケ 「【0084】
ケトン類としては、例えば、アセトン、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ブタノン、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、2,3-ブタンジオン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、3-ペンテン-2-オン、1-ペンテン-3-オン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、2,3-ペンタンジオン、2,4-ペンタンジオン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-オクタノン、4-オクタノン、3-オクテン-2-オン、1-オクテン-3-オン、(Z)-1,5-オクタジエン-3-オン、2,3-オクタンジオン、2-ノナノン、3-ノナノン、4-ノナノン、5-ノナノン、3-ノネン-2-オン、2-デカノン、2-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、2-トリデカノン、シクロペンタノン、2-メチルシクロペンタノン、3-メチルシクロペンタノン、2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、トリメチル-2-シクロペンテン-1-オン、4,5-ジメチル-4-シクロペンテン-1,3-ジオン、シクロヘキサノン、3,5,5-トリメチル-4-メチレン-2-シクロヘキセン-1-オン、アセトフェノン、β-イオノン、カンファー、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン、3-ヘプチル-5-メチル-2(3H)フラノン、3-ヘキセン-3-オン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、3-ペンテン-2-オン、ペンチル-2-フリルケトン、1-メチル-1-シクロペンテン-3-オン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキセン-1-オン、2-ヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシアセトフェノン、2,6,6-トリメチル-2-ヒドロキシシクロヘキサノン、などを好ましく挙げることができる。」
コ 「【0109】
(実施例1) 基本ミートフレーバー組成物の製法
基本ミートフレーバー組成物1として下記の各成分(重量部)を混合した。
【0110】
ヘキサナール 266
ヘキサノール 163
アセトアルデヒド 130
プロピルアルコール 126
アミルアルコール 100
エチルアルコール 77
ベンズアルデヒド 36
ギ酸イソプロピル 34
1-オクテン-3-オール 24
ブチルアルコール 20
アミルメチルケトン 20
ヘプチルメチルケトン 4
合計 1000
上記、基本ミートフレーバー組成物1の1000gに2-アセチルピロールとクエン酸の混合組成物の1%エタノール溶液30gを混合してミートフレーバー組成物を調製した。このミートフレーバー組成物と2-アセチルピロールを加えてない上記の基本ミートフレーバー組成物について、専門パネラー10人により香気を比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が2-アセチルピロールを加えたミートフレーバー組成物は、好ましい香味が強調され、ミート特有の特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れているとした。
【0111】
(実施例2)実施例1の方法に準じて、2-アセチルピロールの代わりに、成分(A)ピロール類に包含されるインドール、スカトール、2-プロピオニルピロール;成分(B)ピリジン類に包含されるピリジン、3-エチルピリジン、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、2-イソブチルピリジン、3-イソブチルピリジン、2-n-ペンチルピリジン、5-エチル-2-メチルピリジン、2,6-ルチジン、2-メトキシ-6-イソプロピルピリジン、2-(2-メチルプロピル)ピリジン、(3-フェニルプロピル)ピリジン;成分(C)ピラジン類に包含されるピラジン、2-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-エチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、2,3-ジエチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチル-5-ビニルピラジン、メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-3-エチルピラジン、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-アセチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、メチルチオメチルピラジン、5-メチル-6,7-ジヒドロシクロペンタピラジン、5-メチルキノキサリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、イソプロペニルピラジン、2-エチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-エチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,5,6-トリメチルピラジン、2-メトキシ-5-イソプロピルピラジン、キノリン;成分(N)キノキサリン類に包含される5-メチルキノキサリン、2-メチル-3-エチルキノキサリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、を加えてその香味の変化を比較検討した。その結果、実施例1と同様に専門パネラー10人の全員が本発明の成分(A)ピロール類、成分(B)ピリジン類、成分(C)ピラジン類、及び成分(N)キノキサリン類を加えたミートフレーバー組成物は、該成分を加えていないミートフレーバー組成物と比較して、好ましい香味が強調され、ミート特有の特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れているとした。」

サ 「(実施例3)基本ミートフレーバー組成物の製法
基本ミートフレーバー組成物2として下記の各成分(重量部)を混合した。
【0112】
ヘキサナール 266
ヘキサノール 163
アセトアルデヒド 130
プロピルアルコール 126
アミルアルコール 100
ベンズアルデヒド 35
ギ酸イソプロピル 35
ノナナール 30
1-オクテン-3-オール 25
ブチルアルコール 20
アミルメチルケトン 20
ヘプチルメチルケトン 4
フルフリルアルコール 4
合計 1000
上記、基本ミートフレーバー組成物1の1000gにピリジン2gを混合してミートフレーバー組成物を調製した。このミートフレーバー組成物とピリジンを加えてない上記の基本ミートフレーバー組成物について、専門パネラー10人により香味を比較した。その結果、専門パネラー10人の全員がピリジンを加えたミートフレーバー組成物は、好ましい香味が強調され、ミート特有の特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れているとした。
【0113】
(実施例4)実施例3の方法に準じて、ピリジンの代わりに、成分(A)ピロール類に包含される2-アセチルピロール、インドール、スカトール、2-プロピオニルピロール;成分(B)ピリジン類に包含される3-エチルピリジン、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、2-イソブチルピリジン、3-イソブチルピリジン、2-n-ペンチルピリジン、5-エチル-2-メチルピリジン、2,6-ルチジン、2-メトキシ-6-イソプロピルピリジン、2-(2-メチルプロピル)ピリジン、(3-フェニルプロピル)ピリジン;成分(C)ピラジン類に包含されるピラジン、2-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-エチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、2,3-ジエチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチル-5-ビニルピラジン、メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-3-エチルピラジン、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-アセチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、メチルチオメチルピラジン、5-メチル-6,7-ジヒドロシクロペンタピラジン、5-メチルキノキサリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、イソプロペニルピラジン、2-エチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-エチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,5-ジメトキシピラジン、2-メチル-3,6-ジメトキシピラジン、2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,5,6-トリメチルピラジン、2-メトキシ-5-イソプロピルピラジン、キノリン;成分(N)キノキサリン類に包含される5-メチルキノキサリン、2-メチル-3-エチルキノキサリン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、を加えてその香味の変化を比較検討した。その結果、実施例3と同様に専門パネラー10人の全員が本発明の成分(A)ピロール類、成分(B)ピリジン類、成分(C)ピラジン類、及び成分(N)キノキサリン類を加えたミートフレーバー組成物は、該成分を加えていないミートフレーバー組成物と比較して、好ましい香味が強調され、ミート特有の特徴をとらえ持続性の点でも格段に優れているとした。」
シ 「【0139】
・・・
(応用例7)スープの製法
下記処方に従い、実施例1?10のミート系フレーバー組成物をプロピレングリコールに溶解して0.1%の溶液とする。この溶液0.966gを次の成分群から成るスープベース7.3gに加える。
(処方)
微粉砕塩化ナトリウム 35.62部
植物蛋白質加水分解物 27.40部
グルタミン酸ナトリウム 17.81部
ショ糖 10.96部
牛肉脂肪 5.48部
キャラメル着色剤 2.73部
得られた混合物を沸騰水350gに加えると優秀なビーフ・ポーク・チキン香味を有するスープとなる」
(5) 引用例5に記載された事項
ア 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、牛肉の煮汁、及びスープ、ソーセージ、ペーストリー、その他に特に必要なボイルされた牛肉をしのばせる強力でマイルドな牛肉の風味を得るという課題を解決する。また、重要な成分の相対量を変えながら、本発明は、風味剤製造者が、マイルドなローストされた牛肉の風味からマイルドな牛肉の煮汁の風味まで変化する風味剤組成物を調製することを可能にする。」
イ 「【0017】本発明による風味剤組成物は、特に、ソーセージ、肉、細かく砕かれ再成形された肉、特殊加工された植物性蛋白質のような肉代替物、及びペーストリー生成物のような食品中に、有効量、即ち、所望の風味を付与するか又は強化するのに十分な量で配合される。一般的指針として、0.01?1000ppb(partsper billion = 1/10^(9))、好ましくは0.5?100ppbの風味剤量が食品中に配合され、このような比率は食品に基づいて計算された重量基準として表される。実際に配合される風味剤量は、個々の好み及び食品の性質に依存する。風味剤組成物中においては、存在する量は、実際の風味付けされた食品中よりも容易に10乃至10,000倍高くなり得る。」
ウ 「【0050】実施例10
4種類のおいしそうな風味の組成物を、以下の成分を以下の表中に示されている量(ppt(parts per thousand))で混合することによって調製した。
【0051】このようにして得られた4種の混合物A、B、C、及びDを別々に試験溶液(50℃、5g/リットルの塩化ナトリウムを含む)に1リットル当たり0.04gの水準で添加した。これらの風味付けされた試験溶液は、4人の経験を積んだ試験官から成るパネルによって評価された。4人の試験官のうちの3人が、混合物C及びDが、混合物A及びBと比較して、増強された調理されたような特徴を有していると表現した。3人の経験を積んだ試験官が、混合物CとDの両方が混合物Bよりも少ない褐色にこげたような及びローストされたような特徴を示したという意見であった。
【0052】
【表6】




4 判断
(1) 上記訂正事項1及び3により、本件発明1?14、本件発明16、18及び19は削除されたので、上記理由(1)?(5)のうち、本件発明1?14、本件発明16、18及び19についての上記取消理由は、対象となる請求項が存在しない。

(2) 理由(1)について
ア 引用例4を主引用例として
・本件発明15
・引用例 4
引用例4には、飲食品に対して、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを添加することを含む、「畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法」について、特に、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」が、
「(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類」「のいずれか」との組合せについて記載はないから、本件発明15は、引用例4に記載された発明ということはできない。
したがって、本件発明15は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものではない。

イ 引用例5を主引用例として
・本件発明15
・引用例 5
引用例5には、飲食品に対して、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを添加することと、「チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であ」ること、及び「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」が、
「(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類」の「いずれか」との組合せについて記載はないから、本件発明15は、引用例5に記載された発明ということはできない。
したがって、本件発明15は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものではない。

・本件発明20
・引用例 5
引用例5には、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを含有する「畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物」として、
「チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であ」ること、及び「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」が、「(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類」の「(a2)?(t2)いずれか」である組成物は、記載されていない。
したがって、本件発明20は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものではない。

(3) 理由(2)について
ア 引用例1を主引用例として
・本件発明15
・引用例 1、7、8、10
引用例1及び引用例7、8、10には、飲食品に対して、(A)「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを添加すること、(B)「チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であ」ること、及び(C)「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」が、「(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類」「のいずれか」であることについての記載はなく、本件発明15は、上記特定事項(A)?(C)を採用することによって、「より汎用的に使用でき、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味を付与することのできる香気・風味付与組成物、該香気・風味を有する飲食品、該飲食品の製造方法を提供」できるというものである(本件特許明細書【0006】)。
したがって、上記(A)?(C)の特定事項を、引用例1に記載された発明及び引用例7、8、10に記載された事項から当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
よって、本件発明15は、引用例1に記載された発明及び引用例7、8、10に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

なお、特許異議申立人は、本件特許出願日(優先日)後の平成26年9月付けの引用例14により、「ビーフエキスは、香気成分として、1-オクテン-3-オル、3-メチルブタン酸(イソ吉草酸)、2,3,5-トリメチルピラジンを含みます。」(特許異議申立書66ページ18?20行)として、引用例1には、「1-オクテン-3-オル、低級脂肪酸類(イソ吉草酸)、ピラジン類(2,4,5-トリメチルピラジン)、クレアチン、クレアチニンが添加された畜肉だし様の香気・風味を有するビーフエキスが添加された豚骨スープの発明が実質的に記載されています。」(特許異議申立書66ページ26行?67ページ3行)と主張している。
しかしながら、引用例14により、本件特許出願日(優先日)前において、事実と認めることができる事項は、「特に、鶏、豚、牛の肉あるいは骨を長時間煮込んで作る畜肉だしは、欧米ではスープストック、ブイヨン、フォン、中国では上湯、白湯、毛湯などと呼ばれ、様々な料理のベースとして、世界中で広く使用されている。」、「これら『だし』の呈味成分に関しては、古くから研究が行われており、アミノ酸、ペプチド、核酸関連物質(特に、5’-ヌクレオチド類)、有機酸、糖類、無機塩類などが含まれることが知られ、肉種別に定量されている。しかし、これらの香気成分についての科学的解析を行った例は少ない。」 (1ページ)こと、鶏だし、豚だし及び牛だしの香気成分について、引用例14の10ページ13行?16ページ末行に記載されている多数の香気成分が同定されているという程度の事項である。
そして、ビーフエキスについては、「茹で牛肉などの加熱牛肉に比べ、roasted flavor、sweet meaty flavorなどの特性を有するビーフエキスについては、その特性に寄与する香気成分の解明は行われていない。」(16ページ12?14行)と記載されている。
さらに、引用例14には、「ビーフエキス着目し、世界で最も使用されているJBS S/A社(ブラジル)の1stグレードビーフエキス(Bordon Beef extract)について、その特性に寄与する香気成分を解明した。SAFE法及びAEDA法によりビーフエキス中の香気寄与度の高い化合物を選定した結果、FDファクター32以上の7成分が選定された。更にオミッションテストにより寄与度の高い成分を絞り込んだ結果、2,3,5-trimethyl pyrazine、1-octen-3-ol、3-methylbutanoic acid、4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanoneの4成分がビーフエキス香気特性に最も寄与する成分として選定された。寄与度の高い4成分を添加した再構成液はビーフエキス香気の再現性が高く、寄与成分が正しく選定されたことが示された。」(99ページ5?14行)と記載されており、引用例14において、ビーフエキスの香気特性に、最も寄与する成分が、1-オクテン-3-オル、ピラジン類等の香気成分であることが、初めて同定されたとする内容がむしろ読み取れるものである。
そして、引用例14において、ビーフエキスの香気特性に最も寄与する成分が、1-オクテン-3-オル、ピラジン類等の香気成分であることが同定されたとしても、当該同定された事項は、特定のビーフエキス(JBS S/A社(ブラジル)の1stグレードビーフエキス(Bordon Beef extract))についての結果であって、当該同定された事項が、そのまま引用例1のビーフエキスに当てはまるということはできない。また、仮に、1-オクテン-3-オル、ピラジン類が、引用例1のビーフエキスに含まれていたとしても、ビーフエキスの香気特性に寄与する成分が1-オクテン-3-オル、ピラジン類であることは、本件特許出願日(優先日)において知られていなかったのだから、当業者であっても、1-オクテン-3-オル、ピラジン類に着目して、それらの濃度調整をすることはしない。
よって、特許異議申立人の「1-オクテン-3-オル、低級脂肪酸類(イソ吉草酸)、ピラジン類(2,4,5-トリメチルピラジン)、クレアチン、クレアチニンが添加された畜肉だし様の香気・風味を有するビーフエキスが添加された豚骨スープの発明が実質的に記載されています。」との主張は、採用できない。

・本件発明17
・引用例 1、4?11
本件発明17は、本件発明15を更に減縮したものであるから、上記本件発明15についての判断と同様に、引用例1に記載された発明及び引用例4?11に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

イ 引用例2を主引用例として
・本件発明15
・引用例 2、7、8、10、12
引用例2を主引用例としてみても、上記アに示した特定事項(A)?(C)を採用することは、引用例2及び引用例12にも記載がないから、上記アの本件発明15についての判断と同様に、本件発明15は、引用例2に記載された発明及び引用例7、8、10、12に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・本件発明17
・引用例 2、4?12
本件発明17は、本件発明15を更に減縮したものであるから、上記本件発明15についての判断と同様に、引用例2に記載された発明及び引用例4?12に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

ウ 引用例3を主引用例として
・本件発明15
・引用例 3、7、8、10
引用例3を主引用例としてみても、上記アに示した特定事項(A)?(C)を採用することは、引用例3にも記載がないから、上記アの本件発明15についての判断と同様に、本件発明15は、引用例3に記載された発明及び引用例7、8、10に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・本件発明17
・引用例 3、4?11
本件発明17は、本件発明15を更に減縮したものであるから、上記本件発明15についての判断と同様に、引用例3に記載された発明及び引用例4?11に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

エ 引用例4を主引用例として
・本件発明15
・引用例 4
引用例4を主引用例としてみても、上記アに示した特定事項(A)?(C)を採用することは、引用例4にも記載がないから、上記アの本件発明15についての判断と同様に、本件発明15は、引用例4に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・本件発明17
・引用例 4、5、6、9
本件発明17は、本件発明15を更に減縮したものであるから、上記本件発明15についての判断と同様に、引用例4に記載された発明及び引用例5、6、9に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・本件発明20
・引用例 4
引用例4には、飲食品に対して、(A)「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを添加すること、(B)「チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であ」ること、及び(C’)「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための香気・風味付与組成物。
(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類」「のいずれか」であることについての記載はなく、本件発明20は、上記特定事項(A)?(C’)を採用することによって、「より汎用的に使用でき、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味を付与することのできる香気・風味付与組成物、該香気・風味を有する飲食品、該飲食品の製造方法を提供」できるというものである(本件特許明細書【0006】)。
したがって、上記(A)?(C’)の特定事項を、引用例4に記載された発明から当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
よって、本件発明20は、引用例4に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・本件発明21?24
・引用例 4
本件発明21?24は、本件発明20を更に減縮したものであるから、上記本件発明20についての判断と同様に、引用例4に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

オ 引用例5を主引用例として
・請求項 15
・引用例 5
引用例5を主引用例としてみても、上記アに示した特定事項(A)?(C)を採用することは、引用例5にも記載がないから、上記アの本件発明15についての判断と同様に、本件発明15は、引用例5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・請求項 17
・引用例 5、4、6、9
本件発明17は、本件発明15を更に減縮したものであるから、上記本件発明15についての判断と同様に、引用例5に記載された発明及び引用例4、6、9に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・請求項 20
・引用例 5
引用例5には、(A)「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」とを含有する「畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物」として、
(B)「チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であ」ること、及び(C’)「前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」が、「(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類」 の「(a2)?(t2)いずれかであ」る組成物は、記載されておらず、本件発明20は、上記特定事項(A)?(C’)を採用することによって、「より汎用的に使用でき、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味を付与することのできる香気・風味付与組成物、該香気・風味を有する飲食品、該飲食品の製造方法を提供」できるというものである(本件特許明細書【0006】)。
したがって、本件発明20は、引用例5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

・請求項 22、23
・引用例 5、4、6、9
本件発明22、23は、本件発明20を更に減縮したものであるから、上記本件発明20についての判断と同様に、引用例5に記載された発明及び引用例4、6、9に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(4) 理由(3)について
ア 理由(3)のイについて
本件特許明細書には、畜肉だしに関して、以下の記載がなされている。
「【0002】
畜肉だしは、ビーフブイヨンを初めとして中華料理の湯(たん)や、チキンブイヨンなど各国の調理にも使用され、食のベースとなるものである。しかし、いわゆる市販の畜肉エキスなどは製造時の加熱により風味劣化が生じやすく、畜肉だし本来の風味を持つ香気・風味付組成物、該香気・風味付与方法の開発が待たれている。」
「【0076】
本発明の飲食品は、MSGを添加してなる場合、当該MSGの添加濃度が、通常0.045重量%以上10重量%以下(好ましくは0.090重量%以上0.18重量%以下)であり、また、食塩を添加してなる場合、当該食塩の添加濃度が、通常0.11重量%以上10重量%以下(好ましくは0.21重量%以上0.42重量%以下)である。かかる添加濃度で添加してなることにより、畜肉だし様の、特にビーフらしい香気・風味が向上する。・・・肉だし様の、特にビーフ様の香気・肉質風味が向上するため好ましい。・・・」
そうすると、「畜肉だし」とは、ビーフブイヨンを初めとして中華料理の湯(たん)や、チキンブイヨンなど各国の調理にも使用され、食のベースとなるものと理解でき、「畜肉だし様の香気・風味」とは、「ビーフブイヨンを初めとして中華料理の湯(たん)や、チキンブイヨンなど各国の調理にも使用され、食のベースとなるもの」の香気・風味、例えばビーフ様の香気・肉質風味と理解できる。
したがって、「畜肉だし様の香気・風味を有する/有さない、付与する/付与しない」とは、そのような香気・風味を有しているか否か、そのような香気・風味を付与し得たか否かにより、当業者なら明確に判別できるものと認められる。
よって、本件発明15、17、20?24は、上記理由(3)のイの点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取り消すべきものであるとすることはできない。

イ 理由(3)のエについて
本件発明15は、「畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法」であって、本件発明15において特定される事項に従い、特定の「飲食品」を製造できることは明確であり、本件発明15が不明確とするところはない。この点は、本件発明15を引用する本件発明17についても同様である。
よって、本件発明15、17に係る特許は、上記理由(3)のエの点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取り消すべきものであるとすることはできない。
なお、特許異議申立人は、「本件発明15に係る発明の『濃度』は、文言通りの『濃度(初期濃度+添加濃度)』であるのか、明細書に記載された『添加濃度』であるのか不明確であり、本件発明15、17に係る発明は不明りょうです。」(平成30年3月16日付け意見書9ページ5?7行)と主張しているので、以下に検討する。
本件発明15は、「飲食品に対して、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加すること」と特定しており、当該特定事項は、本件特許明細書における「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」の添加に関する記載事項(本件特許明細【0008】、【0012】、【0029】、【0033】、【0037】、【0041】、【0051】、【0067】、【0069】、【0071】、【0073】、【0076】等)、【実施例】における各「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」の添加濃度に関する記載事項(【表9-1】?【表21】、【表25】、【表27】、【表29】、【表31】、【表35】等)を参酌すれば、「飲食品」に、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」を「添加」する際に添加する濃度、すなわち添加濃度が「0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度」となるように添加することを意味することは明らかである。
したがって、この点が上記特許法36条6項2号についての判断に影響するものではない。
なお、同趣旨のことを本件発明20?24についても述べているが(平成30年3月16日付け意見書8ページ2行?11ページ8行)、上記本件発明15についての判断と同様である。

(5) 理由(4)について
上記訂正事項2、4、5、6?8により、本件発明15、17、20?24は、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」との組合せが、特定の組合せのものとされ、「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類」の添加量についても本件特許明細書に実施例として具体的に記載されているから、これらを手掛かりに、本件発明15、17、20?24を実施することが、当業者にとって、過度の試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるというものでもない。
よって、本件発明15、17、20?24に係る特許は、上記理由(4)の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取り消すべきものであるとすることはできない。

(6) 理由(5)について
本件発明の課題について、本件特許明細書には、「【0006】・・・より汎用的に使用でき、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味を付与することのできる香気・風味付与組成物、該香気・風味を有する飲食品、該飲食品の製造方法を提供することにある。」と記載されている。
そして、本件発明は、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」との組合せを特定の組合せとすることにより、上記課題を解決するものである。
そうすると、本件発明が、仮に余分な香気・風味が付与するとしても、少なくとも、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味が付与されていれば、上記課題を解決することができるものである。
また、本件発明は、「1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オン」と「アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種」との特定の組合せのものを、特定量で飲食品に添加することにより、より汎用的に使用でき、飲食品に畜肉だし様の好ましい香気・風味を付与するという課題を解決するものであるから、添加する飲食品に元から、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンが存在するか否かにかかわらず、当該課題を解決し得るものである。
よって、本件発明15、17、20?24に係る特許は、上記理由(5)の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取り消すべきものであるとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明15、17、20?24に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件発明15、17、20?24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件発明1?14、16、18、19は、訂正により、削除されたため、本件発明1?14、16、18、19に係る特許に対しての特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
飲食品に対して、1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加することと、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を添加することとを含む、畜肉だし様の香気・風味を有する飲食品の製造方法であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a1)?(n1)のいずれかである方法。
(a1)アセトール及びオクタン酸
(b1)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e1)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g1)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h1)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(i1)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(j1)イソ吉草酸及びメチオナール
(k1)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(l1)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(m1)ピラジン類及びチアゾール類
(n1)チアゾール類
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(h1)及び(j1)?(l1)のいずれかであり、
飲食品に対して、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppb以上910重量ppb未満の濃度となるように添加し、
イソ吉草酸を1.0重量ppb以上19.3重量ppm未満の濃度となるように添加し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppb以上262重量ppb未満の濃度となるように添加することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
(削除)
【請求項20】
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、畜肉だし様の香気・風味を付与するための香気・風味付与組成物であって、
チアゾール類が、2-イソブチルチアゾール及び5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
ジエナール類が、2,4-デカジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-ノナジエナール及び2,4-ウンデカジエナールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、下記(a2)?(t2)のいずれかであり、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための香気・風味付与組成物。
(a2)アセトール及びオクタン酸
(b2)アセトール、オクタン酸及びデカン酸
(c2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びイソ吉草酸
(d2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(e2)アセトール、オクタン酸、デカン酸、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(f2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びチアゾール類
(g2)アセトール、オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(h2)オクタン酸及びデカン酸
(i2)オクタン酸、デカン酸及びメチオナール
(j2)オクタン酸、デカン酸及びジエナール類
(k2)オクタン酸及びイソ吉草酸
(l2)イソ吉草酸及びピラジン類
(m2)イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類及びジエナール類
(n2)イソ吉草酸、ピラジン類及びチアゾール類
(o2)イソ吉草酸及びメチオナール
(p2)イソ吉草酸、メチオナール及びチアゾール類
(q2)イソ吉草酸、メチオナール及びジエナール類
(r2)ピラジン類及びチアゾール類
(s2)メチオナール
(t2)チアゾール類
【請求項21】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(b2)?(j2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.020重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
オクタン酸を1.0重量ppm以上130000重量ppm未満含有し、且つ、
デカン酸を1.0重量ppm以上390000重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上6.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。
【請求項22】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(m2)及び(o2)?(q2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を1.0重量ppm以上19300重量ppm未満含有し、且つ、
メチオナールを0.010重量ppm以上262重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上3.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。
【請求項23】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(l2)?(n2)のいずれかであり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上910重量ppm未満含有し、
イソ吉草酸を0.10重量ppm以上48600重量ppm未満含有し、且つ、
ピラジン類を0.10重量ppm以上38800重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上9.5重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。
【請求項24】
前記アセトール、オクタン酸、デカン酸、イソ吉草酸、ピラジン類、メチオナール、チアゾール類およびジエナール類からなる群より選択される少なくとも1種が、前記(c2)又は(k2)であり、
1-オクテン-3-オル及び/又は1-オクテン-3-オンを0.0050重量ppm以上300重量ppm未満含有し、
オクタン酸を0.74重量ppm以上44100重量ppm未満含有し、且つ、
イソ吉草酸を0.047重量ppm以上2820重量ppm未満含有する香気・風味付与組成物であって、
0.00010重量%以上10.0重量%以下の添加濃度で飲食品に添加するための、請求項20記載の香気・風味付与組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-22 
出願番号 特願2012-528611(P2012-528611)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
登録日 2016-06-24 
登録番号 特許第5954176号(P5954176)
権利者 味の素株式会社
発明の名称 香気・風味付与組成物  
代理人 當麻 博文  
代理人 土井 京子  
代理人 高島 一  
代理人 中 正道  
代理人 土井 京子  
代理人 高島 一  
代理人 田村 弥栄子  
代理人 當麻 博文  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 中 正道  
代理人 田村 弥栄子  
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