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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F04C
審判 全部申し立て 2項進歩性  F04C
管理番号 1341998
異議申立番号 異議2017-700902  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-22 
確定日 2018-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6098706号発明「スクロール圧縮機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6098706号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6098706号の請求項1、3ないし6に係る特許を維持する。 特許第6098706号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6098706号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人一條淳より特許異議の申立てがされ、平成29年11月15日付けで取消理由が通知され、平成30年1月17日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成30年3月9日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成30年4月12日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 訂正の適否

1.平成30年4月12日付けの手続補正について
平成30年1月17日付けの訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)及びこれに添付した訂正明細書は、平成30年4月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正されたので、その適否について検討する。
(1)本件補正の内容
本件補正は、平成30年3月9日付けの訂正拒絶理由において特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではないと指摘した訂正事項14について、本件訂正請求書の「7 請求の理由」から削除し、併せて本件訂正請求書に添付された訂正明細書の段落0020の記載を設定登録時の明細書の記載に戻すとともに、訂正事項15及び16について、それぞれ訂正事項14及び15に繰り上げるものである。
(2)補正の適否
本件補正の内容は、訂正事項を削除するとともに、当該削除と整合させるために訂正請求書を補正するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、本件補正は、特許法120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。

2.平成30年1月17日付けの訂正請求について
(1)訂正の内容
本件補正により補正された本件訂正請求書による訂正は、本件特許の明細書,特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものである。そして、その訂正事項は、以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「・・・形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。」と記載されているのを、
「・・・形成され、
上記第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に一対が形成され、
一対の上記第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、
上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きいことを特徴とするスクロール圧縮機。」に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2において、」と記載されているのを、「請求項1において、」に訂正する。
エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3の何れか1つにおいて、」と記載されているのを、「請求項1または3において、」に訂正する。
オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から3の何れか1つにおいて、」と記載されているのを、「請求項1または3において、」に訂正する。
カ.訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から3の何れか1つにおいて、」と記載されているのを、「請求項1または3において、」に訂正する。
キ.訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0011】に記載された「形成されていることを特徴としている。」を「形成されている。」に訂正する。
ク.訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0013】に記載された「第2の発明は、第1の発明において、」を「また、第1の発明では、」に訂正する。
ケ.訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0013】に記載された「厚さ(D)よりも大きいことを特徴としている。」を「厚さ(D)よりも大きい。」に訂正する。
コ.訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0014】に記載された「この第2の発明では、」を「この第1の発明では、」に訂正する。
サ.訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0015】に記載された「第1または第2の発明において、」を「第1の発明において、」に訂正する。
シ.訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0017】に記載された「第1から第3の発明の何れか1つにおいて、」を「第1または第3の発明において、」に訂正する。
ス.訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0019】に記載された「第1から第3の発明の何れか1つにおいて、」を「第1または第3の発明において、」に訂正する。
セ.訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0021】に記載された「第1から第3の発明の何れか1つにおいて、」を「第1または第3の発明において、」に訂正する。
ソ.訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0024】に記載された「第2の発明によれば、」を「第1の発明によれば、」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に、訂正前の請求項2に記載された「上記第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に一対が形成され、一対の上記第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きい」との事項を加入するものであって、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2に相当する。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ.訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項3?6
訂正事項3?6は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ.訂正事項7?15
訂正事項7?15は、訂正事項1?6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ.一群の請求項について
訂正前の請求項1?6は、請求項2?6のそれぞれが請求項1を引用している。訂正事項1?6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に規定する一群の請求項に対して請求されたものであり、訂正事項7?15は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。
(3)小括
したがって、訂正請求による訂正事項1ないし15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件特許発明
特許第6098706号の請求項1,3ないし6に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」,「本件特許発明3」ないし「本件特許発明6」という。)は、前記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし6に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
駆動軸(40)が挿通するハウジング(23)と、該ハウジング(23)に対して駆動軸(40)の軸心と直角の第1方向へ第1キー機構(51)でスライド可能に構成されるオルダムリング(50)と、上記ハウジング(23)に固定される固定スクロール(21)と、固定スクロール(21)に噛み合うとともにオルダムリング(50)に対して上記駆動軸(40)の軸心と直角の第2方向へ第2キー機構(52)でスライド可能に構成される可動スクロール(22)とを備え、
上記第1キー機構(51)は、上記オルダムリング(50)に形成された第1キー(54)と、上記ハウジング(23)に形成された第1キー溝(61)により構成されたスクロール圧縮機であって、
上記第1キー(54)は、オルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成され、
上記ハウジング(23)は、上記固定スクロール(21)が固定されるフランジ部(23a)に、上記可動スクロール(22)が対向する可動スクロール対向面(70)を有する所定厚さの対向部(71)と、該可動スクロール対向面(70)の周囲に上記リング部(53)が動作可能に収納される環状開口部(72)とを有し、
上記第1キー溝(61)は、上記対向部(71)における上記可動スクロール対向面(70)の裏面側に、上記環状開口部(72)から径方向内方へ向かって形成され、
上記第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180゜相対する位置に一対が形成され、
一対の上記第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、
上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きいことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1において、
上記対向部(71)は、外径側から内径側に向かって厚さが厚くなるように、裏面が傾斜面(71a)で形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
請求項1または3において、
上記第1キー溝(61)は、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された溝であることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1または3において、
上記第1キー溝(61)は、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の外周面に開放された溝であることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1または3において、
上記対向部(71)は、上記ハウジング(23)の本体に固定された、該ハウジング(23)とは別の部材で構成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。」

2.取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1及び6に係る特許に対して平成29年11月15日付けの取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
A.請求項1及び6に係る発明は、甲第1号証(特公平7-9234号公報)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
B.請求項1及び6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消されるべきものである。

3.甲第1号証の記載
(1)取消理由で通知した、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
ア.「図中(1)は固定スクロール、(2)は揺動スクロール、(104a)は固定スクロール(1)の周壁部(104c)に形成された吸入口、(105)は固定スクロール(1)の中央部に穿設された吐出孔である。又、固定スクロール(1)は円板状の台板(101)とこの台板(101)に一体に形成された渦巻状側板(102)と周壁部(104c)とで構成され、揺動スクロール(2)も同様に円板状の台板(201)に一体に形成された渦巻状側板(202)とで形成され、両スクロール(1)(2)が互いにかみ合わさつて台板(101)(201)と渦巻状側板(102)(202)とで囲まれた圧縮室(P)が形成されている。」(第5欄第10?20行)
イ.「主軸(4)は、上部フレーム(6)に設けられた貫通孔(602a)に圧入により固定された上部主軸受(602)、下部フレーム(7)の上面に形成された軸受取付丸穴(7a)に嵌入された下部スラスト軸受(701)及び下部フレーム(7)の中央部から下方へ一体をなして延在した筒状軸受支持部(7b)の中央貫通孔(7c)に圧入により固定された下部主軸受(702)によつて軸支されており、上部フレーム(6)、下部フレーム(7)はいんろう嵌合部(67a)(76a)により上部主軸受(602)、下部主軸受(702)が互いに同心になるよう組合わさつている。また上部主軸受(602)と上部スラスト軸受(601)とは同心であり、上部主軸受(602)のラジアル軸受面(602b)上部スラスト軸受(601)のスラスト軸受面(601a)とが垂直であるので、主軸(4)はその軸心が上部スラスト軸受(601)の軸心に対して同心となり、またスラスト軸受面(601a)に対して垂直に維持される。又、揺動スクロール(2)はその台板(201)の背面で上記上部スラスト軸受(601)により支承されているので、揺動スクロール(2)の台板(201)は主軸(4)に対して垂直な姿勢に維持される。上記上部スラスト軸受(601)は複数個のリベツト(603)によつて、上部フレーム(6)にカシメられており、図における上下方向及び左右方向並びに周方向の何れの方向にも動かないように堅固に固定されている。なお、この固定は、リベツト(603)の代りに複数の皿ネジ等で行なつても良い。」(第6欄第4?29行)
ウ.「オルダム継手(8)は、揺動スクロール(2)の自転を防止し、揺動スクロール(2)が主軸(4)の軸心の周りに公転運動のみをするようにするための継手手段であり、揺動スクロール(2)の台板(201)と、上部フレーム(6)との間に配設されている。」(第6欄第42?46行)
エ.「上記各部機構部品が上記のような相対関係に組立てられた後、上部フレーム(6)と、下部フレーム(7)と、固定スクロール(1)とは、固定スクロール(1)の周壁(104c)と上部フレーム(6)とを貫通し先端のねじ部(106a)が下部フレーム(7)のみに螺合する複数個のボルト(106)によつて共締めされる。」(第6欄第47行?第7欄第2行)
オ.「次に揺動スクロール(2)の構造につき第5図によつて詳細に説明する。・・・(中略)・・・(208)は上記オルダム継手(8)のガイド溝である。このガイド溝(208)は揺動軸(204)を挾んで対称な位置に一対に設けられ、上記切り欠き(206)が設けられている部位以外の部位において揺動スクロール(2)の台板(201)の下側面の外周部に配設されている。」(第12欄第34行?第13欄第11行)
カ.「第8図(a)は上部フレーム(6)の上面図であり、第8図(b)は第8図(a)のb-b線における断面を矢印方向に見た断面図である。・・・(中略)・・・
このような上部フレーム(6)の構造を詳述すると、周壁部(600b)の上端面に固定スクロール固定面(612)が、また底部(600a)には、上記固定面(612)より低い位置に上部スラスト軸受取付座(606)が、更に、上記周壁部(600b)と上部スラスト軸受取付座(606)の間には上記取付座(606)より低い位置にオルダムリング摺動面(608)が、それぞれ同心円状に配設されている。オルダムリング摺動面(608)の近傍がオルダム継手(8)を収納するオルダム室(605)となる。
上記取付座(606)の内周面即ち貫通孔(602a)には上部主軸受(602)が圧入されており、取付座(606)上端の内周側角部が全周にわたつて面取り(615)してあり、従つて上部主軸受(602)は上端側が面取りされた部分(615)にオーバーハングしている。ここで面取り部(615)端面が取付座(606)の内周面(606a)であり、(606b)は取付座(606)の外周面である。
オルダム・ガイド溝(607)は上部主軸受(602)を挾んで対称な位置に一対、オルダム・リング摺動面(608)上に設けられており、各々の径方向両端部には半円状の逃し部(607a)(607b)が設けられている。特に逃し部(607b)は円環状の取付座(606)の外周部を一部えぐつて形成されている。」(第14欄第6?44行)
キ.「第9図は上部スラスト軸受(601)の構造を示し、・・・(中略)・・・上部スラスト軸受(601)は鋼の裏金付きの例えばアルミ合金,鉛青銅合金などのすべり軸受であり、第9図(a)に示すようにドーナツ状の形状をしており、揺動スクロール(2)の下側面との摺動面即ち上側面(601a)には内周側から外周側に向けて放射状に複数本の油溝(601b)が等間隔に設けられている。・・・(中略)・・・
スラスト軸受(601)の外径は揺動スクロール(2)に発生する半径方向力と軸方向力の合力による転覆モーメントを受けられるよう、前記合力のベクトルが少なくともスラスト軸受(601)の外周端より中心側を通過するように決定される。ここで(601e)はスラスト軸受(601)の内周面であり、(601f)はスラスト軸受(601)の外周面である。」(第15欄第4?28行)
ク.「第10図?第12図は一実施例におけるオルダム継手の詳細な構成を説明する図である。第10図(a)はオルダム継手の上面図であり、(b)図は第10図(a)のb-b線断面を矢印方向に見た断面図である。図中、(801)は第10図(b)に明示するように断面が方形状をなすオルダムリング、(802)は直方体状の2対のオルダム・キー、(803)はオルダムリング(801)の上下両面に溝状に形成された2対の逃し部である。上側の一対のオルダム・キー(802)はオルダム・リング(801)の中心O_(R)を挾んだオルダム・リング(801)面上の対称な位置において上側の逃し部(803)内に固着され、下側の一対のオルダム・キー(802)はオルダムリング(801)の下側の面で前記上側の一対のオルダムキー(802)の位置と周方向に90°ずれた位置において下側の逃し部(803)内に固着されている。各オルダム・キー(802)、各オルダム・リング(801)はともに焼入れ鋼などで作られるためそれぞれの摺動面、f_(K),f_(R)は精度出しのため研磨される。そのため、研磨代を見込んだ上記逃し部(803)が、オルダム・リング(801)の上下面上にオルダムキー(802)との接合部として設けられる。また、各オルダムキー(802)はオルダムリング(801)に対して、すべて中心R_(R)(当審注:「O_(R)」の誤記)側に突出するようにずらして固着されている。(802b)はこのようにずらすことによつて各オルダムキー(801)(当審注:「(802)」の誤記)がオルダムリング(801)からはみ出した部分である。
・・・(中略)・・・なお上側の各オルダムキー(802)を結ぶ線と下側の各オルダムキー(802)とを結ぶ線とが直交する関係に上下2対のオルダムキー(802)は配設されている。」(第15欄第29行?第16欄第19行)
ケ.「第18図(当審注:「第13図」の誤記)は上部フレーム(6)にスラスト軸受(601)及びオルダム継手(8)を組込んだ状態を上面より見た図であり、第14図は揺動スクロール(2)にオルダム継手(8)が組合さつた状態を下面より見た図である。
第13図において、偏平な環状のスラスト軸受(601)は上部フレーム(6)の取付座(606)の上面にリベツト(603)によつてカシメ止めされている。ここで、スラスト軸受(601)内周面(601e)は点線で示す取付座(606)内周面(606a)より中心Os側にオーバーハング(601g)しており、また外周面(601f)は点線で示す取付座(606)外周面(606b)より外側にオーバーハング(601h)している。
オルダム継手(8)は、その下側の一対のオルダムキー(802)が上部フレーム(6)上面の断面方形状のガイド溝(607)に摺動自在に嵌入されており、その結果、ガイド溝(607)に案内されながら図において横方向に往復運動する。また、オルダム・リング(801)の上側の面に設けられたもう一対の上側のオルダムキー(802)は第5図(c)に示した揺動スクロール(2)のガイド溝(208)に摺動自在に嵌入される。この状態を第14図に示す。この第14図においてオルダム継手(8)に対して揺動スクロール(2)はそのガイド溝(208)においてオルダムキー(802)に案内されながら縦方向に相対的に往復運動する。揺動スクロール(2)は駆動されると上記2つの往復運動が合成される結果、自転運動は阻止されて公転運動のみ行なう。
・・・(中略)・・・また、各オルダムキー(802)を、平面的に見てオルダム・リング(801)の内周面(801c)から径方向内方に突出するようにずらしてはみ出し部(802b)を設けたことにより、例えば第13図に示すようにオルダムリング(801)外周側においてガイド溝(607)の半円状逃し部(607a)の周壁にオルダムキー(802)未端角部が干渉するのを防止でき、またオルダムリング(801)内周側においては、スラスト軸受(601)の外周オーバーハング部(601h)の真下にオルダムキー(802)の突出部(802b)がオーバーラツプするので、オルダムキー(802)の負荷面を大きくとれる。また、上記はみ出し部(802b)を設けることにより第14図に示すように、オルダム・リング(801)が最大限片側に寄つた時オルダムキー(802)と揺動スクロール(2)のガイド溝(208)との摺動負荷面を大きくとれるので摺動面の信頼性を向上できる。」(第16欄第20行?第17欄第41行)
コ.「スラスト軸受(601)より径方向外方に排出された油は、オルダム室(605)に流入しオルダム継手(8)を潤滑した後、オルダム室(605)の底部に穿設された4個の排油孔(604)よりバランサ室(705)内に排出される。・・・(中略)・・・
すなわち、第15図に上記各部隙間を示してあり、揺動スクロール(2)の台板(201)とオルダム・リング(801)との間の隙間α、オルダムキー(802)と上部フレーム(6)のガイド溝(607)底面との間の隙間β、オルダムキー(802)と揺動スクロール(2)のガイド溝(208)底面との間の隙間γをそれぞれ微少(0.1mm程度)になるように設定してある。」(第18欄第23?46行)
さらに、特に記載事項イ、ク及びケからみて、オルダム継手(8)は、上部フレーム(6)に対して主軸(4)の軸心と直角の第1方向に往復運動し、揺動スクロール(2)は、オルダム継手(8)に対して主軸(4)の軸心と直角の第2方向に相対的に往復運動することが理解できる。
記載事項ク及び第10図(b)の記載からみて、下側の一対のオルダムキー(802)は、オルダムリング(801)の下側の面に突出して、該下側の面に形成された逃し部(803)内に固着されていることが理解できる。
記載事項カ及び第8図の記載からみて、オルダム室(605)は、環状開口部となっていることが理解できる。
記載事項コにあるとおり、揺動スクロール(2)の台板(201)とオルダム・リング(801)との間の隙間αは微少になるように設定されており、第15図(c)の記載からみて、オルダムリング(801)の厚さが上部スラスト軸受(601)の厚さよりも大きいことが理解である。
(2)そうすると、これらの記載からみて、甲第1号証には、本件特許の請求項1の記載に倣って整理すれば、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「主軸(4)を、貫通孔(602a)に圧入により固定された上部主軸受(602)によって軸支する上部フレーム(6)と、該上部フレーム(6)に対して前記主軸(4)の軸心と直角の第1方向に往復運動するオルダム継手(8)と、前記上部フレーム(6)と共締めされる固定スクロール(1)と、固定スクロール(1)とかみ合わされるとともにオルダム継手(8)に対して前記主軸(4)の軸心と直角の第2方向に相対的に往復運動する揺動スクロール(2)とを備え、
上記オルダム継手(8)は、下側の一対のオルダムキー(802)が前記上部フレーム(6)に設けられたオルダムガイド溝(607)に摺動自在に嵌入され、上側の一対のオルダムキー(802)が前記揺動スクロール(2)に設けられたガイド溝(208)に摺動自在に嵌入されているスクロール圧縮機であって、
前記下側の一対のオルダムキー(802)は、オルダムリング(801)の下側の面に突出し、かつ該オルダムリング(801)に対して中心Or側に突出するようにずらして固着され、
前記上部フレーム(6)は、周壁部(600b)の上端面に固定スクロール固定面(612)が、底部(600a)には前記固定面(612)より低い位置に上部スラスト軸受取付座(606)が、更に前記周壁部(600b)と前記上部スラスト軸受取付座(606)の間には前記取付座(606)より低い位置にオルダムリング摺動面(608)が、それぞれ同心円状に配設されており、前記オルダムリング摺動面(608)の近傍が前記オルダム継手(8)を収納するオルダム室(605)となり、前記オルダム室(605)は、環状開口部となっており、
前記揺動スクロール(2)を支承する上部スラスト軸受(601)は、前記上部スラスト軸受取付座(606)に固定され、上側面(601a)が前記揺動スクロール(2)の下側面との摺動面となり、外周面(601f)が前記上部スラスト軸受取付座(606)外周面(606b)より外側にオーバーハング(601h)しており、
前記オルダムガイド溝(607)は、前記オルダムリング摺動面(608)上に設けられ、前記オルダムリング(801)内周側においては、前記上部スラスト軸受(601)の外周オーバーハング部(601h)の真下に前記下側の一対のオルダムキー(802)の突出部(802b)がオーバーラップし、
上側の一対のオルダムキー(802)はオルダムリング(801)の中心O_(R)を挾んだオルダムリング(801)面上の対称な位置において上側の逃し部(803)内に固着され、
オルダムリング(801)の厚さが上部スラスト軸受(601)の厚さよりも大きい、スクロール圧縮機。」

4.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア.本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明を対比すると、本件特許発明1が、「上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さ」いのに対し、引用発明は、当該事項を備えていない点で相違する。そして、当該事項については、甲第1号証に示唆もない。
そして、前記リング部(53)の厚さ(C)が前記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きくしている本件特許発明1は、更に当該事項を備えることにより、「オルダムリング(50)を図10,図11に示すようにハウジング(23)に対して斜め方向から装着することが可能になる。したがって、オルダムリング(50)を大型化しなくてよいので、機構を小型化することが可能になる。」(段落0014)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

前記「第2 2(2)ア」において検討したとおり、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2に相当するから、本件特許発明1は、訂正前の請求項2に係る発明と同一である。
そして、特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2に係る発明に関し、「また、上記記載事項1-5(当審注:前記「第3 3(1)」において摘記した記載事項ク及びケに相当)に『各オルダムキー(802)はオルダムリング(801)に対して、すべて中心RR側に突出するようにずらして固着されている。(802b)はこのようにずらすことによつて各オルダムキー(801)がオルダムリング(801)からはみ出した部分である。』と記載されており、更に上記記載事項1-5には、『またオルダムリング(801)内周側においては、スラスト軸受(601)の外周オーバーハング部(601h)の真下にオルダムキー(802)の突出部(802b)がオーバーラツプするので、オルダムキー(802)の負荷面を大きくとれる。』と記載され、第15図(c)中のオルダムキー(802)の内周側は、スラスト軸受(606a)の外周と係方向において重なっている部分があるから、一対のオルダムキー(802)の間隔は、上部フレーム(6)の「取付座(601)」の外周よりも小さくすることが示唆されている。」と主張している(特許異議申立書「3(4)イ(ア)(c)」(第18?19ページ)参照)。
引用発明は、「下側の一対のオルダムキー(802)」が本件特許発明1の、一対の「第1キー(54)」に相当し、「上部スラスト軸受(601)」が本件特許発明1の「対向部(71)」に相当するが、甲第1号証の記載、特に第3及び13図の記載からみて、下側の一対のオルダムキー(802)の間隔は、上部スラスト軸受(601)の外径よりも大きいことが理解できる。そして、下側の一対のオルダムキー(802)は、オルダム継手(8)の往復運動に伴って、その一方と他方が交互に上部スラスト軸受(601)に接近することからすれば、甲第1号証の、特許異議申立人が摘記した記載は、下側の一対のオルダムキー(802)の突出部(802b)が、同時に、上部スラスト軸受(601)の外周オーバーハング部(601h)の真下にオーバーラツプする、すなわち下側の一対のオルダムキー(802)の間隔が上部スラスト軸受(601)の外径よりも小さいことまでを意味又は示唆すると解することはできない。
さらに、甲第1号証のその他の記載をみても、下側の一対のオルダムキー(802)の間隔を上部スラスト軸受(601)の外径よりも小さくすることを示唆するものはない。
以上のとおりであるから、本件特許発明1の「上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さ」くすることに相当する事項が甲第1号証に示唆されているとはいえず、特許異議申立人の前記主張は理由がない。

イ.本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1を減縮したものであり、本件特許発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項3ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
しかしながら、本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1を減縮したものであり、本件特許発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許異議申立人の前記主張は理由がない。

第4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1,3ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1,3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して特許異議申立人一條淳がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スクロール圧縮機
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機構が固定スクロールと可動スクロールを有するスクロール圧縮機に関し、特に、可動スクロールの自転阻止機構であるオルダムリングを圧縮機構で保持する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクロール圧縮機では、ハウジングとオルダムリングの平面図である図17、そのXVIII-XVIII線断面図である図18、オルダムリングの平面図である図19、そのXX-XX線断面図である図20に示すように、一般に、可動スクロール(図示せず)の自転を規制しつつ公転を許容するために、オルダムリング(100)が用いられている。オルダムリング(100)は、一般にリング部(101)とキー(102,103)とが一体に形成されている。オルダムリング(100)には、リング部(101)のハウジング(110)側の面に一対のキー(102)が形成され、リング部(101)の可動スクロール側の面にもう一対のキー(103)が形成されている。上記の一対のキー(102)はリング部(101)のハウジング(110)側の面から面直角方向へ突出し、もう一対のキー(103)はリング部(101)の可動スクロール側の面から面直角方向へ突出している。ハウジング(110)には、リング部(101)を可動に収納する環状開口部(111)と、上記キー(102)と係合するキー溝(112)が形成されている。
【0003】
また、上記の構成を変更したものとして、特許文献1には、図21?図24に示すように、各キー(102,103)をリング部(101)の径方向外方に突出するように配置した構成が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献2には、図25?図28に示すように、オルダムリング100の二対のキー(102,103)のうちの一対のキー(102)を、リング部(101)から径方向内側へ突出するように形成し、面直角方向へは突出させないようにする構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-185462号公報
【特許文献2】特開昭63-138181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図17?図20に示す一般的なオルダムリング(100)の構造では、キー(102)とキー溝(112)との摺動面積が小さくてキー摺動面の面圧が大きくなるために、オルダムリング(100)のキー(102)の強度が不足しがちになる問題があった。
【0007】
また、特許文献1の構成では、図21に示すように、ハウジング(110)の外周部分に切り欠き(115)を形成しなければならない場合があり、ハウジング(110)の強度が弱くなる問題があった。また、キー(102,103)をリング部(101)の径方向外方に形成しているので、キー(102,103)に作用するモーメントが大きくなり、オルダムリング(100)の強度が低下する問題もあった。
【0008】
さらに、特許文献2の構成では、図25に示すように、ハウジング(110)のキー溝(112)を可動スクロール(図示せず)がハウジング(110)の表面と対向する可動スクロール対向面(120)に形成することになるので、可動スクロール対向面(120)の有効面積が小さくなり、その面圧が大きくなってしまう。また、スクロール圧縮機において可動スクロール対向面(120)にシールリングを設ける構成を採用する場合、可動スクロール対向面(120)のオルダムリング(100)よりも内径側にキー溝(112)を形成しようとしても、特に可動スクロール対向面(120)の面積が小さいとシールリングが邪魔になってキー溝(112)を形成できなくなるおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジングやオルダムリングの強度の低下を抑えるとともに、可動スクロール対向面が小さくなるのも抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、駆動軸(40)が挿通するハウジング(23)と、該ハウジング(23)に対して駆動軸(40)の軸心と直角の第1方向へ第1キー機構(51)でスライド可能に構成されるオルダムリング(50)と、上記ハウジング(23)に固定される固定スクロール(21)と、固定スクロール(21)に噛み合うとともにオルダムリング(50)に対して上記駆動軸(40)の軸心と直角の第2方向へ第2キー機構(52)でスライド可能に構成される可動スクロール(22)とを備え、上記第1キー機構(51)が、上記オルダムリング(50)に形成された第1キー(54)と、上記ハウジング(23)に形成された第1キー溝(61)により構成されたスクロール圧縮機を前提としている。
【0011】
そして、このスクロール圧縮機は、上記第1キー(54)が、オルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面(可動スクロール(22)と反対側の面))に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成され、上記ハウジング(23)が、上記固定スクロール(21)が固定されるフランジ部(23a)に、上記可動スクロール(22)が対向する可動スクロール対向面(70)を有する所定厚さの対向部(71)と、該可動スクロール対向面(70)の周囲に上記リング部(53)が動作可能に収納される環状開口部(72)とを有し、上記第1キー溝(61)が、上記対向部(71)における上記可動スクロール対向面(70)の裏面側に、上記環状開口部(72)から径方向内方へ向かって形成されている。この構成において、可動スクロール対向面(70)は、上記可動スクロール(22)と接触して対向する(摺動する)構成でもよいし、上記可動スクロール(22)と離れて対向する(摺動しない)構成でもよい。
【0012】
この第1の発明では、対向部(71)の裏面側に形成された第1キー溝(61)とオルダムリング(50)の第1キー(54)とが係合し、オルダムリング(50)の動作が行われる。この構成において、第1キー溝(61)はオルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成されているので、キーとキー溝との摺動面の面積を十分に大きな面積にすることができ、キー摺動面の面圧を小さくできる。また、第1キー(54)がオルダムリング(50)の径方向内方へ突出しているので、ハウジング(23)の外周に切り欠きを形成する必要がなく、第1キー(54)のモーメントも抑えられる。さらに、第1キー溝(61)を可動スクロール対向面(70)の裏側(対向部(71)の裏面側)に形成しているので、第1キー溝(61)がシールリングの邪魔になることもない。
【0013】
また、第1の発明では、上記第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に一対が形成され、一対の上記第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きい。
【0014】
この第1の発明では、上記の寸法関係を満たすようにしたことにより、オルダムリング(50)を図10,図11に示すようにハウジング(23)に対して斜め方向から装着する構成にすることが可能になる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、上記対向部(71)が、外径側から内径側に向かって厚さが厚くなるように、裏面が傾斜面(71a)で形成されていることを特徴としている。
【0016】
この第3の発明では、対向部(71)の裏面が傾斜面(71a)で形成されているので、ハウジング(23)に対するオルダムリング(50)の装着の際に第1キー溝(61)に第1キー(54)を入れる操作が容易になる。
【0017】
第4の発明は、第1または第3の発明において、上記第1キー溝(61)が、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された溝であることを特徴としている。
【0018】
この第4の発明では、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された第1キー溝(61)に第1キー(54)が係合し、オルダムリング(50)の動作が行われる。
【0019】
第5の発明は、第1または第3の発明において、上記第1キー溝(61)が、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の外周面に開放された溝であることを特徴としている。
【0020】
この第5の発明では、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の外周面に開放された第1キー溝(61)に第1キー(54)が係合し、オルダムリング(50)の動作が行われる。
【0021】
第6の発明は、第1または第3の発明において、上記対向部(71)が、上記ハウジング(23)の本体に固定された、該ハウジング(23)とは別の部材で構成されていることを特徴としている。
【0022】
この第6の発明では、上記ハウジング(23)の本体に別部材の対向部(71)を固定することにより第1キー溝(61)が形成され、この第1キー溝(61)に第1キー(54)が係合し、オルダムリング(50)の動作が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1キー溝(61)がオルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成されているので、第1キー(54)と第1キー溝(61)との摺動面の面積を十分に大きな面積にすることができ、キー摺動面の面圧を小さくできるから、オルダムリング(50)の第1キー(54)の強度が不足するのを防止できる。また、また、第1キー(54)がオルダムリング(50)の径方向内方へ突出しているので、ハウジング(23)の外周に切り欠きを形成する必要がなく、第1キー(54)のモーメントも抑えられるので、オルダムリング(50)の強度低下も抑えられる。さらに、第1キー溝(61)を可動スクロール対向面(70)の裏側(対向部(71)の裏面側)に形成しているので、第1キー溝(61)がシールリングの邪魔になることもなく、第1キー(54)と第1キー溝(61)が係合する構成においてシールリングを用いる構造を実現できる。
【0024】
上記第1の発明によれば、上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きくなるようにしているので、オルダムリング(50)を図10,図11に示すようにハウジング(23)に対して斜め方向から装着することが可能になる。したがって、オルダムリング(50)を大型化しなくてよいので、機構を小型化することが可能になる。
【0025】
上記第3の発明によれば、対向部(71)の裏面が傾斜面(71a)で形成されているので、ハウジング(23)に対するオルダムリング(50)の装着の際に第1キー溝(61)に第1キー(54)を入れる操作が容易になり、装着の作業性を高められる。
【0026】
上記第4の発明によれば、上記第1キー溝(61)を、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された溝にしているので、第1キー溝(61)を容易に形成することができる。
【0027】
上記第5の発明によれば、上記第1キー溝(61)を、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の外周面に開放された溝にしているので、第1キー溝(61)を容易に形成することができる。
【0028】
上記第6の発明によれば、上記ハウジング(23)の本体に別部材の対向部(71)を固定することにより第1キー溝(61)が形成されるので、第1キー溝(61)を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図2】図2は、ハウジングにオルダムリングを装着した状態の平面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線断面図である。
【図4】図4は、オルダムリングの平面図である。
【図5】図5は、図4のV-V線断面図である。
【図6】図6は、本体部の裏面側が開放された第1キー溝を有するハウジングにオルダムリングを装着した状態の平面図である。
【図7】図7は、図6のVII-VII線断面図である。
【図8】図8は、ハウジングとオルダムリングの寸法関係図である。
【図9】図9は、図8の部分拡大図である。
【図10】図10は、ハウジングにオルダムリングを装着する第1の状態を示す図である。
【図11】図11は、ハウジングにオルダムリングを装着する第2の状態を示す図である。
【図12】図12は、変形例1に係るハウジングの部分拡大断面図である。
【図13】図13は、変形例2に係るハウジングの部分拡大断面図である。
【図14】図14は、変形例3に係るハウジング及びオルダムリングの平面図である。
【図15】図15は、図14のXV-XV線断面図である。
【図16】図16は、その他の実施形態に係る圧縮機の要部断面図である。
【0030】
【図17】図17は、第1の従来例においてハウジングにオルダムリングを装着した状態の平面図である。
【図18】図18は、図17のXVIII-XVIII線断面図である。
【図19】図19は、第1の従来例のオルダムリングの平面図である。
【図20】図20は、図19のXX-XX線断面図である。
【図21】図21は、第2の従来例においてハウジングにオルダムリングを装着した状態の平面図である。
【図22】図22は、図21のXXII-XXII線断面図である。
【図23】図23は、第2の従来例のオルダムリングの平面図である。
【図24】図24は、図23のXXIV-XXIV線断面図である。
【図25】図25は、第3の従来例においてハウジングにオルダムリングを装着した状態の平面図である。
【図26】図26は、図25のXXVI-XXVI線断面図である。
【図27】図27は、第3の従来例のオルダムリングの平面図である。
【図28】図28は、図27のXXVIII-XXVIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
本実施形態のスクロール圧縮機は、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置の冷媒回路に設けられ、蒸発器から吸入した低圧の冷媒を圧縮して凝縮器へ吐出するものである。
【0033】
図1に示すように、上記スクロール圧縮機(1)は、いわゆる全密閉型に構成されている。このスクロール圧縮機(1)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(10)を備えている。ケーシング(10)は、縦長円筒部材である胴部(11)と、胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。
【0034】
このケーシング(10)内には、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する電動機(45)とが収納されている。電動機(45)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、回転軸である駆動軸(40)を介して圧縮機構(20)に連結されている。この電動機(45)には、インバータ制御により回転速度を可変に調整することが可能なブラシレスDCモータが用いられている。
【0035】
上記ケーシング(10)の頂部である上部鏡板(12)には、吐出管(15)が貫通して取り付けられている。この吐出管(15)は、終端(図の下端)が圧縮機構(20)に接続されている。上記ケーシング(10)の胴部(11)には、吸入管(14)が貫通して取り付けられている。この吸入管(14)は、終端(図の右端)がケーシング(10)内の圧縮機構(20)と電動機(45)の間に開口している。
【0036】
上記駆動軸(40)は、ケーシング(10)の上下方向の中心線上に配置されている。この駆動軸(40)は、主軸部(41)と偏心部(42)とを備えたクランク軸である。上記偏心部(42)は、主軸部(41)よりも小径に形成され、主軸部(41)の上端面に形成されている。そして、この偏心部(42)は、主軸部(41)の軸心に対して所定寸法だけ偏心しており、偏心ピンを構成している。
【0037】
上記ケーシング(10)の胴部(11)内には、その下端付近に、下部軸受部材(48)が固定されている。この下部軸受部材(48)は、滑り軸受(48a)を介して駆動軸(40)の主軸部(41)の下端部を回転自在に支持している。
【0038】
なお、上記駆動軸(40)の内部には、上下方向へ延びる給油通路(44)が形成されている。また、主軸部(41)の下端部には、給油ポンプ(43)が設けられている。この給油ポンプ(43)によってケーシング(10)の底部から冷凍機油が吸い上げられ、その冷凍機油は、駆動軸(40)の給油通路(44)を通って圧縮機構(20)の摺動部や駆動軸(40)の軸受部へ供給される。
【0039】
上記電動機(45)は、ステータ(46)とロータ(47)とによって構成されている。ステータ(46)は、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(47)は、駆動軸(40)の主軸部(41)に連結され、駆動軸(40)を回転駆動する。
【0040】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)と可動スクロール(22)とを備えると共に、固定スクロール(21)を固定支持するハウジング(23)を備えている。固定スクロール(21)と可動スクロール(22)は、互いに噛み合う渦巻き状のラップ(21b,22b)を鏡板(21a,22a)上に備えている。そして、上記圧縮機構(20)は、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して偏心回転運動をするように構成されている。
【0041】
上記ハウジング(23)は、本体部(フランジ部)(23a)と軸受部(23b)とによって構成されている。これら本体部(23a)および軸受部(23b)は、上下に連続して形成され、本体部(23a)がケーシング(10)の胴部(11)に嵌合して接合されている。軸受部(23b)は、本体部(23a)よりも小径に形成され、本体部(23a)から下方へ突出している。この軸受部(23b)は、滑り軸受(23c)を介して駆動軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持している。
【0042】
上記固定スクロール(21)は、固定側鏡板(21a)と、固定側ラップ(21b)と、縁部(21c)とを備えている。上記固定側鏡板(21a)は略円板状に形成されている。上記固定側ラップ(21b)は、固定側鏡板(21a)の下面の中央部分寄りに立設され、該固定側鏡板(21a)に一体形成されている。固定側ラップ(21b)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。上記縁部(21c)は、固定側鏡板(21a)の外周縁部から下方へ向かって延びる壁状の部分であり、下面がハウジング(23)の本体部(23a)の上面に重なる状態で該ハウジング(23)に固定されている。
【0043】
上記可動スクロール(22)は、可動側鏡板(22a)と、可動側ラップ(22b)と、ボス部(22c)とを備えている。上記可動側鏡板(22a)は略円板状に形成されている。上記可動側ラップ(22b)は、可動側鏡板(22a)の上面に立設され、該可動側鏡板(22a)に一体形成されている。この可動側ラップ(22b)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成され、固定スクロール(21)の固定側ラップ(21b)に噛合するように構成されている。
【0044】
上記固定側鏡板(21a)の上端部には凹陥部(21g)が形成され、該固定側鏡板(21a)の上面には、上記凹陥部(21g)を覆う吐出カバー(27)が取り付けられている。そして、この凹陥部(21g)が吐出カバー(27)で覆われた空間が、吐出管(15)に連通する吐出室(28)として構成されている。また、固定側鏡板(21a)の中央下部には、吐出室(28)に連通する吐出ポート(26)が形成され、吐出ポート(26)には、固定側ラップ(21b)と可動側ラップ(22b)の間に形成される圧縮室が連通している。なお、本実施形態では、ケーシング(10)内は、ハウジング(23)の下方の空間(16)と上方の空間(17)の両方が、低圧冷媒で満たされる低圧空間になっている。
【0045】
上記ボス部(22c)は、可動側鏡板(22a)の下面から下方へ延設され、該可動側鏡板(22a)に一体形成されている。このボス部(22c)には、滑り軸受(22d)を介して駆動軸(40)の偏心部(42)が挿入されている。このため、上記駆動軸(40)が回転すると、可動スクロール(22)が主軸部(41)の軸心を中心として公転する。この可動スクロール(22)の公転半径は、偏心部(42)の偏心量、すなわち主軸部(41)の軸心から偏心部(42)の軸心までの寸法と同じである。
【0046】
上記可動側鏡板(22a)はハウジング(23)の上端部に設けられた第1凹部(23d)内に位置し、上記ボス部(22c)はハウジング(23)の本体部(23a)に設けられた第2凹部(クランク室)(23e)内に位置している。なお、上記可動側鏡板(22a)とハウジング(23)との間には、可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダムリング(50)が配設されている。
【0047】
図2はハウジング(23)にオルダムリング(50)を装着した状態の平面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4はオルダムリング(50)の平面図、図5は図4のV-V線断面図である。オルダムリング(50)は、駆動軸(40)が挿通するハウジング(23)に対して駆動軸(40)の軸心と直角の第1方向へ第1キー機構(51)でスライド可能に構成されている。また、上記可動スクロール(22)は、上記ハウジング(23)に固定された固定スクロール(21)に噛み合うとともに、オルダムリング(50)に対して上記駆動軸(40)の軸心と直角の第2方向へ第2キー機構(52)でスライド可能に構成されている。
【0048】
上記オルダムリング(50)は、リング部(53)を有している。また、上記第1キー機構(51)は、上記リング部(53)に形成された第1キー(54)と、上記ハウジング(23)に形成された第1キー溝(61)により構成されている。上記第2キー機構(52)は、上記リング部(53)に形成された第2キー(55)と、上記可動スクロール(22)に形成された第2キー溝(62)により構成されている。
【0049】
そして、第1キー溝(61)内での第1キー(54)の往復運動と第2キー溝(62)内での第2キー(55)の往復運動が合成されることにより、第2キー(55)に係合した可動スクロール(22)が、ハウジング(23)に固定された固定スクロール(21)に対して公転をせずに自転する。
【0050】
図2?図5に示すように、上記第1キー(54)は、オルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面(可動スクロール(22)と反対側の面)に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成されている。上記ハウジング(23)は、上記固定スクロール(21)が固定されるフランジ部である本体部(23a)に、上記可動スクロール(22)が接触して対向する(摺動する)可動スクロール対向面(70)を有する所定厚さの対向部(71)と、該可動スクロール対向面(70)の周囲に形成されて上記リング部(53)が動作可能に収納される環状開口部(72)とを有している。そして、上記第1キー溝(61)は、上記対向部(71)の裏面(71a)(上記可動スクロール対向面(70)と反対側の面)に、上記環状開口部(72)から径方向内方へ向かって形成されている。
【0051】
なお、上記第1キー溝(61)は、図6,図7に示すように、上記ハウジング(23)のフランジ部である本体部(23a)の裏面側が開放された溝にすることが好ましい。以下、本実施形態では、第1キー溝(61)が図6,図7に示すように本体部(23a)の裏面側が開放された溝であるものとする。図7において、可動スクロール対向面(70)に形成されている溝は、可動スクロール対向面(70)にシールリングを装着する場合に設けられるシールリング装着溝(75)である。
【0052】
上記一対の第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に形成されている。また、上記一対の第2キー(55)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に、第1キー(54)とは直角の位置関係となるように形成されている。
【0053】
本実施形態では、図8,図9において、上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きい。また、上記対向部(71)は、外径側から内径側に向かって厚さが厚くなるように、裏面が傾斜面(71a)で形成されている。
【0054】
このようにすると、図10に示すようにオルダムリング(50)を傾けながら一方の第1キー(54)を環状開口部(72)から一方の第1キー溝(61)に挿入し、図11に示すように第1キー(51)を対向面(71)の裏面(71a)と係合させた状態にして、他方の第1キー(54)を他方の第1キー溝(61)に挿入することにより、オルダムリング(50)をハウジング(23)に装着する構成を実現できる。
【0055】
-運転動作-
次に、上述したスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0056】
まず、上記電動機(45)を駆動すると、駆動軸(40)が回転し、可動スクロール(22)(22)が固定スクロール(21)に対して公転運動を行う。その際、固定スクロール(21)は、オルダムリング(50)によって自転が阻止される。
【0057】
上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、圧縮室(25a,25b)の容積が周期的に増減を繰り返す。上記圧縮室(25a,25b)では、吸入ポート(29)に連通した部分の容積が増大するときに、冷媒回路の冷媒が吸入管(14)から吸入経路(図示せず)と吸入ポート(29)を通って圧縮室(25a,25b)に吸い込まれ、吸入側が閉じ切られた部分の容積が減少するときに冷媒が圧縮された後、吐出ポート(26)から吐出室(28)に吐出される。吐出室(28)の冷媒は、吐出管(15)から冷媒回路の凝縮器に供給され、冷媒回路を循環した後、再びスクロール圧縮機(1)に吸入される。
【0058】
次に、本実施形態のオルダムリング(50)の作用について説明する。
【0059】
本実施形態では、対向面(71)の裏面側に形成された第1キー溝(61)とオルダムリング(50)の第1キー(54)とが係合し、オルダムリング(50)の動作が行われる。その際、第1キー溝(61)はオルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成されているので、第1キー(54)と第1キー溝(61)との摺動面の面積を十分に大きな面積にすることができ、キー摺動面の面圧を小さくできる。また、第1キー(54)がオルダムリング(50)の径方向内方へ突出しているので、ハウジング(23)の外周に切り欠き(図20参照)を形成する必要がないし、第1キー(54)のモーメントも抑えられる。さらに、第1キー溝(61)を可動スクロール対向面(70)の裏側(対向部(71)の裏面側)に形成しているので、シールリングを用いる場合であっても、第1キー溝(61)がシールリング(図示せず)の邪魔になることもない。
【0060】
また、本実施形態では、オルダムリング(50)上の180°相対する位置に一対の上記第1キー(54)を形成し、上記一対の第1キー(50)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きい寸法関係を満たすようにしているので、オルダムリング(50)を図10,図11に示すようにハウジング(23)に対して斜め方向から簡単に装着する構成を実現できる。
【0061】
また、上記対向部(71)の裏面が傾斜面(71a)で形成されているので、ハウジング(23)に対するオルダムリング(50)の装着の際に第1キー溝(61)に第1キー(54)を入れる作業を容易に行える。そして、本実施形態では、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された第1キー溝(61)に第1キー(54)が係合し、オルダムリングの動作が行われる。
【0062】
-実施形態の効果-
本実施形態によれば、第1キー溝(61)がオルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成されているので、第1キー(54)と第1キー溝(61)との摺動面の面積を十分に大きな面積にすることができ、キー摺動面の面圧を小さくできる。したがって、オルダムリング(50)の第1キー(54)の強度が不足するのを防止できる。
【0063】
また、第1キー(54)がオルダムリング(50)の径方向内方へ突出しているので、ハウジング(23)の外周に切り欠きを形成する必要がなく、第1キー(54)のモーメントも抑えられる。したがって、オルダムリング(50)の強度低下も抑えられる。
【0064】
さらに、第1キー溝(61)を可動スクロール対向面(70)の裏側(対向部(71)の裏面側)に形成しているので、第1キー溝(61)がシールリング(図示せず)の邪魔になることもない。したがって、第1キー(54)と第1キー溝(61)が係合する構成においてシールリング(50)を用いる構造を実現できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きくなるようにしているので、オルダムリング(50)を図10,図11に示すようにハウジング(23)に対して斜め方向から装着することが可能になる。したがって、オルダムリング(50)を大型化しなくてよいので、機構を小型化することが可能になる。
【0066】
また、本実施形態によれば、対向部(71)の裏面が傾斜面(71a)で形成されているので、ハウジング(23)に対するオルダムリング(50)の装着の際に第1キー溝(61)に第1キー(54)を入れる操作が容易になり、装着の作業性を高められる。
【0067】
また、本実施形態によれば、上記第1キー溝(61)を、上記ハウジング(23)の本体部(フランジ部)(23a)の裏面に開放された溝にしているので、第1キー溝(61)を容易に形成することができる。
【0068】
-実施形態の変形例-
(変形例1)
上記対向部(71)は、図12に示すように、厚さが一定の板状に形成してもよい。このように構成しても、上記ハウジング(23)の本体部(23a)に第1キー溝(61)を容易に形成することができ、第1キー溝(61)に第1キー(54)を容易に装着することができる。
【0069】
(変形例2)
上記対向部(71)は、図13に示すように、上記ハウジング(23)の本体部(23a)に固定された別部材で構成してもよい。このように構成しても、上記ハウジング(23)の本体部(23a)に第1キー溝(61)を容易に形成することができ、第1キー溝(61)に第1キー(54)を容易に装着することができる。
【0070】
(変形例3)
上記第1キー溝(61)は、図14,図15に示すように、上記ハウジング(23)の本体部(フランジ部)(23a)の外周面に開放された溝にしてもよい。
【0071】
このように構成しても、上記ハウジング(23)の本体部(フランジ部)(23a)の外周面に開放された溝により、上記第1キー溝(61)を容易に形成することができる。
【0072】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0073】
例えば、上記実施形態では、上記一対の第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きくなるように寸法設定しているが、必ずしもこのように寸法設定しなくてもよい。
【0074】
また、上記実施形態の変形例3では、上記第1キー溝(61)に油が溜まって第1キー(54)のスムーズな動作を妨げることが考えられるため、ハウジング(23)に第1キー溝(61)から油を抜くための油抜き孔を形成するとよい。
【0075】
また、上記実施形態では、上記ハウジング(23)の対向部(71)に形成されている可動スクロール対向面(70)が、上記可動スクロール(22)の可動側鏡板(22a)に接触して対向し、該可動側鏡板(22a)と摺動する面にしている。しかしながら、図16に示すように、シールリング(76)をシールリング装着溝(75)に装着することにより、上記可動スクロール対向面(70)が、上記可動スクロール(22)の可動側鏡板(22a)と離れて対向し、該可動側鏡板(22a)と摺動しない面にしてもよい。可動スクロール対向面(70)が可動スクロール(22)と摺動しない面である場合でも、本発明の構成を採用することにより、第1キー溝(61)がシールリング(図示せず)の邪魔になることはない。
【0076】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、圧縮機構が固定スクロールと可動スクロールを有するスクロール圧縮機において、可動スクロールの自転阻止機構であるオルダムリングを圧縮機構で保持する構造について有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 スクロール圧縮機
21 固定スクロール
22 可動スクロール
23 ハウジング
23a フランジ部(本体部)
40 駆動軸
50 オルダムリング
51 第1キー機構
52 第2キー機構
53 リング部
54 第1キー
61 第1キー溝
70 可動スクロール対向面
71 対向部
71a 傾斜面
72 環状開口部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(40)が挿通するハウジング(23)と、該ハウジング(23)に対して駆動軸(40)の軸心と直角の第1方向へ第1キー機構(51)でスライド可能に構成されるオルダムリング(50)と、上記ハウジング(23)に固定される固定スクロール(21)と、固定スクロール(21)に噛み合うとともにオルダムリング(50)に対して上記駆動軸(40)の軸心と直角の第2方向へ第2キー機構(52)でスライド可能に構成される可動スクロール(22)とを備え、
上記第1キー機構(51)は、上記オルダムリング(50)に形成された第1キー(54)と、上記ハウジング(23)に形成された第1キー溝(61)により構成されたスクロール圧縮機であって、
上記第1キー(54)は、オルダムリング(50)のリング部(53)におけるハウジング(23)側の面に突出し、かつ該リング部(53)の径方向内方へ突出して形成され、
上記ハウジング(23)は、上記固定スクロール(21)が固定されるフランジ部(23a)に、上記可動スクロール(22)が対向する可動スクロール対向面(70)を有する所定厚さの対向部(71)と、該可動スクロール対向面(70)の周囲に上記リング部(53)が動作可能に収納される環状開口部(72)とを有し、
上記第1キー溝(61)は、上記対向部(71)における上記可動スクロール対向面(70)の裏面側に、上記環状開口部(72)から径方向内方へ向かって形成され、
上記第1キー(54)はオルダムリング(50)上の180°相対する位置に一対が形成され、
一対の上記第1キー(54)の間隔(A)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の外径(B)よりも小さく、
上記リング部(53)の厚さ(C)が上記ハウジング(23)の対向部(71)の厚さ(D)よりも大きいことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1において、
上記対向部(71)は、外径側から内径側に向かって厚さが厚くなるように、裏面が傾斜面(71a)で形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
請求項1または3において、
上記第1キー溝(61)は、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の裏面に開放された溝であることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1または3において、
上記第1キー溝(61)は、上記ハウジング(23)のフランジ部(23a)の外周面に開放された溝であることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1または3において、
上記対向部(71)は、上記ハウジング(23)の本体に固定された、該ハウジング(23)とは別の部材で構成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-29 
出願番号 特願2015-256983(P2015-256983)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F04C)
P 1 651・ 113- YAA (F04C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原田 愛子松浦 久夫  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 久保 竜一
中川 真一
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6098706号(P6098706)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 スクロール圧縮機  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
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