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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F22B
審判 一部申し立て 2項進歩性  F22B
管理番号 1342015
異議申立番号 異議2018-700315  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-17 
確定日 2018-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6213215号発明「ボイラシステム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6213215号の請求項1,2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6213215号の請求項1,2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,概ね,次のとおりである。すなわち,平成25年12月19日に出願され,平成29年9月29日に特許権の設定登録がされ,平成29年10月18日に特許掲載公報が発行されたところ,これに対し,平成30年4月17日に特許異議申立人高橋勇より,特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1,2に係る発明(以下,本件特許の請求項1,2に係る発明を,それぞれ,「本件発明1」,「本件発明2」という。)は,特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
【請求項1】
純水供給源と,
上記純水供給源から純水が供給され,この純水をボイラ給水として貯留する大気開放型給水タンクと,
揮発性アミンを含む第1薬剤を上記大気開放型給水タンクからのボイラ給水に注入する第1薬剤注入装置と,
上記第1薬剤が注入されたボイラ給水が供給されるボイラと,
上記ボイラで発生させた蒸気が供給される負荷装置と,
上記負荷装置で利用された蒸気の凝縮水を上記大気開放型給水タンクに案内する凝縮水案内流路と,
上記ボイラから上記負荷装置に供給される蒸気に,揮発性アミンを含む第2薬剤を注入する第2薬剤注入装置と
を備え,
上記第1薬剤が含む揮発性アミンとして,上記ボイラ給水中に溜まり易い低分配比の揮発性アミンが選択され,かつ,上記第2薬剤が含む揮発性アミンとして,蒸気-凝縮水系統の配管長に合わせて上記低分配比とは異なる分配比の揮発性アミンが選択されていることを特徴とするボイラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラシステムにおいて,
上記ボイラ内のボイラ水のpH値が9.0?10.3の範囲内に入るように,上記第1薬剤注入装置を制御する制御装置を備えることを特徴とするボイラシステム。

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は,甲第1号証?甲第4号証(以下,証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し,本件特許は,特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定に違反してなされたものであるから,取り消すべき旨主張している。
(証拠方法)
甲1:特開2008-249283号公報
甲2:特開2001-140086号公報
甲3:島弘志編,“JIS B 8223:2006 ボイラの給水及びボイラ水の水質”,財団法人日本規格協会,平成18年10月20日,1刷,p.1,2,6,17
甲4:特開2012-21215号公報

第4 特許異議申立ての理由についての判断
1 甲1について
(1) 甲1に記載された事項
・「【請求項1】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し,前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を蒸気供給経路に連絡する分配装置で分配しながら複数の負荷装置へ供給して利用するとともに,複数の前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を複数の前記負荷装置のそれぞれから延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において,前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって,
前記給水経路および前記蒸気供給経路のうちの少なくとも一つに対し,炭酸ガスを中和可能なアミン化合物を連続的に供給する工程Aと,
複数の前記負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定する工程Bとを含み,
工程Bにおいて測定される個別のpH値がいずれもアルカリ性領域になるよう,工程Aにおいて前記アミン化合物の供給量を制御する,
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。」
・「【0001】
本発明は,蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法,特に,蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し,各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において,復水経路の腐食を抑制するための方法に関する。」
・「【0006】
ところが,複数の負荷装置のそれぞれは,設置環境が異なる。例えば,分配装置の近傍に設置された負荷装置もあれば,分配装置から遠く離れた場所に設置された負荷装置もある。この場合,分配装置の近傍に設置された負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されるが,分配装置から離れた負荷装置へ供給される蒸気には十分な量のアミン化合物が供給されない可能性がある。この結果,分配装置の近傍の負荷装置からの復水配管は腐食が効果的に抑制され得るが,分配装置から離れた負荷装置からの復水配管は腐食が抑制されにくいという不具合が生じる。」
・「【0008】
本発明の目的は,蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し,各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において,復水経路全体の腐食を効果的に抑制することにある。」
・「【0017】
本発明に係る蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法は,複数の負荷装置のそれぞれからの復水のpH値を個別に測定し,この結果に基づいて,炭酸ガスを中和可能なアミン化合物の供給量を制御するか,或いは,アミン化合物の種類を選択しているので,復水経路の全体について,炭酸ガスの影響による腐食を効果的に抑制することができる。」
・「【0018】
実施の形態1
図1を参照して,本発明の実施の一形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置を説明する。図において,蒸気ボイラ装置1は,給水装置20,蒸気ボイラ30,負荷装置群40,蒸気供給装置50,復水経路60,薬剤注入装置70および制御装置80を主に備えている。
【0019】
給水装置20は,蒸気ボイラ30へボイラ給水を供給するためのものであり,補給水の注水路21,注水路21からの補給水を貯留するための給水タンク22および給水タンク22に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ供給するための給水経路23を主に備えている。注水路21は,水道水,工業用水または地下水などの原水を補給水として供給するためのものであり,通常,原水に含まれる硬度分,すなわちカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをナトリウムイオンに変換して原水を軟化水にするための軟水化装置(図示せず)と,軟水化された原水に含まれる溶存酸素を除去するための脱酸素装置(図示せず)とを備えている。給水経路23は,給水タンク22内に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ30へ向けて送り出すための給水ポンプ24を有している。
【0020】
蒸気ボイラ30は,給水装置20から供給されるボイラ給水を加熱して蒸気を発生するためのものであり,例えば,貫流ボイラである。
【0021】
負荷装置群40は,熱交換器,蒸気釜,リボイラ若しくはオートクレーブ等の蒸気使用設備である3台の負荷装置40a,40b,40cからなる。負荷装置40a,40b,40cは,全てが同種のものであってもよいし,種類の異なるものであってもよい。
【0022】
蒸気供給装置50は,蒸気ボイラ30で発生した蒸気を負荷装置群40へ供給するためのものであり,蒸気ボイラ30から延びる蒸気供給経路51,この蒸気供給経路51に連絡している分配装置52および分配装置52から延びる三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cを主に備えている。分配装置52は,蒸気供給経路51からの蒸気を蓄え,この蒸気を三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cへ分配するためのものである。また,三本の蒸気供給分岐管53a,53b,53cは,それぞれ,負荷装置40a,40b,40cへ個別に連絡している。
【0023】
復水経路60は,負荷装置40a,40b,40cにおいて利用された蒸気が凝縮して得られる凝縮水(復水)を給水タンク22へ回収するためのものであり,負荷装置40a,40b,40cのそれぞれから延びる支管61a,61b,61cと,支管61a,61b,61cが合流して一体化された本管62とを主に備えている。各支管61a,61b,61cは,それぞれ,蒸気と復水とを分離するためのスチームトラップ63a,63b,63cと,スチームトラップ63a,63b,63cで分離された復水のpH値を測定するためのpHセンサー64a,64b,64cとを備えている。本管62は,給水タンク22と連絡している。
【0024】
薬剤注入装置70は,蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり,薬剤を貯留するための薬剤タンク71と,薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と,供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は,薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり,流量制御が可能なものである。
【0025】
ここで用いられる薬剤は,後述する炭酸ガスの影響による復水経路60の腐食を抑制するための復水処理剤(腐食抑制剤)であり,炭酸ガスを中和可能なアミン化合物,例えば,モルホリン,シクロヘキシルアミン,ピペリジン,メトキシプロピルアミン,2-アミノ-2-メチルプロパノール,ジエタノールアミンおよびアミノプロパノールやアミノエタノール等のアルカノールアミンなどの揮発性のアミン化合物,特に,水溶性のアミン化合物である。復水処理剤は,これらのアミン化合物の二種以上を適宜混合したものであってもよい。」
・「【0054】
実施の形態2
本発明の他の実施の形態に係る腐食抑制方法を実施可能な蒸気ボイラ装置10を図3に示す。図3において,蒸気ボイラ装置10は,薬剤注入装置70および制御装置80のみが実施の形態1に係る蒸気ボイラ装置1と異なっている。したがって,図3において,図1と同じ部位には同じ符号を付している。
【0055】
この蒸気ボイラ装置10において,薬剤注入装置70は,二台の薬剤注入装置,すなわち,第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備えている。第一薬剤注入装置70aおよび第二薬剤注入装置70bは,いずれも,蒸気ボイラ30からの蒸気中へ薬剤を供給するためのものであり,薬剤を貯留するための薬剤タンク71と,薬剤タンク71から蒸気供給経路51へ延びる供給路72と,供給路72に設けられた供給ポンプ73とを主に有している。供給ポンプ73は,薬剤タンク71に貯留された薬剤を供給路72を通じて蒸気供給経路51へ送り出すものであり,流量制御が可能なものである。
【0056】
ここで,第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71と第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71とには,互いに分配比が異なるアミン化合物が貯留されている。より具体的には,第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71には,第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71に貯留されているアミン化合物よりも分配比が大きなアミン化合物が貯留されている。
【0057】
ここで,分配比は,気相(すなわち蒸気)中のアミン濃度(A)と液相(すなわち復水)中のアミン濃度(B)との比(A/B)を意味する。アミン化合物は,分配比が大きいもの程気相へ移行しやすく,液相に溶解しにくい傾向がある。アミン化合物の分配比は,蒸気の圧力により変動するが,同一の圧力条件の下においては,アミン化合物の種類による分配比の相対的な大小関係は変動しない。復水処理剤として利用される主なアミン化合物の分配比は,例えば表1の通りである。表1に示した分配比は,蒸気の圧力が1.03MPaのときのものである。
【0058】
【表1】

【0059】
この実施の形態では,例として,第一薬剤注入装置70aの薬剤タンク71にモルホリンを貯留し,第二薬剤注入装置70bの薬剤タンク71にシクロヘキシルアミンを貯留しているものとする。
・・・
【0062】
そして,この実施の形態では,支管61a,61b,61cのそれぞれにおいて生成した復水のpH値がいずれもアルカリ性領域,すなわち,7を超えるpH値になるよう,薬剤注入装置70から蒸気供給経路51へ供給する復水処理剤の種類を選択する。例えば,第一薬剤注入装置70aからモルホリンを供給しながら運転している場合において,支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合(すなわち,pHが7以下の場合),制御装置80により第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を停止し,第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を作動させる。これにより,蒸気供給経路51へは,モルホリンよりも分配比が大きなシクロヘキシルアミンが復水処理剤として供給される。これにより,支管61a,61b,61cの全てに炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され易くなるため,復水経路60は,支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。
【0063】
一方,第二薬剤注入装置70bからシクロヘキシルアミンを供給しながら運転している場合において,支管61a,61b,61cにおいて生成した全ての復水のpH値が十分なアルカリ性領域にあるときは,制御装置80により第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を停止し,かつ,第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を作動させて,蒸気供給経路51へシクロヘキシルアミンよりも分配比が小さなモルホリンを復水処理剤として供給することもできる。」
・「【0074】
(3)上述の各実施の形態においては,蒸気供給経路51へアミン化合物を供給しているが,給水経路23を通じて蒸気ボイラ30へ流れるボイラ給水へアミン化合物を供給するように変更した場合も本発明を同様に実施することができる。」
(2) 以上の記載からすると,甲1には特に実施の形態2(図3)に関し,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「軟水化装置及び脱酸素装置を備えた注水路21と,
上記注水路21から補給水が供給され,この補給水をボイラ給水として貯留する給水タンク22と,
上記ボイラ給水が供給される蒸気ボイラ30と,
上記蒸気ボイラ30で発生させた蒸気が供給される負荷装置群40と,
上記負荷装置群40で利用された蒸気の凝縮水を上記給水タンク22へ回収する復水経路60と,
上記蒸気ボイラ30から上記負荷装置群40に供給される蒸気に,又は,上記給水タンク22から上記蒸気ボイラ30に供給されるボイラ給水に,揮発性のアミン化合物である薬剤を注入する,第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備える薬剤注入装置70と
を備え,
上記第二薬剤注入装置70bが注入する薬剤として,上記第一薬剤注入装置70aが注入する薬剤よりも分配比が大きなアミン化合物が選択されている蒸気ボイラ装置10。」

2 甲2?4について
(1) 甲2に記載された事項
・「【請求項1】 N,N,-ジアルキルヒドロキシルアミン及びメチルアルキルオキシムを含むことを特徴とするボイラ水循環系用腐蝕抑制剤。
・・・
【請求項4】 更に,1種以上の中和性アミンを含む請求項1?3のいずれかに記載のボイラ水循環系用腐蝕抑制剤。
【請求項5】 ボイラ水循環系に,請求項1?4のいずれかに記載のボイラ水循環系用腐蝕抑制剤を添加することを特徴とする,ボイラ水循環系の腐蝕抑制方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,水層部,気層部及び気水境界面を含むボイラ本体,並びに,給水配管,加熱器,蒸気配管,蒸気凝縮器,復水回収タンクなどから構成される一連のボイラ水循環系において,酸素を除去すると共に金属表面に不動態被膜を形成することによって,金属表面の腐蝕を抑制する方法及び腐蝕抑制剤に関する。」
・「【0014】本発明にかかる腐蝕抑制剤は,シクロヘキシルアミン,ジエチルエタノールアミン,モノエタノールアミン,モルフォリンなどの中和性アミン類;・・・など,及びこれらの混合物を含む他のボイラ処理剤と併用して使用することができる。特に,中和性アミン類を本発明にかかる腐蝕抑制剤に加えることが好ましい。」
・「【0015】本発明にかかる腐蝕抑制剤は,ボイラ水循環系の任意の箇所に投入することによって,ボイラ水循環系の腐蝕抑制に用いることができる。」
・「【0020】図1に示すボイラ水循環系試験装置を用いて腐蝕抑制剤の腐蝕抑制効果に関して評価した。試験装置は,系全体に水を循環させるために使用される給水ポンプ(1),給水ポンプと連動して,薬液タンク(3)中に配置された腐蝕抑制剤を循環水中に添加するために用いられる薬注ポンプ(2),給水を80℃まで加熱する給水加熱器(4),ボイラ本体(5),ボイラ缶水の濃縮を調整するためにその一部を排出するのに用いられる自動ブロー装置(6),ボイラで発生した蒸気を冷却して水に戻す復水冷却器(7),復水を溜める復水タンク(8),及びブローによって排出された分の水を補給する給水タンク(9)により構成されている。・・・なお,復水タンク(8)の上部は大気開放されており,タンク内及び直近の配管内には空気が存在している。」
(2) 甲3に記載された事項
・「o) 揮発性物質処理 ボイラ水又は給水のpHの調節にアンモニア又は揮発性のアミンを用い,溶存酸素の除去にはヒドラジンを用い,揮発性物質だけで処理する方法。」(2頁)
・「

」(6頁)
(3) 甲4に記載された事項
・「【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミン化合物を含むことを特徴とするボイラ用防食剤。
NH_(2)-(CH_(2))_(m)-O-(CH_(2))_(n)-OH (1)
(式中,m及びnは,それぞれ独立に1?3の整数を示す。)
・・・
【請求項5】
さらに,中和性アミン及び/又はアンモニアを添加してなる,請求項1?4のいずれかに記載のボイラ用防食剤。」
・「【0001】
本発明は,ボイラ用防食剤に関し,詳しくは,主として過熱器や蒸気タービンを有するボイラに適した防食剤に関する。」
・「【0015】
・・・また,復水系の防食を目的として,所望によりアンモニア及び/又は中和性アミンを添加することができる。
【0016】
<中和性アミン>
中和性アミンとしては,例えば,モノエタノールアミン(MEA),シクロへキシルアミン(CHA),モルホリン(MOR),ジエチルエタノールアミン(DEEA),モノイソプロパノールアミン(MIPA),3-メトキシプロピルアミン(MOPA),2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)等が挙げられる。」
・「【0022】
実験2
試験用テストボイラに,純水(イオン変換水)を溶存酸素濃度0.010 mg/Lに脱気して補給しながら,圧力11MPa,ブロー率1%で復水回収を行わずに運転した。ここに比較例として,モノエタノールアミン(MEA),MIPA,MDEA,3-メトキシプロピルアミン(MOPA),を各々1.5mg/Lを添加しながら運転し,ボイラ水のpHを値が安定したところで,測定を実施した(比較例3?6)。次に,実施例として,化合物(A)又は(B)を1.5 mg/L添加して運転し,ボイラ水のpHを値が安定したところで測定した(実施例2?3)。結果を表2に示す。
・・・
【0023】
【表2】



3 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の「注水路21」は「軟水化装置及び脱酸素装置を備えた」ものであるから,本件発明1の「純水供給源」に相当し,甲1発明の「給水タンク22」は,本件発明1の「大気開放型給水タンク」と,「給水タンク」である点で共通する。
また,甲1発明の「蒸気ボイラ30」,「負荷装置群40」,「復水経路60」,「蒸気ボイラ装置10」は,それぞれ,本件発明1の「ボイラ」,「負荷装置」,「凝縮水案内流路」,「ボイラシステム」に相当する。
そして,甲1発明の「薬剤注入装置70」は「揮発性のアミン化合物である薬剤を注入する」ものであるから,甲1発明は,本件発明1と,揮発性アミンを含む薬剤を注入する薬剤注入装置を備える点で共通する。
そうすると,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「純水供給源と,
上記純水供給源から純水が供給され,この純水をボイラ給水として貯留する給水タンクと,
ボイラ給水が供給されるボイラと,
上記ボイラで発生させた蒸気が供給される負荷装置と,
上記負荷装置で利用された蒸気の凝縮水を上記給水タンクに案内する凝縮水案内流路と,
揮発性アミンを含む薬剤を注入する薬剤注入装置と
を備えているボイラシステム。」
(相違点1)
本件発明1は,「給水タンク」が「大気開放型給水タンク」であるのに対し,甲1発明ではその点が明らかでない点
(相違点2)
本件発明1は,「薬剤注入装置」として,「揮発性アミンを含む第1薬剤を上記大気開放型給水タンクからのボイラ給水に注入する第1薬剤注入装置」,「上記ボイラから上記負荷装置に供給される蒸気に,揮発性アミンを含む第2薬剤を注入する第2薬剤注入装置」を備え,「上記第1薬剤が含む揮発性アミンとして,上記ボイラ給水中に溜まり易い低分配比の揮発性アミンが選択され,かつ,上記第2薬剤が含む揮発性アミンとして,蒸気-凝縮水系統の配管長に合わせて上記低分配比とは異なる分配比の揮発性アミンが選択されている」のに対し,甲1発明は,「上記蒸気ボイラ30から上記負荷装置群40に供給される蒸気に,又は,上記給水タンク22から上記蒸気ボイラ30に供給されるボイラ給水に,揮発性のアミン化合物である薬剤を注入する,第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備える薬剤注入装置70」を備え,「上記第二薬剤注入装置70bが注入する薬剤として,上記第一薬剤注入装置70aが注入する薬剤よりも分配比が大きなアミン化合物が選択されている」点
(2) 判断
ア 本件発明1は,ボイラシステムに相違点1に係る「大気開放型給水タンク」を備えることを前提に,「大気開放型給水タンクに供給されるボイラ給水に対して揮発性アミンを含む薬剤を注入した場合,・・・ボイラ給水が上記給水タンク内に滞留しているときに,揮発性アミンの多くが水面から大気中に揮発してしまうというデメリットがある。その結果,上記大気開放型給水タンクからボイラに供給されるボイラ給水は,揮発性アミンの濃度が低くなってしまう。したがって,上記大気開放型給水タンクに供給されるボイラ給水に,揮発性アミンを含む薬剤を注入しても,ボイラの腐食を十分に抑制することができないという問題がある。」(本件特許明細書【0004】,【0005】)ことを踏まえ,「ボイラの腐食を十分に抑制することができるボイラシステムを提供すること」(同【0006】)を解決しようとする課題としたものである。
そして,本件発明1は,この課題を解決するために,ボイラシステムにさらに相違点2に係る「第1薬剤注入装置」及び「第2薬剤注入装置」を備えたものであるところ,それにより,「揮発性アミンを含む第1薬剤を大気開放型給水タンクからのボイラ給水に注入する第1薬剤注入装置を備えることによって,揮発性アミンの濃度が高いボイラ給水をボイラに供給できるので,ボイラの腐食を十分に抑制することができる。」(同【0026】)とともに,「第1薬剤が含む揮発性アミンとして,ボイラ水中に留まり易い分配比の低い揮発性アミンを選択し,かつ,第2薬剤が含む揮発性アミンとして,蒸気-凝縮水系統の配管長に合わせて分配比の異なる揮発性アミンを選択する」(同【0014】)ことによって,「ボイラシステムは,ボイラの腐食の抑制効果をさらに高くすることができると共に,負荷装置から凝縮水タンクへ凝縮水を案内する流路の腐食を進行させ難くすることができる。」(同【0014】)といった効果を奏するものである。
すなわち,本件発明1は,ボイラ,凝縮水案内流路のそれぞれに適合した薬剤注入装置を備えることで,それぞれの腐食の抑制に対応するというものである。
他方,甲1発明は,「蒸気ボイラで発生した蒸気を複数の負荷装置へ分配しながら供給し,各負荷装置で利用された蒸気に由来の復水を各負荷装置から延びる復水経路を通じて回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置において,復水経路全体の腐食を効果的に抑制すること」(甲1【0008】)を目的としたもので,「第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備える薬剤注入装置70」を備え,「上記第二薬剤注入装置70bが注入する薬剤として,上記第一薬剤注入装置70aが注入する薬剤よりも分配比が大きなアミン化合物が選択されている」ことにより,復水経路60の「支管61a,61b,61cのいずれかにおいて生成した復水のpH値がアルカリ性領域にない場合・・・第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を停止し,第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を作動させる。これにより,蒸気供給経路51へは,モルホリンよりも分配比が大きなシクロヘキシルアミンが復水処理剤として供給される。これにより,支管61a,61b,61cの全てに炭酸ガスを中和するのに十分な量の復水処理剤が供給され易くなるため,復水経路60は,支管61a,61b,61cおよび本管62を含む全体の腐食が効果的に抑制される。」(同【0062】),「第二薬剤注入装置70bからシクロヘキシルアミンを供給しながら運転している場合において,支管61a,61b,61cにおいて生成した全ての復水のpH値が十分なアルカリ性領域にあるときは,・・・第二薬剤注入装置70bの供給ポンプ73を停止し,かつ,第一薬剤注入装置70aの供給ポンプ73を作動させて,蒸気供給経路51へシクロヘキシルアミンよりも分配比が小さなモルホリンを復水処理剤として供給することもできる。」(同【0063】)といった実施形態を想定したもので,甲1発明は「薬剤注入装置70」において分配比の異なる2種類の薬剤を使用するものの,本件発明1とはその企図するところが異なる。
このように,本件発明1と甲1発明とは,分配比の異なる薬剤を使用する目的が大きく異なる。
そして,甲1発明は,「上記蒸気ボイラ30から上記負荷装置群40に供給される蒸気に,又は,上記給水タンク22から上記蒸気ボイラ30に供給されるボイラ給水に,揮発性のアミン化合物である薬剤を注入する,第一薬剤注入装置70aと第二薬剤注入装置70bとを備える薬剤注入装置70」を備えるものであるが,甲1には,当該「薬剤注入装置70」により,「上記給水タンク22から上記蒸気ボイラ30に供給されるボイラ給水」に薬剤を注入するとともに「上記蒸気ボイラ30から上記負荷装置群40に供給される蒸気」に薬剤を注入する構成について明示的な開示はない上,分配比の小さい揮発性のアミン化合物をボイラ給水に注入するとともに,分配比の大きな揮発性のアミン化合物を蒸気に注入することについては,記載も示唆もない。
これに対し,本件発明1は,相違点1及び2に係る構成を備えることにより,上記のような顕著な効果を奏するものである。
そうすると,上記相違点1及び2は実質的なものであるといえるから,本件発明1は甲1に記載された発明であるとは認められない。
イ 既に述べたとおり,甲1には,当該「薬剤注入装置70」により,「上記給水タンク22から上記蒸気ボイラ30に供給されるボイラ給水」に薬剤を注入するとともに「上記蒸気ボイラ30から上記負荷装置群40に供給される蒸気」に薬剤を注入する構成について明示はなく,当該「薬剤注入装置70」は分配比の異なる2種類の薬剤を使用するものの,本件発明1のように,蒸気ボイラ30,復水経路60のそれぞれに適合させることを企図したものではなく,その点に関する記載も示唆もない。
たとえ,甲1発明において,当該「薬剤注入装置70」によりボイラ給水に薬剤を注入するとともに蒸気に薬剤を注入するとしても,蒸気ボイラ30の腐食抑制のために分配比の小さなアミン化合物をボイラ給水に注入し,復水経路60の腐食抑制のために分配比の大きなアミン化合物を注入することの動機付けは特段認められない。
また,甲2には,大気開放型の復水タンク(8)を備えたボイラ水循環系試験装置において,中和性アミンを含む特定のボイラ水循環系用腐食抑制剤を循環水に添加する点が記載されているが(前記2(1)),上記相違点2に係る構成は記載されておらず,甲3,4にも上記相違点1及び2に係る構成は記載されていない。
そうすると,甲1発明において,甲2に記載された事項を適用して,上記相違点1及び2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者にとって容易に想到できたものとは認められない。
そして,既に述べたとおり,本件発明1は,ボイラシステムに大気開放型給水タンクを備えることを前提として,当該第1薬剤注入装置及び第2薬剤注入装置を備えることによって,上記のような顕著な効果を奏するものである。
よって,本件発明1は,甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ウ 以上のとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明とは認められず,甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

4 本件発明2について
本件発明2は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余事項を検討するまでもなく,本件発明2は,本件発明1と同様の理由により,甲1に記載された発明であるとは認められず,甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

第5 むすび
以上のとおり,本件の請求項1,2に係る特許は,特許法29条1項3号,29条2項の規定に違反してされたものとは認められないから,前記特許異議申立ての理由により取り消すことはできない。
また,他に本件の請求項1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-26 
出願番号 特願2013-262626(P2013-262626)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (F22B)
P 1 652・ 113- Y (F22B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
藤原 直欣
登録日 2017-09-29 
登録番号 特許第6213215号(P6213215)
権利者 三浦工業株式会社
発明の名称 ボイラシステム  
代理人 田中 光雄  
代理人 鮫島 睦  
代理人 山崎 敏行  
代理人 大畠 康  
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