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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B63H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B63H
管理番号 1342032
異議申立番号 異議2018-700150  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-22 
確定日 2018-07-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6184822号発明「船舶用ガス供給装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6184822号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6184822号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年9月26日に特許出願され、平成29年8月4日に特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1?3に係る特許に対し、平成30年2月22日に、特許異議申立人安齋彰(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明
特許第6184822号の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
LNGを貯蔵するカーゴタンクと、このカーゴタンク内のLNGの一部が燃料として供給される燃料タンクと、この燃料タンク内のLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給するガス供給ラインとを備えてなる船舶用ガス供給装置であって、上記カーゴタンク内の自然蒸発ガスを吸入して再液化する再液化装置と、この再液化装置で再液化された再液化ガスを所定量貯留するレシーバタンクとを設け、上記再液化装置で再液化された再液化ガスを、上記カーゴタンクに戻すと共に上記レシーバタンクに貯留し、同レシーバタンク内の再液化ガスを上記燃料タンクに供給するようにしたことを特徴とする船舶用ガス供給装置。
【請求項2】
レシーバタンク内の圧力と燃料タンク内の圧力を均しくする均圧ラインを設けたことを特徴とする請求項1記載の船舶用ガス供給装置。
【請求項3】
レシーバタンク内の圧力とカーゴタンク内の圧力を均しくする均圧ラインを設けたことを特徴とする請求項2記載の船舶用ガス供給装置。」

第3.申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1?13号証を提出し、以下の申立理由1及び2により、本件発明1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:国際公開第2012/124885号
甲第2号証:特表2011-508164号公報
甲第3号証:特開2009-204026号公報
甲第4号証:特表2009-541140号公報
甲第5号証:特表2011-503463号公報
甲第6号証:特開平11-63395号公報
甲第7号証:特開平11-141798号公報
甲第8号証:特開平11-315998号公報
甲第9号証:特開2005-90554号公報
甲第10号証:特開2011-247368号公報
甲第11号証:特開平10-205698号公報
甲第12号証:特開2006-63817号公報
甲第13号証:特開2008-208862号公報

1.申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.申立理由2(特許法第29条第2項)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第8号証に記載された周知技術に基いて、本件発明2、3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第9号証、甲第10号証に記載された周知技術に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第8号証に記載された周知技術並びに甲第9号証、甲第10号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第4.甲各号証の記載事項等
1.甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、甲第1号証の請求項又は段落番号と、申立人が提出した翻訳文(特表2014-512474号公報)を参考にして当審で作成した翻訳文を示す。また、下線は当審で付した。以下同様。
(1a)請求項1(40ページ参照。)
翻訳文:「【請求項1】
貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを前記貯蔵タンクから供給されて圧縮するボイルオフガス圧縮部、前記ボイルオフガス圧縮部で圧縮されたボイルオフガスを供給されて液化させる再液化装置、前記再液化装置で液化された液化ボイルオフガスを圧縮させる高圧ポンプ、及び前記高圧ポンプで圧縮された液化ボイルオフガスを気化させるための高圧気化器を含み、高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給する燃料供給システムの運転方法であって、
前記燃料供給システムは、前記高圧ポンプの上流側に設置される再凝縮機を含み;
前記貯蔵タンクから供給された液化ガスを用いて、発生したボイルオフガスのうち一部又は全部を前記再凝縮機で再凝縮させ、バラスト運航の過程中に、前記ボイルオフガスを前記再凝縮機にすべて供給して再凝縮させ、前記再液化装置の稼動を中断させる期間を含むことを特徴とする高圧天然ガス噴射エンジン用燃料供給システムの運転方法。」

(1b)段落番号:[1]
翻訳文:「本発明は、高圧天然ガス噴射エンジン用燃料供給システムの運転方法に関し、さらに詳しくは、ボイルオフガスの再液化装置及び高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME-GIエンジンを搭載したLNG運搬船のような海上構造物において高圧天然ガス噴射エンジンに效率的に燃料を供給するとともに、再液化装置で消耗するエネルギーを最小化できる燃料供給システムの運転方法に関する。」

(1c)段落番号:[19]
翻訳文:「本発明は、上記の従来の問題点を解決するためのもので、液化ガス貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME-GIエンジンの燃料として活用し、ボイルオフガスを従来に比べて高い圧力に圧縮して再液化した後、高圧天然ガス噴射エンジンに供給し、再凝縮機を設置することで、発生したボイルオフガスのうち少なくとも一部を該再凝縮機で再凝縮して再液化装置の負荷を減少させることによって、高圧天然ガス噴射エンジンに效率的に燃料を供給するとともに、再液化装置で消耗するエネルギーを最小化できる燃料供給システムの運転方法を提供することを目的とする。」

(1d)段落番号:[89]
翻訳文:「本発明の第1実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、液化ガス貯蔵タンク11で発生して排出されたボイルオフガス(NBOG)は、ボイルオフガス圧縮部13で約12乃至45bara(絶対圧)程度の中圧に圧縮された後、再液化装置20に供給される。再液化装置20で液化エネルギー、すなわち冷熱を供給されて再液化された液化ボイルオフガス(LBOG)は高圧ポンプ33によって約150乃至400bara程度の高圧に圧縮された後、高圧気化器37に供給される。高圧気化器37で気化されたボイルオフガスは、引き続き高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME-GIエンジンに燃料として供給される。」

(1e)段落番号:[91]
翻訳文:「貯蔵タンクは、LNGなどの液化ガスを極低温状態に貯蔵できるように密封壁及び断熱防壁を備えているが、外部から伝達される熱を完壁に遮断することはできない。そのため、貯蔵タンク11内では液化ガスの蒸発が継続的に行われ、ボイルオフガスの圧力を適正な水準に維持するために、ボイルオフガス排出ラインL1を介して貯蔵タンク11内部のボイルオフガスを排出させる。」

(1f)段落番号:[93]
翻訳文:「ボイルオフガス圧縮部13で圧縮されたボイルオフガスは、ボイルオフガス供給ラインL2を介して再液化装置20に供給される。再液化装置20に供給されたボイルオフガスは、再液化装置20のコールドボックス21を通過しながら冷媒によって冷却されて再液化される。再液化装置20としては、LNGなどの液化ガスから発生するボイルオフガスなどを液化させることができるものであれば、いかなる構成のものでも使用され得る。」
段落番号:[94]
翻訳文:「コールドボックス21での熱交換を介して再液化されたボイルオフガスは、バッファタンク31で気体状態と液体状態とに分離され、液体状態の液化ボイルオフガスのみが燃料供給ラインL3を介して高圧ポンプ33に供給される。高圧ポンプ33は、複数個、例えば2つが並列に設置され得る。」

(1g)段落番号:[157]
翻訳文:「本発明の第4実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、高圧天然ガス噴射エンジンの負荷が減るか、又は発生したボイルオフガスの量が多い場合、超過液化ボイルオフガス(LBOG)は、バッファタンク31の下流で燃料供給ラインL3から分岐するLBOG復帰ラインL4に設置されるLBOG膨脹バルブ51を介して減圧され、減圧過程で発生するフラッシュガスを含むLBOGは、気液分離器を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンク11に戻される。」
段落番号:[158]
翻訳文:「さらに詳しくは、LBOG膨脹バルブ51で減圧されてフラッシュガスを含むLBOGは、LBOG気液分離器53に供給されて液体成分と気体成分とに分離され、LBOG気液分離器53で分離された気体成分(すなわち、フラッシュガス)は、燃料ガス供給ラインL6を介して、発電などのために海上構造物内に設置され得る超過ボイルオフガス消費手段、すなわち二元燃料ディーゼル機関(DFDE)に燃料として供給される。二元燃料ディーゼル機関に供給される燃料ガスの圧力は、燃料ガス供給ラインL6の途中におけるLBOG気液分離器53の下流側に設置される圧力調節バルブによって調節されることができ、燃料ガス供給ラインL6の途中に設置される燃料ガスヒータ55で燃料ガスの温度は二元燃料ディーゼル機関で要求する温度まで加熱され得る。また、LBOG気液分離器53で分離された液体成分は、LBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンクに戻される。」

(1h)段落番号:[161]
翻訳文:「また、ボイルオフガス再液化装置が作動しない、または貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給することによって燃料を供給できる。」

(1i)段落番号:[179]
翻訳文:「 一方、上記のように、再液化装置20に供給されるボイルオフガスの量を減少させたにもかかわらず、高圧天然ガス噴射エンジンで要求するボイルオフガスの量より供給される燃料としてのボイルオフガスの量が多い場合は、超過ボイルオフガスを、上記の第4実施形態と同様に処理する。」
段落番号:[180]
翻訳文:「すなわち、超過ボイルオフガスは、バッファタンク31の下流で燃料供給ラインL3から分岐するLBOG復帰ラインL4に設置されるLBOG膨脹バルブ51を介して減圧され、減圧過程で発生するフラッシュガスを含むLBOGは、LBOG気液分離器53を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンク11に戻される。LBOG気液分離器53で分離された気体成分(すなわち、フラッシュガス)は、燃料ガス供給ラインL6を介して、超過ボイルオフガス消費手段としてのガス燃焼装置(GCU)に燃料として供給される。」

(1j)段落番号:[182]
翻訳文:「また、上記の第4実施形態と同様に、ボイルオフガス再液化装置が作動しない、または貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給することによって燃料を供給できる。」

(1k)段落番号:[186]
翻訳文:「図10bには本発明の好ましい第5実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第5実施形態の変形例は、再液化装置20の構成が上記の第5実施形態に比べて部分的に異なる。」

(1l)段落番号:[188]
翻訳文:「 特に、図10bに例示された本第5実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bと同様に、複数の冷媒気液分離器22a,22b,22cを含み、これらの複数の冷媒気液分離器の中で最下流側に配置される冷媒気液分離器22cには上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とが混合された後、供給される。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒は、最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、冷媒圧縮機23a,23bによって圧縮されて冷媒冷却器24a,24bによって冷却される過程を経ることができる。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された液体状態の冷媒は、気体状態の冷媒が最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、さらに詳しくは、気体状態の冷媒が冷媒冷却器24bによって冷却される前に、この気体状態の冷媒と混合される。」

(1m)甲第1号証には、以下の【図10b】が示されている。

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給する海上構造物(記載事項(1d))の燃料供給システムが記載されていると認められるところ、上記(1)の各記載事項、特に第5実施形態の変形例(【図10b】)から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「液化ガス貯蔵タンク11内で発生したボイルオフガスを前記液化ガス貯蔵タンク11から供給されて圧縮するボイルオフガス圧縮部13、前記ボイルオフガス圧縮部13で圧縮されたボイルオフガスを供給されて液化させる再液化装置20、前記再液化装置20で液化された液化ボイルオフガスを圧縮させる高圧ポンプ33、及び前記高圧ポンプ33で圧縮された液化ボイルオフガスを気化させるための高圧気化器37を含み、高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給する海上構造物の燃料供給システムであって、
再液化されたボイルオフガスは、バッファタンク31で気体状態と液体状態とに分離され、液体状態の液化ボイルオフガスのみが燃料供給ラインL3を介して高圧ポンプ33に供給され、
高圧天然ガス噴射エンジンで要求するボイルオフガスの量より供給される燃料としてのボイルオフガスの量が多い場合は、超過ボイルオフガスは、バッファタンク31の下流でLBOG気液分離器53を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して液化ガス貯蔵タンク11に戻され、
ボイルオフガス再液化装置20が作動しない、または液化ガス貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、液化ガス貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して液化ガス貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給することによって燃料を供給できる高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給する海上構造物の燃料供給システム。」

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証の明細書の段落【0031】?段落【0035】及び以下に示された【図3】によれば、以下の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。

「液化装置70(本件発明1の「再液化装置」に相当する。以下()内には本件発明1に相当する構成要素を示す。)で再液化された天然ガス(再液化ガス)をドラム22(燃料タンク:推進装置46に供給する天然ガスが貯留される)に供給し、余剰の再液化された天然ガスを前記ドラム22から主貯蔵タンク2(カーゴタンク)へ戻すこと。」

3.甲第3号証の記載事項
甲第3号証の明細書の段落【0027】、段落【0034】、段落【0036】、段落【0037】及び以下に示された【図1】によれば、以下の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。

【図1】
「ガス再液化装置5(再液化装置)の凝縮器35で再液化された再液化ガスをセパレータ53を経由して貯蔵タンク3(カーゴタンク)に戻し、貯蔵タンク3(カーゴタンク)からLNGを第一容器65及び第二容器67(燃料タンク)に送り出し、高圧ガス噴射式ガス焚ディーゼル機関(ガス消費設備)に供給すること。」

4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証の明細書の段落【0014】?段落【0016】及び以下に示されたFig.3によれば、以下の事項(以下「甲4事項」という。)が記載されていると認められる。

「燃料貯蔵タンク6(カーゴタンク)からの沸騰ガス(自然蒸発ガス)を燃料送給タンク8(燃料タンク)に供給すること。」

5.甲第5号証の記載事項
甲第5号証の明細書の段落【0039】及び以下に示されたFig.2によれば、以下の事項(以下「甲5事項」という。)が記載されていると認められる。

「LNG貯蔵タンク30(カーゴタンク)からの気化したガス(自然蒸発ガス)を燃料供給タンク40(燃料タンク)に供給すること。」

6.甲第6号証の記載事項
甲第6号証の明細書の段落【0001】?段落【0004】及び以下に示された【図2】によれば、以下の事項(以下「甲6事項」という。)が記載されていると認められる。

【図2】
「低温タンク2からの気化したBOG(自然蒸発ガス)をコンデンサ4b(再液化装置)で再液化し、レシーバ4cを経由して中圧タンク5に供給すること。」

7.甲第7号証の記載事項
甲第7号証の明細書の段落【0003】、段落【0007】?段落【0011】及び以下に示された【図2】によれば、以下の事項(以下「甲7事項」という。)が記載されていると認められる。

【図2】
「低温タンク1からの気化したボイルオフガス13(自然蒸発ガス)を凝縮器15(再液化装置)で再液化し、レシーバ17を経由して中圧タンク4に供給すること。」

8.甲第8号証の記載事項
甲第8号証の明細書の段落【0006】?段落【0008】及び以下に示された【図2】によれば、以下の事項(以下「甲8事項」という。)が記載されていると認められる。

【図2】
「低温液化ガスタンク1からの気化したボイルオフガス12(自然蒸発ガス)をコンデンサ15(再液化装置)で再液化し、レシーバ17を経由して中圧タンク6に供給すること。」

第5.当審の判断
1.申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
1-1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア.後者の「LNG」及び「液化ガス」は、前者の「LNG」に相当し、後者の「液化ガス貯蔵タンク11」は前者の「LNGを貯蔵するカーゴタンク」に相当し、甲第1号証の「LNG運搬船のような海上構造物」(記載事項(1b))との記載によれば、「海上構造物」には「LNG運搬船」が含まれるから、後者の「高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給する海上構造物の燃料供給システム」は前者の「船舶用ガス供給装置」に相当する。

イ.後者の「高圧天然ガス噴射エンジン」は前者の「ガス消費設備」に相当する。
前者の「燃料タンク」は、「カーゴタンク内のLNGの一部が燃料として供給され」、「この燃料タンク内のLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給する」ものである。
他方、後者は「液化ガス貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して液化ガス貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給する」ものであるところ、「バッファタンク31」は、「液化ガス貯蔵タンク11に収容されたLNG」の一部が燃料として供給されることは明らかであり、「液化ガス貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合」に「供給」されるものであるから、「液化ボイルオフガス」と同様に、バッファタンク31内のLNGを高圧気化器37で気化された上で高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給しているものといえるから、後者の「バッファタンク31」は前者の「燃料タンク」に相当する。
そして、後者の「燃料供給ラインL3」は、LNGを高圧気化器37で蒸発気化させた上で高圧天然ガス噴射エンジンに燃料を供給することは明らかであるから、前者の「この燃料タンク内のLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給するガス供給ライン」に相当する。

ウ.後者の「液化ガス貯蔵タンク11内で発生した」「ボイルオフガスを供給されて液化させる再液化装置20」は前者の「上記カーゴタンク内の自然蒸発ガスを吸入して再液化する再液化装置」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「LNGを貯蔵するカーゴタンクと、このカーゴタンク内のLNGの一部が燃料として供給される燃料タンクと、この燃料タンク内のLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給するガス供給ラインとを備えてなる船舶用ガス供給装置であって、上記カーゴタンク内の自然蒸発ガスを吸入して再液化する再液化装置を設ける船舶用ガス供給装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1は、「再液化装置で再液化された再液化ガスを所定量貯留するレシーバタンクとを設け、上記再液化装置で再液化された再液化ガスを、上記カーゴタンクに戻すと共に上記レシーバタンクに貯留し、同レシーバタンク内の再液化ガスを上記燃料タンクに供給する」構成であるのに対し、
甲1発明は、「前記再液化装置20で液化された液化ボイルオフガスは、バッファタンク31に供給され」るものであり、「超過ボイルオフガスは、バッファタンク31の下流で、LBOG気液分離器53を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して液化ガス貯蔵タンク11に戻され」る構成であり、かかるレシーバタンクを設けていない点。

(2)判断
本件発明1と甲1発明との間には、上記相違点が存在するから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

1-2.本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、少なくとも上記相違点と同様な相違点を有する。
よって、本件発明2、3は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。

2.申立理由2(特許法第29条第2項)について
2-1.本件発明1について
(1)対比
上記1-1.(1)で検討したとおり、本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記相違点で相違する。
(2)判断
(2-1)上記相違点について検討する。
甲1発明は、「再液化装置20で液化された液化ボイルオフガス」を「バッファタンク31」に貯蔵できる構成及び「超過ボイルオフガスは、バッファタンク31の下流でLBOG気液分離器53を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して液化ガス貯蔵タンク11に戻され」る構成を既に有するものであるから、「再液化装置20で液化された液化ボイルオフガス」を所定量貯留するレシーバタンクとを設け、「超過ボイルオフガス」を、「液化ガス貯蔵タンク11」に戻すと共に上記レシーバタンクに貯留し、同レシーバタンク内の「液化ボイルオフガス」を「バッファタンク31」に供給する構成に変更ないし付加する動機付けは存在しない。
甲第2?8号証に記載された事項をみてみても、甲2、4、5事項には、上記相違点に係る本件発明1の「レシーバタンク」に相当する構成を有していない。また、甲3事項は「セパレータ53」を有するが、再液化ガスを該「セパレータ53」を経由して貯蔵タンク3に戻す経路しかなく、本件発明1のように、再液化ガスを「セパレータ53」に所定量貯留して該「セパレータ53」内の再液化ガスを「第一容器及び第二容器」に供給すものではないから、甲3事項の「セパレータ53」は本件発明1の「レシーバタンク」に相当するものでない。
甲6事項は「レシーバ4c」を、甲7、8事項は「レシーバ17」を経由して、甲6事項は「中圧タンク5」に、甲7事項は「中圧タンク4」に、甲8事項は「中圧タンク6」に再液化されたボイルオフガスを供給するものであるが、甲6?8事項の各中圧タンクは、内燃機関等のガス消費設備に再液化されたボイルオフガスを供給するものではないから、甲6事項の「レシーバ4c」及び甲7、8事項の「レシーバ17」は、本件発明1の「レシーバタンク」に相当するものではない。
なお、甲第9、10号証は、均圧ラインが周知技術であることを示すために提出された証拠であり、本件発明1の「レシーバタンク」に相当する構成は開示されていない。
また、甲第11?13号証は、本件発明1?3の効果の予測性を示すために提出された証拠であり、本件発明1の「レシーバタンク」に相当する構成構成は開示されていない。
したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものである。

(2-2)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の14ページ末行?15ページ11行で特定している甲1発明(以下「申立人甲1発明」という。)において、同申立書37ページ下から6行で「LBOG気液分離器」は、本件発明1の「燃料タンク」に相当する旨主張している。
しかしながら、本件発明1の「燃料タンク」は、「カーゴタンク内のLNGの一部が燃料として供給され」、「この燃料タンク内のLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給する」ものである。他方、甲1発明は、「ボイルオフガス再液化装置が作動しない、または液化ガス貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、液化ガス貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して液化ガス貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給する」ものであって、甲第1号証には、該「LNG」が「LBOG気液分離器」に供給されることは記載されていない。また、ボイルオフガスの量が少ない場合に供給されるものであるから、必要な分だけのLNGをバッファタンク31に供給することが通常であり、超過の「LNG」が「LBOG気液分離器」に供給されることは想定されていないといえる。仮に、超過の「LNG」が生じて「LBOG気液分離器」へ供給されても甲1発明は「LBOG復帰ラインL4を介して液化ガス貯蔵タンク11に戻され」るものであるから、甲1発明の「LBOG気液分離器」はLNGを蒸発気化させた上でガス消費設備に供給するものではない。
したがって、申立人甲1発明の「LBOG気液分離器」は、本件発明1の「燃料タンク」に相当するものではないから、申立人の主張は採用できない。

(2-3)小括
以上のことから、本件発明1は、甲1発明、又は甲1発明及び甲2?8事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-2.本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮し

たものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲9、10事項に基いて、又は甲1発明及び甲2?8事項並びに甲9、10事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-29 
出願番号 特願2013-199759(P2013-199759)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B63H)
P 1 651・ 121- Y (B63H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岸 智章  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
島田 信一
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6184822号(P6184822)
権利者 泉鋼業株式会社
発明の名称 船舶用ガス供給装置  
代理人 尋木 浩司  
代理人 白川 孝治  
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