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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
管理番号 1342036
異議申立番号 異議2018-700318  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-17 
確定日 2018-07-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6222394号発明「パウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6222394号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6222394号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年10月6日に出願した特願2014-205818号の一部を、平成29年5月15日に新たな特許出願としたものであって、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年4月17日に特許異議申立人松本征二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
重ねられた積層フィルムをヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収容空間を有するパウチであって、
重ねられた積層フィルムをヒートシールした側部シール部と、
前記側部シール部によって前記収容空間から隔離され、重ねられた積層フィルムがヒートシールされない未シール部と、
を有し、
前記未シール部は、当該パウチの上側寄りに位置し、且つ、重ねられた積層フィルムの側縁に達して開口しており、
前記側部シール部は、前記未シール部を挟んで両側に位置する上側シール部分及び下側シール部分と、前記未シール部の少なくとも一部を取り囲むようにして前記上側シール部分と前記下側シール部分とに接続され、且つ、前記上側シール部分及び前記下側シール部分よりも前記収容空間側に向けて張り出した張出部分と、を有し、
前記張出部分は、前記上側シール部分よりも前記下側シール部分に近接した位置に、前記収容空間側に向かって突出した角領域を含み、
前記張出部分に接する前記未シール部の縁部は、前記角領域の上方に位置し、前記側部シール部側から収容空間側に向かうにつれて下方に傾斜するように延びる部分であって、重ねられた積層フィルムの側縁に位置する前記未シール部の前記開口に横方向において対向する部分を含む、パウチ。
【請求項2】
前記張出部分に接する前記未シール部の縁部は、前記開口の周りから収容空間側に延び出た第1縁部及び第2縁部と、前記第1縁部の先端と前記第2縁部の先端との間を延びる第3縁部と、を含み、
前記第3縁部が、前記角領域の上方に位置し、前記側部シール部側から収容空間側に向かうにつれて下方に傾斜するように延びている、請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記第1縁部が前記上側シール部分側に位置し、前記第2縁部が前記下側シール部分側に位置し、
前記第1縁部と前記第3縁部とが成す角が鈍角である、請求項2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記第1縁部が前記上側シール部分側に位置し、前記第2縁部が前記下側シール部分側に位置し、
前記第2縁部と前記第3縁部とが成す角が鋭角である、請求項2に記載のパウチ。
【請求項5】
前記張出部分の巾は、前記下側シール部分の巾よりも狭い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項6】
前記張出部分の最も前記収容空間側に位置する部分と、前記下側シール部分の最も前記収容空間側に位置する部分と、の間の横方向の距離が、3mm以上15mm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項7】
前記未シール部の前記開口の、上下方向における延在範囲が、前記未シール部の前記縁部のうち前記側部シール部側から収容空間側に向かうにつれて下方に傾斜するように延びる部分の、上下方向における延在範囲以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパウチ。」

3.申立理由の概要
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。
申立人は、証拠として、以下の甲1?甲3を提出し、以下の(1)?(3)の理由を申立てている。
(1)本件発明1?7は、甲1発明であり、特許法第29条第1項第3項に該当するから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)本件発明1?6は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、また、本件発明7は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項、あるいは、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)本件発明1?7は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるから、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(証拠一覧)
甲1:特開2006-321493号公報
甲2:特開2007-137472号公報
甲3:実願平2-50424号(実開平4-10079号)のマイクロフィルム

4.甲1?甲3の記載事項
(1)甲1
甲1には、以下の甲1発明が記載されている(【0012】、【0014】、【0017】、【0018】、【0029】、【0016】、図2及び図4参照)。
「重ねられた前面2及び後面3をヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収納空間を有する電子レンジ用包装袋1であって、
重ねられた前面2及び後面3をヒートシールした胴部シール部5と、
胴部シール部5によって収納空間から隔離され、重ねられた前面2及び後面3がヒートシールされていない未シール部19とを有し、
未シール部19は、電子レンジ用包装袋1の上側寄りに位置し、かつ、重ねられた前面2及び後面3の側面に達して未シール部16で開口しており、
胴部シール部5は、未シール部19を挟んで両側に位置する上側シール部分及び下側シール部分と、
未シール部19の少なくとも一部を取り囲むようにして上側シール部分及び下側シール部分とに接続され、かつ、上側シール部分及び下側シール部分よりも収納空間に向けて張り出したコの字状シール部9を有し、
コの字状シール部9の最下端を突き出した形状とする突端部20を形成し、未シール部16の開口はシール部9に対向する、
電子レンジ用包装袋1。」

(2)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
近年、電子レンジの普及発展に伴い、また、調理の簡便化の要請から、調理済み加工食品を、プラスチック製の包装袋等に包装し、密封して、保存性を持たせた形態で流通している。
しかし、こうした食品を電子レンジで加熱する場合において、包装袋が、密封したままであると、加熱により内容物から発生する水蒸気により袋内の内圧が上昇し、ついには破裂し、内容物が電子レンジ庫内に飛散してしまうことが多かった。
このような包装袋の破裂を防止した包装容器として、本出願人は、本件出願に先立ち、図5に示すように、天部シール部、または胴部シール部と連結してコの字状シール部を設け、コの字状シール部に囲まれた未シール部に蒸通口を備えるように構成された自立性のある電子レンジ用包装袋を開示している。(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の電子レンジ用包装袋は、図9に示すように、電子レンジの加熱する際、内圧の上昇によりコの字状シール部9の初期剥離端20から剥離後退してコの字状シール部9に囲まれた未シール部に達し、未シール部に形成された蒸通口17から蒸気が排出されるものである。」
「図9



(3)甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
「(考案が解決しようとする課題)
本案は以上のような目的を達成するため次の様な電子レンジ用自立性袋を提供するものである。
すなわち、袋体を形成する両サイドシール部の一部が内側に曲折し、V字状をなして該V字状シール部の谷部に、三角形状の未シール面を形成し、該未シール面がサイドシール線のシール面より袋体の内側に突出形成したことを特徴とする電子レンジ用自立性袋であり、内側に曲折したシール面のV字を形成する角度が30°?110°であることを特徴とする電子レンジ用自立性袋である。」(5頁16行?6頁8行)
「(実施例)
以下図面に示す実施例について説明する。
スタンディングパウチすなわち自立性袋は第4、5図に示す如く袋(1)の底部(2)がガゼット折りとなっていて展開自在なものとなっておる。
本案は以上のような自立性袋において第1図に示す如く袋体(1)を形成する両サイドシール部(3)(3)の一部が内側に曲折し、V字状をなして袋体に三角形状の未シール面を形成し、該未シール面がサイドシール面のシール面より袋体の内側に突出形成したものである。(A)(B)(C)はそのV字状シール面を示し、(D)は未シール部分を示す。」(6頁15行?7頁8行)
「この時、両方のサイドシール部にV字状のシール部(A)(B)(C)があれば袋内に蒸気圧が袋の両方のサイドシールのV字状シール部に均等に力が加わるためバランスを失わずに安定した状態でシールのV字部分の頂点から剥離して開口し、この開口部から安全かつ静かに蒸気が排気される。」(8頁11行?8頁17行)
「又、V字状シール部の谷にある未シール部、すなわち頂点の外面は必ずサイドシール部(3)より1mm以上内側の位置(h3)まで突出させなければならない。」(9頁20行?10頁3行)
「更に、サイドシールのV字状シール部を除く他の直線部分のシール巾(S)は、通常の自立性袋と同様に5mm?10mm程度でよいが、V字状シール部の巾(S1)をあまり大きくとると外観が特異になるのでV字状シール部をできるだけ小さくするためには、V字状シール部のシール巾(S1)を2mm?5mmにするのが望ましい。」(10頁20行?11頁6行)
「第2図



5.当審の判断
(1)理由(1)(特許法第29条第1項第3号)について
ア.本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「電子レンジ用包装袋1」、「胴部シール部5」は、それぞれ、本件発明1の「パウチ」、「側部シール部」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、「張出部分に接する未シール部の縁部は、角領域の上方に位置し、側部シール部側から収容空間側に向かうにつれて下方に傾斜するように延びる部分であって、重ねられた積層フィルムの側縁に位置する未シール部の開口に横方向において対向する部分を含む」のに対して、甲1発明では、「張出部分に接する未シール部19の縁部は、突端部20の上方に位置」するものの側面に開口する未シール部16に対向するのがコの字状シール部9である点。

上記相違点1を検討する。
本件発明1は、上記相違点1に係る上記構成により、パウチに過度な圧力が掛かることを抑制しながら、安定して蒸気を外部に排出できる作用効果を奏するものであるのに対し、甲1発明の未シール部16の開口は、そのような傾斜するように延びる部分に対向していない。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明ではない。

イ.本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲1発明ではない。

ウ.小括
以上のとおり、本件発明1?7は、甲1発明ではない。
よって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号には該当せず、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

(2)理由(2)(特許法第29条2項)について
ア.本件発明1と甲1発明を対比すると、上記相違点1で少なくとも相違する。
この相違点1について検討すると、甲1の【0017】には「コの字状シール部9の形状は、図3に示すように、シール部の最下端を突き出した形状とする突端20を形成する。突端20を形成すれば、コの字状に限定されず、台形状や三角形状であってもよい。」と記載されている。
しかし、甲1の図3(b)、(c)には、三角状のシール部が例示されているが、本件発明1のように、未シール部の開口に対向するシール部が下方に傾斜するように延びる部分を備えるものではない。
そして、甲1発明において未シール部の開口に対向するシール部を下方に傾斜するようにあえて換える動機付けはない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲2には、電子レンジの加熱する際、内圧の上昇によりコの字状シール部9の初期剥離端20から剥離後退してコの字状シール部9に囲まれた未シール部に達し、未シール部に形成された蒸通口17から蒸気が排出される電子レンジ用包装袋が記載されているが、上記相違点1に係る構成について記載も示唆もするものではなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ.本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.本件発明7について
本件発明7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであり、甲3も上記相違点1に係る構成について記載も示唆もするものではないから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項、甲1発明及び甲3記載事項、あるいは、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ.小括
以上のとおり、本件発明1?7は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項、甲1発明及び甲3記載事項、あるいは、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

(3)特許法第36条第6項第1号
ア.本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)には、以下の記載がある。
(ア)【0046】
「加熱に伴ってパウチ1内の圧力が高まったときのシール部50の剥離のし易さは、シール部50の位置や形状等に起因して誘引される応力集中に大きく依存する。」
(イ)【0047】
「この点、本実施の形態では、電子レンジによる加熱時に張出部分55から一対の主面シート11の剥離が進行して収容空間2と第1未シール部60とを連通させることが意図されている。そして、張出部分55から一対の主面シート11を剥離し易くするために、張出部分55は、第1側部シール部51の他の部分56、57よりも収容空間2側に張り出し、且つ、下角領域55gを含んでいる。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、張出部分55からの一対の主面シート11の剥離の進行をより安定して実現するためには、図5において、第1仮想直線IL1と張出部分55との重なる範囲の長さであるa1が第2仮想直線IL2と第2側部シール部52との重なる範囲の長さであるa2よりも短いことを示す関係が満たされていることが好ましいことが知見された。」
(ウ)【0048】
「図5に示すように、加熱に伴って膨らんでいく収容空間2は、パウチ1の中央付近に位置する中心Oから拡がっていくとみなすことができる。したがって、加熱に伴いシール部50の各位置には、中心Oから当該各位置に向かう方向の負荷を強く受ける。すなわち、加熱に伴いシール部50に掛かる圧力は、中心Oとの位置関係に強く依存する。」
(エ)【0053】
「上述のように、加熱に伴いシール部50の各位置には、中心Oから当該各位置に向かう方向の負荷を強く受ける。このため、中心Oから第1未シール部60に引いた最短直線となる第1仮想直線IL1と張出部分55との重なる範囲においては、第1未シール部60に向かう方向の負荷を強く受ける。同様に、中心Oから第2未シール部70に引いた最短直線となる第2仮想直線IL2と第2側部シール部52との重なる範囲においては、第2未シール部70に向かう方向の負荷を強く受ける。したがって、張出部分55と第1仮想直線IL1との重なる範囲の長さa1が、第2側部シール部52と第2仮想直線IL2との重なる範囲の長さa2よりも短い場合、張出部分55の方が負荷に耐えるだけのシール代が少ない。このため、張出部分55の方が第2側部シール部52よりも蒸気圧の負荷に対する耐性に劣り、収容空間2と第2未シール部70が連通するよりも先に収容空間2と第1未シール部60が連通するため、安定して張出部分55から蒸気抜けさせることができると考えられる。また、張出部分55以外のシール部50から剥離が進行することを抑制しやすくすることもできると考えられる。言い換えると、張出部分55以外のシール部50からシール後退が進行することを抑制しやすくすることもできると考えられる。」
(オ)【0055】
「また、第1仮想直線IL1に沿った方向における中心Oから張出部分55までの最短距離b1は、第2仮想直線IL2に沿った方向における中心Oから第2側部シール部52までの最短距離b2よりも短くすることが好ましい。この場合、張出部分55に効率的に負荷を加えることができ、収容空間2と第2未シール部70が連通するよりも先に収容空間2と第1未シール部60が連通するため、安定して張出部分55から蒸気抜けさせることができると考えられる。また、張出部分55以外のシール部50から剥離が進行することを抑制しやすくすることもできると考えられる。」
(カ)【0086】
「ところで、第1未シール部60の縁部62を、略V字状の形状に沿って延びるように形成することも考えられる。言い換えると、第1未シール部60の縁部62が、開口61の周りから収容空間2側に延び出た第1縁部63及び第2縁部64のみからなり、第1縁部63の先端と第2縁部64の先端とを重ねた形態も考えられる。図8にこのような例が示されている。」
(キ)【0087】
「なお、第1未シール部60の形状は、図3や図8に示す例に限定されない。図9及び図10に、第1未シール部60の形状の他の例を示す。このうち、図9に示す例では、平面視において、第1未シール部60は、台形状の形状をもつ。具体的には、横方向d1に直線状に延び出した第1縁部63の長さが、横方向d1に直線状に延び出した第2縁部64の長さよりも短い。従って、第3縁部65は、第1縁部63と繋がった端部が第2縁部64と繋がった端部よりも横方向d1において収容空間2から離間する側に位置するように、傾斜している。」

イ.上記記載からみて、本件特許明細書には、パウチのシール部の剥離を安定して進行させることは、剥離の始点として想定する下角領域55g(角領域)が、他のシール部よりもパウチの中心Oからの距離を短くすることにより解決できることが記載されているといえる。

ウ.そこで、本件発明1についてみると、「前記側部シール部は、前記未シール部を挟んで両側に位置する上側シール部分及び下側シール部分と、前記未シール部の少なくとも一部を取り囲むようにして前記上側シール部分と前記下側シール部分とに接続され、且つ、前記上側シール部分及び前記下側シール部分よりも前記収容空間側に向けて張り出した張出部分と、を有し、前記張出部分は、前記上側シール部分よりも前記下側シール部分に近接した位置に、前記収容空間側に向かって突出した角領域を含み」と記載されており、この「上側シール部分及び下側シール部分よりも収容空間側に向けて張り出した」「張出部分」が「収容空間側に向かって突出した」「角領域」を備えることにより、他のシール部よりも、よりパウチの中心Oとの距離を短いものとすることができるから、それにより、パウチのシール部の剥離を安定して進行させるという課題を解決し得るものといえる。

エ.(ア)申立人は、本件発明1?7は、「下方に傾斜するように延びる部分が直線状に延びる構成だけでなく湾曲状に延びる構成や折れ曲がって延びる構成などを含むものであるから、本願の図8、図9、図12からこの補正された記載まで、未シール部の縁部の構成を拡張または一般化することはできず、サポート要件を充足しない」(特許異議申立書39頁2?6行)旨主張する。
しかし、上記イ.及びウ.で述べたように、本件発明1?7の「パウチのシール部の剥離を安定して進行させる」という課題は、「張出部分」の「角領域」が、収納空間に向かって、突出して、パウチの中心Oとの距離を短いものとすることにより、解決できるものであり、申立人がいう「下方に傾斜するように延びる部分が直線状に延びる」という構成の特定までは要しないものといえるから、本件発明1?7で「下方に傾斜するように延びる部分が直線状に延びる」という特定がないことをもって、サポート要件を充足しないとすることはできない。

(イ)また、申立人は、「本件特許発明の解決しようとする課題は、使用性の優れたパウチを提供することである」が、請求項1から「前記下側シール部分の巾は、前記上側シール部分の巾よりも狭い」との記載が削除されたため、「本件特許発明1において発明の詳細な説明に記載された本件特許発明の課題を解決するための手段が反映されていないため発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになり、サポート要件を充足しない」(特許異議申立書39頁12?40頁1行)旨主張する。
しかし、上述したように、本件特許明細書全体の記載からみて、本件発明1?7は、「パウチのシール部の剥離を安定して進行させる」という課題を、「前記側部シール部は、前記未シール部を挟んで両側に位置する上側シール部分及び下側シール部分と、前記未シール部の少なくとも一部を取り囲むようにして前記上側シール部分と前記下側シール部分とに接続され、且つ、前記上側シール部分及び前記下側シール部分よりも前記収容空間側に向けて張り出した張出部分と、を有し、前記張出部分は、前記上側シール部分よりも前記下側シール部分に近接した位置に、前記収容空間側に向かって突出した角領域を含み」という構成により解決し得るものであるから、本件特許明細書の一部の記載から把握した課題と、本件発明1?7が対応しないことをもって、「発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになり、サポート要件を充足しない」ものとすることはできない。

(ウ)また、申立人は、本件発明7の「前記未シール部の前記開口の、上下方向における延在範囲が、前記未シール部の前記縁部のうち前記側部シール部側から収容空間側に向かうにつれて下方に傾斜するように延びる部分の、上下方向における延在範囲以上である」は、本件特許明細書中に、そのような用語は記載されておらず、「未シール部の縁部の構成および当該下方に延びる部分との未シール部の開口の上下方向における延在範囲を拡張または一般化することはできず、サポート要件を充足しない」(特許異議申立書40頁4?19行)旨主張する。
しかし、本件発明7は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであり、「パウチのシール部の剥離を安定して進行させる」という課題は、「前記側部シール部は、前記未シール部を挟んで両側に位置する上側シール部分及び下側シール部分と、前記未シール部の少なくとも一部を取り囲むようにして前記上側シール部分と前記下側シール部分とに接続され、且つ、前記上側シール部分及び前記下側シール部分よりも前記収容空間側に向けて張り出した張出部分と、を有し、前記張出部分は、前記上側シール部分よりも前記下側シール部分に近接した位置に、前記収容空間側に向かって突出した角領域を含み」という構成により、解決し得るものであるから、申立人の主張する「未シール部の縁部の構成および当該下方に延びる部分との未シール部の開口の上下方向における延在範囲を拡張または一般化することはできず、サポート要件を充足しない」というようなことはない。

オ.小括
よって、本件発明1?7は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-07-09 
出願番号 特願2017-96751(P2017-96751)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65D)
P 1 651・ 537- Y (B65D)
P 1 651・ 113- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 正宗  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 蓮井 雅之
竹下 晋司
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6222394号(P6222394)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 パウチ  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
代理人 岡村 和郎  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
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