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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16C
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16C
管理番号 1342239
審判番号 訂正2018-390059  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-03-15 
確定日 2018-06-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5837331号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5837331号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5837331号に係る発明は、平成23年5月24日に特許出願されたものであって、平成27年11月13日に特許権の設定登録がされ、その後平成30年3月15日付けで本件審判の請求がされたものである。

第2 請求について
1 請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、特許第5837331号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 訂正の内容
本件訂正審判請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は、本件訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
請求項1の「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1の「前記転動体(3)との接触により前記内輪(2)の軌道面(2a)に生じる表面弾性波の発生を抑制する」との記載を、「前記転動体(3)との接触により前記内輪(2)の内周面に生じる表面弾性波の発生を抑制する」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項2の「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項2の「前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布の合計が最大となる位置での」との記載を、「前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項3の「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項5の「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項5の「前記転動体(3)との接触により前記外輪(1)の軌道面(1a)に生じる表面弾性波の発生を抑制する」との記載を、「前記転動体(3)との接触により前記外輪(1)の外周面に生じる表面弾性波の発生を抑制する」に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項6の「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(9)訂正事項9
請求項6の「前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布の合計が最大となる位置での」との記載を、「前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での」に訂正する。
(10)訂正事項10
請求項7の「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(11)訂正事項11
請求項9の「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する周方向への面圧分布とが軸受の周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(12)訂正事項12
請求項9の「前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)に作用する軸受の周方向への面圧分布の合計が最大となる位置での」という記載を、「前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での」に訂正する。
(13)訂正事項13
請求項10の「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する周方向への面圧分布とが軸受の周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(14)訂正事項14
請求項12の「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する周方向への面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」に訂正する。
(15)訂正事項15
請求項12の「前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)に作用する軸受の周方向への面圧分布の合計が最大となる位置での」との記載を、「前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での」に訂正する。
(16)訂正事項16
請求項13の「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する周方向への面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する周方向への面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」との記載を、「前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項1
(1)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、一の転動体及び他の転動体から作用する面圧分布が内輪と軸との接触面である、内輪の内周面に、しかも、軸受の周方向において生じているものであることが必ずしも明らかでなかったのを、訂正後において明らかにするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0101】及び【0102】と願書に添付した図面(以下、「本件図面」という。)の【図11】?【図14】には、面圧分布が、内輪の内周面に、しかも、軸受の周方向において生じている、すなわち、軸受の周方向におけるものとして生じていることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

2 訂正事項2
(1)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明の「表面弾性波」が「内輪(2)の軌道面(2a)に」生じていたものを、訂正後において、「内輪(2)の内周面に」生じているものとすべく訂正するものである。
請求項1に係る発明は、本件明細書段落【0006】、【0007】及び【0029】等の記載内容からすれば、内輪と軸との間のクリープ現象を抑制する課題を解決することを目的とするものである。そして、クリープ現象の原因である表面弾性波が内輪の内周面に発生していることが、本件明細書段落【0116】?【0120】及び本件図面【図8】?【図10】に記載されている。
したがって、訂正前の請求項1に係る発明の「表面弾性波」は「内輪(2)の軌道面(2a)に」生じているものではなく、「内輪(2)の内周面に」生じているものであることは自明であり、訂正前の「軌道面(2a)」が、本来「内周面」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記(1)で述べたとおり、「表面弾性波」が「内輪(2)の内周面に」生じているものであることは、本件明細書及び本件図面に記載されていたといえるし、「前記転動体(3)との接触により前記内輪(2)の内周面に生じる表面弾性波の発生を抑制する」と訂正することによって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 訂正事項3及び5
訂正事項3及び5は、訂正事項1と実質的に同じ内容である。
したがって、上記1(1)で述べたのと同様の理由により、訂正事項3及び5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
また、上記1(2)で述べたのと同様に理由により訂正事項3及び5は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

4 訂正事項4及び12
(1)訂正の目的
訂正事項4及び12は、請求項2あるいは9に係る発明において、「面圧分布の合計が最大となる位置」に関し「面圧分布」が、訂正前では、内輪と軸との接触面である、内輪の内周面に、しかも、軸受の周方向において生じているものであることが必ずしも明らかでなかったのを、訂正後において明らかにするものである。
したがって、訂正事項4及び12は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項4及び12は、請求項2あるいは9に係る発明の「面圧分布」が内輪の内周面に、しかも、軸受の周方向において生じるものであることを明らかにするという点では訂正事項1と同じである。したがって、上記1(2)で述べたのと同様の理由により、訂正事項4及び12に係る訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

5 訂正事項11及び13
訂正事項11及び13のうち、訂正前の「面圧分布とが」を、訂正後の「面圧分布とを」とする訂正(以下、「この訂正」という。)は、その内容から見て、本来「面圧分とを」と記載すべきを誤って「面圧分とが」と記載したことが明らかである。
したがって、この訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的としたものといえる。
また、この訂正が、いわゆる新規事項の追加に該当するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更をするものに該当しないことは明らかである。
訂正事項11及び13のうち、この訂正の以外の訂正は、訂正事項1と実質的に同じ内容であるから、訂正事項11及び13に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものともいえ、また、上記1(2)のとおり、いわゆる新規事項の追加に該当するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張又は変更をするものに該当しない
したがって、訂正事項11及び13は、特許法第126条第1項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、また、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

6 訂正事項6
(1)訂正の目的
訂正事項6は、 訂正前の請求項5に係る発明において、一の転動体及び他の転動体から外輪に作用する面圧分布が外輪とハウジングとの接触面である、外輪の外周面に、しかも、軸受の周方向において生じているものであることが必ずしも明らかでなかったのを、訂正後において明らかにするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件明細書の段落【0029】には「上記の構成、内輪と軸とのクリープ現象の抑制のみならず、外輪とハウジングとの間のクリープ現象の発生の抑制に関しても、採用することができる。」と記載され、また、本件明細書の段落【0109】には「さらに、外輪1とハウジングHとのクリープ現象の発生に関し、クリープ抑制仕様を設計する場合には、上記外輪1と内輪2の設定条件を逆にすればよい。」と記載されていることから、本件明細書及び本件図面には、面圧分布が外輪とハウジングとの接触面である、外輪の内周面に、しかも、軸受の周方向において生じているものも実質的に記載されていたといえる。
よって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

7 訂正事項7
(1)訂正の目的
訂正事項7は、訂正前の請求項5に係る発明の「表面弾性波」が「外輪(1)の軌道面(1a)に」生じていたものを、訂正後においては、「外輪(1)の外周面に」生じているものとすべく訂正するものである。
ここで、上記2(1)及び6(2)で述べたことを踏まえれば、訂正前の請求項5に係る発明の「表面弾性波」は「外輪(1)の軌道面(1a)に」生じているものではなく、「外輪(1)の外周面に」生じているものであることは自明であるから、訂正前の「軌道面(1a)」が、本来「外周面」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項7は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記(1)及びそこで引用される上記6(2)で述べたとおり、表面弾性波が「外輪(1)の外周面に」生じていることは、本件明細書及び本件図面から自明な事項である。またこの訂正によって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
よって、訂正事項7は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

8 訂正事項8、10、14及び16
訂正事項8、10、14及び16は、訂正事項6と実質的に同じ内容である。
したがって、上記6(1)で述べたのと同様の理由により、訂正事項8、10、14及び16は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
また、上記6(2)で述べたのと同様の理由により訂正事項8、10、14及び16は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

9 訂正事項9及び15について
(1)訂正の目的
訂正事項9及び15は、請求項6あるいは12に係る発明において、「面圧分布の合計が最大となる位置」に関し「面圧分布」が、訂正前では、外輪とハウジングとの接触面である、外輪の外周面に、しかも、軸受の周方向において生じているものであることが必ずしも明らかでなかったのを、訂正後において明らかにするものである。
したがって、訂正事項9及び15は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
(2)新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項9及び15は、請求項6あるいは12に係る発明の「面圧分布」が外輪の外周面に、しかも、軸受の周方向において生じるものであることを明らかにするという点では訂正事項6と同じ内容である。
したがって、上記6(2)で述べたのと同様の理由により、訂正事項9及び15は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

10 独立特許要件
上記のとおり、訂正事項2、7、11及び13は、誤記の訂正を目的とするもの、あるいは、誤記の訂正を目的とするものを含むものであるから、訂正事項2、7、11及び13に係る訂正後の特許請求の範囲の請求項1、請求項5、請求項9及び請求項10に記載されている事項により特定される発明(以下、これらをまとめて「本件訂正発明」という。)は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこでこの点について検討するに、上記2、5及び7で述べたとおり、訂正事項2、7、11及び13は、実質的な発明の内容の変更を伴うものではない。そして、本件訂正発明について特許査定された事情を変更すべき新たな事由を形成するものは現時点では見当たらない。
したがって、本件訂正発明については特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
よって、訂正事項2、7、11及び13は特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記内輪(2)は、その内周部の孔に軸を嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記内輪(2)の孔に軸を嵌め合った状態で、前記外輪(1)と前記軸との間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記内輪(2)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記転動体(3)と前記内輪(2)の軌道面(2a)との接触範囲における前記内輪(2)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の内径SDとして、
t/w>0.5
ただし、w=π×SD/Z
の条件が成立することにより前記転動体(3)との接触により前記内輪(2)の内周面に生じる表面弾性波の発生を抑制することを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記内輪(2)は、その内周部の孔に軸を嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記内輪(2)の孔に軸を嵌め合った状態で、前記外輪(1)と前記軸との間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記内輪(2)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での前記面圧分布の合計の最大値σmaxと、最小となる位置での前記面圧分布の合計の最小値σmidとの間に、
σmid>σmax/2
の条件が成立することを特徴とする転がり軸受。
【請求項3】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記内輪(2)は、その内周部の孔に軸を嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記内輪(2)の孔に軸を嵌め合った状態で、前記外輪(1)と前記軸との間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記内輪(2)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記面圧分布の重複部分における両転動体(3)からの面圧同士が等しくなる位置での前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する境界部面圧値σ_(2)と、前記一の転動体(3)からの面圧が最大となる位置でのその一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用するピーク部面圧値σ_(1)との間に、
σ_(1)/4<σ_(2)
ただし、前記転動体(3)と前記内輪(2)の軌道面(2a)との接触範囲における前記内輪(2)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の前記内輪(2)の軌道面(2a)に対する軸方向への有効接触長さL、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の内径SDとして、
σ_(1)=2qt^(3)/{πt^(4)}
σ_(2)=2qt^(3)/{π(t^(2)+s^(2))^(2)}
q=P/L
s=π×SD/(2Z)
の条件が成立することを特徴とする転がり軸受。
【請求項4】
前記内輪(2)及び前記軸は静止側、前記外輪(1)は回転側であり、前記内輪(2)と前記軸との嵌め合いはすきまばめであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の転がり軸受。
【請求項5】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記外輪(1)をハウジングの内周部に嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記ハウジングの内周部に前記外輪(1)を嵌め合った状態で、前記内輪(2)と前記ハウジングとの間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記外輪(1)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記転動体(3)と前記外輪(1)の軌道面(1a)の接触範囲における前記外輪(1)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の外径LDとして、
t/w>0.5
ただし、w=π×LD/Z
の条件が成立することにより前記転動体(3)との接触により前記外輪(1)の外周面に生じる表面弾性波の発生を抑制することを特徴とする転がり軸受。
【請求項6】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記外輪(1)をハウジングの内周部に嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記ハウジングの内周部に前記外輪(1)を嵌め合った状態で、前記内輪(2)と前記ハウジングとの間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記外輪(1)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での前記面圧分布の合計の最大値σmaxと、最小となる位置での前記面圧分布の合計の最小値σmidとの間に、
σmid>σmax/2
の条件が成立することを特徴とする転がり軸受。
【請求項7】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記外輪(1)をハウジングの内周部に嵌め合い可能とした転がり軸受において、
前記ハウジングの内周部に前記外輪(1)を嵌め合った状態で、前記内輪(2)と前記ハウジングとの間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記外輪(1)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布とをその周方向に沿って重複させ、
前記面圧分布の重複部分における両転動体(3)からの面圧同士が等しくなる位置での前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する境界部面圧値σ_(2)と、前記一の転動体(3)からの面圧が最大となる位置でのその一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用するピーク部面圧値σ_(1)との間に、
σ_(1)/4<σ_(2)
ただし、前記転動体(3)と前記外輪(1)の軌道面(1a)との接触範囲における前記外輪(1)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の前記外輪(1)の軌道面(1a)に対する軸方向への有効接触長さL、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の外径LDとして、
σ_(1)=2qt^(3)/{πt^(4)}
σ_(2)=2qt^(3)/{π(t^(2)+s^(2))^(2)}
q=P/L
s=π×LD/(2Z)
の条件が成立することを特徴とする転がり軸受。
【請求項8】
前記内輪(2)は回転側、前記外輪(1)及び前記ハウジングは静止側であり、前記外輪(1)と前記ハウジングとの嵌め合いはすきまばめであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一つに記載の転がり軸受。
【請求項9】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記内輪(2)は、その内周部の孔に軸を嵌め合い可能とした転がり軸受の設計方法において、
前記内輪(2)の孔に軸を嵌め合った状態で、前記外輪(1)と前記軸との間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記内輪(2)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、
前記隣り合う各転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での前記面圧分布の合計の最大値σmaxと、最小となる位置での前記面圧分布の合計の最小値σmidとの間に、
σmid>σmax/2
の条件が成立するように、軸受内部諸元を決定することを特徴とする転がり軸受の設計方法。
【請求項10】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記内輪(2)は、その内周部の孔に軸を嵌め合い可能とした転がり軸受の設計方法において、
前記内輪(2)の孔に軸を嵌め合った状態で、前記外輪(1)と前記軸との間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記内輪(2)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記内輪(2)の内周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、
前記面圧分布の重複部分における両転動体(3)からの面圧同士が等しくなる位置での前記一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用する境界部面圧値σ_(2)と、前記一の転動体(3)からの面圧が最大となる位置でのその一の転動体(3)から前記内輪(2)に作用するピーク部面圧値σ_(1)との間に、
σ_(1)/4<σ_(2)
ただし、前記内輪(2)の軌道面(2a)と前記転動体(3)との接触範囲における前記内輪(2)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の前記内輪(2)の軌道面(2a)に対する軸方向への有効接触長さL、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の内径SDとして、
σ_(1)=2qt^(3)/{πt^(4)}
σ_(2)=2qt^(3)/{π(t^(2)+s^(2))^(2)}
q=P/L
s=π×SD/(2Z)
の条件が成立するように、軸受内部諸元を決定することを特徴とする転がり軸受の設計方法。
【請求項11】
前記ピーク荷重Pを用いて前記内輪(2)と前記軸との間に生じ得るクリープ量をFEM解析によって算定し、そのクリープ量が所定値以下になるように、前記軸受内部諸元を決定することを特徴とする請求項9又は10に記載の転がり軸受の設計方法。
【請求項12】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記外輪(1)をハウジングの内周部に嵌め合い可能とした転がり軸受の設計方法において、
前記ハウジングの内周部に前記外輪(1)を嵌め合った状態で、前記内輪(2)と前記ハウジングとの間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記外輪(1)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、
前記隣り合う各転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する軸受の周方向における面圧分布の合計が最大となる位置での前記面圧分布の合計の最大値σmaxと、最小となる位置での前記面圧分布の合計の最小値σmidとの間に、
σmid>σmax/2
の条件が成立するように、軸受内部諸元を決定することを特徴とする転がり軸受の設計方法。
【請求項13】
外輪(1)の軌道面(1a)と内輪(2)の軌道面(2a)との間に転動体(3)を備え、前記外輪(1)をハウジングの内周部に嵌め合い可能とした転がり軸受の設計方法において、
前記ハウジングの内周部に前記外輪(1)を嵌め合った状態で、前記内輪(2)と前記ハウジングとの間の荷重により、最も負荷が大きい一の転動体(3)から前記外輪(1)に対してピーク荷重Pが作用した場合に、前記一の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布と、隣り合う他の転動体(3)から前記外輪(1)の外周面に作用する周方向における面圧分布とを軸受の周方向に沿って重複させ、
前記面圧分布の重複部分における両転動体(3)からの面圧同士が等しくなる位置での前記一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用する境界部面圧値σ_(2)と、前記一の転動体(3)からの面圧が最大となる位置でのその一の転動体(3)から前記外輪(1)に作用するピーク部面圧値σ_(1)との間に、
σ_(1)/4<σ_(2)
ただし、前記外輪(1)の軌道面(1a)と前記転動体(3)との接触範囲における前記外輪(1)の肉厚の最も薄い箇所での軌道面に直交する方向への相当肉厚t、前記転動体(3)の前記外輪(1)の軌道面(1a)に対する軸方向への有効接触長さL、前記転動体(3)の配置数Z、その軸受の外径LDとして、
σ_(1)=2qt^(3)/{πt^(4)}
σ_(2)=2qt^(3)/{π(t^(2)+s^(2))^(2)}
q=P/L
s=π×LD/(2Z)
の条件が成立するように、軸受内部諸元を決定することを特徴とする転がり軸受の設計方法。
【請求項14】
前記ピーク荷重Pを用いて前記外輪(1)と前記ハウジングとの間に生じ得るクリープ量をFEM解析によって算定し、そのクリープ量が所定値以下になるように、前記軸受内部諸元を決定することを特徴とする請求項12又は13に記載の転がり軸受の設計方法。
【請求項15】
前記クリープ量は、前記転がり軸受のライフサイクルの中で1回転以下に設定されることを特徴とする請求項11又は14に記載の転がり軸受の設計方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-05-25 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-12 
出願番号 特願2011-115686(P2011-115686)
審決分類 P 1 41・ 855- Y (F16C)
P 1 41・ 853- Y (F16C)
P 1 41・ 856- Y (F16C)
P 1 41・ 852- Y (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
登録日 2015-11-13 
登録番号 特許第5837331号(P5837331)
発明の名称 転がり軸受  
代理人 中谷 弥一郎  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 直也  
代理人 清水 隆  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  
代理人 中谷 弥一郎  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鎌田 直也  
代理人 清水 隆  

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