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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A23F
審判 全部無効 2項進歩性  A23F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A23F
管理番号 1342243
審判番号 無効2014-800165  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-30 
確定日 2018-07-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5252873号発明「コーヒー飲料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5252873号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?2〕、〔3?4〕について一群の請求項ごとに訂正することを認める。 特許第5252873号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5252873号は、平成19年10月3日(特許法第41条の規定による優先権主張 平成18年10月4日)に特願2007-259409号として出願され、平成25年4月26日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後の手続の経緯の概要は以下の通りである。

平成26年 9月30日付け 審判請求書
平成27年 1月 6日 審判事件答弁書
平成27年 2月16日付け 審理事項通知書
平成27年 3月13日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 3月13日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 3月20日 口頭審理(調書作成)
平成27年 4月 3日 上申書(被請求人)
平成27年 4月17日 上申書(請求人)
平成27年 7月17日付け 審決の予告
平成27年 9月18日 訂正請求書
平成27年12月 1日付け 弁駁書

第2 訂正の適否
1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第5252873号の明細書及び特許請求の範囲(以下、両者を併せて「特許明細書等」という。)を、平成27年9月18日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲(以下、両者を併せて「訂正明細書等」という。)のとおり一群の請求項ごとに訂正することであり、その訂正事項は、以下に記載する請求項1及び2からなる一群の請求項に係る訂正事項1及び2並びに請求項3及び4からなる一群の請求項に係る訂正事項3である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の分子量5000?100000に相当するピーク面積の50%以上が多糖類低分子化処理により減少する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(C)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。」とあるのを、
「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。」
に訂正する。
これに伴い、同請求項において、「(A)?(C)の条件の少なくとも1つ」とあるのを「(A)及び(B)の条件の少なくとも1つ」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、
「コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理したコーヒー抽出物に由来する多糖類」とあるのを、
「コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の分子量5000?100000に相当するピーク面積の50%以上が多糖類低分子化処理により減少する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(C)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。」とあるのを、
「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。」
に訂正する。
これに伴い、同請求項において、「(A)?(C)の条件の少なくとも1つ」とあるのを「(A)及び(B)の条件の少なくとも1つ」に訂正する。


2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
なお、請求人は、平成27年12月1日付け弁駁書において、「訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではないし、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。また、特許法第134条の2第1項ただし書きに規定するいずれの目的にも該当しない。」と主張している。

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の条件(A)を削除するものであり、同請求項に記載の選択肢の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上拡張又は変更の存否及び新規事項追加の有無
上記アで述べたように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の選択肢の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、また、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ まとめ
上記「ア」「イ」から、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項1において、
「コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理したコーヒー抽出物に由来する多糖類」とあるのを、
「コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」に訂正するものである。
「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理したコーヒー抽出物」との記載は、「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理」する方法を用いて「コーヒー抽出物」が特定されているとの解釈によれば、いわゆる「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」に関連して「請求項に係る発明が明確でない」との疑義を生ずる恐れが全くないとは言えない。そこで、被請求人は、「多糖類低分子化処理された」と訂正することにより、「多糖類低分子化処理された」後の「コーヒー抽出物」の状態であることをより明確にしようと試みたと推測される。
してみれば、訂正事項2は、請求人が主張するように、訂正前の請求項に記載された発明を明瞭な記載にするためのものではない、とも言えず、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

イ 特許請求の範囲の実質上拡張又は変更の存否及び新規事項追加の有無
訂正事項2は、単に「多糖類低分子化処理された」後の「コーヒー抽出物」の状態であることをより明確にしようとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、また、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ まとめ
上記「ア」「イ」から、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載の条件(A)を削除するものであり、同請求項に記載の選択肢の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上拡張又は変更の存否及び新規事項追加の有無
上記(1)で述べたように、訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載の選択肢の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、また、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ まとめ
上記「ア」「イ」から、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

3 訂正請求に対する当審の結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項により準用する第126条第5項及び6項の規定を満たすものである。

第3 本件訂正発明
以上のとおりであるから、本件請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明4」という。)は、訂正明細書等の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。(下線は訂正部分)

「【請求項1】
重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%含有し、コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が次の(A)及び(B)の条件の少なくとも1つを満足することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料。
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。

【請求項2】
トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である請求項1に記載のコーヒー飲料。

【請求項3】
コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、次の(A)及び(B)の条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得、得られたコーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法。
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。

【請求項4】
トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれるいずれかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である請求項3に記載の乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求の趣旨
特許第5252873号の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2 請求の理由
請求の理由は、平成27年3月20日の口頭審理において整理したとおり、以下の無効理由(1-1)?(1-13)、(2-1)?(2-13)、(3-1)?(3-13)及び(4-1)?(4-13)の52個である。

(1-1)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
(1-2)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-3)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第4?11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-4)本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4?11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-5)本件請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4?11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-6)本件請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-7)本件請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-8)本件請求項1に係る発明は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-9)本件請求項1に係る発明は、甲第7号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-10)本件請求項1に係る発明は、甲第8号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-11)本件請求項1に係る発明は、甲第9号証に記載された発明、及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1-12)本件請求項1に係る発明に関し、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1-13)本件請求項1に係る発明に関し、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

また、本件請求項2、3、4に係る発明についての無効理由は、それぞれ、上記(1-1)?(1-13)における「本件請求項1に係る発明」を「本件請求項2に係る発明」、「本件請求項3に係る発明」、「本件請求項4に係る発明」と読みかえた(2-1)?(2-13)、(3-1)?(3-13)、(4-1)?(4-13)である。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2002-272375号公報
甲第2号証:特開平7-184546号公報
甲第3号証:特開2003-47406号公報
甲第4号証:特開平10-165152号公報
甲第5号証:特開平11-75683号公報
甲第6号証:特開平11-75684号公報
甲第7号証:特開平11-75685号公報
甲第8号証:特開2004-229566号公報
甲第9号証:缶詰時報, vol.84, no.10(2005) p.34-36
甲第10号証:缶詰時報, vol.85, no.2(2006年2月) p.50
甲第11号証:日本缶詰協会技術大会プログラム, vol.45th(1996) p.7(11)
甲第12号証:平成26年6月27日付け実験成績証明書
(以上、平成26年9月30日付け審判請求書に添付して提出。)
甲第13号証:平成27年3月2日付け実験成績証明書
甲第14号証:平成27年3月2日付け実験成績証明書
甲第15号証:平成27年3月2日付け実験成績証明書
甲第16号証:平成27年3月2日付け実験成績証明書
甲第17号証:「ポリグリセリンエステル」阪本薬品工業株式会社(1986) p.42
甲第18号証:特開2001-95514号公報
甲第19号証:特開平8-228735号公報
甲第20号証:特開2008-271852号公報
甲第21号証:特開2009-118772号公報
甲第22号証:「食品用乳化剤-基礎と応用-」株式会社光琳(1997) p.271-272
甲第23号証:特開2004-49113号公報
甲第24号証:「ミルク総合事典」朝倉書店(1992) p.488-489
(以上、平成27年3月13日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出。)
甲第25号証:「珈琲の事典」成美堂出版(1997)p.169
甲第26号証:「コーヒー学講義」人間の科学新社(2001) p.175-177
(以上、平成27年4月17日付け上申書に添付して提出。)

第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

2 証拠方法
乙第1号証:特開2000-300226号公報
乙第2号証:特開平8-80165号公報
乙第3号証:特開平3-266939号公報
乙第4号証:特開平6-335348号公報
乙第5号証:カタログ「食品添加物 グリセリン脂肪酸エステル SYグリスタ-」阪本薬品工業株式会社(1998) ステアリン酸エステルに関する頁
乙第6号証:特開2000-295976号公報
乙第7号証:カタログ「NIKKOL Product Profiles」日光ケミカルズ株式会社p.19-22
乙第8号証:特開平10-225264号公報
乙第9号証:平成27年1月5日付け実験成績証明書
乙第10号証:東洋食品研究所 研究報告書, no.19(1992) p.167-173
乙第11号証:「ショ糖脂肪酸エステルの新しい応用技術」工業技術会(株)主催「乳化剤の新しい機能を活かした食品開発」(2001.11.08) p.1-11
乙第12号証:「A7 高純度ジグリセリンエステルの特性と応用動向」ifia JAPAN'98 第3回 国際食品素材/添加物展・会議(1998) p.1-4
(以上、平成27年1月6日付け審判事件答弁書に添付して提出。)
乙第13号証:平成27年3月10日付け「一般社団法人 おいしさの科学研究所『缶入りミルクコーヒーの官能評価試験報告書』」
乙第14号証:平成27年3月11日付け「説明書」
(以上、平成27年3月13日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出。)

第6 甲号証の記載事項
甲第1?11、及び17号証には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付与した。

1 甲第1号証
[甲1-1]「【請求項1】少なくともコーヒー抽出液またはコーヒー溶出液を含むコーヒー飲料の原料成分を、ガラクトマンナナーゼ活性および酸性プロテアーゼ活性を有する糸状菌(Aspergillus niger)起源の酵素で処理する工程を含むコーヒー飲料の製造方法。
【請求項2】糸状菌(Aspergillus niger)起源の酵素として、ガラクトマンナナーゼ活性と酸性プロテアーゼ活性の両方を有する糸状菌起源の酵素、またはガラクトマンナナーゼ活性を有する糸状菌起源の酵素と酸性プロテアーゼ活性を有する糸状菌起源の酵素の混合物を用いることを特徴とする、請求項1記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項3】コーヒー飲料の原料成分が、さらに牛乳由来の乳原料を含むものである請求項1または2記載のコーヒー飲料の製造方法。」(【特許請求の範囲】)

[甲1-2]「…しかしながら、コーヒー飲料は、本来コーヒー抽出液や溶出液に含まれるコーヒー由来の繊維質や油脂成分に基づいて、保存中、特にホットベンダー等の高温状態での保存中に沈殿の発生や脂肪の分離を生じやすいという性質を有している。…【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造時の高温処理や製造後の長期保存によっても沈殿物や脂肪の分離などが発生せず、安定性に優れたコーヒー飲料を製造する方法を提供することを目的とするものである。」(【0002】?【0008】)

[甲1-3]「【課題を解決するための手段】本発明者は、コーヒー飲料に関する上記従来の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、コーヒー飲料の製造工程において、コーヒー抽出液やコーヒー溶出液を含むコーヒー調合液を糸状菌…起源のガラクトマンナナーゼ活性を有する酵素と糸状菌…起源の酸性プロテアーゼ活性を有する酵素との両方で処理するか、あるいは両方の酵素活性を有する酵素で処理することにより、高温殺菌後のゲル状沈殿物の生成が防止でき、またホットベンダー等における長期の保管条件においても沈殿やリングの発生が認められないコーヒー飲料を製造することができることを見出し、上記酵素処理が、製造時並びに保存中における安定性に優れたコーヒー飲料を調製する上で極めて有用であることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。」(【0011】)

[甲1-4]「上記コーヒー抽出液に配合する…乳化剤としても、食品添加物として認可されている添加物であれば制限はなく、具体的にはHLB15?16のショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、乳成分の加水分解物などを例示することができる。これらは1種で使用されても、また2種以上の混合物として使用してもよい。」(【0021】)

[甲1-5]「ガラクトマンナナーゼ活性とは、植物組織の構成成分である高分子多糖類のガラクトマンナンを低分子物質に加水分解する活性である。…酸性プロテアーゼは、一般にタンパクのアミノ末端及びカルボキシル末端から順次アミノ酸を遊離させる作用…を有するエキソ型と、タンパクを大まかに分解して低分子化していく作用…を有するエンド型に大別できる。好ましくはエンド型である。本発明では…10,000?1,000,000単位のプロテアーゼ活性(蛋白分解力)をもつ酵素を使用することが好ましい。なお、ここでいう酵素の活性単位は、酸性プロテアーゼが乳製カゼインを基質とするpH3.0、30℃の反応条件で、反応初期の1分間に1μgのチロシンに相当する非タンパク性のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酸性プロテアーゼの量を1単位とするものである。」(【0023】?【0024】)

[甲1-6]「…ガラクトマンナナーゼは一般にpHに関してはpH3?9の間で、温度に関しては75℃までは安定であり、酸性プロテアーゼは一般にpHに関してはpH3?6の間で、温度に関しては60℃までは安定である。従って、このpHと温度の範囲から各酵素の至適pHまたは至適温度を適宜選択して用いることができる。…pHは…好ましくは3?6の範囲から、温度は…好ましくは30?60℃の範囲から選択使用される。また反応時間も…上記反応条件下で…好ましくは30分間以上かけて反応することが望ましい。…コーヒー飲料は、一般に、コーヒー焙煎豆からコーヒー抽出液またはコーヒー溶出液を調製し、また必要に応じてさらにこれらのコーヒー抽出液等に、乳成分、糖類、甘味料、カラメル、香料、食塩、食用油脂、乳化剤、安定剤、酸化防止剤、保存料、色素または酸味料といった原料成分を水とともに配合溶解してコーヒー調合液を調製し、次いでこれらを均質機での均質化、例えばプレートヒーター上での加温、密封容器への注入、充填、巻き締め、殺菌処理及び冷却といった一連の工程に付すことによって製造される。前述するガラクトマンナナーゼ並びに酸性プロテアーゼによる酵素処理は、通常上記工程において、均質化工程前のコーヒー抽出液若しくはコーヒー溶出液、またはコーヒー調合液に対して行われることが好ましい。」(【0027】?【0028】)

[甲1-7]「実施例1 砂糖5部、ショ糖脂肪酸エステル0.06部を粉体混合して水に添加し、これに牛乳10部(乳固形分11.7%、乳脂肪3.5%含有)、全脂粉乳1部、脱脂粉乳0.5部、コーヒー抽出液(Brix=4.6)37部、酵素(セルロシンGM5P:…酸性プロテアーゼ活性 5250単位 、ガラクトマンナナーゼ活性10150単位)0.01部を加え、60℃、30分間撹拌溶解した後、10%重曹溶液でpHを6.8に調整した。この混合溶液を80℃まで加熱し、水にて全量100部に調製し、ホモジナイズ(第1段100kg/cm^(2)、第2段50kg/cm^(2))した。ホモジナイズ後の溶液を90℃まで加温して容器に充填し120℃、20分間の条件でレトルト殺菌機を用いて殺菌を行って、コーヒー飲料(コーヒー生豆換算8%)を調製した。できたコーヒー飲料を開封したところ、ゲル状沈殿物ならびに脂肪の分離、リングの生成は認められず、また風味、味ともに良好であった。」(【0051】)

[甲1-8]「実施例3 砂糖5部、ショ糖脂肪酸エステル0.06部をそれぞれ粉体混合し、これに牛乳35部(乳固形分11.7%、乳脂肪3.5%含有)、コーヒー抽出液(Brix=4.6)20部、酵素(セルロシンGM5P:…ガラクトマンナナーゼ活性 10150単位)0.1部を加えて60℃、30分間撹拌混合し、10%重曹溶液でpHを6.8に調整した。この混合溶液を80℃まで加熱し、水にて全量100部に調製し、ホモジナイズ(第1段100kg/cm^(2)、第2段50kg/cm^(2))した。ホモジナイズ後の溶液を90℃まで加温して容器に充填し120℃、20分間の条件でレトルト殺菌機を用いて殺菌を行って、コーヒー飲料(コーヒー生豆換算4.3%、乳固形分4%)を調製した。できたコーヒー飲料を開封したところ、ゲル状沈殿物の生成は認められなかった。また試飲したところ、風味、味ともに良好であった。」(【0053】)

[甲1-9]「実施例4 砂糖5部、ショ糖脂肪酸エステル0.06部、酵素(セルロシンGM5P…の凍結乾燥品:…ガラクトマンナナーゼ活性10150単位)0.03部をそれぞれ粉体混合して水に添加し、これに牛乳35部(乳固形分11.7%、乳脂肪3.5%含有)、コーヒー抽出液(Brix=4.6)20部を加え、60℃で10分間撹拌溶解した。この混合溶液を80℃まで加熱し、水にて全量100部に調製し、ホモジナイズ(第1段100kg/cm^(2)、第2段50kg/cm^(2))した。ホモジナイズ後の溶液を90℃まで加温し、120℃、20秒間の条件でプレート殺菌機を用いて殺菌を行って、ブリックパック容器に無菌充填してコーヒー飲料(コーヒー生豆換算4.3%、乳固形分4%)を調製した。室温で60日保存した後、コーヒー飲料を開封したところ、沈殿物(ゲル状沈殿物を含む)並びに脂肪の分離、リングの生成は認められず、乳の風味、味ともに良好であった。」(【0054】)

2 甲第2号証
[甲2-1]「【請求項1】コーヒー抽出液を、マンナン分解酵素による処理と、アルカリ性ナトリウム塩またはアルカリ性カリウム塩添加による処理に付すことを特徴とする、コーヒー飲料の製造方法。」(【特許請求の範囲】)

[甲2-2]「【従来の技術】本来、コーヒー抽出液は保存中に濁りや沈澱を発生しやすい性質を有している。…【発明が解決しようとする課題】本発明は、長期間保存した後でも沈澱発生が防止されているコーヒー飲料の製造方法を提供することを目的とするものである。」(【0002】?【0003】)

[甲2-3]「コーヒー抽出液のマンナン分解酵素による処理において…反応温度、時間、pH、添加量は使用する酵素の由来あるいは活性等によって適した条件を選択すればよい。たとえば、ガマナーゼ1.5L…の場合であれば、通常、原料の焙煎豆に対して0.1%以上添加して、40?50℃、pH4.5?5.5で30分間以上反応させればよいが、好ましくは、約0.2%添加して、45℃、pH5.0前後の条件で2時間以上反応させることが望ましい。なお、本明細書中でいう%はすべて重量%である。」(【0007】)

[甲2-4]「実施例2:ミルク入りコーヒーに対する効果1 コーヒー焙煎豆(サントス#2)を中挽きにしたもの300gを95℃の湯で抽出して、3000mlのコーヒー抽出液を得た。これを45℃に冷却した後、ガマナーゼ1.5Lを1.2g(原料焙煎豆0.4%に相当)添加した。2時間後、脱脂粉乳、全粉乳、砂糖、乳化剤(シュガーエステル)および炭酸水素ナトリウムを最終製品(水で希釈して焙煎豆含量を5.5%に調製したもの)に対し、それぞれ0.4%,0.25%,4.7%,0.1%および0.12%添加、混合してから、70℃に昇温してホモジナイザーにより150kg/cm^(2) で均質化をおこなった。これを190g容量の缶に充填して、121℃、30分間殺菌した。」(【0012】)

3 甲第3号証
[甲3-1]「【請求項1】 ガラクトマンナン分解酵素によるコーヒー液の処理工程を含むコーヒー飲料の製造方法において、前記処理工程は前記コーヒー液の一部に事前に前記酵素を溶解してなる酵素液を用いることを特徴とする製造方法。」(【特許請求の範囲】)

[甲3-2]「【従来の技術】…そのような市場の要求に答えたコーヒー飲料の製造においては、コーヒー由来の沈殿が発生しやすく、その防止を図り、高品質な風味や香りのコーヒー飲料を製造する方法が求められている。
【0003】コーヒー抽出液にはカフェイン、クロロゲン酸、糖類、有機酸、蛋白質などが含まれ、コーヒー特有の風味・香りを呈している。しかし、これらの成分に含まれる多糖類や蛋白質等が、製造工程での加熱によって変性し、沈殿が発生する事が知られている。

【0005】コーヒーの濁り・沈殿成分の1つに、ガラクトマンナン等の多糖類が挙げられる。それらの成分を分解し、沈殿を防止するために、種々の方法が提案されている。…
【0006】【発明が解決しようとする課題】…
【0007】そこで、そのような沈殿の発生しやすいコーヒー飲料においても、経時的な保存における沈殿の発生を防止し、かつ、品質を劣化させないコーヒーの製造方法を提供することを目的とする。」(【0002】?【0007】)

[甲3-3]「前記コーヒー液は、常法により製造することができる。…前記コーヒー液のpHは、20℃でpH4.5?5.8程度であり、ガラクトマンナン分解酵素の示適pH内であるので、本発明においては、特にコーヒー液のpHを調整せずに以下の酵素処理を行うことができる。…まず、前記処理対象のコーヒー液の一部にガラクトマンナン分解酵素を全量添加し、撹拌・溶解させて酵素液を調製する。酵素液は、酵素を溶解可能な液量であれば特に制限されるものではないが、通常、処理対象のコーヒー液の1/30?1/10程度が好ましい。この時の酵素液中の酵素濃度は、0.035?2.0重量%程度である。…前記酵素液の温度は、以下の酵素反応の温度と同温の30?40℃が好ましい。…次いで、前記酵素液を、処理対象の残余のコーヒー液に添加し、適宜撹拌しながら所定の温度で反応させる。好ましい態様として、前記したように、コーヒーの液温が30?40℃で、25分?35分反応させる。」(【0022】?【0026】)

[甲3-4]「[実施例1]焙煎L値24の焙煎豆55kgを粉砕し、100℃の熱水にて抽出し、コーヒー抽出液570kg(固形重量11.22kg)を得た。得られたコーヒー抽出液を35℃まで冷却し、その5%量を分取し、ガラクトマンナン分解酵素(セルロシンGM5…10000units/g)0. 01kgを加えて事前に溶解させ、酵素液を調製した。…コーヒー濃縮液5kg(固形重量2.18kg)と残りのコーヒー抽出液(固形重量10.659kg)とを混合し、そこに前記酵素液(固形重量0.561kg)を添加し、撹拌させながら35℃で30分間反応させた。…反応液を遠心分離(5400rpm、2000L/h)した後、砂糖、牛乳、シュガーエステルを加え、炭酸水素ナトリウムを最終製品の0.2重量%となるように添加し、水を加えて1000Lに調合した。これを190g缶に充填し、巻締め、121℃で30分間加熱殺菌した。」(【0033】?【0035】)

[甲3-5]「[実施例2]コーヒーの濃縮液(固形分44重量%)500gの5%に相当する25gに、セルロシンGM5(10000units/g)0. 44g(固形分の0. 2重量%相当)を添加し、40℃で溶解させ、酵素液とした。残りの濃縮液475gと前記酵素液25gを混合し、撹拌させながら40℃で1時間反応させた。…反応後、濃縮液を100メッシュにてろ過した。…ろ過した濃縮液10gに水240gを加え固形濃度1.66%のコーヒー液を調製し、炭酸水素ナトリウムを0.5g(液重量の0.2%相当)を加えて溶解させ、これを250g瓶に充填し、密閉後90℃で30分加熱殺菌し、「サンプル1」とした。」(【0039】?【0041】)

4 甲第4号証
[甲4-1」「…【請求項5】ポリグリセリン脂肪酸モノエステルを有効成分とする乳化剤が含有されていることを特徴とする乳成分含有飲料。
【請求項6】乳化剤におけるポリグリセリン脂肪酸モノエステルを構成するポリグリセリン部分が、トリ、テトラ、ペンタグリセリンから成ることを特徴とする請求項5に記載の乳成分含有飲料。
【請求項7】乳化剤におけるポリグリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の内、1種類又は2種類以上の混合物から成り、且つ、その合計量が70重量%以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の乳成分含有飲料。
【請求項8】乳化剤におけるポリグリセリン脂肪酸モノエステルを構成するモノエステル含有量が50重量%以上であることを特徴とする請求項5、6又は7に記載の乳成分含有飲料。」(【特許請求の範囲】)

[甲4-2]「【発明が解決しようとする課題】…通常の温度条件で滅菌処理するだけでよく、しかも通常のレトルト滅菌処理を行なった後に高温状態で保存した場合であっても耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖することが抑制され、乳成分含有飲料内容物が長期にわたって物理的化学的変化を生じないように考慮された乳成分含有飲料を明らかにすることを目的とするものである。」(【0006】)

[甲4-3]「本発明の乳化剤を使用するには、乳成分含有飲料中に直接添加するか、乳成分含有飲料を構成する水或いは乳成分中に配合して添加するようにしてもよい。後述するように、本発明の乳化剤を添加することにより、Bacillus stearothermophilus、Clostridium thermo-aceticum、Desulfotomacukum nigrificans等の耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖を抑制することができる。このような効果が期待できる乳化剤の最小有効濃度は、1ppmであるが、添加量としては、乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppmである。100ppm未満では耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖を抑制する効果が不十分であり、10000ppmを越える添加量では味を損ねるので好ましくない。」(【0013】)

[甲4-4]「…実施例1(トリグリセリン脂肪酸モノエステル) …以下の乳化剤(トリグリセリン脂肪酸モノエステル)を得た。
乳化剤1A:トリグリセリンモノラウレート(モノエステル含有量70wt%)
乳化剤1B:トリグリセリンモノミリステート(モノエステル含有量80wt%)
乳化剤1C:トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」(【0016】)

[甲4-5]「実験例7 コーヒー豆抽出液4Kg、グラニュウ糖0.8Kg、牛乳4Kg、全脂粉乳1.2Kgを混合し、実施例1…に示した乳化剤を5g配合した(乳脂肪1.5%)。これを予備乳化後、ピストンホモゲナイザーにより、150 Kg/cm^(2)にて均質化を行なった。次に、得られたコーヒー乳飲料250ml毎に分注(40本)し、芽胞懸濁液(Bacillus stearothermophilus、濃度1×104/ml)を1ml添加、121℃、1分間滅菌した後、55℃下に30日間保存し、40本中の変敗本数を測定した。これらの結果を表3に示す。」(【0031】)

[甲4-6]実験例7において、乳化剤1A、1B及び1Cを配合したコーヒー乳飲料の変敗本数が0であった旨が記載された表3(【0032】)

[甲4-7]「実験例9 乳化剤としてショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルP-1670を使用)を使用する外は実験例7に準じて行なった。これらの結果を表4に示す。」(【0034】)

[甲4-8]実験例9において、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを配合したコーヒー乳飲料の変敗本数が17であった旨が記載された表4(【0035】)

[甲4-9]「実験例10 コーヒー豆抽出液800g、グラニュウ糖160g、牛乳800g、全脂粉乳240gを混合し実施例1…に示した乳化剤を2g配合した(乳脂肪1.5%)。これを予備乳化後、ピストンホモゲナイザーにより150Kg/cm^(2)にて均質化を行なった。次に、得られたコーヒー乳飲料を50ml毎に分注(40本)し、芽胞懸濁液(Clostridium thermoaceticum、濃度1×10^(4)/ml)を1ml添加、123℃、15分間減菌した後、55℃下に30日間保存し、40本中の変敗本数を測定した。これらの結果を表5に示す。」(【0036】)

[甲4-10]実験例10において、乳化剤1A、1B及び1Cを配合したコーヒー乳飲料の変敗本数が0であった旨が記載された表5(【0037】)

[甲4-11]「実験例12 乳化剤としてショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルP-1670を使用)を使用する外は実験例10に準じて行なった。これらの結果を表6に示す。」(【0039】)

[甲4-12]実験例12において、、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを配合したコーヒー乳飲料の変敗本数が10であった旨が記載された表6(【0040】)

[甲4-13]「【発明の効果】本発明に係る乳化剤は、耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖を抑制する機能を有しており、これを添加した乳成分含有飲料は、自動販売機などでの加温状態の下で保存しても、耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖が抑制され、フラットサワー変敗が防止され、且つ、乳成分の凝集、オイルオフ、フェザーリング、沈殿、ネックリング等の発生の問題が生じることがないので頭記した課題が解決される。」(【0041】)

5 甲第5号証
[甲5-1]「【請求項1】 乳脂肪分が0.8%以上、1.8%未満で、かつ乳蛋白が乳脂肪分の80%以上であり、0.025%?0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.015%?0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有する乳飲料。
【請求項2】 ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度が2?4であり、その構成脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれ、且つ、モノエステルの含量が50%以上であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。

【請求項7】 乳飲料がミルクコーヒーであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の乳飲料。」(【特許請求の範囲】)

[甲5-2]「実施例1 コーヒーエキス37g、全脂粉乳34g、グラニュー糖80g、重曹1.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.3g、ショ糖脂肪酸エステルを0.3g、および水を混合し全量を1000gとして、高圧ホモジナイザーを用いて60℃にて150kg/50kgの圧力で均質化後、30g試験管に各27gずつ分注した。この試験管をレトルト殺菌機で121℃、20分の条件で殺菌してミルクコーヒー(乳蛋白量0.8%、乳脂肪分0.9%)を得た。…」(【0012】)

6 甲第6号証
[甲6-1]「【請求項1】 乳成分として1.8%以上の乳脂肪分及び乳脂肪分の80%以上の乳蛋白を含有し、0.02%?0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.03%?0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有する乳飲料。
【請求項2】 ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度が2?4であり、その構成脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれ、且つ、モノエステルの含量が50%以上であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。

【請求項7】 乳飲料がミルクコーヒーであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の乳飲料。」(【特許請求の範囲】)

[甲6-2]「実施例1 コーヒーエキス37g、全脂粉乳68g、グラニュー糖80g、重曹1.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.6g、ショ糖脂肪酸エステル0.4g、および水を混合し、全量を1000gとして、高圧ホモジナイザーを用いて60℃にて150kg/50kgの圧力で均質化後、30g試験管に各27gずつ分注した。この試験管をレトルト殺菌機で121℃、20分の条件で殺菌してミルクコーヒー(乳蛋白量1.7%、乳脂肪分1.8%)を得た。…」(【0012】)

7 甲第7号証
[甲7-1]「【請求項1】 0.8%未満の乳脂肪分と乳脂肪分含量の70%以上の乳蛋白を含有し、且つ、0.025%?0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.005%?0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有してなる乳飲料。
【請求項2】 ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度が2?4であり、構成脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれ、且つ、モノエステルの含量が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の乳飲料。

【請求項7】 乳飲料がミルクコーヒーであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の乳飲料。」(【特許請求の範囲】)

[甲7-2]「実施例1 コーヒーエキス37g、全脂粉乳18g、グラニュー糖80g、重曹1.3g、ショ糖脂肪酸エステル0.15g、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.6gと水とを混合し、全量を1000gとした。これを高圧ホモジナイザーを用いて60℃にて150kg/50kgの圧力で均質化後、30g試験管に各27gずつ分注し、レトルト殺菌機で121℃、20分の条件で殺菌してミルクコーヒーを得た。…」(【0013】)

8 甲第8号証
[甲8-1]「【請求項1】
平均重合度が2?3のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであって、該エステル中のモノエステル含量が50質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル(a)、増粘安定剤(b)及び水(c)を含有することを特徴とする食品の保存性向上剤。

【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載された保存性向上剤が添加されていることを特徴とする食品。
【請求項5】
食品が低酸性飲料であることを特徴とする請求項4に記載された食品。
【請求項6】
食品がコーヒー乳飲料、カフェオーレ、ミルクティー、ミルクココア又はミルクセーキであることを特徴とする請求項4に記載された食品。」(【特許請求の範囲】)

[甲8-2]「本発明になる食品の保存性向上剤の添加量は、食品に対して通常約0.01?5質量%、好ましくは約0.1?3質量%、より好ましくは約0.2?2質量%である。また、本発明の食品は、ポリグリセリン脂肪酸エステル (a)を約0.0001?0.3質量%含むのが好ましい。」(【0025】)

[甲8-3]「(試験例3)コーヒー乳飲料を作製し、保存試験を行った。飲料の配合を表5に示す。

」(【0044】?【0045】)

9 甲第9号証
[甲9-1]「[目的]加温販売される低酸性飲料缶詰の変敗原因菌である好熱性嫌気性細菌芽胞に対しては乳化剤がその発育を抑制すること、また、製品に含まれる乳…の含有量によって抑制するための添加量が異なることは周知されている。…今回、ミルクコーヒー中における乳化剤の種類と添加量が好熱性嫌気性細菌芽胞の発育に及ぼす影響について調べた。
[方法]供試菌株はMoorella thermoacetica 2株(菌株番号5801および5810…)とThermoanaerobacter mathranii 2株(菌株番号5901および5915)の計4株を用いた。…供試ミルクコーヒー缶詰は牛乳が13%…で、乳化剤は三菱化学製のP-1670と理研ビタミン製のポエムTRP-97RF…を用いた。常法により調製し、190g缶に充填、密封後123℃で20分加熱処理した。…供試ミルクコーヒー缶詰1缶を無菌的に開缶し…供試菌株の芽胞液を所定の濃度になるよう接種し…チューブに分注した後…121℃で10分から63分まで加熱処理した。各加熱条件にチューブ5本を供した。加熱処理したチューブは55℃で1カ月恒温放置し、外観およびpH測定により発育の有無を判定した。
[結果]試験結果を表1に示す。供試コーヒー中…では供試菌株5801および5810株…は乳化剤の種類に関係なく…添加量200ppm以上では発育はみられなかった。また、菌株番号5901および5915の2株はP-1670の添加量300ppmまで発育がみられた…しかし、TRP-97RFの添加量200ppmでは菌株番号5901および5915は121℃で13分…の加熱処理で発育はみられず、添加量300ppmでは121℃で10分…の加熱処理で発育はみられなかった。…以上の結果から、乳化剤が供試ミルクコーヒー中における好熱性嫌気性細菌芽胞の発育を抑制すること…を再確認した。また、今回用いた乳化剤2種類の供試菌株に対する発育抑制効果は…P-1670よりTRP-97RFの方がより短い加熱時間で発育が陰性となる結果が多くみられた。よって、乳化剤としては同じ添加量であればミルクコーヒー中ではTRP-97RFが好熱性嫌気性細菌芽胞の抑制に、より期待できるものと思われる。」(34頁右欄最下行?36頁左欄27行)

[甲9-2]「

」(表1)

[甲9-3]「高純度トリグリセリン脂肪酸エステル(製品名ポエムTRP-97RF)は当社独自の蒸留技術によって製作された飲料風味に影響を与え難い新規の乳化剤である。」(36頁右欄第3?5行)

[甲9-4]「飲料に配合されている原料成分に対し、ポエムTRP-97RFの静菌阻害効果についても検討した。原料成分として…、乳、…について培地テストを評価したところ、静菌阻害影響は見られるものの、ショ糖脂肪酸エステルよりも少ない添加量で静菌効果が得られることを確認した。
飲料における乳化安定性効果についても検討した。…試験はミルクコーヒーを缶充填し、常温保存及び55℃において所定時間の保存により、安定性評価を実施した。…結果、各温度域において…乳成分の浮上やオイルオフを抑制し、乳化安定性の向上効果が認められた。」(36頁右欄12?23行)

10 甲第10号証
[甲10-1]「(社)日本缶詰協会の駒木ら(8)は加温販売による低酸性飲料缶詰の変敗原因菌である好熱性嫌気性細菌芽胞について、ミルクコーヒー中における乳化剤の種類と添加量の影響について検討した。ミルクコーヒー中において乳化剤が好熱性嫌気性細菌芽胞の発育を抑制し、添加量が同じであればP-1670よりTRP-97RFの方がより短い加熱時間で発育が陰性となり、同じ添加量であればTRP-97RFが好熱性嫌気性細菌芽胞の抑制により期待できると報告した。理研ビタミン(株)の松本ら(9)は加温販売によるミルクコーヒー…などの低酸性飲料缶詰への乳化剤の適切な使用方法と静菌効果について研究を続けている。…高純度トリグリセリン脂肪酸エステル(ポエムTRP-97RF)による静菌効果および飲料における乳化安定性について検討した。飲料原料成分に阻害影響が少なく幅広い菌種に対してショ糖脂肪酸エステルよりも少量で優れた静菌効果があり、また、乳成分の浮上やオイルオフの抑制やミルクリングの再分散性効果を与える乳化安定性の向上が認められたことから低酸性飲料缶詰に使用可能であると報告した。」(50頁左欄10?29行)

11 甲第11号証
[甲11-1]「現在、低酸性飲料缶詰は加温販売を想定して製造されている。加温販売時の温度で増殖可能な細菌には、耐熱性の非常に強いものがあり加熱殺菌単独での対応が難しく、ショ糖脂肪酸エステル(以下SE)の静菌効果を利用して対応している。…今回、食品に添加できる乳化剤のなかでジグリセリン脂肪酸エステルの静菌効果等について、SEと比較して検討した。…試験はミルクコーヒー…を調合、缶に充填し、10^(3?4)個/缶の芽胞を添加後…レトルト殺菌を行った。…ジグリセリン脂肪酸エステルはSEと比較し、添加濃度と静菌効果の関係において同等以上の静菌効果を示した。…味への影響についても検討した。SEは使用量が多くなると特有の苦味が出てくるが、ジグリセリン脂肪酸エステルはそのような苦味がなく良好であった。…以上の結果より、ジグリセリン脂肪酸エステルは加温販売を行う低酸性飲料缶詰に充分適応可能であることが解った。」(7頁左欄12行?右欄3行)

12 甲第17号証
[甲17-1]「(1)ポリグリセリンの重合度 現在、工業的に製造されているポリグリセリンエステルは、その殆ど全てがグリセリンの脱水縮合反応で合成されたポリグリセリンを使用しており、また、食品用乳化剤としては国際的な食品添加物規格では、エステル中のポリグリセリンの平均重合度はデカグリセリンまでであり、n=2,3,4,6,8,10の各ポリグリセリンのエステルがつくられている。」(42頁19?24行)

第7 乙号証の記載事項
乙第1、3、8及び10?12号証には、以下の事項が記載されている。

1 乙第1号証
[乙1-1]「本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度4以上のポリグリセリンと炭素数10?20の脂肪酸とから形成されるエステルである。ポリグリセリンの平均重合度の好ましい範囲は6?12、より好ましくは8?11である。」(【0017】)

2 乙第3号証
[乙3-1]「本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルとは、平均重合度4以上好ましくは6以上のポリグリセリンと炭素数12?22の飽和または不飽和の脂肪酸のエステルであり、モノまたはジエステルが好ましい。」(2頁右上欄13?17行)

3 乙第8号証
[乙8-1]「…(B)成分 ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、重合度が5以上、好ましくは8以上のポリグリセリンの脂肪酸エステルが用いられる。」(【0009】)

4 乙第10号証
[乙10-1]「2.抗菌性阻害物質存在下での乳化剤の抗菌性 乳化剤による抗菌作用はデンプン、乳成分などが存在する条件では阻害を受けることが知られている^(5))。そこでスキムミルク、牛乳、コーンスターチを添加したm-TGCを用いて、阻害物質存在下での乳化剤のC.thermohydrosulfuricumに対する抗菌性を調べた。乳化剤はSE P-1670を使用した。スキムミルクを添加したときの結果をTable5に示した。スキムミルク2.0%では増殖阻止に800ppmの濃度を必要とした。Table6は牛乳を添加した場合であるが、スキムミルク0.5%では250ppmの濃度で増殖を阻止できたのに対し、これに相当する牛乳5.0%では500ppmの濃度を要している。これは牛乳に含まれている乳脂肪などの成分の抗菌性阻害作用によるのではないかと思われる。」(170頁下から11?最下行)

[乙10-2]「

」(Table5.,6.)

5 乙第11号証
[乙11-1]「例えば牛乳10%を含有する一般的な缶コーヒーでは、P-1670のような抗菌SEが300?500ppm添加されている。しかし、カフェ・オ・レのように牛乳を25?30%含有する缶コーヒーでは、500ppmでも添加量は不足気味であり、600?800ppmに設定されることが多い。」(5頁7?9行)

[乙11-2]「

」(表4)

6 乙第12号証
[乙12-1]「

」(表2)

第8 当審の判断
当審は、本件訂正発明1についての特許は無効理由(1-3)?(1-11)により、本件訂正発明2についての特許は無効理由(2-3)?(2-6)、(2-11)により、本件訂正発明3についての特許は無効理由(3-3)?(3-11)により、本件訂正発明4についての特許は無効理由(4-3)?(4-6)、(4-11)により、無効にすべきものであるが、その他の無効理由には理由がない、と判断する。その理由は、以下のとおりである。

1 無効理由(1-3)について
(1)甲第1号証に記載された発明
摘記事項[甲1-1]、[甲1-4]、[甲1-7]?[甲1-9]から、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー抽出液、牛乳由来の乳原料、及び乳化剤としてのショ糖脂肪酸エステルを含むコーヒー飲料の原料成分を、ガラクトマンナナーゼ活性及び酸性プロテアーゼ活性の両方を有する糸状菌(Aspergillus niger)起源の酵素セルロシンGM5Pで処理する工程を含む方法により製造されたコーヒー飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という)とを対比すると、甲1発明の「ガラクトマンナナーゼ活性及び酸性プロテアーゼ活性の両方を有する糸状菌(Aspergillus niger)起源の酵素セルロシンGM5P」は、摘記事項[甲1-5]から、本件訂正発明1の、コーヒー抽出物に由来する多糖類を低分子化処理する「マンナン分解酵素」に相当し、また、本件訂正明細書の【0037】、参考例3及び表1注釈の記載から、本件訂正発明1の「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」は「乳化剤」である。
そうすると、両者は「乳化剤を含有し、コーヒー飲料中に、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類を含む、乳成分を含有するコーヒー飲料」で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲1発明は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明1は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲1発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
摘記事項[甲4-4]?[甲4-12]からみて、甲第4号証には、コーヒー乳飲料の乳化剤として、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンモノミリステート及びトリグリセリンモノパルミテートの何れを用いた場合でも、ショ糖パルミチン酸エステル(P-1670)を用いた場合と比べて、Bacillus stearothermophilusやClostridium thermoaceticumに起因するコーヒー乳飲料の変敗を抑制できた旨が記載されている。
摘記事項[甲9-1]?[甲9-4]からみて、甲第9号証には、ミルクコーヒーの乳化剤として、高純度トリグリセリン脂肪酸エステル(製品名ポエムTRP-97RF)を用いる方が、P-1670(ショ糖パルミチン酸エステル)を用いるよりも、Thermoanaerobacter mathraniiの発育を抑制できた旨、TRP-97RFが飲料風味に影響を与え難い乳化剤である旨、及びTRP-97RFが、乳成分の浮上やオイルオフを抑制し、乳化安定性の向上効果を有する旨が記載されている。
摘記事項[甲10-1]からみて、甲第10号証には、ミルクコーヒーの乳化剤として、高純度トリグリセリン脂肪酸エステル(ポエムTRP-97RF)を用いる方が、P-1670(ショ糖パルミチン酸エステル)を用いるよりも、好熱性嫌気性細菌芽胞の抑制効果が高く、飲料原料成分による阻害影響が少なく、及び幅広い菌種に対して少量で優れた静菌効果を有した旨、並びに乳成分の浮上やオイルオフの抑制やミルクリングの再分散性効果を与える乳化安定性が向上した旨が記載されている。
摘記事項[甲11-1]からみて、甲第11号証には、ミルクコーヒーの乳化剤として用いた場合、ジグリセリン脂肪酸エステルが、ショ糖脂肪酸エステルと比較し、添加濃度と静菌効果の関係において同等以上の静菌効果を示す旨、及びショ糖脂肪酸エステルは、使用量が多くなると特有の苦味が出てくるが、ジグリセリン脂肪酸エステルはそのような苦味がなく良好であった旨が記載されている。
以上の甲第4、9、10号証それぞれの記載から、当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料に添加する乳化剤として、TRP-97RF等のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いる方が、P-1670のようなショ糖脂肪酸エステルを用いるよりも、静菌効果が高いことを理解できるといえる。また、甲第11号証の記載から、乳成分を含有するコーヒー飲料に対して、ショ糖脂肪酸エステルが苦味を与える虞があること、また、甲第9号証の記載から、トリグリセリン脂肪酸エステルであるTRP-97RFが飲料風味に影響を与え難いことを当業者は理解できるといえる。
ここで、上述した甲第4、9?11号証の記載から、甲1発明で用いるショ糖脂肪酸エステルが静菌作用を有する乳化剤であること、及び、乳化剤を用いてコーヒー乳飲料の長期保存時の変敗を防ぐことは、本件優先日前から当業者に周知の事項であったと認められるし、摘記事項[甲1-2]、[甲1-3]から、甲1発明は長期保存することを意図しているといえる。また、乳化剤、静菌剤等、調味を意図しない添加剤を用いる際には、食品の風味に影響をできるだけ及ぼさないものを選択することは当業者が通常行うことである。
そうすると、長期保存することを意図している甲1発明において、乳成分を含有するコーヒー飲料に添加する乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルよりも静菌作用が優れており、しかもショ糖脂肪酸エステルよりもコーヒー飲料の風味に影響を与える虞が少ないTRP-97RF等のトリグリセリン脂肪酸エステルを、甲1発明のショ糖脂肪酸エステルに代えて用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

イ 相違点2について
請求人が提出した甲第13号証において、甲第1号証の実施例1(摘記事項[甲1-7])と同様の方法でマンナン分解酵素処理したコーヒー抽出物1に由来する多糖類が本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足することが証明されているから(表1の試験区1)、相違点2は実質的な相違点ではない。もし仮に、実質的な相違点であるとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。
なお、被請求人も相違点2に基づいて本件訂正発明1が進歩性を有するとの主張はしないとしている(調書の「被請求人の陳述要領3」)。

ウ 効果について
本件訂正発明1が甲1発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するか否かについて検討する。
本件訂正明細書の実施例には、本件訂正発明1に相当するもの(実施例1、2(乳化剤が重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル))、甲1発明に相当するもの(参考例1、2(乳化剤がショ糖脂肪酸エステル))がそれぞれ記載されているが、両者は静菌効果、沈殿抑制効果において差異はない(【表1】)。また、官能評価の結果においては、前者は「「コーヒー特有の苦み・酸味・渋みは弱い」との意見は多かった(約80%)」、後者は「「コーヒー特有の苦み・酸味・渋みがある」との意見が多数(約80%)」との差異を示す一応の記載はあるが(【0057】?【0058】)、上記「ア」で述べたとおり、乳成分を含有するコーヒー飲料に対して、ショ糖脂肪酸エステルが苦味を与える虞があることが知られていたから(摘記事項[甲11-1])、そのような差異は当業者が予想できる範囲のものである。そして、そもそも、本件訂正明細書には、本件訂正発明の官能評価の条件として「得られたコーヒー飲料を25℃の室内にて常温のまま試飲してアンケートを実施した(母集団14人)」と記載されているのみであり(【0048】)、「コーヒー特有の苦み・酸味・渋み」について「ある」「弱い」を含め、どのような評価段階を設けて、14名中何名がどの評価段階を選択したのか不明であり、食品などの官能評価の結果に大きく影響するその他の官能評価の条件(評価者はどのような者か(専門家か訓練していない一般消費者か、評価者が一般消費者である場合、評価する食品に対する嗜好はどうか)など)も何ら明らかにされていないので、そのような不明確な評価項目についての効果の差異をもって、本件訂正発明1が甲1発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。
なお、被請求人は、乙第9、13の実験成績証明書、及び乙第14号証の説明書に基づいて、トリグリセリン脂肪酸エステルを含有しない、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出液を含有するコーヒー飲料と比べて、本件特許に係るコーヒー飲料の方がすっきりとした飲み口であり、コーヒーが苦手な人にも愛用されるものであると主張する。そして、本件訂正明細書でいう「すっきりとした飲み口」とは、コーヒー特有の味が緩和されたものが、コーヒーが苦手な人にとっては飲み易く感ずることを表現した「飲み口」であると釈明する。
しかしながら、乙第9、13の実験成績証明書、及び乙第14号証の説明書に基づく被請求人の主張は、そもそもトリグリセリン脂肪酸エステルを含有する本件訂正発明1の効果とショ糖脂肪酸エステルを含有する甲1発明の効果とを対比した主張ではない。加えて、本件訂正明細書でいう「すっきりとした飲み口」の意味は、被請求人の釈明を考慮しても不明確であり、乙第9号証の実験成績証明書における「すっきり飲める」、「ごくごく飲める」、乙第13号証の実験成績証明書における「コーヒーの風味の強さ」、「すっきりした感じ」、「ゴクゴク飲める感じ」を、それぞれ、10名のパネルがどのような意味と理解した上で官能評価が行われたのか、乙第14号証の説明書を考慮しても依然として不明であるから、そのような不明確な評価項目についての官能評価の結果に基づく主張は、本件訂正発明1の進歩性の判断に影響しない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

2 無効理由(1-4)について
(1)甲第2号証に記載された発明
摘記事項[甲2-1]、[甲2-4]から、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー抽出液を、マンナン分解酵素であるガマナーゼ1.5Lによる処理と、脱脂粉乳、全粉乳、砂糖、乳化剤としてのシュガーエステル、及びアルカリ性ナトリウム塩である炭酸水素ナトリウム添加による処理に付すことにより製造されたコーヒー飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という)とを対比する。甲2発明の「シュガーエステル」が、「ショ糖脂肪酸エステル」であることは当業者に自明のことである。また、本件訂正明細書【0041】にはショ糖つまり砂糖を添加することが、さらに、実施例1、2には重曹つまり炭酸水素ナトリウムを添加することが記載されているから、本件訂正発明1は、砂糖及び炭酸水素ナトリウム添加により処理されたコーヒー飲料を包含している。
そうすると、両者は「乳化剤を含有し、コーヒー飲料中に、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類を含む、乳成分を含有するコーヒー飲料」で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲2発明は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明1は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲2発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「1(3)ア」で述べたのと同様に、甲2発明で用いるショ糖脂肪酸エステルが静菌作用を有する乳化剤であること、及び、乳化剤を用いてコーヒー乳飲料の長期保存時の変敗を防ぐことは、本件優先日前から当業者に周知の事項であったと認められるし、摘記事項[甲2-2]から、甲2発明は長期保存することを意図しているといえる。また、乳化剤、静菌剤等、調味を意図しない添加剤を用いる際には、食品の風味に影響をできるだけ及ぼさないものを選択することは当業者が通常行うことである。
そうすると、上記「1(3)ア」で述べたのと同様に、長期保存することを意図している甲2発明において、甲第4、9?11号証の記載に基づいて、乳成分を含有するコーヒー飲料に添加する乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルよりも静菌作用が優れており、しかもショ糖脂肪酸エステルよりもコーヒー飲料の風味に影響を与える虞が少ないTRP-97RF等のトリグリセリン脂肪酸エステルを、甲2発明のショ糖脂肪酸エステルに代えて用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

イ 相違点2について
請求人が提出した甲第14号証において、甲第2号証の実施例2(摘記事項[甲2-4])に準じて調製されたミルクコーヒー1が本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足することが証明されているから(表1の試験区3)、相違点2は実質的な相違点ではない。もし仮に、実質的な相違点であるとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。
なお、被請求人も相違点2に基づいて本件訂正発明1が進歩性を有するとの主張はしないとしている(調書の「被請求人の陳述要領3」)。

ウ 効果について
上記「1(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲2発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第2号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 無効理由(1-5)について
(1)甲第3号証に記載された発明
摘記事項[甲3-1]、[甲3-4]から、甲第3号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー液の一部に事前にガラクトマンナン分解酵素セルロシンGM5を溶解してなる酵素液によるコーヒー液の処理工程を含む方法により製造された、砂糖、牛乳、シュガーエステル及び炭酸水素ナトリウムを含有するコーヒー飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第3号証に記載された発明(以下、「甲3発明」という)とを対比する。甲3発明の「セルロシンGM5」は、摘記事項[甲3-4]から、本件訂正発明1の、コーヒー抽出物に由来する多糖類を低分子化処理する「マンナン分解酵素」に相当する。また、甲3発明の「シュガーエステル」が、乳化剤である「ショ糖脂肪酸エステル」であることは当業者に自明のことである。さらに、本件明細書【0041】にはショ糖つまり砂糖を添加することが、実施例1、2には重曹つまり炭酸水素ナトリウムを添加することが記載されているから、本件訂正発明1は、砂糖及び炭酸水素ナトリウム添加により処理されたコーヒー飲料を包含している。
そうすると、両者は「乳化剤を含有し、コーヒー飲料中に、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類を含む、乳成分を含有するコーヒー飲料」で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲3発明は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明1は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲3発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「1(3)ア」で述べたのと同様に、甲3発明で用いるショ糖脂肪酸エステルが静菌作用を有する乳化剤であること、及び、乳化剤を用いてコーヒー乳飲料の長期保存時の変敗を防ぐことは、本件優先日前から当業者に周知の事項であったと認められるし、摘記事項[甲3-2]から、甲3発明は長期保存することを意図しているといえる。また、乳化剤、静菌剤等、調味を意図しない添加剤を用いる際には、食品の風味に影響をできるだけ及ぼさないものを選択することは当業者が通常行うことである。
そうすると、上記「1(3)ア」で述べたのと同様に、長期保存することを意図している甲3発明において、甲第4、9?11号証の記載に基づいて、乳成分を含有するコーヒー飲料に添加する乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルよりも静菌作用が優れており、しかもショ糖脂肪酸エステルよりもコーヒー飲料の風味に影響を与える虞が少ないTRP-97RF等のトリグリセリン脂肪酸エステルを、甲3発明のショ糖脂肪酸エステルに代えて用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

イ 相違点2について
請求人が提出した甲第14号証において、甲第3号証の実施例2(摘記事項[甲3-5])に準じて調製されたストレートコーヒー3が本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足することが証明されているから(表1の試験区5)、相違点2は実質的な相違点ではない。もし仮に、実質的な相違点であるとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。
なお、被請求人も相違点2に基づいて本件訂正発明1が進歩性を有するとの主張はしないとしている(調書の「被請求人の陳述要領3」)。

ウ 効果について
上記「1(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲3発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第3号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 無効理由(1-6)について
(1)甲第4号証に記載された発明
摘記事項[甲4-1]、[甲4-3]?[甲4-5]から、甲第4号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「乳化剤としてのトリグリセリン脂肪酸モノエステルを100?5000ppm含有するコーヒー乳飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第4号証に記載された発明(以下、「甲4発明」という)とを対比すると、両者は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.01?0.5重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲4発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点3について
摘記事項[甲1-2]、[甲2-2]、[甲3-2]から、コーヒー飲料においては、高温処理や長期保存により沈殿が発生することが周知の課題であったと認められる。 そして、摘記事項[甲1-2]、[甲1-3]、[甲1-7]からみて、甲第1号証には、製造時の高温処理や製造後の長期保存によっても沈殿物や脂肪の分離などが発生せず、安定性に優れたコーヒー飲料を製造する目的で、コーヒー抽出液37部にセルロシンGM5P(ガラクトマンナナーゼ活性:10150単位/g)を0.01部加えて30分間撹拌溶解することが具体的に記載されている。
摘記事項[甲2-2]、[甲2-4]からみて、甲第2号証には、長期保存した後でも沈殿発生が防止されているコーヒー飲料を製造する目的で、コーヒー抽出液3000mlにマンナン分解酵素ガマナーゼ1.5Lを1.2g加えて2時間酵素処理を行うことが具体的に記載されている。
摘記事項[甲3-2]、[甲3-4]からみて、甲第3号証には、ガラクトマンナン等の多糖類などに起因して沈殿の発生しやすいコーヒー飲料においても、経時的な保存における沈殿の発生を防止し、かつ、品質を劣化させないコーヒーを製造する目的で、コーヒー抽出液575kgに10000unit/gのガラクトマンナン分解酵素セルロシンGM5を0.01kg加えて30分間酵素処理を行うことが具体的に記載されている。
また、摘記事項[甲3-2]には、コーヒーの沈殿成分の1つにガラクトマンナン等の多糖類があることが記載されているから、甲第1?3号証の上記記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解する。
そうすると、コーヒー飲料に係る甲4発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲4発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

イ 効果について
本件訂正発明1が甲4発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するか否かについて検討する。
本件訂正明細書の実施例には、本件訂正発明1に相当するもの(実施例1、2(マンナン分解酵素処理有り))、甲4発明に相当するもの(比較例1(マンナン分解酵素処理無し))がそれぞれ記載されているが、両者は静菌効果において差異はないし(【表1】)、両者の沈殿抑制効果における差異(【表1】)は、摘記事項[甲1-2]、[甲1-3]、[甲2-2]、[甲3-2]から、当業者が予想できるものである。
したがって、本件訂正発明1は、甲4発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第4号証及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 無効理由(1-7)について
(1)甲第5号証に記載された発明
摘記事項[甲5-1]から、甲第5号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル0.025%?0.3%及びショ糖脂肪酸エステル0.015%?0.3%を含有するミルクコーヒー。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第5号証に記載された発明(以下、「甲5発明」という)とを対比すると、両者は「ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.025?0.3重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲5発明は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲5発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
甲5発明における「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」は、重合度が2?4という狭い範囲に特定されたポリグリセリン脂肪酸エステルを含む混合物であるから、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを含むことは明らかであり、甲5発明における「重合度が2?4のトリグリセリン脂肪酸エステル」は、ミルクコーヒーに0.025%?0.3%含まれることから、0.0001%程度の極めて僅かな量の重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルがミルクコーヒーに含まれる蓋然性は高い。よって、相違点1は実質的な相違点でない。もし仮に、実質的な相違点であるとしても、甲5発明における「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」は、重合度が3を含む狭い範囲に特定されたものであるから、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることに困難性はない。

イ 相違点3について
上記「4(3)ア」で述べたとおり、甲第1?3号証の記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーに係る甲5発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲5発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲5発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第5号証及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

6 無効理由(1-8)について
(1)甲第6号証に記載された発明
摘記事項[甲6-1]から、甲第6号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル0.02%?0.3%及びショ糖脂肪酸エステル0.03%?0.3%を含有するミルクコーヒー。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第6号証に記載された発明(以下、「甲6発明」という)とを対比すると、両者は「ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.02?0.3重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲6発明は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲6発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲6発明において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点3について
上記「4(3)ア」で述べたとおり、甲第1?3号証の記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーに係る甲6発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲6発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲6発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第6号証及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

7 無効理由(1-9)について
(1)甲第7号証に記載された発明
摘記事項[甲7-1]から、甲第7号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル0.025%?0.3%及びショ糖脂肪酸エステル0.005%?0.3%を含有するミルクコーヒー。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第7号証に記載された発明(以下、「甲7発明」という)とを対比すると、両者は「ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.025?0.3重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲7発明は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲7発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲7発明において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点3について
上記「4(3)ア」で述べたとおり、甲第1?3号証の記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーに係る甲7発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲7発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲7発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第7号証及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

8 無効理由(1-10)について
(1)甲第8号証に記載された発明
摘記事項[甲8-1]、[甲8-2]から、甲第8号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル0.0001%?0.3%を含有するコーヒー乳飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第8号証に記載された発明(以下、「甲8発明」という)とを対比すると、両者は「ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.3重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明1は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲8発明は「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲8発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲8発明において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点3について
上記「4(3)ア」で述べたとおり、甲第1?3号証の記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、コーヒー乳飲料に係る甲8発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲8発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲8発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第8号証及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

9 無効理由(1-11)について
(1)甲第9号証に記載された発明
摘記事項[甲9-1]及び[甲9-2]から、甲第9号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「牛乳13%及びトリグリセリン脂肪酸エステルである理研ビタミン製ポエムTRP-97RFを200若しくは300ppm添加したコーヒー、又は牛乳25%及びトリグリセリン脂肪酸エステルである理研ビタミン製ポエムTRP-97RFを300、400若しくは500ppm添加したコーヒー飲料。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明1と、甲第9号証に記載された発明(以下、「甲9発明」という)とを対比すると、両者は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.02?0.05重量%含有し、乳成分を含有するコーヒー飲料」である点で一致するものの、
(相違点3)本件訂正発明1は「マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類」が「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲9発明はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点3について
上記「4(3)ア」で述べたとおり、甲第1?3号証の記載に接した当業者は、コーヒー飲料に対して、甲第1?3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、コーヒー又はコーヒー飲料に係る甲9発明においても、沈殿を防止するため、甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲9発明において甲第1?3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明1の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

イ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明1は、甲9発明と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第9号証及び甲第1?3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

10 無効理由(2-3)?(2-5)について
(1)甲第1?3号証に記載された発明
甲第1?3号証に記載された発明は、上記「1(1)」、「2(1)」、「3(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明2と甲1?3発明それぞれとを対比すると、両者は、上記「1(2)」、「2(2)」、「3(2)」に記載した一致点と相違点2を有する以外に、
(相違点4)乳化剤が、本件訂正発明2は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲1?3発明それぞれは「ショ糖脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点2について
上記「1(3)イ」、「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点4について
摘記事項[甲4-1]、[甲4-4]からみて、甲第4号証には、トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であることが記載され、具体的なトリグリセリン脂肪酸エステルとして、「トリグリセリンモノラウレート(モノエステル含有量70wt%)」、「トリグリセリンモノミリステート(モノエステル含有量80wt%)」、「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」が記載されている。そして、トリグリセリン脂肪酸エステルがモノエステルである場合のエステル置換度は20%であり、ジエステルである場合のエステル置換度は40%であり、トリエステルである場合のエステル置換度は60%であるから、例えば、上記トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)の場合、モノエステル以外がジエステルであるとすると、20×0.83+40×0.17=23.4%であり、モノエステル以外がトリエステルであるとすると、20×0.83+60×0.17=26.8%である。よって、甲第4号証に記載のトリグリセリン脂肪酸エステルは「エステル置換度が30%以下」である。
また、摘記事項[甲9-3]、[甲10-1]からみて、甲第9、10号証には、トリグリセリン脂肪酸エステル「ポエムTRP-97RF」が記載されており、これは、本件訂正明細書の実施例においてトリグリセリン脂肪酸エステルとして唯一記載されているトリグリセリン脂肪酸エステルと同じものであるから、本件訂正明細書【0033】に好ましいと記載されている「エステル置換度が30%以下」のものである蓋然性が高い。
上記「1(3)ア」、「2(3)ア」、「3(3)ア」で述べたのと同様の理由により、甲1?3発明それぞれにおいて、甲第4、9?11号証に基づいて、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルに代えて、甲第4、9、10号証に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステル、すなわちエステル置換度が30%以下である「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」や「トリグリセリンパルミチン酸エステル(ポエムTRP-97RF)」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

ウ 効果について
上記「1(3)ウ」、「2(3)ウ」、「3(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明2は、甲1?3発明それぞれと比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲第1?3号証それぞれ、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

11 無効理由(2-6)、(2-11)について
(1)甲第4、9号証に記載された発明
甲第4、9号証に記載された発明は、上記「4(1)」、「9(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明2と甲4、9発明それぞれとを対比すると、両者は、上記「4(2)」、「9(2)」に記載した一致点と相違点3を有する以外に、
(相違点4)重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明2は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下であるトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲4発明は「トリグリセリン脂肪酸モノエステル」であり、甲9発明は「トリグリセリン脂肪酸エステルである理研ビタミン製ポエムTRP-97RF」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点3について
上記「4(3)ア」、「9(3)ア」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点4について
甲第4、9号証に具体的に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステルは、上記「10(3)イ」で述べたとおりである。
そうすると、甲9発明との間の相違点4は、実質的な相違点ではない。また、甲4発明における、トリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、甲第4号証に具体的に記載された「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
上記「4(3)イ」、「9(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明2は、甲4、9発明それぞれと比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲第4、9号証それぞれ、及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

12 無効理由(3-3)について
(1)甲第1号証に記載された発明
摘記事項[甲1-1]、[甲1-4]、[甲1-6]?[甲1-9]から、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー抽出液、牛乳由来の乳原料、及び乳化剤としてのショ糖脂肪酸エステルを含むコーヒー飲料の原料成分を、pH3?6、温度30?60℃及び反応時間30分間以上の条件下、ガラクトマンナナーゼ活性及び酸性プロテアーゼ活性の両方を有する糸状菌(Aspergillus niger)起源の酵素セルロシンGM5Pで処理する工程を含むコーヒー飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と甲第1号証に記載された上述の発明(以下、「甲1発明の2」という)とを対比すると、両者は「コーヒー抽出物を温度30?60℃、pH3?6の条件下、マンナン分解酵素で30分以上多糖類低分子化処理された多糖類を含有するコーヒー抽出物を得る工程と、乳成分と乳化剤を添加する工程を有する、乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲1発明の2は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明3は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲1発明の2はこの点が特定されていない点、
(相違点5)乳成分と乳化剤を、本件訂正発明3はマンナン分解酵素処理後に添加するのに対し、甲1発明の2はマンナン分解酵素処理前に添加する点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「1(3)ア」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
上記「1(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点5について
摘記事項[甲1-6]からみて、甲第1号証には、コーヒー飲料は、コーヒー抽出液等に、乳成分や乳化剤等を配合溶解してコーヒー調合液を調製し、均質化することで製造される旨、また、酵素処理はコーヒー調合液に対して行われる以外に、コーヒー抽出液等に対しても行われる旨が記載されているから、コーヒー抽出液に対して酵素処理を行った後に、乳成分や乳化剤等を配合してコーヒー調合液を調製し、均質化することでコーヒー飲料を製造することは当業者が容易に想到し得ることである。

エ 効果について
上記「1(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲1発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第1号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

13 無効理由(3-4)について
(1)甲第2号証に記載された発明
摘記事項[甲2-1]、[甲2-3]、[甲2-4]から、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー抽出液を、温度40?50℃、pH4.5?5.5及び反応時間30分間以上の条件下、マンナン分解酵素であるガマナーゼ1.5Lにより処理し、その後、脱脂粉乳、全粉乳、砂糖、乳化剤としてのシュガーエステル、及びアルカリ性ナトリウム塩である炭酸水素ナトリウム添加による処理に付す、コーヒー飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第2号証に記載された上述の発明(以下、「甲2発明の2」という)とを対比する。上記「2(2)」で述べたとおり、甲2発明の2の「シュガーエステル」は、「ショ糖脂肪酸エステル」である。
そうすると、両者は「コーヒー抽出物を温度40?50℃、pH4.5?5.5の条件下、マンナン分解酵素で30分以上多糖類低分子化処理された多糖類を含有するコーヒー抽出物を得、得られたコーヒー抽出物に、乳成分と乳化剤を添加する、乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲2発明の2は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明3は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲2発明の2はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「2(3)ア」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
上記「2(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「2(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲2発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第2号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

14 無効理由(3-5)について
(1)甲第3号証に記載された発明
摘記事項[甲3-1]、[甲3-3]、[甲3-4]から、甲第3号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー液の一部に事前にガラクトマンナン分解酵素セルロシンGM5を溶解してなる酵素液により、pH4.5?5.8、温度30?40℃及び反応時間25?35分でコーヒー液を処理する工程、得られたコーヒー液に砂糖、牛乳、シュガーエステル及び炭酸水素ナトリウムを加える工程を含むコーヒー飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第3号証に記載された上述の発明(以下、「甲3発明の2」という)とを対比する。上記「3(2)」で述べたとおり、甲3発明の2の「シュガーエステル」は、「ショ糖脂肪酸エステル」である。
そうすると、両者は「コーヒー抽出物を温度30?40℃、pH4.5?5.8の条件下、マンナン分解酵素で25?35分多糖類低分子化処理された多糖類を含有するコーヒー抽出物を得、得られたコーヒー抽出物に、乳成分と乳化剤を添加する、乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)乳化剤が、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲3発明の2は「ショ糖脂肪酸エステル」である点、
(相違点2)マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が、本件訂正発明3は「(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する」、「(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である」という条件の少なくとも1つを満足するものであるのに対して、甲3発明の2はこの点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「3(3)ア」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
上記「3(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「3(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲3発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第3号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

15 無効理由(3-6)について
(1)甲第4号証に記載された発明
摘記事項[甲4-1]、[甲4-3]?[甲4-5]から、甲第4号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒー抽出液に牛乳、全脂粉乳、乳化剤としてのトリグリセリン脂肪酸モノエステルを100?5000ppm添加するコーヒー乳飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第4号証に記載された上述の発明(以下、「甲4発明の2」という)とを対比すると、両者は「コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.01?0.5重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲4発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点6について
摘記事項[甲1-2]、[甲2-2]、[甲3-2]から、コーヒー飲料においては、高温処理や長期保存により沈殿が発生することが周知の課題であったと認められる。
そして、摘記事項[甲2-2]、[甲2-4]からみて、甲第2号証には、長期保存した後でも沈殿発生が防止されているコーヒー飲料を製造する目的で、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、コーヒー抽出液3000mlにマンナン分解酵素ガマナーゼ1.5Lを1.2g加えて45℃、pH5.0で2時間酵素処理を行うことが具体的に記載されている。
摘記事項[甲3-2]、[甲3-4]からみて、甲第3号証には、ガラクトマンナン等の多糖類などに起因して沈殿の発生しやすいコーヒー飲料においても、経時的な保存における沈殿の発生を防止し、かつ、品質を劣化させないコーヒーを製造する目的で、コーヒー抽出液に、乳成分と、乳化剤を添加する前に、コーヒー抽出液570kgに10000unit/gのガラクトマンナン分解酵素セルロシンGM5を0.01kg加えて35℃で30分間酵素処理を行うことが具体的に記載されている。また、摘記事項[甲3-3]からみて、甲第3号証には、上述の酵素処理を、pH4.5?5.8のコーヒ液のpHを調整せずに、つまり、該pH4.5?5.8で行うことが記載されている。
また、摘記事項[甲3-2]には、コーヒーの沈殿成分の1つにガラクトマンナン等の多糖類があることが記載されているから、甲第2、3号証の上記記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出物に乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解する。
そうすると、コーヒー飲料の製造方法に係る甲4発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲4発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

イ 効果について
上記「4(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲4発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第4号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

16 無効理由(3-7)について
(1)甲第5号証に記載された発明
摘記事項[甲5-1]、[甲5-2]から、甲第5号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒーエキスに全脂粉乳、重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル(0.025%?0.3%)及びショ糖脂肪酸エステル0.015%?0.3%を含有するミルクコーヒーの製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第5号証に記載された上述の発明(以下、「甲5発明の2」という)とを対比すると、両者は「コーヒー抽出物に、乳成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.025?0.3重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲5発明の2は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲5発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲5発明の2において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点6について
上記「15(3)ア」で述べたとおり、甲第2、3号証の記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーの製造方法に係る甲5発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲5発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「5(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲5発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第5号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

17 無効理由(3-8)について
(1)甲第6号証に記載された発明
摘記事項[甲6-1]、[甲6-2]から、甲第6号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒーエキスに全脂粉乳、重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル0.02%?0.3%及びショ糖脂肪酸エステル0.03%?0.3%を含有するミルクコーヒーの製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第6号証に記載された上述の発明(以下、「甲6発明の2」という)とを対比すると、両者は「コーヒー抽出物に、乳成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.02?0.3重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲6発明の2は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲6発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲6発明の2において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点6について
上記「15(3)ア」で述べたとおり、甲第2、3号証の記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーの製造方法に係る甲6発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲6発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「6(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲6発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第6号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

18 無効理由(3-9)について
(1)甲第7号証に記載された発明
摘記事項[甲7-1]、[甲7-2]から、甲第7号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「コーヒーエキスに全脂粉乳、重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル0.025%?0.3%及びショ糖脂肪酸エステル0.005%?0.3%を含有するミルクコーヒーの製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第7号証に記載された上述の発明(以下、「甲7発明の2」という)とを対比すると、両者は「コーヒー抽出物に、乳成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.025?0.3重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲7発明の2は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲7発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲7発明の2において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点6について
上記「15(3)ア」で述べたとおり、甲第2、3号証の記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、ミルクコーヒーの製造方法に係る甲7発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲7発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「7(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲7発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第7号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

19 無効理由(3-10)について
(1)甲第8号証に記載された発明
摘記事項[甲8-1]?[甲8-3]から、甲第8号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル0.0001%?0.3%を含有するコーヒー乳飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第8号証に記載された上述の発明(以下、「甲8発明の2」という)とを対比すると、両者は「乳成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.3重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点1)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明3は「重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲8発明の2は「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲8発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「5(3)ア」で述べたのと同様に、甲8発明の2において、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はない。

イ 相違点6について
摘記事項[甲8-3]から、甲8発明の2のコーヒー乳飲料の製造方法において、コーヒー抽出液及び牛乳を用いることは当業者に自明のことである。そして、上記「15(3)ア」で述べたとおり、甲第2、3号証の記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、コーヒー乳飲料の製造方法に係る甲8発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲8発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
上記「8(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲8発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第8号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

20 無効理由(3-11)について
(1)甲第9号証に記載された発明
摘記事項[甲9-1]、[甲9-2]から、甲第9号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「牛乳13%及びトリグリセリン脂肪酸エステルである理研ビタミン製ポエムTRP-97RFを200若しくは300ppm添加したコーヒー、又は牛乳25%及びトリグリセリン脂肪酸エステルである理研ビタミン製ポエムTRP-97RFを300、400若しくは500ppm添加したコーヒー飲料の製造方法。」

(2)一致点・相違点
本件訂正発明3と、甲第9号証に記載された発明(以下、「甲9発明の2」という)とを対比すると、両者は「乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.01?0.05重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法」である点で一致するものの、
(相違点6)本件訂正発明3は、コーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に、「コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する、(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000であるという条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得」るものであるのに対して、甲9発明の2はその点が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点6について
甲9発明の2のコーヒー又はコーヒー飲料の製造方法において、コーヒー抽出液を用いることは当業者に自明のことである。そして、上記「15(3)ア」で述べたとおり、甲第2、3号証の記載に接した当業者は、乳成分を含有するコーヒー飲料を製造する際、コーヒー抽出液に、乳成分と乳化剤を添加する前に、甲第2、3号証に具体的に記載された上記酵素処理を行うことにより、ガラクトマンナン等の多糖類を分解し、高温処理や長期保存時の沈殿の発生というコーヒー飲料における周知の課題を解決できることを理解するから、コーヒー乳飲料の製造方法に係る甲9発明の2においても、沈殿を防止するため、甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を、コーヒー抽出物に乳成分とトリグリセリン脂肪酸エステルを添加する前に行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記「2(3)イ」、「3(3)イ」で述べたのと同様に、甲9発明の2において甲第2、3号証に記載された上記ガラクトマンナン分解酵素処理を行えば、コーヒー抽出物に由来する多糖類は本件訂正発明3の条件(A)及び(B)を満足するものとなる。もし仮に、そうでないとしても、酵素による低分子化処理に際し、多糖類の分子量分布を最適化して(A)及び(B)のようにすることは当業者が適宜なし得ることである。

イ 効果について
上記「9(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明3は、甲9発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第9号証及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

21 無効理由(4-3)について
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された発明は、上記「12(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明4と、甲1発明の2とを対比すると、両者は、上記「12(2)」に記載した一致点と相違点2、5を有する以外に、
(相違点4)乳化剤が、本件訂正発明4は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲1発明の2は「ショ糖脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点2について
上記「12(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点5について
上記「12(3)ウ」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点4について
甲第4、9、10号証に具体的に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステルは、上記「10(3)イ」で述べたとおりである。
そうすると、上記「10(3)イ」と同様に、甲1発明の2において、甲第4、9?11号証に基づいて、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルに代えて、甲第4、9、10号証に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステル、すなわちエステル置換度が30%以下である「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」や「トリグリセリンパルミチン酸エステル(ポエムTRP-97RF)」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

エ 効果について
上記「12(3)エ」で述べたのと同様に、本件訂正発明4は、甲1発明の2と比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲第1号証、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

22 無効理由(4-4)、(4-5)について
(1)甲第2、3号証に記載された発明
甲第2、3号証に記載された発明は、上記「13(1)」、「14(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明4と、甲2発明の2、甲3発明の2それぞれとを対比すると、両者は、上記「13(2)」、「14(2)」に記載した一致点と相違点2を有する以外に、
(相違点4)乳化剤が、本件訂正発明4は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲2発明の2、甲3発明の2それぞれは「ショ糖脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点2について
上記「13(3)イ」、「14(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点4について
甲第4、9、10号証に具体的に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステルは、上記「10(3)イ」で述べたとおりである。
そうすると、上記「10(3)イ」と同様に、甲2発明の2、甲3発明の2それぞれにおいて、甲第4、9?11号証に基づいて、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルに代えて、甲第4、9、10号証に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステル、すなわちエステル置換度が30%以下である「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」や「トリグリセリンパルミチン酸エステル(ポエムTRP-97RF)」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。また、その際のトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、甲第4号証に記載の「乳成分含有飲料に対し100?10000ppmが好ましく、より好ましくは、100?5000ppm」(摘記事項[甲4-3])などを参考にしつつ、当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。

ウ 効果について
上記「13(3)ウ」、「14(3)ウ」で述べたのと同様に、本件訂正発明4は、甲2発明の2、甲3発明の2それぞれと比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲第2、3号証それぞれ、並びに甲第4及び9?11号証に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

23 無効理由(4-6)、(4-11)について
(1)甲第4、9号証に記載された発明
甲第4、9号証に記載された発明は、上記「15(1)」、「20(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明4と、甲4発明の2、甲9発明の2それぞれとを対比すると、両者は、上記「15(2)」、「20(2)」に記載した一致点と相違点6を有する以外に、
(相違点4)重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明4は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%」であるのに対して、甲4発明の2、甲9発明の2それぞれは「ショ糖脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点6について
上記「15(3)ア」、「20(3)ア」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点4について
甲第4、9号証に具体的に記載されたトリグリセリン脂肪酸エステルは、上記「10(3)イ」で述べたとおりである。
そうすると、甲9発明の2との間の相違点4は、実質的な相違点ではない。また、甲4発明の2における、トリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、甲第4号証に具体的に記載された「トリグリセリンモノパルミテート(モノエステル含有量83wt%)」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
上記「15(3)イ」、「20(3)イ」で述べたのと同様に、本件訂正発明4は、甲4発明の2、甲9発明の2それぞれと比較して当業者が予想できる程度を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲第4、9号証それぞれ、及び甲第2、3号証に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

24 無効理由(1-1)、(2-1)について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記「1(1)」に記載したとおりである。

(2)一致点・相違点
上記「1(2)」で述べたとおりである。

(3)判断・まとめ
相違点1、2のうち、相違点2は、上記「1(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点ではないが、本件訂正発明1と甲1発明は、相違点1を有するから、本件訂正発明1は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正発明1の「トリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸、エステル置換度が特定された本件訂正発明2も同様である。

25 無効理由(1-2)、(2-2)について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記「1(1)」に記載したとおりである。

(2)一致点・相違点
上記「1(2)」で述べたとおりである。

(3)判断
相違点1、2のうち、相違点2は、上記「1(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点ではないので、相違点1について検討する。
摘記事項[甲1-4]からみて、甲第1号証には、コーヒー抽出液に配合する乳化剤として「ショ糖脂肪酸エステル」とともに「ポリグリセリン脂肪酸エステル」が例示されているが、具体的にトリグリセリン脂肪酸エステルは記載されていない。また、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とは、広範囲の重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルを含む混合物を意味することは本願優先日前の技術常識であるから(摘記事項[甲17-1]、[乙1-1]、[乙3-1]及び[乙8-1]など)、重合度が何ら特定されておらず、単なる例示にとどまる甲第1号証の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」との記載のみから、甲1発明の乳化剤としてトリグリセリン脂肪酸エステルを想到することは、当業者が容易になし得ることではない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件訂正発明1の「トリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸、エステル置換度が特定された本件訂正発明2も同様である。

26 無効理由(3-1)、(4-1)について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記「12(1)」に記載したとおりである。

(2)一致点・相違点
上記「12(2)」で述べたとおりである。

(3)判断・まとめ
相違点1、2のうち、相違点2は、上記「1(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点ではないが、本件訂正発明3と甲1発明の2は、相違点1、5を有するから、本件訂正発明3は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正発明3の「トリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸、エステル置換度が特定された本件訂正発明4も同様である。

27 無効理由(3-2)、(4-2)について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記「12(1)」に記載したとおりである。

(2)一致点・相違点
上記「12(2)」で述べたとおりである。

(3)判断
ア 相違点1について
上記「25(3)」で述べたのと同様に、甲第1号証のみから、甲1発明の乳化剤としてトリグリセリン脂肪酸エステルを想到することは、当業者が容易になし得ることではない。

イ 相違点2について
上記「1(3)イ」で述べたのと同様に、実質的な相違点でないか、当業が適宜なし得ることである。

ウ 相違点5について
上記「12(3)ウ」で述べたのと同様に、当業者が容易に想到し得ることである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲第1号証及び甲第4?11号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件訂正発明3の「トリグリセリン脂肪酸エステル」の脂肪酸、エステル置換度が特定された本件訂正発明4も同様である。

28 無効理由(2-7)?(2-10)について
(1)甲第5?8号証それぞれに記載された発明
甲第5?8号証に記載された発明は、上記「5(1)」?「8(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明2と、甲5?8発明それぞれとを対比すると、両者は、上記「5(2)」?「8(2)」に記載した一致点と相違点3を有する以外に、
(相違点4)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明2は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲5?7発明は「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」あり、甲8発明は「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点3について
上記「5(3)イ」?「8(3)イ」で述べたのと同様に、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点4について
上記「5(3)ア」?「8(3)ア」で述べたのと同様に、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、実質的な相違点でないか、困難性はないが、甲第5?8号証には、構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下であるトリグリセリン脂肪酸エステルが具体的に記載も示唆もされていないことから、構成脂肪酸とエステル置換度がさらに特定された重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを用いることは、当業者が容易になし得ることではない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲第5?8号証それぞれ、及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

29 無効理由(4-7)?(4-10)について
(1)甲第5?8号証それぞれに記載された発明
甲第5?8号証に記載された発明は、上記「16(1)」?「19(1)」で述べたとおりである。

(2)一致点・相違点
本件訂正発明4と、甲5発明の2、甲6発明の2、甲7発明の2、甲8発明の2それぞれとを対比すると、両者は、上記「16(2)」?「19(2)」に記載した一致点と相違点6を有する以外に、
(相違点4)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、本件訂正発明4は「構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステル」であるのに対して、甲5発明の2、甲6発明の2、甲7発明の2それぞれは「重合度が2?4のポリグリセリン脂肪酸エステル」あり、甲8発明の2は「平均重合度が2?3のポリグリセリン脂肪酸エステル」である点で相違する。

(3)判断
ア 相違点6について
上記「16(3)イ」?「19(3)イ」で述べたのと同様に、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点4について
上記「28(3)イ」で述べたのと同様、当業者が容易になし得ることではない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲第5?8号証それぞれ、及び甲第1?3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

30 無効理由(1-12)、(1-13)、(2-12)、(2-13)、(3-12)、(3-13)、(4-12)、(4-13)について
(1)請求人の主張
審判請求書18?20頁によれば、サポート要件及び実施可能要件についての請求人の主張は以下のとおりである。

本件特許発明では、コーヒー飲料におけるトリグリセリン脂肪酸エステルの割合を「0.0001?0.5重量%」と規定しているが、この数値範囲のすべてにおいて、静菌作用及び飲みやすさの効果を有していない(甲第12号証)。
そのため、本件特許発明は、具体的に効果を確認している実施例、すなわち、「0.025重量%」(段落[0049]、[0050])又は「0.003重量%」(段落[0045])から、出願時の技術常識に照らしても、「0.0001?0.5重量%」にまで拡張ないし一般化できないことは明らかであり、いわゆるサポート要件を充足しない。
また、本件明細書には、上記の通り、本件明細書記載の効果を奏しない範囲を含んでいるにもかかわらず、「0.0001?0.5重量%」のすべての範囲において発明の効果を奏するかのように記載されているのであるから、当業者が本件特許発明を実施するためには、過度の試行錯誤を要する。
そのため、本件明細書が、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないことは明らかであり、いわゆる実施可能要件も充足しない。

(2)判断
特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するか否かは、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否かによって判断される。また、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に違反するか否かは、請求項に係る発明が物の発明の場合においては、発明の詳細な説明に、当業者が、その物を作ることができかつ使用することができるように明確かつ十分に記載されているか否か、物を生産する方法の発明の場合においては、発明の詳細な説明に、当業者がその方法を使用してその物を作ることができるように明確かつ十分に記載されているか否かによって判断される。
したがって、本件訂正発明1?4におけるトリグリセリン脂肪酸エステルの「0.0001?0.5重量%」の範囲のすべてにおいて、本件訂正明細書記載の特定の効果を奏しないというだけでは、本件訂正発明1?4がサポート要件に違反するということはできず、本件訂正発明1?4についての発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に違反するということもできない。
加えて、甲第12号証(実験成績証明書)に基づいて、本件訂正発明1?4におけるトリグリセリン脂肪酸エステルの「0.0001?0.5重量%」の範囲のすべてにおいて、本件訂正明細書記載の静菌作用及び飲みやすさの効果を奏しないという主張も、以下のとおり採用できない。

請求人は、甲第12号証(特に表1)を根拠に、トリグリセリン脂肪酸エステルの割合を0.0125重量%以下とすると、静菌作用が得られなくなる(試験区4?6)と主張するが、表1の結果は牛乳の含有量を10%に固定した特定のコーヒー飲料に関するものである。
しかし、本件訂正明細書には、ポリグリセリン脂肪酸エステルの最適値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類、コーヒー飲料の種類によっても異なることが記載されており(【0035】)、また、飲料中の乳成分の含有量に応じて乳化剤の含有量を調節することは本願出願時の技術常識である(摘記事項[乙10-1]?[乙10-2]、[乙11-1]?[乙11-2]及び[乙12-1]など)。
そして、本件訂正発明のコーヒー飲料に含まれる乳成分の含有量は特定されていないことから、たとえば、コーヒー飲料に含まれる乳成分の含有量が極めて少ない場合には、トリグリセリン脂肪酸エステルが下限値に近い割合であったとしても、静菌作用が得られないとはいえない。
また、請求人は、味に影響を及ぼしがたいとされるトリグリセリン脂肪酸エステルといえども、その割合が0.1重量%以上になると、最早、飲みにくいものとなってしまう(試験区7?8)とも主張するが、コーヒーの「飲みやすさ」は、用いるコーヒー豆の種類、焙煎度合、牛乳やグラニュー糖の割合等に影響されることが明らかであるから、これらの条件によっては、トリグリセリン脂肪酸エステルが上限値に近い割合であったとしても、飲みやすさの効果が得られないとまではいえない。

以上のとおりであるから、請求人の主張によっては、本件訂正発明1?4に関し、この出願が、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないということはできない。

第9 結び
以上のとおり、本件訂正発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1?4についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コーヒー飲料
【技術分野】
【0001】
本発明はコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コーヒー飲料に関し、数多くの提案がなされている。例えば、乳成分に由来する沈殿やリングの発生を防止する方法として、乳タンパクを種々の酵素で分解処理する方法が提案されている。具体的には、殺菌処理前のコーヒー抽出液をマンナン分解酵素とアルカリ性ナトリウム塩との併用処理に付す方法(特許文献1)が提案されている。
【特許文献1】特開平7-184546号公報
【0003】
しかしながら、上記の方法ではコーヒー豆の繊維質に由来する濁りや沈殿の発生の防止には効果があるが、脂肪分の分離やリングの発生に対する防止効果は充分とはいえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造時の高温殺菌処理や製造後の長期保存によっても沈殿物や脂肪の分離などが発生せず、すっきり味であり、しかも、静菌力と乳化安定性を兼ね備えたコーヒー飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の第1の要旨は、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%含有し、コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理したコーヒー抽出物に由来する多糖類が次の(A)?(C)の条件の少なくとも1つを満足することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料に存する。
【0006】
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の分子量5000?100000に相当するピーク面積の50%以上が多糖類低分子化処理により減少する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(C)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。
【0007】
そして、本発明の第2の要旨は、コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、次の(A)?(C)の条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得、得られたコーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーヒー飲料は、すっきりとした飲み口でありながら、耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖を抑制する機能を有しており、自動販売機などでの加温状態の下で保存しても、耐熱性芽胞菌の胞子の発芽・増殖が抑制され、フラットサワー変敗が防止され、且つ、沈殿が生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、コーヒー抽出液は、焙煎豆から抽出した液、それを濃縮したエキス、一旦インスタントコーヒーに加工したものを水(通常は熱水)で溶かした液の何れでも使用可能である。
【0010】
本発明の第1の要旨に係るコーヒー飲料においては、上記のコーヒー抽出液として、コーヒー抽出物に由来する多糖類が次の(A)?(C)の条件の少なくとも1つを満足するコーヒー抽出液(i)を使用する。
【0011】
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の分子量5000?100000に相当するピーク面積の50%以上が多糖類低分子化処理により減少する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(C)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。
【0012】
そして、本発明の第2の要旨に係るコーヒー飲料においては、上記のコーヒー抽出液として、糖分解酵素で処理したコーヒー抽出液(ii)を使用する。
【0013】
コーヒー抽出液(i)はコーヒー抽出液を糖分解酵素で処理することにより得ることが出来る、つまり、コーヒー抽出液(ii)は上記の(A)?(C)の条件の少なくとも1つを満足し得るが、コーヒー抽出液(i)の調製方法は上記の方法に限定されない。
【0014】
先ず、コーヒー抽出液(i)について説明する。
【0015】
上記の条件(A)における多糖類低分子化処理とは、糖分解酵素による処理の他、酸、塩基処理など化学的処理、フィルトレーション、クロマト分離などの分離処理などにより多糖類を低分子化する処理をいう。中でも、糖分解酵素による処理が好ましい。糖分解酵素による処理については、後述の「コーヒー抽出液(ii)」において説明する。
【0016】
前記の条件(A)において、多糖類低分子化処理により減少する割合は、好ましくは60%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0017】
前記の条件(C)において、多糖類の重量平均分子量は、好ましくは1000?5000、更に好ましくは1000?4000である。
【0018】
コーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量は(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定できる。以下にその手順を以下詳述する。
【0019】
(1)試料の前処理:
コーヒー飲料1mLにギ酸10μLを加えて室温で1hr静置し、生じた沈殿を10000rpmで3分間の遠心分離で除く。得られた上清0.8mLを、メタノール1mLとそれに続いて0.1%ギ酸水溶液1mLで予め前処理を施した「OasisHLBカートリッジ」(30mg、Waters社製)に通し、疎水性化合物を吸着除去する。この通過液から200μLを採り、エタノール1mLを加えて-20℃で一夜静置した。これを10000rpmで3分間の遠心分離を行い、上清を除く。沈殿にエタノール1mLを加え分散させ、10000rpmで3分間の遠心分離を行い、上清を除く(2回)。沈殿を窒素ガスで乾燥し、水200μLに再溶解し、微量不溶物を10000rpmで3分間の遠心分離で除いて、上清をGPC分析する。
【0020】
(2)GPC条件:
東ソー社製「TSKgelG3000PWXL」カラムに、サンプル50μLを注入し、40℃において、溶離液の0.1%HCOOH-H_(2)O/MeOH=80/20を0.8mL/minで展開し、RI(示差屈折率)検出を行う。
【0021】
(3)多糖類の分子量:
PEG(ポリエチレングリコール:H-[-O-CH_(2)-CH_(2)-]_(n)-OHの一般式をもつ合成高分子重合体)標準品のクロマトグラムから分子量較正曲線を作成し、重量平均分子量Mwを計算する。なお、計算にはGPCのリテンションタイムで7.03分(分子量100000)から10.90分(分子量1000)の範囲を使用する。ここで、リテンションタイムとはGPCにおける分析対象成分が溶出する時間のことをいう。PEG標準品には、東ソー社製「RE-24」(分子量95000)、「RE-2」(分子量26000)、Aldrich社製「PEG10000」(分子量10000)、和光純薬製「PEG4000」(分子量3000)、「PEG1540」(分子量1500)、「PEG1000」(分子量1000)を使用した。また、重量平均分子量Mwとは分子量M_(i)の分子がN_(i)個(i=1,2,・・・・・)存在する多分散系において、「Mw=ΣN_(i)M_(i)^(2)/ΣN_(i)M_(i)」と定義される。
【0022】
(4)多糖類のピーク面積およびピーク頂:
GPCで測定した分子量5000?100000に相当するピーク面積は、上記の分析条件のリテンションタイムが7.03分から9.55分のピーク面積から計算する。分子量1000?4000にピーク頂を有することは、上記の分析条件のリテンションタイムが9.74分から10.90分にピーク頂を有するものとする。
【0023】
次に、コーヒー抽出液(ii)について説明する
【0024】
糖分解酵素としては、マンナン分解酵素、ペクチン分解酵素、ヘミセルロース分解酵素などの各種のものを使用し得るが、マンナン分解酵素が好ましい。マンナン分解酵素によって分解されるマンナンはマンノースを主構成成分とする多糖類の総称であり、ガラクトース、グルコース等を含むマンナンもある。従って、本発明において、マンナン分解酵素は、ガラクトースマンナン分解酵素、グルコースマンナン分解酵素を含むものとする。
【0025】
マンナン分解酵素は、その起源に制限はなく、マンナナーゼ活性を有するものであれば精製品でも粗精製品でも使用可能である。マンナン分解酵素としては、α型またはβ型マンノシダーゼが挙げられるが、β型マンノシダーゼが好ましい。酵素処理の反応温度、時間、pH、添加量は、使用する酵素の由来、活性などによって適した条件を選択すればよい。アスペルギルス・ニガー(AspergillusNiger)由来のマンナン分解酵素としては、ノボノルディスク株式会社製の「ガマナーゼ1.5L」、新日本化学工業社製の「スミチームACH」、エイチビィアイ社製の「セルロシンGM5」等が挙げられ、バチルス・ズブチルス(BacillusSubtilis)由来のマンナン分解酵素としては、洛東化成工業社製の「ビガラーゼM」等が挙げられる。また、三菱化学フーズ株式会社製の「スクラーゼA」のような複合酵素製剤もマンナナーゼ活性を有する限り使用可能である。
【0026】
マンナナーゼ活性(endo-1,4-β-マンナナーゼ活性)はMegazyme社製「アゾ・カロブ ガラクトマンナン」(色素標識したカロブ(ローカスト)ガラクトマンナン)10mgを50mMの酢酸緩衝液(pH5.0)1mLに溶かした基質溶液200μLと50mMの酢酸緩衝液(pH5.0)で希釈した酵素製剤溶液50μLに50mMの酢酸緩衝液(pH5.0)150μLを加えて基質分解反応を各酵素製剤の至適温度で15分間行い、反応終了後、エタノール800μLを反応溶液に加えて高分子量の基質を沈殿させ、10000rpmで5分間遠心分離した後、1cm光路長のセルを使用し、上清の590nmにおける吸光度測定することによって求めることが出来る。
【0027】
コーヒー抽出液に対する酵素製剤の添加量は、酵素製剤のマンナナーゼ活性に依存し、上記活性測定において、1分間当りの、590nmにおける吸光度変化量(ΔOD_(590nm)/min)が1.0を1単位と定義する。
【0028】
本発明においては、L値20の焙煎豆100gを使用して、Brixが2.3%のコーヒー抽出液1kgを得た場合、1?1000単位を添加することが好ましい。
【0029】
例えば、ノボノルディスク株式会社製「ガマナーゼ1.5L」(200単位/g)の場合であれば、その添加量は、コーヒー抽出液1kg当り、通常0.005?5g、好ましくは0.015?2.5gである。反応温度は、適宜選択可能であり、通常20?80℃、好ましくは30?70℃、更に好ましくは30?50℃である。pHは、通常pH3.0?8.0、好ましくはpH4.0?7.0、更に好ましくはpH4.0?6.0である。反応時間は適宜選択可能であり、通常15分間以上である。
【0030】
例えば、三菱化学フーズ株式会社製「スクラーゼA」(40単位/g)の場合であれば、その添加量は、コーヒー抽出液1kg当り、通常0.025?25g、好ましくは0.075?12.5g、反応温度は、適宜選択可能であり、通常0?80℃、好ましくは30?70℃、更に好ましくは50?70℃である。pHは、通常pH3.0?8.0、好ましくはpH4.0?7.0、更に好ましくはpH4.0?6.0である。反応時間は適宜選択可能であり、通常30分間以上である。
【0031】
添加した酵素は、反応後において特に除去する必要はない。また、この酵素反応は、酵素の添加の他に、固定化酵素などによる接触反応によりコーヒー抽出液中に直接酵素が含まれないようにすることも可能である。
【0032】
次に、ポリグリセリン脂肪酸エステルについて説明する。
【0033】
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合度が2?5でのものであるが、好ましくは、その構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる1種以上であり、エステル置換度が30%以下ものである。そして、モノエステルの含量は50%以上が好ましい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度、エステル化度などの異なるエステルが混合した組成物であり、例えば、ジグリセリンエステルとは、平均重合度が2のポリグリセリンエステル組成物を意味する。抗菌性の観点からは、ジグリセリンミリスチン酸モノエステル、トリグリセリンミリスチン酸モノエステル、ジグリセリンパルミチン酸モノエステル、トリグリセリンパルミチン酸モノエステル、ジグリセリンステアリン酸モノエステル、トリグリセリンステアリン酸モノエステルを70%以上含むポリグリセリン脂肪酸エステルが好適である。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、十分な抗菌力を示す量であることが必要である。この量の最適値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類、コーヒー飲料の種類によっても異なる。添加量は、通常0.0001?0.5重量%である。特に、ミルクコーヒーの場合のポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は0.01?0.2重量%が好ましく、ブラックコーヒーの場合のポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は0.0001?0.02重量%が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸の添加量が多いほど抗菌力は高くなるが、添加量が余りに多いと、コストが高くなるばかりでなく、飲料の風味を損ねるので好ましくない。
【0035】
次に、本発明のコーヒー飲料の調製法について説明する。
【0036】
本発明のコーヒー飲料の調製法は特に限定されるものではない。例えば、ミルクコーヒーの場合を例に挙げると、所定の乳脂肪分、乳蛋白となる量の乳成分、コーヒーエキス、甘味料、香料などの飲料成分、ポリグリセリン脂肪酸エステル、水を配合し、ホモジナイザー等により均質化し、レトルト殺菌・UHT殺菌など加熱により殺菌し、容器に充填する。
【0037】
本発明のコーヒー飲料においては、乳化剤として、重合度が2?5のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するが、この特徴や利点を損なわない範囲において、コーヒー飲料に添加される各種の成分を添加してもよく、また、必要に応じ、他の食品用乳化剤、安定剤を加えることも出来る。
【0038】
例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、重合度が6以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤との併用も可能である。また、カゼインナトリウム等の乳蛋白との併用も可能である。更には、カラギナン(イオタ、ラムダ、カッパ)、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性大豆多糖類などの増粘多糖類との併用も可能である。
【0039】
また、乳成分である乳脂肪や乳蛋白を添加することにより、乳入りコーヒー飲料とすることも出来る。乳成分としては、牛乳、全脂粉乳、スキムミルクパウダー、フレッシュクリーム等が揚げられる。乳成分の含有量は、牛乳換算値として、通常1?90重量%、好ましくは3?60重量%、より好ましくは5?40重量%である。乳飲料のpHは、通常、5.5?7.0の弱酸性ないしは中性である。
【0040】
また、乳成分は必要に応じて蛋白質分解酵素で処理することも出来る。蛋白質分解酵素で処理した乳成分に関する公知例としては、(i)β-カゼイン等の乳蛋白をサーモライシン等の微生物由来のプロテアーゼで分解し、得られたアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを乳蛋白に代えて使用する方法(特開平6-128287号公報参照)、(ii)乳蛋白をプロテアーゼで分解することによって乳活性を高め且つアレルギー反応の発生を低減させたペプチドを乳蛋白に代えて使用する方法(特開平4-320650号公報参照)、(iii)金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼで処理した牛乳を使用して乳入りコーヒー飲料を製造する方法(特開平9-271328号公報参照)等が挙げられる。
【0041】
その他、本発明のコーヒー飲料の効果を妨げない範囲において、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、塩酸、塩化ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、フィチン酸などの有機酸、無機酸及び/又はその塩類、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、デンプン糖化物、還元デンプン水飴、デキストリン、サイクロデキストリン、トレハロース等の糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムK、ソーマチン等の高甘味度甘味料類などを添加することが出来る。
【0042】
本発明のコーヒー飲料は、ホット充填された後、加温販売されるコーヒー飲料として好適である。通常、上記のホット充填は常法に従って行うことが出来る。加温販売時の加温条件は37℃以上である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
なお、マンナナーゼ活性(endo-1,4-β-マンナナーゼ活性)の測定、コーヒー抽出物由来(マンナナーゼで分解可能な)多糖類のGPC分析(試料の前処理、GPC条件、多糖類の分子量、多糖類のピーク面積およびピーク頂)については、本文に記載した方法によって行った。
【0045】
実施例1:
L値20の焙煎コーヒー豆((株)ユニカフェ製「コロンビアEX」)2.5kgを95℃の脱塩水で抽出し、コーヒー抽出液26.4kgを得た。このコーヒー抽出液10kgを40℃に冷却した後、マンナン分解酵素として、ノボノルディスク株式会社製「ガマナーゼ1.5L」を1.0g添加し、60分放置した。この酵素処理済コーヒー抽出液5.4kgに対し、牛乳1.0kg、グラニュー糖0.5kg、及びトリグリセリンパルミチン酸エステル(理研ビタミン株式会社 商品名「ポエムTRP-97RF」)3.0gを脱塩水に50℃で溶解して調製した水溶液を加えて全量を10kgとした。この溶液に重曹を加えて殺菌後のpHが6.4となるように調節し、高圧ホモジナイザーを使用して60?70℃の温度で150kg/50kgの圧力で均質化後、100mlのガラス耐熱瓶に充填し、レトルト殺菌機(アルプ(株)RK3030)により殺菌温度121℃、殺菌時間40分の条件で殺菌し(F0=40)、冷却することによりミルクコーヒーを得た。なお、このコーヒー飲料中のコーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量分布を図1中の(a)に示した。また、多糖類の重量平均分子量(Mw)3900であった。このコーヒー飲料に関して以下のような評価を行った。
【0046】
(1)静菌試験:
得られたコーヒー飲料に、100℃30分で活性化したムーレラ・サーモアセチカ(Moorellathermoacetica)の芽胞懸濁液を、濃度1×10^(5)個/mlとなるように接種し、ガラスチューブに各2ml×5本ずつ採り、火炎にて開口端を溶封密封した。これを55℃で4週間保存した後、変敗の有無を判定した。判定は外観および菌無接種区とのpHの差異により行った。結果を表1に示す。
【0047】
(2)沈殿量評価:
得られたコーヒー飲料を60℃で1週間保存し、内容物を抜き出し底の沈殿量について評価した。評価結果を表1に示す。なお、沈殿量の評価基準は以下の通りである。○:沈殿なし,△:僅かに沈殿あり,×:沈殿あり
【0048】
(3)官能評価:
得られたコーヒー飲料を25℃の室内にて常温のまま試飲してアンケートを実施した(母集団14人)。結果は後述する。
【0049】
実施例2:
実施例1において、ノボノルディスク株式会社製「ガマナーゼ1.5L」を三菱化学フーズ株式会社製「スクラーゼA」に変更し、5.0g添加し、酵素処理を70℃で行い、トリグリセリンパルミチン酸エステルの添加量を2.5gにした以外は、実施例1と同様に行った。このコーヒー飲料中のコーヒー抽出物に由来する多糖類の重量平均分子量(Mw)3900であった。評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例3:
実施例1において、乳化剤をジグリセリンパルミチン酸エステル(理研ビタミン株式会社 商品名「ポエムDP-95RF」)2.5gとショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社「リョートーシュガーエステルS-570」)3.0gに変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
参考例1:
実施例1において、トリグリセリンパルミチン酸エステルをショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社「リョートーシュガーエステルP-1670」)に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
参考例2:
実施例3において、ジグリセリンパルミチン酸エステルをショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社「リョートーシュガーエステルP-1670」)に変更した以外は、実施例3と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0053】
参考例3:
実施例1において、トリグリセリンパルミチン酸エステルを添加しない以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例1:
実施例1において、酵素未処理のコーヒー抽出液を使用した以外は、実施例1と同様に行った。このコーヒー飲料中のコーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量分布を図1中の(b)に示した。また、多糖類の重量平均分子量(Mw)7400であった。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
<官能評価の結果>
【0057】
(a)実施例1?3に関しては、「後味がよく、ごくごく飲める」、「コーヒーが苦手な人には飲み易い」、「すっきリしていて飲み易い」等の好意的な意見多く(約70%)得られた。ただし、「コーヒー特有の苦味・酸味・渋みは弱い」との意見は多かった(約80%)。
【0058】
(b)参考例1と2に関しては、「コーヒー特有の苦味・酸味・渋みがある」との意見が多数(約80%)であった。
【0059】
(c)比較例1に関しては、沈殿量が多かった。参考例3は分離したため実施しなかった。
【0060】
以上の(a)?(c)の結果から、本発明の飲料は新しい嗜好性の高いコーヒー飲料であることは明らかである。本発明に係るコーヒー飲料は、今までコーヒーが苦手な人にも愛用されるポテンシャルを備えており、現代人の生活に更なる豊かさをもたらすものであることが期待できる。また、現代の嗜好の多様化に貢献するものでもあることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】コーヒー飲料中のコーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量分布
【符号の説明】
【0062】
(a):実施例1におけるコーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量分布
(b):比較例1におけるコーヒー抽出物に由来する多糖類の分子量分布
(c):PEG(標準物質)の分子量分布
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%含有し、コーヒー飲料中の、マンナン分解酵素で多糖類低分子化処理されたコーヒー抽出物に由来する多糖類が次の(A)及び(B)の条件の少なくとも1つを満足することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料。
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。
【請求項2】
トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれる何れかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である請求項1に記載のコーヒー飲料。
【請求項3】
コーヒー抽出物を温度20?80℃、pH3.0?8.0の条件下、マンナン分解酵素で15分以上多糖類低分子化処理し、次の(A)及び(B)の条件の少なくとも1つを満足する多糖類を含有するコーヒー抽出物を得、得られたコーヒー抽出物に、乳成分と、重合度が3のトリグリセリン脂肪酸エステルを0.0001?0.5重量%添加することを特徴とする乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法。
(A)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量1000?4000に多糖類の分子量ピーク頂を有する。
(B)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した多糖類の重量平均分子量が1000?6000である。
【請求項4】
トリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の群から選ばれるいずれかであり、且つ、エステル置換度が30%以下である請求項3に記載の乳成分を含有するコーヒー飲料の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-01-04 
結審通知日 2016-01-06 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2007-259409(P2007-259409)
審決分類 P 1 113・ 832- ZAA (A23F)
P 1 113・ 537- ZAA (A23F)
P 1 113・ 536- ZAA (A23F)
P 1 113・ 121- ZAA (A23F)
P 1 113・ 113- ZAA (A23F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝口 尚良  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 ▲高▼ 美葉子
長井 啓子
登録日 2013-04-26 
登録番号 特許第5252873号(P5252873)
発明の名称 コーヒー飲料  
代理人 丸山 智裕  
代理人 岩谷 龍  
代理人 小林 浩  
代理人 勝又 政徳  
代理人 丸山 智裕  
代理人 丸山 智裕  
代理人 小林 純子  
代理人 小林 浩  
代理人 小林 純子  
代理人 小林 純子  
代理人 上田 茂  
代理人 小林 浩  
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