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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1342318
審判番号 不服2017-12811  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-30 
確定日 2018-07-31 
事件の表示 特願2013-159563「光学積層体、偏光板及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 31749、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月31日の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 2月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月27日 :意見書、手続補正書
平成29年 5月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 8月30日 :審判請求書、手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2008/084604号
引用文献2:特開2013-47749号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年8月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。

「 【請求項1】
光透過性基材の一方の面上に、光学機能層と低屈折率層とがこの順に設けられた光学積層体であって、
前記低屈折率層は、厚みが不均一で、かつ、表面に凹凸形状を有するものであり、
前記低屈折率層の表面の凹凸形状は、凹凸部のJIS B0601-1994でカットオフ波長0.25mmにおける算術平均粗さRaが0.01?0.05μmであり、
前記低屈折率層の表面の凸部に、該低屈折率層の薄膜部が存在し、前記低屈折率層の表面の凹部に、該低屈折率層の厚膜部が存在し、
前記低屈折率層の薄膜部と厚膜部との厚みの差が下記式を満たし、
前記低屈折率層の表面の凹凸形状は、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸のスキューネスをSkとしたとき、前記Skの絶対値及びθaが以下の式を満たす
ことを特徴とする光学積層体。
d_(D)≧0.18×d_(A)
前記式中、d_(D)は、低屈折率層の薄膜部と厚膜部との厚み差(nm)を表し、d_(A)は、低屈折率層の平均膜厚(nm)を表す。
0.05°≦θa≦0.13°
|Sk|≦0.5
【請求項2】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光板は、偏光素子表面に請求項1記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項3】
請求項1記載の光学積層体、又は、請求項2記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

ア 「技術分野
[0001] 本発明は防眩性を有した反射防止フィルムに関し、詳しくは防眩性、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、偏光板や表示装置に用いたとき視認性に優れた反射防止フィルムに関する。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0008] 従って、本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、防眩性、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
[0009] 本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
[0010] 1.透明基材上に微細な凹凸構造をもつ防眩層を少なくとも1層以上有し、かつ該防眩層に直接または他の層を介して低屈折率層が形成された反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層が微小液滴の付着により形成され、かつ該低屈折率層が5?100質量%の固形分を含み25℃の粘度が2?15mPa・sの塗布液により形成されることを特徴とする反射防止フィルム。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0020] 本発明により、防眩性、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた反射防止フィルムを提供できる。」

イ 「発明を実施するための最良の形態
[0023] 以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0024] 従来、コントラスト向上を目的として、微細な凹凸構造を有する防眩性フィルム上に反射防止層を塗布する技術があるが、防眩性フィルムの微細な凹凸構造上で反射防止層を形成する塗布液がレベリングを起こし、微細な凹凸構造による意図した防眩性能が失われるといった問題があった。
[0025] 本発明者は鋭意検討の結果、本発明の構成により、反射防止層の膜厚が防眩層の微細な凹凸構造を追随することにより、防眩性が保たれたまま反射率が低減でき、更に膜強度、耐傷性擦傷性を改良できることを見出したものである。
[0026] 即ち、本発明の反射防止フィルム(以下、防眩性反射防止フィルムともいう)は、透明基材上に微細な凹凸構造をもつ防眩層を少なくとも1層以上有し、かつ該防眩層に直接または他の層を介して低屈折率層が形成された反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層が微小液滴の付着により形成され、かつ該低屈折率層が5?100質量%の固形分を含み25℃の粘度が2?15mPa・sの塗布液により形成されることを特徴とする。
・・・(中略)・・・
[0029] 該インクジェット方式により、従来の塗布方式による反射防止層の形成に比較し、高濃度、高粘度の塗布液(インク)を用い、湿潤膜厚(hw)を薄く塗布することができる。これにより塗布液の固化速度が向上し、従来の塗布液のような凹凸構造上でのレベリングを回避できることを見出したものである。そのため、防眩性を発現する微細な凹凸構造は、反射防止フィルムの最表面に意図した凹凸構造を有する状態で形成されるため防眩性は損なわれない。また実質的に均一膜厚となることで屈折率がより低減され、膜強度、耐傷性擦傷性も向上する。
・・・(中略)・・・
[0169] かくして、本発明に係る低屈折率層は、防眩層の防眩性を発現する微細な凹凸形状を損なわずに表面に凹凸形状を付与することが可能となる。該低屈折率層表面のJIS B 0601で規定される算術平均表面粗さRaは、0.05μm?1.00μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.10μm?0.50μmの範囲である。
[0170] 《防眩層》
本発明に係る防眩層とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにするものである。フィルム表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。
[0171] このような凹凸を形成する方法としては、透明基材への加工、透明基材上に設けるハードコート層への加工、反射防止層を塗布した後での反射防止フィルムへの加工等を選択できるが、反射防止フィルムへの加工は、凹凸形状の凸部が反射防止層を突き破るなど、反射防止層を変形させて反射防止効果を損なうことがあるため、本発明では透明基材への加工、ハードコート層への加工が好ましく、本発明ではハードコート層への加工がよ好ましい。
[0172] 本発明で言う凹凸構造としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型、凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。・・・(中略)・・・
[0173] ハードコート層もしくは後述する透明基材の表面に凹凸形状を形成する方法として、例えば、下記の方法等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
(6)透明支持体表面に光または加熱して硬化する樹脂をインクジェット方式により印刷し、光または加熱により硬化して透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
・・・(中略)・・・
(9)球、多角体等各種形状の微粒子を少量のバインダーに分散したものを透明支持体表面にとして塗布し、透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
・・・(中略)・・・
[0174] 本発明では、(6)及び(9)のハードコート層への凹凸形状の作成方法が好ましい。
[0175] 最初に本発明の反射防止フィルムを構成する防眩層の一例として(9)の凹凸形状の作成方法について説明する。
[0176] 〈微粒子を用いる防眩層の作成〉
本発明に用いられる防眩層は、ハードコート層に微粒子を含有させることで微細な凹凸形状を形成でき、下記のような平均粒径0.01μm?4μmの微粒子をハードコート層中に含有させることが好ましい。以下、該防眩層を防眩性ハードコート層とも呼ぶ。」
・・・(中略)・・・
[0201] 〈インクジェット方式を用いる防眩層の作成〉
本発明では、透明基材上にインクジェット方式により凹凸部を形成し防眩層とすることが好ましい。更に、予め透明基材もしくは他の硬化樹脂層上にインクジェット方式により凸部を形成した後、該凸部を透明樹脂でオーバーコートする防眩層の形成の方がより高い防眩性を実現でき好ましい。
・・・(中略)・・・
[0257] 《透明基材》
本発明に用いられる透明基材としては、製造が容易であること、活性光線硬化型樹脂層との密着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましく、透明フィルムであることが好ましい。
・・・(中略)・・・
[0261] 本発明においては、中でも特にセルロースエステル系フィルムを用いることが好ましい。・・・(略)・・・」

ウ 「実施例
[0343] 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
[0358]
・・・(中略)・・・
〔防眩性フィルム2(インクジェット法による防眩性フィルム)の作製〕
(第1層の作製)
セルロースエステルフィルム1の表面に(B面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)、下記の硬化樹脂層塗布組成物1をスリットダイで塗布し、熱風の温度、風速を徐々に強め最終的に85℃で乾燥し、続いて活性光線照射部より115mJ/cm^(2)の照射強度で紫外線照射して硬化樹脂層とし、第1層を作製した。下記の組成物による乾燥膜厚は、5μmであった。
[0359] (固形分)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 70質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)) 4質量部
(溶媒)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 25質量部
前記第1層の上に、下記凸部塗布液1をインクジェット方式によりインク液滴として2?16plで出射し、乾燥後0.2秒後に活性光線照射部より紫外線の照度が0.1W/cm^(2)で、照射量が100mJ/cm^(2)で硬化させ、凸部を形成した。
[0360] インクジェット出射装置は、ラインヘッド方式(図4の(a))を使用し、ノズル径が3.5μmのノズルを256個有するインクジェットヘッドを10基準備した。インクジェットヘッドは図3に記載の構成のものを使用した。インク供給系は、インク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド及び配管から構成されており、インク供給タンクからインクジェットヘッド部までは、断熱及び加温(40℃)し、出射温度は40℃、駆動周波数は20kHzで行った。
[0361] 凸部形成後フィルム表面に、1%酸素を含有する窒素雰囲気の大気圧下で、100KHzの高周波電圧でプラズマ放電により表面処理した後、下記透明樹脂層用塗布液1を減圧押出し法によって塗布し、防眩性フィルム2を作製した。
[0362] 形成した防眩性フィルムについてWYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて算術平均表面粗さRaの測定を行った結果、127nmであった。また、凸部の平均中心間距離は28μmであった。
[0363] (凸部塗布液1)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 70質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)) 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 180質量部
上記組成物を混合撹拌し、凸部塗布液を調製した。
[0364] (透明樹脂層塗布液1)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 100質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)) 6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記組成物を混合撹拌し、透明樹脂層塗布液を調整した。
[0365] 〔防眩性フィルム3の作製〕
下記凸部塗布液2を用いた以外は防眩性フィルム2と同様の方法で、防眩性フィルム3を作製した。
[0366] (凸部塗布液2)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 70質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)) 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 80質量部
上記組成物を混合撹拌し、凸部塗布液を調製した。
[0367] 作製した防眩性フィルム3についてWYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、146nmであった。また、凸部の平均中心間距離は33μmであった。」
・・・(中略)・・・
[0379]
・・・(中略)・・・
〔防眩性反射防止フィルム3の作製〕
上記防眩性フィルム3上に、上記の低屈折率層塗布液2を表4に示す平均乾燥膜厚(hd)となるよう、インクジェット方式によりインク液滴として2?16plで出射し、乾燥後0.2秒後に活性光線照射部より紫外線の照度が0.1W/cm^(2)で、照射量が100mJ/cm^(2)で硬化させ、防眩性反射防止フィルム3を作製した。
[0380] インクジェット出射装置は、ラインヘッド方式(図4の(a))を使用し、ノズル径が10.5μmのノズルを256個有するインクジェットヘッドを10基準備した。インクジェットヘッドは図3に記載の構成のものを使用した。インク供給系は、インク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド及び配管から構成されており、インク供給タンクからインクジェットヘッド部までは、断熱及び加温(40℃)し、出射温度は40℃、駆動周波数は20kHzで行った。
[0381] 〔防眩性反射防止フィルム4?19の作製〕
上記防眩性フィルム1?3上に、下記低屈折率層塗布液3?14を表4に示す平均乾燥膜厚(hd)となるよう、インクジェット方式により塗布した以外は、防眩性反射防止フィルム3と同様の方法で、防眩性反射防止フィルム4?19を作製した。
[0382] (低屈折率層塗布液3)
アクリルモノマー;OP-38Z(フッ素化アクリル樹脂、大日本インキ化学工業(株)製) 10質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)) 0.5質量部
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 0.5質量部
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 72質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 17質量部
尚、低屈折率層塗布液の粘度は5.1mPa・sであり、得られた低屈折率層の屈折率は1.38であった。」
・・・(中略)・・・
[0402] [表4]

[0403] 表4から本発明の試料は比較例に比べ、防眩性、反射率、擦傷性に優れていることが分かった。また、低屈折率層の塗布?紫外線を照射するまでの時間は短いほど防眩性、反射率、擦傷性に優れており、0.1秒が最も良好であった。」

エ 「 請求の範囲
[1] 透明基材上に微細な凹凸構造をもつ防眩層を少なくとも1層以上有し、かつ該防眩層に直接または他の層を介して低屈折率層が形成された反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層が微小液滴の付着により形成され、かつ該低屈折率層が5?100質量%の固形分を含み25℃の粘度が2?15mPa・sの塗布液により形成されることを特徴とする反射防止フィルム。
・・・(略)・・・」

(2)引用発明
上記(1)より、引用文献1には、請求項1(請求の範囲[1])に係る発明に対応し、[0020]に記載の効果を奏する防眩性反射防止フィルムNo.4として、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「 透明基材上に微細な凹凸構造をもつ防眩層を少なくとも1層以上有し、かつ該防眩層に直接低屈折率層が形成された反射防止フィルムにおいて、
低屈折率層が微小液滴の付着により形成され、かつ該低屈折率層が11質量%の固形分を含み25℃の粘度が5.1mPa・sの塗布液により形成され、
防眩層は、平均表面粗さRaが0.146μm、及び凸部の平均中心間距離が33μmであり、
低屈折率層は、平均膜厚が0.26μm、凸部膜厚が0.110μm、凹部膜厚が0.390μm、及び平均表面粗さRaが0.057μmであり、
防眩性、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた、
防眩性反射防止フィルム。」

(当合議体注:塗布液の固形分及び粘度は、[0382]の記載に基づいて計算したものである。また、防眩層の平均表面粗さRa及び凸部の平均中心間距離の値は、[0367]に記載の値であり、低屈折率層の平均膜厚、凸部膜厚、凹部膜厚及び平均表面粗さRaの値は、[0402]の[表4]に記載の値である。)

2.引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みて、防眩層が薄く、ハードコート性と防眩性とを維持しつつ、面ギラの発生と白茶けの発生とを極めて高いレベルで抑制でき、高コントラストの優れた表示画像を得ることができる防眩性フィルム、該防眩性フィルムを用いてなる偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とするものである。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光透過性基材の一方の面の表面に凹凸形状を有する防眩層が設けられた防眩性フィルムであって、上記防眩層は、上記光透過性基材と接する側の反対側の表面にアスペクト比が2以上の棒状凸部が複数形成されており、上記防眩層の上記光透過性基材と接する側の反対側の表面において凸部の占める割合が、単位面積当たり20?40%であり、更に、上記防眩層の表面の単位面積当たりの、全凸部の個数をN_(T)、上記全凸部に含まれる棒状凸部の個数をN_(S)と夫々したとき、上記N_(T)及びN_(S)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする防眩性フィルムである。
N_(S)/N_(T)>0.2 (1)
・・・(中略)・・・
【0012】
本発明者らは、光透過性基材上の一方の面の表面に凹凸形状を有する防眩層を備えた防眩性フィルムについて、鋭意検討した結果、防眩層を、特定の厚さを有するとともに、表面の凹凸形状が所定の棒状凸部を特定の割合で含有するようにすることで、ハードコート性と防眩性とを維持しつつ、面ギラの発生と白茶けの発生とを極めて高いレベルで抑制でき、高コントラストの優れた表示画像を得ることができる防眩性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・(中略)・・・
【0016】
上記防眩層は、上記光透過性基材の一方の面上に形成されており、上記光透過性基材と接する側の反対側の表面に凹凸形状を有するものである。
本発明の防眩性フィルムにおいて、上記防眩層は、表面にアスペクト比が2以上の棒状凸部が複数形成されている。
なお、本明細書において、「凸部」とは防眩層の表面を顕微鏡観察したときに、該防眩層表面上の、傾斜角が0.7°以上となる部分で囲まれた領域を意味する。また、特に言及しない限り、上記防眩層の表面というときは、上記防眩層の光透過性基材と接する側の反対側の表面を意味する。
・・・(中略)・・・
【0055】
本発明の防眩性フィルムは、上述したように所定の棒状凸部により防眩層の表面に凹凸形状が形成されているが、該凹凸形状としては、具体的には、上記防眩層表面の凹凸の平均間隔をSm(mm)とし、凹凸部の平均傾斜角をθa(deg)とし、凹凸のクルトシス(尖り度)をRkuとした場合に、面ギラとコントラストの両立の観点から下記式を満たすことが好ましい。Smが下限未満又はθaが上限を超えると、白茶け防止性や面ギラ防止性が不充分となることがある。Smが上限を超える又はθaが下限未満であると、外光による反射を抑えることができず、防眩性が不充分となるなどの不具合を生じるおそれがある。
また、Rkuが上限を超えると、棒状凸部の上面(以下凸部高原と称す)及び/又は凸部以外の防眩フィルム表面(以下凹部底面と称す)の凹凸が過剰となり、白茶けが発生し、コントラストが悪化するおそれがある。また、面ギラ防止性に劣ることもある。Rkuが下限に満たないと、凸部高原及び/又は凹部底面が平坦に過ぎるため防眩性が悪化するおそれがある。
0.10<Sm<0.35
0.15<θa<0.30
2<Rku<4
なお、本明細書において、上記Smは、JIS B 0601-1994に準拠する方法で得られる値であり、θaは、表面粗さ測定器:SE-3400の取り扱い説明書(1995.07.20改訂)(株式会社小坂研究所)に記載の定義により得られる値であり、図1に示すように、基準長さLに存在する凸部高さの和(h_(1)+h_(2)+h_(3)+・・・+h_(n))のアークタンジェントθa=tan^(-1){(h_(1)+h_(2)+h_(3)+・・・+h_(n))/L}で求めることができる。また、上記Rkuは、非接触三次元表面形状・粗さ測定機(Zygo Corporation社製、“Zygo New View6000”シリーズ)を用いて測定される、凹凸高さ測定データポイント数をn、各ポイントにおける平均面に対する高さをYiとすると、以下の式にて得られる。
【数2】

ここで、Rqは二乗平均平方根であり、以下の式で表される。
【数3】

【0056】
また、本発明の防眩性フィルムにおいて、上記防眩層は、表面のスキューネス(歪度)をRskとしたとき、Rskが、0より大きいことが好ましい。Rskが0以下である場合、上記防眩層の表面の凹凸の高さ分布が平均面に対して高い側に偏ることになる。その結果、該防眩層の表面において凸部の占める割合を上述した範囲(単位面積当たり20?40%)に制御し辛くなる恐れがある他、緩やかな凸部を形成したとしても、結果的に凸部が大きくなりすぎ、面ギラ防止性を劣らせることに繋がる。なお、上記Rskは、非接触三次元表面形状・粗さ測定機(Zygo Corporation社製、“Zygo New View6000”シリーズ)を用いて測定される、凹凸高さ測定データポイント数をn、各ポイントにおける平均面に対する高さをYiとすると、以下の式にて得られる。なお、Rqは、上述した通りの値である。
【数4】



ウ 「【0074】
(実施例1)
下記組成の防眩層用組成物を調製し、光透過性基材として、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TD80U、富士写真フィルム社製)上に、防眩層用組成物を硬化後の膜厚5.0μmとなるようグラビアリバースコーターにより塗布し、70℃のオーブンで60秒乾燥させた後、紫外線を照射量が120mJ/cm^(2)となるよう照射して塗膜を硬化させて防眩層を形成し、防眩性フィルムを製造した。
【0075】
(防眩層用組成物)
バインダー樹脂(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、日本化薬製) 40質量部
バインダー樹脂(ウレタンアクリレート、UV1700B、日本合成化学製)60質量部
有機微粒子(スチレン-アクリル共重合体、XX245C、平均粒子径2μm、屈折率:1.515、積水化成品販売社製) 4質量部
タルク(ナノタルクD-1000、平均粒子径1μm、日本タルク社製) 3質量部
レベリング剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル、TSF4460、モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ社製) 0.04質量部
重合開始剤(Irg184、BASFジャパン社製) 6質量部
溶剤(トルエン) 60質量部
溶剤(シクロヘキサノン) 40質量部
・・・(中略)・・・
【0082】
(実施例8)
タルクの配合量を2質量部とした以外は、実施例1と同様にして調製した防眩層用組成物を用い、実施例1と同様にして防眩性フィルムを製造した。
・・・(中略)・・・
【0091】
(評価)
得られた防眩性フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した
・・・(中略)・・・
【0092】
(Rku、Rsk)
Zygo Corporation社製のZygo New View6000シリーズを用いて、凸部の評価と同様の方法により防眩層表面を測定した後、同機器にてRku(尖り度)及びRsk(歪み度)を、それぞれ算出した。
・・・(中略)・・・
【0094】
(θa)
(株)小坂研究所製表面粗さ測定器SE-3400を用いて、上記Sm測定時と同じ測定条件にて、θaを測定した。
・・・(中略)・・・
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示したように、実施例に係る防眩性フィルムは、いずれも棒状凸部を好適に形成しているため、面ギラ、白茶け、ハードコート性、クラック評価及び防眩性の各評価に優れるものであった。なお、実施例6、8に係る防眩性フィルムの白茶けが若干劣っていたが、これは棒状凸部の形成がやや不足(実施例6)、もしくは、大きな凸部面積がやや不足(実施例8)しているためである。また、実施例9は、2層構成としているため膜厚が厚くなりクラック評価がやや劣り、面ギラもやや劣るものであった。
一方、比較例に係る防眩性フィルムは、白茶け、面ギラ、ハードコート性、及び防眩性のすべての評価に優れるものはなかった。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 光透過性基材、光学機能層、低屈折率層及び光学積層体
引用発明の「防眩性反射防止フィルム」は、技術的にみて、本願発明1の「光学積層体」に相当する。
また、引用発明の「防眩性反射防止フィルム」は、「透明基材」、「防眩層」及び「低屈折率層」をこの順で備えるものである。
そうしてみると、「透明基材」、「防眩層」及び「低屈折率層」は、技術的にみて、それぞれ、本願発明1の「光透過性基材」、「光学機能層」及び「低屈折率層」に相当し、引用発明は、本願発明1の「光透過性基材の一方の面上に、光学機能層と低屈折率層とがこの順に設けられた光学積層体であ」るという要件を満たすものであるといえる。

イ 低屈折率層の凹凸形状、算術平均粗さRa、薄膜部及び厚膜部
引用発明の「低屈折率層」は、「凸部膜厚を0.110μm、凹部膜厚を0.390μm」としたものである。
そうしてみると、引用発明の「低屈折率層」は、本願発明1の「前記低屈折率層は、厚みが不均一で、かつ、表面に凹凸形状を有するものであ」るという要件及び「前記低屈折率層の表面の凸部に、該低屈折率層の薄膜部が存在し、前記低屈折率層の表面の凹部に、該低屈折率層の厚膜部が存在」するという要件を満たすものである。
また、引用発明の「低屈折率層」は、「平均膜厚を0.26μm、凸部膜厚を0.110μm、凹部膜厚を0.390μm」としたものであって、凹部膜厚と凸部膜厚の差(0.280μm)は、平均膜厚の1.08倍である。
そうしてみると、 引用発明の「低屈折率層」は、本願発明1の「d_(D)≧0.18×d_(A)」という要件を満たすものである。
(当合議体注:前記式中、d_(D)は、低屈折率層の薄膜部と厚膜部との厚み差(nm)を表し、d_(A)は、低屈折率層の平均膜厚(nm)を表す。」

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
【一致点】
「 光透過性基材の一方の面上に、光学機能層と低屈折率層とがこの順に設けられた光学積層体であって、
前記低屈折率層は、厚みが不均一で、かつ、表面に凹凸形状を有するものであり、
前記低屈折率層の表面の凸部に、該低屈折率層の薄膜部が存在し、前記低屈折率層の表面の凹部に、該低屈折率層の厚膜部が存在し、
前記低屈折率層の薄膜部と厚膜部との厚みの差が下記式を満たす、
光学積層体。
d_(D)≧0.18×d_(A)
前記式中、d_(D)は、低屈折率層の薄膜部と厚膜部との厚み差(nm)を表し、d_(A)は、低屈折率層の平均膜厚(nm)を表す。」

イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
【相違点1】本願発明1の「低屈折率層の表面の凹凸形状は、算術平均粗さRaが0.01?0.05μmである」のに対し、引用発明の低屈折率層は、「表面凹凸Raを0.057μm」とした点。
【相違点2】本願発明1の「低屈折率層の表面の凹凸形状は、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸のスキューネスをSkとしたとき、前記Skの絶対値及びθaが以下の式を満たす」のに対し、引用発明はこのような特定がなされていない点。
0.05°≦θa≦0.13°(以下「本願平均傾斜角式」という。)
|Sk|≦0.5

(3)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2のうち本願平均傾斜角の構成について検討する。
引用発明の「低屈折率層」は、「平均表面粗さRaが0.057μm」である。また、引用発明の「低屈折率層」は、「防眩層」の凸部を反映した表面形状のものと推察されるから、「凸部の平均中心間距離が33μm」といえる。そうしてみると、引用発明の「低屈折率層」の平均傾斜角θaは、小さく見積もっても(例えば、周期が33μm、凸部が+0.057μm、凹部が-0.057μm、断面が矩形波形状のものを想定しても)、tan^(-1)(0.057*2/(33/2))≒0.4°と計算され、本願平均傾斜角式の要件を満たさない。
そして、引用文献1には、平均傾斜角に関する記載はなく、また、平均傾斜角に関する技術的思想を示唆する記載もないことから、たとえ当業者であっても、引用発明の平均傾斜角を、本願平均傾斜角式の要件を満たすものとすることが、容易に想到することができたということはできない。

ところで、引用文献2の【0055】には平均傾斜角θaに関する記載がある。
しかしながら、引用文献2の【0055】において好ましいとされる平均傾斜角θaの数値範囲は、0.15<θa<0.30であり、本願平均傾斜角式の要件の範囲外である。また、引用文献2に記載された実施例及び比較例における平均傾斜角θaも、すべて本願平均傾斜角式の範囲外である(【0101】の【表1】)。
さらに、引用文献2の【0055】には、「θaが下限未満であると、外光による反射を抑えることができず、防眩性が不充分となるなどの不具合を生じるおそれがある。」と記載されている。そして、引用発明の「防眩性反射防止フィルム」は、「防眩性、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた」ものであり、当業者が、引用発明の「防眩性」を低下させる方向で、引用発明を変更することは阻害要因があるというべきである。
そうしてみると、たとえ引用文献2に記載された事項を心得た当業者であっても、引用発明の平均傾斜角を、本願平均傾斜角式の要件を満たすものとすることが、容易に想到することができたということはできない。

したがって、本願発明1は、たとえ当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたもであるということはできない。

2.本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は、相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由(特許法29条2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-本願発明3は、本願平均傾斜角式を満たすものとなっており、当業者であっても、査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由もない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2013-159563(P2013-159563)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福村 拓堀井 康司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
清水 康司
発明の名称 光学積層体、偏光板及び画像表示装置  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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