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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1342369
審判番号 不服2017-5043  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-07 
確定日 2018-07-12 
事件の表示 特願2012- 55178「養魚用飼料の製造方法および該方法で製造した養魚用飼料」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-188151〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月12日の出願であって、平成27年11月4日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月27日付けで拒絶査定されたところ、平成29年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年4月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年4月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
αデンプンとタンパク質含有原料を含む原料混合物に少なくとも水を加え混練して餅状の養魚用飼料を製造する方法において、
前記原料混合物が前記αデンプンと前記タンパク質含有原料を40:60から10:90の重量比で含み、
前記タンパク質含有原料の少なくとも一部をエクストルーダにより加熱加圧処理することを特徴とする養魚用飼料の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年8月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
デンプン含有原料とタンパク質含有原料を含む原料混合物に少なくとも水を加え混練して餅状の養魚用飼料を製造する方法において、
前記原料混合物が前記デンプン含有原料と前記タンパク質含有原料を40:60から10:90の重量比で含み、
前記タンパク質含有原料の少なくとも一部をエクストルーダにより加熱加圧処理することを特徴とする養魚用飼料の製造方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「デンプン含有原料」を「αデンプン」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2001-186848号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(以下、下線は当審にて付した。)

(引2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚粉代替として養魚飼料に用いられる植物性蛋白質にステビア抽出物を添加することを特徴とする魚粉代替植物性蛋白質の摂餌低下改善方法、並びステビア抽出物と魚粉代替植物性蛋白質を配合することによって摂餌低下を改善した魚粉代替植物性蛋白質組成物及びそれらを含有する養魚飼料に関するものである。」

(引2b)「【0009】本発明の魚粉代替植物性蛋白質とは、農作物より取得される植物性蛋白質で、魚粉の代替として利用可能なものを示す。具体的な例としては大豆由来の蛋白質、トウモロコシ由来の蛋白質、菜種由来の蛋白質などがあげられ、これらを含有する大豆油滓、コーングルテンミール、菜種油滓、がさらに具体例としてあげられる。」

(引2c)「【0016】
【実施例】[実施例1]表1に示す組成に従って各原料を配合、その後飼料1に対し水1.2Lを加え練り、供試飼料を調製した。対照飼料は蛋白源として魚粉のみを使用した。試験試料には魚粉に含まれる粗蛋白質の30%をコーングルテンミールで置換したもの、コーングルテンミールで置換した飼料にステビア抽出物(ステビアフィンH日本製紙(株)製)及びα-グルコシル化ステビア抽出物(SKスイート 日本製紙(株)製)を添加したものを使用した。
魚粉に含まれる粗蛋白質の割合:68%
コーングルテンミールに含まれる粗蛋白質の割合:66%
【0017】
【表1】表1

単位:重量%」

(イ)引用文献2に記載された発明
(引2c)には、「表1に示す組成に従って各原料を配合」すると記載され、引用文献2の表1の試験飼料B、C及びDには、魚粉47重量%、コーングルテンミール21重量%、アルファでんぷん18重量%で配合された試験飼料が記載されているから、この試験飼料は、「魚粉、コーングルテンミール及びアルファでんぷんを、47:21:18の重量比」で「各原料を配合」したものであるといえる。
そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「魚粉代替植物性蛋白質組成物を含有する養魚飼料において、
魚粉、コーングルテンミール及びアルファでんぷんを、47:21:18の重量比で各原料を配合し、
その後飼料1に対し水1.2Lを加え練り、供試飼料を調製する
養魚飼料の製造方法。」

イ 引用文献3
(ア)同じく原査定に引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である本澤清治,蛋白質源としての魚粉の代替原料と利用法の提言,畜産の研究,日本,2011年 6月 1日,Vol.65 No.6,P.611-614,URL,http://grainsjp.org/cms/wp-content/uploads/20101005.pdf(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

(引3a)「【高騰した魚粉に替わる新規原料】
高騰した魚粉に替わる新規原料が課題であり、一般の蛋白質原料との対比でなく良質魚粉とのコストパフォーマンス比較で検討することがポイントである。品質的に良質魚粉に近いもので、単位蛋白質当り価格が良質魚粉より1 割以上安ければ検討の余地ありと考える。また養殖家は発育成績よりも、利益を追う姿勢が欲しい。これらの観点から、アイデア段階も含めて魚粉に替わりうる蛋白質原料を提案する。」(4頁4?9行)

(引3b)「幼動物における大豆粕の消化性/便性状は良いといえないが、エクストルーダはそれを改善する。大豆粕のエクストルーダ加工に関しては、かつてKS 社が特許を出願したと記憶しているが、取得できたとしても特許期限は切れたであろうから問題ないと思う。
ボイラーによる温水養鰻における有胃魚の鰻の体温は高めなので、そのプロテアーゼ活性は鯉/フグよりは高いと考えられ、大豆粕への結晶アミノ酸の補足効果が期待できる。しかし、練り餌においては大豆粕中に残存するアミラーゼがα澱粉の粘結性を劣化するので、その面から大豆粕の配合限度がある。その対策として大豆粕はエクストルーダの高温高圧処理によって、アミラーゼの失活/炭水化物の消化率向上が期待できる。
脱皮大豆粕に結晶メチニンまたはMHA(水酸化メチオニン類似体)を1%程度添加⇒ エクストルーダ加工⇒ クランブル化(顆粒)は、原物の蛋白質60%クラスの魚粉よりも養殖魚種によっては良質な蛋白質原料になる可能性がある。」(5頁1?11行)

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「養魚飼料」、「アルファでんぷん」及び「魚粉」と「コーングルテンミール」は、それぞれ本件補正発明の「養魚用飼料」、「αデンプン」及び「タンパク質含有原料」に相当する。
そして、引用発明の「魚粉、コーングルテンミール及びアルファでんぷんを、47:21:18の重量比で各原料を配合した」ものは、アルファでんぷんと、魚粉及びコーングルテンミールの重量比、すなわちαデンプンとタンパク質含有原料の重量比は18:68であり、本件補正発明の「αデンプンと前記タンパク質含有原料を40:60から10:90の重量比」を満たすことから、本件補正発明の「前記αデンプンと前記タンパク質含有原料を40:60から10:90の重量比で含」む「原料混合物」に相当する。

(イ)本件補正発明において、「餅状の」養魚用飼料とは、本願明細書に「養殖魚の飼料の一形態として、固形餌や生き餌以外に、魚粉等のタンパク質含有原料と粘結剤を水や油と混練して餅状にした練り餌がある。」(【0002】)と記載されているとおり、いわゆる練り餌のことであるから、引用発明の「各原料を配合し、その後飼料1に対し水1.2Lを加え練り、供試飼料を調製する」「養魚飼料の製造方法」は、本件補正発明の「原料混合物に少なくとも水を加え混練して餅状の養魚用飼料を製造する方法」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「αデンプンとタンパク質含有原料を含む原料混合物に少なくとも水を加え混練して餅状の養魚用飼料を製造する方法において、
前記原料混合物が前記αデンプンと前記タンパク質含有原料を40:60から10:90の重量比で含む、
養魚用飼料の製造方法。」

【相違点】
本件補正発明では「前記タンパク質含有原料の少なくとも一部をエクストルーダにより加熱加圧処理する」のに対し、引用発明では、「魚粉、コーングルテンミール」をエクストルーダにより加熱加圧処理するとの特定がない点。

(4)判断
引用文献2には、上記摘記(引2b)のとおり、魚粉の代替として、コーングルテンミールの他に大豆油滓が具体例としてあげられている。また、引用文献3には、魚粉に代わる原料として、エクストルーダ加工した大豆粕を用いることが、そして、「練り餌においては大豆粕中に残存するアミラーゼがα澱粉の粘結性を劣化するので」、「その対策として大豆粕はエクストルーダの高温高圧処理によって、アミラーゼの失活」が期待できることが記載されていることから、練り餌において、魚粉に代わる原料としてエクストルーダにより加熱加圧処理した大豆粕を用いることが好ましいことが記載されているといえる。
してみれば、引用発明において、上記(引2b)の記載を踏まえて、魚粉の代替としてのコーングルテンミールに代えて大豆油滓を用いる際、上記引用文献3の記載に鑑みて、(引用発明もアルファでんぷんを含有する練り餌であるから、)エクストルーダにより加熱加圧処理した大豆粕を用いることは当業者が容易になし得たことである。
そして、コーングルテンミールに代えてエクストルーダにより加熱加圧処理した大豆粕を用いても、アルファでんぷんとタンパク質含有原料(魚粉とエクストルーダにより加熱加圧処理した大豆粕)の重量比が上記18:68から「40:60から10:90の重量比」を満たさなくなるほど大きく変化するものでもない。

ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果として、本願明細書には、「従来の方法では、アミラーゼ活性等の問題で使用が困難であった安価な原料を用いて、高い歩留まりで、餅状の性状を有する養魚用飼料の製造が可能である。」(0013)ことが記載されているが、引用文献3には、「練り餌においては大豆粕中に残存するアミラーゼがα澱粉の粘結性を劣化するので」、「その対策として大豆粕はエクストルーダの高温高圧処理によって、アミラーゼの失活」が「期待できる」と記載されており、当業者が予期しうるもので格別顕著なことではない。
なお、請求人は、審判請求書の請求の理由で、本件補正発明の効果を以下のように説明している。
請求人は、審判請求書の理由において、
「αデンプンとタンパク質含有原料を含む原料混合物に水を加え混練する場合において、餅状の性状が得られなくなる原因としては、それ自身もアミラーゼを含む小麦粉等を用いた場合に比べ、アミラーゼによるαデンプンの加水分解に伴う粘結性の低下よりも、αデンプンの一部が急激に吸水して凝集し、全体に水が均一に行き渡らなくなることが、より大きな要因として挙げられる。この場合において、タンパク質含有原料の少なくとも一部をエクストルーダで加熱加圧処理すると、タンパク質含有原料の水分含量が適度に低下することや、均一化すること等に起因すると思われるが、αデンプンの一部のみが急激に吸水し凝集するという現象が抑制され、餅状の性状を有する飼料が得られると共に、水中でも餅状の性状を長く保持することができる。このような、補正後の請求項1に係る発明の発揮する効果は、引用文献2、3のいずれにも記載も示唆もないことから、これらの引用文献の記載に基づいて当業者が容易に想到できるものでもないし、当業者が予測、期待する範囲を超える顕著な効果であると考える。したがって、補正後の請求項1に係る発明について、特許法第29条第2項を根拠とする拒絶理由は解消したものと考える。」
上記αデンプンによる弊害の説明は本願明細書には記載されていないものであるが、その弊害は、少なくとも一部をエクストルーダにより加熱加圧処理したタンパク質含有原料、すなわちエクストルーダ加工した大豆粕を用いたことにより解決するものといえることから、上記請求人の主張をもってして本件補正発明に新たな格別顕著な効果を認めるには至らない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年4月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年8月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:特開2001-186848号公報
引用文献3:本澤清治,蛋白質源としての魚粉の代替原料と利用法の提言,畜産の研究,日本,2011年 6月 1日,Vol.65 No.6,P.611-614,URL,http://grainsjp.org/cms/wp-content/uploads/20101005.pdf

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「デンプン含有原料」を「αデンプン」に限定した限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-09 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2012-55178(P2012-55178)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典大熊 靖夫本村 眞也  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
▲高▼見 重雄
発明の名称 養魚用飼料の製造方法および該方法で製造した養魚用飼料  
代理人 中嶋 和昭  
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