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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1342454
審判番号 不服2017-3378  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-07 
確定日 2018-07-17 
事件の表示 特願2014-537643「動的な暗号化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日国際公開,WO2013/060876,平成26年11月20日国内公表,特表2014-531175〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2012年10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年10月28日 英国,2011年10月31日 アメリカ合衆国,2011年10月31日,欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,
平成26年6月27日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成27年8月21日付けで審査請求がなされ,平成28年7月13日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年10月14日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成28年10月31日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成28年11月7日),これに対して平成29年3月7日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成29年5月2日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成29年3月7日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成29年3月7日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成28年10月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
暗号化を使用してデータセットを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,前記データセットが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,方法。
【請求項2】
暗号化技法を選択する前記ステップが,ランダムイベントおよび/または疑似ランダムイベントによって,複数の暗号化技法から1つの暗号化技法を選択するステップを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
暗号化技法を選択する前記ステップが,設定された順番に従って暗号化技法を選択するステップを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の暗号化技法が,少なくとも100の暗号化技法を備える,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記データセットが第2のデータパッケージをさらに備え,前記方法が,
・前記第1の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第2のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第2の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第2の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとをさらに備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第2の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第2の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して前記第2のデータパッケージの前記平文データを再現するようにさらに構成されている,請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の復号プログラムが,送信される前に実行可能プログラムにコンパイルされる,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の暗号化技法が,暗号化技法生成プログラムを使用して生成されたカスタム暗号化技法である,請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記データセットが第3のデータパッケージをさらに備え,前記方法が,
・第2の暗号化技法を選択するステップであって,前記第2の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第2の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第2の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の暗号化アルゴリズムを実装する第2の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第3のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第3の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の復号アルゴリズムを実装する第2の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第2の復号プログラム,および/または前記第3の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとをさらに備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第3の暗号化されたデータパッケージが,前記第2の復号プログラムに提供されると,前記第2の復号プログラムが前記第3の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第3のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記データセット全体が,単一のデータパッケージ内で連続して,または個々のデータパッケージ間にわずかな時間間隔をあけて送信される複数のデータパッケージ内で送信される,請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が,前記送信が終了したことを示す命令を前記受信装置に送信するステップをさらに備え,前記命令が,前記受信装置において前記第1の復号プログラムが削除されるように構成される,請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
暗号化を使用してデータを送受信するための電話会話システムであって,暗号化されたデータを受信するための受信装置,および暗号化されたデータを送信するための送信装置を備え,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムを前記受信装置に送信するステップと,
・前記送信装置で,前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して電話会話の平文データを備える第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記送信装置から,前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを前記受信装置に送信するステップと,
・前記受信装置で,前記第1の復号プログラムおよび前記特定のキーを使用して前記第1の暗号化されたデータパッケージを復号するステップであって,前記第1のデータパッケージの前記平文データが再現されて,前記受信装置にとって利用可能にされるステップとによって,暗号化を使用して前記電話会話の前記第1のデータパッケージを備えるデータセットを送信するように構成される,システム。
【請求項12】
前記受信装置が,前記データセットの前記送信が完了した後に,前記第1の復号プログラムを削除するようにさらに構成される,請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記データセットが第2のデータパッケージをさらに備え,前記システムが,
・前記第1の暗号化技法の第1の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第2のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第2の暗号化されたデータパッケージを作成して,
・前記第2の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するようにさらに構成され,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第2の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記復号プログラムが,前記第2の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第2のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,請求項11から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記データセットが第3のデータパッケージをさらに備え,前記システムが,
・第2の暗号化技法を選択して,前記第2の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第2の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第2の復号アルゴリズムとを備え,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の復号アルゴリズムを実装する第2の復号プログラムを取得して,
・前記第2の復号プログラムを前記受信装置に送信して,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の暗号化アルゴリズムを実装する第2の暗号化プログラムを使用して前記送信装置で平文データを備える前記第3のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第3の暗号化されたデータパッケージを作成して,
・前記送信装置から,前記第3の暗号化されたデータパッケージを前記受信装置に送信して,
・前記受信装置で,前記第2の復号プログラムおよび前記特定のキーを使用して前記第3の暗号化されたデータパッケージを復号するようにさらに構成され,前記第3のデータパッケージの前記平文データが再現されて,前記受信装置にとって利用可能にされる,請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
第1の送信の終了と第2の送信の開始との間に大幅な時間間隔があり,前記第1の送信のために使用される前記選択された暗号化技法が前記第2の送信のために使用される前記選択された暗号化技法とは異なる,前記第2の送信を実行するようにさらに構成される,請求項11から14のいずれか一項に記載の暗号化を使用してデータを送受信するためのシステム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
暗号化を使用してデータセットを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,前記データセットが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されており,
前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる,方法。
【請求項2】
暗号化技法を選択する前記ステップが,ランダムイベントおよび/または疑似ランダムイベントによって,複数の暗号化技法から1つの暗号化技法を選択するステップを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
暗号化技法を選択する前記ステップが,設定された順番に従って暗号化技法を選択するステップを備える,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の暗号化技法が,少なくとも100の暗号化技法を備える,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記データセットが第2のデータパッケージをさらに備え,前記方法が,
・前記第1の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第2のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第2の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第2の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとをさらに備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第2の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第2の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して前記第2のデータパッケージの前記平文データを再現するようにさらに構成されている,請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の暗号化技法が,暗号化技法生成プログラムを使用して生成されたカスタム暗号化技法である,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記データセットが第3のデータパッケージをさらに備え,前記方法が,
・第2の暗号化技法を選択するステップであって,前記第2の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第2の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第2の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の暗号化アルゴリズムを実装する第2の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第3のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第3の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の復号アルゴリズムを実装する第2の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第2の復号プログラム,および/または前記第3の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとをさらに備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第3の暗号化されたデータパッケージが,前記第2の復号プログラムに提供されると,前記第2の復号プログラムが前記第3の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第3のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記データセット全体が,単一のデータパッケージ内で連続して,または個々のデータパッケージ間にわずかな時間間隔をあけて送信される複数のデータパッケージ内で送信される,請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が,前記送信が終了したことを示す命令を前記受信装置に送信するステップをさらに備え,前記命令が,前記受信装置において前記第1の復号プログラムが削除されるように構成される,請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
暗号化を使用してデータを送受信するための電話会話システムであって,暗号化されたデータを受信するための受信装置,および暗号化されたデータを送信するための送信装置を備え,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムを前記受信装置に送信するステップと,
・前記送信装置で,前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して電話会話の平文データを備える第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記送信装置から,前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを前記受信装置に送信するステップと,
・前記受信装置で,前記第1の復号プログラムおよび前記特定のキーを使用して前記第1の暗号化されたデータパッケージを復号するステップであって,前記第1のデータパッケージの前記平文データが再現されて,前記受信装置にとって利用可能にされるステップとによって,暗号化を使用して前記電話会話の前記第1のデータパッケージを備えるデータセットを送信するように構成され,
前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる,システム。
【請求項11】
前記受信装置が,前記データセットの前記送信が完了した後に,前記第1の復号プログラムを削除するようにさらに構成される,請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記データセットが第2のデータパッケージをさらに備え,前記システムが,
・前記第1の暗号化技法の第1の暗号化プログラムを使用して平文データを備える前記第2のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第2の暗号化されたデータパッケージを作成して,
・前記第2の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するようにさらに構成され,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第2の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記復号プログラムが,前記第2の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第2のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,請求項10から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記データセットが第3のデータパッケージをさらに備え,前記システムが,
・第2の暗号化技法を選択して,前記第2の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第2の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第2の復号アルゴリズムとを備え,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の復号アルゴリズムを実装する第2の復号プログラムを取得して,
・前記第2の復号プログラムを前記受信装置に送信して,
・前記第2の暗号化技法の前記第2の暗号化アルゴリズムを実装する第2の暗号化プログラムを使用して前記送信装置で平文データを備える前記第3のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第3の暗号化されたデータパッケージを作成して,
・前記送信装置から,前記第3の暗号化されたデータパッケージを前記受信装置に送信して,
・前記受信装置で,前記第2の復号プログラムおよび前記特定のキーを使用して前記第3の暗号化されたデータパッケージを復号するようにさらに構成され,前記第3のデータパッケージの前記平文データが再現されて,前記受信装置にとって利用可能にされる,請求項10から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
第1の送信の終了と第2の送信の開始との間に大幅な時間間隔があり,前記第1の送信のために使用される前記選択された暗号化技法が前記第2の送信のために使用される前記選択された暗号化技法とは異なる,前記第2の送信を実行するようにさらに構成される,請求項10から13のいずれか一項に記載の暗号化を使用してデータを送受信するためのシステム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
(1)新規事項及び目的要件について
本件手続補正は,補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「第1の復号プログラム」に対して,「前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる」という限定事項を加えるものであって,当該限定事項は,平成26年6月27日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文(以下,これを「当初明細書等」という)の段落【0099】に記載の内容に基づくものである。
よって,本件手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものであるから,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして,当該限定事項は,補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「第1の復号プログラム」を限定するものであることは明らかであるから,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。

(2)独立特許要件について
上記(1)において検討したとおり,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定,及び,同法第17条の2第5項の規定を満たすものであるから,
以下において,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,検討する。

ア.補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「暗号化を使用してデータセットを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,前記データセットが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されており,
前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる,方法。」

イ.引用刊行物に記載の事項
(イ)原審における平成28年7月13日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平10-242956号公報(1998年9月11日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0026】最初に第1の実施の形態の構成について説明する。図1に示す第1の実施の形態の秘話装置10は,1桁以上のランダムな数字から成る暗号キーを生成する暗号キー生成部11と,暗号アルゴリズム収容部17に予め格納されている暗号アルゴリズム群の中から1つの暗号アルゴリズムをランダムに選択する暗号アルゴリズム選択部12と,暗号キー生成部11が生成した暗号キーと暗号アルゴリズム選択部12が選択した暗号アルゴリズムとを格納しておく記憶装置(図示せず)と,暗号キーと暗号アルゴリズムとから成る暗号化情報をアナログ/ディジタル変換するための変復調部18とを含み,暗号キーおよび暗号アルゴリズムの組み合せを管理する暗号化管理部13と,暗号化管理部13で指定された暗号キーおよび暗号アルゴリズムに従って音声信号,ファクシミリ画像信号,データ信号等の送信通信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,キーボードやディスプレイ等の入出力装置および送受話器等から成るマンマシンインタフェース部16とから構成する。」

B.「【0028】暗号アルゴリズム選択部12は,複数の暗号アルゴリズムを予じめ格納しておく暗号アルゴリズム収容部17と,暗号アルゴリズム収容部17に格納されている暗号アルゴリズム群の中から1つの暗号アルゴリズムをランダムに選択する選択回路を有する。
【0029】暗号アルゴリズム収容部17は,例えばFMEMあるいはROMで構成することが可能であり,アナログ/ディジタル通信それぞれの場合に適用可能な暗号アルゴリズムが予め複数蓄積されており,選択回路はこのアルゴリズム収容部17から通信開始ごとにランダムに暗号アルゴリズムを選択し,これを暗号化管理部13へ送出する。
【0030】暗号化管理部13は,記憶装置(図示せず)と,通信開始ごとに,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを要求する機能と,暗号キー生成部11および暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを記憶装置に格納した後,受信側の秘話装置との通信回線が接続された直後(通信情報の送信前)にその通信回線を介して暗号キー生成部11および暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを受信側の秘話装置へ送信する機能と,受信側の秘話装置から通信回線を介して所定の応答信号(レディ信号)を受信したとき記憶装置に格納されている暗号キー生成部11および暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを暗号化部14および解読/復元部15に送出する機能とを有する。」

C.「【0033】暗号化部14および解読/復元部15は,それぞれ記憶装置(図示せず)を備え,暗号キー管理部13から暗号キーおよび暗号アルゴリズムを受け取り記憶装置に格納し,記憶した暗号キーと暗号アルゴリズムに基づき送信する通信情報暗号化し,暗号化された受信通信情報を解読/復元し,マンマシンインタフェース部16により通信情報の送受信を実現する。」

D.「【0036】秘話装置10のマンマシンインタフェース部16を所定の方法で発呼操作し,受信側の秘話装置との間に通信回線が接続されたことを検出すると(図2のステップS101),直ちに発呼側秘話装置10の暗号キー生成部11がランダムな暗号キー(例えば1111という値)を生成し(S102)暗号化管理部3へ通知する。
【0037】同時に,暗号アルゴリズム選択部12が暗号アルゴリズム収容部(例えばROM)17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択し(S103)暗号化管理部13へ通知する。
【0038】暗号化管理部13は,暗号キー生成部11から受け取った暗号キー1111と暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号アルゴリズムCとをRAM(図示せず)に格納した後,通信情報を送信する前に,受信側秘話装置10が本発明による暗号化を用いた秘話通信を実現可能であることを確認するために,まず受信側秘話装置10に対して暗号キー1111と暗号アルゴリズムCとを(暗号キー1111と暗号アルゴリズムCとの組み合せ情報でもあってもよい)を接続された通信回線を介して通知する(S104)。」

E.「【0042】ステップS105においてレディ信号を検出した場合,受信側秘話装置10は本発明による暗号化通信が可能であると判断し,以後のステップにおいて暗号化通信を行うための準備に移行する。
【0043】暗号化管理部13は,ステップS105においてレディ信号を検出した場合,先にRAMに格納した暗号キー1111と暗号アルゴリズムCを暗号化部14および解読/復元部15へ通知し(S106),暗号化部14および解読/復元部15はそれぞれ暗号化管理部13から受け取った暗号キー1111と暗号アルゴリズムCを自己の記憶装置(RAM)に格納する。
【0044】これにより,発信側秘話装置10の暗号化部14および解読/復元部15と,受信側秘話装置10の暗号化部14および解読/復元部15の両者に対し,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを設定したことになり,暗号化通信の準備が完了する(S107)。
【0045】以後,発信側秘話装置と受信側秘話装置間でアナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された通信情報が送受信される(S108)。」

F.「【0048】マンマシンインタフェース部16を構成する送受話器やキーボード,ディスプレイ等は,従来一般に使用されているものでよく,ディジタル通信回線を使用する場合には,従来と同様,暗号キーと暗号アルゴリズムとを,ISDNのDチャネルにおける呼設定メッセージにより,またアナログ回線の場合には変復調部により,それぞれ受信側へ通知し,その暗号キーと暗号アルゴリズムとの組み合せにより通信情報の暗号化および解読/復元するので,電話/ファックス/データ通信など,あらゆる通信端末装置に対して適用可能であり,またディジタル/アナログ回線いずれにも対応でき,秘匿性の高い秘話通信機能の実現を可能としている。」

(イ)原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平7-162409号公報(1995年6月23日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「【0033】まず,データ提供者側の計算機システム102により対称暗号法による暗号鍵(復号鍵も同じ)を生成する(ステップ201)。この生成された暗号鍵データは補助記憶装置106に記録される。
【0034】次に,計算機システム102及び端末装置104を使用して復号化モジュールのソースコードを作成し,入力する(ステップ202)。このソースコードは補助記憶装置107に記憶される。
【0035】この場合,特定のデータ利用者に唯一のソースコードを作成してもいいが,複数のデータ利用者に共通のソースコードを補助記憶装置107に蓄積・再利用することもできる。
【0036】次に,この復号化モジュールのソースコードをコンパイラ114を使用してコンパイルし,データ利用者側のCPU108で直接実行可能なオブジェクトコードを作成する(ステップ203)。この場合,前記ソースコードと同様,複数のデータ利用者に共通のオブジェクトコードを蓄積・再利用することもできる。
【0037】次に,ここで生成されたオブジェクトコードをモジュール送信処理部116およびネットワークを介して計算機システム101に転送する(ステップ202)。」

(ウ)原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開平10-41934号公報(1998年2月13日公開,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H.「【0045】情報の送り手側のユーザは,自端末(コンピュータ)で,例えば,電子メール文を作成してそれを暗号化して相手端末に転送する際に,まず,ユーザインタフェイス11を呼び出す。そして,ユーザインタフェイス11を介してその端末に具備されている所定のディスプレイ装置に操作案内等が表示されると,それをもとに,暗号ライブラリ13に格納されている複数の暗号アルゴリズムの中から,処理対象の電子メール文(平文データM)を暗号化するための暗号アルゴリズムEを1つ選択する(図3のステップS1)。さらに,その電子メール文の送り先(通信相手のID,アドレス等)を指定する。
【0046】ユーザインタフェイス11では,例えば,通信相手のIDを基に,鍵情報ファイル12からその通信相手との間で予め定められてた鍵情報Ksを検索し(ステップS2),また,暗号ライブラリ13からユーザにより選択された暗号アルゴリズムEの暗号化プログラムfeを読み出して,平文データMに対し暗号処理を行い,暗号文Cを生成する(ステップS3)。
【0047】ユーザインタフェイス11では,さらに,暗号ライブラリ13から,ユーザにより選択された暗号アルゴリズムEの復号化プログラムfdを読み出して,それと暗号文Cを合成し,メールヘッダを付加して所定のネットワークを介して相手端末に転送する(ステップS4)。」

(エ)本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-63298号公報(2002年2月28日公開,以下,これを「周知技術文献」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

I.「【0025】配信装置1は,予め記憶しているエージェントプログラムのソースプログラムをコンパイルして,エージェントプログラムの実行プログラムを生成する。配信装置1は,生成されたエージェントプログラムの実行プログラムを,暗号化されているコンテンツにコンバインして,エージェント実行形式ファイルを生成する。
【0026】配信装置1は,暗号化されたコンテンツと,所定のエージェントプログラムとがコンバインされて生成されたエージェント実行形式ファイルを,伝送路5を介して,受信装置7に供給する。」

ウ.引用刊行物に記載の発明
(ア)上記Aの「暗号化管理部13で指定された暗号キーおよび暗号アルゴリズムに従って音声信号,ファクシミリ画像信号,データ信号等の送信通信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,キーボードやディスプレイ等の入出力装置および送受話器等から成るマンマシンインタフェース部16とから構成する」という記載,上記Bの「アナログ/ディジタル通信それぞれの場合に適用可能な暗号アルゴリズムが予め複数蓄積されており,選択回路はこのアルゴリズム収容部17から通信開始ごとにランダムに暗号アルゴリズムを選択し,これを暗号化管理部13へ送出する」という記載,上記Cの「記憶した暗号キーと暗号アルゴリズムに基づき送信する通信情報暗号化し,暗号化された受信通信情報を解読/復元し,マンマシンインタフェース部16により通信情報の送受信を実現する」という記載,及び,上記Fの「マンマシンインタフェース部16を構成する送受話器やキーボード,ディスプレイ等は,従来一般に使用されているものでよく,ディジタル通信回線を使用する場合には,従来と同様,暗号キーと暗号アルゴリズムとを,ISDNのDチャネルにおける呼設定メッセージにより,またアナログ回線の場合には変復調部により,それぞれ受信側へ通知し,その暗号キーと暗号アルゴリズムとの組み合せにより通信情報の暗号化および解読/復元するので,電話/ファックス/データ通信など,あらゆる通信端末装置に対して適用可能」という記載から,引用刊行物1には,
“アナログ/ディジタル通信それぞれの場合の電話の音声を暗号化する方法”
に関して記載されていることが読み取れる。

(イ)上記Aの「秘話装置10は,・・・・暗号キー生成部11と,・・・・暗号アルゴリズム選択部12と,・・・・変復調部18とを含み,暗号キーおよび暗号アルゴリズムの組み合せを管理する暗号化管理部13と,暗号化管理部13,・・・・データ信号等の送信通信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,・・・・マンマシンインタフェース部16とから構成する」という記載から,引用刊行物1においては,
“秘話装置10は,暗号キー生成部11と,暗号アルゴリズム選択部12と,変復調部18とを含み,暗号化管理部13,データ信号等の送信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,及び,マンマシンインタフェース部16とから構成される”ものであることが読み取れる。

(ウ)上記Aの「暗号アルゴリズム収容部17に予め格納されている暗号アルゴリズム群の中から1つの暗号アルゴリズムをランダムに選択する暗号アルゴリズム選択部12」という記載,上記Aの「暗号キーおよび暗号アルゴリズムの組み合せを管理する暗号化管理部13」という記載,上記(ア)において引用した上記Bの記載内容,同じく,上記Bの「暗号化管理部13は・・・通信開始ごとに,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを要求する機能」という記載,上記Dの「暗号アルゴリズム選択部12が暗号アルゴリズム収容部(例えばROM)17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択し(S103)暗号化管理部13へ通知する」という記載から,引用刊行物1においては,
“発信側秘話装置10の暗号管理部13が,通信開始ごとに,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを要求すると,暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択する”ものであることが読み取れる。

(エ)上記Aの「暗号キーと暗号アルゴリズムとから成る暗号化情報をアナログ/ディジタル変換するための変復調部18とを含み」という記載,上記Bの「暗号化管理部13は・・・受信側の秘話装置との通信回線が接続された直後(通信情報の送信前)にその通信回線を介して暗号キー生成部11および暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを受信側の秘話装置へ送信する機能」という記載,上記Dの「受信側の秘話装置との間に通信回線が接続されたことを検出すると(図2のステップS101),直ちに発呼側秘話装置10の暗号キー生成部11がランダムな暗号キー(例えば1111という値)を生成し(S102)暗号化管理部3へ通知する」という記載,及び,上記Dの「受信側秘話装置10に対して暗号キー1111と暗号アルゴリズムCとを(暗号キー1111と暗号アルゴリズムCとの組み合せ情報でもあってもよい)を接続された通信回線を介して通知する」という記載から,引用刊行物1においては,
“発呼側秘話装置10は,受信側秘話装置10に対して,通信回線を介して暗号キー生成部11および暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを送信する”ものであることが読み取れる。

(オ)上記(ア)において検討した事項と,上記Eの「発信側秘話装置10の暗号化部14および解読/復元部15と,受信側秘話装置10の暗号化部14および解読/復元部15の両者に対し,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを設定した」という記載,及び,上記Eの「発信側秘話装置と受信側秘話装置間でアナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された通信情報が送受信される」という記載から,引用発明においては,
“発信側秘話装置10は,暗号化部14において,電話の音声を暗号化して,アナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された電話の音声を受信側秘話装置10に送信する”ものであることが読み取れる。

(カ)上記(オ)において検討した事項と,上記(オ)において引用した上記Eの記載内容から,引用刊行物1においては,
“受信側秘話装置10の解読/復元部14において,発信側秘話装置10から送信された暗号化された電話の音声が復号される”ものであることが読み取れる。

(キ)上記(エ)において引用した,上記Dに記載の「発呼側秘話装置10」と,上記(オ)において引用した,上記Eに記載の「発信側秘話装置10」とは同じものであり,同じく,上記Eに記載の「受信側秘話装置10」も,共に,上記Aに記載の「秘話装置10」に含まれるものであることは,明らかであるから,
以上,上記(ア)?(カ)において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「アナログ/ディジタル通信それぞれの場合の電話の音声を暗号化する方法であって,
発信側秘話装置10,及び,受信側秘話装置10は,暗号キー生成部11と,暗号アルゴリズム選択部12と,変復調部18とを含み,暗号化管理部13,データ信号等の送信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,及び,マンマシンインタフェース部16とから構成され,
前記発信側秘話装置10の前記暗号管理部13が,通信開始ごとに,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを要求すると,前記暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択し,
前記発信側秘話装置10は,前記受信側秘話装置10に対して,通信回線を介して前記暗号キー生成部11および前記暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを送信し,
前記発信側秘話装置10は,前記暗号化部14において,電話の音声を暗号化して,アナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された電話の音声を前記受信側秘話装置10に送信し,
前記受信側秘話装置10の前記解読/復元部14において,前記発信側秘話装置10から送信された暗号化された電話の音声が復号される,方法。」

エ.本件補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明における「電話の音声」が,本件補正発明における「電話会話」に相当し,
引用発明における「電話の音声」と,本件補正発明における「データセット」とは,“送信データ”である点で共通するので,
引用発明における「アナログ/ディジタル通信それぞれの場合の電話の音声を暗号化する方法」と,
本件補正発明における「暗号化を使用してデータセットを送信することによって電話会話を暗号化する方法」とは,
“暗号化を使用して送信データを送信することによって電話会話を暗号化する方法”
である点で共通する。

(イ)引用発明における「電話の音声」が,本件補正発明における「第1のデータパッケージ」に相当し,当該「電話の音声」は,上記(ア)において検討した事項を踏まえると,“送信データ”に含まれるものといえるので,
引用発明において,“送信データが,電話の音声を含むものである”ことと,
本件補正発明における「データセットが第1のデータパッケージを備え」ることとは,
“送信データが第1のデータパッケージを備える”点で共通する。

(ウ)引用発明において,「暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択」することは,「暗号アルゴリズム選択部12」が,“自動的に,ランダムに1つの暗号アルゴリズムを選択する”ことに他ならないから,
引用発明における「暗号アルゴリズム選択部12」が,本件補正発明における「暗号化管理システム」に相当し,したがって,
引用発明における「暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択」する「暗号アルゴリズム選択部12」と,
本件補正発明おける「暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップ」とは,
“暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムを備えるステップ”である点で共通する。

(エ)引用発明において,「前記発信側秘話装置10は,前記暗号化部14において,電話の音声を暗号化」することは,「暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択」した「アルゴリズム」を用いて行われることは明らかであるから,
引用発明における「前記発信側秘話装置10は,前記暗号化部14において,電話の音声を暗号化」することと,
本件補正発明における「第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップ」とは,
“第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップ”である点で共通する。

(オ)引用発明において,「発信側秘話装置10は,前記受信側秘話装置10に対して,通信回線を介して前記暗号キー生成部11および前記暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを送信」することは,「受信側秘話装置10」の「解読/復元部14」において,「暗号化された電話の音声」を復号するための情報を送信することに他ならず,
引用発明においても「暗号化された電話の音声」を,「発信側秘話装置10」から,「受信側秘話装置10」に送信しているので,
引用発明において,「発信側秘話装置10は,前記受信側秘話装置10に対して,通信回線を介して前記暗号キー生成部11および前記暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを送信」すること,及び,「発信側秘話装置10は,前記暗号化部14において,電話の音声を暗号化して,アナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された電話の音声を前記受信側秘話装置10に送信」することと,
本件補正発明における「第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップ」とは,
“復号のための情報および第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップ”である点で共通する。

(カ)引用発明においては,復号に用いられる「暗号キー」が,「発信側秘話装置10」から,「受信側秘話装置10」へ,送信されているので,
引用発明において,「受信側秘話装置10の前記解読/復元部14において,前記発信側秘話装置10から送信された暗号化された電話の音声が復号される」ことと,
本件補正発明における「受信装置において,前記特定のキーおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現する」こととは,
“受信装置において,前記特定のキーおよび第1の暗号化されたデータパッケージが,提供されると,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現する”点で共通する。

(キ)以上,上記(ア)?(カ)において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
暗号化を使用して送信データを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,送信データが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムを備えるステップと,
第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
復号のための情報および第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
受信装置において,前記特定のキーおよび第1の暗号化されたデータパッケージが,提供されると,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するよう構成された方法。

[相違点1]
“送信データ”に関して,
本件補正発明においては,「データセット」であって,「第1のデータパッケージを備える」ものであるのに対して,
引用発明においては,「電話の音声」である点。

[相違点2]
“第1の暗号化技法”に関して,
本件補正発明においては,「平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備える」ものであるに対して,
引用発明においては,「復号アルゴリズム」については,特に言及されていない点。

[相違点3]
本件補正発明においては,「第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップ」が存在しているのに対して,
引用発明おいては,「第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラム」に関する言及がない点。

[相違点4]
“送信するステップ”に関して,
本件補正発明においては,「第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「第1の復号プログラム」を送信する点についての言及がない点。

[相違点5]
本件補正発明においては,「第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる」ものであるのに対して,
引用発明においては,「コンパイル」についての言及がない点。

オ.相違点についての当審の判断
(ア)[相違点1]について
本件補正発明における「第1のデータパッケージ」とは,補正後の請求項1に記載された内容から,「電話会話」を暗号化したデータであるといえる。そして,本件補正発明における「データセット」とは,当該「第1のデータパッケージ」と,「第1の復号プログラム」をセットにしたものである。
ここで,“暗号化されたデータ”と,当該“暗号化されたデータ”を“復号するためのプログラム”とを,当該“暗号化されたデータ”を受信する“受信側”に送信することは,例えば,上記Hに引用した引用刊行物3の記載中に,
「ユーザインタフェイス11では,さらに,暗号ライブラリ13から,ユーザにより選択された暗号アルゴリズムEの復号化プログラムfdを読み出して,それと暗号文Cを合成し,メールヘッダを付加して所定のネットワークを介して相手端末に転送する」,
とあるように,本願の第1国出願前に,当業者には広く知られた技術事項である。
そして,引用刊行物3の上記引用記載における「暗号文C」を,引用発明における“暗号化された電話の音声”とすることは,当業者が適宜選択し得る事項であるから,
引用発明において,引用刊行物3に記載の技術を適用することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。

(イ)[相違点2]?[相違点4]について
上記(ア)においても引用した,引用刊行物3の上記Hに引用した記載内容にもあるとおり,“復号プログラムを選択して,受信側に送信する”ことは,本願の第1国出願前に,当業者には広く知られた技術事項であり,
当該「復号プログラム」は,“データを暗号化するのに用いた暗号アルゴリズムを実装する暗号プログラム”に対応する「復号アルゴリズム」を実装するものであることは,明らかであるから,
引用発明においても,引用刊行物3に記載の技術を導入して,“電話の音声の暗号化に用いた暗号アルゴリズム”に対応する,「復号アルゴリズム」を実装する「復号プログラム」を選択して,「受信側秘話装置10」に送信するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって[相違点2]?[相違点4]は,格別のものではない。

(ウ)[相違点5]について
「復号プログラム」を,“受信側”に送信する前に「コンパイル」する点については,
引用刊行物2の上記Gに引用した記載中に,
「この復号化モジュールのソースコードをコンパイラ114を使用してコンパイルし,データ利用者側のCPU108で直接実行可能なオブジェクトコードを作成する」,
「生成されたオブジェクトコードをモジュール送信処理部116およびネットワークを介して計算機システム101に転送する」,
とあり,また,周知技術文献の上記Iに引用した記載中に,
「配信装置1は,予め記憶しているエージェントプログラムのソースプログラムをコンパイルして,エージェントプログラムの実行プログラムを生成する。配信装置1は,生成されたエージェントプログラムの実行プログラムを,暗号化されているコンテンツにコンバインして,エージェント実行形式ファイルを生成する」,
「配信装置1は,暗号化されたコンテンツと,所定のエージェントプログラムとがコンバインされて生成されたエージェント実行形式ファイルを,伝送路5を介して,受信装置7に供給する」,
とあるように,「復号プログラム」を,“受信側”に送信する前に「コンパイル」することは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項である。
よって,引用発明においても,「復号プログラム」を,「受信側秘話装置10」に送信する前に,「コンパイル」するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点5]は,格別のものではない。

(エ)以上,上記(ア)?(ウ)において検討したとおり,[相違点1]?[相違点5]は,格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,引用刊行物2に係る発明,引用刊行物3に係る発明,及び,周知技術文献に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成29年3月7日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成28年10月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「暗号化を使用してデータセットを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,前記データセットが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
・暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備えるステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
・前記第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップと,
・前記第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
前記受信装置において,前記特定のキーおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージが,前記第1の復号プログラムに提供されると,前記第1の復号プログラムが,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するように構成されている,方法。」

第4.引用刊行物に記載の発明
引用刊行物1には,上記「第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」における「ウ.引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の引用発明が記載されているものと認める。

「アナログ/ディジタル通信それぞれの場合の電話の音声を暗号化する方法であって,
発信側秘話装置10,及び,受信側秘話装置10は,暗号キー生成部11と,暗号アルゴリズム選択部12と,変復調部18とを含み,暗号化管理部13,データ信号等の送信情報を暗号化する暗号化部14,暗号化された受信通信情報の内容を解読/復元する解読/復元部15,及び,マンマシンインタフェース部16とから構成され,
前記発信側秘話装置10の前記暗号管理部13が,通信開始ごとに,暗号キーおよび暗号アルゴリズムを要求すると,前記暗号アルゴリズム選択部12が,暗号アルゴリズム格納部17に予め登録されている暗号アルゴリズム群(例えばA,B,……,Z)の中からランダムに1つの暗号アルゴリズム(例えばC)を選択し,
前記発信側秘話装置10は,前記受信側秘話装置10に対して,通信回線を介して前記暗号キー生成部11および前記暗号アルゴリズム選択部12から受け取った暗号キーおよび暗号アルゴリズムを送信し,
前記発信側秘話装置10は,前記暗号化部14において,電話の音声を暗号化して,アナログ通信回線またはディジタル通信回線を介して暗号化された電話の音声を前記受信側秘話装置10に送信し,
前記受信側秘話装置10の前記解読/復元部14において,前記発信側秘話装置10から送信された暗号化された電話の音声が復号される,方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)独立特許要件について」において検討した,本件補正発明から,
「第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを送信する前に,前記第1の暗号化されたデータパッケージが組み込まれた前記第1の復号プログラムが,実行可能プログラムにコンパイルされる」,
という構成を除いたものであるから,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
暗号化を使用して送信データを送信することによって電話会話を暗号化する方法であって,送信データが第1のデータパッケージを備え,前記方法が,
暗号化管理システムで複数の暗号化技法から第1の暗号化技法を自動的に選択するステップであって,前記第1の暗号化技法が,平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムを備えるステップと,
第1の暗号化アルゴリズムを実装する第1の暗号化プログラムを使用して前記電話会話の平文データを備える前記第1のデータパッケージを暗号化して,暗号データを備える第1の暗号化されたデータパッケージを作成するステップと,
復号のための情報および第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信するステップとを備え,
受信装置において,前記特定のキーおよび第1の暗号化されたデータパッケージが,提供されると,前記第1の暗号化されたデータパッケージ内の前記暗号データを復号して,前記第1のデータパッケージの前記平文データを再現するよう構成された方法。

[相違点a]
“送信データ”に関して,
本願発明においては,「データセット」であって,「第1のデータパッケージを備える」ものであるのに対して,
引用発明においては,「電話の音声」である点。

[相違点b]
“第1の暗号化技法”に関して,
本願発明においては,「平文データを暗号データに暗号化するための第1の暗号化アルゴリズムと,特定のキーを提供されることにより暗号データを復号して平文データを再現するための第1の復号アルゴリズムとを備える」ものであるに対して,
引用発明においては,「復号アルゴリズム」については,特に言及されていない点。

[相違点c]
本願発明においては,「第1の暗号化技法の前記第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラムを取得するステップ」が存在しているのに対して,
引用発明おいては,「第1の復号アルゴリズムを実装する第1の復号プログラム」に関する言及がない点。

[相違点d]
“送信するステップ”に関して,
本願発明においては,「第1の復号プログラムおよび前記第1の暗号化されたデータパッケージを受信装置に送信する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「第1の復号プログラム」を送信する点についての言及がない点。

第6.相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との[相違点a]?[相違点d]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]?[相違点4]と同じものであるから,
上記「第2.平成29年3月7日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件について」における「オ.相違点についての当審の判断」において検討したとおり,[相違点a]?[相違点d]は格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-14 
結審通知日 2018-02-19 
審決日 2018-03-07 
出願番号 特願2014-537643(P2014-537643)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 山崎 慎一
石井 茂和
発明の名称 動的な暗号化方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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