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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1342569
審判番号 不服2017-8732  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-14 
確定日 2018-07-18 
事件の表示 特願2014-505176「レスピレータ及びレスピレータを作製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日国際公開、WO2012/141930、平成26年 6月19日国内公表、特表2014-514087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年4月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年4月15日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月11日に国内書面が提出され、平成25年12月5日に明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成27年3月26日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年1月29日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月9日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲について補正する誤訳訂正書が提出され、平成28年9月28日付けで再度拒絶理由が通知され、平成28年12月28日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成29年2月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年5月9日の手続補正により補正された明細書、平成28年12月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
(a)マスク本体であって、
(i)剛性の第1熱可塑性材料を含む中央部分と、
(ii)柔軟な非エラストマーの第2熱可塑性材料を含む周辺部分と、を含み、前記中央部分と周辺部分との間に気密シールを生成するために、前記第1熱可塑性材料が前記第2熱可塑性材料に溶着された、マスク本体と、
(b)前記剛性の中央部分に固定される少なくとも1つのフィルタカートリッジと、を含む、レスピレータ。」

第3 引用文献1及び2、引用発明、引用文献1記載の技術及び引用文献2記載の技術
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特表平10-502565号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 「本発明は、圧縮性フィルター要素を有する呼吸用保護具に関する。」(第5ページ第3行)

イ 「さらに、弾性材料は、相対的に高価であり、処理がより困難である。」(第7ページ第13行及び第14行)

ウ 「本発明の呼吸用保護具は、従来の呼吸用保護具の多くの欠点を解消するものである。本発明の呼吸用保護具では、多くの部品を使用せずにフィルター要素を呼吸用保護具のフェース部に固定する。フィルター要素は交換可能であり、軽量であり、余分な操作を行わずに一回の動作で保持装置を取り付けることができる。さらに、本発明の呼吸用保護具は、フィルター要素によって永久接着剤を使用せずにフェース部に着実な気密シールをすることができる。要約すれば、本発明の呼吸用保護具は、(a)人間の半(審決注:「鼻」の誤記と認める。)及び口を覆って装着するようサイズ決定されるフェース部、外面によって分離される第1及び第2のフェース、および(c)フェース部に接続されるフィルター要素保持装置であって、圧縮性フィルター要素を受容し、フィルター要素を外面に摩擦係合してそれに気密シールを提供し、かつ、フィルター要素を手操作による力で保持装置から除去することができるフィルター要素保持装置を含む。」(第7ページ第17行ないし第28行)

エ 「本発明は、上述のように高価で処理が困難な弾性ゴムを使用することを避けることができる。」(第8ページ第5行及び第6行)

オ 「図2乃至4について説明すると、どのように呼吸用保護具10が構成されているかを詳細に示している。図示のように、フィルター要素14は、フェース部16に着脱自在に固定することができる。フェース部16は、軟質コンプライアンス嵌合部分28および硬質構造部30を含んで良い。こうしたフェース部は、例えば、BurnsおよびReischelによる米国特許5,062,421号に開示されるように形成することができる。軟質コンプライアンスフェース嵌合部28は、着用者の鼻および口を覆うように滑り嵌めすることができ、かつ、KARTON G 2705(Shell Oil Company)などのスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックポリマーなどのポリマーから形成することができる形状を有する。硬質構造部30は、ポリプロピレン樹脂などの硬質プラスチックから形成されることができ、例えば、Pro-Fax^(TM)6523,Hilmont USA,Wilmington,Delawareなどが挙げられる。硬質構造部30は、フィルター要素保持装置14を受容する開口部32を含む。」(第10ページ第2行ないし第13行)

カ 「フィルター媒体の切断片を超音波溶接機を用いてその周長で溶接し、3.5インチ(76.6mm)のODおよび2.58インチ(65.5mm)のIDを有する含浸または溶接周長環を有するフィルターを製造した。」(第16ページ第11行ないし第14行)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること

キ 上記(1)アないしオ及び図3の記載から、引用文献1に記載された呼吸用保護具は、軟質コンプライアンス嵌合部分28及び硬質構造部30を含むフェース部16と、フェース部16に接続されるフィルター要素保持装置14を含むことが分かる。

ク 上記(1)オ及び図3の記載から、引用文献1に記載された呼吸用保護具において、軟質コンプライアンス嵌合部分28はスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックポリマーなどの軟質のポリマーから形成され、硬質構造部30はポリプロピレン樹脂などの硬質プラスチックから形成され、両者が何らかの方法で結合されていることが分かる。

ケ 上記(1)イないしエの記載から、引用文献1に記載された呼吸用保護具は、「弾性材料は、相対的に高価であり、処理がより困難である」という課題を解決するものであり、「高価で処理が困難な弾性ゴムを使用することを避けることができる」という効果を奏するものであることが分かる。

コ 上記(1)カの記載から、引用文献1に記載された呼吸用保護具のフィルターの製造において、超音波溶接機を用いた溶接が用いられていることが分かる。

サ 上記(1)ウの記載から、引用文献1に記載された呼吸用保護具は、フィルター要素、フィルター要素保持装置14及びフェース部16において着実な気密シールをすることができるものであることが分かる。

(3)引用発明及び引用文献1記載の技術
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「フェース部16であって、
硬質プラスチックを含む硬質構造部30と、
軟質のポリマーを含む軟質コンプライアンス嵌合部分28と、を含み、前記硬質構造部30と軟質コンプライアンス嵌合部分28との間に気密シールを生成するために、前記硬質プラスチックが前記軟質のポリマーに結合された、フェース部16と、
前記硬質構造部30に接続される少なくとも1つの圧縮性フィルター要素を受容したフィルター要素保持装置14と、を含む、呼吸用保護具。」

また、上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の技術(以下、「引用文献1記載の技術」という。)が記載されている。

<引用文献1記載の技術>
「相対的に高価であり、処理がより困難である弾性材料を使用することを避ける技術。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特表2001-505080号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 「本発明は、マスクフェイスシールドと一体成形された、呼吸気供給のためのコネクタを有する、フルフェイス呼吸マスクに関する。」(第4ページ第4行及び第5行)

イ 「本発明は、新鮮な呼吸気供給を施すフィルタあるいは給気コネクタを受容する、フルフェイス呼吸マスクの提供を目的とする。本発明は、透明で着用者の目、鼻及び口を被覆するレンズ部分を有するフルフェイスシールドを備える。フレーム及びシール構造をフェイスシールド部分の周囲に形成し、着用者の顔に対する気密性封止材とする。ハーネス及びストラップアセンブリをフレーム及びシール構造の周囲に接続し、マスクを着用者の顔に対向した適切な位置に心地よい状態で保持する。
フェイスシールドは、着用者の実質的に顔全体上に延在する透明なレンズ部分を備える。複数のオリフィスをレンズ部分の下部に形成し、置換可能で交換可能なフィルタ類あるいは正圧給気類などの呼吸源のためのコネクタを提供する。1実施例において、オリフィスは、呼吸マスク内部から外側に向かって空気を流出するノーズカップ及び吐出口の受容部分である。1つまたは複数の吸入口は、内側への空気の流入部分となる。図示する実施例において、吸入口を吐出口の各側に位置決めする。
吸入口は、レンズ部分内に直接形成された複数のコネクタ、あるいは好適実施例において、レンズ部分に超音波によって溶接され、一体構造型レンズ及びコネクタ構成要素を形成する複数のコネクタを備える。コネクタ部分は、吸入口を介して内側方向にのみ向かう空気流を制御及び限定するため、吸入口に隣接した吸入弁を備えてもよい。」(第5ページ第23行ないし第6ページ第13行)

ウ 「図1及び図2を特に参照すると、広く10で示す呼吸マスクが示されている。呼吸マスク10は、目、鼻及び口の被覆を備える、着用者の顔の実質的に全体領域の被覆を提供するフルフェイス呼吸マスクである。呼吸マスク10は、硬質なプラスチックレンズ部分14を包囲するフェイスシール20を有する、フェイスシールド12を備える。フェイスシール20は、蒸気、煙霧、塵埃、霧、及び他の刺激的及び有害なガス及び流体が侵入し着用者の顔に接触することを防止する。
図3に示すように、フルフェイス呼吸マスク10は、マスク10を着用者の顔上に支持するため、マスクに接続し、着用者の頭部の背後を取り囲んで延在するハーネスアセンブリ26を備える。呼吸マスク10はまた、フェイスシールド12とフェイスシール20とを取り囲んで延在する下部フレーム部材24に接続する上部フレーム部材22を備える。フェイスシールド12はレンズ部分14をはじめ、側部に位置する一対の吸入口あるいは空気取り込み口16と、レンズ部分14の下部に位置する中央吐出口18とを備える。
吐出口18は、ノーズカップ40が着用者の顔に対し適合し、口と鼻とをほぼ被覆するように、カップ40を嵌合する中央アダプタ30を受容し、位置合わせする形状を有する。図6に示すように、中央アダプタ30は、吐出口18の周囲に対向して嵌合する中央アダプタガスケット32と、中央アダプタ基部34とを備える。中央アダプタ基部34は、外側への流出は許可するが内側への流入を認めないことにより、着用者によりよい通気状態を提供する吐出弁38を受容する。中央アダプタカバー36を中央アダプタ基部34上に装着する。・・・(中略)・・・
1実施例において、ノーズカップ40は、中央アダプタ30に嵌合する中央オリフィス42を備える。ノーズカップ40は更に、外側へは認めず、内側への流入のみを許可する吸入弁46を受容する吸入弁オリフィス44を備える。弁46を、図示する実施例におけるノーズカップ40の内部の各側部に位置決めする。
各フェイスシールド吸入口16は、交換可能で置換可能なフィルタカートリッジあるいは給気コネクタなどの呼吸気源の相補コネクタ部材を受容する形状を備えた差込式(バイヨネット式)コネクタ50を備える。コネクタ50は、レンズ14と「一体構造」であり、即ち、コネクタ50を機械的に固定するのではなく、接着、溶接、成形、あるいは他の方法でコネクタ50をレンズ14と共に形成する。プラスチック差込式(バイヨネット式)コネクタ部分50を、超音波によりプラスチックレンズ14に直接溶接するか、またはレンズ部分14と直接成形する、あるいは他の方法で共に形成することにより、継ぎ目なしの連続構成要素を形成することが好ましい。レンズ表面から突出し、吸入口16を取り囲むシールリング51を設けて、レンズ14とコネクタ50との間に溶接密閉を形成する補助としてもよい。
直接装着することにより、透明レンズ14の寸法が拡大され、差込式(バイヨネット式)コネクタ部分50に直接隣接し包囲する視界範囲が広くなることから、着用者の視界が拡大されることを理解されたい。レンズ14及びコネクタ50を一体構造にすると、従来技術による機械的接続に比較して頑丈な接続が得られる。」(第7ページ第23行ないし第9ページ第10行)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
エ 上記(1)アないしウ及び図面の記載から、引用文献2には、硬質なプラスチックレンズ部分14を包囲するフェイスシール20を有するフェイスシールド12と、呼吸気供給のためのコネクタ50を備えるフルフェイス呼吸マスク10が記載されていることが分かる。

オ 上記(1)イ及びウ並びに図面の記載から、引用文献2に記載されたフルフェイス呼吸マスク10において、フェイスシールド12にはフェイスシールド吸入口16が備えられており、各フェイスシールド吸入口16は、交換可能で置換可能なフィルタカートリッジ等を受容する形状を備えた差込式コネクタ50を備えることが分かる。

カ 上記(1)ウ及び図面の記載から、引用文献2に記載されたフルフェイス呼吸マスク10において、プラスチック差込式コネクタ部分50を、超音波によりプラスチックレンズ部分14に直接溶接するか、またはプラスチックレンズ部分14と直接成形する、あるいは他の方法で共に形成することにより、継ぎ目なしの連続構成要素を形成することが分かる。

キ 上記(1)ウ及び図面の記載から、引用文献2に記載されたフルフェイス呼吸マスク10において、プラスチック差込式コネクタ部分50をプラスチックレンズ部分14に溶接するに当たり、レンズ表面から突出し、吸入口16を取り囲むシールリング51を設けて、プラスチックレンズ部分14とプラスチック差込式コネクタ部分50との間に溶接密閉を形成する補助としてもよいことが分かる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。

<引用文献2記載の技術>
「フルフェイス呼吸マスク10において、プラスチック差込式コネクタ部分50を、超音波溶接により、プラスチックレンズ部分14に溶接する技術。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明における「硬質プラスチック」は、本願発明における「剛性の第1熱可塑性材料」に相当し、以下同様に、「硬質構造部30」は「(剛性の)中央部分」に、「軟質コンプライアンス嵌合部分28」は「周辺部分」に、「フェース部16」は「マスク本体」に、「圧縮性フィルター要素を受容したフィルター要素保持装置14」は「フィルタカートリッジ」に、「接続される」ことは「固定される」ことに、「呼吸用保護具」は「レスピレータ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「軟質のポリマー」は、本願発明における「柔軟な非エラストマーの第2熱可塑性材料」と、「柔軟な第2熱可塑性材料」という点で共通する。
また、引用発明における「結合」されたことは、本願発明における「溶着」されたことと、「結合」されたことという点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「マスク本体であって、
剛性の第1熱可塑性材料を含む中央部分と、
柔軟な第2熱可塑性材料を含む周辺部分と、を含み、前記中央部分と周辺部分との間に気密シールを生成するために、前記第1熱可塑性材料が前記第2熱可塑性材料に結合された、マスク本体と、
前記剛性の中央部分に固定される少なくとも1つのフィルタカートリッジと、を含む、レスピレータ。」
という点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(1)柔軟な第2熱可塑性材料に関し、本願発明においては、「柔軟な非エラストマーの第2熱可塑性材料」であるのに対し、引用発明においては、軟質のポリマーであるが、「非エラストマー」であるか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)第1熱可塑性材料が第2熱可塑性材料に結合されていることに関し、本願発明においては、「溶着」されているのに対し、引用発明においては、「溶着」されているか否か明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

2 判断
上記相違点について判断する。
(1)相違点1について
引用発明における軟質コンプライアンス嵌合部分28は、着用者の鼻および口を覆うように滑り嵌めすることができるものであり、硬質構造部30と一体化できるものであればよい(上記第3 1(1)オを参照。)から、軟質のポリマーであればよく、エラストマーである必要はない。
また、引用文献1には、「相対的に高価であり、処理がより困難である弾性材料を使用することを避ける技術。」(上記「引用文献1記載の技術」)も記載されており、弾性材料(エラストマー)を使用することを避けるものである。
また、レスピレータの周辺部分を非エラストマーとすることは、本願の優先日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特表2007-530141号公報の段落【0017】及び【0018】並びに図1、特開2002-239018号公報の段落【0009】及び図1ないし3等の記載を参照。)でもある。
してみれば、引用発明において、引用文献1記載の技術に基づいて、又は周知技術1を適用して、引用発明における軟質のポリマーを「非エラストマー」に限定することにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
なお、請求人は、平成28年12月28日付け意見書において、引用文献1に記載された「KARTON G 2705」は、非エラストマーではない旨主張している。しかしながら、引用文献1において軟質コンプライアンス嵌合部分28の材料として記載されているのは、「ポリマー」であって、「KARTON G 2705」に限定されているわけではない。また、引用文献1には、上記のように、弾性部材(エラストマー)を使用することを避けることが記載されているから、引用発明において軟質コンプライアンス嵌合部分28を非エラストマーとすることが示唆されている。よって、請求人の上記主張は失当である。

(2)相違点2について
レスピレータ(呼吸用保護具)の技術分野において、熱可塑性プラスチック等の熱可塑性材料を結合させるために、超音波溶接等により溶着することは、本願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、上記「引用文献2記載の技術」、特開2000-189529号公報の段落【0017】等の記載、特表2010-540025号公報の段落【0006】、【0049】、【0050】及び【0084】等の記載を参照。)である。
また、引用文献1においても、フィルターの製造時に超音波溶接機を用いて溶接することが記載されている(上記第3 1(1)カ及び(2)コを参照)。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
なお、請求人は、審判請求書において、「引用文献2に記載の発明におけるプラスチックレンズは、柔軟な要素ではなく、硬質な要素である」(審判請求書の3-2.)と主張するが、本願発明における「周辺部分」は、「・・・顔の特徴に従うのに十分に柔軟であり、・・・十分な剛性を有しなければならない。」(段落【0028】)というものであるから、本願発明における「柔軟」は、一般的な意味での「柔軟」ではなく、十分な剛性を有するが顔の特徴に従うのに十分に柔軟であるという程度に「柔軟」という意味である。そして、引用文献2に記載されたフルフェイス呼吸マスクにおける硬質なプラスチックレンズは、フルフェイス呼吸マスクに用いられているのであるから、十分な剛性を有するが顔の特徴に従うのに十分に柔軟であると認められる。よって、請求人の上記主張は失当である。(なお、平成28年5月9日付け誤訳訂正書により「順応性」を「柔軟な」とした手続補正は、根拠がなく、新規事項の追加のおそれがある。)

(3)効果について
また、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献1記載の技術並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の技術並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
上記第2ないし第4で述べたとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の技術並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-15 
結審通知日 2018-02-20 
審決日 2018-03-05 
出願番号 特願2014-505176(P2014-505176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 誠櫻田 正紀  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 金澤 俊郎
西山 智宏
発明の名称 レスピレータ及びレスピレータを作製する方法  
代理人 阿部 寛  
代理人 柳 康樹  
代理人 鈴木 英彦  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  

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