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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1342593
審判番号 不服2017-7040  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-16 
確定日 2018-07-26 
事件の表示 特願2013- 94326「パターン付き基板の加工方法およびパターン付き基板の加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-216556〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年4月26日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月28日 拒絶理由通知
平成29年 1月30日 意見書
平成29年 2月14日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 5月16日 審判請求・手続補正

第2 平成29年5月16日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年5月16日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,特許請求の範囲の請求項5の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「【請求項5】
単結晶基板上に複数の単位パターンを2次元的に繰り返し配置してなるパターン付き基板を加工する方法であって,
前記パターン付き基板に設定された加工予定線に沿ってレーザー光を照射することにより,前記パターン付き基板に分割起点を形成する分割起点形成工程と,
前記パターン付き基板を前記分割起点に沿ってブレイクすることにより個片化するブレイク工程と,
を備え,
前記分割起点形成工程が,前記レーザー光を前記加工予定線に沿って走査しつつ照射することによって,前記レーザー光のそれぞれの単位パルス光によって前記パターン付き基板に形成される加工痕が前記加工予定線に沿って離散的に位置するようにするとともに,それぞれの加工痕から前記パターン付き基板に亀裂を伸展させる亀裂伸展加工工程,
を含み,
前記分割起点形成工程においては,前記亀裂伸展加工工程が行われることによって前記加工痕が形成される領域が前記加工予定線に沿って等間隔に偏在するように,前記パターン付き基板と前記レーザー光との相対的な移動速度によって前記亀裂伸展加工工程を前記加工予定線に沿って断続的に行う,
ことを特徴とするパターン付き基板の加工方法。」
2 新規事項の追加の有無
本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「当初明細書等」という。)には,「図4および図5は,レーザー加工装置100において一の加工予定線PL(PL1)に沿って断続的亀裂伸展加工を行った場合の,パターン付き基板Wにおける加工痕Mの形成の様子を模式的に示す,パターン付き基板Wの平面図および当該加工予定線PL(PL1)に沿った垂直断面図である。
一の加工予定線PLに沿って断続的亀裂伸展加工を行った場合,図4および図5に示すように,複数の加工痕Mが離散的にかつ等間隔に形成された第1領域RE1と,加工痕が形成されない第2領域RE2とが,加工予定線に沿って交互に形成される。換言すれば,加工痕が形成される第1領域RE1が加工予定線PLに沿って等間隔に偏在する。」(段落0058-0059)と記載され,「加工痕が形成される第1領域が等間隔に偏在する」ために「レーザー加工装置100」において加工することが記載されているが,加工をどのように行うかの記載はない。そして「レーザー加工装置100において実現可能な加工手法」として「レーザー光LBの繰り返し周波数がR(kHz)である場合,1/R(msec)ごとに1つのレーザーパルス(単位パルス光とも称する)がレーザー光源から発せられることになる。被加工物10が載置されたステージ4が速度V(mm/sec)で移動する場合,あるレーザーパルスが発せられてから次のレーザーパルスが発せられる間に,被加工物10はV×(1/R)=V/R(μm)だけ移動することになるので,あるレーザーパルスのビーム中心位置と次に発せられるレーザーパルスのビーム中心位置との間隔,つまりはビームスポット中心間隔Δ(μm)は,Δ=V/Rで定まる。」(段落0036-0037)と記載されているが,これを「加工痕が形成される第1領域が等間隔に偏在する」ために適用した場合には,「複数の加工痕Mが離散的にかつ等間隔に形成された第1領域RE1」と「加工痕が形成されない第2領域RE2」では,ビームスポット中心間隔を変えなければならず,単にステージ速度Vとレーザ光の繰り返し周波数Rを一定に定めるだけでは足らず,ビームスポット中心間隔Δを「加工痕が形成される第1領域が等間隔に偏在する」ように変化させなければならないし,このために何らかの「調整」を行わなければならない。この点に関して,当初明細書等には「繰り返し周波数の調整」は「パルスジェネレータ」によって実現されること(段落0021)及び「パルスの繰り返し周波数の調整」により「対象とされた加工位置において,指定された加工モードでの加工が実現される」こと(段落0033)の記載はあるが,「ステージ速度」を調整ないし変化させることは一切記載がない。
よって,本件補正により追加された「前記パターン付き基板と前記レーザー光との相対的な移動速度によって」は,当初明細書等には記載されていない。
仮に,当初明細書等に記載された発明において「ステージ速度」を調整変化させるとすると,慣性の大きなステージをmsec程度の時間でμm程度の距離移動する間にその移動速度を変化させなければならず,これを当初明細書等に導入すれば,「このような制御が極めて困難であるという問題」(下記第3の3(1)イ【0053】参照。)を超越することになるから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3 むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年5月16日付け手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項5に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,当初明細書等の請求項5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「単結晶基板上に複数の単位パターンを2次元的に繰り返し配置してなるパターン付き基板を加工する方法であって,
前記パターン付き基板に設定された加工予定線に沿ってレーザー光を照射することにより,前記パターン付き基板に分割起点を形成する分割起点形成工程と,
前記パターン付き基板を前記分割起点に沿ってブレイクすることにより個片化するブレイク工程と,
を備え,
前記分割起点形成工程が,前記レーザー光を前記加工予定線に沿って走査しつつ照射することによって,前記レーザー光のそれぞれの単位パルス光によって前記パターン付き基板に形成される加工痕が前記加工予定線に沿って離散的に位置するようにするとともに,それぞれの加工痕から前記パターン付き基板に亀裂を伸展させる亀裂伸展加工工程,
を含み,
前記分割起点形成工程においては,前記亀裂伸展加工工程が行われることによって前記加工痕が形成される領域が前記加工予定線に沿って等間隔に偏在するように,前記亀裂伸展加工工程を前記加工予定線に沿って断続的に行う,
ことを特徴とするパターン付き基板の加工方法。」

2 原査定における拒絶の理由
(進歩性)この出願の請求項5に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2013-046924号公報

3 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,パルスレーザビームを用いるレーザダイシング方法に関する。」
イ 「【0028】
次に,上記レーザダイシング装置10を用いたレーザダイシング方法について,図1?図7を用いて説明する。
【0029】
まず,被加工基板W,例えば,サファイア基板をXYZステージ部20に載置する。このサファイア基板は,例えば下面にエピタキシャル成長されたGaN層を有し,このGaN層に複数のLEDがパターン形成されているウェハである。ウェハに形成されるノッチまたはオリエンテーションフラットを基準にXYZステージに対するウェハの位置合わせが行われる。
【0030】
図2は,本実施の形態のレーザダイシング方法のタイミング制御を説明する図である。加工制御部26内の基準クロック発振回路28において,周期Tcのクロック信号S1が生成される。レーザ発振器制御部22は,レーザ発振器12がクロック信号S1に同期した周期TcのパルスレーザビームPL1を出射するよう制御する。この時,クロック信号S1の立ち上がりとパルスレーザビームの立ち上がりには,遅延時間t1が生ずる。
【0031】
レーザ光は,被加工基板に対して透過性を有する波長のものを使用する。ここで,被加工基板材料の吸収のバンドギャプEgより,照射するレーザ光の光子のエネルギーhνが大きいレーザ光を用いることが好ましい。エネルギーhνがバンドギャプEgより非常に大きいと,レーザ光の吸収が生ずる。これを多光子吸収と言い,レーザ光のパルス幅を極めて短くして,多光子吸収を被加工基板の内部に起こさせると,多光子吸収のエネルギーが熱エネルギーに転化せずに,イオン価数変化,結晶化,非晶質化,分極配向または微小クラック形成等の永続的な構造変化が誘起されてカラーセンターが形成される。
【0032】
このレーザ光(パルスレーザビーム)の照射エネルギー(照射パワー)は,被加工基板表面に連続的なクラックを形成する上での最適な条件を選ぶ。
【0033】
そして,被加工基板材料に対して,透過性を有する波長を使用すると,基板内部の焦点付近にレーザ光を導光,集光が可能となる。従って,局所的にカラーセンターを作ることが可能となる。このカラーセンターを,以後,改質領域と称する。
(中略)
【0038】
具体的には,パルスレーザビームの照射と非照射が,光パルス数で規定される所定の条件に基づき行われる。すなわち,照射光パルス数(P1)と,非照射光パルス数(P2)を基にパルスピッカー動作が実行され,被加工基板への照射と非照射が切り替わる。パルスレーザビームの照射パターンを規定するP1値やP2値は,例えば,加工テーブルに照射領域レジスタ設定,非照射領域レジスタ設定として規定される。P1値やP2値は,被加工基板の材質,レーザビームの条件等により,ダイシング時の改質領域およびクラック形成を最適化する所定の条件に設定される。
【0039】
変調パルスレーザビームPL2は,ビーム整形器16により所望の形状に整形されたパルスレーザビームPL3とする。さらに,整形されたパルスレーザビームPL3は,集光レンズ18で集光され所望のビーム径を有するパルスレーザビームPL4となり,被加工基板であるウェハ上に照射される。
【0040】
ウェハをX軸方向およびY軸方向にダイシングする場合,まず,例えば,XYZステージをX軸方向に一定速度で移動させて,パルスレーザビームPL4を走査する。そして,所望のX軸方向のダイシングが終了した後,XYZステージをY軸方向に一定速度で移動させて,パルスレーザビームPL4を走査する。これにより,Y軸方向のダイシングを行う。
【0041】
上記の照射光パルス数(P1)と,非照射光パルス数(P2)およびステージの速度で,パルスレーザビームの照射非照射の間隔が制御される。
【0042】
Z軸方向(高さ方向)については,集光レンズの集光位置(焦点位置)がウェハ内の所定深さに位置するよう調整する。この所定深さは,ダイシングの際に改質領域(改質層)が形成され,クラックが被加工基板表面に所望の形状に形成されるよう設定される。
(中略)
【0045】
そして,ステージの横方向(X軸方向またはY軸方向)の移動により,変調パルスレーザビームPL2の照射光パルスがウェハ上に照射スポットとして形成される。このように,変調パルスレーザビームPL2を生成することで,ウェハ上に照射スポットが光パルス単位で制御され断続的に照射される。図4の場合は,照射光パルス数(P1)=2,非照射光パルス数(P2)=1とし,照射光パルス(ガウシアン光)がスポット径のピッチで照射と非照射を繰り返す条件が設定されている。
(中略)
【0050】
図5は,サファイア基板上に照射される照射パタ-ンを示す上面図である。照射面上からみて,照射光パルス数(P1)=2,非照射光パルス数(P2)=1で,照射スポット径のピッチで照射スポットが形成される。図6は,図5のAA断面図である。図に示すようにサファイア基板内部に改質領域が形成される。そして,この改質領域から,光パルスの走査線上に沿って基板表面に達するクラック(または溝)が形成される。そして,このクラックが被加工基板表面において連続して形成される。なお,本実施の形態では,クラックは基板表面側のみに露出するよう形成され,基板裏面側にまでは達していない。
(中略)
【0053】
ここで,照射スポットを連続させて照射領域の長さをより長くした方が,割断性が良いと仮定する。この場合は,図17(d)に示すように,ステージ速度を変更せずに照射/非照射=2/1とすることで対応が可能である。仮に本実施の形態のように,パルスピッカーを用いなければ,同様の条件を現出させるためにはステージ速度を低下させ,かつ,ステージ速度を変動させることが必要となり,ダイシング加工のスループットが低下するとともに制御が極めて困難になるという問題が生ずる。」
ウ 「【0066】
本実施の形態のレーザダイシング方法のように,改質領域の形成により,基板表面にまで達し,かつ,被加工基板表面において連続するクラックを形成することで,後の基板の割断が容易になる。例えば,サファイア基板のように硬質の基板であっても,基板表面にまで達するクラックを割断または切断の起点として,人為的に力を印加することで,割断が容易になり,優れた割断特性を実現することが可能となる。したがって,ダイシングの生産性が向上する。」
エ 「【0073】
また,実施の形態においては,照射光パルス数(P1)=2,非照射光パルス数(P2)=1とする場合を例に説明したが,P1とP2の値は,最適条件とするために任意の値を取ることが可能である。また,実施の形態においては,照射光パルスがスポット径のピッチで照射と非照射を繰り返す場合を例に説明したが,パルス周波数あるいはステージ移動速度を変えることで,照射と非照射のピッチを変えて最適条件を見出すことも可能である。例えば,照射と非照射のピッチをスポット径の1/nやn倍にすることも可能である。」
オ 図17(d)には,「走査線」上に「照射スポット」が整列し,「照射スポット」が連続した2個の「照射領域」と照射スポット1個分の「非照射領域」が繰り返されること,が記載されていると認められる。
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「レーザダイシング方法であって,サファイア基板である被加工基板は複数のLEDがパターン形成されているウェハであり,
パルスレーザビームを走査し,パルスレーザビームを照射すると,基板内部の焦点付近に改質領域が形成され,この改質領域から,光パルスの走査線上に沿って基板表面に達するクラックが形成され,
走査線上に照射スポットが連続した2個の照射領域と照射スポット1個分の被照射領域が繰り返され,
その後の基板の割断を行い,クラックを割断の起点とすること。」
4 対比及び判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「レーザダイシング方法」は,「サファイア基板」を「被加工基板」とし,この「被加工基板は複数のLEDがパターン形成されているウェハ」であるから,下記相違点を除いて,本願発明の「単結晶基板上に複数の単位パターンを2次元的に繰り返し配置してなるパターン付き基板を加工する方法」に相当する。
イ 引用発明では,「パルスレーザビームを走査し,パルスレーザビームを照射すると」「光パルスの走査線上に沿って基板表面に達するクラックが形成され」,この「クラック」が「割断の起点」となることから,引用発明は,本願発明の「前記パターン付き基板に設定された加工予定線に沿ってレーザー光を照射することにより,前記パターン付き基板に分割起点を形成する分割起点形成工程」を備えるものである。
ウ 引用発明では「クラックを割断の起点」とする「基板の割断」を行うから,これは,本願発明の「前記パターン付き基板を前記分割起点に沿ってブレイクすることにより個片化するブレイク工程」に相当する。
エ 引用発明では,「パルスレーザビームを走査し,パルスレーザビームを照射すると,基板内部の焦点付近に改質領域が形成され,この改質領域から,光パルスの走査線上に沿って基板表面に達するクラックが形成され」るものであり,この「改質領域」は本願発明の「加工痕」に相当するから,下記相違点を除いて,本願発明の「前記分割起点形成工程が,前記レーザー光を前記加工予定線に沿って走査しつつ照射することによって,前記レーザー光のそれぞれの単位パルス光によって前記パターン付き基板に形成される加工痕が前記加工予定線に沿って位置するようにするとともに,それぞれの加工痕から前記パターン付き基板に亀裂を伸展させる亀裂伸展加工工程」を満たす。
オ 引用発明では「走査線上に照射スポットが連続した2個の照射領域と照射スポット1個分の被照射領域が繰り返され」るものであり,引用発明の「照射スポットが連続した2個の照射領域」は,下記相違点を除いて,本願発明の「前記亀裂進展加工工程が行われることによって前記加工痕が形成される領域」に相当するから,本願発明の「前記分割起点形成工程においては,前記亀裂伸展加工工程が行われることによって前記加工痕が形成される領域が前記加工予定線に沿って等間隔に偏在するように,前記亀裂伸展加工工程を前記加工予定線に沿って断続的に行う」を満たす。
カ してみると,本願発明と引用発明とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。
キ 一致点
「単結晶基板上に複数の単位パターンを2次元的に繰り返し配置してなるパターン付き基板を加工する方法であって,
前記パターン付き基板に設定された加工予定線に沿ってレーザー光を照射することにより,前記パターン付き基板に分割起点を形成する分割起点形成工程と,
前記パターン付き基板を前記分割起点に沿ってブレイクすることにより個片化するブレイク工程と,
を備え,
前記分割起点形成工程が,前記レーザー光を前記加工予定線に沿って走査しつつ照射することによって,前記レーザー光のそれぞれの単位パルス光によって前記パターン付き基板に形成される加工痕が前記加工予定線に沿って位置するようにするとともに,それぞれの加工痕から前記パターン付き基板に亀裂を伸展させる亀裂伸展加工工程,
を含み,
前記分割起点形成工程においては,前記亀裂伸展加工工程が行われることによって前記加工痕が形成される領域が前記加工予定線に沿って等間隔に偏在するように,前記亀裂伸展加工工程を前記加工予定線に沿って断続的に行う,
ことを特徴とするパターン付き基板の加工方法。」
ク 相違点
本願発明では加工痕が「離散的に」位置するのに対し,引用発明では「照射領域」が「連続した2個の」「照射スポット」からなる点。
(2)相違点についての判断
ア 引用文献1には「照射光パルスがスポット径のピッチで照射と非照射を繰り返す場合の例」から「ピッチを変えて最適条件を見出し」「照射と非照射のピッチをスポット径のn倍にすること」が記載されている(前記3(1)エ)から,引用発明において連続した2個の照射スポットのピッチを変えて,ピッチをスポット径のn倍とすることが示唆されている。
してみると,この示唆にしたがって,照射スポットのピッチをスポット径のn倍とすれば,パルスレーザビームの焦点付近に形成される改質領域(加工痕)が「離散的」に位置することになるから,相違点に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることである。
イ 「加工痕の数を減らしつつパターン付き基板を良好に分割することができる。個々のLED素子に個片化する場合であれば,従来よりも光の取り出し効率が向上したLED素子が得られる」(本願明細書段落0014)という効果についても,照射スポットのピッチを最適化したことから,当業者が当然に予測できるものである。
(3)まとめ
よって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 結言
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-25 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-11 
出願番号 特願2013-94326(P2013-94326)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 大志梶尾 誠哉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 パターン付き基板の加工方法およびパターン付き基板の加工装置  

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