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審決分類 審判 一部無効 1項2号公然実施  B60P
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  B60P
審判 一部無効 2項進歩性  B60P
管理番号 1342642
審判番号 無効2017-800101  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-01 
確定日 2018-07-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3397309号発明「テールゲートリフターの油圧回路」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3397309号(以下「本件特許」という。)についての特許出願は、平成12年4月27日になされ、平成15年2月14日にその特許権が設定登録された。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年 8月 1日 本件無効審判請求
同年 8月22日付け 手続補正指令書(方式)
同年 9月 8日 請求人より手続補正書(方式)及び証拠
説明書の提出
同年11月22日 被請求人より審判事件答弁書の提出
同年12月25日付け 審理事項通知
平成30年 1月29日 請求人より口頭審理陳述要領書(以下「
請求人陳述要領書(1)という。)の提出
同年 2月19日 被請求人より口頭審理陳述要領書 (以下
「被請求項人陳述要領書(1)という。)
の提出
同年 2月26日 請求人より口頭審理陳述要領書(2)(以
下「請求項人陳述要領書(2)という。)
の提出
同年 2月27日 請求人より証拠説明書(2)の提出
同年 2月28日 被請求人より口頭審理陳述要領書(2)
(以下「被請求人陳述要領書(2)とい
う。)及び証拠説明書の提出
同年 3月 2日 口頭審理

第2 本件特許発明
本件無効審判請求に係る本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものである
「【請求項1】 ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、前記チェック弁はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には「閉」状態に保持され、モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には「開」状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止することを特徴とするテールゲートリフター。

【請求項2】 前記油タンク、前記モーター、前記開閉用ソレノイド弁を含む油圧回路をパワーパック化したことを特徴とする請求項1記載のテールゲートリフター。」

第3 請求人の主張
請求人は、特許第3397309号の請求項1及び2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めており、審判請求書(手続補正書(方式)により補正されている。)、請求人陳述要領書(1)及び請求人陳述要領書(2)において主張する無効理由及び証拠方法は概ね以下のとおりである。

1 無効理由について
(1)無効理由1
本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件の請求項1に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許発明1は、甲第4号証に係る公然実施発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、本件の請求項1に係る特許は、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件特許発明2は、甲第4号証に係る公然実施発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件の請求項2に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件特許発明1及び2は、甲第3号証の1に記載された発明又は甲第4号証に係る公然実施発明に、甲第6号証の1ないし5に示される周知・慣用技術を適用することにより、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件の請求項1及び2に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して甲第3号証の1ないし甲第6号証の5を提出し、請求人陳述要領書(1)に添付して甲第7号証の1ないし甲第12号証を提出し、請求人陳述要領書(2)に添付して甲第13号証を提出している。
なお、審判請求書に添付して提出された甲第1、2号証はそれぞれ参考資料1、2と訂正された。また、以下「甲3の1」等簡略表記とする。

甲3の1:旧東ドイツ国経済特許第272267号明細書
甲3の2:甲3の1の図面の説明図
甲4 :証明書(作成者:東豊梱包運輸有限会社,
作成日:平成16年9月ころ)
甲5 :甲4の第3図の油圧回路図の説明図
(作成者:請求人,作成日:平成29年7月31日)
甲6の1:実公昭46-36243号公報
甲6の2:特公昭62-15479号公報
甲6の3:実公昭63-413号公報
甲6の4:特公平5-61131号公報
甲6の5:特開平11-166351号公報
甲7の1:特開平10-236215号公報
甲7の2:実公平5-17312号公報
甲7の3:特開平1-301423号公報
甲7の4:特公平4-17808号公報
甲8 :油圧教育研究会編,塩崎義弘 河岸理 中村和夫 綿田哲雄著, 「油圧教本」,第6版,日刊工業新聞社,昭和46年8月
30日第6版発行,第68?69,74?77,88?89, 106?107,154?157ページ
甲9 :不二越ハイドロニクスチーム著,「新・知りたい油圧/基礎
編」,第10刷,株式会社ジャパンマシニスト社,平成5年
4月10日初版発行 平成23年7月20日第10刷発行,
第114?121ページ
甲10 :写真(甲4の写真2をデジタルカメラで接写して拡大したも
の。撮影者:請求人会社従業員月本清志,撮影日:平成30
年1月14日)
甲11 :写真(甲4の写真4をデジタルカメラで接写して拡大したも
の。撮影者:請求人会社従業員月本清志,撮影日:平成30
年1月20日)
甲12 :報告書-ユーザ照明の図面整合性について(作成者:請求人
会社従業員月本清志,作成日:平成30年1月17日)
甲13 :(社)日本油空圧学会編,「新版 油空圧便覧」,第1版第1 刷,株式会社オーム社,平成1年2月25日,第280?
281ページ

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めており、審判事件答弁書、被請求人陳述要領書(1)及び被請求人陳述要領書(2)における主張及び証拠方法は概ね以下のとおりである。

1 無効理由について
(1)無効理由1
本件特許発明1は、甲3に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないので、同法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効となるべきものでない。

(2)無効理由2及び3
ア 甲4からは、「テールゲートリフター(RAM10-403A)」が本件特許の出願前に公然実施されていたとはいえない。
イ 「テールゲートリフター(RAM10-403A)」が本件特許の出願前に公然実施されており、それが甲4の第3図に記載の油圧回路を備えているとの請求人の主張を、とりあえず認めることとしても、本件特許発明1及び2は、甲4に係る公然実施発明ではなく、特許法第29条第1項第2号に該当しないので、同法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効となるべきものでない。

(4)無効理由4
本件特許発明1及び2は、甲3に記載された発明又は甲4に示される公然実施発明及び甲6の1ないし甲6の5に示される周知・慣用技術に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないので、同法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効となるべきものでない。

2 証拠方法
被請求人は、口頭審理陳述要領書(2)に添付して乙第1号証を提出している。なお、以下「乙1」と簡略表記とする。
乙1:旧東ドイツ国経済特許第109580号明細書

第5 当審の判断
まず、無効理由4に関し、以下、甲3の1を主たる引例として本件特許発明1、2が容易想到との理由をそれぞれ無効理由4-1、4-2、甲4を主たる引例として本件特許発明1、2が容易想到との理由をそれぞれ無効理由4-3、4-4とする。
1 甲3の1を主たる引例とした場合(無効理由1、4-1、4-2)における、各甲号証の記載事項及び記載された発明等
(1)甲3の1
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲3の1(旧東ドイツ国経済特許第272267号明細書)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、併記した翻訳文は、請求人より提出された甲3の1抄訳を参考にした。また、下線は当審で付加した。以下同様。
ア 記載事項
(ア)

(第3ページ第3?18行)

「【本発明の利用分野】
本発明は車両用の油圧作動テールゲートリフタに関し、対で配置され機械的および油圧的に連結されて作業シリンダとして形成される加圧流消費体を有し、この加圧流消費体は弁制御される流体配管を介して電気的に駆動される加圧流生成器および油圧媒体用の無加圧容器とに開放性循環において接続される。
このテールゲートリフタは車両、特にトラック用に使用され、油圧設備に対するその流体静力学的な加圧流生成器は電気モータで駆動され、かつ一定の給送容量を有する油圧ポンプとして形成される。加えて本発明に基づく油圧設備は類似に形成される作業プラットホームに対して荷物を上昇下降させるために使用することができ、その場合、加圧流生成器は内燃エンジンによって駆動することもできる。」

(イ)

(第7ページ第26行?第9ページ第28行)

「【実施例】
以下、本発明を実施例において詳細に説明するが、その場合、図面はテールゲートリフタ操作のための油圧配管図を示す。
油圧操作テールゲートリフタを実現するために、機械的に連結される対の作業シリンダ1、2および作業シリンダ3、4が図示していない車両のテールゲートリフタに配置される。昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2はピストン棒1a、2aを介して連結され、その場合、傾斜シリンダとして機能する別の作業シリンダ3、4は同様に連結される。作業シリンダ1、2(同様に作業シリンダ3、4)は上昇加圧室5、6を持ち、かつ配管7を介して接続され、もしくは並列接続される。
上記の配管7から主配管8は加圧流生成器9へ通じ、この加圧流生成器9は歯車ポンプとして形成されて、電気モータ10に機械的に接続される。上記主配管8に加圧流生成器9の方向に閉じている逆止弁11、および方向制御弁12が連結される。さらに、作業シリンダ1、2(同様に作業シリンダ3、4)は下降加圧室13、14を備え、かつ配管15を介して並列接続される。同様にこの接続用の配管15から別の主配管16が主配管8に繋がれることによって加圧流生成器9に通じる。この主配管16に方向制御弁17が配置され、および戻り配管19に接続される圧力逃し弁18が存在する。上記戻り配管19は同様に、上昇加圧室5、6に対する主圧力配管8との接続部を備える圧力逃し弁20に接続される。
戻り配管19は油圧媒体に対する無加圧容器21に到達し、およびさらに解除可能な逆止弁23および前接続された絞り弁24を有する配管部分22を介して主配管8に接続され、その場合、逆止弁23と容器21との間のこの配管部分22は無加圧の戻り配管として機能する。
この解除可能な逆止弁23の制御ピストンを昇降シリンダ1、2の引込運動の際に操作するために、およびそれに伴ってこの逆止弁23を開口するために、解除可能な逆止弁23から制御配管25が主配管16に通じる。
解除可能な逆止弁23のロック円錐の面積に対する制御ピストンの面積の面積比に基づいて僅かな開口圧力が必要である。並列に配置される作業シリンダ3、4の加圧油供給のために加圧流生成器9に通じる主配管26が使用されるが、その場合、この独立した循環の回路技術的な配置は作業シリンダ1、2の上述した循環に対応する。
直流モータとして形成される電気モータ10によって駆動される加圧流生成器9は、開かれた方向制御弁12(切替位置I)において、第1主配管8および接続された配管7を介して、作業シリンダ1、2の2つの上昇加圧室5、6を加圧し、それによって連結されたピストン棒1a、2aが繰出される。それによって車両のテールゲートリフタの閉鎖が行われる。
ピストン棒1a、2aの繰出しによって、油圧媒体は配管15、接続する主配管16、および方向制御弁17(切替位置0)を介して戻り配管19に導かれ、およびそこから無加圧容器21に達する。それとは逆にテールゲートリフタを開けて、および下げるために、作業シリンダ1、2のピストン棒1a、2aが引込れる場合、方向制御弁12、17は電磁的操作によって切替位置0もしくはIにされ、それに伴って加圧媒体は第2の主配管16に接続されている配管15を介して断面的に小さい下降加圧室13、14に供給される。ピストン棒1a、2aの引込みによって油圧媒体は上昇加圧室5、6から配管7を介して主配管8に、かつ閉じられた逆止弁11に基づいて配管部分22に導かれる。主配管16の圧力は制御配管25を介して同時に逆止弁23を解除するように作用する。したがって油圧媒体は配管部分22から開口された逆止弁23および戻り配管19を介して容器21に流れる。この配管部分22の絞り弁24は作業シリンダ1、2のピストン棒1a、2aの引込速度を制限する。それによって制御配管25内に存在する圧力によって逆止弁23は解除され続ける。
逆止弁11と逆止弁23のオイルリークのないロック作用に基づいて、作業シリンダ1、2のピストン棒1a、2aはそれぞれの状態に保持され、もしくはテールゲートリフタの意図されない下降は生じない。」

(ウ)

(第9ページ第29行?末行)

「制御システムはコンパクトなブロックとして形成され、すなわち油圧回路に対して必要な部品を接続するための管の配管を必要としない。
このコンパクトなブロックは、さらに加圧流生成器9、電気モータ10、および油圧媒体に対する容器21を備える流体静力学的な最小連結機械の構成要素である。別の作業シリンダ3、4の油圧回路は、上述の昇降装置の回路に対応する。3/2弁としての方向制御弁17の使用によって、作業シリンダまたは油圧モータの形状における別の油圧消費体は、作業シリンダ1、2の循環に並列に接続することが可能であり、かつ加圧流生成器9によって操作/供給することが可能である。」

イ 認定事項
(ア)図面において、「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」の油圧回路は、「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」の「主配管8」から分岐されてから「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」へ接続されるまでの中間が省略されており、また、「戻り配管」に相当する配管の記載もない。
ここで、上記ア(イ)には、「並列に配置される作業シリンダ3、4の加圧油供給のために加圧流生成器9に通じる主配管26が使用されるが、その場合、この独立した循環の回路技術的な配置は作業シリンダ1、2の上述した循環に対応する。」(下線部)との記載があり、上記ア(ウ)には「別の作業シリンダ3、4の油圧回路は、上述の昇降装置の回路に対応する。」(下線部)との記載がある。
そして、「戻り配管」に相当する配管がなければ、「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」を作動させることができないことは、技術的に明らかであって、単に図面上省略されていると認められる。
したがって、「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」の油圧回路は、主配管8から主配管26が分岐した以降の油圧回路が「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に用いられるものと同様回路により構成されていると認められる。

(イ)甲3の1は、「油圧作動テールゲートリフタ」に係るものであるから、「ゲート板」に相当する事項を有するのは自明のことであり、「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」は、当該「ゲート板」の開閉を行うものであることも自明のことである。

(ロ)図面の記載より、傾斜シリンダとして使用される作業シリンダ3、4は、並列に接続されていることが看取できる。

(ハ)図面の記載より、「主配管26」は昇降シリンダ1、2に用いられる主配管8の一部(主配管26の分岐箇所より図面上で下側)を介して「加圧流生成器9」へ通じていることが看取できる。また、「加圧流生成器9」と「無加圧容器21」の間には配管があることも看取できる。

ウ 記載された発明
上記アの記載事項、上記イの認定事項及び図面の記載からみて、甲3の1には次の発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されているものと認める。
なお、「傾斜シリンダとして使用される作業シリンダ3、4」に用いられる油圧回路において、甲3の1で記載が省略されている各部材の名称、符号については、便宜的に「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に用いられる油圧回路における同種部材の名称を用い、かつ、両者の区別のため符号に「’」を付加して表記し、また、作業シリンダ3、4のピストン棒についてはそれぞれ3a、4aの符号を用いた。さらに、「戻り配管19」に対応するものについて、図上に2つ符号19が記載されているうち、図上横方向に延びる部分に対応するものを「戻り配管19’A」とし、図上クランク状に記載された部分を介して縦方向に延びる部分に対応するものを「戻り配管19’B」とし、その場合「戻り配管19’A」は「戻り配管19’B」に接続されているといえる。
以上のことに基づき、当審が甲3の1の図面に部材名等を付加した下記参考図1において、四角で囲って示した名称を使用することとする。

〔参考図1〕


〔甲3-1発明〕
「ゲート板を開閉する傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4は、上昇加圧室5’、6’を持ち、かつ配管7’を介して並列接続され、
前記配管7’から主配管26は昇降シリンダ1、2に用いられる主配管8の一部を介して加圧流生成器9へ通じ、
前記主配管26に加圧流生成器9の方向に閉じている逆止弁11’および方向制御弁12’が連結され、
さらに前記作業シリンダ3、4は下降加圧室13’、14’を備え、かつ配管15’を介して並列接続され、
同様に配管15’から別の主配管16’が主配管26に繋がれることによって加圧流生成器9に通じ、
加圧流生成器9と油圧媒体に対する無加圧容器21の間に配管が存在し、
前記別の主配管16’に方向制御弁17’が配置され、および戻り配管19’Aに接続される圧力逃がし弁18’が存在し、
前記戻り配管19’Aは戻り配管19’Bに接続され、
前記戻り配管19’Bは、前記上昇加圧室5’、6’に対する主配管26との接続部を備える圧力逃がし弁20’に接続され、
前記戻り配管19’Bは、前記無加圧容器21に到達し、およびさらに解除可能な逆止弁23’および前接続された絞り弁24’を有する配管部分22’を介して主配管26に接続され、前記解除可能な逆止弁23’と前記無加圧容器21との間の前記配管部分22’は戻り配管として機能し、
前記解除可能な逆止弁23’の制御ピストンを作業シリンダ3、4の引込運動の際に操作するために、およびそれに伴って前記解除可能な逆止弁23’を開口するために、前記解除可能な逆止弁23’から制御配管25’が前記主配管16’に通じるものであり、
電気モータ10によって駆動される前記加圧流生成器9は、開かれた方向制御弁12’(切換位置I)において、主配管26および接続された配管7’を介して、前記作業シリンダ3、4の前記上昇加圧室5’、6’を加圧し、それによって連結されたピストン棒3a、4aが繰出され、それによってゲート板が閉じられ、
前記ピストン棒3a、4aの繰出しによって、油圧媒体は配管15’、接続する主配管16’および方向制御弁17’(切換位置0)を介して戻り配管19’Aに導かれ、さらに戻り配管19’Bを介して前記無加圧容器21に達し、
それとは逆にゲート板を開くために、前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aが引込まれる場合、前記方向制御弁12’、17’は電磁的操作によって切換位置0もしくはIにされ、それに伴って油圧媒体は前記主配管16’に接続されている配管15’を介して下降油圧室13’、14’に供給され、
前記ピストン棒3a、4aの引込みによって、油圧媒体は前記上昇加圧室5’、6’から前記配管7’を介して前記主配管26に、かつ閉じられた前記逆止弁11’に基づいて前記配管部分22’に導かれ、前記主配管16’の圧力は前記制御配管25’を介して同時に前記解除可能な逆止弁23’を解除するように作用し、油圧媒体は前記配管部分22’から開口された前記解除可能な逆止弁23’及び戻り配管19’Bを介して前記無加圧容器21に流れ、
前記配管部分22’の前記絞り弁24’は前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aの引込速度を制限し、前記制御配管25’内に存在する圧力によって前記解除可能な逆止弁23’は解除され続ける、油圧作動テールゲートリフタ。」

(2)甲6の1
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6の1(実公昭46-36243号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、行数は欄の間に付された数字による。)
(ア)「保持板7を介して回動自在に係装した後板3を四節リンクにより平行四辺形を形成する一対の支持腕5,6で支持せしめ、該支持腕の1個にシリンダ8の一端を枢着した荷役装置に於て、前記シリンダ8に後板3の下降は後板自体および積荷の自重によりシリンダ8から流出する圧油を可変絞り弁19により流量調整して下降速度を制御し、積荷の上昇にはポンプ10を作動させて油槽20の油を吸入、加圧して、シリンダ8に送出し、更にシリンダ8のピストン18を境とする二室イ,ロ間に逆止弁22を付けてポンプ10の作動なしに手動により後板3を上昇せしめるように回路を構成せしめて成る荷役装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ)「本考案は貨物自動車に架装せられ積載物の積卸しをおこなう荷役装置に関するものである。」(第1欄第15?16行)

(ウ)「後板の下降は後板自体又は積荷を附加した重量による自重落下とし、その下降速度はシリンダから排出せられた圧油を可変絞り弁で調整をおこない又、後板の上昇は無積載又は軽量物積載時には手動で押し上げることができ且つ重量物積載時にはポンプにより圧油を発生せしめ、その圧油でシリンダの作動をおこなう荷役装置を提供するものである。」(第1欄第30?37行)

(エ)「前記シリンダ8およびポンプ10は第2図に示される如く、シリンダ8のピストン18を境とする二室イ,ロの間には逆止弁付22の可変絞り弁19が設けられて配管され、そして室イはポンプ10のポンプ室Pに、また室ロは油槽20にそれぞれ配管連通せられている。ポンプ室Pは油槽20に配管せられ且つ吐出回路中に安全弁21が設けられている。」(第2欄第16?23行)

(オ)「次に作用を述べると可変絞り弁19を閉じた状態で後板3を第1図に示す如く位置Iより位置IIに手動で回動せしめ、そして後板3に積荷の重量が附加せられると支持腕5を介してピストン18は室イ内の油を加圧せしめる。可変絞り弁19を開くことにより室イの圧油は室ロに流出し、ビストン18の移動に従つて後板3は位置IIIまで下降する。従つて可変絞り弁19の開度を調整して後板3の下降速度を任意に制御でき、又、閉じることで途中停止も可能である。」(第2欄第24?33行)

(カ)「次に可変絞り弁19を閉じて、後板3に無積載又は軽量物積載の場合、手動により該後板3を押し上げると室ロ内の油は膨張状態である室イに逆止弁22を通り流出せられる。又重量物積載の場合にはポンプ10を操作すると油槽20内の油はポンプ室Pに吸入せられ、そしてシリンダ8の室イに送出し、ピストン18はその圧油を受けて作動し支持腕5を介して位置IIの状態まで後板3を上昇せしめる。」(第2欄第34行?第3欄第3行)

(キ)「以上の荷役作業が完了すれば、後板3は原位置Iまで手動により回動せしめ車体2の側枠に固定させる。」(第3欄第5?7行)

イ 認定事項
上記ア(オ)、(カ)、(キ)及び第1図に示される「位置I」は「後板3」が閉位置であり、同様に「位置II」は開位置であり、「位置III」は下降位置であることは明らかである。

ウ 記載された技術的事項
上記アの記載事項、上記イの認定事項及び第1?2図の記載からみて、甲6の1には次の技術的事項(以下「甲6-1技術」という。)が記載されているものと認める。
「保持板7を介して回動自在に係装した後板3を四節リンクにより平行四辺形を形成する一対の支持腕5,6で支持せしめ、該支持腕の1個にシリンダ8の一端を枢着した貨物自動車に架装せられ積載物の積卸しをおこなう荷役装置に於て、
可変絞り弁19を閉じた状態で前記後板3が閉位置Iと開位置IIとの間を手動により回動せしめ、
前記シリンダ8に前記後板3の下降は後板自体および積荷の自重により前記シリンダ8から流出する圧油を前記可変絞り弁19により流量調整して下降速度を制御し、前記後板3に重量物積載の場合、ポンプ10を作動させて油槽20の油を吸入、加圧して、前記シリンダ8に送出して、下降位置IIIから開位置IIへ後板3を上昇させ、
更にシリンダ8のピストン18を境とする二室イ,ロ間に逆止弁22を付けて、前記後板3に無積載又は軽量物積載の場合、後板3を手動で押し上げることができ、前記後板3を押し上げると室ロ内の油は膨張状態である室イに逆止弁22を通り流出せられ、前記ポンプ10の作動なしに手動により下降位置IIIから開位置IIへ前記後板3を上昇せしめるように回路を構成せしめて成る荷役装置。」

(3)甲6の2
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6の2(特公昭62-15479号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、行数は欄の間に付された数字による。)
(ア)「本発明は、油圧ポンプの作動により、リフトシリンダに嵌挿したピストンロツドを上昇させ、重量物をリフトアツプ運搬を行うハンドリフトにおける早上げ装置に関するものである。」(第2欄第2?5行)

(イ)「本発明は、リフトシリンダにシリンダ内部が負圧となつたとき、オイルタンクよりオイルを吸入するチエツクバルブを設け、フオークに積載物がない場合、或は軽荷重状態でフオークの持上げに大きな力を必要としない場合に、ピストンロツドを直接手力により持上げ、所望の高さまでフオークを早上げする機構を設けることによつて前記従来装置の欠点を除去し、運搬作業が合理的に行えるハンドリフトの早上げ装置を提供することを目的としたものである。」(第2欄第25行?第3欄第7行)

(ウ)「フオーク12は最下降時フロントベース4を覆う状態となるように鋼板を 状に析り曲げた構造でリフトポイントをとる場合低い差し込みを可能にしている。
14はジヤツキユニツトでリフトユニツト15、油圧ポンプユニツト16及びベースユニツト17より構成されている。リフトユニツト15はベースユニツト17に立設されたリフトシリンダ18及びこれに嵌挿されたピストンロツド19とで構成され、油圧ポンプユニツト16はベースユニツト17に立設されたポンプシリンダ20、これに嵌挿されたプランジヤ21及びリアクシヨンスプリング22より構成され、ベースユニツト17はリフトユニツト15と油圧ポンプユニツト16を結合する油圧回路を有している。」(第3欄第24?38行)

(エ)「36はチエツクバルブで、外力によりピストンロツド19が引き上げられてリフトシリンダ18内が負圧になつた際に、バルブ内の鋼球37が負圧を受けチエツクバルブスプリング38を圧縮してオイル通路を開きオイルタンク23のオイルをリフトシリンダ18内に吸入し、ピストンロツド19の引き上げが行われ易いようにしている。またリフトシリンダ18にオイルを圧送しリフトアツプするときは、鋼球37がスプリング38の張力及び油圧を受けて圧着し、オイル通路を閉じるようなつている。」(第4欄第20?30行)

(オ)「早上げ用ハンドル49を基部50を前方に押し付け、スプリング51を圧縮してロールピン48に切り欠き部を係合させた後、早上げ用ハンドル49を右方向に回動して、ドラム33に巻架したワイヤロープ31を順次巻き送りピストンロツド19を引き上げる。」(第6欄第1?6行)

イ 記載された技術的事項
上記アの記載事項及び第1?5図の記載からみて、甲6の2には次の技術的事項(以下「甲6-2技術」という。)が記載されているものと認める。(なお、拗促音については小文字表記とした。)
「ハンドリフトにおける早上げ装置であって、
ジャッキユニット14は油圧ポンプユニット16及びベースユニット17により構成され、
リフトユニット15は前記ベースユニット17に立設されたリフトシリンダ18及びこれに嵌挿されたピストンロッド19とで構成され、
前記ベースユニット17は前記リフトユニット15と前記油圧ポンプユニット16を結合する油圧回路を有し、
前記油圧回路は、チェックバルブ36を有し、
前記チェックバルブ36は、外力により前記ピストンロッド19が引き上げられて前記リフトシリンダ18内が負圧になった際に、バルブ内の鋼球37が負圧を受けチェックバルブスプリング38を圧縮してオイル通路を開きオイルタンク23のオイルを前記リフトシリンダ18内に吸入し、ピストンロッド19の引き上げが行われ易いようにして、フォーク12に積載物がない場合、或は軽荷重状態でフォーク12の持ち上げに大きな力を必要としない場合に、早上げ用ハンドル49を回動して、ドラム33に巻架したワイヤロープ31を順次巻き送り前記ピストンロッド19を引き上げて早上げし、前記リフトシリンダ18にオイルを圧送しリフトアップするときは、前記鋼球37が前記チェックバルブスプリング38の張力及び油圧を受けて圧着し、オイル通路を閉じるハンドリフトにおける早上げ装置。」

(4)甲6の3
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6の3(実公昭63-413号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、行数は欄の間に付された数字による。)
(ア)「手動又は電動ポンプによりオイルタンクから油圧シリンダに油を圧送してシユートを上昇する圧送回路と、降下用バルブにより前記油圧シリンダの油をオイルタンクに還流する還流回路とを有する油圧式シユート高さ調整装置において、オイルタンクから油圧シリンダへの流出のみを許容するチエツクバルブ回路を前記圧送回路と還流回路とに並列したことを特徴とするコンクリートミキサ車の油圧式シユート高さ調整装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ)「図面において、符号11は油圧シリンダを示し、該油圧シリンダ11方向への流出のみを許容するチエツクバルブ17を有する圧送回路17aで手動ポンプ12に連結してある。
14はエア加圧式のオイルタンクで、内部の一部に空気を充填し、その圧縮弾力を利用するようにしてあり、シユート20を下降させるための降下用バルブ18を有する還流回路18aと油圧シリンダ11方向への流出のみを許容するチエツクバルブ15を有するチエツクバルブ回路15aとを介して油圧シリンダ11に連結してあり、更に油圧シリンダ11方向への流出のみを許容するチエツクバルブ17を介して油圧ポンプ12と油圧シリンダ11とを連結する圧送回路17aを設け、該回路17aはチエツクバルブ16を介してオイルタンク14に連結してある。」(第3欄第24?39行)

(ウ)「以上のような構成からなる本考案装置においては、先づシユート20内に生コンがない場合には手早くシユート20を人力で持ち上げることができるもので、シユート先端20aを手で持ち、上方に押し上げると、チエツクバルブ15が開き、チエツクバルブ回路15aを経てオイルタンク14の油が油圧シリンダ11に流入するもので、オイルタンク14は前述の如く油の他に、空気を封入してあるため、その予圧により、油圧シリンダ11への圧力を及ぼし、シユート20への持ち上げをそれだけ軽くすることとなる。
次にシユート20に生コンが附着してシユート20の重量が増加し、手動による押上が不可能のときは、油圧ポンプ12の操作レバー13を作動すれば圧送回路17aを経て油圧シリンダ11に油が圧入され、内側シリンダ11aを伸長し、シユート先端20aを仰動するもので、この場合チエツクバルブ16、チエツクバルブ回路15a、還流回路18aは閉成状態にあり、オイルタンク14への流動は行われない。」(第4欄第7?26行)

(エ)「第7図は本考案による他の実施例を示すコンクリートミキサ車の要部背面図で、第8図はその回路図である。
この場合は、前記実施例と異り予圧式のオイルタンク14の替りに通常のオイルタンク14’を使用し、油圧ポンプ12’は電動式でも手動式でもよく、回路を前例より簡略化したものである。そこでシユート先端20aを手動にて持ち上げるときは、オイルタンク14’の油がチエツクバルブ回路15aを経てチエツクバルブ15を開き、油圧シリンダ11に吸入される結果、油圧シリンダ11内の負圧を防止し、その伸長が容易となり、手動によるシユート押上が楽に行われ得る。
またシユート20に重負荷が行われている場合には、油圧ポンプ12′を操作すればオイルタンク14’の油は圧送回路17aを経て油圧シリンダ11に圧入され、シユート20を押上することができる。」(第4欄第35行?第5欄第9行)

(オ)「以上述べた如く本考案によれば、油圧ポンプ12’を含む圧送回路17aと、降下用バルブ18を含む還流回路18aとに並列してチエツクバルブ15を含むチエツクバルブ回路15aを設けたことにより、シユート20の軽負荷時における持ち上げを楽に行い得る一方、重負荷時には油圧ポンプ12,12’を使用することが出来、冒頭において述べた従来のこの種装置を改良して一段と操作し易いものとし、現実の作業を一層円滑ならしめたもので、実用上の利益は多大である。」(第5欄第16行?第7欄第4行)

イ 記載された技術的事項
上記アの記載事項及び第7、8図の記載からみて、甲6の3には次の技術的事項(以下「甲6-3技術」という。)が記載されているものと認める。(なお、拗促音については小文字表記とした。)
「手動又は電動の油圧ポンプ12’によりオイルタンク14’から油圧シリンダ11に油を圧送してシユート20を上昇する圧送回路17aと、降下用バルブ18により前記油圧シリンダ11の油をオイルタンク14’に還流する還流回路18aとを有する油圧式シユート高さ調整装置において、オイルタンク14’から油圧シリンダへ11の流出のみを許容するチェックバルブ15を含むチェックバルブ回路15aを前記圧送回路17aと還流回路18aとに並列し、軽負荷時に手動にてシユート先端20aを持ち上げるときは、オイルタンク14’の油がチェックバルブ回路15aを経てチェックバルブ15を開き、油圧シリンダ11に吸入される結果、油圧シリンダ11内の負圧を防止し、その伸長が容易となり、手動によるシユート押上が楽に行われ得、重負荷時には油圧ポンプ12’を使用することが出来るコンクリートミキサ車の油圧式シユート高さ調整装置。」

(5)甲6の4
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6の4(特公平5-61131号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、行数は欄の間に付された数字による。)
(ア)「本発明は貨物車両の荷箱と地上間で荷物の積卸しを行なうことできる荷受台昇降装置に関するものである。」(第1欄第21?23行)

(イ)「14は昇降用油圧ラインl1より分岐し油溜Tに接続した吸込ラインで、途中に油溜Tから昇降用油圧ラインl1への作動油の流れを許容する逆止弁34が設けられている。」(第6欄第31?34行)

(ウ)「次に地上に接地した位置(ホ)にある荷受台3を荷箱2の格納位置(ハ)に上昇させる場合、開閉スイツチ35の閉スイツチを押すとソレノイドSr,Saが励磁され、電磁切換弁V0は第2位置となり、逆止弁付電磁切換弁V1も第2位置となり、リレー39が接となつてモータMによりポンンプP0が作動して荷受台格納用シリンダC2が伸長して第3図に示されているように、荷受台3は(ホ)の位置より支持軸17を中心に時計方向に回動し始めるとともに荷受台昇降用シリンダC1は伸長方向に負荷を受け、内部が負圧になることにより油溜T内の作動油が吸込ラインl4を通って荷受台昇降用シリンダC1内に供給され、シリンダブラケツト24を介して回転軸7が時計方向に回転して荷受台3は上昇し、(イ)位置、(ヘ”)位置、(ヘ’)位置を通過して荷箱2の格納位置(ハ)となる。」(第9欄第6?22行 なお、「ポンンプP0」は「ポンプP0」の誤記であることが明らかである。)

イ 記載された技術的事項
上記アの記載事項及び第3、7図の記載からみて、甲6の4には次の技術的事項(以下「甲6-4技術」という。)が記載されているものと認める。(なお、拗促音については小文字表記とした。)
「貨物車両の荷箱と地上間で荷物の積卸しを行なうことできる荷受台昇降装置において、
地上に接地した位置(ホ)にある荷受台3を荷箱2の格納位置(ハ)に上昇させる場合、開閉スイツチ35の閉スイッチを押すと、モータMによりポンプP0が作動して荷受台格納用シリンダC2が伸長し、荷受台3は地上に設置した位置(ホ)より支持軸17を中心に時計方向に回動し始めるとともに荷受台昇降用シリンダC1は伸長方向に負荷を受け、内部が負圧になることにより油溜T内の作動油が、途中に油溜Tから昇降用油圧ラインl1への作動油の流れを許容する逆止弁34が設けられた吸込ラインl4を通って荷受台昇降用シリンダC1内に供給され、シリンダブラケット24を介して回転軸7が時計方向に回転して荷受台3は上昇し、荷箱2の格納位置(ハ)となる荷受台昇降装置。」

(6)甲6の5
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6の5(特開平11-166351号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0010】都合の悪い作動状態でピストン・シリンダーユニット内に負圧を発生させないために、ピストン・シリンダーユニットの作業室が逆止弁を介してリザーバと連通している。当該逆止弁はリザーバから作業室への媒体の流れを許す。」

(イ)「【0013】以下に、本発明を図面をもとにして詳細に説明する。図1は、テールゲート(リアフラップ、Heckklappe)3を有する動力車1の部分図を示す。当該テールゲートは、アクティブなコントロールシステム(能動的な調整システム)5によって随意に開かれ得る。当該アクティブなコントロールシステムは、結合エレメントを介してポンプユニット7と接続されているハイドロシリンダー6の構成におけるピストン・シリンダーユニットをもっている。さらに、貯蔵器(Speicher)9と切替弁(オン・オフ弁)11とが組み込まれる(図2参照)。操作装置13を用いて、当該コントロールシステムが制御され得る。当該操作装置は、ハイドロシリンダーの運動のための切替位置『Auf(アップ)』および『Ab(ダウン)』とロック(ブロック)するための『Stop(ストップ)』とをもっている。当該アクティブなコントロールシステムには、ニューマチックな弾性体(気体作用弾性体、空気ばね)15が作用に関して並列に接続されている。ニューマチックな弾性体は、例えばドイツ特許第2950888号明細書により知られている。」

(ウ)「【0015】操作装置13の切替位置「Auf」では、ポンプユニットが給送せず、停止している。同時に、オン・オフ弁11が通過させる状態に切り替えられている。したがって、圧力を与えられている貯蔵器9がピストン19を作業室6aを小さくする方向へ移動させることができる。その際、作業室6a内にある媒体(通例はオイル状の液体)は、連通管23、クロス連通部25、およびオン・オフ弁11を経てリザーバ27へのがれ出ることができる。その際、ピストン棒が車両フラップ(Fahrzeugklappe、すなわち、テールゲート等のようなドア)にうち当たっていることが前提とされる。
【0016】当該コントロールシステムの切替位置「Stop」では、ポンプユニットによって媒体が給送されず(送られず)、且つオン・オフ弁11が遮断状態(閉鎖状態)にある。したがって、両方の作業室6a;6bはそれ自体で閉じている。そのとき、前記フラップは目下の位置において固く保持される。
【0017】前記車両フラップの閉じる運動の際には、ないし操作装置13の切替位置『Ab』では、媒体がハイドロシリンダー6の作業室6a内へ運ばれる。オン・オフ弁11は遮断位置にある。媒体についての全体の搬送量(供給量)がピストンを作業室6bの方へ動かす。作業室6bから排除された媒体は、貯蔵器9によって収容される。
【0018】アクティブなコントロールシステムでは、エネルギー供給、この場合にはポンプ駆動が止まることが起こり得る。この作動状態でもフラップの開放が保証されているように、手動力がフラップに作用し且つ圧力制限弁17におけるコントロール圧力がこの弁を開くまで必要不可欠な圧力増大をもたらすことによって、圧力制限弁17が作業室6aの方へのピストン運動を可能にする。流れ供給が止まった場合にも同じことが当てはまる。そのとき、オン・オフ弁は、弾性負荷(ばね負荷)に基づいて遮断位置を占める。
【0019】ハイドロシリンダーを機械的に閉じてもよい。人がピストン19を作業室6bの方へ押す。その際、そこにある媒体は、貯蔵器9内へ押しのけられる。作業室6a内に負圧が生じないように、媒体がリザーバ27から逆止弁29を通ってクロス連通部を経て作業室6a内へ流れる。」

イ 記載された技術的事項
上記アの記載事項及び【図1】、【図2】の記載からみて、甲6の5には次の技術的事項(以下「甲6-5技術」という。)が記載されているものと認める。
「動力車1のテールゲート3を随意に開き得るアクティブなコントロールシステム5であって、
前記コントロールシステム5は、結合エレメントを介してポンプユニット7と接続されているハイドロシリンダー6の構成におけるピストン・シリンダーユニットを有し、
さらに、貯蔵器9とオン・オフ弁11とが組み込まれ、
操作装置13を用いて、当該コントロールシステム5が制御され得るものであり、
操作装置13の切替位置「Auf」では、ポンプユニットが給送せず、停止しており、同時に、オン・オフ弁11が通過させる状態に切り替えられて、圧力を与えられている貯蔵器9がピストン19を作業室6aを小さくする方向へ移動させることができ、
操作装置13の切替位置「Stop」では、ポンプユニットによって媒体が給送されず、且つオン・オフ弁11が遮断状態にあり、両方の作業室6a、6bはそれ自体で閉じており、前記テールゲート3は目下の位置において固く保持され、
前記テールゲート3の閉じる運動の際には、ないし操作装置13の切替位置「Ab」では、媒体がハイドロシリンダー6の作業室6a内へ運ばれ、オン・オフ弁11は遮断位置にあり、媒体についての全体の搬送量がピストンを作業室6bの方へ動かし、作業室6bから排除された媒体は、貯蔵器9によって収容されるものであり、
ハイドロシリンダー6の作業室6aが逆止弁29と連通しており、人がハイドロシリンダー6のピストン19を作業室6bの方へ押し、その際、そこにある媒体は、貯蔵器9へ押しのけられ、作業室6a内に負圧が生じないように、媒体がリザーバ27から逆止弁29を通ってクロス連通部を経て作業室6a内へ流れるコントロールシステム5。」

2 無効理由1、無効理由4-1について
(1)対比
本件特許発明1と甲3-1発明とを対比する。
ア 後者の「ゲート板」は前者の「ゲート板」に相当し、以下同様に、「電気モータ10」は「モーター」に、「油圧媒体に対する無加圧容器21」は「油タンク」に、「油圧媒体」は「油」及び「オイル」に、「油圧作動テールゲートリフタ」は「テールゲートリフター」にそれぞれ相当する。

イ 甲3-1発明の「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」は、「上昇加圧室5’、6’」と「下降加圧室13’、15’」を有するいわゆる複動型シリンダであって、それぞれの加圧室に対応する吸排系統の管路を有するものであり、また、「方向制御弁12’」及び「方向制御弁17’」の2つの弁により制御されている。
ここで、本件特許発明1の「開閉用油圧シリンダ」の具体的な種類や吸排系統数について検討すると、本件特許の請求項1にも発明の詳細な説明にも、種類や吸排系統数を限定する旨の記載はなく、また、「開閉用ソレノイド弁」及び開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ「管路」についても、本件特許の請求項1にも発明の詳細な説明にも吸排系統数を特定する記載はない。
そして、本件特許発明1の技術的特徴は、発明の詳細な説明全体の記載からみて、その請求項1に特定されるとおり「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」の「チェック弁」により「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には「開」状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止すること」にあるものであるから、本件特許発明1において、「開閉用油圧シリンダ」の具体的な種類や数、開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ「管路」の吸排系統の数及び「開閉用ソレノイド弁」の数を特定するものではなく、それらは、それぞれの機能を有するという前提のもと任意に選択可能なものと解するのが相当である。

ウ 上記イを踏まえると、後者の「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」は、前者の「開閉用油圧シリンダ」に相当するといえる。
また、後者の「方向制御弁12’」及び「方向制御弁17’」は、図面の記載からソレノイド弁であることが明らかであるから、後者の「方向制御弁12’」及び「方向制御弁17’」は、前者の「開閉用ソレノイド弁」に相当するといえる。
そして、後者の「方向制御弁12’」は、導通位置と油圧媒体の流れを阻止する位置とに切換え可能であることは明らかであり、また、「方向制御弁17’」は3ポートのものであるが、加圧流体生成器9から主配管16’側への油圧媒体を供給可能とする位置(切換位置I;ゲート板を開くとき)と、加圧流体生成器9から主配管16’側への油圧媒体の流れを阻止する位置(切換位置0;ゲート板を閉じるとき)に切り換えられるという意味において、導通位置と油圧媒体の流れを阻止する位置とに切換え可能であるといえる。

エ 後者の「解除可能な逆止弁23’」は、「ゲート板を開くために、前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aが引込まれる場合」に、「前記ピストン棒3a、4aの引込みによって、油圧媒体は前記上昇加圧室5’、6’から前記配管7’を介して前記主配管26に、かつ閉じられた前記逆止弁11’に基づいて前記配管部分22’に導かれ、前記主配管16’の圧力は前記制御配管25’を介して同時に前記解除可能な逆止弁23’を解除するように作用し、油圧媒体は前記配管部分22’から開口された前記解除可能な逆止弁23’及び戻り配管19’Bを介して前記無加圧容器21に流れ、前記配管部分22’の前記絞り弁24’は前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aの引込速度を制限し、前記制御配管25’内に存在する圧力によって前記解除可能な逆止弁23’は解除され続ける」ものであるが、逆止弁として記載されていることから、前者の「チェック弁」とは、「チェック弁手段」の限度で一致するといえる。

オ 前者の「油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」及び「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」について検討するに、本件特許の請求項1にも発明の詳細な説明にも両者の「管路」が完全に別個のものであることを特定する記載はないところ、【図3】?【図5】に係る各実施例においては、「管路d」より開閉用シリンダ15側の管路が共用されているし、原理回路図である【図1】、【図2】においても同様の構成となっている(なお、【図5】において、開閉用シリンダに相当する部材に符号13が付されているが符号15の誤記であることは明らかである。)。また、【図3】に係る実施例においては、「管路c」は「管路e」と合流していることから、開閉用シリンダ15から戻り流量制御弁7を介してオイルタンク1に戻る油は、上記合流の箇所からオイルタンク1側の「管路e」を通って戻ることは明らかであり、【図4】に係る実施例においても同様の構成となっている。
そうすると、前者の「油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」と「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」は、それぞれが完全に独立した別個の管路であることを特定するものではないことが明らかである。

カ 上記オを踏まえると、後者の「配管7’」、「配管15’」、「別の主配管16’」、「主配管26」及び「主配管8の一部」、加圧流生成器9と無加圧容器21の間の「配管」により構成されるものは、「傾斜シリンダとして使用される作業シリンダ3、4」と「無加圧容器21」との間に「方向制御弁12’」及び「方向制御弁17’」を介して結んでいるものといえるので、前者の「開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」に相当するといえる。

キ 上記エ?カを踏まえると、後者の「配管7’」、「配管部分22’」、「戻り配管19’B」により構成されるものは、「傾斜シリンダとして使用される作業シリンダ3、4」と「無加圧容器21」の間に「解除可能な逆止弁23’」を介し結んでいるものといえるので、前者の「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」とは、「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路」の限度で一致するといえる。

ク 上記ア?キを踏まえると、後者の
「ゲート板を開閉する傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4は、上昇加圧室5’、6’を持ち、かつ配管7’を介して並列接続され、
前記配管7’から主配管26は昇降シリンダ1、2に用いられる主配管8の一部を介して加圧流生成器9へ通じ、
前記主配管26に加圧流生成器9の方向に閉じている逆止弁11’および方向制御弁12’が連結され、
さらに前記作業シリンダ3、4は下降加圧室13’、14’を備え、かつ配管15’を介して並列接続され、
同様に配管15’から別の主配管16’が主配管26に繋がれることによって加圧流生成器9に通じ、
加圧流生成器9と油圧媒体に対する無加圧容器21の間に配管が存在し、
前記別の主配管16’に方向制御弁17’が配置され、および戻り配管19’Aに接続される圧力逃がし弁18’が存在し、
前記戻り配管19’Aは戻り配管19’Bに接続され、
前記戻り配管19’Bは、前記上昇加圧室5’、6’に対する主配管26との接続部を備える圧力逃がし弁20’に接続され、
前記戻り配管19’Bは、前記無加圧容器21に到達し、およびさらに解除可能な逆止弁23’および前接続された絞り弁24’を有する配管部分22’を介して主配管26に接続され、前記解除可能な逆止弁23’と前記無加圧容器21との間の前記配管部分22’は戻り配管として機能し」
と、前者の
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり」
とは、
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり」
の限度で一致するといえる。

ケ 後者の
「前記解除可能な逆止弁23’の制御ピストンを作業シリンダ3、4の引込運動の際に操作するために、およびそれに伴って前記解除可能な逆止弁23’を開口するために、前記解除可能な逆止弁23’から制御配管25’が前記主配管16’に通じるものであり、
電気モータ10によって駆動される前記加圧流生成器9は、開かれた方向制御弁12’(切換位置I)において、主配管26および接続された配管7’を介して、前記作業シリンダ3、4の前記上昇加圧室5’、6’を加圧し、それによって連結されたピストン棒3a、4aが繰出され、それによってゲート板が閉じられ、
前記ピストン棒3a、4aの繰出しによって、油圧媒体は配管15’、接続する主配管16’および方向制御弁17’(切換位置0)を介して戻り配管19’Aに導かれ、さらに戻り配管19’Bを介して無加圧容器21に達し」という事項について、
「解除可能な逆止弁23’」を解除するための「制御配管25’」は「主配管16’」に通じているため、ゲート板が閉じられる際には、「制御配管25’」に「下降加圧室13’、14’」からの油圧媒体が導かれる可能性があるが、その油圧媒体の圧力により「解除可能な逆止弁23’」が解除しては、加圧流生成器9により加圧された油圧媒体が配管部分22’を介して戻り配管19’に流れてしまうことになり、ピストン棒3a、4aの繰出しに支障を来すことは構成上明らかといえるから、技術的にみて、この程度の圧力では「解除可能な逆止弁23’」は解除しないように最低パイロット圧力特性等が設定されていると解するのが相当といえる。
そうすると、上記事項と、前者の「前記チェック弁はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され」とは、「前記チェック弁手段はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持され」の限度で一致するといえる。

コ 以上のことから、本件特許発明1と甲3-1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点1〕
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、前記チェック弁手段はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持されるテールゲートリフター。」

〔相違点1〕
「チェック弁手段」に関し、
本件特許発明1が、「チェック弁」であり、「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には『開』状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止する」ものであるのに対し、
甲3-1発明では、「解除可能な逆止弁23’」であり、
「ゲート板を開くために、前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aが引込まれる場合」に、「前記ピストン棒3a、4aの引込みによって、油圧媒体は前記上昇加圧室5’、6’から前記配管7’を介して前記主配管26に、かつ閉じられた前記逆止弁11’に基づいて前記配管部分22’に導かれ、前記主配管16’の圧力は前記制御配管25’を介して」「解除するように作用し」、開口されて「油圧媒体は前記配管部分22’から」「戻り配管19’Bを介して前記無加圧容器21に流れ」、「前記配管部分22’の前記絞り弁24’は前記作業シリンダ3、4のピストン棒3a、4aの引込速度を制限し、前記制御配管25’内に存在する圧力によって」「解除され続ける」ものであって、
電気モーター10が回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には、逆止弁自体としての開口をして無加圧容器21内の油圧媒体を傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4に供給し、前記作業シリンダ3、4内の真空化を防止するという事項をも有するのか明らかでない点。

(2)判断
相違点1について判断する。
ア まず、甲3の1の「昇降シリンダ」としての「作業シリンダ1、2」に関する記載に立ち返って検討すると、「解除可能な逆止弁23」は、「テールゲートリフタを開けて、および下げるために、作業シリンダ1、2のピストン棒1a、2aが引込れる場合、方向制御弁12、17は電磁的操作によって切替位置0もしくはIにされ、それに伴って加圧媒体は第2の主配管16に接続されている配管15を介して断面的に小さい下降加圧室13、14に供給される。ピストン棒1a、2aの引込みによって油圧媒体は上昇加圧室5、6から配管7を介して主配管8に、かつ閉じられた逆止弁11に基づいて配管部分22に導かれる。主配管16の圧力は制御配管25を介して同時に逆止弁23を解除するように作用する。したがって油圧媒体は配管部分22から開口された逆止弁23および戻り配管19を介して容器21に流れる。この配管部分22の絞り弁24は作業シリンダ1、2のピストン棒1a、2aの引込速度を制限する。それによって制御配管25内に存在する圧力によって逆止弁23は解除され続ける。」(上記1(1)ア(イ))というものであり、言い換えれば、作業シリンダ1、2の引込運動の際に、制御配管25からの油圧媒体の圧力(いわゆるパイロット圧)により解除して、戻り配管19を通じて無加圧容器21へ上昇加圧室5、6内の油圧媒体を導くためのものであり、当該「制御配管25」からの油圧により解除されて開口される場合を除いて、弁の開口に関する説明がなく、どのような時に「逆止弁」自体として開口され得るのか、クラッキング圧(弁が開き始めて、ある一定の流量が流れる圧力)も明らかでない。
そして、甲3の1のゲート板が手動により上昇が想定されているかどうかについて、請求人の主張を検討すると、請求人陳述要領書(1)の第6ページ(2)の○1(丸囲みの1をこのように表記する。以下同様。)のイにおいて、「従来技術に関し,『…作業シリンダの繰出側は発生する負荷変化にバランスするように作用しなければならないので,…作業シリンダの両運動方向の遮断は,上記のテールゲートリフタに対しては必要がないか,もしくは欠点になる。』(甲第3号証の1の抄訳2頁12?15行目)と記載されている。ここは,昇降シリンダの繰り出し(上昇)の際に,発生する負荷変化にバランスするように作用しなければならないという指摘であり,負荷は真空状態が生じた場合にも発生するから,機械的に上昇させる場合と『人力により強制的に上昇させ』真空化が生じた場合をも想定していると言える(この2つしか想定できない)。もし,機械的に油圧回路が制御できるだけであれば,わざわざ『発生する負荷変化にバランスするように作用しなければならない』との記述をする必要もない。」と主張する。
上記「従来技術」の公報は、被請求人が提出した乙1であるが、そのFig1、3からも明らかなように、甲3の1のようなテールゲートリフタの技術分野のものではなく、少なくともゲート板の手動による上昇を直接想定させ得るものではない。そして、乙1のFig.1における「hydraulischen Antriebselements3」(油圧駆動要素3)の外観の記載から明らかなように、「hydraulischen Antriebselements3」(油圧駆動要素3)の「Hydraulikzylimders」(油圧シリンダ)が繰出側に作動するときは、「Stuzelementes4」(支持部材4,なお、ウムラウトは省略した。以下同様。)が地面の方向に下降するときであり、本来油圧で作動するものにおいて、そのような作動を人力により行う特段の理由は見当たらない(例えば、オイルポンプ等が故障して油圧作動ができないのであれば、重量物である「Tragrahmen6」(支持フレーム6)をきちんと地面に対し支持可能な程度に保持できるとは想定しにくい。)。さらに、乙1において、人力により繰出側に作動させることを想定してみても、Fig.4の油圧回路の構成をみると「Ruckschlagventuil12」(逆止弁12,図面の記載から「Hydraulikpumpe9」(オイルポンプ9)からのパイロット圧により解除可能な逆止弁であることは明らかである。)に「Hydraulikpumpe9」(オイルポンプ9)からの油圧が供給されていない状態では、「hydraulischen Antriebselements3」(油圧駆動要素3)の「Hydraulikzylimders」(油圧シリンダ)の繰出側の油圧室に通じる管路は、「Ruckschlagventuil12」(逆止弁12)により閉鎖状態にあることは明らかであるので、被請求人が、被請求人陳述要領書(1)の第12ページ第20?25行で主張するように、「Ruckschlagventuil12」(逆止弁12)は開口されず、「hydraulischen Antriebselements3」(油圧駆動要素3)は作動し得ないと解される。
また、請求人のバランスに関する主張についても、「作業シリンダの繰出側は発生する負荷変化にバランスするように作用しなければならない」なる記載は、被請求人が、被請求人陳述要領書(1)の第12ページ第15?19行で主張するように、「解除可能な逆止弁(Ruckschlagventil12)」に対し、引込側の加圧室に供給する作動油(反対側の圧力負荷)を供給して開放し、繰出側の加圧室から作動油が排出されること(=バランスする)を指している」と解釈するのが自然である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

イ また、請求人は、請求人陳述要領書(1)の第6?7ページ「(2)『逆止弁23』の機能について」の○1のウにおいて、「明細書に,『…逆止弁23のオイルリークのないロック作用に基づいて,作業シリンダ1,2のピストン棒1a,2aはそれぞれの状態に保持され,もしくはテールゲートリフタの意図されない下降は生じない。』(5頁1?3行目)との記載がある。逆止弁23によるロック作用は,負圧が生じても油を吸引してテールゲートリフタが『意図されない下降』,すなわち急な作動をしないようにすることと理解される。そして,テールゲートリフタ(ゲート板)が下降するとは,前記4頁『F.』のとおり,テールゲートリフタを開けること及び下げることをともに含むものである。モータが回転していない時には,ゲート板は保持された状態であり,ゲート板を手動で上昇させようとすると,ピストン棒1a等が引き上げられるため,作業シリンダ内に真空状態が生じる。ただ,作業シリンダと油のある無加圧容器との管路に(上方へのみ流れる)逆止弁23が存在し,真空状態が生じると,特別な操作を要しないで,その状態を防止するために逆止弁を通過して油が作業シリンダ内に流れることとなる事態は当業者であれば,技術常識として容易に理解できる。」と主張する。
しかしながら、一般的な油圧回路において、逆止弁(チェックバルブ)のクラッキング圧は、甲9の第115ページ第15?17行に「チェックバルブのクラッキング圧力としては0.02〔MPa〕(≒0.2〔kgf/cm^(2)〕から1〔MPa〕(≒10〔kgf/cm^(2)〕以下で作られています。」と記載されるように、どのような時に開口させるかといった目的や配置される油圧回路の構成等の条件により、幅広い範囲のものから選択されるものであるところ、上記(イ)で述べたように、甲3の1の記載からでは、ゲート板を手動で上昇させることが想定されているとまではいえないことから、甲3の1において、「作業シリンダ1、2」に係る「解除可能な逆止弁23」が、無加圧容器21の油圧媒体について「逆止弁を通過して油が作業シリンダ内に流れることとなる事態」が生じるクラッキング圧に設定されているとまでいうことはできない。そして、仮に、甲3の1において、ゲート板を手動で強制的に上昇させて、かつ、そのときに下降加圧室13、14内の油圧媒体が排除され得る状態であったとしても、設定されたクラッキング圧によっては、「解除可能な逆止弁23」が開口しない場合もあり得ると解され、単に「解除可能な逆止弁23」が存在することをもって、「逆止弁を通過して油が作業シリンダ内に流れることとなる事態」が生じるとまではいえないことが明らかである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

ウ さらに、請求人は、請求人陳述要領書(1)の第7ページの「(2)『逆止弁23』の機能について」の○1のエにおいて、「当該技術分野において,『人力でゲート板を持ち上げる』ことは,既に提出した甲第6号証の1,2,3,5からも明らかである。」とも主張する。
しかしながら、甲6-1技術は、「貨物自動車に架装せられ積載物の積卸しをおこなう荷役装置」に係るものであり、後板3の閉位置Iと開位置IIとの間は手動のみにより回動し(回動のための油圧回路をそもそも有さない。)、後板3の下降位置IIIから開位置IIまでの上昇を、積載状況により油圧による場合と手動による場合とを選択することが可能なものであるが、シリンダ8の室ロから室イの間へ逆止弁22を介して油を流出させる配管の構成を設けることにより、手動による上昇を可能としているものであるから(油槽20から室イに油を供給するものではない。)、そのような配管の構成を有さない甲3の1において、ゲート板が人力で持ち上げることが想定されていることの根拠になるとはいえない。
次に、甲6-2技術は、「ハンドリフト」に係るものであり、甲3の1とは技術分野を異にするものであるから、甲3の1において、ゲート板が人力で持ち上げることが想定されていることの根拠になるとはいえない。
次に、甲6-3技術は、「コンクリートミキサ車の油圧式シユート高さ調整装置」に係るものであり、甲3の1とは技術分野を異にするものであるから、甲3の1において、ゲート板が人力で持ち上げることが想定されていることの根拠になるとはいえない。
最後に、甲6-5技術は、「動力車1のテールゲート3を随意に開き得るアクティブなコントロールシステム」に係るものであり、当該テールゲート3は荷物の昇降に用いるものではなく甲3の1とは技術分野を異にするものであるから、甲3の1において、ゲート板が人力で持ち上げることが想定されていることの根拠になるとはいえない。なお、甲6の5の特許請求の範囲に具体的な用途の特定がないことから、甲6-5技術を一般的な油圧回路に関する技術と把握したとしても、甲6の5にはテールゲートリフタの言及はないのであるから、甲3の1において、ゲート板が人力で持ち上げることが想定されていることの根拠になるとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

エ 上記ア?ウで検討したとおり、甲3の1の「ゲート板」は手動で上昇させることを想定したものとはいえず、「制御配管25」からの油圧により解除可能なことを除いて、逆止弁自体として開口することの目的やクラッキング圧が明らかでない「解除可能な逆止弁23」は、ゲート板を手動で上昇させたときに開口して「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」の「上昇加圧室5、6」内の真空化を防止するものということはできない。
また、甲3の1の「ゲート板」を強制的に手動で上昇させることができたとしても、「解除可能な逆止弁23」のクラッキング圧が明らかでないので、「解除可能な逆止弁23」がゲート板を上昇させたときに逆止弁自体として開口する構成とされているかは不明である。
そうすると、「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に用いられる油圧回路と同様の構成を有する甲3-1発明における「解除可能な逆止弁23’」においても、ゲート板を手動で格納させたときに開口して、「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」の「上昇加圧室5’、6’」内の真空化を防止するものということはできない。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点といえる。

オ 次に上記相違点1に係る本件特許発明1の事項が、甲3-1発明に甲6-1技術ないし甲6-5技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たかどうかについて検討する。
請求人は、審判請求書の第15?17ページの「(4-5)請求項1及び2についての進歩性欠如(無効理由4)」において、「この種の分野において真空化を防止するために逆止弁が利用されることは,周知・慣用技術である。」として甲6の1ないし甲6の5により容易想到である旨主張している。
しかしながら、甲6-1技術ないし甲6-5技術から共通して把握される技術は、「開状態の逆止弁を通じて油が移動することによるシリンダ内の負圧(真空化)発生防止」という程度にとどまるものであって、当該技術が周知・慣用技術といえたとしても、上述のとおり、甲3の1はゲート板を手動で格納することが想定されているとはいえず、まして、ゲート板を手動で格納しようとするときの負圧の課題が示唆されているとはいえないから、甲3-1発明に当該周知・慣用技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
また、仮に甲3-1発明に当該周知・慣用技術を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の具体的な事項を有するものには至らない。

カ 請求人の主張する無効理由4-1については以上のとおりであるが、念のため、個々の技術の適用について検討すると、以下(ア)?(オ)のとおりである。
(ア)甲6-1技術は、「貨物自動車に架装せられ積載物の積卸しをおこなう荷役装置」に係るものであり、テールゲートリフタの油圧回路に係るものという程度の意味では、甲3-1発明と共通する技術分野のものといえる。
しかしながら、甲6-1技術は、後板3(「ゲート板」に相当)の下降位置IIIから開位置IIまでの上昇については、積載状況により油圧による場合と手動による場合とを選択することが可能なものであり、シリンダ8の室ロから室イの間へ逆止弁22を介して油を流出させる配管の構成を設けることにより、手動による上昇を可能としているものであって、甲3-1発明と甲6-1技術は、テールゲートリフタの油圧回路に関する技術であることから、甲3-1発明に甲6-1技術を適用する動機付けがあったとしても、甲6の1の開示内容に従えば、甲3-1発明の「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に適用されることになり、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものには至らない。
また、甲6-1技術は、閉位置Iと開位置IIとの間の回動については、回動のための油圧回路を有さず、手動によるもののみであることから、ゲート板を「格納」する際のシリンダの負圧の問題はそもそも存在しないし、上記エで述べたように、甲3の1はゲート板を手動で格納するということが示唆されているとはいえないことから、甲3-1発明のゲート板の格納に係る「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に甲6-1技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲6-1技術を甲3-1発明の「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に適用したとしても、当該適用により得られるのは、甲3-1発明の「上昇加圧室5’」と「下降加圧室13’」及び「上昇加圧室6’」と「下降加圧室14’」のそれぞれの間に下降加圧室から上昇加圧室への油圧媒体の流れを許容する「逆止弁」を有する配管を設けたものとなり、当該「逆止弁」は、「解除可能な逆止弁23’」とは別異のものである上、「無加圧容器21」から「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」へ油圧媒体を供給するものとはならないので、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものには至らない。

(イ)甲6-2技術は、「ハンドリフト」に係るものであり、甲3-1発明とは技術分野を異にするものであるが、積載物を上昇させる装置の油圧回路という程度では一応近似する技術分野に属するとはいえる。
しかしながら、甲6-2技術は、「油圧回路は、チェックバルブ36を有し、前記チェックバルブ36は、外力により前記ピストンロッド19が引き上げられて前記リフトシリンダ18内が負圧になった際に、バルブ内の鋼球37が負圧を受けチェックバルブスプリング38を圧縮してオイル通路を開きオイルタンク23のオイルを前記リフトシリンダ18内に吸入し、ピストンロッド19の引き上げが行われ易いようにして、フォーク12に積載物がない場合、或は軽荷重状態でフォーク12の持ち上げに大きな力を必要としない場合に、早上げ用ハンドル49を回動して、ドラム33に巻架したワイヤロープ31を順次巻き送り前記ピストンロッド19を引き上げて早上げ」するものであって、甲3-1発明と甲6-2技術は近似する技術分野に属することから、甲3-1発明に甲6-2技術を適用する動機付けがあったとしても、甲6の2の開示内容に従えば、甲3-1発明の「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に適用されることになるので、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものには至らない。
また、甲6の2には、「フォーク12」が格納されるものであることの記載はなく、甲6-2技術において「フォーク12」を「格納」する際のシリンダの負圧の問題はそもそも存在しないし、上記エで述べたように、甲3の1はゲート板を手動で格納するということが想定されているとはいえないことから、甲3-1発明のゲート板の格納に係る「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に甲6-2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)甲6-3技術は、「コンクリートミキサ車の油圧式シユート高さ調整装置」に係るものであり、甲3-1発明とは技術分野を異にするものであって、「シュート先端20a」を上昇させるのは、打設現場の高さによりシュート先端の高さを調整するために行われているものである(第1欄第22?25行)。
したがって、甲6-3技術と甲3-1発明とは技術分野が異なる上、甲6-3技術には、シュート20を「格納」する際のシリンダの負圧の問題はそもそも存在するとはいえないし、上記エで述べたように、甲3の1はゲート板を手動で格納するということが想定されているとはいえないことから、甲3-1発明のゲート板の格納に係る「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に甲6-3技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(エ)甲6-4技術は、「貨物車両の荷箱と地上間で荷物の積卸しを行なうことできる荷受台昇降装置」に係るものであり、テールゲートリフタの油圧回路に係るものという意味では、甲3-1発明と共通する技術分野のものといえる。
しかしながら、甲6-4技術は、「内部が負圧になることにより油溜T内の作動油が、途中に油溜Tから昇降用油圧ラインl1への作動油の流れを許容する逆止弁34が設けられた吸込ラインl4を通って荷受台昇降用シリンダC1内に供給され」るものであって、「荷受台格納用シリンダC2」に関するものでもない。したがって、甲3-1発明と甲6-4技術は、テールゲートリフタの油圧回路に関する技術ではあることから、甲3-1発明に甲6-4技術を適用する動機付けがあったとしても、甲6の4の開示内容に従えば、甲3-1発明の「昇降シリンダとして使用される作業シリンダ1、2」に適用されることになるので、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものには至らない。
また、甲6-4技術は、「荷受台昇降用シリンダC1」の負圧防止に関するものではあるものの、「モータMによりポンプP0が作動して」いる状態に対応するものであって、甲6の4には、手動により荷受台を上昇させることに関する記載はなく、また、上述したようにそもそも「荷受台格納用シリンダC2」に係るものでもなく、さらに、上記エで述べたように、甲3の1はゲート板を手動で格納するということが想定されているとはいえないことから、甲3-1発明のゲート板の格納に係る「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に甲6-4技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(オ)甲6-5技術は、「動力車1のテールゲート3を随意に開き得るアクティブなコントロールシステム」に係るものであり、【図1】から明らかなように当該テールゲート3は荷物の昇降に用いるものではなく、いわゆるリヤハッチに用いられる単に開閉するテールゲートであって、甲3-1発明とは技術分野を異にするものである。
したがって、甲6-5技術と甲3-1発明とは技術分野が異なる上、上記エで述べたように、甲3の1はゲート板を手動で格納するということが想定されているとはいえないことから、甲3-1発明のゲート板の格納に係る「傾斜シリンダとして機能する作業シリンダ3、4」に甲6-5技術を適用する動機付けがあるとはいえない。仮に適用した場合を検討しても、甲6-5技術は、人力によりテールゲート3を閉じる方向に下降させる場合、「人がハイドロシリンダー6のピストン19を作業室6bの方へ押し」というものであり、ハイドロシリンダー6を引込み方向としているのに対し、甲3-1発明においては、ゲート板を格納する方向では、昇降シリンダ3、4は繰出し方向となるものであり、基本的な作動方向が異なるので、甲3-1発明に甲6-5技術を適用しても、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものには至らない。
なお、甲6の5の特許請求の範囲に具体的な用途の特定がないことから、甲6-5技術を一般的な油圧回路に関する技術と把握したとしても、同様である。

キ 上記オ、カで述べたように、甲6-1技術ないし甲6-5技術を検討しても、甲3-1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1と甲3-1発明とは、上記相違点1において相違するものであるから、本件特許発明1は甲3-1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。
したがって、無効理由1は理由がない。
また、本件特許発明1は、甲3-1発明及び甲6-1技術ないし甲6-5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、無効理由4-1も理由がない。

3 無効理由4-2について
(1)甲3-1’発明及び対比・判断
甲3の1には、上記1(1)ア(ウ)の記載事項からみて、甲3-1発明に加え、さらに次の事項を有する発明(以下「甲3-1’発明」という。)
「制御システムはコンパクトなブロックとして形成され、すなわち油圧回路に対して必要な部品を接続するための管の配管を必要とせず、このコンパクトなブロックは、さらに加圧流生成器9、電気モータ10、および油圧媒体に対する容器21を備える流体静力学的な最小連結機械の構成要素である」

本件特許発明2と甲3-1’発明とを対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1に加え、次の点でも相違するものと認める。
〔相違点2〕
本件特許発明2が、「前記油タンク、前記モーター、前記開閉用ソレノイド弁を含む油圧回路をパワーパック化したこと」という事項を有するのに対し、甲3-1’発明は、「制御システムはコンパクトなブロックとして形成され、すなわち油圧回路に対して必要な部品を接続するための管の配管を必要とせず、このコンパクトなブロックは、さらに加圧流生成器9、電気モータ10、および油圧媒体に対する容器21を備える流体静力学的な最小連結機械の構成要素である」ものであるが、「油タンク」、「電気モータ10」、「油圧回路」がパワーパック化されていることが特定されていない点。

上記相違点2について検討すると、甲3の1を主たる引例とした場合である無効理由4-2において、本件特許の請求項2において特定される事項に対する証拠の提出はなく、また、審判請求書においても容易想到であることの具体的な主張はなされていない。
したがって、甲3-1’発明において、上記相違点2に係る本件特許発明2の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

(2)小括
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をするものであるところ、上記相違点1については上記2の説示のとおりであり、上記相違点2については上記(1)の説示のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3-1’発明及び甲6-1技術ないし甲6-5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、無効理由4-2も理由がない。

4 無効理由2、3、4-3、4-4について
(1)公然実施された発明であるかについて
甲4について、被請求人は証拠の成立を認めていることから、甲4の具体的な記載内容等について検討する。
ア 請求人の主張
平成29年12月25日付けの審理事項通知の「第1 2(1)ウ」において、「第4?6図は、『マルチゲート(RAM10-403A)』に係る図面であるのか明らかでありません。例えば、第4図の右下の『型式』の欄は、元の型式名を見え消しにした上で『RAM10-40系』と手書きされているように見えます。また、第4図の品番2に対応するとしている第5図の左上の『型式』の欄は、『RAM10 40□(合議体注:判別不能)AS』と記載され、第4図の品番3に対応するとしている第6図の右下の『型式』の欄は『RA10-412A』と記載されています。」として、各図面における不整合を指摘したところ、請求人は、甲12を提出し、請求人陳述要領書(1)の第13ページの「第3 1(1)ウ」において、「型式RA10-412Aは,その後の『製品架装型式統一基準の改訂(KES対応)』に伴いRAM10-403Aに型式変更し発売に至っているものであり,型式RAM10-40系に含まれる」と主張している。

イ 主張、証拠の検討
上記主張及び甲12には、型式変更や甲4の第4?6図の見え消しが具体的にいつ行われたのか説明がないところ、例えば、甲4の第4図の右下の「型式」は「RA10-410A」と記載されていたものを見え消しで「RAM-40系」とし、「品番2」の「図番」は、「5-312○○-00-0」(○○の箇所は96かとも思われるが判然としない)と記載されたものと、その末尾の「0」の上に「1A」と記載されたものの両者を見え消しし、全体を「5-31370-00-0」としている。そして、当該第4図の品番2に対応するとしている甲4の第5図の左上の「型式」は、最初から変更後としている「RAM10 40□AS」(□の箇所は判別不能であるが、このように表記した。請求人がいう「RAM10-40系」に対応すると解される。)と記載されているが、その2つ上の欄(文字がつぶれて欄の名が判別不能)に「5-31296-00-1A」と記載されており、少なくとも甲4の第4図における見え消し後の「図番」である「5-31370-00-0」とは合致していない。
また、甲4の第4図の「品番3」は「234-39117-0A」と記載されているが、当該第4図の「品番3」に対応するとしている甲4の第6図の右下の「型式」は変更前としている「RA10-412A」と記載されているのに、「図番」は「234-39117-0A」との記載の末尾の「A」を見え消しし、その右に「B」が記載されている。すなわち、第6図には変更前としている「型式」の番号が記載されている一方、「品番3」の番号については変更後の型式としている第4図の「品番3」の番号と同じ番号からさらに見え消しで変更しているとも解される。
そして、甲12の第7ページの「部品明細」をみても符号13で示される「マニホールASSY」の「部番」は「S234391170」と記載されているが、「マニホールドASSY」を示す甲4の第6図をみても同じものを示すのか明らかでないし、甲12の第4ページの「パワーユニットケースASSY」、同第5ページの「パワーユニットASSY」の図面をみても、詳細な各部のサイズ等が明らかでない概略図が示されるだけであって、甲4の第4図、第5図に示されるものと同一のものであるのか明らかでない。
さらに、請求人が、「RAM10-403A」の油圧回路図としている甲4の第3図と、同第4図の左中央より上方に記載された「油圧回路図」とを比較すると、第3図の開閉シリンダに係る油圧回路と、第4図の「油圧回路図」において、符号「A」、「B」が付されたうちの「B」に係る油圧回路の基本的な構成は同様であるが、第4図には「A」、「B」が何であるのか記載はないし、第5図や第6図をみても「A」、「B」が何であるのか記載はない。また、第3図において「SOL.B」、「SOL.C」と記されたソレノイドバルブ(電磁弁)を示す記号の付近の管路にそれぞれフィルターを示す記号が記載されているのに対し、第4図の「油圧回路図」においては当該記号の記載がない(なお、第3図の「SOL.A」付近及びポンプ記号付近のフィルター記号については第4図の「油圧回路図」とも整合している。)。
加えて、被請求人は、被請求人陳述要領書(1)の第14?15ページの(3.3.1)において「しかし、甲4に添付された第4図は、手書きで変更されており、いつ、誰が変更したものであるのか事実関係が確認できないものである。また、甲4に加え、甲第12号証に示された報告書の添付資料を精査しても、相変わらず、型式RA10-412Aと、型式RAM10-403Aとが同一のものであるとの確認ができない。例えば、請求人は、甲4の第4図に示された品番2(5-31370-00-0 P/U)と示された部品を、第5図で示す旨説明しているが、第5図に示された部品が『品番2(5-31370-00-0 P/U)』を示すものであることが確認できない。」と主張しているが、その後提出された請求人陳述要領書(2)においても特段反論はない。

ウ 判断
上記イの事項を総合すると、「RA10-412A」と「RAM-403A」の同一性を確認できるとはいえないし、仮に同一であったとしても「RAM10-403A」が甲4の第3図に示される油圧回路を有するかどうかは明らかでない。

エ 小括
以上検討したとおり、請求人の主張及び証拠方法からでは、甲4の第3図に示される油圧回路を有するとしている「マルチゲート(RAM10-403A)」が、本件特許の出願前に公然実施されたものであるとまではいえず、本件特許発明1、2は、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえないし、また、同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえない。
したがって、無効理由2、3、4-3、4-4は理由がない。

(2)無効理由2、3、4-3、4-4(甲4の第4図の油圧回路を有するものが公然実施されているとした場合)
ア 甲4の第4図の油圧回路を有する公然実施された発明
念のため、仮に、「テールゲートリフター(RAM10-403A)」(マルチゲート(RAM10-403A))が、本件特許の出願前に公然実施されたものであって、かつ、甲4の第4図の左中央より上方に記載された「油圧回路図」に示される「RAM10-40系」の油圧回路と同じものを備えている場合について検討する。
甲4の第4図の「油圧回路図」には、ポンプを示す記号から下流側の管路が「A」、「B」と記載された側につながるように記載されているが、上記(1)イで述べたように、それら「A」、「B」が何を示すのか明らかでない。
そうすると、「B」が「開閉シリンダ」に接続されているものであることが特定できるとはいえない。
したがって、甲4の第4図の「油圧回路図」を有する発明は、「開閉シリンダ」との関係においてどのようなものであるのか具体的に特定することができない。

イ 小括
以上検討したとおり、甲4の第4図の「油圧回路図」を有する「テールゲートリフター(RAM10-403A)」(マルチゲート(RAM10-403A))に係る発明が特定できないことから、本件特許発明1、2は、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえないし、また、同条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえない。
したがって、無効理由2、3、4-3、4-4は理由がない。

(3)無効理由2、4-3(甲4の第3図の油圧回路を有するものが公然実施されているとした場合)
ア 甲4の第3図の油圧回路を有する公然実施された発明
さらに念のため、仮に、「テールゲートリフター(RAM10-403A)」(マルチゲート(RAM10-403A))が、本件特許の出願前に公然実施されたものであって、かつ、甲4の第3図に示される油圧回路を備えている場合についても検討する。
発明の認定にあたって、甲4の第3図に記載された各部材名を参考にし、その他については油圧回路で用いられる記号も参酌して、当審が当該第3図に部材名等を付加した下記参考図2において、四角で囲って示した名称を使用することとする(なお、請求人が「ニードル弁」と記載した部材は、一般に「可変絞り弁」を示す記号であるので、「可変絞り弁」として扱う。)。そして、マルチゲートであるから「ゲート板」を有することは自明のことである。
したがって、技術常識も考慮すると、次の発明(以下「甲4発明」という。)を認定することができる。

〔参考図2〕


〔甲4発明〕
「ゲート板を開閉する並列に接続された第1、第2開閉シリンダへモーターによって駆動されるポンプにより油タンクの油を送出する第1管路を有し、
前記第1管路は、前記油タンクと前記ポンプの間に第1フィルターを有し、前記ポンプから前記第1、第2開閉シリンダ側に第1チェック弁を有し、前記第1チェック弁から前記第1、第2開閉シリンダ側に第2フィルターを有し、前記第2フィルターから前記第1、第2開閉シリンダ側にチェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bを有し、前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bから前記第1、第2開閉シリンダ側に第1可変絞り弁を有し、前記第1可変絞り弁から前記第1、第2開閉シリンダ側にチェック弁付き可変絞り弁を有し、
前記第1管路における前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bと前記第1可変絞り弁の間から分岐して、前記油タンクに通じる第2管路を有し、
前記第2管路は、前記第1管路から分岐した箇所から前記油タンク側に第3フィルターを有し、前記第3フィルターから前記油タンク側にチェック弁付きソレノイドバルブSOL.Cを有し、
前記第1管路における前記第1チェック弁と前記第2フィルターとの間から分岐し、前記第2管路に合流する第3管路を有し、
前記第3管路は、前記第1管路から分岐した箇所から前記第2管路側に第4フィルターを有し、前記第4フィルターから前記第2管路側にチェック弁付きソレノイドバルブSOL.Aを有し、前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Aから前記第2管路側に第2可変絞り弁を有し、
前記第1管路における前記ポンプと前記第1チェック弁との間から分岐し、前記第2管路における前記第3管路が合流した箇所と前記油タンクの間に合流する第4管路とを有し、
前記第4管路は、リリーフバルブを有する、
マルチゲート。」

イ 対比
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)後者の「ゲート板」は前者の「ゲート板」に相当し、以下同様に、「モーター」は「モーター」に、「油タンク」は「油タンク」に、「油」は「油」に、「マルチゲート」は「テールゲートリフター」にそれぞれ相当する。

(イ)ここで、本件特許発明1の「開閉用油圧シリンダ」、「開閉用ソレノイド弁」、及び、開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ「管路」については、上記2(1)イで述べたとおりであるから、後者の「第1、第2開閉シリンダ」は、前者の「開閉用油圧シリンダ」に相当するといえる。
また、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.B」と「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」は、その両方によって、ゲート板の開閉を行うものであることは明らかであるから、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.B」及び「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」は、前者の「開閉用ソレノイド弁」に相当するといえる。

(ウ)また、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.B」は、連通位置でないときには、チェック弁となっており、第1管路における第1、第2開閉シリンダ側から油タンク側の流れを許容する向きの記号となっているが、「第2チェック弁」は、その方向の流れが生じない向きとの記号となっているため、連通位置と油圧媒体の流れを阻止する位置とに切換え可能となっているといえる。
そして、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」は、連通位置でないときはチェック弁となっており、第2管路側から第1管路側への流れを許容する向きの記号となっている。そうすると、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」のチェック弁は、流れを許容しない側からの流れは当然阻止するし、流れを許容する側においても設定されたクラッキング圧未満では流れを阻止するといえる。そうすると、「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」も、連通位置と、第1管路側から第2管路側及び第2管路側から第1管路側への油圧媒体の流れを阻止する位置とに切換え可能となっているといえる。
また、後者の「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」における「チェック弁」と前者の「チェック弁」とは、「チェック弁手段」の限度で一致するといえる。そして、「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」における「チェック弁」は、モーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には、第1管路側からの油圧が作用するから「閉」状態に保持されることは明らかである。

(エ)前者の「油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」及び「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」については、上記2(1)オのとおりであるから、後者の「第1管路」及び「第2管路」は、「第1、第2開閉シリンダ」と「油タンク」を「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.B」及び「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」を介して結んでいるものといえるので、前者の「開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路」に相当するといえる。
また、後者の「第1管路」における「第2管路」が分岐する箇所から「第1、第2開閉シリンダ」側の部分と、「第2管路」とを併せたものは、「第1、第2開閉シリンダ」と「油タンク」を「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」を介して結んでいるものといえるので、前者の「前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路」とは、「前記開閉用油圧シリンダ手段と前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路」の限度で一致するといえる。

(オ)上記(ア)?(エ)を踏まえると、後者の
「ゲート板を開閉する並列に接続された第1、第2開閉シリンダへモーターによって駆動されるポンプにより油タンクの油を送出する第1管路を有し、
前記ポンプから前記第1、第2開閉シリンダ側に第1チェック弁を有し、前記第1チェック弁から前記第1、第2開閉シリンダ側に第2フィルターを有し、前記第2フィルターから前記第1、第2開閉シリンダ側にチェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bを有し、前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bから前記第1、第2開閉シリンダ側に第1可変絞り弁を有し、前記第1可変絞り弁から前記第1、第2開閉シリンダ側にチェック弁付き可変絞り弁を有し、
前記第1管路における前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Bと前記第1可変絞り弁の間から分岐して、前記油タンクに通じる第2管路を有し」
と、前者の
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり」
とは、
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁は導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり」
の限度で一致するといえる。

(カ)以上のことから、本件特許発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点2〕
「ゲート板を開閉する開閉用油圧シリンダと油タンクとの間に開閉用ソレノイド弁を介して結んだ管路と、前記開閉用油圧シリンダと前記油タンクとの間にチェック弁手段を介し結んだ管路とを有するテールゲートリフターであって、前記開閉用ソレノイド弁の導通位置と油の流れを阻止する位置とに切換え可能であり、前記チェック弁手段はモーターの動作時で前記ゲート板をモーターにより格納位置に閉じる時には『閉』状態に保持されるテールゲートリフター。」

〔相違点3〕
「チェック弁手段」に関し、本件特許発明1が、「チェック弁」であり「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時には『開』状態になって前記油タンク内のオイルを前記開閉用油圧シリンダに供給し、前記開閉用油圧シリンダ内の真空化を防止する」という事項を有するのに対し、甲4発明は、「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」における「チェック弁」であり、前記事項を有するのか明らかでない点。

ウ 判断
上記相違点3について検討する。
(ア)請求人は、甲4の第3図の油圧回路図の説明図とする甲5を提出し、その2ページの「モータ停止状態の際にゲート板を手動で格納位置に閉じる時」との題の図面により、チェック弁を介して油が油タンク側から流れることを説明している。
しかしながら、一般的な油圧回路において、逆止弁(チェックバルブ)のクラッキング圧は、甲9の第115ページ第15?17行に「0.02〔MPa〕(≒0.2〔kgf/cm^(2)〕から1〔MPa〕(≒10〔kgf/cm^(2)〕以下で作られています。」と記載されるように、どのような時に開口させるかといった目的や配置される油圧回路の構成等の条件により、幅広い範囲のものから選択されるものであるところ、甲4には、「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」の「チェック弁」が、どのような時に開口され得るのか、クラッキング圧がどの程度であるのかといったことを明らかにするような記載は見当たらない。
そうすると、仮に、甲4発明において、ゲート板を手動で強制的に格納位置に閉じ、かつ、そのときに「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」が「第2管路」に対し「チェック弁」の位置にあったとしても、設定されたクラッキング圧によっては、「チェック弁」が開口しない場合もあり得ると解され、単に「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」の「チェック弁」が存在することをもって、チェック弁を通過して油が第1、第2開閉シリンダ内に流れることとなる事態が生じるとまではいえないことが明らかである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(イ)また、本件特許発明1において、「モーターが回っていない状態でゲート板を手動で格納しようとする時」の、「チェック弁」が「開」となる圧力についても検討する。
本件特許発明1の「油タンク」について、特許請求の範囲や発明の詳細な説明には、特に何らかの圧力を生じさせるものであることや完全に密閉されているものであることの記載はなく、発明の詳細な説明の段落【0017】に「エアーブリーザー10」が設けられる旨の記載があり、【図1】?【図5】の油タンクの図示内容からみて、油タンク側の圧力は概ね大気圧であると解され、大気圧(1bar)は約1.02kgf/cm^(2)である。
そして、被請求人は、被請求人陳述要領書第7?8ページ(3.1.1)において、「ゲート板を手動で格納しようとするときには開閉用油圧シリンダ内は負圧となり(真空化)、理論上生じ得る最低の圧力は、絶対真空圧『0kgf/cm^(2)』である(開閉用油圧シリンダ内には作動油が封入されているので、現実には、開閉用油圧シリンダ内の圧力がその飽和蒸気圧よりも低下することはない)。・・・つまり、ゲート板を手動で格納しようする場合、油タンクと開閉用油圧シリンダとの圧力差は、最大でも1.02kgf/cm^(2)であるから、本件特許発明における「チェック弁」のクラッキング圧は、少なくとも1.02kgf/cm^(2)未満で、実際の油圧回路において発生し得る差圧を考慮して実験等によって決定される値に設定されるもべきである」(第7ページ末行?第8ページ第13行)と主張しており、当該「少なくとも1.02kgf/cm^(2)未満で、実際の油圧回路において発生し得る差圧を考慮して実験等によって決定される値」は、油圧回路の構成からみて、概ね妥当と解される。なお、その後提出された請求人陳述要領書(2)において特段反論はない。
一方、請求人は、請求人陳述要領書(1)の第14ページの第3 1(2)において、「甲第4号証の油圧回路の圧力差(クラッキング圧)は,0.3MPa(1MPa=約10.2kgf/cm^(2))である。」(第14ページ下から4行?3行)と主張している。
「0.3MPa」は約3.06kgf/cm^(2)であるので、大気圧の約1.02kgf/cm^(2)よりもはるかに大きい値であり、当該値のものであるならば、甲4発明において、ゲート板を手動で強制的に格納位置に閉じ、かつ、そのときに「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」が「第2管路」に対し「チェック弁」の位置にあったとしても、当該「チェック弁」は開口しないと解される。
したがって、この点からみても、甲4発明において、モータ停止状態の際にゲート板を手動で格納位置に閉じる時に、チェック弁を介して油が油タンク側から流れる旨の主張は採用できない。

(ウ)上記(ア)、(イ)で検討したとおり、甲4発明における「チェック弁付きソレノイドバルブSOL.C」の「チェック弁」は、ゲート板を手動で格納させたときに開口して、「第1、第2開閉シリンダ」内の真空化を防止するものということはできない。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点といえる。

d 次に上記相違点3に係る本件特許発明1の事項が、甲4発明に甲6-1技術ないし甲6-5技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たかどうかについて検討する。
上記相違点3の判断については、上記相違点2の判断と実質的に同様の理由により、甲6-1技術ないし甲6-5技術を検討しても、甲4発明において、上記相違点3に係る本件特許発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。なお、甲4発明において、請求人が主張するようにクラッキング圧を0.3MPaに設定されているものであるならば、何らかの目的をもってその値に設定していると解され、その目的達成に支障を来しかねないような大幅に低い値に変更する合理的な理由も見当たらない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1と甲4発明とは、少なくとも上記相違点3において相違するものであるから、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。
したがって、無効理由2は理由がない。
また、本件特許発明1は、甲4発明及び甲6-1技術ないし甲6-5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、無効理由4-3も理由がない。

(3)無効理由3、4-4(甲4の第3図の油圧回路を有するものが公然実施されているとした場合)
ア 甲4’発明及び対比・判断
甲4には、その第3図の「パワーユニット」と記載された事項からみて、甲4発明に加え、さらに次の事項を有する発明(以下「甲4’発明」という。)
「前記油タンク、前記モーター、前記チェック弁付きソレノイドバルブSOL.B、チェック弁付きソレノイドバルブSOL.Cを含む油圧回路をパワーユニットとした」

本件特許発明2と甲4’発明とを対比すると、後者の「パワーユニットとした」ことは、前者の「パワーパック化した」ことに相当するといえる。
そうすると、上記一致点2で一致し、上記相違点3で相違するものと認める。
上記相違点3の判断については、(2)で述べたとおりである。
したがって、甲4’発明において、上記相違点3に係る本件特許発明2の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

イ 小括
以上のとおり、本件特許発明2と甲4発明とは、上記相違点3において相違するものであるから、本件特許発明2は、甲4’発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。
したがって、無効理由3は理由がない。
また、本件特許発明2は、甲4’発明及び甲6-1技術ないし甲6-5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、無効理由4-4も理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-31 
結審通知日 2018-06-04 
審決日 2018-06-15 
出願番号 特願2000-127546(P2000-127546)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B60P)
P 1 123・ 113- Y (B60P)
P 1 123・ 112- Y (B60P)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
氏原 康宏
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3397309号(P3397309)
発明の名称 テールゲートリフターの油圧回路  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 山崎 道雄  
代理人 小野 尚純  
代理人 飯田 隆  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 大住 洋  
代理人 鹿角 剛二  
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