ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L |
---|---|
管理番号 | 1342705 |
審判番号 | 不服2017-12616 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-25 |
確定日 | 2018-08-22 |
事件の表示 | 特願2016-500408「RFIDセキュア認証」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/158596、平成28年 5月16日国内公表、特表2016-513935、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2014年2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月14日,米国,2014年2月25日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成28年11月7日に手続補正書が提出され,同年12月21日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年3月15日に意見書が提出されたが,同年6月8日付けで拒絶査定(謄本送達日同年6月12日)がなされ,これに対して同年8月25日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年11月2日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,平成30年1月24日に上申書が提出され,同年7月2日付けで当審により拒絶の理由が通知され,同年7月12日に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年6月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-5,8 ・引用文献等 1,2 ・請求項 6,7 ・引用文献等 1-3 ・請求項 9-15 ・引用文献等 1,2,4 <拒絶の理由を発見しない請求項> 請求項16-20に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。 <引用文献等一覧> 1.特開2002-269529号公報 2.特開2007-140778号公報 3.特開2009-81564号公報(周知技術であることを示す文献) 4.特開2008-253464号公報 第3 本願発明 本願請求項1乃至5に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明5」という。)は,特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された,次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステムであって、 RFIDタグを有する外科手術用器具であって、前記RFIDタグは、 認証ユニットによって可読である一意の識別子と、 パスワードを記憶し、与えられたパスワードが、前記記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを返すように構成される、パスワードモジュールと を備える、外科手術用器具と、 認証ユニットであって、 RFID通信ユニットと、 前記RFID通信ユニットに動作可能に結合されるプロセッサと、 秘密鍵を記憶する前記プロセッサに動作可能に結合され、かつ、命令のセットを有するメモリであって、前記命令のセットは、 前記外科手術用器具のRFIDタグの一意の識別子を読み取ることと、 少なくとも部分的に、前記外科手術用器具のRFIDタグの一意の識別子を用いて前記秘密鍵を暗号化することに基づいて、認証署名を生成することと、 パスワードとして前記認証署名を前記パスワードモジュールに与えることと、 前記与えられたパスワードが、前記記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを受信することと を行うためのものである、メモリと を備える、認証ユニットと を備える、電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム。 【請求項2】 前記プロセッサに動作可能に結合される電気外科的発電機をさらに備える、請求項1に記載の電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム。 【請求項3】 前記電気外科的発電機の動作は、前記受信されたステータスが前記与えられたパスワードが前記記憶されたパスワードと等しくないことを示す場合、阻止される、請求項2に記載の電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム。 【請求項4】 前記RFIDタグはさらに、読取/書込メモリを備え、前記命令のセットはさらに、前記読取/書込メモリ内のデータを修正するように構成される命令を備える、請求項1に記載の電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム。 【請求項5】 前記認証署名は、少なくとも部分的に、前記RFIDタグの前記秘密鍵および前記一意の識別子の暗号学的ハッシュに基づいて、生成される、請求項1に記載の電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム。」 第4 引用例 1 引用例に記載された事項 原審における平成28年12月21日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2002-269529号公報(平成14年9月20日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は説明のために当審で付加。以下同様。) A 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、IDカード、定期券、プリペイドカード等に使用される、非接触で外部とのデータ通信ができ、内蔵されているメモリに対して、データの読み出し専用、又は読み出し及び書き込みが可能で、パスワード照合機能を有し、通信データの衝突防止機能、又はカード選択機能を持たない非接触型ICカード及びリーダ/ライタで利用されるのに好適なパスワード照合方法およびパスワード照合システムに関するものである。」 B 「【0006】従って、本発明の目的は、共通のパスワードを持つ複数のICカードに対して、安価にパスワード照合ができる、パスワード照合方法およびパスワード照合システムを提供することである。」 C 「【0016】図4は、本発明の実施例によるパスワード照合方法でのICカード内のメモリへのアクセス手順を示す図である。ICカード内のエリアBに対するアクセス手順は、図4に示すように、パスワード照合後にデータの読み出し、書き込みが可能となる。」 D 「【0017】ここで、先の図7では、衝突防止機能、又は選択機能を持たないリーダ/ライタに、ICカード2枚をかざした場合、ICカード2枚ともデータを書き込んでしまうという問題点があったが、本発明のパスワード照合方法では、以下の説明する方法にてパスワード照合を行うものである。即ち、複数枚のICカードが共通のパスワードにより同時に照合済みの状態にならないように、ICカード毎に異なるパスワード作成を行うものであり、これについて説明する。 【0018】図5は、本発明の実施例によるパスワード照合方法でのパスワードの作成手順の説明図である。図5より、まずリーダ/ライタから、ICカードが持つ固有データ(ユニークIDやシリアル番号)をICカード内メモリのエリアCから読み出す。次にシステム内で使用される共通のパスワードと読み出した固有のデータを使用して決められた演算を行い、カード毎に異なるパスワードを作成する。本件で実施した演算内容は、四則演算とビット操作にて行った。」 E 「【0021】ID2のbit2とID4のbit1とを足し算し、結果をNEW_PSW2のbit6にセットする。桁上げがある場合、bit7にセットする。これで2バイト目(NEW_PSW2)の処理が終了である。以下、同様に、NEW_PSW3,NEW_PSW4の演算を各データのbitを図6のようにセットして行う。作成したパスワードは、ICカード内メモリのエリアDにライトコマンドを使用して書き込む。これでパスワードの作成からICカードの書き込みが完了となる。 【0022】また、演算を行う時、複数のパスワードを使用して演算しても良い。尚、ICカード固有のデータと共通パスワードを使用した演算は、セキュリティの観点からリーダ/ライタ内部で行った方がよいが、リーダ/ライタの上位機器で行っても良い。図6に、本件で実施したパスワード作成時の演算内容を例として示す。 【0023】上記の方法で作成したパスワードを使用して照合した場合について説明する。まず、ICカード1が持つユニークIDをメモリエリアCから読み出し、そのIDと共通パスワードを使用して決められた演算をリーダ/ライタ内部、又はリーダ/ライタの上位機器で行い、その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信する。目標とするICカード1では、正しいパスワードを受信すると照合済みの状態となり、アクセス制限をしていたメモリエリアBのデータ読み出し、書き込みが可能となる。ICカード2では、自分自信が持っているパスワードと違うため、照合済みの状態にならず、メモリエリアBに対してアクセスできない。」 2 引用発明 上記記載事項A乃至Eから,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「非接触で外部とのデータ通信ができ、内蔵されているメモリに対して、読み出し及び書き込みが可能で、パスワード照合機能を有する非接触型ICカード及びリーダ/ライタで利用されるのに好適なパスワード照合システムであって,共通のパスワードを持つ複数のICカードに対して,安価にパスワード照合ができることを目的とし, ICカード内のエリアBに対するアクセス手順は,パスワード照合後にデータの読み出し,書き込みが可能となるものであり, 複数枚のICカードが共通のパスワードにより同時に照合済みの状態にならないように,ICカード毎に異なるパスワード作成を行うものであって, まずリーダ/ライタから,ICカードが持つ固有データ(ユニークIDやシリアル番号)をICカード内メモリのエリアCから読み出し,次にシステム内で使用される共通のパスワードと読み出した固有のデータを使用して決められた演算を行い,カード毎に異なるパスワードを作成し, 作成したパスワードは、ICカード内メモリのエリアDにライトコマンドを使用して書き込み,これでパスワードの作成からICカードの書き込みが完了となり, 作成したパスワードを使用して照合する場合,ICカードが持つユニークIDをメモリエリアCから読み出し,そのIDと共通パスワードを使用して決められた演算をリーダ/ライタ内部で行い,その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信し, 目標とするICカードでは,正しいパスワードを受信すると照合済みの状態となり,アクセス制限をしていたメモリエリアのデータ読み出し,書き込みが可能となる パスワード照合システム。」 3 引用例2に記載された事項 原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2007-140778号公報(平成19年6月7日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 F 「【0012】 <ICローダ> 本発明におけるICローダは、各実施形態ではRFIDタグ(2)とする。もちろん、RFIDタグ(2)に限定する趣旨ではなく、ICカードや演算機能を豊富に搭載しえないモバイル端末(例えば携帯電話、PDAなど)でもよいし、さらには、演算機能を豊富に有する高性能コンピュータなどであってもよい。 以下、RFIDタグ(2)をタグ(2)と略記する。」 G 「【0021】 ((第1実施形態)) まず、本発明の第1実施形態について図4、図5を参照して説明する。 《パスワード管理システム》 図4を参照して、第1実施形態のパスワード管理システムを説明する。 リーダライタ(3)のROM(35)には、従来のように、各タグ(2)と各タグ(2)に固有のパスワードとを対応付けたタグ-パスワード対応テーブルを記憶しているのではなく、全てのタグ(2)に共通の秘密情報sのみを記憶保存している。なお、本明細書では、秘密情報sを全てのタグ(2)に共通とするが、例えば、タグ(2)を複数のグループに分割し、このグループごとに異なる秘密情報を割り当てるようにしてもよい。」 H 「【0027】 次に、タグTn(2)の通信部(29)が、ステップS100で送信されたアクセス開始情報を受信する(ステップS101)。そして、タグTn(2)の制御部(240)は、受信したアクセス開始情報を契機として、ROM(25)から識別情報IDnを読み込み、さらに通信部(29)を制御して、識別情報IDnをリーダライタ(3)に対して送信する(ステップS102)。 【0028】 次に、リーダライタ(3)の通信部(39)がステップS102で送信された識別情報IDnを受信する(ステップS103)。そして、リーダライタ(3)の制御部(340)は、ROM(35)から読み込んだ秘密情報sおよび受信した識別情報IDnをRAM(34)に格納する(中間処理;ステップS104)。 【0029】 次に、リーダライタ(3)の一方向性関数演算部(341)は、RAM(34)に格納された識別情報IDnおよび秘密情報sを読み込み、これらを入力としたハッシュ関数Hを演算して、その演算結果をRAM(34)に格納する(ステップS105)。便宜上、この演算結果をHRW(IDn,s)と表記する。 【0030】 次に、リーダライタ(3)の制御部(340)は、その通信部(39)を制御して、RAM(34)に格納された演算結果HRW(IDn,s)を、タグTn(2)に対して送信する(ステップS106)。 【0031】 次に、タグTn(2)の通信部(29)がステップS106で送信された演算結果HRW(IDn,s)を受信する(ステップS107)。そして、タグTn(2)の制御部(240)は、ROM(25)から読み込んだパスワードH(IDn,s)および受信した演算結果HRW(IDn,s)をRAM(24)に格納する(中間処理;ステップS108)。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「パスワード照合システム」は,「カード毎に異なるパスワードを作成」し,「目標とするICカードでは,正しいパスワードを受信すると照合済みの状態となり,アクセス制限をしていたメモリエリアのデータ読み出し,書き込みが可能となる」ことから,本願発明1の「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」とは,下記の点で相違するものの,“認証するためのシステム”である点で一致する。 (2)引用発明の「ICカード」は,本願発明1の「RFIDタグ」と,“非接触媒体”である点で一致する。 (3)引用発明の「ICカードが持つ固有データ(ICカード1が持つユニークID)」は,引用発明が「複数枚のICカードが共通のパスワードにより同時に照合済みの状態にならないように,ICカード毎に異なるパスワード作成を行うもの」であることから,当該「ICカード」を一意に識別する点で,本願発明1の「RFIDタグの一意の識別子」と共通する。 また,引用発明の「ICカード」は,「カード毎に異なるパスワード」が「作成」され,当該「作成したパスワード」は,「ICカード内メモリのエリアDにライトコマンドを使用して書き込」まれていることから,“パスワードを記憶”していることは明らかであり,また,「目標とするICカードでは,正しいパスワードを受信すると照合済みの状態となり,アクセス制限をしていたメモリエリアのデータ読み出し,書き込みが可能となる」ものであり,送られてきたパスワードと記憶されたパスワードとを照合するものであることから,本願発明1の「パスワードモジュール」に対応する構成を有するといえるから,引用発明の「非接触型ICカード」と,本願発明1の「認証ユニットによって可読である一意の識別子と、パスワードを記憶し、与えられたパスワードが、前記記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを返すように構成される、パスワードモジュールとを備え」る「RFIDタグ」とは,下記の点で相違するものの,“非接触媒体”が,“認証ユニットによって可読である一意の識別子と,パスワードを記憶するパスワードモジュール”を備える点で一致する。 (4)引用発明の「リーダ/ライタ」は,「ICカードが持つ固有データ(ユニークIDやシリアル番号)をICカード内メモリのエリアCから読み出し,次にシステム内で使用される共通のパスワードと読み出した固有のデータを使用して決められた演算を行い,カード毎に異なるパスワードを作成」したり,「ICカードが持つユニークIDをメモリエリアCから読み出し,そのIDと共通パスワードを使用して決められた演算をリーダ/ライタ内部で行い,その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信」したりするものであり,「ICカード」とのデータの送受信,及び「カード毎に異なるパスワード」の「作成」を行うものであることから,所定の“通信ユニット”,“プロセッサ”及び当該プロセッサで実行される“命令のセットを有するメモリ”を有することは明らかである。 したがって,引用発明の「リーダ/ライタ」は,“通信ユニットと,前記通信ユニットに動作可能に結合されるプロセッサと,前記プロセッサに動作可能に結合され,かつ,命令のセットを有するメモリ”とを備える点で,本願発明1の「認証ユニット」と共通する。 (5)引用発明は,「作成したパスワードを使用して照合する場合,ICカードが持つユニークIDをメモリエリアCから読み出し,そのIDと共通パスワードを使用して決められた演算をリーダ/ライタ内部で行い,その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信」するものであり,(4)での検討を踏まえ,所定の“命令セット”によって行われる処理には,「ICカードが持つユニークIDをメモリエリアCから読み出」す処理,「そのIDと共通パスワードを使用して決められた演算」処理,及び「その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信」する処理が含まれることが読み取れる。引用発明はまた,「まずリーダ/ライタから,ICカードが持つ固有データ(ユニークIDやシリアル番号)をICカード内メモリのエリアCから読み出し,次にシステム内で使用される共通のパスワードと読み出した固有のデータを使用して決められた演算を行い,カード毎に異なるパスワードを作成」した上で,「作成したパスワードは、ICカード内メモリのエリアDにライトコマンドを使用して書き込」まれるものであり,当該「システム内で使用される共通のパスワード」,「固有のデータ」,「決められた演算」及び「カード毎に異なるパスワード」は,それぞれ本願発明1の「秘密鍵」,「一意の識別子」,「暗号化すること」及び「認証署名」に対応し,それぞれ“鍵”,“一意の識別子”,“暗号化すること”及び“認証情報”といい得るものである。 そして,引用発明は,「作成したパスワードを使用して照合する場合」に,「ICカードが持つユニークID」と「共通パスワードを使用して決められた演算をリーダ/ライタ内部で行い,その結果をパスワードとしてICカードに照合コマンドと共に送信」し,「目標とするICカードでは,正しいパスワードを受信すると照合済みの状態となり,アクセス制限をしていたメモリエリアのデータ読み出し,書き込みが可能となる」ものであることから,“認証情報をパスワードモジュールに与え”ているといえ,したがって,引用発明と本願発明1とは,(4)で検討したことを踏まえ,下記の点で相違するものの,“認証ユニットであって,通信ユニットと,前記通信ユニットに動作可能に結合されるプロセッサと,鍵を記憶する前記プロセッサに動作可能に結合され,かつ,命令のセットを有するメモリであって,前記命令のセットは,前記非接触媒体の一意の識別子を読み取ることと,少なくとも部分的に,前記非接触媒体の一意の識別子を用いて前記鍵を暗号化することに基づいて,認証情報を生成することと,パスワードとして前記認証情報を前記パスワードモジュールに与えることと,を行うためのものである,メモリとを備える,認証ユニット”を備える点で一致する。 (6)以上,(1)乃至(5)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 認証するためのシステムであって, 非接触媒体は, 認証ユニットによって可読である一意の識別子と, パスワードを記憶するパスワードモジュールと を備え, 認証ユニットであって, 通信ユニットと, 前記通信ユニットに動作可能に結合されるプロセッサと, 鍵を記憶する前記プロセッサに動作可能に結合され,かつ,命令のセットを有するメモリであって,前記命令のセットは, 前記非接触媒体の一意の識別子を読み取ることと, 少なくとも部分的に,前記非接触媒体の一意の識別子を用いて前記鍵を暗号化することに基づいて,認証情報を生成することと, パスワードとして前記認証情報を前記パスワードモジュールに与えることと を行うためのものである,メモリと を備える,認証ユニットと を備える,認証するためのシステム。 〈相違点1〉 本願発明1のシステムが,「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」であり,当該「外科手術用器具」が,「RFIDタグを有する外科手術用器具」であるのに対し,引用発明は,単に「認証するためのシステム」であって,「非接触媒体」がRFIDタグではなく,「ICカード」である点。 〈相違点2〉 本願発明1の「メモリ」に記憶されている「鍵」が,「秘密鍵」であり,「少なくとも部分的に、前記外科手術用器具のRFIDタグの一意の識別子を用いて前記秘密鍵を暗号化することに基づいて、認証署名を生成する」ものであるのに対し,引用発明は,「ICカードが持つ固有データ」と「共通のパスワード」を使用して「決められた演算を行い,カード毎に異なるパスワードを作成」するものである点。 〈相違点3〉 本願発明1の「パスワードモジュール」は,「パスワードを記憶し、与えられたパスワードが、前記記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを返すように構成」され,「認証ユニット」の「メモリ」が有している「命令のセット」は,「前記与えられたパスワードが、前記記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを受信すること」も行うものであるのに対し,引用発明は,「ICカード」に対し,「リーダ/ライタ」から「ICカード毎に異なるパスワード」の送信は行われるものの,当該「パスワード」が等しいかどうかを示す「ステータス」のやりとりを行うことが特定されていない点。 2 判断 相違点1について検討する。 引用発明のシステムは,「非接触型ICカード及びリーダ/ライタで利用されるのに好適なパスワード照合システムであって,共通のパスワードを持つ複数のICカードに対して,安価にパスワード照合ができることを目的」としていて,「ICカード内のエリア」に対して,「パスワード照合後にデータの読み出し,書き込みが可能となるもの」において,パスワード認証を行うものである。 一方,本願発明1は,概して,無線周波数識別技術(また,RFIDとして知られる)に関し,RFIDタグのセキュア認証のためのシステムであって(本願明細書段落1),とりわけ,電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステムに関し,RFIDタグを有する外科手術用器具から,与えられたパスワードが記憶されたパスワードに等しいかどうかを示すステータスを電気外科的発電機が受信し,当該電気外科的発電機は,受信されたステータスが,与えられたパスワードが記憶されたパスワードに等しくないことを示す場合,動作が阻止され,外科手術用器具に含まれるRFIDタグが,使用のために好適であることを確実にするために,認証されるものである(同段落20)。 したがって,単にICカードからデータを読み出して書き込み,パスワードを照合するに過ぎない引用発明において,ICカードに代えてRFIDを用い,更にこれを外科手術用器具に取り付けて,「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」に変更するよう構成することは当業者にとって容易とはいえない。 また引用例2の上記記載事項F乃至Hに記載された技術的事項を参酌しても,「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証する」ことは記載も示唆もされていない。 したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明2乃至5について 本願発明2乃至5は,請求項1を直接若しくは間接的に引用するものであって,本願発明1の「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 当審拒絶理由の概要 <特許法36条6項2号について> 当審から,請求項1乃至7の,「RFIDタグを認証する方法」につき構成が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年7月12日付けの手続補正において,上記,「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 原査定についての判断 平成30年7月12日付けの手続補正により,補正後の請求項1乃至5は,「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」という技術的事項を有するものとなった。当該「電気外科的手技の間の使用のための外科手術用器具を認証するためのシステム」は,原査定における引用文献1乃至2には記載されておらず,本願の第一国出願前における周知技術でもないので,本願発明1乃至5は,当業者であっても,原査定における引用文献1及び2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-08-10 |
出願番号 | 特願2016-500408(P2016-500408) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 青木 重徳、行田 悦資 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 山崎 慎一 |
発明の名称 | RFIDセキュア認証 |
代理人 | 大塩 竹志 |