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審決分類 審判 一部無効 特174条1項  A61J
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 一部無効 2項進歩性  A61J
管理番号 1342751
審判番号 無効2016-800108  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-08-24 
確定日 2018-08-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第5765408号発明「医療用軟質容器及びそれを用いた栄養供給システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成21年 5月18日 先の出願(特願2009-120012)
平成21年 9月14日 先の出願(特願2009-211722)
平成22年 5月17日 原出願(特願2010-113460)
平成25年12月 2日 本件出願
平成25年12月 2日 手続補正
平成27年 6月26日 設定登録(特許第5765408号)
平成28年 8月24日 無効審判請求
平成28年12月 1日 答弁書
平成28年12月15日 審理事項(1)通知
平成29年 1月12日 両者・口頭審理陳述要領書(1)
平成29年 1月17日 審理事項(2)通知
平成29年 2月 6日 両者・口頭審理陳述要領書(2)
平成29年 2月 7日 審理事項(3)通知
平成29年 2月16日 被請求人・口頭審理陳述要領書(3)
平成29年 2月16日 請求人・口頭審理陳述要領書(3)
平成29年 2月16日 被請求人・口頭審理陳述要領書(4)
平成29年 2月16日 口頭審理

以下、各証拠は、「甲第1号証」を「甲1」と、口頭審理陳述要領書を「要領書」と、略記することがある。
また、特許法の条文を指摘する際に「特許法」という表記を省略することがある。
なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行番号が付されているときはそれに従い、付されていないときは行数は空行を含まない。
丸囲み数字は「丸1」のように表記する。

第2.本件発明
本件特許の請求項1、3?6に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され、開閉式の開口部と、経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部とを含み、少なくとも一方の主面に液状物の量を示す目盛りが表示された平袋状の可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、
前記可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、
前記開閉操作部は、各々、前記開口部に固定されており、
一方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の一方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指と、他方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の他方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指以外の指とを開くことにより前記開口部の開口状態を維持でき、
前記可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側の側部の辺が曲がっていることによって、前記可撓性袋部材の前記開口部の幅が前記収容部の幅よりも狭くなっていることを特徴とする医療用軟質容器。
【請求項3】
前記開口部には、開口部を横切って開閉自在とするジップが備えられている請求項1または2に記載の医療用軟質容器。
【請求項4】
前記可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側とは反対側の側部の辺は直線である請求項1?3のいずれかの項に記載の医療用軟質容器。
【請求項5】
前記可撓性袋部材は、前記開口部よりも上方に配置され、吊り下げ用穴が形成された吊り下げ部をさらに含む請求項1?4のいずれかの項に記載の医療用軟質容器。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかの項に記載の医療用軟質容器を含む栄養供給システム。」

第3.請求人の主張
1.要点
請求人は、本件の請求項1、3?6に係る発明についての特許を無効にするとの審決を求めている。
その理由の要点は以下のとおりである。

(1)無効理由1(29条2項、甲1)
本件発明1、3?6は、甲1に記載された発明に、周知技術A(甲2?7)、周知技術B(甲8?10)、周知技術C(甲8、6)を適用し、当業者が容易に発明できたものであるから、29条2項により特許を受けることができず、本件発明1、3?6に係る特許は123条1項2号に該当し、無効にされるべきである。

(2)無効理由2(29条2項、甲2)
本件発明1、3?6は、甲2に記載された発明に、周知技術B、Cを適用し、当業者が容易に発明できたものであるから、29条2項により特許を受けることができず、本件発明1、3?6に係る特許は123条1項2号に該当し、無効にされるべきである。

(3)無効理由3(29条2項、甲3)
本件発明1、3?6は、甲3に記載された発明に、周知技術B、Cを適用し、当業者が容易に発明できたものであるから、29条2項により特許を受けることができず、本件発明1、3?6に係る特許は123条1項2号に該当し、無効にされるべきである。

(4)無効理由4(29条2項、甲14)
本件発明1、3?6は、甲14に記載された発明に、周知技術B、Cを適用し、当業者が容易に発明できたものであるから、29条2項により特許を受けることができず、本件発明1、3?6に係る特許は123条1項2号に該当し、無効にされるべきである。

(5)無効理由5(17条の2、3項)
本件発明1につき、被請求人は、「右側または左側から片手の指を挿入するための・・・開閉操作部」とは、一方向からのみ指を挿入できる(他方向からは指を挿入できない)もので足りると主張するが、そのような発明は、本件願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、図面の範囲内といえないから、本件発明1を特許請求の範囲のようにした平成25年12月2日付け手続補正(甲17-1)は17条の2、3項に違反し、本件発明1に係る特許は、123条1項1号に該当し、無効にされるべきである。

(6)無効理由6(36条6項1号)
本件発明1につき、被請求人は、「右側または左側から片手の指を挿入するための・・・開閉操作部」とは、一方向からのみ指を挿入できる(他方向からは指を挿入できない)もので足りると主張するが、そのような発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないから、36条6項1号に適合せず、本件発明1に係る特許は、123条1項4号に該当し、無効にされるべきである。

2.証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲1 中国実用新案第201128528号明細書
甲2 特開平11-285518号公報
甲3 特開2009-66246号公報
甲4 特開2007-319283号公報
甲5 特開2007-314245号公報
甲6 特開2009-40479号公報
甲7 「静脈経腸栄養年間2008 製剤・器具一覧 第6巻」株式会社ジェフコーポレーション、第1版第1刷、2008年5月30日、p.140-143
甲8 国際公開第2007/077172号
甲9 米国特許第6922852号明細書
甲10 米国特許第4204526号明細書
甲11 特開2005-29270号公報
甲12 「日本人の人体計測データ Japanese Body Size Data 1992-1994」社団法人人間生活工学研究センター、平成9年10月
甲13 「JMS集中調整用シングルユース栄養剤用バッグ」株式会社ジェイ・エム・エス、2008年2月10日
甲14 米国特許第3331421号明細書
甲15 大阪地裁平成27年(ワ)8736号原告第1準備書面
甲16 本件公開公報
甲17-1 本件出願の平成25年12月2日付け手続補正書
甲17-2 本件出願の平成25年12月2日付け上申書
甲17-3 本件出願の平成26年12月22日付け意見書
甲18 「JMS製品案内2005」株式会社ジェイ・エム・エス、2005年7月15日
甲19 特開2005-241550号公報
甲20 特開2005-241543号公報
甲21 カナダ国CA2124383号公報
甲22 特許第5661331号公報
甲23 「静脈経腸栄養年間2008 製剤・器具一覧 第6巻」株式会社ジェフコーポレーション、第1版第1刷、2008年5月30日、p.140-143
甲24 特開2000-217886号公報
甲25 特開2001-212205号公報
甲26 実願昭63-155053号(実開平2-79241号)のマイクロフィルム
甲27 特開平11-193037号公報
甲28 特開平2-242747号公報
甲29 特開2008-74466号公報
甲30 「JMS製品案内2005」株式会社ジェイ・エム・エス、2005年7月15日
甲31 「静脈経腸栄養年間2008 製剤・器具一覧 第6巻」株式会社ジェフコーポレーション、第1版第1刷、2008年5月30日、p.68-69
甲32 「検査ぶっく」HP、2017年2月16日出力
甲33 特開2002-179092号公報
甲34 JMS医療関係者向けサイト「製品案内」2017年2月15日出力

以上の証拠方法のうち、甲1ないし甲17-3は、審判請求書(以下、単に「請求書」ということがある。)に添付され、それ以外は、その後提出されたものである。また、これらの証拠方法の成立について、当事者間に争いはない(被請求人要領書(1)の5.(1)、被請求人要領書(3)の5.(1)、口頭審理調書の「被請求人」欄2)。

第4.被請求人の主張
1.要点
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2.証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。この証拠方法の成立について、当事者間に争いはない(口頭審理調書の「請求人」欄3)。

乙1 AIST日本人の手の寸法データ L10.第2指長/Index finger length(4.3.4 OfISO 7250-1),インターネット情報, https://www.dh.aist.go.jp/database/hand/data/list.html

第5. 無効理由1(29条2項、甲1)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1等は、明細書及び図面の記載からみて、上記第2のとおりと認める。

2.甲1
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、仮訳である。

(3ページ3?4行)

「本実用新案は包装用品技術分野に属しており、具体的には開放が便利なチャック式密封袋に関するものである」(訳文3ページ4?5行)。


(3ページ6?10行)

「従来のチャック式密封袋は袋口の内側に密封チャックが設置され、チャックは互いに対応して嵌合する凹溝及び凸条であり、使用者が手の指で軽く押圧するだけで、凸条が凹溝中に嵌入して、袋口を密封することができる。しかし、この種の密封袋は開放時に比較的力が必要であり、かつ、片手で操作することができず、同時に密封袋の表面が平滑であるため、開放時には手の指を袋口の内側に伸入させる必要があるため、袋内物品及び手の指の双方向の汚染が容易に引き起こされる」(訳文3ページ7?12行)。


(3ページ18?21行)

「本実用新案では、袋体の外表面に密封チャック開放装置が設置され、使用時には両手でそれぞれ両側の引き手を掴むだけで、軽い力で袋口を開放することができる。引き手は更に環状に設計することができ、それにより片手のみで袋口を開放することができる。従来のチャック式密封袋の開放が困難で、容易に汚染を招くなどの問題が根本から解決されており、その構造は簡単で、コストは低廉であり、良好な応用の前途を有している」(訳文3ページ22?27行)。


(4ページ7?13行)

「図面に示されている通り、開放が便利なチャック式密封袋は、袋体1及び密封チャック2を含み、袋体の周囲が密閉され、密封チャックは互いに対応して嵌合する凹溝5及び凸条4であり、密封チャック2は袋体の内側に設置され、袋体の外表面の密封チャックに対応する箇所に2つの引き手6が固定設置される。使用時には、先ず密封チャックの外側に沿って袋体を切り取って袋口を形成し、その後、密封チャックにより袋口を閉じる。開放を必要とする場合は、両手でそれぞれ両側の引き手6を掴むだけで、軽い力で袋口を開放することができる。
引き手6の形状は環状に設計することができ、片手の親指と人差し指とをそれぞれ両側の引き輪6に伸入させ、両側に向けて力を入れるだけで袋口を開放することができる」(訳文3ページ37?46行)。

甲1は、「包装用品技術分野に属」するものであるから、袋体1が被包装用品を包装する袋体1内部を含むことは明らかである。
図1?4から、袋体1は平袋状であることは明らかである。
図1、図2の袋体1、引き輪6の位置関係から、引き輪6は、袋体1の右側または左側から指を挿入するものであることは明らかである。

よって、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 なお、甲1発明の認定につき、当事者間に争いはない(請求人領書(1)6-3-1-1、被請求人要領書(1)の(3)丸1)。
「周囲が密閉され、開閉式の袋口と、被包装用品を包装する袋体1内部とを含む平袋状の袋体1と、
前記袋体1の外表面の各々に前記袋体1の右側または左側から片手の指を挿入するための、袋体1に固定された1対の環状の引き輪6を含み、
前記引き輪6は、各々、前記袋口に固定されており、
前記引き輪6に伸入した片手の指の親指と、他方の引き輪6に伸入した片手の指の人差し指を両側に向けて力を入れることにより、前記袋口の開放状態を維持できる
チャック式密封袋。」

3.本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「袋口」は本件発明1の「開口部」に相当し、同様に「袋体1内部」は「収容部」に、「袋体1」は「可撓性袋部材」に、「外表面」は「両主面」に、「両側に向けて力を入れる」は「開く」に、「密封袋」は「軟質容器」に、相当する。
甲1発明の「周囲が密閉され」と本件発明1の「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され」とは、「密封形成され」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「袋体1に固定された1対の環状の引き輪6」と本件発明1の「上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部」とは、「1対の開閉操作部」である限りにおいて一致する。

本件発明1と甲1発明とは、以下で一致する。
「密封形成され、開閉式の開口部と、収容部とを含む、平袋状の可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、前記可撓性袋部材に固定された1対の開閉操作部を含み、
前記開閉操作部は、各々、前記開口部に固定されており、
一方の前記開閉操作部に挿入した前記片手の指の親指と、他方の前記開閉操作部に挿入した前記片手の指の親指以外の指とを開くことにより前記開口部の開口状態を維持できる
軟質容器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:可撓性袋部材について、本件発明1は「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され」るが、甲1発明は「周囲が密閉され」て形成されるものである点。
相違点2:容器の収容物について、本件発明1は「経腸栄養法で使用される液状物」で「医療用」であるが、甲1発明は明らかでない点。
相違点3:本件発明1は「可撓性袋部材に固定された排出用ポート」を有するが、甲1発明は有しない点。
相違点4:本件発明1は「少なくとも一方の主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」るが、甲1発明は目盛りを有しない点。
相違点5:開閉操作部について、本件発明1は「上縁部及び下縁部が各々前記軟質プラスチックシートに固定されたシート状の」ものであるが、甲1発明は「袋体1に固定された環状の引き輪6」である点。
相違点6:本件発明1は「可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側の側部の辺が曲がっていることによって、前記可撓性袋部材の前記開口部の幅が前記収容部の幅よりも狭くなっている」が、甲1発明はそのようなものでない点。

なお、一致点、相違点について、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)の6-3-1、被請求人要領書(1)の(3)丸1)。

4.判断
(1)相違点1
相違点1について検討する。

甲2には、以下の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、予め液体が収容された液体収容バッグに関する。本発明の液体収容バッグは、特に濃縮液状の経腸栄養剤を収容する経腸栄養バッグに好適である。」

「【0006】バッグ本体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂シートを2枚重ねてその縁部を溶着し、袋状に形成したものであり、特に長期間保存する場合や酸化しやすい内容物の場合には、上記の合成樹脂シートにアルミ箔をラミネートしたものが好ましく採用される。」

甲3には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、・・・経管栄養法により栄養補給をする場合などに用いる栄養剤バッグに関する。」

「【0013】
なお、上記バッグ本体は前後一対のシート材の周縁部を溶着することによって内部に栄養剤の収容室を設け、上記開封手段は上記バッグ本体の一方のシート材の一部を破断して上記開口部を形成するように構成するとよい。」

「【0019】
・・・。また上記各シート材1a・1bは単層もしくは多層に積層したもののいずれでもよい。多層構成のシート材としては、例えばポリアミドまたはナイロンと、低密度ポリエチレンと、リニアローデンポリエチレンと、シーラント層との4層構成のものを用いることができる。」

甲4には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、患者の体内に点滴、栄養剤等の薬液を供給するために用いられる医療用バッグに関する。」

「【0015】
また、バッグ本体10は、図3に示した裏面部10aと、図4に示した表面部10bとの周縁部を熱溶着により接合して形成されている。すなわち、裏面部10aは、正面視がバッグ本体10と略同形のフィルムで構成され、表面部10bは、裏面部10aから上部側の突出部分12に対応する部分を除いた形状に形成されている。」

このように、可撓性袋部材を、2枚の軟質プラスチックシートの貼りあわせにより形成することは、甲2?4にみられるごとく周知技術である。
甲1発明は「周囲が密閉され」る可撓性袋部材ではあるが、材質等が明らかでないところから、かかる周知技術を適用し、相違点1に係るものとすることに、困難性は認められない。

(2)相違点2?4
相違点2?4は、本件発明1の容器の収容物が「経腸栄養法で使用される液状物」であることに関する相違点であり、請求人も一括して主張していることから、まとめて検討する。

甲5には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、注出口付きパウチに関し、特に栄養剤や流動食などの液状の内容物を安全に密封包装し、保存できるとともに流動食の使用時には、パウチに取付けられた注出口に供給チューブを連結して安全かつ衛生的に患者等に投与することができ、・・・衛生的に使用することのできる注出口付きパウチに関する。」

甲6には、以下の記載がある。

「【0001】
この発明は、例えば、流動食や経腸栄養剤等(以下、流動食等という。)を充填する容器のように、注出口部材を有する、吊り下げた状態で使用するパウチ容器に関する。」

甲7の142ページには「経腸栄養剤注入用関連器具」として「栄養剤用バッグ」が記載されている。

このように、「経腸栄養法で使用される液状物」を袋に入れること(相違点2)は、甲5?7、上記甲2(段落0001)、甲3(段落0001)、甲4(段落0001)にみられるごとく周知である。

また、甲2には「液体出口2」(図1)、甲3には「出口栓体2」(図1)、甲4には「薬液取出部材20」(図1)、甲5には「注出口50」(図1)、甲6には「注出口部材20」(図1)が記載されており、甲7の142ページの「栄養剤用バッグ」の下部には「排出用ポート」が看取できる。
すなわち、「経腸栄養法で使用される液状物」用の袋において、「排出用ポート」を有するもの(相違点3)は周知である。

さらに、甲3には「バッグ本体に形成した容量や残量を示す目盛8」(段落0037)、甲4には「バッグ本体10(表面部10b)の表面には、バッグ本体10内に収容された薬液MLの容量を示すための目盛り19が印刷」(段落0019)と記載されており、甲7の142ページの「栄養剤用バッグ」の表面には「目盛り」が看取できる。
すなわち、「経腸栄養法で使用される液状物」用の袋において、「主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」るもの(相違点4)は周知である。

以上より、「経腸栄養法で使用される液状物」を入れる袋(相違点2)においては、「排出用ポート」を有し(相違点3)、「主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」る(相違点4)ものは、上記のとおり周知であり、甲7のように現に上市されている。
このように、「経腸栄養法で使用される液状物」を扱う当業者は、相違点2?4に係る構成を備えたものである「経腸栄養法で使用される液状物」に適した袋の存在を了知している。
かかる当業者が、あえて、甲1発明の「経腸栄養法で使用される液状物」用でない一般的な袋を、「経腸栄養法で使用される液状物」用とし、「排出用ポート」を設け、「主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」るようにすることは、想定しがたく、その動機を見出すことはできない。
よって、相違点2?4を、容易想到とすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点2?4は容易想到でないから、相違点5、6について検討するまでもなく、本件発明1を、甲1発明、周知技術A(甲2?7)、周知技術B(甲8?10)、周知技術C(甲8、6)に基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

5.本件発明3?6
本件発明3?6は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるから、同様の理由により、甲1発明、周知技術A(甲2?7)、周知技術B(甲8?10)、周知技術C(甲8、6)に基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

6.小括
よって、無効理由1によっては、本件発明1、3?6に係る特許を無効にすることはできない。

第6 無効理由2(29条2項、甲2)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1等は、明細書及び図面の記載からみて、上記第2のとおりと認める。

2.甲2
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 上部が開閉自在な閉鎖手段で閉鎖され、下部に液体出口が設けられてなるバッグであって、該バッグの内部空間が、前記閉鎖手段に近接して設けられた容易に剥離可能な隔壁により、上下に流体密に区画され、該区画された下の空間に液体が収容されてなる液体収容バッグ。
【請求項2】 閉鎖手段がチャックシールである請求項1記載の液体収容バッグ。」

「【0001】
【発明の詳細な説明】本発明は、予め液体の収容された液体収容バッグに関する。本発明の液体収容バッグは、特に濃縮液状の経腸栄養剤を収容する経腸栄養バッグに好適である。」

「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は・・・、容易に剥離可能な隔壁をバッグ上部の開閉自在な閉鎖手段に近接して設けて、バッグの内部空間を上下に流体密に区画し、区画された下の空間に液体を収容することにより、収容された液体、例えば経腸栄養剤が変質することなく長期間保存できるとともに、水等の供給時の作業効率が改善されることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、上部が開閉自在な閉鎖手段で閉鎖され、下部に液体出口が設けられてなるバッグであって、該バッグの内部空間が、前記閉鎖手段に近接して設けられた容易に剥離可能な隔壁により、上下に流体密に区画され、該区画された下の空間に液体が収容されてなる液体収容バッグである。ここで、閉鎖手段はチャックシールであるのが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】・・・。図1に示す液体収容バッグは、バッグ本体1と、バッグ本体1の下部(底部)に設けられた液体出口2と、バッグ本体1の上部に設けられた開閉自在な閉鎖手段(チャックシール)3からなり、バッグの内部空間はチャックシール3に近接して下部側に設けられた容易に剥離可能な隔壁4により上下に区画されている。
【0006】バッグ本体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂シートを2枚重ねてその縁部を溶着し、袋状に形成したものであり、特に長期間保存する場合や酸化しやすい内容物の場合には、上記の合成樹脂シートにアルミ箔をラミネートしたものが好ましく採用される。必要ならばバッグ本体1の上端部には吊り下げ穴11を設けてもよく、これによりバッグを点滴スタンドから吊り下げて使用することができる。吊り下げ手段としては、吊り下げ穴11に限定されず、例えばバッグ本体1上部に紐をループ状に固着してもよい。
【0007】液体出口2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる合成樹脂で筒状に形成され、バッグ本体1に溶着されている。・・・。
【0008】バッグの上部は、予め収容されている例えば濃縮液状の経腸栄養剤をうすめる水あるいは温湯等を供給するための供給口5になっており、供給口5はチャックシール3で閉鎖されている。このチャックシール3は、バッグ本体1内側の対向する位置に設けられた凸条と凹条が嵌合して閉鎖する構造になっており、必要に応じて開いたり閉じたりすることができる。」

「【0010】使用に際しては、液体、例えば濃縮経腸栄養剤を収容した室を外部から加圧して、この隔壁4を剥離した後、チャックシール3を開放して、水あるいは温湯を供給し、チャックシール3を閉鎖して混合する。・・・。
【0011】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の液体収容バッグにより、内部に収容された液体が経腸栄養剤の場合、その品質が劣化することなく長期間保存できるとともに、水等を供給の際の手間が省ける。・・・。」

「バッグ本体1は、合成樹脂シートを2枚重ねてその縁部を溶着し、袋状に形成したもの」(段落0006)であり、図1とを併せみると、バッグ本体1が平袋状であることは明らかである。

甲2には、以下の発明(甲2発明)が記載されている。 なお、甲2発明の認定につき、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-4-1、被請求人要領書(1)の(4)丸1)。
「2枚の合成樹脂シートの縁部を溶着して形成され、チャックシール3により開閉自在な供給口5と、経腸栄養剤を収容するバッグの内部空間とを含む平袋状のバッグ本体1と、
前記バッグ本体1に固定された液体出口2と、
を有する液体収容バッグ。」

3.本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「合成樹脂シートの縁部を溶着して形成」は本件発明1の「軟質プラスチックシートが貼り合わされることにより形成」に相当し、同様に「チャックシール3により開閉自在な供給口5」は「開閉式の開口部」に、「経腸栄養剤を収容するバッグの内部空間」は「経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部」に、「バッグ本体1」は「可撓性袋部材」に、「液体出口2」は「排出用ポート」に、「液体収容バッグ」は「医療用軟質容器」に、相当する。

本件発明1と甲2発明とは、以下で一致する。
「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され、開閉式の開口部と、経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部とを含む平袋状の可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、
を有する医療用軟質容器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点7:本件発明1は「少なくとも一方の主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」るが、甲2発明は目盛りを有しない点。
相違点8:本件発明1は「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部は、各々、前記開口部に固定されており、一方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の一方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指と、他方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の他方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指以外の指とを開くことにより前記開口部の開口状態を維持できる」ものであるが、甲2発明は明らかでない点。
相違点9:本件発明1は「可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側の側部の辺が曲がっていることによって、前記可撓性袋部材の前記開口部の幅が前記収容部の幅よりも狭くなっている」が、甲2発明はそのようなものでない点。

なお、一致点、相違点について、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-4-1、被請求人要領書(1)の(4)丸1)。

4.判断
(1)相違点7
相違点7について検討する。
経腸栄養法で使用される液状物を収容する医療用軟質容器において、「主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示され」るものは、上記第5の4.(2)の相違点4として検討したとおり、周知である。
栄養の摂取量等の確認は、栄養療法においては重要な事項であるから、経腸栄養法で使用される液状物を収容する医療用軟質容器である甲2発明において、かかる周知技術を適用し、主面に目盛りを設けることは、必要に応じてなしうる事項である。
相違点7は、容易想到である。

(2)相違点8
相違点8について検討する。
甲8には以下の記載がある。
「【技術分野】
本発明は、(例えば廃棄された)物品の受け入れに使用するのに適した廃棄器具に関する。・・・。
【背景技術】
例えば、環境に優しくない方法で廃棄することにより、他のいくつかの方法において不便で非衛生的又は問題となることがある、汚れた物品の手作業での廃棄が要求される多くの状況が日々の生活において存在する。そのような困難は、例えば、医療環境における生理用品又は体液で汚れた製品の廃棄の関係において特に生じることがある。同様に、例えば、化学又は食品産業において化学物質に晒された製品を廃棄することは困難であることがある」(訳文1ページ3?13行)。
「例えばゴミ箱を開けることによって廃棄処理を支援するために利用可能な片方のみのフリーハンドしか有しないことがあり得る。あるいは、人は、他の物品の汚染を防止するために又は例えば1つの手袋のみを着用する場合、複数の手で汚れた物品に接触したくないことがある」(訳文1ページ17?20行)。
「従来のプラスチック袋は、特に袋開放及び/又は汚れた物品の受け入れ処理中にユーザの手や衣類を汚したり汚染したりすることなく、汚れた物品の効果的な受け入れを確実にするために、片方のフリーハンドで抜き出して開けることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
ユーザによる使用のために便利で衛生的な廃棄器具を提供することが本発明の目的である。
物品の受け入れのために片手で操作可能な廃棄器具を提供することが本発明のさらなる目的である」(訳文1ページ29?38行)。
「容器は、汚れた物品が容器によって受け入れられることができるその内部に形成された口を有する。使用時において、口は、口開位置と口閉位置との間においてユーザの片手で操作可能に配置される。/好ましい実施形態において、器具は、さらに、口開位置と口閉位置との間において口を操作するために容器の外壁上に位置する口操作手段を備える。/好適には、使用時において、人は、自分の指又は親指を使用して、容器を開放するために口の一部を他から引き離すために口操作手段を使用する」(訳文3ページ4?10行)。
「口操作手段は、さらに、1本以上の指又は親指がその内部に又はそれに逆らって挿入されることができる第2の指受け入れ手段を備える。好適には、第2の指受け入れ手段は、容器の反対側の外壁上に位置し、使用時に人が各指受け入れ手段内に又はそれに逆らって指又は親指を挿入し、容器の口を開放して前記指及び/又は親指を引き離すのを可能とする」(訳文3ページ18?22行)。
「好ましくは、口操作手段は、1本以上の指又は親指が挿入可能な少なくとも第1のループを備える。好適には、第1のループは、容器の外壁上に位置し、使用時に、人が容器の口を開放操作するためにループを介して少なくとも1本の指又は親指を挿入するのを可能とするように配置されている。/より好ましくは、口操作手段は、さらに、1本以上の指又は親指が挿入可能な第2のループを備える。好適には、第2のループは、容器の反対側の外壁上に位置し、使用時に、人が各ループを介して指又は親指を挿入し、容器の口を開くために前記指及び/又は親指を引き離すのを可能とする。/より好ましくは、口操作手段は、コンテナの第1の外壁上に位置する第1のループと、コンテナの第2の外壁上に位置する第2のループとの双方を備える。好適には、第1及び第2のループは、口のいずれかの側に(例えば、隣接して)配置されている。/好適には、第1のループは、ユーザの親指を収容するように配置されており、第2のループは、ユーザの人差し指を収容するように配置されている。それゆえに、口操作動作(すなわち、口開放/閉鎖)は、親指及び人差し指の間隔をあける/狭める動作によって達成される」(訳文3ページ31?46行)。
「口操作手段12は、口6の一方側又は両側に設けられている」(訳文8ページ45行)。
「図1及び図2に示される実施形態において、容器は、口の両側のそれぞれにおいて容器の外側に位置する2つのループ14を備えている。ループは、人が容器を開放するためにそれらの指又は親指を引き離し且つ容器を閉鎖するためにそれらをともに押圧することによって容器を開閉することができるのを可能とするために、各ループを介して1本以上の指又は親指が挿入可能なように配置されている。通常、ユーザの親指は、第1のループ14によって受け入れられ、第2のループ14によってユーザの人差し指が受け入れられ、開閉動作は、親指と及び人差し指の間隔をあける/狭めることによるものである」(訳文9ページ3?10行)。
「図10及び図11は、使用動作の第1の段階における図8及び図9の廃棄器具を示している。第1のループ112aは、ユーザの親指130を受け入れ、第2のループ112bは、ユーザの人差し指132を受け入れる」(訳文10ページ17?19行)。
「図12は、シール110を破壊して口106が僅かに開くのを可能とするようにユーザの親指130及び人差し指132が若干分離されている、使用動作における第2の段階を示している。唇部114a、114bは、ここでは、広く開放しており、口106内への汚れた物品の挿入のための案内通路を提供している」(訳文10ページ22?25行)。

以上、甲8には、可撓性袋部材(プラスチック袋)の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部(口操作手段12、又は2つのループ14)を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる、汚れた物品のための容器(容器4)が記載されている。

甲9には、以下の記載がある。
「本発明は、屎尿容器に関し、具体的には、使い捨てフィルム製袋体に関する。この袋体は、2本の指を使用して、袋体を開いて身体オリフィスの周りを密閉した状態で保持し、排泄物、特に人間、とりわけ女性からの尿を直接受け、その後に密閉状態で保持するように設計される」(訳文1ページ7?10行)。
「本発明の目的は、…、2本の指で操作され、容器を開いたまま保持し、かつ、間隙を身体オリフィスの周りに適切に位置決めする装置を提供することである」(訳文1ページ24?29行)。
「本発明の装置は、対向する長側面および上部間隙を有する可撓性防水袋体である。各長側面に1つずつある一対の細長い筒状部材は、上部間隙に隣接する袋体の外面に添着される。開口部は、各筒状部材の少なくとも一端部にあり、かつ、各筒状部材は、内部への指の進入を許容する寸法にされる」(訳文1ページ29?32行)。
「装置がポリオレフィンなどの軟質で薄いプラスチックフィルムから製造される場合、タブは、指が挿入されている間、ユーザが部材の端部を安定に保持することを可能にする。」(訳文1ページ50行?2ページ2行)。
「図1?図4を参照すると、本発明の防水で自己完結型の使い捨て装置1は、上述の通り、片手の2本の指10またはそれぞれの手の1本の指に装着するように構成されている。装置は、上部間隙3および対向する長側面4を有する袋体2を含む」(訳文2ページ14?16行)。
「必要に応じて、環状要素14を開口部に設けることで開口部を開いて保持し、装置の指への装着をさらに容易にすることができる。環状要素は、装置の他の部分が例えばポリエチレンフィルムなどの薄い軟質材料から作られる場合、硬質なプラスチックの細片の形態をとってもよい」(訳文2ページ24?28行)。

以上、甲9には、可撓性袋部材(袋体2)の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々可撓性袋部材に固定された筒状の1対の開閉操作部(硬質なプラスチックの細片の形態をとってもよい環状要素14。FIG.1、FIG.2)を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる、屎尿容器(袋体2)が記載されている。

甲10には、以下の記載がある。
「【技術分野】
本発明は、動脈グラフトに関し、特に、動脈グラフトの準備で使用する装置に関する」(訳文1ページ4?5行)。
「本発明の目的は、包装体の構造を大幅に簡略化し、装置のコストを著しく低減し、装置の使い易さを大幅に改善するなどの改善を提供することであり、ここで、グラフトを形成する処理を片手操作に転換することができるため、これにより、作成者は、グラフト形成処理においてより大きな自由度および柔軟性を有する一方で、使用するグラフトの準備において、依然として無菌状態を維持することができる。」(訳文1ページ13?17行)。
「手段は、壁部が互いに離れる方向へ変位するための袋体の一部として提供され、袋体を開いて内部へアクセスし、グラフトの準備で使用するために血液を導入する間に、袋体を開いたまま保持する。このような手段は、開口端に隣接する袋体の両側部の各々で指環部30またはタブを備える」(訳文2ページ8?11行)。
「図4に示す通り、片手の人さし指および親指で、袋体を開いたまま保持することができ」る(訳文2ページ29?30行)。
「袋体の壁部を貫通しない接合手段を使用して、開口端が連動手段によって密封されるときに、汚染物質が袋体の内部へ侵入する可能性を回避することが好ましい」(訳文2ページ20?22行)。

以上、甲10には、可撓性袋部材(袋体)の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部(指環部30またはタブ。訳文2ページ9?10行、FIG.4)を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる、動脈グラウトの血液用の容器(袋体)が記載されている。

このように、生理用品等の汚れた物品(甲8)、屎尿(甲9)、又は動脈グラフトの血液(甲10)という内容物を収容する可撓性袋部材からなる容器において、「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる」(相違点8)ようにすることは、各証拠に記載されている。
しかしながら、甲8?10の内容物は、いずれも人体から取り出したものという点では共通するが、上記のとおり特殊な分野であり、そのための可撓性袋部材からなる容器も、汎用性のある幅広い内容物を想定したものではない。
したがって、甲8?10により認定しうる点は、一般的な袋の分野でも、経腸栄養法で使用される液状物用の袋の分野でもなく、せいぜい「人体から取り出したものを収容する可撓性袋部材からなる容器」という特殊な分野において、相違点8に係る構成が周知であることにとどまる。

甲2発明は、「経腸栄養法で使用される液状物」を収容するものであり、内容物が「経腸栄養法で使用される液状物」であるために、排出用ポートを有するという、一般的な袋と異なる独特の形態を有している。また、その容量は300?1000ml(甲3の図1、甲4の図1等、甲13の1ページ右側、甲23の140ページ「EDバッグ」、「カンガルー経腸栄養ポンプセット」等)と比較的大容量であり、通常は吊り下げて使用するものである。
他方、甲8?10のものは、両主面に指を挿入するための1対の開閉操作部を含み、手で保持して使用するものではあるが、「人体から取り出したもの」(甲8は「生理用品等の汚れた製品」、甲9は「屎尿用」、甲10は「動脈グラフトの血液」)を収容するという特殊な分野におけるものであるから、比較的小容量であり(例えば、甲9は「屎尿用」ゆえ、100?500mlと解される(甲21のFIG.4、甲32))、目盛りを有さず、本件発明1のように主面の目盛りを見ながら液状物を収容部内に注ぐという使用態様が意図されたものではなく、さらに、排出用ポートも有しない。
このように、容器においては、形態、内容量、使用態様等、内容物に応じた構成を採用している。
それゆえ、「経腸栄養法で使用される液状物」を収容し、排出用ポートを有し、比較的大容量であり、通常は吊り下げて使用する甲2発明の容器の開口部に、「人体から取り出したもの」を収容する特殊な分野のものであり、目盛り、排出用ポートを有さず、手で保持して使用する容器の開口部の構造についての技術(相違点8)を適用することは、想定しがたい。

請求人は、開口操作や開口維持を行うための利便性の観点から、甲8?10の周知技術を適用する動機がある旨、主張する(要領書(2)10ページ6-2-1-2)が、以下のとおり、根拠がない。

本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0010】
本発明は、空の医療用軟質容器への液状物の注入が行い易く、しかも液状物の注入の最中に目盛りが見やすい、医療用軟質容器を提供する。」
「【発明の効果】
【0013】
本発明の医療用軟質容器は、可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を開くことにより前記開口部の開口状態を維持できるので、空の医療用軟質容器への経腸栄養法で使用される液状物の注入が行い易く、しかも前記液状物の注入の最中に目盛りが見やすい。」

すなわち、本件発明1の技術的意義は、「容器への液状物の注入が行い易く、注入の最中に目盛りが見やすい」というものである。
他方、甲2発明は、「収容された液体、例えば経腸栄養剤が変質することなく長期間保存できるとともに、水等の供給時の作業効率が改善」(段落0004)され、「使用に際しては、液体、例えば濃縮経腸栄養剤を収容した室を外部から加圧して、この隔壁4を剥離した後、チャックシール3を開放して、水あるいは温湯を供給し、チャックシール3を閉鎖して混合する」(段落0010)もので、「品質が劣化することなく長期間保存できるとともに、水等を供給の際の手間が省ける」(段落0011)ものである。
すなわち、甲2発明の技術的意義は、「経腸栄養剤が変質することなく長期間保存できるとともに、水等の供給時の作業効率を改善」するものであって、本件発明1のように、目盛りを見つつ注入を行うものではない。さらに、甲2発明は、チャックシール3の開閉も、水等を供給する際の一回限りである。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、技術的意義が異なることに加え、甲2発明は、開閉動作を頻繁に行うものではないから、甲2発明と内容物の異なる、甲8?10の特殊な分野における周知技術を適用する動機があるとは認められない。

相違点8を、容易想到とすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点8は容易想到でないから、相違点9について検討するまでもなく、本件発明1を、甲2発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

5.本件発明3?6
本件発明3?6は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるから、同様の理由により、甲2発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

6.小括
よって、無効理由2によっては、本件発明1、3?6に係る特許を無効にすることはできない。

第7.無効理由3(29条2項、甲3)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1等は、明細書及び図面の記載からみて、上記第2のとおりと認める。

2.甲3
甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、例えば各種の疾病患者に、いわゆる経管栄養法により栄養補給をする場合などに用いる栄養剤バッグに関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、必要時に、例えばバッグに栄養剤等を注入する際に、容易に高密開閉が可能であり、また開口部に関しては使用するまで無菌状態を維持し、尚且つ容易に製造することができる栄養剤バッグを提供することを目的とする。また、衛生上繰り返し使用をしない限り、微生物汚染を避けることができる安価な栄養剤バッグを作製することを目的とする。」

「【0012】
上記のようにバッグ本体内の収容室の上部に設けたチャックシール等の閉鎖手段とバッグ本体の上部の吊り下げ部との間に、上記閉鎖手段の開放操作用の開口部を形成するための開封手段を設けたことによって、例えば上記収容室内に収容した栄養剤に水や温湯等を注入するために上記閉鎖手段を開く際には、上記開封手段で閉鎖手段開放操作用の開口部を形成し、その開口部から上記閉鎖手段を開放することができる。そのため、上記閉鎖手段を開くまでは、その上部を密閉した状態に維持することが可能となり、上記閉鎖手段の上部に塵埃や細菌等が蓄積して閉鎖手段を開くことによって上記収容室内に、それらの塵埃や細菌等が進入するのを未然に防止することができる。」

「【0016】
図示例の栄養剤バッグBは、内部に栄養剤を収容する収容室10を有するバッグ本体1と、そのバッグ本体1の下部に設けられた上記栄養剤流出用の出口栓体2とを有し、そのバッグ本体1の上部には、該バッグ本体を吊り下げるための吊り下げ部としての吊り下げ穴3と、上記収容室10の上部に設けられた高密開閉可能なチャックシール等の閉鎖手段4と、その閉鎖手段4を常時はほぼ完全無菌状態に維持し、上記閉鎖手段4を開放する際には、その上部に開放操作用の開口部を形成するための開封手段(オープンピール機構)5と、上記収容室10内に収容した栄養剤が上記閉鎖手段4側に移動するのを防止すると共に上記閉鎖手段4を開放したときには容易に剥離可能な易剥離性シール部6とが設けられている。
【0017】
上記バッグ本体1は、図2に示すように前後一対のシート材1a・1bの周縁部を溶着等で気密・水密に接合することによって、その周囲の接合部11の内方に中空部を有する袋状に形成すると共に、その中空袋状のバッグ本体1の下部中央部の接合部11に、上記出口栓体2を構成する合成樹脂等よりなる筒状体を貫通させた状態で溶着等により一体的に固着した構成であり、上記中空部を栄養剤を収容する収容室10としたものである。
【0018】
上記バッグ本体1を構成する上記各シート材1a・1bおよび上記出口栓体2を構成する筒状体等の材質は適宜であり、とりわけ上記シート材1a・1bの原料としては軟質包材に、また上記筒状体等の原料は栓体にそれぞれ適しているものであれば特に限定されるものではない。また、必要に応じて上記各原料に、例えば酸素バリア性や遮光性等を付与するために金属等のフィルムを積層したり、酸化物等からなる膜を形成することも可能である。
【0019】
さらに上記バッグ本体1を構成するシート材1a・1bの原料特性としては、例えば透明性、対候性、対ピンホール特性、引張強度、対衝撃性、対薬品性を充分に持つものが望ましい。また上記各シート材1a・1bは単層もしくは多層に積層したもののいずれでもよい。多層構成のシート材としては、例えばポリアミドまたはナイロンと、低密度ポリエチレンと、リニアローデンポリエチレンと、シーラント層との4層構成のものを用いることができる。上記シーラント層の素材としては、ヒートシール性が良好であり、かつイージーピール機構を有する素材を使用するのが望ましい。」

「【0022】
上記閉鎖手段4を開放する際に、その上部に開放操作用の開口部を形成するための開封手段5は、本実施形態においては図2(a)に示すように前側のシート材1aの背面側に上下一対のハーフカット溝51・51を形成し、その両ハーフカット溝51・51間の帯状部分50を上記ハーフカット溝51・51に沿って切除する構成である。
【0023】
上記両ハーフカット溝51・51の一端側(図の場合は図1において左側)には、その両ハーフカット溝51・51に連続してC字状の切り込み52を上記前側のシート材1aに形成することによって、上記帯状部分50に連続する把持用のノッチ部50aが帯状部分50と一体に形成されている。また上記両ハーフカット溝51・51の他端側は漸次接近して1点に収束するように構成されている。
【0024】
上記ノッチ部50aを指等で摘んで、それと一体に設けた上記帯状部分50を上記ハーフカット溝51・51に沿って切除することによって、上記ノッチ部50aおよび帯状部分50が前側のシート材1aから分離されて、図2(b)および図3に示すように上記閉鎖手段4の上方の前側のシート材1aにスリット状の開口部Sが形成されるように構成されている。」

「【0031】
上記のように構成された栄養剤バッグを用いて経管栄養法により患者等に栄養剤を供給するに当たっては、例えば上記バッグ内に経管栄養剤が予め充填されているタイプでは、その状態で持ち運んだり、支持スタンド等に吊り下げ保持させる。・・・。」

「【0033】
次に、上記のように支持スタンド等に栄養剤バッグを吊り下げ保持させた状態で、前記開封手段5により閉鎖手段4の上部に、前記図2(b)および図3のように開放操作用の開口部Sを形成し、その開口部Sから図2(c)のように閉鎖手段4を開放すると共に、その閉鎖手段4の下側に易剥離性シール部6を設けた場合には、そのシール部6も剥離して開封する。そして上記開口部Sから水や温湯を注入して上記栄養剤を液状にして前記出口栓体2から不図示のチューブ等を介して対象者の胃や腸に送るものである。
【0034】
また例えば上記バッグ内に経管栄養剤を病院等で充填して使用するタイプの場合は、上記バッグを支持スタンド等に吊り下げた状態で出口栓体2から経管栄養剤を注入する。その際、上記実施形態においては上記閉鎖手段4の下側に前記の易剥離性シール部6があるので上記バッグ内の栄養剤が閉鎖手段4側に移動することはない。そして上記バッグを上記のように支持スタンド等に吊り下げた状態で上記出口栓体2に不図示のチューブ等を接続して上記バッグ内に収容した栄養剤を対象者の胃や腸に送る。
【0035】
次いで、上記バッグ内に栄養剤を追加したり、別の栄養剤や水や温湯を注入する場合などに、吊り下げ穴3等の吊り下げ部を利用して支持スタンド等に吊り下げ保持させ、上記と同様に開封手段5により閉鎖手段4の上部に、その開放操作用の開口部Sを形成し、その開口部Sから上記閉鎖手段4を開放すると共に、その閉鎖手段4の下側に易剥離性シール部6を設けた場合には、そのシール部6も剥離して開封する。そして上記開口部Sから追加供給する液状の栄養剤等を投入して出口栓体2から不図示のチューブ等を介して対象者の胃や腸に送るものである。」

「【0037】
なお、前記吊り下げ穴3等の吊り下げ部は、前記図1のようにバッグ本体1の上部中央部に設けると共に、バッグ本体下部の左右両側には、図示例のように凹部7を形成し、それに対応して前記接合部11の一部が図のように収容室10側に突出するように構成するとよい。そのように構成すると、栄養剤バッグを上記吊り下げ部により支持スタンド等に吊り下げ保持させたときの該栄養剤バッグの形状が変動することなく常時ほぼ一定にすることができる。その結果、バッグ本体下部の出口栓体2から流出する栄養剤の流量が変動することなく安定よく流出させることが可能となると共に、バッグ本体1に形成した容量や残量を表す目盛8と、実際の容量や残存量との誤差が少なくなって、より精度の高い目盛り表示が可能となる。」

「【0045】
・・・、栄養剤バッグを通常吊り下げる支持スタンド等の高さ位置(約180cm)・・・。」

「【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように本発明によれば、栄養剤バッグのバッグ本体上部の吊り下げ部との間に、上記閉鎖手段の開放操作用の開口部を形成するための開封手段を設けたことによって、常時は閉鎖手段の上部を密閉した状態で塵埃や細菌等が進入するのを防止し、閉鎖手段を開放するときのみ閉鎖手段の上部に開口部を形成して上記閉鎖手段を開くことによって、上記栄養剤バッグ内に塵埃や細菌等が進入するのを可及的に低減することが可能となるもので、この種の栄養剤バッグの衛生管理が容易となって信頼性が向上する。その結果、この種の栄養剤バッグの使用の態様や選択の自由度ならびに産業上の利用可能性を高めることができるものである。」

「バッグ本体1は、・・・前後一対のシート材1a・1bの周縁部を溶着等で気密・水密に接合」(段落0017)して形成するものであり、図1とを併せみると、バッグ本体1が平袋状であることは明らかである。

甲3には、以下の発明(甲3発明)が記載されている。なお、甲3発明の認定につき、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-5-1、被請求人要領書(1)の(5)丸1)。
「例えばポリアミドまたはナイロンと、低密度ポリエチレンと、リニアローデンポリエチレンと、シーラント層との4層構成のシート材1a・1bが接合されることにより形成され、開放操作用の開口部Sと、経管栄養法により栄養補給をする栄養剤を収容するための収容室10とを含み、一方の主面に栄養剤の容量や残量を表す目盛8が表示された平袋状のバッグ本体1と、
前記バッグ本体1に固定された出口栓体2と、
前記バッグ本体1の上部に設けられたチャックシール等の閉鎖手段4を含み、
前記閉鎖手段4を開放して前記開口部Sを開放できる
栄養剤バッグ。」

3.本件発明1と甲3発明との対比
甲3発明の「例えばポリアミドまたはナイロンと、低密度ポリエチレンと、リニアローデンポリエチレンと、シーラント層との4層構成のシート材1a・1bが接合されることにより形成」は本件発明1の「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼り合わされることにより形成」に相当し、同様に「開放操作用の開口部S」は「開閉式の開口部」に、「経管栄養法により栄養補給をする栄養剤」は「経腸栄養法で使用される液状物」に、「収容室10」は「収容部」に、「栄養剤の容量や残量を表す目盛8」は「液状物の量を示す目盛り」に、「バッグ本体1」は「可撓性袋部材」に、「出口栓体2」は「排出用ポート」に、「バッグ本体1の上部に設けられた」は「開口部に固定されている」に、「栄養剤バッグ」は「医療用軟質容器」に、相当する。
甲3発明の「チャックシール等の閉鎖手段4」と本件発明1の「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部」とは、「開閉操作部」である限りにおいて一致する。

本件発明1と甲3発明とは、以下で一致する。
「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され、開閉式の開口部と、経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部とを含み、少なくとも一方の主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示された平袋状の可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、
前記可撓性袋部材に固定された開閉操作部を含み、
前記開閉操作部は、各々、前記開口部に固定されている
医療用軟質容器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点10:本件発明1は「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、一方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の一方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指と、他方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の他方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指以外の指とを開くことにより前記開口部の開口状態を維持できる」ものであるが、甲3発明は「チャックシール等の閉鎖手段4を開放して前記開口部Sを開放できる」ものである点。
相違点11:本件発明1は「可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側の側部の辺が曲がっていることによって、前記可撓性袋部材の前記開口部の幅が前記収容部の幅よりも狭くなっている」が、甲3発明はそのようなものでない点。

なお、一致点、相違点について、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-5-1、被請求人要領書(1)の(5)丸1)。

4.判断
上記第6の4.(2)のとおり、「人体から取り出したものを収容する可撓性袋部材からなる容器」という特殊な分野において、「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる」(相違点10)ようにした可撓性袋部材は、周知である。

甲3発明は、「経腸栄養法で使用される液状物」を収容するものであり、内容物が「経腸栄養法で使用される液状物」であるために、目盛り、排出用ポートを有するという、一般的袋と異なる独特の形態を有している。また、その容量は300?1000ml(甲3の図1、甲4の図1等、甲13の1ページ右側、甲23の140ページ「EDバッグ」、「カンガルー経腸栄養ポンプセット」等)と比較的大容量であり、目盛りを見やすくするため、吊り下げて使用するものである。
他方、甲8?10のものは、両主面に指を挿入するための1対の開閉操作部を含み、手で保持して使用するものではあるが、「人体から取り出したもの」(甲8は「生理用品等の汚れた製品」、甲9は「屎尿用」、甲10は「動脈グラフトの血液」)を収容するという特殊な分野におけるものであるから、比較的小容量であり(例えば、甲9は「屎尿用」ゆえ、100?500mlと解される(甲21のFIG.4、甲32))、目盛りを有さず、本件発明1のように主面の目盛りを見ながら液状物を収容部内に注ぐという使用態様が意図されたものではなく、さらに、排出用ポートも有しない。
このように、容器においては、形態、内容量、使用態様等、内容物に応じた構成を採用している。
それゆえ、「経腸栄養法で使用される液状物」を収容し、排出用ポートを有し、比較的大容量であり、目盛りを見やすくするため、吊り下げて使用する甲3発明の容器の開口部に、「人体から取り出したもの」を収容する特殊な分野のものであり、目盛り、排出用ポートを有さず、手で保持して使用する容器の開口部の構造についての技術(相違点10)を適用することは、想定しがたい。

請求人は、開口操作や開口維持を行うための利便性の観点から、甲8?10の周知技術を適用する動機がある旨、主張する(要領書(2)10ページ6-2-1-2)が、以下のとおり、根拠がない。
本件発明1の技術的意義は、上記第6の4.(2)のとおり、「容器への液状物の注入が行い易く、注入の最中に目盛りが見やすい」というものである。
他方、甲3発明は、「容易に高密開閉が可能であり、また開口部に関しては使用するまで無菌状態を維持し、尚且つ容易に製造することができ」(段落0010)、「支持スタンド等に吊り下げ保持させ」(段落0031、0033、0034、0035)、「栄養剤バッグ内に塵埃や細菌等が進入するのを可及的に低減する」(段落0050)ものである。
すなわち、甲3発明の技術的意義は、「無菌状態の維持」であって、本件発明1のように、目盛りを見つつ注入を行うものではない。さらに、甲3発明は、吊り下げによる安定した状態で、チャックシール等の開閉がなされる。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、技術的意義が異なることに加え、甲3発明は、吊り下げによる安定した状態で開閉がなされるから、甲3発明と内容物の異なる、甲8?10の特殊な分野における周知技術を適用する動機があるとは認められない。

相違点10を、容易想到とすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点10は容易想到でないから、相違点11について検討するまでもなく、本件発明1を、甲3発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

5.本件発明3?6
本件発明3?6は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるから、同様の理由により、甲3発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

6.小括
よって、無効理由3によっては、本件発明1、3?6に係る特許を無効にすることはできない。

第8.無効理由4(29条2項、甲14)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1等は、明細書及び図面の記載からみて、上記第2のとおりと認める。

2.甲14
甲14は、図面とともに以下の事項が記載されている。

「 The present invention relates to a liquid container. More particularly, the present invention relates to a disposable liquid container that includes an outer flexible bag in which the liquid is accumulated and an inner flexible member that is secured to the upper portion of the outer flexible bag and that defines a one-way valve for controlling entry of liquid into the outer bag.」
(1欄12?18行)

「本発明は、液体容器に関する。より具体的には、本発明は、液体を内部に蓄積させる外側の可撓性の袋と、当該外側の可撓性の袋の上方部に固定されて、この外側の袋の中に向かう液体の流入を制御するための一方向弁を画定する内側の可撓性部材とを含む、使い捨て型の液体容器に関する」(訳文1ページ10?15行)。

「 As shown in FIGS. 1 and 2, the liquid container 10 includes an elongated outer bag 12 that is formed of a flexible plastic material that is essentially tubular in construction. The tubular construction of the flexible bag 12 defines opposed walls 14 and 16, the wall 14 defining the front of the flexible bag 12, and the wall 16 defining the rear of the bag 12. The material from which the flexible bag 12 is constructed is preferably of inexpensive plastic material, such as; polyethylene.」
(2欄71行?3欄8行)

「図1及び図2に示しているように、液体容器10は細長い外側の袋12を含むが、これは基本的にチューブ状の構成を有する、可撓性のプラスチック材料を用いて形成されている。可撓性の袋12のチューブ状の構造は対向する壁14及び16からなり、このうち壁14は可撓性の袋12の前方を定めて、壁16は袋12の後方を定める。可撓性の袋12を構成する材料は、たとえばポリエチレンなどの安価なプラスチック材料が好ましい」(訳文2ページ36?41行)。

「 The lower end of the flexible bag 12 is sealed so as to form a closed bottom for the container 10. However, the lower end or bottom of the bag 12 is also designed to provide for discharge of the liquid within the container and for this purpose is provided with a discharge plug 18.」
(3欄19?23行)

「可撓性の袋12の下方端部は、容器10に閉口した底を形成するように密閉される。しかしながら、袋12の下方端部または底は、容器内の液体の放出を行えるようにも構成され、この目的のために放出用プラグ18を備えている」(訳文2ページ49行?3ページ1行)。

「 When a liquid is introduced into the liquid container, the mouth of the outer bag 12 and the inner bag member 32 must be open and since the materials from which the bags are formed are of a flexible plastic some means must be provided for fixing the mouths in an open position so as to prevent the collapsing thereof during the filling operation.」
(4欄20?26行)

「液体容器内に液体が導入されるとき、外側の袋12の口と内側の袋の部材32は開口していなければならないが、これら袋を形成する材料は可撓性のプラスチックであるため、給液操作中にそれらの口が倒れるのを防ぐように、それらの口を開口位置で固定するための何らかの手段が必要とされる」(訳文3ページ45?48行)。

「 The bendable wire elements 48 are movable to the fixed open position and will remain in this position after pressure is removed therefor since they are formed of a material that does not have spring characteristics. Thus when it is required to move the mouth of the bag and inner member 32 to the closed position, a positive pressure is applied to the wire elements 48 to return them to their closed position.」
(4欄47?55行)

「湾曲可能のワイヤ素子48は固定された開口位置へと移動可能だが、これらは弾性特性を有さない材料から形成されているため、圧力が取除かれた後もこの位置で留まり続ける。従って、袋の口と内側部材32を閉口位置に移動することが求められるとき、ワイヤ素子48に対して有効な圧力を及ぼして、これらを閉口位置へと戻すようにする」(訳文4ページ10?15行)。

「 As opening 53 may be formed in the cardboard 54 and similar openings 57 may be formed in the walls 55, 56 for suspending the container 10 from a hook, support or the like.
As seen in FIG. 1, the opening 53 in the cardboard header 55 defines an area of weakness at the center of the header.」
(5欄31?37行)

「厚紙54には開口部53を形成してもよく、かつ壁55、56にも同様の開口部57を形成して、これらによって容器10をフック、支持部または同様物に吊せるようにしてもよい。
図1から理解できるように、厚紙のヘッダ55の開口部53はヘッダの中央に虚弱領域を画定する。従って、ヘッダの端部が容器の前方に向かう方向で押圧されるとき、ヘッダは虚弱領域として画定された中央で湾曲する」(訳文4ページ45?50行)。

「 As further shown in FIG. 1, the flexible bag 12 may contain calibrations 62 there on that represent the amount of liquid contained in the bag. The liquid introduced within the flexible bag 12 would then be measurable at a glance since the material from which the bag is formed is of a clear plastic.」
(5欄45?50行)

「さらに図1に示しているように、可撓性の袋12は、袋内に収容される液体の量を示すための目盛62をその上に備えていてもよい。従って、袋の材料は透明なプラスチックから形成されているため、可撓性の袋12内に導入される液体は一目で測定可能になる」(訳文5ページ3?6行)。

「 It is contemplated that the liquid receiving container embodied herein may be used for a variety of purposes, such as an enema bag, a barium administration unit, a bag for feminine hygiene, gastric feeding unit, trans-urethral set-up, intravenous feeding unit, bladder irrigation unit, urinal collection bag, liquid storage bag and other similar devices. As discussed above, the bag may be disposed of after one use thereof, or, if necessary, the bag may be reused as desired.」
(6欄1?9行)

「なお、ここで示した液体を受入れる容器は様々な目的のために用いることができ、たとえば、浣腸用の袋、バリウム投与装置、女性用の衛生用の袋、経胃栄養装置、経尿道の準備、静脈内の供給装置、袋状の洗浄装置、蓄尿袋、液体保管袋、及び他の同様の装置を想定することができる」(訳文5ページ19?22行)。

甲14には、以下の発明(甲14発明)が記載されている。なお、甲14発明の認定につき、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-6-1、被請求人要領書(1)の(6)丸1)。
「対向する壁14及び16からなるポリエチレンなどのプラスチック材料により形成され、開口部53と、経胃栄養装置等様々な目的のための液体を蓄積させる可撓性のチューブ状の袋12とを含み、可撓性の袋12の主面に袋内に収容される液体の量を示す目盛り62が表示された可撓性の袋12と、
前記可撓性の袋12に固定された放出用プラグ18と、
前記可撓性の袋12に固定され、可撓性の袋12の口を開口位置と閉口位置に移動される湾曲可能なワイヤ素子48とを含み、
ワイヤ素子48は固定された開口位置へと移動し、開口位置で留まり続ける、
液体容器10。」

3.本件発明1と甲14発明との対比
甲14発明の「対向する壁14及び16からなるポリエチレンなどのプラスチック材料により形成」は本件発明1の「軟質プラスチックシートが貼り合わされることにより形成」に相当し、同様に「経胃栄養装置等様々な目的のための液体」は「経腸栄養法で使用される液状物」に、「蓄積させる」は「収容する」に、「放出用プラグ18」は「排出用ポート」に、「ワイヤ素子48は固定された開口位置へと移動し、開口位置で留まり続ける」は「開口部の開口状態を維持でき」に、「液体容器10」は「医療用軟質容器」に、相当する。
甲14発明の「可撓性のチューブ状の袋12」と、本件発明1の「少なくとも2枚の」「シートが貼りあわされることにより形成され」る「可撓性袋部材」とは、「可撓性袋部材」である限りにおいて一致する。

本件発明1と甲14発明とは、以下で一致する。
「少なくとも2枚の軟質プラスチックシートにより形成され、開閉式の開口部と、経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部とを含み、少なくとも一方の主面に前記液状物の量を示す目盛りが表示された可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、
前記開閉操作部は、各々、前記開口部に固定されており、
前記開口部の開口状態を維持できる医療用軟質容器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点12:可撓性袋部材について、本件発明1は「少なくとも2枚の」「シートが貼りあわされることにより形成され」る「平袋状」のものであるが、甲14発明は「チューブ状の袋12」である点。
相違点13:開閉操作部について、本件発明1は「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための上縁部及び下縁部が固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、一方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の一方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指と、他方の前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の他方の主面との間に挿入した前記片手の指の親指以外の指とを開く」ものであるが、甲14発明は「可撓性の袋12の口を開口位置と閉口位置に移動される湾曲可能なワイヤ素子48」で「ワイヤ素子48は固定された開口位置へと移動し、開口位置で留まり続ける」ものである点。
相違点14:本件発明1は「可撓性袋部材の両側部のうちの、前記開閉操作部と前記可撓性袋部材の主面との間に前記片手の指が挿入される側の側部の辺が曲がっていることによって、前記可撓性袋部材の前記開口部の幅が前記収容部の幅よりも狭くなっている」が、甲14発明はそのようなものでない点。

なお、一致点、相違点について、当事者間に争いはない(請求人要領書(1)6-6-1、被請求人要領書(1)の(6)丸1)。

4.判断
(1)相違点12
上記第5の4.(1)のとおり、可撓性袋部材を、2枚の軟質プラスチックシートの貼りあわせにより形成することは、甲2?4にみられるごとく周知技術である。
甲14発明は、「チューブ状の袋」の形成手段が明らかでないところから、「チューブ状の袋」に代えて、かかる周知の可撓性袋部材の形成手段を適用し、相違点12に係るものとすることに、困難性は認められない。

(2)相違点13
上記第6の4.(2)のとおり、「人体から取り出したものを収容する可撓性袋部材からなる容器」において、「可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより開口部の開口状態を維持できる」(相違点13)ようにした可撓性袋部材は、周知である。
甲14発明の開閉操作部は「可撓性の袋12の口を開口位置と閉口位置に移動される湾曲可能なワイヤ素子48」である。これは、開口位置、閉口位置それぞれの位置に留まり続け、開口状態、閉口状態の維持が可能という技術的意義を有し、甲14発明の特徴である。
他方、上記周知技術は、指の開閉により、開口状態、閉口状態を維持するものである。
してみると、ワイヤ素子によって開口状態、閉口状態の維持が可能であるところの甲14発明に、あえて、かかる周知技術を適用する必然性はない。かえって、周知技術の適用により、指で状態を維持し続ける必要が生じ、利便性が損なわれるおそれもある。

相違点13を、容易想到とすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点13は容易想到でないから、相違点14について検討するまでもなく、本件発明1を、甲14発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

5.本件発明3?6
本件発明3?6は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるから、同様の理由により、甲14発明、周知技術B、Cに基づき、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

6.小括
よって、無効理由4によっては、本件発明1、3?6に係る特許を無効にすることはできない。

第9.無効理由5(17条の2、3項)についての当審の判断
開閉操作部に関し、本件出願当初明細書等(甲16)には、以下の記載がある。

「【請求項1】
・・・、可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、
前記可撓性袋部材の両主面の各々に固定され、固定された前記軟質プラスチックシートとの間に、前記可撓性袋部材の右側または左側から指を挿入するための貫通路を形成する1対の開閉操作部と、を含むことを特徴とする医療用軟質容器。」

「【0010】
本発明は、空の医療用軟質容器への液状物の注入が行い易く、しかも液状物の注入の最中に目盛りが見やすい、医療用軟質容器を提供する。
【0011】
本発明の医療用軟質容器は、少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され、開閉式の開口部と、液状物を収容するための収容部とを含み、少なくとも一方の主面に液状物の量を示す目盛りが表示された、可撓性袋部材と、前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、前記可撓性袋部材の両主面の各々に固定され、固定された前記軟質プラスチックシートとの間に、前記可撓性袋部材の右側または左側から指を挿入するための貫通路を形成する1対の開閉操作部と、を含むことを特徴とする。」

「【0013】
本発明の医療用軟質容器は、可撓性袋部材の両主面の各々に固定され、固定された軟質プラスチックシートとの間に、開口部の右側または左側から指を挿入するための貫通路を形成する開閉操作部を備えているので、空の医療用軟質容器への液状物の注入が行い易く、しかも液状物の注入の最中に目盛りが見やすい。」

「【0018】
可撓性袋部材2は、例えば、2枚の軟質プラスチックシート2a,2bを重ね、それらの外周縁部を相互に熱接着(ヒートシール)させることにより形成される。軟質プラスチックシート2aの主面の外側面には、可撓性袋部材2内に注入される液状物の量を確認するための目盛り2cが表示されている。以下、目盛り2cが表示された軟質プラスチックシート2aの主面、すなわち、可撓性袋部材2内に液状物が充填される際に、充填操作を行う作業者と向かい合う面を正面と称することとし、この正面を基準に左右の位置関係を説明する。可撓性袋部材2内に液状物が充填される際、開口部4は収納部21よりも上に位置する。」

「【0023】
このように、開口部4に開閉操作部5a,5bが固定されていると、片方の貫通路7aに親指を、他方の貫通路7bに親指以外の指(例えば、人差し指)を挿入し、親指と人差し指とを各々遠ざけ、各々の指を開閉操作部5a,5bの内面に押し付けることにより、開口部4を構成する軟質プラスチックシート2a,2bを相互に引き離せば、図3に示されるように、開口部4が開口した状態を片手で維持できる。また、親指と人差し指は、貫通路7a,7b(図2B参照)内に挿入されていることから、開口部4について開いた状態を安定かつ容易に維持できる。・・・。
【0024】
開閉操作部5a,5bの固定位置は、開口部4について開口した状態を維持できれば特に制限はないが、開口部4がジップ4aを備える場合、片手による開閉操作部5a,5bの操作によりジップ4aの係合が解除可能であると好ましい。・・・。即ち、1対の開閉操作部5a,5bは、各軟質プラスチックシート2a,2bとの間に、開口部4の右側または左側から指を挿入するための貫通路7a,7bを形成していると好ましい。・・・。
【0025】
開閉操作部5a,5bの上下方向の幅W1(上縁部51a,52aと下縁部51b、52bとの間の距離、図2A、図2B参照)は、指を挿入しやすく、片手による開閉操作部5a,5bの操作が可能であれば特に制限はない。
【0026】
開閉操作部5a,5bの左右方向の幅W2(図2A参照)は、片手による開閉操作部5a,5bの操作が可能であれば特に制限はないが、例えば、20mm?60mmであると好ましい。・・・。」

上記のとおり、開閉操作部は、「可撓性袋部材の正面を基準に」(段落0011、0018)「右側または左側から指を挿入するため」(請求項1、段落0013)のもので、片手の親指と人差し指が挿入され開閉操作され(段落0023?0026)、「貫通路7a,7bを形成していると好ましい」(段落0024)ものである。
また、本件当初明細書等における本件発明の課題は、「液状物の注入が行い易く、しかも液状物の注入の最中に目盛りが見やすい」(段落0010、0013)というものである。
すなわち、当初明細書等の記載によれば、開閉操作部は、可撓性袋部材の正面を基準に、右側または左側から親指と人差し指を挿入し、片手で開閉操作されるもの、すなわち両手で操作する必要がないものであるから、その機能・作用を鑑み、加えて、本件発明の課題に照らしても、開閉操作部が「貫通路」である必然性はなく、「貫通路」が「好ましい」例にとどまることは明らかである。
したがって、「貫通路を形成する」を削除する、平成25年12月2日付け手続補正は、当業者によって当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものではない。

請求人は、「本件補正が貫通路によって構成されない開閉操作部を明細書に加入するものであるとするなら」(請求人要領書(1)18ページ6-7-3)との前提のもと、無効理由5を主張する。
しかし、「貫通路によって構成されない開閉操作部」が、本件発明1に含まれるか否かは、技術的範囲の解釈の問題であって、無効理由5とは別論である。

よって、無効理由5によっては、本件発明1に係る特許を無効にすることはできない。

第10.無効理由6(36条6項1号)についての当審の判断
開閉操作部に関し、本件特許明細書等には、以下の記載がある。

「【0011】
本発明の医療用軟質容器は、少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成され、開閉式の開口部と、経腸栄養法で使用される液状物を収容するための収容部とを含み、少なくとも一方の主面に液状物の量を示す目盛りが表示された可撓性袋部材と、前記可撓性袋部材に固定された排出用ポートと、前記可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための、上縁部及び下縁部が各々前記軟質プラスチックシートに固定されたシート状の1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を各々遠ざけるように開くことにより前記開口部の開口状態を維持できることを特徴とする。」

「【0013】
本発明の医療用軟質容器は、可撓性袋部材の両主面の各々に前記可撓性袋部材の右側または左側から片手の指を挿入するための1対の開閉操作部を含み、前記開閉操作部に挿入した片手の指を開くことにより前記開口部の開口状態を維持できるので、空の医療用軟質容器への経腸栄養法で使用される液状物の注入が行い易く、しかも前記液状物の注入の最中に目盛りが見やすい。」

【0018】、【0023】?【0026】
上記第9.で摘記した記載に同じ。

以上、「右側または左側から指を挿入するため」の「開閉操作部」が特許明細書等に記載されていることは明らかである。
本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されており、本件特許請求の範囲の記載は、36条6項1号に適合する。

よって、無効理由6によっては、本件発明1に係る特許を無効にすることはできない。


第11.むすび
以上のとおりであるから、請求人主張の理由及び証拠方法によっては、本件発明1、3?6に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-08 
結審通知日 2017-03-13 
審決日 2017-03-29 
出願番号 特願2013-248963(P2013-248963)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A61J)
P 1 123・ 55- Y (A61J)
P 1 123・ 537- Y (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 賢一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 千葉 成就
関谷 一夫
登録日 2015-06-26 
登録番号 特許第5765408号(P5765408)
発明の名称 医療用軟質容器及びそれを用いた栄養供給システム  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  
代理人 白波瀬 文夫  
代理人 白波瀬 文吾  
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