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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D |
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管理番号 | 1342782 |
審判番号 | 不服2017-18472 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-12 |
確定日 | 2018-08-02 |
事件の表示 | 特願2015-182297「収容ユニット及び温度管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 40466〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年 9月15日(優先権主張 平成27年 8月21日)に出願された特願2015-182297号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成28年10月28日付け:拒絶理由通知 平成29年 2月21日 :意見書 平成29年 2月21日 :手続補正書 平成29年 4月27日付け:拒絶理由通知 平成29年 8月29日 :意見書 平成29年 8月29日 :手続補正書 平成29年10月27日付け:拒絶査定 平成29年12月12日 :審判請求 平成30年 1月10日付け:拒絶理由通知 平成30年 3月 5日 :意見書 平成30年 3月 5日 :手続補正書 平成30年 3月20日付け:拒絶理由通知 平成30年 4月27日 :意見書 平成30年 4月27日 :手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 所定の空間に収容された状態で、車載機又は運転手が所持する運転手端末である外部装置と通信可能な収容ユニットであって、 断熱性を有する収容部と、 前記収容部の内部温度を測定する温度測定部と、 輸送中において、前記温度測定部が測定した、前記内部温度の異常を判定するための温度情報と、前記収容部を特定するための識別情報とを、前記外部装置へ送信する送信部と、 を備えることを特徴とする収容ユニット。」 第3 拒絶の理由 平成30年 3月20日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 本願請求項1ないし19に係る発明は、その出願前(優先日前)日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2004-269178号公報 2.特開平3-181767号公報 3.特開昭63-254370号公報 4.特開平11-201633号公報 5.特開平7-318215号公報 6.特開2003-254650号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1(特開2004-269178号公報)の記載事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「【0035】 【発明の実施の形態】 〔本実施形態における物流の概略〕 本発明の一実施形態に係る物流サイクルの情報管理システムの概略を、図5に示す。 ここに示す物流サイクルでは、まず、物品30を収容した保冷庫1が、搬送用車輌301のコンテナ302内に収納され(図4)、供給元であるカミサリー101から供給先である店舗201に向けて搬送される。搬送用車輌301が店舗201に到着すると、当該店舗201に配送すべき保冷庫1が、搬送用車輌301から下ろされる。そして、この店舗201において保冷庫1に収容されていた物品30が消費された時又は一定の契約時間が終了した時に、保冷庫1の回収が行われる。回収は、保冷庫1を搬送用車輌301に積載して、カミサリー101へと運ぶことにより行われる。」 「【0038】 図1に示すように、保冷庫1は、構造的には、筐体2と、筐体2の前面に開閉自在に取り付けられるドア3と、筐体2の下面に取り付けられる移動用のキャスター部4とから構成されている。また、保冷庫1は、各種情報を表示するための表示パネル5、電源供給を受けるための電源レセプタクル6、制御部10などを備えており、各保冷庫1には、外部から視認できるような位置に、固有な識別データBを示すバーコード11が貼り付けられている。 【0039】 <筐体> 筐体2は、断熱性の高い材料で構成されており、ドア3を閉止した場合に内部が気密状態を維持するように構成される。図2に示すように、筐体2の内部は、物品を収納するための収納用空間7となっている。また、筐体2の内部には、収納用空間7を低温に維持するための蓄冷剤8が設けられている。さらに、収納用空間7の上部には、蓄冷剤8を冷却するための圧縮機9等が設けられている。」 「【0045】 圧縮機9は、制御部10に対して圧縮機駆動部21を介して接続されており、圧縮機駆動部21による動作制御により、冷媒を介して蓄冷剤8の冷却を行う。 温度センサ18は、庫内温度を計測するためのものであり、収納用空間7に配置されている。検出した庫内温度値は、庫内温度の時系列データとして、庫内温度履歴記憶部15cに記憶されることになる。庫内温度履歴記憶部15cには、このように庫内温度履歴情報が記憶されていくが、カミサリー通信ユニット110経由で情報管理センター401の管理コンピュータ401aへと庫内温度履歴情報を送った後には、庫内温度履歴記憶部15cからそれまでの庫内温度履歴情報が消去される。」 「【0058】 搬送用車輌301には、保冷庫1の保冷庫通信装置13と通信可能な車載通信ユニット310が搭載されている。この車載通信ユニット310は、保冷庫1の保冷庫通信装置13との近距離通信が可能な無線通信装置を備えており、保冷庫通信装置13から送信される異常通報や庫内温度情報などを受信することが可能となっている。また、車載通信ユニット310は、PHSや携帯電話などの無線通信機能を備える構成とすることも可能である。この場合、保冷庫通信装置13から送信されてくる情報に基づいて、情報管理センター401などに異常発生の通報を送信することが可能となる。また、PHSや携帯電話の位置情報提供サービスを利用すれば、車載通信ユニット310が搬送用車輌301の現在位置を取得して異常通報とともに保冷庫1の現在位置情報を同時に送信するように構成することも可能である。」 「【0071】 例えば、図12に示すフローの場合には、保冷庫#1と保冷庫#2とが、互いに近接して配置されている状態を想定している。そして、図12では、管理データAを、保冷庫#1ではなくて保冷庫#2に送信したいという場合を考える。この場合には、データ設定装置22のバーコード読み取り部28が、保冷庫#2に張り付けられているバーコード11を読み取る。これにより、データ設定装置22は、送信対象の保冷庫#2の識別コードBが「ID#2」であることを認識する。 【0072】 そして、この読み込まれた識別データB(ID#2)は、識別データ保持部29に格納される。これにより、データ設定装置22のデータ取得検知部24が、その識別データB(ID#2)と、その識別データBに対応する管理データAとの両方のデータが取得されているか否かについて判断する。データ取得検知部24が両方のデータが取得されていると判断した場合に、データ取得検知部24は、コード通信部23に対してその識別データB(ID#2)に対応する管理データAを知らせる。 【0073】 そして、データ設定装置22のコード通信部23は、識別データB(ID#2)およびこれに対応する管理データAを保冷庫#2の保冷庫通信装置13に対して送信する。この場合、保冷庫#2の情報判断部14においては、自己の識別データB(ID#2)を伴う管理データAが送信されてきたと判断して、管理データAを受信し、その受信確認を自己の識別データB(ID#2)と共にデータ設定装置22に対して返信する。一方、保冷庫#1は、送られてきた管理データAが自己の識別データB(ID#1)を伴っていないと判断し、データ設定装置22に対して返信することなく、そのデータを捨てる。そして、一定時間が経過すると保冷庫#1は、タイムアウトと判断し、他の管理データAの送信がなされるのを待つ。」 「【0077】 <搬送中> 搬送中における保冷庫1の制御部10の動作を、図13に示す。搬送用車輌301に積み込まれて搬送が開始されると、制御部10は、温度センサ18による庫内温度監視を開始する。そして、温度センサ18により検出される庫内温度値は、庫内温度履歴情報として記憶装置15の庫内温度履歴記憶部15cに逐次格納される。前述したように、一定時間毎に検出温度をサンプリングするように構成することも可能であり、また、一定以上の温度変化が生じた際にその時刻と庫内温度値を格納するように構成することも可能である。 【0078】 ステップS22では、制御部10が、温度センサ18により検出された庫内温度値が異常であるか否かを判断する。庫内温度値が所定の閾値温度を超えた場合には庫内温度異常であると判断し、ステップS23に移行する。ステップS23では、制御部10が、車載通信ユニット310に対し庫内温度異常通報を行う。ここでは、制御部10が、保冷庫通信装置13を用いて車載通信ユニット310と近距離無線通信を行い、庫内温度異常が発生した旨の通報を通知する。」 「【0083】 誤配送でない場合には、保冷庫1は搬送用車輌301から下ろされて、店舗201に納品される。この後においても、納品後の店舗201において制御部10による庫内温度監視が継続される。 ステップS36では、制御部10が庫内温度履歴情報を読み出して店舗通信ユニット210に送信する。ここでは、記憶装置15の庫内温度履歴記憶部15cに格納されている搬送中の庫内温度履歴情報が読み出され、制御部10から店舗通信ユニット210に送信される。 【0084】 ステップS37では、制御部10が、庫内温度異常が発生したか否かを判別する。温度センサ18により検出される庫内温度が所定の閾値温度を超えていると判断した場合には、ステップS38に移行する。ステップS38では、制御部10が、庫内温度異常通報を通知する。例えば、保冷庫通信装置13を介して店舗通信ユニット210に庫内温度異常が発生した旨の通報を送信する。また、表示パネル5に庫内温度異常の表示を行ったり、警報音を鳴らしたりすることによって、店員などに警告することも可能である。」 図4から、保冷車301は複数台の保冷庫1を車載することが看取できる。 2 引用発明 上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 「複数台保冷車に車載される保冷庫1であって、保冷庫1は識別データBを有し、搬送用車輌301のコンテナ302内に収納され、保冷庫1の筐体2は、断熱性の高い材料で構成され、筐体2の内部は、物品を収納するための収納用空間7となっており、搬送用車輌301に積み込まれて搬送が開始されると、制御部10は、収納用空間7に配置されている温度センサ18による庫内温度監視を開始し、温度センサ18により検出される庫内温度値は、庫内温度履歴情報として記憶装置15の庫内温度履歴記憶部15cに逐次格納され、庫内温度値が所定の閾値温度を超えた場合には庫内温度異常であると判断し、保冷庫通信装置13を用いて車載通信ユニット310と近距離無線通信を行い、庫内温度異常が発生した旨の通報を通知し、納品後、記憶装置15の庫内温度履歴記憶部15cに格納されている搬送中の庫内温度履歴情報が読み出され、制御部10から店舗通信ユニット210に送信する保冷庫。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 引用発明の「保冷庫1」は、本願発明の「収容ユニット」に相当する。 引用発明の「識別データB」は、本願発明の「収容部を特定するための識別情報」に相当する。 本願発明の「所定の空間に収容された状態」は、平成29年8月29日の手続補正により特定されたところ、同日の意見書「2.特許請求の範囲の補正について」によると、【0024】及び図1に基づき手続補正がなされているとされており、配送車両1の荷台10に積載されている状態を意図していると認められるから、引用発明の「保冷庫1は、搬送用車輌301のコンテナ302内に収納され」る態様は、本願発明の「収容ユニット」が「所定の空間に収容された状態」に相当する。 引用発明の「保冷庫1の筐体2は、断熱性の高い材料で構成され、筐体2の内部は、物品を収納するための収納用空間7」は、本願発明の「断熱性を有する収容部」に相当する。 引用発明の「収納用空間7に配置されている温度センサ18」は、「庫内温度値」を検出するものであるから、本願発明の「収容部の内部温度を測定する温度測定部」に相当する。 引用発明の「保冷庫通信装置13」及び「車載通信ユニット310」は、本願発明の「送信部」及び「車載機」に相当し、引用発明の「保冷庫通信装置13」は、「車載通信ユニット310」と近距離無線通信を行うものであるから、引用発明の「保冷庫」は、本願発明の「車載機又は運転手が所持する運転手端末である外部装置と通信可能な収容ユニット」に相当する。 本願発明の「輸送中において、前記温度測定部が測定した、前記内部温度の異常を判定するための温度情報」と、引用発明の「制御部10は、収納用空間7に配置されている温度センサ18による庫内温度監視を開始し」、「庫内温度異常であると判断し」た際の「庫内温度異常が発生した旨の通報」とは、「輸送中において、前記温度測定部が測定した、前記内部温度の異常を判定するための温度」に係る「情報」の限りで一致する。 本願発明の「前記温度測定部が測定した、前記内部温度の異常を判定するための温度情報と、前記収容部を特定するための識別情報とを、前記外部装置へ送信する送信部と、を備えることを特徴とする収容ユニット」と、引用発明の「庫内温度値が所定の閾値温度を超えた場合には庫内温度異常であると判断し、保冷庫通信装置13を用いて車載通信ユニット310と近距離無線通信を行い、庫内温度異常が発生した旨の通報を通知する保冷庫」とは、「温度測定部が測定した、前記内部温度」に係る「情報を」、「前記外部装置へ送信する送信部とを備える収容ユニット」の限りで一致する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「所定の空間に収容された状態で、車載機又は運転手が所持する運転手端末である外部装置と通信可能な収容ユニットであって、 断熱性を有する収容部と、 前記収容部の内部温度を測定する温度測定部と、 輸送中において、前記温度測定部が測定した、前記内部温度に係る情報を、前記外部装置へ送信する送信部と、 を備えることを特徴とする収容ユニット。」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点 本願発明の「送信部」は、「輸送中において、前記温度測定部が測定した、前記内部温度の異常を判定するための温度情報と、前記収容部を特定するための識別情報とを、」「外部装置へ送信する」のに対して、引用発明の「保冷庫通信装置13」は、「搬送用車輌301に積み込まれて搬送が開始されると」「庫内温度値が所定の閾値温度を超えた場合には」、「庫内温度異常が発生した旨の通報を通知」する点。 第6 判断 上記相違点について、判断する。 引用文献1には、「車載通信ユニット310は、保冷庫1の保冷庫通信装置13との近距離通信が可能な無線通信装置を備えており、保冷庫通信装置13から送信される異常通報や庫内温度情報などを受信することが可能となっている」旨記載されているところ(段落【0058】参照。)、引用発明は庫内温度異常通報を庫内温度値に基づいて判断するものであり、また、庫内温度値が異常であると判断された場合、ドライバーは、異常通報に併せて異常の程度の判定をするために庫内の温度値についても知りたいとする課題は内在しているといえる。また、引用発明は、納品後、記憶装置15の庫内温度履歴記憶部15cに格納されている搬送中の庫内温度履歴情報が読み出され、制御部10から店舗通信ユニット210に送信していることから、庫内温度値を送信することを阻害する要因も存在しない。そして、引用発明は、庫内温度異常通報を行うからといって、更に「庫内温度の異常を判定するため」に庫内温度値を送信することが妨げられるものではない。したがって、庫内温度異常通報を行う際に、異常の判断に加え、「庫内温度の異常判定をするため」に、庫内温度値を車載通信ユニットに送信するように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。 また、引用発明は、保冷庫を複数台車載するものであるから、異常である保冷庫を特定するために、異常を報知する際に識別データBを併せて送信していると認められる。また、仮に送信していないとしても、異常を報知する際に異常である保冷庫を特定するために、識別データBを併せて送信するように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。 そうすると、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-05-28 |
結審通知日 | 2018-05-29 |
審決日 | 2018-06-18 |
出願番号 | 特願2015-182297(P2015-182297) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼藤 啓 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 佐々木 正章 |
発明の名称 | 収容ユニット及び温度管理システム |
代理人 | 中村 聡延 |