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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1342834
審判番号 不服2017-4908  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-06 
確定日 2018-08-28 
事件の表示 特願2012-136830「接近が制限される空間を測定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年1月17日出願公開、特開2013-11602、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2011年(平成23年)6月27日にアメリカ合衆国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して平成24年6月18日にされた外国語書面出願である。そして、同年8月13日に翻訳文が提出され、平成27年5月28日及び平成28年8月9日に特許請求の範囲についての補正がされ、平成29年1月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同17日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年4月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書についての補正がされた。
当合議体は、平成30年1月24日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し(発送日:同30日)、請求人は、同年4月23日に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)をするとともに意見書を提出した。

第2 本願に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
細長部材であって、細長部材の第1端部が、第1構造の穴を通って、第1構造と第2構造との間に位置する空間内に移動するように構成される、細長部材と、
細長部材の第1端部の移動量を測定して、第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定するように構成される、測定システムと、を有する装置であって、
細長部材の第1端部が、フランジを備え、
細長部材が、フランジが第1構造の穴を通過するサイズになる圧縮位置と、フランジが穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置と、の間で移動するように構成され、
細長部材が、チューブであり、
チューブの第1端部は、静止時に圧縮位置にあり、
ロッドが、チューブ内に移動可能に配置され、
ロッドがチューブに第1端部に近接して挿入されるときにチューブの第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動し、
チューブの第1端部が拡張位置にあるときに、チューブの第1端部は、第1構造と第2構造との間に位置する空間内を移動する、装置。
【請求項2】
測定システムは、第1構造の外側表面から第2構造の内側表面までの第1距離、及び第1構造の外側表面から第1構造の内側表面までの第2距離を測定するように構成され、空間の距離は、第1距離と第2距離との差である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
チューブの第1端部には、少なくとも1つの切り欠き部が設けられ、
フランジが、上側表面、下側表面、及び厚さを有し、第1端部が拡張位置にあるときにフランジの上側表面が第1構造の内側表面に接触するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
チューブの第1端部は、ロッドがチューブから取り出されるときに圧縮位置に移動するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
第1部品と第2部品との間の空間を測定する方法であって、
チューブの第1端部を第1部品の穴に挿入するステップと、
チューブの第1端部が第1部品と第2部品の間の空間内に位置するときに、チューブの第1端部を圧縮位置から拡張位置まで拡張させるステップと、
チューブの第1端部上のフランジの下側表面が第2部品の第1表面に接触するまで、チューブの第1端部を挿入するステップと、
第1部品の第1表面と第2部品の第1表面との間の距離の測定を第1測定として行うステップと、
フランジの上側表面が第1部品の第2表面に接触するまで、チューブを上昇させるステップと、
第1部品の第1表面と第1部品の第2表面との間の距離の測定を第2測定として行うステップと、
第1部品の第2表面と第2部品の第1表面との間の空間を決定するステップと、を含み、
チューブの第1端部は、静止時に圧縮位置にあり、
チューブの第1端部を拡張させるステップは、ロッドをチューブ内に挿入して、チューブの第1端部を圧縮位置から拡張位置まで拡張させるステップを更に含む、方法。
【請求項6】
更に、チューブの第1端部の周りに配置される突出部が第1部品の第1表面に接触して配置されるときに、測定デバイスをゼロ設定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空間を決定するステップは、第2測定による値を第1測定による値から減算するステップと、そしてフランジの厚さを考慮するステップと、を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
第1部品の第1表面と第2部品の第1表面との間の距離の測定を第1測定として行うステップ、及び第1部品の第1表面と第1部品の第2表面との間の距離の測定を第2測定として行うステップは、逆の順番で行われる、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。」

なお、本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の構成を全て含む。また、本願発明5は、本願発明1の装置を使用して第1部品と第2部品との空間を測定する方法の発明であり、本願発明6及び本願発明7は、本願発明5を構成するステップを全て含む。そして、本願発明8は、本願発明5ないし本願発明7と同じステップで構成されるが、一部のステップの順番を逆にしたものである。

第3 原査定の概要
本願の請求項1に係る発明は、後記の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本願の請求項2ないし請求項8に係る発明は、後記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願の請求項1ないし請求項8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願昭59-24655号(実開昭60-137302号
)のマイクロフィルム
引用文献2:特開2010-46307号公報
引用文献3:特公昭50-36117号公報

第4 当審拒絶理由の概要
本願は、以下に述べるとおり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には「細長部材の第1端部が、…フランジと、…細長部材の第1端部の移動量を測定して、第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定するように構成される、測定システムと、を備え」と記載されているから、請求項1に係る「装置」の「測定システム」は、「細長部材の第1端部」に設けられている。
しかし、「細長部材の第1端部」は「第1構造の穴を通って、第1構造と第2構造との間に位置する空間内に移動するように構成される」ものであり、そのような「細長部材の第1端部」に「測定システム」が設けられるとは、どのような状況を指しているのか、文言上も、また、明細書及び図面の記載を参照しても、理解することができない。
したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。請求項1の記載を引用して記載された請求項2ないし請求項4に係る発明も、同様である。

第5 当審拒絶理由について
本件補正により、請求項1に係る「装置」は、「測定システム」が「細長部材の第1端部」に設けられているのではなく、「細長部材」と「測定システム」とを有することが特定されたので、請求項1に係る発明(本願発明1)は明確になった。請求項1の記載を引用して記載された請求項2ないし請求項4に係る発明(本願発明2ないし本願発明4)も、同様である。
したがって、当審拒絶理由は解消された。

第6 原査定の理由について
1 引用文献に記載された発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

(ア)(第1ページ第13行ないし第18行)
「この考案は穴内寸法測定装置に関するもので、特に、そこのある丸穴の円筒状の側壁に加工されたC形止め輪溝のあるような場合の、穴の底面と溝との間の寸法のように、穴の軸方向に延長する寸法を測定する穴内寸法測定装置に関するものである。」

(イ)(第4ページ第3行ないし第5ページ第1行)
「この考案の測定装置は、第1図に示すように、スタンド1がシリンダ装置2を支持し、ゲージ3を取付けて、適宜なテーブル4上等に載置されている。シリンダ装置2は上下(第1図で)に可動な軸5を有し、軸5の下端にロツド6を取付けている。ロツド6は先端(下端)が開閉可能な1対の位置決め爪7となつていて、中間はピストン状部8を形成し、上端付近に測定板9を取付けている。ピストン状部8にはチューブ10が摺動可能に装架されている。チューブ10はピストン状部8に流体密の関係に嵌合し、ピストン状部8の両側に流体が供給されるように流体接続口11、12を具え、これらの接続口から流体が内部に供給されることによつて、ロツド6に沿つて上下方向(図で)に移動可能で、上方に移動するとチューブ10の下端が爪7から離れて爪が開き、下方へ移動すると爪と係合して爪を閉じるコレツト機構を形成している。」

(ウ)(第5ページ第2行ないし第6ページ第9行)
「次に作用を説明する。測定するべき穴13は第2図に示すように、C形止め輪溝14を有し、穴の底面15と溝14との間の寸法lが測定したい寸法であるとする。第3図に示すように、穴13上に寸法測定装置を置いた状態で、流体接続口11(合議体注:「流体接続口12」の誤り。)(第1図)からチューブ10内に流体を供給すると、チューブ10は下降して、爪7を閉じ、径を小さくする。従つて、シリンダ装置2でロツド6を下降させ、第4図に示すように、爪7を穴13内に入れることができる。第5図に示すように、爪7が穴13の底面15に達したなら、チューブ10の流体接続口12(合議体注:「流体接続口11」の誤り。)(第1図)に流体を加え、チューブ10を上昇させて、爪7を開く。第6図の状態となり爪7の径が大きくなり、穴13の側壁に爪7の先端が接する。このとき、測定板9にゲージ3が押し付けられるようにゲージ3の取付位置を調整し、このときのゲージの読みを零調する。次にシリンダ装置2によつてロツド6を上昇させると、第7図に示すように、爪7が穴13の側壁の溝14にひつかかり上昇は停止するが、このときのゲージ3の読み(寸法l’)を記録する。流体接続口11(合議体注:「流体接続口12」の誤り。)に流体を供給すれば爪7の径を小さくすることができるから、爪7を穴13の外へ取出す(上昇させる)ことができる。ここで寸法l’は必要な寸法l(第2図)から爪7の縦方向の幅を減じたものであり、l’からlが容易にわかる。」

(エ)(第6ページ第19行ないし第7ページ第12行)
「以上のように、この考案によれば、寸法測定時に、円筒状の穴の側壁に加工されたC形止め輪用溝にひつかかることのできる爪を、円筒状の穴の底面よりシリンダ装置によつて移動させるとき、爪は寸法測定時に円筒状の穴の側壁に押し拡げられるような力をコレツト機構によつて常時与えられているので、爪が溝まで移動すると溝にひつかかつてシリンダ装置による移動は停止し、このシリンダ装置による可動範囲を測定すれば、寸法測定ができるので、一動作で短時間に測定が完了する効果がある。また構造が簡単で機械的に堅牢な構造がとれるので、自動組立ライン等に適用が可能であるという効果もある。」

(オ)(第1図)


(カ)(第2図)


(キ)(第3図)


(ク)(第4図)


(ケ)(第5図)


(コ)(第6図)


(サ)(第7図)


イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の前記アの記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「スタンド1と、
スタンド1によって支持されたシリンダ装置2と、
スタンド1に取り付けられたゲージ3と、
シリンダ装置2が有する上下に可動な軸5の下端に取り付けられたロツド6であって、下端は開閉可能な1対の位置決め爪7となっていて、中間はピストン状部8を形成し、上端付近に測定板9を取り付けたロツド6と、
ピストン状部8に摺動可能に装架されたチューブ10であって、ピストン状部8に流体密の関係に嵌合し、ピストン状部8の両側に流体が供給されるように流体接続口11、12を具え、流体接続口11、12から流体が内部に供給されることによってロツド6に沿って上下方向に移動可能なチューブ10と、
を備え、
チューブ10は、上方へ移動するとチューブ10の下端が爪7から離れて爪7が開き、下方へ移動するとチューブ10の下端が爪7と係合して爪7を閉じるコレツト機構を形成している
穴内寸法測定装置であって、
C形止め輪溝14を有する穴13上に穴内寸法測定装置を置いた状態で流体接続口12からチューブ10内に流体を供給すると、チューブ10が下降して爪7を閉じ、爪7の径を小さくし、シリンダ装置2でロツド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ、
爪7が穴13の底面15に達したら、流体接続口11からチューブ10内に流体を供給し、チューブ10を上昇させて爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接し、このとき、測定板9にゲージ3が押しつけられるようにゲージ3の取付位置を調整して、ゲージ3の読みを零調し、
シリンダ装置2によってロツド6を上昇させると、爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止し、このときのゲージ3の読みを記録し、
流体接続口12からチューブ10内に流体を供給し、チューブ10を下降させて爪7を閉じ、爪7の径を小さくし、爪7を穴13の外へ取り出し、
記録したゲージ3の読みと爪7の縦方向の幅とから、穴13の底面15とC形止め輪溝14との間の寸法を測定する
穴内寸法測定装置。」

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折部を固定するための骨固定器具に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の骨接合用固定要素は、溝孔が形成された円筒状の柄、固定ワイヤ、摺動可能な支承部材を有するスピンドル等構成が複雑であり、製造時の加工、組立等が困難であり製造コストが増加する虞がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、簡易な構成で、骨折した骨を安定して固定することが可能な骨固定器具を提供することを目的とする。」

「【発明の効果】
【0017】
押棒を筒状体に挿入するという単純な動作で、骨折した骨を筒状体に対して固定することができる。更に、当該筒状体は、筒部と分岐部とを有する簡易な構成であるため、低コストで当該構成を実現できる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る骨固定器具1の部品を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る骨固定器具1の部品を示す断面または部分断面の模式図である。尚、図2において筒状体2のX-X断面模式図を併せて示す。
図1及び図2に示すように、骨固定器具1は、筒状体2と、当該筒状体2に挿入可能な押棒3とを有する。押棒3は、当該押棒3の外周部を形成する筒型押棒部4と、当該筒型押棒部4に挿入される芯部5とを有する。これらの部品には、チタン合金、ステンレス鋼等、生体適合性を有する材料が用いられる。
【0020】
筒状体2は、筒状に形成された筒部21と当該筒部21の端部に連続して当該筒部21の軸方向に延びる8本の分岐部22とを有する。尚、筒部21と分岐部22とは一体的に形成されている。本実施形態においては、筒状部材に筒軸方向の中間部まで延びるスリット22bを当該筒状部材の筒周方向において等間隔に8本形成することにより、8本の分岐部22が形成される。
【0021】
筒部21は、外周面に段部21aが形成されており、基端側(分岐部22側とは逆側)の筒外径が分岐部22側に比べて拡径している。また、筒部21は、段部21aよりも基端側において、内径が拡径するとともに雌ねじが螺刻された雌ねじ部21bを有している。
【0022】
8本の分岐部22は、それぞれ、当該分岐部22における筒軸方向中間部に筒径方向内側に向かって突出する突部22aを有している。そして、8本の分岐部22の集合として筒状に形成される分岐集合部23は、筒軸方向において、突部22aよりも先端側(筒部21とは逆側)の筒内径が、筒部21側の内径(図2においてd1で示す)より小さくなるように形成されている。尚、当該分岐集合部23の突部22aの頂部における内径(図2においてd2で示す)が筒状体2の筒軸方向において最も小さい内径となる。また、当該分岐集合部23における、突部22aよりも筒部21側の、当該筒部21に連続する部分の内径及び外径は、筒部21における段部21aよりも分岐部22側の部分と同径である。
【0023】
押棒3は、図1及び図2に示すように、筒型押棒部4と芯部5とを有する。図1及び図2においては、押棒3を構成する筒型押棒部4と芯部5とが分離した状態を示している。
【0024】
筒型押棒部4は、先端に先細(先端に向かって筒外径が小さくなる形状)のテーパ状部分4aが形成された筒状部材である。当該筒型押棒部4は、外径(非テーパ部分の外径)が、筒状体2における筒部21の内径d1よりも小さく、且つ、分岐集合部23の突部22aの頂部における内径d2よりも大きくなるように形成される。尚、筒型押棒部4は、基端部(テーパ状部分4aと逆側の端部)において、内周面に雌ねじが螺刻された雌ねじ部4bを有する。
【0025】
芯部5は、先端に先細(先端に向かって外径が小さくなる形状)のテーパ状部分5aが形成された棒状部材である。当該芯部5は、外径(非テーパ部分の外径)が、筒部21の内径よりも小さく、且つ、分岐集合部23の突部22aの頂部における内径d2よりも大きくなるように形成される。
また、芯部5の軸方向に対するテーパ状部分5aのテーパ面の傾きは、筒型押棒部4の軸方向に対するテーパ状部分4aのテーパ面の傾きと略同じになるように形成されている。尚、本実施形態においては、当該テーパ状部分4aの軸方向に対する傾きの角度は、約15°である。
また、テーパ状部分5aの先端部の外径(図2においてd3で示す)は、分岐集合部23の突部22aの頂部における内径d2よりも小さくなるように形成される。尚、芯部5の基端面(テーパ状部分5aと逆側の端面)には、内周面に雌ねじが螺刻されたねじ穴5bが形成されている。
【0026】
次に、骨固定器具1の使用方法について説明する。
図3?図8は、大腿骨頚部にて骨折が発生した際に、遠位部側の部分100b(骨幹部)に対して近位部側の部分100a(骨頭部)を固定するための、骨固定器具1の使用方法を説明するための模式図である。
図3は、骨固定器具1を大腿骨に挿入した状態であり、当該骨固定器具1で大腿骨の骨折部が固定される前の状態を示す全体模式図である。
図4?図7は、骨固定器具1で大腿骨の骨折部が固定されるまでの過程を示す筒状体2近傍部の拡大断面模式図である。尚、図4?図7において、筒状体2近傍部のY-Y断面模式図を併せて示す。
図8は、骨固定器具1で大腿骨の骨折部が固定された状態を示す全体模式図である。
【0027】
大腿骨頚部において骨折した近位部側の部分100aを遠位部側の部分100bに対して固定する手術は、以下の(1)?(6)に示す手順で行われる。
ここで、本実施形態における骨固定器具1は、筒状体2を保持可能であるとともに大腿骨の遠位部側の部分100bに固定可能な保持機構6(図3、図8参照)を備えている。この保持機構6は、図8に示すように、骨ねじ6aにより遠位部側の部分100bに沿って固定される長尺板状のプレート部7と、当該プレート部7の端部に設けられ、筒状体2を貫通させて保持するための貫通孔8aを有するスリーブ部8とを一体的に備えている。スリーブ部8には、先端部の内周面において、径方向内側に突出する突部8bが設けられている。
【0028】
(1)骨折部を固定する手術においては、まず、大腿骨の遠位部側の部分100bの側面から骨折した近位部側の部分100aにかけて、骨固定器具1を挿入するための下穴が形成される。その後、図3に示すように、当該下穴の遠位部側の部分100bに保持機構6のスリーブ部8が挿入されるとともに、骨固定器具1の筒状体2が当該スリーブ部8の貫通孔8aを通って近位部側の部分100aまで挿入される。このとき、筒状体2の挿入方向への移動は、筒状体2の段部21a(図1及び図2参照)が、スリーブ部8の先端部に形成された突部8bに当接する位置で規制される。
尚、筒状体2を挿入する際には、筒状体2の雌ねじ部21bに筒状に形成された押込用補助部材11の一端が螺合される(図4参照)。これにより、当該押込用補助部材11の位置を調整することで、筒状体2のスリーブ部8内における位置を調整することができる。
【0029】
(2)筒状体2を骨内に挿入した後、図4に示すように、押込棒12により、押棒3(筒型押棒部4内に芯部5が挿入されたもの)が、筒状体2内の先端側に向かって押込まれる。尚、当該押棒3の押込み時において、押込用補助部材11の位置を所定の位置に固定することで、当該筒状体2の位置がずれることを防止できる。
【0030】
この押込棒12は、基端側部分の外径が筒型押棒部4の外径と略同径となるように形成され、先端側において筒型押棒部4の内径よりも小さい外径となるように形成された縮径部12aを有している。そして、当該押込棒12が押し込まれたとき、縮径部12aが筒型押棒部4内に挿入され、当該縮径部12aの端部で、芯部5の端部が付勢される。また、当該縮径部12aの基端側に形成される筒型押棒部4の端部に対面する付勢面12bにより当該筒型押棒部4の端部が付勢される。これにより、筒型押棒部4と芯部5とは軸方向において所定の位置関係を保ちつつ押し込まれる。本実施形態においては、当該所定の位置関係は、筒型押棒部4のテーパ状部分4aと芯部5のテーパ状部分5aとが連続するような位置関係である。
【0031】
押込棒12によって押棒3が筒状体2の先端付近まで押込まれると、分岐部22の突部22aは、テーパ状部分5aに沿って押棒3に対して相対移動し、続いてテーパ状部分4aに沿って相対移動し、筒型押棒部4の外周面まで乗り上げる。その結果、図4に示すように、分岐部22が筒径方向外側に広がるように曲げ変形する。尚、筒状体2は、弾性的に変形可能な金属により形成されており、当該曲げ変形は弾性変形の範囲内の変形である。
【0032】
このように、分岐部22が筒径方向外側広がることにより、筒状体2の抜出方向(挿入方向とは逆方向)への移動が規制される。そして、分岐部22は、骨内の海綿質に対して、当該海綿質を圧縮するような力を加えながら、当該海綿質と接触する。これにより、筒状体2が大腿骨の近位部側の部分100aに対して固定される。
【0033】
(3)筒状体2が近位部側の部分100aに固定された後、保持機構6は骨螺子6aで遠位部側の部分100bに固定される(図8における保持機構6の部分を参照)。
【0034】
(4)保持機構6が遠位部側の部分100bに固定された後、図5に示すように、筒型押棒部4内から芯部5が引き抜かれる。本実施形態においては、芯部5のねじ穴5bに、芯抜用補助部材13の先端が螺合され、当該芯抜用補助部材13を軸方向に引き抜くことにより、芯部5が筒型押棒部4内から引き抜かれる。
【0035】
(5)筒型押棒部4から芯部5を抜いた後、図6に示すように、筒状体2の先端側に、筒型押棒部4の筒孔を介して骨補填材14が充填される。骨補填材14は、市販の医療用アパタイト顆粒、TCP顆粒、リン酸カルシウム系ペースト人工骨、粉砕した自家骨・他家骨、脱灰凍結乾燥骨顆粒などの顆粒状又は液体状の材料を適宜用いることができる。当該骨補填材14が骨折した近位部側の部分100aの髄内に充填されることにより、骨密度を大きくすることができる。特に骨粗鬆症を発症している場合は、骨密度が小さいと骨固定器具1による固定が不十分になる虞があるため有効である。また、図7におけるY-Y断面模式図に示すように、一の分岐部22と、これに隣接する他の分岐部22との間に骨補填材14が充填されるため、分岐部22と骨補填材14との接触面積が大きくなる。これにより、大腿骨の近位部側の部分100aが筒状体2に対して強固に固定される。
【0036】
(6)筒状体2の先端側に骨補填材14を充填した後、図7に示すように、当該骨補填材14が、逆流しないように、逆流防止棒15が筒型押棒部4内に挿入される。逆流防止棒15の先端部15aは拡径して形成され、当該先端部15aの外径が筒型押棒部4の内径と略同径となるように形成されている。これにより、先端部15aにおける外周面と、筒型押棒部4の内周面との隙間から、骨補填材14が漏れることを防ぐことができる。また、逆流防止棒15の基端部15bは、拡径して形成され、外周に雄ねじ部が形成されている。逆流防止棒15は、当該基端部15bが筒型押棒部4の雌ねじ部4bに螺合されることにより当該筒型押棒部4に対して固定される。尚、基端部15bの端面には六角穴15cが形成され、この六角穴15cを用いて逆流防止棒15を軸回りに回転させることができる。
筒状体2の基端部の雌ねじ部21bには抜止プラグ16がねじ込まれ、これにより筒型押棒部4の挿入方向とは逆方向への移動が拘束される。尚、抜止プラグ16の端面には六角穴16aが形成され、この六角穴16aを用いて当該抜止プラグ16を軸回りに回転させることができる。
【0037】
以上(1)?(6)で説明した手順で、骨固定器具1が大腿骨の近位部側の部分100aに固定される。これにより、図8に示すように、骨折した大腿骨の近位部側の部分100aを、遠位部側の部分100bに固定することができる。
…(略)…
【0038】
次に、骨折部位が治癒した後に、近位部側の部分100aに挿入された筒状体2を抜くための抜出方法について図9及び図10を用いて説明する。
【0039】
(1)図9に示すように、抜止プラグ16(図7参照)を外して、筒型押棒部4の基端の雌ねじ部4bに抜出用補助部材17の先端を螺合させる。そして、当該抜出用補助部材17を軸方向(図9において矢印で示す方向)に引っ張って移動させることにより、筒型押棒部4及び当該筒型押棒部4に挿入された逆流防止棒15を引き抜くことができる。
【0040】
(2)筒型押棒部4及び逆流防止棒15を引き抜いた後、図10に示すように、筒状体2の基端の雌ねじ部21bに、抜出用補助部材18の先端を螺合する。そして、当該抜出用補助部材18を軸方向(図10において矢印で示す方向)に引っ張って移動することにより、筒状体2が大腿骨の近位部側の部分100aから抜出される。このとき、筒状体2の分岐部22が弾性回復する。これにより、筒状体2が抜出方向に移動するにつれて、分岐集合部23(分岐部22の集合体)は、先端部の外径が小さくなるように変形する。即ち、当該分岐集合部23が徐々に窄まりながら引き抜かれることになる。したがって、小さな力で筒状体2を引き抜くことができる。特に、本実施形態においては、分岐部22の筒径方向外側を向く面が滑らかな面として形成されているので、容易に引き抜くことができる。」

【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2の前記アの記載によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「骨折部を固定するための骨固定器具1であって、
筒状に形成された筒部21と、筒部21の端部に連続して筒21の軸方向に延びる8本の分岐部22とが一体的に形成された筒状体2と、
外周部を形成する筒型押棒部4と、筒型押棒部4に挿入される芯部5とを有する押棒3とを有し、
骨折部を固定する手術においては、
骨固定器具1を挿入するための下穴が形成され、
筒状体2を骨内に挿入した後、筒型押棒部4内に芯部5が挿入された押棒3が筒状体2の先端付近まで押込まれると、分岐部22が筒径方向外側に広がるように曲げ変形し、
分岐部22が筒径方向外側に広がることにより、筒状体2の抜出方向(挿入方向とは逆方向)への移動が規制されて、筒状体2が固定され、
筒型押棒部4から芯部5を抜いた後、筒状体2の先端側に、筒型押棒部4の筒孔を介して骨補填材14が充填され、
骨補填材14が逆流しないように、逆流防止棒15が筒型押棒部4内に挿入され、
骨折部位が治癒した後に、
筒型押棒部4及び逆流防止棒15を引き抜いた後、筒状体2が抜出され、筒状体2の分岐部22が弾性回復することにより、筒状体2が抜出方向に移動するにつれて、分岐集合部23(分岐部22の集合体)は、先端部の外径が小さくなるように変形し、小さな力で筒状体2を引き抜くことができる
骨固定器具。」

(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

(ア)(第2ページ左欄第20行ないし第3ページ左欄第27行)
「本発明の婦人科用測定器具10は本体12を備え、この本体は可撓性プラスチツク物質から作られるのが好ましく、その基端にハンドル部分16を有する。ハンドル部分16は内部溝18に指形へこみ16aとこのへこみに一致した内部へこみ16bとを有する。溝18は後部ストツパー20で終つている。
本体12は中空内部24を有する略U形の円筒形部分又はプローブ22を有する。部分22は溝18に開口する基端部26から延び、開口30を有する末端28で終つている。
この器具は、実に、管状部分22の中空内部24内に収容されるような寸法と形状とを有するアクチユエータロツド又は軸部分32を有する。ロツド部分32はその末端が放射方向に拡大する部分32aで終つている。
部分32は、実に、ハンドル16の溝部分18内に収容される寸法と形状とを有するボタン部分34を有する。ボタン部分34はその前後運動を容易にするため平担な底部34aを有するのが好ましい。実に、この器具を起動する人の指を入れるへこんだ上部34bがボタン34に形成されている。ボタン34の端部延長部34cはボタン部分34とそれに接続された構造体との後方運動を制限するためハンドル16の後部ストツパー20と組合せてある。
可撓性ビニール物質から成つているのが好ましい管36はロツド32の末端の外側に入れ子式に嵌合されている。管36はロツド32をすべりばめするような寸法と形状の中空内部38を有し、ロツド32の拡大部32aは管36の末端36aをロツド32の末端に対して固定している。
ロツド32を引込位置に保持するための手段が設けてある。第1図に示された実施例では、この手段はボタン34の前部付近でロツドの基部に設けられた拡大部39から成つている。この拡大部は肩部39aで終つている。この拡大部39の軸線長さは、ボタンが第1図に示された前進位置にあるときボタン延長部34cの端部とストツパー20との間の間隔と略同じ寸法であるのが好ましい。
動作についてのべると、延長部34cがストツパー20に衝合するまでボタン34が引込んだとき拡大部39は部分22の開放端から後方に間隔をあげて保持され、またボタン34がハンドル部分16の内部へこみ16bを越えて僅かに上方に乗ると肩部39aが部分22の開放端に衝合して指の押圧力と前進力とがかけられるまではこのボタンを後方にロツクした状態に保持する。管36は、実に、管状部分22に対して管36の逆方向の軸線運動を制限するため部分22の端部のストツパー44に衝合する環状フランジ40と垂下ストツパー42とを備えている。
管36はその両側に縦方向に延びるスリツト46を設けてある。ロツド32が部分22に対して引込められるとき管36はその末端36aの接続部即ち拡大部32aによつて下方に引かれる。フランジ40とストツパー42とが管状部分22の接合部44に衝合すると、スリツト46の領域を除いて管36は部分22とロツド部分32とに対して移動が阻止される。その結果、この管はスリツト46の領域でたわんで1対の略相対して配置されて横方向に延びる翼48aと48bとを形成する。
この器具の使用を補助するため、円筒形スリーブ50が設けてあり、このスリーブは管状部分22の外面にすべり嵌めする寸法と形状とを有する中空内部52を有する。スリーブ50も一端に環状フランジ54を有するのが好ましい。
第4図に最もよく示すように、管状部分22の外面にマーク又はスケール56が設けてあり、このマークは管36の末端36aから円筒形スリーブ50の縦方向又は軸線方向の寸法に等して間隔だけずらせてあつてこの器具による測定の読みをずらせるようにしてある。この器具10はスリーブ50を用いることなく使用することができることは理解すべきであり、この場合にはマーク56は面36aに対して直接読むことができる。
使用時には器具12は子宮頸管58内に挿入され、また峡部60を経て子宮64の子宮内膜腔62に挿入される。末端36aが子宮内膜腔の上部即ち子宮底部に衝合したとき、部分22のマーク56を読むことによつて距離が測定される。この後、ボタン34を後方に移動することによつて翼又は保持手段48a,48bを形成するように管を引込めてロツド32が管36を第3図及び第6図に示すように引かしめる。次いで全組立体が引込められて翼48a,48bは遂に峡部60に達する。このときマーク56をみることによつて他の読取が行われる。マーク56で読まれた指標から1cm引くと、末端36aと翼48a,48bのレベルとの間の寸法が表わされる。これらの翼は子宮頸管の測定の上部位置である峡部又は子宮頸管の上端のレベル位置にある。これらの2回の測定値を比較することによつて子宮頸管の長さと子宮内膜腔の長さ又は高さが測定される。」

(イ)(第1図ないし第7図)


イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3の前記アの記載によれば、引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「器具12を子宮頸管58内に挿入し、峡部60を経て子宮64の子宮内膜腔62に挿入し、末端36aが子宮内膜腔62の子宮底部に衝合したとき、部分22のマーク56を読むことによって距離を測定し、その後、翼48a、48bを形成し、次いで全組立体を引っ込めて翼48a、48bが峡部60に達したとき、マーク56を見ることによって他の読み取りを行い、マーク56で読んだ指標から1cm引くと、末端36aと翼48a、48bのレベルとの間の寸法が表され、これらの2回の測定値を比較することによって子宮頸管58の長さと子宮内膜腔62の長さを測定する。」

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)引用発明1は、「穴13の底面15とC形止め輪溝14との間の寸法を測定する」「穴内寸法測定装置」であるから、「穴13の底面15」と「C形止め輪溝14」との間の長さを測定する装置である。
一方、本願発明1は、「第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定するように構成される、測定システム」「を有する装置」であるから、「第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定する」「装置」ということができる。そして、「第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定する」とは、要するに、「第1構造」と「第2構造」との間の長さを測定することである。
そうすると、引用発明1の「穴内寸法測定装置」と、本願発明1の「装置」とは、「長さ測定装置」である点で共通する。

(イ)引用発明1の「ロツド6」は、本願発明1の「細長部材」に相当し、引用発明1の「ロツド6」の「下端」は、本願発明1の「細長部材の第1端部」に相当する。

(ウ)引用発明1の「C形止め輪溝14を有する穴13」と、本願発明1の「第1構造の穴」とは、「穴」である点で共通する。

(エ)引用発明1の「ロツド6」は、その「下端」が「1対の位置決め爪7となって」いるから、引用発明1において「ロッド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ」ることは、「ロッド6」の「下端」を「穴13内に入れ」ることを意味する。
したがって、前記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明1において「ロッド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ」ることと、本願発明1において「細長部材の第1端部が、第1構造の穴を通って、第1構造と第2構造との間に位置する空間内に移動するように構成される」こととは、「細長部材の第1端部が、穴を通って、移動するように構成される」点で共通する。

(オ)引用発明1の「ロツド6」は、その「下端」が「1対の位置決め爪7となって」いるから、引用発明1において「爪7が穴13の底面15に達したら、」「ゲージ3の読みを零調し、」「ロツド6を上昇させると、爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止し、このときのゲージ3の読みを記録し、」「記録したゲージ3の読みと爪7の縦方向の幅とから、穴13の底面15とC形止め輪溝14との間の寸法を測定する」ことは、「ロツド6」の「下端」を「穴13の底面15」から「上昇させ」、「ロツド6」の「下端」にある「1対の位置決め爪7」が「穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって」「停止」するまでの移動量を「ゲージ3」で測定し、「穴13の底面15とC形止め輪溝14との間の寸法を測定する」ことを意味する。
したがって、前記(イ)を踏まえると、引用発明1の「ゲージ3」と、本願発明1の「細長部材の第1端部の移動量を測定して、第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定するように構成される、測定システム」とは、「細長部材の第1端部の移動量を測定して、長さを同定するように構成される、測定システム」である点で共通する。

(カ)引用発明1の「ロツド6」は、その「下端」が「1対の位置決め爪7となって」いるから、引用発明1の「ロツド6」の「下端」は「1対の位置決め爪7」を備えることになる。そして、引用発明1の「1対の位置決め爪7」は、引用文献1の第1図(前記1(1)ア(オ))に示されているとおり、「ロツド6」の径方向に突出している。
一方、本願発明1の「フランジ」は、本願の図6に示されているとおり、「細長部材」(チューブ601)の径方向に突出している。
したがって、前記(イ)を踏まえると、引用発明1の「1対の位置決め爪7」と、本願発明1の「細長部材の第1端部が」「備え」る「フランジ」とは、「細長部材の第1端部」が備える「径方向に突出した部材」である点で共通する。

(キ)前記(イ)ないし(エ)及び(カ)を踏まえると、引用発明1の「1対の位置決め爪7」が「開閉可能」であり、「ロツド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ」るときに「爪7を閉じ、爪7の径を小さくし」てあることと、本願発明1の「フランジが第1構造の穴を通過するサイズになる圧縮位置」にあることとは、「径方向に突出した部材が穴を通過するサイズになる圧縮位置」にある点で共通する。

(ク)前記(イ)ないし(エ)及び(カ)を踏まえると、引用発明1の「1対の位置決め爪7」が「開閉可能」であり、「爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接し、」「ロツド6を上昇させると、爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止」することと、本願発明1の「フランジが穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置」にあることとは、「径方向に突出した部材が穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置」にある点で共通する。

(ケ)前記(イ)ないし(エ)及び(カ)ないし(ク)を踏まえると、引用発明1の「ロツド6」の「中間」が「ピストン状部8を形成し」、「ピストン状部8に摺動可能に装架されたチューブ10」が「ピストン状部8に流体密の関係に嵌合し、ピストン状部8の両側に流体が供給されるように流体接続口11、12を具え、流体接続口11、12から流体が内部に供給されることによってロツド6に沿って上下方向に移動可能」であり、「上方へ移動するとチューブ10の下端が爪7から離れて爪7が開き、下方へ移動するとチューブ10の下端が爪7と係合して爪7を閉じるコレツト機構を形成して」いることと、本願発明1の「細長部材が、フランジが第1構造の穴を通過するサイズになる圧縮位置と、フランジが穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置と、の間で移動するように構成され」ることとは、「細長部材が、径方向に突出した部材が穴を通過するサイズになる圧縮位置と、径方向に突出した部材が穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置と、の間で移動するように構成され」る点で共通する。

(コ)前記(イ)ないし(エ)、(カ)及び(キ)を踏まえると、引用発明1において「爪7を閉じ、爪7の径を小さくし、」「ロツド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ、」「爪7が穴13の底面15に達したら、」「爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接」することと、本願発明1において「細長部材が、チューブであり、」「チューブの第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動」することとは、「細長部材の第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動」する点で共通する。

(サ)前記(イ)ないし(エ)、(カ)及び(ク)を踏まえると、引用発明1において「爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接し、」「ロツド6を上昇させると、爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止」することと、本願発明1において「細長部材が、チューブであり、」「チューブの第1端部が拡張位置にあるときに、チューブの第1端部は、第1構造と第2構造との間に位置する空間内を移動する」こととは、「細長部材の第1端部が拡張位置にあるときに、細長部材の第1端部は、移動する」点で共通する。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(ア)一致点
「細長部材であって、細長部材の第1端部が、穴を通って、移動するように構成される、細長部材と、
細長部材の第1端部の移動量を測定して、長さを同定するように構成される、測定システムと、を有する長さ測定装置であって、
細長部材の第1端部が、径方向に突出した部材を備え、
細長部材が、径方向に突出した部材が穴を通過するサイズになる圧縮位置と、径方向に突出した部材が穴を通り抜けて戻ることができないようなサイズになる拡張位置と、の間で移動するように構成され、
細長部材の第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動し、
細長部材の第1端部が拡張位置にあるときに、細長部材の第1端部は、移動する、長さ測定装置。」

(イ)相違点
a 相違点1
本願発明1では、「穴」は「第1構造の穴」であり、「細長部材の第1端部」が移動するのは「第1構造と第2構造との間に位置する空間内」であり、「長さ測定装置」は「第1構造と第2構造との間の空間の長さを同定する」「装置」であるのに対し、
引用発明1では、「穴」は「C形止め輪溝14を有する穴13」であり、「ロツド6」の「下端」(本願発明1の「細長部材の第1端部」に相当する。)が移動するのは「穴13の底面15」と「穴13の側壁のC形止め輪溝14」との間であり、「長さ測定装置」は「穴13の底面15とC形止め輪溝14との間の寸法を測定する」「穴内寸法測定装置」である点。

b 相違点2
本願発明1では、「径方向に突出した部材」が「フランジ」であるのに対し、
引用発明1では、「径方向に突出した部材」が「1対の位置決め爪7」である点。

c 相違点3
本願発明1では、「細長部材が、チューブであり、」「チューブの第1端部は、静止時に圧縮位置にあ」るのに対し、
引用発明1では、「C形止め輪溝14を有する穴13上に穴内寸法測定装置を置いた状態で流体接続口12からチューブ10内に流体を供給すると、チューブ10が下降して爪7を閉じ、爪7の径を小さく」するから、「C形止め輪溝14を有する穴13上に穴内寸法測定装置を置いた状態」(本願発明1の「静止時」に相当する。)では、「ロッド6」の「下端」が備える「1対の位置決め爪7」は、「爪7を開き、爪7の径が大きく」なっている(本願発明1において「細長部材の第1端部」が「拡張位置」にあることに相当する。)点。

d 相違点4
本願発明1では、「細長部材の第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動」するのは、「細長部材が、チューブであり、」「ロッドが、チューブ内に移動可能に配置され、」「ロッドがチューブに第1端部に近接して挿入される」ことによるのに対し、
引用発明1では、「ロツド6を下降させ、爪7を穴13内に入れ」るときに「爪7を閉じ、爪7の径を小さくし」てある状態から「爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接し、」「ロツド6を上昇させると、爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止」する状態になる(本願発明1において「細長部材の第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動」することに相当する。)のは、「チューブ10」が「上方へ移動するとチューブ10の下端が爪7から離れて爪7が開き、下方へ移動するとチューブ10の下端が爪7と係合して爪7を閉じるコレツト機構を形成して」おり、「流体接続口11からチューブ10内に流体を供給し、チューブ10を上昇させ」ることによる点。

ウ 相違点4についての判断
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。

(ア)引用発明2は、「筒状体2を」「挿入した後、」「押棒3が筒状体2の先端付近まで押込まれると、分岐部22が筒径方向外側に広がるように曲げ変形し、」「分岐部22が筒径方向外側に広がることにより、筒状体2の抜出方向(挿入方向とは逆方向)への移動が規制されて、筒状体2が固定され」るものであるから、相違点4に係る本願発明1の構成、すなわち、「細長部材が、チューブであり、」「ロッドが、チューブ内に移動可能に配置され、」「ロッドがチューブに第1端部に近接して挿入される」ことによって「細長部材の第1端部が圧縮位置から拡張位置に移動」する構成を備えていると見ることもできる。

(イ)しかし、引用発明2は、「骨折部を固定するための骨固定器具1」であるから、医療の技術分野に属する発明である。
そして、引用発明2は、引用文献2に「本発明は、…骨折した骨を安定して固定することが可能な骨固定器具を提供することを目的とする。」(【0005】)と記載されているとおり、骨折した骨の固定を目的とするものであるから、引用発明2の「分岐部22が筒径方向外側に広がるように曲げ変形」するのは、「筒状体2」が動かないようにするためである。すなわち、引用発明2の「分岐部22」の開閉動作は、「筒状体2」が動かせないようにしたり、動かせるようにしたりするためのものである。
また、骨折部が治癒するまでにそれ相応の時間がかかることは一般常識であるから、引用発明2の「分岐部22」は、いったん「筒径方向外側に広がるように曲げ変形」した後は、そのままの状態を相当長期間にわたって維持し、骨折部が治癒して初めて「筒状体2が抜出され、」「弾性回復する」ものと認められる。すなわち、引用発明2の「分岐部22」は、開閉動作を頻繁に繰り返すことが想定されるものではない。

(ウ)これに対して、引用発明1は、引用文献1に「この考案は…穴の軸方向に延長する寸法を測定する穴内寸法測定装置に関するものである。」(前記1(1)ア(ア))と記載され、「この考案によれば、…一動作で短時間に測定が完了する効果がある。また構造が簡単で機械的に堅牢な構造がとれるので、自動組立ライン等に適用が可能であるという効果もある。」(前記1(1)ア(エ))と記載されていることから明らかなように、工業製品の製造の技術分野に属する発明である。
そして、引用発明1の「1対の位置決め爪7」は、「爪7が穴13の底面15に達したら、流体接続口11からチューブ10内に流体を供給し、チューブ10を上昇させて爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接し」た後でも、「シリンダ装置2によってロツド6を上昇させると」、「爪7が穴13の側壁のC形止め輪溝14に引っかかって上昇が停止」するまでは上昇するのであるから、「爪7を開き、爪7の径が大きくなって爪7の先端が穴13の側壁に接」するのは、「ロツド6」が動かないようにするためではない。すなわち、引用発明1の「1対の位置決め爪7」の開閉動作は、「ロツド6」が動かせないようにしたり、動かせるようにしたりするためのものではない。
さらに、引用発明1は、穴の軸方向に延長する寸法を自動組立ライン上で迅速に測定することを可能にするものであるから、「コレツト機構」による「1対の位置決め爪7」の開閉動作を頻繁に繰り返すものと認められる。

(エ)このように引用発明1と引用発明2とは、技術分野が全く異なる上、引用発明1の「ロツド6」の「下端」が備える「1対の位置決め爪7」と引用発明2の「筒状体2」の「分岐部22」とでは、開閉動作の目的が異なるし、想定される開閉動作の頻度が全く異なるから、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けを見いだすことはできない。

(オ)また、引用文献3は、相違点4に係る本願発明1の構成を示唆するものではない。

(カ)したがって、相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。

エ 本願発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、相違点1ないし相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、又はさらに引用文献3に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本願発明2ないし本願発明4について
本願発明2ないし本願発明4は、本願発明の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明1との相違点1ないし相違点4(前記(1)イ(イ)aないしd)で引用発明1と相違する。
そして、前記(1)ウのとおり、相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点4に係る本願発明2ないし本願発明4の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明4は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本願発明5ないし本願発明8について
本願発明5は、本願発明1の装置を使用して第1部品と第2部品との空間を測定する方法の発明であり、相違点4に係る本願発明1の構成に対応する構成、すなわち、「チューブの第1端部を拡張させるステップは、ロッドをチューブ内に挿入して、チューブの第1端部を圧縮位置から拡張位置まで拡張させるステップ」を含む。また、本願発明6及び本願発明7は、本願発明5を構成するステップを全て含み、本願発明8は、本願発明5ないし本願発明7と同じステップで構成されるが、一部のステップの順番を逆にしたものであるから、本願発明6ないし本願発明8は、本願発明5と同様に、相違点4に係る本願発明1の構成に対応する構成を備える。
そして、前記(1)ウのとおり、相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、これに対応する本願発明5ないし本願発明8の構成も同様である。
したがって、本願発明5ないし本願発明8は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 原査定の判断について
原査定は、引用文献1に記載されたロツド6の先端部の開閉機構として、引用文献1に記載された開閉機構に代えて、引用文献2に記載された開閉機構を用いることは、当業者ならば容易に想到し得たことであると判断した。
しかし、前記2(1)ウ(エ)のとおり、引用発明1と引用発明2とは、技術分野が全く異なる上、引用発明1の「ロツド6」の「下端」が備える「1対の位置決め爪7」と引用発明2の「筒状体2」の「分岐部22」とでは、開閉動作の目的が異なるし、想定される開閉動作の頻度が全く異なるから、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けを見いだすことはできない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるという理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-14 
出願番号 特願2012-136830(P2012-136830)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 剛志神谷 健一  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
小林 紀史
発明の名称 接近が制限される空間を測定する方法及び装置  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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